説明

ヒューマンマシンインタフェースデバイス

ユーザの複数の指によって起動される一連の起動ポイントと、ユーザの手の現在の方向を測定するモーションセンサと、上記起動ポイントおよび上記複数のモーションセンサと相互接続された処理手段であって、これらのモーションセンサは、入力デバイスの一連の現在アクティブな起動ポイントと、現在の位置および方向とを実質的に連続して出力するようになっている処理手段と、を備えた手動入力デバイスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にユーザインタフェースの分野に関し、特に、高性能にデータを入力するための入力デバイスを開示するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書全体における先行技術のいかなる考察も、そのような先行技術が当技術分野で広く知られているとか、あるいは、共通の一般知識の一部を形成するという旨の承認であると決して見なされるべきではない。
【0003】
データグローブおよび手に取り付けたキーボードのようなヒューマンマシン入力デバイスが知られている。例えば、米国特許出願第6429854号は、デジットすなわち指毎に2つのタッチセンサを備えた多指関節(multi−phalangeal)入力デバイスに関するものである。
【0004】
米国特許出願第4776253号には、電子音楽サウンドを制御するために、「直線速度や回転速度、加速度、あるいは加速度の時間微分...」を用いてという記載がある。
【0005】
ニンテンドーWiiシステム(米国特許出願第7774155号など)は加速度計およびジャイロスコープをデータ入力の際に使用している。Wiiのリモコンには正確なタイミングでイベントを引き出すために利用可能なボタンも設けられている。しかし、Wiiのリモコンは不連続の出力イベントの広範囲への高速なアクセスをユーザに与えるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジューマン・マシンインタフェースデバイスの改善された形態を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によれば、ユーザの複数の指によって起動される一連の起動ポイント(activation point)と、デバイスの現在の方向を測定するモーションセンサと、上記起動ポイントおよび複数のモーションセンサと相互接続された処理手段であって、これらのモーションセンサは、入力デバイスの一連の現在アクティブな起動ポイントと、現在の位置および方向とを実質的に連続して出力するようになっている処理手段と、を備えた手動入力デバイスが提供される。
【0008】
好適には、一指当たりの起動ポイントの数が少なくとも2であり、これらの起動ポイントが、ユーザの指の異なる部分と相互作用を行うために互いから隔置されていることが望ましい。
【0009】
幾つかの実施形態において、一指当たりの起動ポイントの数は少なくとも3となる場合もある。好適には、一連の起動ポイントが親指に対しても適合されることが望ましい。上記複数のモーションセンサはデバイスの回転方向を検知する方向センサを備えることができる。一例では、モーションセンサはデバイスのロール、ピッチおよびヨー指標を出力する。さらに、これらのモーションセンサはデバイスの任意の相対的動きを検知する位置センサを備えることができる。
【0010】
デバイスは、さらに好適には、ユーザによる使用時に、起動ポイントのカウンタバランスをとる重み付きの細長い部分を備え得ることが望ましい。起動ポイントの相対位置は個々の指に対して調整できるようにしてもよい。起動ポイントはマイクロスイッチから好適に形成される。処理手段は出力の無線送信を行うための無線送信手段と相互接続することができる。種々の実施形態において、起動ポイントの各々は、個々に作動されるか、他の起動ポイントと組み合わされて作動されるかのいずれかにより作動され得る。
【0011】
音楽用入力デバイスとして利用されるとき、起動ポイントは、好適には半音階で楽譜に対応づけられることが望ましく、デバイスの方向の1本の軸が音のピッチのオクターブを出力するために対応づけられ、デバイスの方向の1本の軸が一連のゾーンに対応づけられ、そして、デバイスの方向の1本の軸が音量に対応づけられ得る。
【0012】
本発明のさらなる側面によれば、少なくとも2つの手動入力デバイスが提供され、個々のデバイスは、ユーザの複数の指により起動される一連の起動ポイントと、ユーザの手の現在の方向を測定するモーションセンサと、上記入力デバイスの起動ポイントおよび方向のためのモーションセンサと相互接続された処理手段と、を備え、その場合、さらなる処理ユニットが個々のデバイスの個々の処理手段と相互接続され、かつ、手動入力デバイス間の差動出力を計算する。
【0013】
本発明の範囲内に含まれ得る他の任意の形態もあり得るが、添付図面を参照しながら、以下単に例示として本発明の推奨形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】左前部の視点から見たインタフェースの第1の実施形態を示す図である。
【図2】右前部の視点から見たインタフェースの第1の実施形態を示す図である。
【図3】下位左側の視点から見たインタフェースの第1の実施形態を示す図である。
【図4】分離された単一のフィンガートリプレットを左前部の視点から見た図である。
【図5】近位および遠位のエンクロージャのサイドパネルが取り外され、かつ、中位エンクロージャの上部セクションが取り外された状態の、分離された単一のフィンガートリプレットを後部右側の視点から見た図である。
【図6】分離されたトリプレットトラックおよびトリプレット・トラックコネクタを左前部の視点から見た図である。
【図7】サムトリプレットのエンクロージャ・ハウジングの下部が取り外された状態の、分離されたサムトリプレットを下から見た図である。
【図8】インタフェースの電子機器のブロック図を示す。
【図9】電子機器のボタンセンサリレー構成要素により使用されるプログラムのブロック図を示す。
【図10】図9で参照する作動シーケンスフィルタサブルーチンのブロック図を示す。
【図11】電子機器のプロセッサ構成要素により使用されるプログラムのブロック図を示す。
【図12】インタフェースボタンに対するトーンピッチの割当て例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態において効果的な形態のデータ入力デバイスが提供される。このデバイスは、個別の出力信号の広いレパートリを実現するものであり、かつ、音楽上の目的に利用するための優れた能力を有している。好ましい実施形態において、例えば音楽のピッチのようなこれら個別の出力信号へのアクセスが可能となる。このように利用される場合、デバイスは少なくとも15の音程にすばやくアクセスできると共に、これらの音程の特徴を制御することもできる。さらに、ユーザは、これら15個のピッチを再生するオクターブを敏速に変更することも可能である。好ましい実施形態は、これらのピッチへの高速の、同時的、かつ、時間的に正確なアクセスを提供するものであり、それによって、強いメロディ、和音、およびリズムの能力を有するものとなる。
【0016】
さらに、この好ましい実施形態により、さらに正確な、反復可能な、直感的な、使い勝手のよい、学習可能な、動きおよび方向検知手段でメロディ、和音、およびリズムの能力の組み合わせを可能にするシステムが可能となり、コストを低減することができる。
【0017】
少なくとも15のピッチへのアクセスは、ユーザが、例えば「西欧音楽の」半音階のような標準的オクターブ域のすべての音によって演奏を行うことが可能であることを意味する。そのため、ユーザは、インタフェースへの音の割当てを変更する必要なく、半音階から導き出されるすべての全音階(長音階および短音階など)へのアクセスが可能となる。この一貫性に起因して、時間的正確さおよび音トリガリング(note−triggering)の反復性と組み合わされて、この好ましい実施形態は際だった学習可能システムを提供することになる。
【0018】
最初の背景説明を行うために以下の説明で述べる人間の手および腕における位置とは、ひじを曲げた状態で、かつ、前腕および手が地表に対して水平でかつ前方を指した状態で、上腕が直立した体に対して平行に垂れている右腕の解剖学的位置を意味する。この位置では、わずかな角度で(すなわち掌がユーザの体の方へわずかに上げられた状態で)右手の掌が地表に面するように前腕が回内される。種々の角度を用いることが可能であり、この実施形態の場合、接地平面から約25°の角度が規定されている。以下の説明ではこの解剖学的位置を「中間的な作動位置」と呼ぶことにする。
