説明

パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法

【課題】パーフルオロアルカンスルホン酸エステルの製造方法およびこれをこの塩にさらに変換するための方法。また、得られた化合物を、電解質、電池、キャパシタ、スーパーキャパシタおよびガルバニ電池において用いること。
【解決手段】無水パーフルオロアルカンスルホン酸を、炭酸ジアルキルと、パーフルオロアルカンスルホン酸の存在下で反応させて、アルキルパーフルオロアルカンスルホネートを得る。この反応は、無水雰囲気下で、例えば以下のようにして実施される:

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物の製造方法、並びにこれらの化合物の、電池、キャパシタ、スーパーキャパシタおよび電気化学セルにおける使用に関する。
【0002】
ポータブル電子装置、例えばラップトップおよびパームトップコンピューター、携帯電話またはビデオカメラの普及並びに従ってまた軽量および高性能電池に対する要求は、近年劇的に世界的に増大している。
電池および関連する環境上の問題に対するこの突然増大した要求の観点から、長い有効寿命を有する充電式電池の開発が、定常的に増大する重要性を有している。
【0003】
リチウムイオン電池および極めて高い容量を有する二層キャパシタ(いわゆるスーパーキャパシタ(supercapacitor)またはウルトラキャパシタ(ultracapacitor))は、現在の従来技術を表す。両方の系において、LiPFまたはN(CBFの形態での、加水分解感受性の、および熱的に不安定な物質は、現在導電性塩として用いられている。湿潤空気または溶媒からの残留水との接触において、HFが、迅速に生成し得る。毒性特性に加えて、HFは、サイクル挙動に対して、従って電気化学セルの性能に対して、極めて悪い影響を有する。
【0004】
提示されている代替物は、イミド、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドもしくはビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドまたはメタニド、例えばトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタニドおよびこの誘導体である。
しかし、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを有する第四級アンモニウムおよびホスホニウム塩はまた、電気化学セルのための導電性塩として開発されている。しかし、これらの塩の合成は、中間体、メチルトリフルオロメタンスルホネート(メチルトリフレート(triflate))が、製造するのが困難であるため、比較的複雑である。
【0005】
メチルトリフレートは、強力なメチル化試薬である。これは、製造化学において、メチル基の導入のために、例えば複素環式化合物のメチル化において(Yu, Teylor, Tetrahedron Letter, 1999 (36), 6661-6664)または有機硫黄化合物のメチル化(Tsuge, Hatta, Chem. Letter, 1997 (9), 945-946)において用いられる。メチルトリフレートは、ヨウ化メチル、硫酸ジメチルおよびトルエンスルホン酸メチルよりも顕著に反応性が高く、メチル化試薬は、通常、第四級アンモニウムおよびホスホニウム塩の合成において用いられる。
【0006】
メチルトリフレートへの種々の合成経路がある(Gramstad, J. Chem. Soc., 1956, 173-180またはBeard, J. Org. Chem., 1973 (21), 3673-3677)。記載されている合成経路のいずれも、スケールアップのために好適でない。その理由は、これらが、極めて有毒な出発物質、例えば硫酸ジメチルを用い、収量が極めて低く、反応生成物を、精製しなければならないか、または、危険な副生成物もしくは廃棄生成物、例えば硫酸ジメチルで汚染された硫酸が生成するからである。
従って、本発明の目的は、アルキルパーフルオロアルカンスルホネートおよびこれから製造することができる導電性塩の合成のための簡単な方法を提供することにあった。
【0007】
この目的は、パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物の製造方法であって、無水パーフルオロアルカンスルホン酸を、炭酸ジアルキルと、パーフルオロアルカンスルホン酸の存在下で反応させて、アルキルパーフルオロアルカンスルホネートを得るプロセス段階を用いる、前記方法により達成され、この反応は、無水雰囲気下で、例えば以下のようにして実施される:
【化1】