【0019】
ロール、ピッチ、ヨーのインタフェースの軸はユーザの片手を基準として近似的に定義される。すなわち、掌と同じ平面で指をいっぱいに広げた状態で手と前腕を中指の軸の周りで回転させることがロール平面内での回転として定義される。ひじにおける曲げはピッチ平面内での動きとして定義される。ヨー平面はロールおよびピッチの両平面に対して垂直である。
【0020】
このインタフェースの一実施形態が図1〜図12に示されている。この実施形態はユーザの右手で相互作用を行うように設計されている。また、本説明で用いられる「左」および「右」という用語もユーザを基準として定義されている。したがって、図1は左前部の視点から見たインタフェースを示す図である。インタフェースの前部に4個のモジュール(110、111、112、113)があり、これらモジュールの各々は「フィンガートリプレット」と呼ばれる。これらのフィンガートリプレットは、ユーザの右手の小指(110)、薬指(111)、中指(112)および人差し指(113)による操作用としてそれぞれ配置される。個々のフィンガートリプレットはレールすなわちトラック114(「トリプレットトラック」)によって構造体の残り部分と接続される。このトラックは「パーム(掌)エンクロージャ」115と呼ばれる構造体領域と接続される。この「パームエンクロージャ」はユーザの手の掌の下に位置するように設計される。また、「サム(親指)トリプレット」118と呼ばれるモジュールもパームエンクロージャ115と接続されている。このモジュールは親指による操作用として配置される。
【0021】
「パームクラスプ」116が、パームエンクロージャ115の右手側に装着され、かつ、ユーザの手の頂部上にわたって延伸している。「ハンドストラップ」117が、パームエンクロージャ115の左手側に装着され、かつ、ユーザの手の頂部上にわたって延伸している。パームエンクロージャに装着されたハンドストラップのセクションは可撓性および弾性を有している。ハンドストラップの反対端の下面はパームクラスプ116の上面に装着されている。当業者であれば知っているように、プレススタッドやバックルなどのような手段を含む、ハンドストラップをパームクラスプへ装着するための種々の異なるメカニズムを使用することが可能である。この実施形態では、フックループ(hook and loop)メカニズムを利用することが可能であり、さらに、フックループメカニズムによってカバーされるハンドストラップの領域ならびにパームクラスプ領域は、確実な装着を維持しながら装着位置の変動を可能にする十分に広い領域であることが望ましい。この変動は、インタフェースを手に装着する際の締め付け調整を可能にするものであるが、追加の締め付け調整手段の利用も可能である。
【0022】
「ハンドクラスプ・スペーサ」と呼ばれる柔らかい着脱可能なクッションセクション119がパームクラスプの内部に位置している。「後部エンクロージャ」120がパームエンクロージャ115の後ろに配置されている。インタフェースの電子機器のオン/オフ用電源スイッチ121が後部エンクロージャ上に配置されている。後部エンクロージャはパームエンクロージャの頂部によって形成される平面から下方へ離れた方向にわずかに角度をつけられている。この角度は、手首が曲げられた場合、後部エンクロージャがユーザの前腕とぶつからないようにする助けになる。また、後部エンクロージャはパームエンクロージャから下がっているので、(パームエンクロージャを基準として)わずかに右方向へも下がっている。この角度は、手および腕が中間作動位置にあるとき、インタフェースの後部エンクロージャが(左方向ではなく)前腕の下に入るようにする。
【0023】
図2は右前部の視点から見たインタフェースを示す図である。ミニB−USBコネクタ210が後部エンクロージャ120の右手側に配置される。また、この図で明らかなように、ハンドクラスプ116により形成されたフレーム内へハンドクラスプ・スペーサ119が突き出している突起部211によって、このハンドクラスプ・スペーサ119は所定の場所に保持される。ハンドクラスプ・スペーサを外して、いくぶん左の方へ突き出てパームエンクロージャ115の上方の領域内へ入っている異なるサイズのスペーサと交換してもよいし、あるいはこのハンドクラスプ・スペーサを完全に取り外してもよい。さらに、パームエンクロージャの前部にある開口部212が、フィンガートリプレット(110、111、112、113)の最後部セクション用の凹部として機能する。
【0024】
図3は下部左側面の視点から見たインタフェースを示す図である。3個のボタン(「遠位」親指ボタン310、「中位」親指ボタン311、「近位」親指ボタン312)がサムトリプレット118上に配置されている。ハンドクラスプ116の下側(ユーザの手の裏に接触する側)に柔らかいパディング313が設けられる。電源ケーブル314を受け入れるためのソケットが後部エンクロージャ120の下側に配置されている。
【0025】
インタフェースの残り部分から分離された、左前部の視点から見たフィンガートリプレットが図4に示されている。プロトタイプの実施例では、すべてのフィンガートリプレットは設計上同一である。サムトリプレットの場合と同様、フィンガートリプレットは遠位指ボタン410、中位指ボタン411、近位指ボタン416を備えている。中位指ボタンは、「中位」エンクロージャ412および遠位指ボタン410の後部の部分によって形成された複合構造物の形で取り付けられる。遠位指ボタンは「遠位」エンクロージャ413内に取り付けられる。
【0026】
遠位エンクロージャは「遠位」シャフト414上に取り付けられて、遠位エンクロージャが遠位シャフトの周りでスライドできるだけでなく、遠位シャフトの上下にもスライドできるようになっている。遠位シャフトは「近位」エンクロージャ415と接続され、かつ、近位エンクロージャは近位指ボタン416が取り付けられている構造体でもある。近位エンクロージャは「近位」シャフト417と接続されている。上記近位シャフトの露出した後部の部分は「トリプレット・トラックコネクタ」421内に取り付けられ、それによって、近位シャフトは、トリプレット・トラックコネクタ内で回転できるだけでなく、スライドしてトリプレット・トラックコネクタを出入りできるようになっている。円筒形状の「トリプレット・トラックコネクタクランプ」418がトリプレット・トラックコネクタの上部に存在する。「コネクタボルト」420がこのクランプ内へねじ込まれ、かつ、ボルトのヘッドの下に座金419がある。この実施形態では、コネクタボルトの上端部が、適当なサイズの六角レンチまたは六角棒スパナとインタフェース接続できると共に、適当なサイズの六角レンチまたは六角棒スパナによってコネクタボルトの上端部の締め付け/緩めを行うことができるように意図されている。しかし、ユーザの指にアクセス可能で、かつ、ユーザの指による操作が可能なボルト上で外側へ突き出しているキーヘッドを含む、コネクタボルトの締め付けおよび緩めを行うための様々な手段を利用することも可能である。
【0027】
図5は、分離されたフィンガートリプレットを再び示す図であるが、後部右側の視点から見た図であり、近位および遠位のエンクロージャの側部セクションが取り外され、かつ、中位エンクロージャの上部セクションが取り外された図である。近位シャフト417ならびに遠位シャフト414は両方とも中空であり、これらのシャフトによって、電気配線が近位シャフトの後端部510においてトリプレットの中に入り、次いで、近位エンクロージャ内のポータル512または遠位エンクロージャ内のポータル520から出ることが可能となる。
【0028】
また、トリプレット・トラックコネクタ421の管断面の下側まで延伸するねじ込みボルト511が図5に示されている(雄ねじは図示されていない)。近位シャフトと接触するゴムプラグがこのボルトの上端部にある。そのため、内向きのボルトをねじで取り付けることが、トリプレット・トラックコネクタに対して近位シャフトを固定する機能を果たすことになる。同様にねじ込みボルト515は、遠位エンクロージャ413の下側を貫通して延伸し(ボルトスレッドは図示されていない)、そのため、内向きのボルトをねじで取り付けることが、遠位シャフトに対して遠位エンクロージャを固定する機能を果たすことになる。この実施形態では、これらのボルトの各々の下端部が、適当なサイズのアレンキーまたはヘックスキーとインタフェース接続することができると共に、適当なサイズの六角レンチまたは六角棒スパナによってコネクタボルトの上端部を締め付け/緩めを行うことができるように意図されている。しかし、ユーザの指にアクセス可能で、かつ、ユーザの指による操作が可能なボルト上で外側へ突き出している大きなキーヘッドを含む、これらのボルトの締め付けおよび緩めを行うための様々な手段を利用することも可能である。