【0008】
驚異的なことに、無水パーフルオロアルカンスルホン酸の反応は、事実上定量的に発生して、アルキルパーフルオロアルカンスルホネートが得られることが見出された。触媒量のパーフルオロアルカンスルホン酸のみが、必要である;通常、0.01〜0.1molのパーフルオロアルカンスルホン酸のみが、無水パーフルオロアルカンスルホン酸の1molあたり必要である。
【0009】
本発明の方法により、アルキル化試薬として用いることができるアルキルパーフルオロアルカンスルホネートが得られる。これらを、複素環式化合物もしくは有機リンおよび有機硫黄化合物のアルキル化またはN−メチルアミノ酸の製造のために、低いラセミ体生成を伴って用いることができる。
さらに、本発明に従って得られた、パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物を、また、電気化学セル、一次電池、二次電池、キャパシタおよび/またはスーパーキャパシタにおいて、例えば溶媒として用いることができる。
【0010】
さらに、得られたエステルを、さらに反応させて、パーフルオロアルカンスルホン酸塩を得ることができる。これは、有利には、本発明において最初に得られたエステルは、単離されることが、絶対的には必要ではない。その理由は、未反応ジアルキルカーボネートが、溶媒として、対応するパーフルオロアルカンスルホン酸塩を得る、その後の
XR
式中、
Xは、PまたはNであり、
【0011】
、RおよびRは、同一であるかまたは異なっており、随意に、互いに直接、単結合または二重結合を介して結合しており、各々、個別に、または一緒に、
−水素、
−部分的に他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基、随意に置換されているアリール基または随意に置換されている複素環式基により置換されていることができる、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、
−アルキレン基が1〜16個の炭素原子を有し、他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる、アルキルアリール基、
−他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる、アリール基、あるいは
−他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる、複素環式基
であり、
【0012】
ここで、アルキルまたはアルキレン基の1つ、2つまたは3つのCH基は、同一の、または異なるヘテロ原子、好ましくはO、NHまたは1〜6個の炭素原子を有するN(アルキル)により置換されていることができ、ここで、R、RおよびRは、同時には、パーフルオロ化またはパークロロ化されていることができない、
との反応において存在することができるからである。反応後、パーフルオロアルカンスルホン酸塩が、沈殿する。未反応エステルは、単に、蒸留除去されなければならず、一方、残留するパーフルオロアルカンスルホン酸を、XRを用いて中和するか、またはさらなる反応のために用いることができる。
【0013】
本発明の方法の好ましい変法において、エステルとのその後の反応を、
【化2】

式中、
XおよびYは、PまたはNであり、
、RおよびRは、所望により、同一であるかまたは異なっており、各々、個別に、または一緒に、
−水素、
−1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、
−アルキレン基が1〜16個の炭素原子を有するアルキルアリール基、
−アリール基または
−複素環式基
であり、
【0014】
ここで、環および/またはアルキル基中の1つ、2つまたは3つのCH基は、同一のまたは異なるヘテロ原子、好ましくはO、NHまたは1〜6個の炭素原子を有するN(アルキル)により置換されていることができ、ここで、環および/またはアルキル基は、部分的に、他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基、アルキルアリール、アリールおよび/または複素環式基により置換されていることができ、および
ここで、アルキルアリール基、アリール基および/または複素環式基は、他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる
からなる群から選択された化合物XRを用いて実施する。
【0015】
本発明は、同様に、
n+[OSOCF
タイプであり、ここで、Mn+(n=1または2)が、以下の群:
【化3】

式中、
XおよびYは、PまたはNであり、
、RおよびRは、所望により、同一であるかまたは異なっており、各々、個別に、または一緒に、
−水素、
−1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、
−アルキレン基が1〜16個の炭素原子を有するアルキルアリール基、
−アリール基または
−複素環式基
であり、
【0016】
ここで、環および/またはアルキル基中の1つ、2つまたは3つのCH基は、同一のまたは異なるヘテロ原子、好ましくはO、NHまたは1〜6個の炭素原子を有するN(アルキル)により置換されていることができ、ここで、環および/またはアルキル基は、部分的に、他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基、アルキルアリール、アリールおよび/または複素環式基により置換されていることができ、および
ここで、アルキルアリール基、アリール基および/または複素環式基は、他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる
から選択されている、パーフルオロアルカンスルホン酸塩に関する。
【0017】
これらのパーフルオロアルカンスルホン酸塩を、例えば、本発明の方法により製造することができ、種々の用途で用いる。例えば電解質における導電性塩としてのこれらの使用に加えて、これらを、溶媒として、特にイオン性液体として用いることができる。さらに、本発明の塩を、化学的触媒において、特に相間移動触媒として用いることも可能である。相間移動触媒は、多数の有機反応のために用いられ、しばしば比較的温和な反応条件の下で高い収量をもたらす合成方法である。ほとんどの相間移動触媒された反応において、陰イオンを、水性相もしくは固体相または界面から、相間移動触媒により、これが増大した反応性で反応する有機相に輸送する。従って、本発明のパーフルオロアルカンスルホン酸塩は、特に、イオン性液体として、または相間移動触媒において用いるのに適する。この点におけるこれらの使用は、当業者に困難を全く生じない。
【0018】
本発明の方法のさらに特に好ましい変法において、パーフルオロアルカンスルホン酸塩を、本発明に従って得られたエステルを、以下の群:
【化4】