【0029】
「近位」マイクロスイッチ513が近位指ボタン416による作動用として配置される。マイクロスイッチを使用して、処理を行うようにおよび/またはボタンのための力を返すようにおよび/またはトリガポイントに達した旨を示す触覚に基づくフィードバックを返すようにすることができる。このことは、すべてのマイクロスイッチ、ならびに、フィンガートリプレットおよびサムトリプレットにおいて使用されるマイクロスイッチのそれぞれのボタンに関して言えることである。近位エンクロージャ・ハウジングから突き出た回転軸突起部が、回転軸キャビティ514内へ、および、近位指ボタンの反対側にある、上記キャビティ514に匹敵する回転軸キャビティ内へ挿入される。これらの構成要素は近位指ボタンがその作動中に回転して周動する回転軸メカニズムを形成する。ここで留意すべき点として、作動する指によって回転軸メカニズムへ伝えられる相対的力の低減方法を利用できるという点がある、すなわち、図5からわかるように、回転軸キャビティ514の上方にある近位ボタンの高さがボタンの後部部分に対して相対的に低くなっている。この結果、作動する指の力のうちのより多くの力が、前部の回転軸領域よりもボタンの後部内の方へ変換されることになり、それによって、ボタンの作動がさらに容易になる。また、着脱可能な「ボタンカバー」516を用いてボタンの高さ全体の調整を行うことも可能である。近位指ボタンの頂部でスライドし、標準的手段によって(例えば所定の位置にきっちり嵌合した結果生じるカバーとボタン間の摩擦によって、あるいは、カバーの覆いかぶさるセクションが形成するクリッピングメカニズムなどによって)所定位置にこのカバーを保持することが可能となる。いったん所定位置に保持されると、カバーによってボタンの通常動作が可能になる。但し、そうすると接触面は作動する指にさらに近くなる。
【0030】
「中位」マイクロスイッチ517が中位指ボタン411による作動用として配置される。中位指ボタンの回転軸突起部519、ならびに、中位指ボタンの下側にある、突起部519に匹敵する回転軸突起部が、中位エンクロージャ・ハウジング内に、および、遠位ボタン410の頂部内にある回転軸キャビティ内へ入り込む。これらの構成要素は中位指ボタンがその作動中に回転して周動する回転軸メカニズムを形成する。ここで留意すべき点として、この実施形態では、中位指ボタンは、上記近位指ボタンに関連して説明した回転軸への力の低減方法を利用するものであるという点がある。
【0031】
「遠位」マイクロスイッチ521が遠位指ボタン410による作動用として配置される。遠位指ボタンの回転軸突起部518、ならびに、遠位指ボタンの反対側にある、突起部518に匹敵する回転軸突起部は、遠位エンクロージャ・ハウジング内にある回転軸キャビティ内へ入り込む。これらの構成要素は遠位指ボタンがその作動中に回転して周動する回転軸メカニズムを形成する。中位エンクロージャと、この中位エンクロージャのそれぞれのマイクロスイッチならびにボタンが遠位指ボタンの頂部に取り付けられているため、遠位指ボタンの作動は、遠位指ボタンの回転軸メカニズムの周りで中位エンクロージャおよびその構成要素も回転させることになる。ここで留意すべき点として、この実施形態では、中位指ボタンの指接触領域は(この領域の頂部と下端部の間で測定したとき)相対的に細長く、かつ、丸くなっているという点がある。また、遠位指ボタンの領域の回転軸メカニズムからこの領域の前端部までを測定すると、遠位指ボタンの指接触領域の方が相対的に長いという点がある。フィンガートリプレット上のすべての3つのマイクロスイッチは、そのヒンジがそれぞれのボタンの回転軸の方へ向かって配置されるように向けられている。そのため、これらのマイクロスイッチレバーはこれらレバーのそれぞれのボタンと同じ弧を描いて作動することになる。
【0032】
中位マイクロスイッチ517から出ている正の線、アース線および信号線は遠位指ボタン内のキャビティの中を通って降りて来て、遠位エンクロージャ413の中に入る。中位および遠位のマイクロスイッチの正の接続およびアース接続は結合されると共に、正の線、アース線および2本の信号線は配線用ポータル520を介して遠位シャフトの中に入る。遠位および中位のマイクロスイッチから出る信号線は、遠位および近位のシャフトの中を通って配線用ポータル510まで後方へ延伸する。すべての3個のマイクロスイッチの正の接続およびアース接続は、近位エンクロージャ内で結合され、次いで、近位マイクロスイッチの信号線と結合されて、近位シャフトの中を通って配線用ポータル510まで後方へ延伸する。
【0033】
図6は左前部の視点から見た、分離されたトリプレットトラック114およびトリプレット・トラックコネクタ421を示す。トリプレットトラックの内部に凹型のフィンセクション610が存在し、このフィンセクションはコネクタボルト座金419の下面およびコネクタクランプ418の上面によって押しつけられる。コネクタボルト420はいずれかの側部にあるフィン部品の間を通るチャンネル611を貫通する。コネクタボルトの締め付けによって、座金およびコネクタクランプはフィン部品610に対して押しつけられ、トリプレットトラック上におけるトリプレット・トラックコネクタの位置および方向が有効に固定される。
【0034】
図7は、サムトリプレットのエンクロージャ・ハウジングの下部分が取り外された、分離されたサムトリプレットを下から見た図である。中位親指ボタン311は回転軸突起部710を有している。この突起部、ならびに、中位親指ボタンの反対側にある、突起部に匹敵する回転軸突起部は、サムトリプレットのエンクロージャ・ハウジング内にある回転軸キャビティ内へ入り込む。これらの構成要素は中位親指ボタンがその作動中に回転して周動する回転軸メカニズムを形成する。「中位」親指マイクロスイッチ711は中位親指ボタンの拡張部712による作動用として配置される。この拡張部は中位親指ボタンの回転軸メカニズムの反対側にある。そのため中位親指ボタンの作動(押下)によって、上記拡張部は中位親指マイクロスイッチの方へ回転させられる。このマイクロスイッチはそのレバーの先端が拡張部と接触を行うように向けられると共に、マイクロスイッチのヒンジがインタフェースの左方へ配置される(図7内のインタフェースも図の左方に在る)。そのため、マイクロスイッチレバーは拡張部のレバーに直交する弧を描いて作動することになる。
【0035】
「遠位」親指マイクロスイッチ713が遠位親指ボタン310による作動用として配置される。遠位親指ボタンの回転軸突起部714、ならびに、遠位親指ボタンの反対側にある、突起部714に匹敵する回転軸突起部は、サムトリプレットのエンクロージャ・ハウジング内にある回転軸キャビティ内へ入り込む。これらの構成要素は遠位親指ボタンがその作動中に回転して周動する回転軸メカニズムを形成する。遠位親指マイクロスイッチは、このマイクロスイッチのヒンジが遠位親指ボタンの回転軸の方へ(すなわち図7の右方へ)配置されるように向けられる。そのため、マイクロスイッチレバーは遠位親指ボタンと同じ弧を描いて作動することになる。
【0036】
「近位」親指マイクロスイッチ715が近位親指ボタン312による作動用として配置される。近位親指ボタン回転突起部716、ならびに、近位親指ボタン312の反対側にある、突起部716に匹敵する回転軸突起部は、サムトリプレットのエンクロージャ・ハウジング内にある回転軸キャビティ内へ入り込む。これらの構成要素は近位親指ボタンがその作動中に回転して周動する回転軸メカニズムを形成する。近位親指マイクロスイッチは、このマイクロスイッチのヒンジが近位親指ボタンの回転軸の方へ(すなわち図7の右方へ)配置されるように向けられる。そのため、マイクロスイッチレバーは近位親指ボタンと同じ弧を描いて作動することになる。ここで留意すべき点として、本実施形態では、近位親指ボタンは、この近位指ボタンおよび中位指ボタンに関連して上記に説明した回転軸への力の低減方法を利用するものであるという点がある。図7には示されていないが、このボタンは、親指からボタンの接触面までの距離を調整するために(近位指ボタンに関連して上記に説明したように)着脱可能なボタンカバーと一体化することも可能である。
【0037】
図1に戻ると、この実施形態では、電子機器を収納するように、ならびに、この電子機器の重さと、この電子機器自身の構造とを利用して、ユーザの手首の正面に配置されたインタフェースのセクションの重さに対抗するカウンタウエイトとして機能するように、後部エンクロージャ120が設計されている。このカウンタウエイト効果を利用して、インタフェースを着用しているユーザにより要求される筋肉の活動を修正したり、排除したりして、(本説明の初めに定義したような)ニュートラルな作動位置でユーザの手首をまっすぐに保つことが可能となる。インタフェースの前部と後部の間のバランスポイントが存在する場所(インタフェースをバランス状態から一時的に停止し、そのままバランス状態に保つ場所)は、構造内で使用される材料の重さ、後部エンクロージャの長さ、および後部エンクロージャ内部の構成要素の配置を含む種々の要因に依存して決められる。広範囲のバランスポイントの利用も可能であり、さらに、この実施形態の場合、バランスポイントはユーザの掌のほぼ中央部(すなわちパームエンクロージャ115のほぼ中央部)に存在するものと想定されている。
【0038】
後部エンクロージャに配置されている電子機器は2つの主要タスクを実行するように要求される。第1のタスクは、外部デバイスへ有用な形で伝えることができる単一のデジタルデータストリームに、ボタンセンサから到来する信号を変換するタスクである(上述したように、この実施形態では、サムトリプレットおよびフィンガートリプレットの遠位、中位および近位のボタンに対応するボタンセンサはマイクロスイッチである)。第2のタスクは、インタフェースの動きと方向とを測定し、次いで、これらの測定値を有用な形で外部デバイスへ渡すタスクである。
【0039】
図8はこの実施形態の電子機器の機能ブロック図である。ボタンセンサ811からの信号は複数の入力チャネルを備えたリレー812へ伝えられる。次いで、このリレーは、プロセッサ817へ伝えられる単一のデジタルデータストリームに上記複数の入力信号を変換する。当業者には明らかなように、種々のデバイスがこのリレーの必要な機能を実行することも可能である。例えば、この実施形態では、市販のシングル基板のマイクロコントローラArduino Nano 3.0−ATMEGA328(Gravitech of Claremont社,CA(米国)から入手可能)が好適である(http://vhst−27389313707334.stores.vahoo.net/arna30wiatp.htmlを参照)。マイクロスイッチの形のボタンセンサについては、このマイクロコントローラ基板が必要な正の接続およびアース接続ならびに必要な信号チャネルも(利用可能なデジタルおよびアナログチャネルの組み合わせを通じて)供給することができる。この基板は収集したボタンセンサデータを基板の出力シリアルポート(TXピン)を介して伝えることもできる。このマイクロコントローラ基板のタスクを実行するためにこのマイクロコントローラ基板上で実行できるタイプのプログラムが図9に示されているが、このプログラムについては以下で説明する。
【0040】
また、インタフェースの動きおよび方向の測定に使用するこの実施形態の電子機器が図8にも示されている。これらの構成要素には以下の3つのタイプのセンサが含まれている:(1)インタフェースの動的および静的重力加速度を3次元で測定するセンサ814、(2)ピッチ、ヨー、およびロール軸周りのインタフェースの回転の角速度を測定するセンサ815、および(3)インタフェースの周りの磁場を3次元で測定するセンサ816。これら3つのセンサタイプから得られるデータは、次いで内部無線リンク818への送信に適した形式にデータを変換できるプロセッサ817へ伝えられる。当業者であれば理解できるように、これらのセンサ(814、815、816)およびプロセッサ817の機能を実行するための様々な手段が利用可能である。例えば、この実施形態用として統合された慣性測定ユニット813が好適である。このようなユニットの1例として、SparkFun Electronics of Boulder社(米国)の市販の9DOF Razor IMUがある(http://www.sparkfun.com/cornrnerce/product info.php?products id=9623を参照)。このユニットは該ユニットの入力シリアルポート(RXピン)を介してボタンセンサリレー812からデータを受信することができる。また、このユニットは、該ユニットの加速度計/ジャイロスコープ/磁気探知器データを処理すると共に、このユニットの出力シリアルポート(TXピン)を介して上記データをボタンセンサデータと共に内部無線リンク818へ受け渡すことができる。このユニットがモーションセンサ/方向センサのパフォーマンスの最適化を支援する場合、ある特定の方向を設けてこれらのセンサを後部エンクロージャ内に収納することができる。例えば、インタフェースが(本説明の初めに定義したような)その中間作動位置にあるとき、これらのセンサ(あるいは上述したような慣性測定ユニット全体)を地表に対してほぼ水平になるように後部エンクロージャの内部で配向することができる。
【0041】
図8は、無線リンク818がインタフェース810の内部にあり、かつ、組み合わされたボタンセンサとモーションセンサ/方向センサデータとをインタフェースの外部にある無線リンク819へ無線で送信することを示す。次いで、この外部無線リンクは、このリンクが受信したデータを受信者デバイス820へ転送する。当業者であれば良く知っているように、内部および外部無線リンクとして機能するために任意の数の無線システムを適合できるようになっている。この実施形態の場合、一例として、Digi International of Minnetonka社,MN(米国)から入手可能なXbeeモジュールの利用が挙げられる。追加の標準構成要素が適切な形式でこれらのモジュール間でのデータの往来を行うように要求される。また、組み立てられた変換デバイスが市販されていて、例えば、SparkFun Electronics of Boulder,CO社(米国)あるいはAdafruit Industries of New York社、NY(米国)によって変換デバイスが供給されている。ここで留意すべき点として、無線リンク構成要素818および819は受信者デバイスからインタフェースへデータをさらに転送できるように為し得るという点がある。これによって、例えばプログラム変更コマンドをボタンセンサリレー812および/またはプロセッサ817へ送信することが可能となる。当業者であれば理解できるように、このような構成はボタンセンサリレーおよび/またはプロセッサを用いて内部無線リンクの双方向通信を管理する追加の電子機器を必要とする。
【0042】
任意の数のデバイスがインタフェースからのデータを利用することが可能であり、かつ、この実施形態では、図8に示す受信者デバイス820はコンピュータまたはモバイル・コンピューティングデバイスである。この実施形態では、受信者デバイスは、外部無線リンク819からケーブル接続を介してインタフェースのデータを受信できると共に、音楽ソフトウェアを実行中である。インタフェースから受信したデータを使用して、このソフトウェアの態様を制御することができる。ソフトウェアベースの音楽サウンドの再生は単に1例にすぎない。ソフトウェアは、市場に出回っている多くの市販の音楽ソフトウェアプログラムのうちの1つであってもよい。あるいは、ソフトウェアは、インタフェースと共に用いる専用のソフトウェアとして提供されるプログラムであってもよい。外部無線リンクは、インタフェースのデータをコンピュータにより使用可能にするために必要であれば、どのような変換であれ実行するようになっている。例えば、外部無線リンクは、標準的手段によって受信者デバイスのソフトウェアにより、その後使用され得るようなMIDIデータにインタフェースのデータを変換するUSB MIDIデバイスとして機能することも可能である。上記とは別に、外部無線リンクは別のフォーマットで(例えばシリアルポートとしてUSB接続を用いて)データを提供することも可能である。さらに、受信者デバイス上に追加のプログラムをインストールして、このデータにアクセスすると共に、受信者デバイス上で他のプログラムが利用できるように上記データを提供することも可能である。
【0043】
また、ユーザは、左利き用バージョンのインタフェース(実質的には右利き用バージョンの鏡像)を使用するオプションと、右利き用バージョンならびに左利き用バージョンを同時に使用するオプションとを有する。この後者の例では、2つのインタフェースから得られたデータを同じ外部無線リンク819を介して受信者デバイス820へ伝えることも可能である(図8を参照のこと)。左利き用バージョンから到来する追加のインタフェースデータを別にすれば、2つのインタフェースの作動の比較(ピッチ角の違いや、作動されるボタンの違いなど)を通じて追加タイプのデータを生成することも可能である。このシナリオでは、このような比較データの処理用アルゴリズムを受信者デバイス上で実行中のプログラム内に含めることが可能である。あるいは、外部無線リンク上に含まれる追加の処理用構成要素が上記処理用アルゴリズムを含むようにすることが可能である。