式中、
〜Rは、同一であるかまたは異なっており、随意に単結合または二重結合を介して、互いに直接結合しており、各々、個別にまたは一緒に、
−水素、
−ハロゲン、好ましくはフッ素であり、ただしN−ハロゲン結合が存在せず、
−部分的に他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基により置換されていることができる、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、
−アリール基、
−アルキルアリール基、
−複素環式基、
−アルキル複素環式基
である、
から選択された化合物と反応させることにより、製造することができる。
【0019】
本発明に従って製造された、パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物のすべて、即ちパーフルオロアルカンスルホン酸エステルおよび特にこれらの塩を、電解質、電気化学セル、一次電池および二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタにおいて、例えば溶媒または導電性塩として用いることができる。この塩を、ここでは、純粋な形態またはこれらの混合物の形態のいずれかにおいて、導電性塩として用いることができる。また、この塩を、当業者に知られている他の塩と共に、導電性塩として用いることも可能である。
【0020】
本発明に従って製造された、パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物、特に塩を、液体、ゲル状、ポリマー状または固体電解質において用いることができる。このために、導電性塩および好適なポリマーおよび/または好適な溶媒を含む混合物を、用いることができる。本発明の目的のために、混合物は、成分の純粋な混合物、1種または2種以上の塩が、ポリマーまたはゲル中に包含されている混合物、並びに化学結合および/または物理的結合が、1種または2種以上の塩とポリマーまたはゲルとの間に存在する混合物を含む。ゲル状電解質の場合において、混合物は、好ましくは、1種または2種以上の塩およびポリマーに加えて、好適な溶媒を含む。
【0021】
液体またはゲル状電解質のために用いられる溶媒は、特に好ましくは、一次電池または二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタまたは電気化学セルにおいて用いるのに適する、中性溶媒またはこの混合物、例えば炭酸塩、エステル、エーテル、スルホランもしくはニトリル、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランまたはこれらの混合物である。
【0022】
ポリマー状またはゲル状電解質に用いられるポリマーは、好ましくは、アクリロニトリル、ビニリデンジフルオリド、メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、シロキサン、ホスファゼンのホモポリマーもしくはコポリマーまたは前述のホモポリマーおよび/またはコポリマーの少なくとも2種の混合物であり、ここで、このポリマーが、少なくとも部分的に架橋していることが可能である。
【0023】
このようにして得られた電解質は、一次電池、二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタおよび電気化学セルにおいて用いるのに適し、同様に、本発明の主題である。
【0024】
本発明はまた、本発明に従って製造された少なくとも1種のパーフルオロアルカンスルホン酸塩および随意に他の塩および/または添加剤を含む、一次電池、二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタおよび電気化学セルに関する。これらの他の塩および添加剤は、例えばDoron Aurbach, Nonaqueous Electrochemistry, Marc Dekker Inc., New York 1999; D. Linden, Handbook of Batteries, 第2版、McGraw-Hill Inc., New York 1995並びにG. MamantovおよびA. I. Popov, Chemistry of Nonaqueous Solutions, Current Progress, VCH Verlagsgemeinschaft, Weinheim 1994から、当業者に知られている。
【0025】
本明細書中に述べたすべての出願、特許および公開公報の完全な開示内容並びに、それぞれ2001年6月1日および2001年7月26日に提出された、対応する出願DE 101 26 929.3およびDE 101 36 121.1を、本出願中に、参照により組み込む。
以下に記載する、本発明の主題の例は、単に、説明の役割を有し、本発明をいかなる方法によっても限定するものではない。さらに、記載した本発明を、請求された全体の範囲において実施することができる。
すべてのNMRスペクトルを、ブルカー(Bruker)WP 80 SY分光計において測定した。
【0026】