【0044】
また、図8には、インタフェースの電子機器が必要とするすべての電力を供給するバッテリ821も示されている。この電力の供給は電源スイッチ121によりゲートされる(図1を参照のこと)。バッテリの電圧に応じて、インタフェースの構成要素に対して適当な電圧を供給するための標準的電圧変換手段が必要となる場合がある。種々のバッテリタイプを使用できるが、この実施形態の場合、再充電が可能なリチウムポリマ形式のバッテリであることが望ましい。リチウムポリマ形式のバッテリは、外部電源ソケット314と接続される標準規格の充電用デバイスによって(従来方式の給電手段を用いて)充電することが可能である(図3を参照のこと)。上記とは別に、後部エンクロージャ内において、かつ、後部エンクロージャの中から単複のバッテリを交換する標準規格の好便な手段を用いてバッテリ交換を行うことが可能なバッテリシステムの利用も可能である。
【0045】
図8に示されている最終構成要素は、インタフェースの代替実施形態の一部として一体化され得る外部ポート822である。外部データケーブルと接続することになるこのポートは、プロセッサ817および/またはボタンセンサリレー812とのデータ通信のために、ならびに、プロセッサ817および/またはボタンセンサリレー812のソフトウェアを更新するために使用することができる。USB信号をシリアルポート信号に変換する構成要素(Future Technology Devices International of Glasgow社,(英国)から入手可能な構成要素など)を含む任意の数のデバイスによってこの機能の実現が可能となる。図2に示されているように、ミニ−B USBコネクタ210はポート822用コネクタとして機能することが可能である。ポート822と接続されているケーブルは、受信者デバイス820への通信リンクとして機能すると共に、無線構成要素818および819のタスクを実行することができる。このケーブルは、インタフェースの電子機器へ電力を供給するためにおよび/または電子機器のバッテリを充電するために、受信者デバイスからインタフェースへの電力供給を行うこともできる。そのため、オンボードバッテリおよび/または無線リンクシステムを必要としないケーブル依存型インタフェースを含む代替実施形態が可能となる。
【0046】
ボタンセンサリレー812(図8を参照のこと)上で実行できるプログラムのブロック図が図9に示されている。このプログラムの目的は、複数のボタンセンサ入力部からリレーへの信号を照合し、かつ、単一のデータチャネルを介してボタンセンサ状態の変化をプロセッサ817へ報告することである。このプログラムは、個々のボタンセンサの状態についての問い合わせを行うために要求されるすべての反復を連続して周期的に繰り返すものである(但し、X=1,2,...Xtotal、かつ、Xtotalはボタンセンサの総数である)。ボタンセンサXの状態についての問い合わせを行った(910)後、この状態は、Xの最初から最後までの前回のサイクルからメモリに記憶されているボタンセンサXの前回の状態と比較される(911)。状態が同じであれば、プログラムはX+1まで反復し、ステップ910へ戻る。問い合わせされたXの状態が記憶済みのXの状態にマッチしなければ、問い合わせされた状態は記憶済みのXの状態になる(912)。次いで、Xの状態を表す値または値のセットが作成され、この値または値のセットはこの状態をボタンセンサXに関連づけられたものとして特定する(913)。この特定は、2つの可能な一意の値のうちの1つの値で個々のボタンセンサを表すことを含む種々の方法で実現可能である。例えば、ボタン1は、作動されていない場合には値0で表され、作動されている場合には値15で表されることも可能である。これに対して、ボタン2は、作動されていない場合には値1で表され、作動している場合には値16で表されることも可能である、等々。次いで、次のセクションで詳細に説明するフィルタリングステップ914が行われる。次いで、フィルタのアクションに応じて、ボタンXの新たなタグ付き状態値が次の構成要素へ伝えられる(915)。この構成要素は本実施形態ではプロセッサ817である(図8を参照のこと)。次いで、プログラムはX+1まで反復し、ステップ910へ戻る。
【0047】
同じトリプレットに属する遠位指ボタン410と近位指ボタン416(図4を参照のこと)の形態および位置決めによって、これらの指ボタンの割当てられた指により、個々に行われるか、相互に組み合わされて行われるかのいずれかによる上記指ボタンの作動が可能となる。これは同じトリプレットに属する遠位指ボタンおよび中位指ボタン411についても同じである。図9に示されている作動シーケンスフィルタ914の目的は、特定の一連のボタンの作動を通じての相互に組み合わせにおいてトリプレットの中位および近位の指ボタンに割り当てられた出力イベントの利用を可能にすることである。そうすることによって、フィンガートリプレットの3個のボタン間での同時On信号のあらゆる可能な組み合わせが可能となる。どのようにしてこの機能を利用できるかについての詳細な説明は処理セクションで行う。サムトリプレットから発生する信号に対して作動シーケンスフィルタを適用することも可能ではあるが、すべての親指ボタンの組み合わせを手動により実現できるので、上記作動シーケンスフィルタが適用される必要性は少ない。
【0048】
上記作動シーケンスフィルタサブルーチンは様々な手段を介して実現することも可能であり、この実施形態のための1つの方法が図10に示されている。サブルーチンは、新たなボタン状態が受信されると開始され、このサブルーチンは新たな状態が遠位指ボタンのうちのいずれかに属しているかどうかのチェックを行う(1010)。属していなければ、フィルタリングを全く行うことなく、新規データがサブルーチンの中から図9に示されているプログラム(915)の次の段階へ渡される(1011)。遠位ボタンによって新たな状態がトリガされた場合、サブルーチンは、同じトリプレットに属している近位ボタンの記憶済みの状態が作動されている状態と同じかどうかのチェックを行う(1012)。同じであれば、フィルタは近位ボタンが非作動状態に変わった旨のいずれの報告も「保留する」が、当該トリプレットの遠位ボタンが非作動状態になったとき、フィルタはこのような「保留された」報告のうち最新の報告を伝える(1013)。一方、遠位ボタンの作動状態はサブルーチン(1011)の中から渡される。近位ボタンが作動されていなければ、サブルーチンは、同じトリプレットに属している中位ボタンの記憶済みの状態が作動されている状態と同じかどうかのチェックを行う(1014)。同じであれば、フィルタは中位ボタンが非作動状態に変わった旨のいずれの報告も保留するが、当該トリプレットの遠位ボタンが非作動状態になったとき、フィルタはこのような「保留された」報告のうち最新の報告を通過させる(1015)。さらに、作動中の遠位ボタンの上記報告は伝えられず、かつ、遠位および中位のボタンが作動されなくなるまで、このボタンの作動報告はいずれも伝えられない(1015)。遠位およびの中位のボタンが非作動状態になった後、遠位ボタンの作動の後続する複数の報告がフィルタを通じて可能となる。ステップ1014において答えがノーであれば、フィルタリングを全く行うことなく、遠位ボタンの作動報告がサブルーチンの中から図9に示されているプログラム(915)の次の段階へ渡される(1011)。このサブルーチンの使用をオプションにすることが可能であり、サブルーチンの起動はインタフェース上で、あるいは、無線リンクシステムを介して受信者デバイス820から送信されるコマンドを介する物理制御を用いて制御される(図8を参照のこと)。
【0049】
この実施形態では、加速度計、ジャイロスコープ、磁気探知器のデータを用いてピッチ、ロール、ヨー軸におけるインタフェースの方向が推定される。このタスクはプロセッサ817上で実行中のソフトウェアにより実行することができる(図8を参照のこと)。当業者であれば良く理解しているように、これらの異なるセンサタイプの出力を組み合わせて、(ピッチ、ロールならびにヨーの)方向推定値を生成するための種々の手法が存在する。例えば、この実施形態では、図11に記載の構造のようなプログラム構造を有する「方向余弦行列」を用いる技法を使用することができる。図11に記載のこの種のソフトウェアは当業者によって良く理解されているものであり、本実施形態に関して説明されている内容の基礎を形成するプログラムは、http://code.google.eom/p/sf9domahrs/downloads listにおいて見出すことができる。
【0050】