例1
トリフルオロメタンスルホン酸メチル(メチルトリフレート)の製造
646g(2.29mol)の無水トリフルオロメタンスルホン酸および36g(0.24mol)のトリフルオロメタンスルホン酸を、最初に、1lの丸首(round-necked)フラスコ中に導入する。206g(2.29mol)の炭酸ジメチルを、室温で定常的にかきまぜながら加え、および還流冷却する。溶液を、50〜60℃に、10分以内に加温し、その後この温度においてさらに1時間かきまぜる。この溶液を、その後100〜110℃に、油浴を用いて加温し、さらに2時間かきまぜる。蒸留後、99%より大きい純度を有する733gのトリフルオロメタンスルホン酸メチルが、単離される(沸点範囲:98〜99℃、収率:97.7%)。
【0027】
19FおよびH−NMRは、文献データ(Paquette, Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, 1995, 3617-3622)と同一である。
731g(2.59mol)の無水トリフルオロメタンスルホン酸および232g(2.58mol)の炭酸ジメチルを、残留物に加え、前述の方法を繰り返す。99%より大きい純度を有する837gのトリフルオロメタンスルホン酸メチルが、単離される(収率:99.1%)。
この方法を、多数回繰り返すことができる。
【0028】
例2
ペンタフルオロエタンスルホン酸メチルの製造
5.74g(15.0mmol)の無水ペンタフルオロエタンスルホン酸および0.31g(1.55mmol)のペンタフルオロエタンスルホン酸を、最初に10mlの丸首フラスコ中に導入する。1.35g(15.0mmol)の炭酸ジメチルを、室温で定常的にかきまぜながら加え、および還流冷却する。溶液を、60℃の温度において1時間、その後さらに3時間110℃でかきまぜる。蒸留後、5.41gのペンタフルオロエタンスルホン酸メチルが単離される(沸点範囲:114〜115℃、収率:84.1%)。
19F−NMR、ppm:(溶媒:CDCl;標準:CClF):−80.44 s (CF);−115.34 s (CF
H−NMR、ppm:(溶媒:CDCl;標準:TMS):4.23 s (CH
【0029】
例3
N−メチル−N−トリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートの製造
8.35g(82.7mmol)のトリエチルアミンを150cmの乾燥ヘキサンに溶解した溶液を、最初に、室温で導入する。例1のようにして製造した、13.56g(82.7mmol)のメチルトリフレートを、室温で10分間にわたり、定常的にかきまぜながら加える。溶液を加温し、さらに1/2時間かきまぜる。この間、溶液は、室温に戻る。白色沈殿を濾別し、ヘキサンで洗浄する。ヘキサン濾液を、さらなる反応のために用いることができる。60℃で減圧下で乾燥した後に、21.81gの白色微晶質物質が、単離される(収率:99.5%)。
【0030】
19F−NMR、ppm:(溶媒:アセトニトリル−D;標準:CClF):−78.04 s (CFSO
H−NMR、ppm:(溶媒:アセトニトリル−D;標準:TMS):1.25 tm (3CH);2.86 s (CH);3.26 q (3CH);JH,H=7.3Hz
H−NMRデータは、文献データ(R. Weiss, K.-G. Wagner, M. Hertel, Chem. Ber. 117 (1984) pp. 1965-1972)に相当する。
【0031】
例4
メチル(トリエチル)ホスホニウムトリフルオロメタンスルホネートの製造
8.05g(68.2mmol)のトリエチルホスフィンを150cmの乾燥ヘキサンに溶解した溶液を、最初に室温において導入する。例1のようにして製造した、11.19g(68.2mmol)のメチルトリフレートを、室温で、10分間にわたり、定常的にかきまぜながら加える。この溶液を加温し、さらに1/2時間かきまぜる。この間、溶液は、室温に戻る。白色沈殿を濾別し、ヘキサンで洗浄する。ヘキサン濾液を、さらなる反応のために用いることができる。60℃で減圧下で乾燥した後に、19.02gの白色微晶質物質が、単離される(融点:103〜104℃、収率:98.9%)。
【0032】
19F−NMR、ppm(溶媒:アセトン−D;標準:CClF):−77.82 s (CFSO
H−NMR、ppm(溶媒:アセトン−D;標準:TMS):1.30 dt (3CH);1.95 d (CH);2.40 dq (3CH);JH,H=7.7Hz;JP,H=13.7Hz;JP,H=13.8Hz;JP,H=18.8Hz
元素分析:
観測値:33.72% C、6.57% H、11.14% S
計算値:34.04% C、6.43% H、11.36% S((CPCHCFSO
【0033】
例5
1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートの製造
13.70g(83.5mmol)のメチルトリフレートを、10分間にわたり、丸底フラスコ中の6.67g(81.2mmol)の1−メチルイミダゾールに、かきまぜながら、および氷浴で冷却しながら滴加する。反応混合物を加温し、70〜75℃において1時間、還流冷却しながらかきまぜる。過剰のメチルトリフレートを、60℃で、減圧下で除去する。20.00gの白色粉末が、単離される。
【0034】