図11に示されているように、このプログラムにおける最初のステップは、加速度計、ジャイロスコープならびに磁気探知器のデータを関連するセンサから読み出すことである(1110)。次いで、(前回の反復により提供された、あるいは、プログラムの開始時に初期化された)ピッチおよびロールに関する最新の推定値を用いて、地表に対して直交していない磁気探知器の読取り値に対する影響を補正し、次いで、地球の磁場を基準として磁針向首方向を計算する(1111)。次に、角速度(すなわちジャイロスコープセンサ)値を用いて、方向余弦行列(DCM)値を更新する(1112)。次に、訂正を行って、インタフェースに関する推定基準軸(x、y、z)が相互に直交状態のままになるように保証し、次いで、加速度計および磁気探知器のデータを用いて、角速度ベースの方向余弦行列値内の、時間の経過と共に生じた誤差を訂正する(1113)。次に、方向余弦行列値をピッチ、ロールおよびヨーの推定値に変換する(1114)。次に、ボタンリレー812(図8を参照のこと)により提供されるボタン状態を収集する(1115)。次いで、ボタンおよび動き/方向データを内部無線リンク818(図8を参照のこと)へ出力する(1116)。種々の動き/方向データの組み合わせを内部無線リンクへ出力することも可能である。例えば、この実施形態では、上記組み合わせには、ボタン状態値、ピッチ、ロールおよびヨー方向値、ならびに、すべての3本の測定軸内の回転(ジャイロスコープ)の角速度および加速度(加速度計)値も含まれる。
処理
【0051】
図1、図2および図3に示されているように、15個のタッチ起動ボタンがインタフェース上に配置され、かつ、3個のボタンが個々のデジット(指および親指)に割り当てられている。「トリプレット」と呼ばれる3個のボタンから成るこれらグループの各々は、1本のデジットの主要屈曲面に沿って人間工学的に配置されている。インタフェースの通常動作の一部として、個々のデジットは1つ分のボタントリプレットと相互作用する必要があるのみである。
【0052】
図1および図2で明らかなように、ユーザの右手はパームエンクロージャ115とハンドクラスプ116との間に置かれ、かつ、腕および手が空間内で動き回るにもかかわらず、ハンドストラップ117は、インタフェースをしっかりとしかし快適に手に装着させた状態を保つ位置でハンドクラスプの上面に装着される。掌は、ユーザの小指、薬指、中指および人差し指が、それぞれ、フィンガートリプレット110、111、112および113上のボタンに快適にアクセスできるように配置される。ユーザの親指は、親指がサムトリプレット118上のボタンに快適にアクセスできるように配置される。ユーザの手にぴったりフィットさせるために、ハンドクラスプ・スペーサ119を別のサイズのスペーサに交換してもよいし、あるいはスペーサ119を完全に取り除いてもよい。
【0053】
図4からわかるように、遠位指ボタン410および中位指ボタン411は、指先セグメント(遠位指節骨)との接触を通じて別々にまたは同時に作動できるように配置される。遠位指ボタンの作動は、主として指の中央指関節(近位指節間関節)および/または基部指関節(中手指節関節)における屈曲を通じて実現される。中位指ボタン411の作動は、主として頂部指関節(遠位指節間関節)および中央指関節における屈曲を介した、指の曲げを通じて起こる。近位指ボタン416は、指の中央部および/または基部(中位セグメントおよび近位指骨)により作動されるように配置される。近位指ボタンの作動は主として基部指関節における屈曲を介して起こる。この実施形態では、すべての4本の指に対応する個々のフィンガートリプレットの操作は大体同一である。
【0054】
図3に示されているように、遠位親指ボタン310および中位親指ボタン311は親指の指先セグメント(遠位指節骨)の動きによって別々にまたは同時に起動されるように配置される。遠位親指ボタンの作動は主として上部指関節(遠位指節間関節)における屈曲を通じて実現される。中位親指ボタンの作動は手の方への親指の動き(内転)により作動される。この作動は、主として基部指関節(中手指節関節)および/または親指を手と接続する関節(手根中手関節)における屈曲によって行われる。近位親指ボタン312は、親指の基部セグメント(近位指骨)および/または手掌セグメント(中手骨)により起動されるように配置される。近位親指ボタンの作動は主として基部指関節および/または親指を手と接続する関節における屈曲を介して行われる。
【0055】
ユーザがインタフェース上で快適かつ効果的にすべてのトリプレットボタンを操作できるようにするために、これらのボタンの位置および方向を調整するための種々のメカニズムが存在している。手の幅の範囲を適合させるために、トリプレットトラック上における個々のフィンガートリプレットの位置の調整を行うことができる。図6に示されているように、この調整は、座金419およびコネクタクランプ418の圧力であって、チャネルフィン部品610に対抗する圧力が、変更すべきトラック114の長さに沿ったトリプレット・トラックコネクタ421(およびトリプレットの残り部分)の位置に対して十分に低下するまでコネクタボルト420のネジを回して外すことにより実現される。また、このようにしてコネクタボルトを緩めることによって、調整すべきトリプレット・トラックコネクタの回転もトリプレットトラックを基準として可能になる。トラックコネクタの所望の位置および回転が実現されると、コネクタボルトのネジを再び回すことによってトラックコネクタの再固定が可能となる。
【0056】
図5に示されているように、ユーザが近位シャフトボルト511および/または遠位シャフトボルト515のネジを回して外すとき、フィンガートリプレットのボタンの位置および方向の別の調整が可能になる。近位シャフトボルト511のネジを回して外すことによって、近位シャフト417に対抗するゴムパッドにかかる圧力が緩和され、次いで、近位シャフトはトリプレット・トラックコネクタ421の管状断面の内部で前方および後方にスライドすることができる。また、近位シャフトの隣接するフィンガートリプレットとぶつからない限り、トリプレット・トラックコネクタ内部での近位シャフトの回転も生じ得る。遠位シャフトボルト515のネジを回して外すことによって、遠位エンクロージャ413は遠位シャフト414を上下にスライドすることができる。また、遠位エンクロージャの回転も生じ得るが、遠位シャフト配線用ポータル520における配線の存在によってこの回転範囲は限定される。元の位置の中へボルト511および515をねじで留めることによって、トリプレットセクションはこのトリプレットセクションの新たな調整位置に固定される。近位指ボタンカバー516により図5に示されているように、ユーザにとって利用可能な追加の調整形態として、ボタンカバーの使用を通じて行われる、フィンガートリプレットおよびサムトリプレットの作動用デジットからこれらトリプレット近位ボタンの接触面までの距離を変動させる形態がある。
【0057】
前述したように、同じトリプレットに属する遠位および中位のボタンの形態および位置決めによって、1本の指により個々に行われるか、相互に組み合わされて行われるかのいずれかによってこれらのボタンの作動が可能となる。楽音をトリガするためにボタンが用いられるインタフェースの音楽用アプリケーションにおいて、このような組み合わせは特定の和音の発生を可能にし、これによって、別々のトリプレットに属するボタンの組み合わせによる範囲以上に生成され得る和音の範囲が拡張されることになる。フィンガートリプレットの場合(図4を参照のこと)、上記が生じる理由として、中位指ボタン411の接触面がカーブし、かつ、(その頂部と下端部の間で測定したとき)相対的に細長くなっていると共に、遠位指ボタン410の頂部にこの接触面が取り付けられるという点がある。この結果、ユーザは中位指ボタンの作動を維持しながら、(遠位および/または中位の指ボタンを)押下し、かつ遠位指ボタンを作動することができる。この逆もまた同様であり、ユーザは遠位指ボタンの作動を維持しながら、自分の指を後へ引き、中位指ボタンを作動することができる。
【0058】
また、1本の指により個々に行われるか、相互に組み合わされて行われるかのいずれかによって、同じトリプレットに属する遠位および近位の指ボタンを作動することも可能である。遠位ボタンの長さは、ユーザが、部分的に曲げた指またはいっぱいに伸ばした指のいずれかの指で遠位ボタンを作動できることを意味する。後者の場合、指の遠位セグメント(遠位指節骨)の下部パッドはボタンの前端において接触する。この姿勢によって、ユーザが近位ボタンを作動しながら遠位ボタンの作動を維持することがいっそう容易になる。そして、この逆もまた同様である。
【0059】