19F−NMR、ppm(溶媒:アセトニトリル−D;標準:CClF):−78.14 s (CFSO
H−NMR、ppm(溶媒:アセトニトリル−D;標準:TMS):3.82 s (2CH);7.35 d (2H);8.53 t (1H);JH,H=1.6Hz
H−NMRデータは、文献データ(U. Zollner, Tetrahedron, 44, No. 24 (1988), pp. 7413-7426)に相当する。
【0035】
例6
N,N−ジメチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネートの製造
6.83g(80.2mmol)のN−メチルピロリジンを150cmの乾燥ヘキサンに溶解した溶液を、最初に、室温で導入する。例1のようにして製造した、13.12g(80.2mmol)のメチルトリフレートを、室温で、10分間にわたり、定常的にかきまぜながら加え、この間溶液を加温する。1/2時間後、溶液は、室温に戻る。析出した白色沈殿を、濾別し、ヘキサンで洗浄し、60℃で減圧下で乾燥する。16.61gの白色微晶質物質が、単離される(融点(分解を伴う):308〜310℃、収率98.3%)。
【0036】
19F−NMR、ppm(溶媒:アセトニトリル−D;標準:CClF):−78.00 s (CFSO
H−NMR、ppm(溶媒:アセトニトリル−D;標準:TMS):2.17 m (2H);3.07 s (CH);3.45 m (2H)
メタノールから再結晶させた後の元素分析:
観測値:33.66% C、5.68% H、5.60% N、13.06% S
計算値:33.73% C、5.66% H、5.62% N、12.86% S(C14NOS)
【0037】
例7
N,N−ジメチルピペリジニウムトリフルオロメタンスルホネートの製造
7.76g(78.2mmol)のN−メチルピペリジンを150cmの乾燥ヘキサンに溶解した溶液を、最初に、室温で導入する。例1のようにして製造した、12.83g(78.2mmol)のメチルトリフレートを、室温で、10分間にわたり、定常的にかきまぜながら加え、この間、溶液を加温する。1/2時間後、溶液は、室温に戻る。析出した白色沈殿を濾別し、ヘキサンで洗浄し、80℃で減圧下で乾燥する。19.72gの白色微晶質物質が、単離される(メタノールから再結晶させた後の融点:255〜256℃、収率95.8%)。
【0038】
19F−NMR、ppm(溶媒:アセトニトリル−D;標準:CClF):−78.06 s (CFSO
H−NMR、ppm(溶媒:アセトニトリル−D;標準:TMS):1.79 m (3CH);3.02 s (2CH);3.27 m (2CH
メタノールから再結晶させた後の元素分析:
観測値:36.44% C、6.07% H、5.31% N、12.20% S
計算値:36.50% C、6.13% H、5.32% N、12.18% S(C16NOS)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物の製造方法であって、無水パーフルオロアルカンスルホン酸を、炭酸ジアルキルと、パーフルオロアルカンスルホン酸の存在下で反応させて、アルキルパーフルオロアルカンスルホネートを得るプロセス段階を用いる、前記方法。
【請求項2】
炭酸ジアルキルを:炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルまたはこれらの混合物からなる群から選択することを特徴とする、請求項1に記載のパーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物の製造方法。
【請求項3】
パーフルオロアルカンスルホン酸塩の製造方法であって、請求項1に従って製造されたアルキルパーフルオロアルカンスルホネートを、式
XR
式中、
Xは、PまたはNであり、
、RおよびRは、同一であるかまたは異なっており、随意に、互いに直接、単結合または二重結合を介して結合しており、各々、個別に、または一緒に、
−水素、
−部分的に他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基、随意に置換されているアリール基または随意に置換されている複素環式基により置換されていることができる、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、
−アルキレン基が1〜16個の炭素原子を有し、他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる、アルキルアリール基、
−他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる、アリール基、あるいは
−他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる、ヘテロアリール基
であり、
ここで、アルキルまたはアルキレン基の1つ、2つまたは3つのCH基は、同一の、または異なるヘテロ原子、好ましくはO、NHまたは1〜6個の炭素原子を有するN(アルキル)により置換されていることができ、ここで、R、RおよびRは、すべて同時には、パーフルオロ化またはパークロロ化されていることができない、
で表される化合物と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項4】
XRが:
【化1】

式中、
XおよびYは、PまたはNであり、
、RおよびRは、所望により、同一であるかまたは異なっており、各々、個別に、または一緒に、
−水素、
−1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、
−アルキレン基が1〜16個の炭素原子を有するアルキルアリール基、
−アリール基または
−複素環式基
であり、
ここで、環および/またはアルキル基中の1つ、2つまたは3つのCH基は、同一のまたは異なるヘテロ原子、好ましくはO、NHまたは1〜6個の炭素原子を有するN(アルキル)により置換されていることができ、ここで、環および/またはアルキル基は、部分的に、他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基、アルキルアリール、アリールおよび/または複素環式基により置換されていることができ、および
ここで、アルキルアリール基、アリール基および/または複素環式基は、他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる
からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
パーフルオロアルカンスルホン酸塩の製造方法であって、請求項1に従って製造されたパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを、以下の群:
【化2】

式中、
〜Rは、同一であるかまたは異なっており、随意に単結合または二重結合を介して、互いに直接結合しており、各々、個別にまたは一緒に、
−水素、
−ハロゲン、好ましくはフッ素であり、ただしN−ハロゲン結合が存在せず、
−部分的に他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基により置換されていることができる、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、
−アリール基、
−アルキルアリール基、
−複素環式基、
−アルキル複素環式基
である、
から選択された化合物と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
n+[OSOCF
タイプの化合物であって、Mn+(n=1または2)が、以下の群:
【化3】

式中、
XおよびYは、PまたはNであり、
、RおよびRは、所望により、同一であるかまたは異なっており、各々、個別に、または一緒に、
−水素、
−1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、
−アルキレン基が1〜16個の炭素原子を有するアルキルアリール基、
−アリール基または
−複素環式基
であり、
ここで、環および/またはアルキル基中の1つ、2つまたは3つのCH基は、同一のまたは異なるヘテロ原子、好ましくはO、NHまたは1〜6個の炭素原子を有するN(アルキル)により置換されていることができ、ここで、環および/またはアルキル基は、部分的に、他の基、好ましくはF、Cl、N(C(2n+1−x)、O(C(2n+1−x))、SO(C(2n+1−x))、C(2n+1−x)であり、ここで、1≦n≦6および0≦x≦2n+1である基、アルキルアリール、アリールおよび/または複素環式基により置換されていることができ、および
ここで、アルキルアリール基、アリール基および/または複素環式基は、他の基、好ましくはF、Cl、Br、NO、CN、アルキル、アリールまたは複素環式基により部分的に置換されていることができる
から選択されている、前記化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の1種または2種以上の化合物の、単独での、または他の塩と混合しての、電解質における使用。
【請求項8】
請求項6に記載の1種または2種以上の化合物の、所望によりまた他の塩と組み合わせての、一次電池、二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタまたは電気化学セルにおける導電性塩としての使用。
【請求項9】
請求項6に記載の1種または2種以上の化合物を、単独で、または他の塩と混合したものを含む、液体、ゲル状、ポリマー状または固体電解質。
【請求項10】
請求項6に記載の1種または2種以上の化合物を含むか、または請求項9に記載の電解質を含む、一次電池、二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタおよび/または電気化学セル。
【請求項11】
請求項6に記載の1種または2種以上の化合物の、溶媒としての使用。
【請求項12】
請求項6に記載の1種または2種以上の化合物の、触媒、特に相間移動触媒としての使用。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造されたパーフルオロアルカンスルホン酸基を含む化合物の、電気化学セル、一次電池、二次電池、キャパシタまたはスーパーキャパシタにおける使用。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造された、パーフルオロアルカンスルホン酸基を含む1種または2種以上の化合物を含む、一次電池、二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタおよび/または電気化学セル。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により製造されたアルキルパーフルオロアルカンスルホネートの、アルキル化試薬としての使用。

【公開番号】特開2009−149666(P2009−149666A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30513(P2009−30513)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【分割の表示】特願2003−501834(P2003−501834)の分割
【原出願日】平成14年5月4日(2002.5.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】