中位および近位の指ボタンの出力を一緒に利用できるようにするために、アルゴリズムによってリアルタイムで解釈される個々のトリプレットの一連のボタン起動オプションがユーザに与えられ、このボタン起動オプションによって、中位および近位のボタンの出力イベントの組み合わせが行われることが選択的に可能となる。この作動シーケンスフィルタサブルーチン914(図9および図10を参照のこと)の第1の構成要素において、遠位ボタンを作動しながら近位ボタンの作動を維持することによって、近位ボタンが解除されているにもかかわらず、近位ボタンの出力信号の維持が可能となる(図10のステップ1010、1012、1013)。遠位ボタンが作動状態のままになっている間、遠位および近位のボタンの出力信号は同時に維持される。その時ユーザは遠位ボタンを作動状態に保持しながら、中位ボタンを作動することができ、これによって、遠位、中位および近位のボタンの出力信号を同時に維持させることになる。このサブルーチンの第2の構成要素において、中位ボタンの作動後に遠位ボタンが作動された場合、(中位ボタンの作動が維持されている間)、遠位ボタンの出力信号は応答をトリガしなくなる(ステップ1010、1014、および1015)。このとき、遠位ボタンの作動を保持しながら中位ボタンが解除された場合にも、中位ボタンの出力信号は中断無く持続する。次に、ユーザは遠位ボタンを作動状態に保持しながら近位ボタンを作動することが可能となり、これによって、中位および近位のボタンの出力信号を同時に維持することが可能となる。
【0060】
この実施形態では、フィンガートリプレットならびにサムトリプレットの近位、中位、および遠位のボタンは、受信者デバイス820(図8を参照のこと)によって楽音のようなサウンドに変換され得る個別のオン/オフ信号を提供する主要機能を有している。例えば、15個のボタンの各々は、半音階の12個のトーンのうちの1つのトーンに割り当てられると共に、選択したオクターブ以上または以下の音に残り3個のボタンを割り当てることが可能となる。上記とは別に、2オクターブの全音階を15個のボタンに割り当てることも可能である。このような構成例を図12に示す。上の表は、半音階配列の例を示す表である。遠位親指ボタン上のC音から始まり、これらの音は、最初遠位ボタンを通して昇順に並び、次いで、近位ボタンを通して昇順に並び、次いで、中位ボタンを通して昇順に並び、最終的に小指トリプレットの中位ボタン上の(1オクターブ高い)D音に達する。下の表は全音階配列(ハ長調)の一例を示す表である:この場合も遠位親指ボタン上のC音から始まり、これらの音は、遠位ボタンを通して最初昇順に並び、次いで、近位ボタンを通して昇順に並び、次いで、中位ボタンを通して昇順に並び、最終的に小指トリプレットの中位ボタン上の(2オクターブ上の)C音に達する。使用される音の割当てにかかわりなく、インタフェースボタンの位置決めによってユーザは旋律的反復進行(melodic sequences)のみならず、当該複数の音の和音結合(harmonic combinations)を生成することも可能となる。
【0061】
インタフェースのこの実施形態は、インタフェースの角速度、方向(ピッチ、ロール、およびヨー)ならびに加速度データの、受信者デバイス820(図8を参照のこと)による利用方法(受信者デバイスによるインタフェースボタンからの入力処理を変調するためのこれらのデータの使用を含む)に関する多様なオプションをユーザに提供することも可能である。1つのオプションとして、例えば、受信者デバイスが、(チェロやフルートなどの)持続音(sustained−tone)楽器のトーンに似たトーンの生成によってボタン入力に応答するオプションがあり、ヨー軸および/またはピッチ軸の周りを回るインタフェースの角速度を用いて、これらのトーンに対する弦楽器の運弓(bowing)の効果や管楽器の吹奏強度の効果のエミュレートが行われる。本例では、ユーザは、主として肩の関節における回転およびひじにおける曲げによって(ニュートラルな作動位置から)左右にインタフェースを揺らすことによりヨー平面における角回転速度の変化を生成することも可能である。もしユーザがインタフェースの右利きならびに左利き用バージョンの同時使用を望む場合には、2つのインタフェースの比較データを利用するための多様なオプションをユーザに与えることも可能である。例えば、一方のインタフェース上でのボタンの作動によって音の始動周波数の選択が可能であると共に、他方のインタフェース上でのボタンの作動によって終了周波数の選択が可能となり、さらに、2つのインタフェース間の(例えばピッチ軸における)方向差を減らすことによって始動周波数から終了周波数へ周波数をスライドさせることも可能となる。
【0062】
また、ユーザによる制御の別例では、この実施形態は、インタフェースの方向に基づくオクターブでのピッチ制御オプションをユーザに提供することも可能である。このオプションはボタンによりトリガされるトーンのオクターブ値を制御することになる。このオプションでは、ユーザは、複数のゾーンに分割すべき配向軸(例えばピッチ軸など)のうちの1つの配向軸を選択することができる。ピッチ軸の周りの(下部、中央部、上部などの)3つの角度ゾーンの全体が選ばれた場合、これらのゾーンに対応するインタフェースのピッチが、ボタンによりトリガされた音のオクターブ値を決定することになる。トリガされた個々の音に対応して、3つの近接するオクターブの3つトーンが同時に生成されるが、これらのトーンのそれぞれの音量は、トリガ時点における下部、中央部、および上部ゾーンに対応する上記インタフェースのピッチ角により決定される。例えば、インタフェースが下部ゾーン内にある間、音Cに対応するボタンを作動することによって、音C3、C4、C5をトリガするように設定され得るが、C3のみが可聴音量を有することになる。クロスフェードされる音量をこれらのゾーンの境界に帰するオプションをユーザに与えることが可能であり、その結果、下部および中部ゾーンの境界近くのCボタンの作動によってすべての3つのオクターブのCのトーンが再びトリガされることになるが、この場合、C3およびC4のトーンの双方が可聴音量を有することになる。また、動的モードまたは固定モードでこのオクターブ制御を利用するオプションをユーザに与えることも可能である。動的モードでは、下部ゾーンから中央部ゾーンへインタフェースを動かしながらCボタンの起動を維持することによって、C3およびC4のトーンの音量が動的にクロスフェードされ、その結果、前者の音量が弱められ、後者の音量が強められる。固定モードでは、トーンは当該トーンがトリガされた時点に割り当てられたゾーンベースの音量レベルを保持する。そのため、中央部ゾーンへのインタフェースの動きが後続する下部ゾーンにおいてCボタンを作動することによって、この動きの間ずっとC3のトーンの音量が同じレベルで維持される結果となる。プロセッサ817(図8を参照のこと)や、外部無線リンク819に追加される処理用構成要素あるいは受信者デバイス820上にインストールされた追加プログラムを含む種々の構成要素によって、上述のピッチ制御の実行に必要な処理を実行することも可能である。
【0063】
代替実施形態
上記記載の実施形態に対する複数の変更が可能である。インタフェースの代替利用において、受信者デバイス820(図8を参照のこと)は、(例えばマイクロソフトのXボックス、ソニーのプレーステーション、任天堂のWii、パーソナルコンピュータ/モバイル・コンピューティングデバイスなどの)ビデオゲームを行うことができるデバイスであってもよく、ここで、ユーザはインタフェースの動作を介してゲームに参加することになる。上記とは別に、受信者デバイス820は、(例えばパーソナルコンピュータやモバイル・コンピューティングデバイスなどの)データ入力デバイスとして機能することも可能であり、このデバイスにおいてインタフェースが生成できる異なる個々の出力信号の範囲は(例えば文字、数字などの)固有のデータセットに対応づけられる。この実施形態では、インタフェースの方向および/または動きに応じて(第1の実施形態で説明したオクターブのピッチ制御オプションと同様の方法で)ボタンによりトリガされたイベントを実行することによって、インタフェースが生成できる異なる出力信号の範囲を個々のボタンの作動により実現し得る範囲以上に拡大することも可能である。別の拡大手段として、ボタンの作動の特定の組み合わせを通じて追加の特定イベントのトリガを行う手段がある。(MIDIメッセージなどの)外部コマンドに応答して音楽サウンドを生成するように設計された装置が受信者デバイスとして機能することも可能であり、そのようなデバイスのほんの一例としてハードウェアのシンセサイザがある。
【0064】
インタフェースの代替実施形態が、異なる数のフィンガートリプレットボタンおよび/または上記ボタンの異なる構成を含むようにすることも可能である。例えば、実施形態が、近位ボタン416を用いずに遠位ボタン410(図4を参照のこと)および中位ボタン411のみを含むようにすることも可能である。あるいは、実施形態が中位ボタンを用いずに遠位および近位のボタンのみを含むようにすることも可能である。上記とは別に、1デジット当たり3以上のボタンをインタフェース上に設けることも可能である。このような追加ボタンを配置して、デジットまたはデジットの拡張部の横方向への動きを通じて追加ボタンを作動させることも可能である。サムトリプレット118(図1を参照のこと)を設けずに別の代替実施形態を設計することも可能であり、さらに、親指を対抗させて把持したり、押しつけたりするのに適切な構造を介して手との接触を保持するタスクをインタフェースが親指に与えるようにすることも可能である。
【0065】
代替実施形態において、さらに詳細な測定能力を備えたボタンセンサの利用も可能である。例えば、マイクロスイッチの代わりに、多くのMIDIピアノのキーボード上に見られるキーの場合と同様、速度および/または残触覚感度を特徴づけるセンサをフィンガーおよびサムのトリプレットボタンに装備することも可能である。当業者によって理解される標準規格の電気機械センサ設計を上記目的のために使用することも可能であると共に、上記追加データを適合させるためのデータ処理に対する変更ならびにインタフェースの通信装置に対する変更を行うことも可能である。
【0066】
異なる形の調整を代替実施形態の中へ組み込むことも可能である。例えば、調整可能な構成要素をサムトリプレット118(図3を参照)内へ組み込むことも可能であり、これにより、近位ボタン312と、遠位および中位のボタン(310および311)を含むセクションとの間の距離の変更も可能となる。上記とは別に、パームエンクロージャに対するサムトリプレット全体の位置を変更するメカニズムを備えるようにすることも可能であり、このメカニズムによってサムトリプレットの前後への動きおよび/またはピッチ平面におけるサムトリプレットの回転が可能になる。第1の実施形態で説明した調整範囲の増減も可能であり、あるいは、種々のタイプの調整を完全に排除することも可能である。さらに、様々なサイズの手にフィットさせるために複数の実施形態を様々なサイズで実現することも可能である。別の代替実施形態においてモジュラ設計の利用も可能であり、このモジュラ設計では、コンテンツが含まれている後部エンクロージャ120(図1を参照のこと)はインタフェースの残り部分から着脱可能なっている。着脱可能な後部エンクロージャは、様々なサイズの手にフィットするように設計されたインタフェースの前部セクション(パームエンクロージャ115、フィンガートリプレット/サムトリプレットなど)の範囲と互換性を有するようになる。本例では後部エンクロージャは、これらの前部セクションとの、安全性が保証された構造的および電子的接続を形成する標準的手段も備えている。フィンガートリプレットおよびサムトリプレット(110、111、112、113、118)に関しては、フィンガートリプレットに関して第1の実施形態で説明した調整可能性メカニズムの有無に関わらず、これらのトリプレットを異なるサイズで作成することも可能である。最適の装着感を個々のユーザに与えるために、これらの異なるサイズのトリプレットは、個々のトリプレットのボタンセンサ配線を接続する標準的手段と互いに交換できるようなものであってもよいし、インタフェース内においておよびインタフェースの中からこの標準的手段と交換できるようなものであってもよい。例えば、トリプレットトラック114とのフィンガートリプレットの接続部においてフィンガートリプレットの出し入れによる交換を行うことも可能である。この交換は広い範囲の手のサイズの適合だけでなく、個々の手の指のサイズの差を適合させる際にも助けとなる。
【0067】
インタフェースの電子機器に関して種々の代替実施形態が可能である。例えば、プロセッサ817(図8を参照のこと)および/またはボタンセンサリレー812により実行されるデータ処理機能は、外部無線リンク819に追加されるプロセッサ構成要素および/または受信者デバイス820上にインストールされる追加のソフトウェアにより実行することも可能である(本例では当該デバイスは或るタイプのコンピュータである)。この実施形態では、インタフェースから送信されたデータの処理量が少ない状態になる可能性があることが考えられるが、この実施形態は後続ポイントにおいてすべての必要な処理がデータチェーン内で行われることを可能にするものである。この実施形態は、インタフェースの電力消費を低減すると利点をもつと共に、ユーザにとってさらに使い勝手のよいデータ処理アルゴリズムへの変更をもたらし得るものである。
【0068】
別の代替実施形態では、後部エンクロージャ120(図1を参照のこと)内に収納された電子機器をパームエンクロージャ115に対して再配置し、後部エンクロージャを完全に排除することも可能である。この実施形態では、インタフェース部分がユーザの手の掌の範囲を超えて拡大することはない。この実施形態では、後部エンクロージャのカウンタウエイト効果が失われることになるが、この実施形態は、後部エンクロージャの物理的存在が望ましくないアプリケーションにとっては有用なものとなり得る。また、実施形態の電子機器の変動に関連するオプションには、電子機器のモーションセンサ/方向センサ間の測定軸の数の減少も含まれる。例えば、実施形態が加速度センサ814および角速度センサ815用の軸をロール平面において欠いている場合があり得る。あるいは、実施形態が磁場センサ816を完全に欠いている場合もあり得る、などである。上記とは別に、GPS受信機や、より高分解能の測位信号用受信機などのインタフェースに追加のセンサを追加することも可能である。これらの受信機の一例として、Locata Corporation Pty Ltd of Canberra,ACT社,(オーストラリア)によって開発された受信機がある。
【0069】
代替実施形態に関する別のオプションには、インタフェース自体の内部に在るオーディオ合成構成要素/生成構成要素が含まれることになる。この実施形態では、インタフェースは他のいずれのデバイスからも補助を受けることなく、耳に聞こえる音楽サウンドの生成を行うことが可能である。別の可能性として、触覚に基づくフィードバックをユーザに提供するシステムをインタフェース内に備える可能性もあり得る。この実施形態では、1またはそれ以上の振動モータをパームエンクロージャ115(図1を参照のこと)内に備えることも可能であり、かつ、これらの振動モータの起動を通じて情報をユーザに提供することも可能である。インタフェースの処理用構成要素(例えばプロセッサ817など、図8を参照のこと)、あるいは、別のソース(例えば受信者デバイス820や、外部無線リンク819に追加される処理用構成要素、など)によってインタフェース上で上記情報を生成することも可能である。
解釈
【0070】
本明細書を通じて言及されている「一実施形態」または「ある実施形態」とは、当該実施形態に関連して述べた特定の機能、構造あるいは特徴が本発明の少なくとも一実施形態に含まれていることを意味している。したがって、本明細書を通じて種々の場所で出現する「一実施形態において」あるいは「ある実施形態において」という句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を言及している訳ではないが、そうであってもよい。さらに、特定の機能、構造または特徴は、当業者であれば本開示から明らかであるように、1またはそれ以上の実施形態において、任意の適当な方法で組み合わせるようにしてもよい。
【0071】
同様に、本発明の実施例の上記記載においては、開示の合理化と、1またはそれ以上の様々な発明の態様の理解の助けとなるように、本発明の様々な機能が時として単一の実施形態、図面またはそれらの説明中に一体にグループ化されていることに留意されたい。しかしながら、開示の方法は、請求された発明が各請求項で明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図があることを反映していると解釈すべきではない。むしろ、添付の請求の範囲が反映しているように、独創的な側面は、開示された単一の上記実施形態のすべての特徴よりも少ないところにある。そのため、発明を実施するための形態に続く請求の範囲は、発明を実施するための形態内に明らかに組み込まれており、各請求項は、本発明の個別の実施形態として自立したものとなっている。
【0072】
さらに、本明細書に記載されている幾つかの実施形態は、その他の実施形態に含まれる幾らかの特徴を含むが、その他の特徴は含まないものであり、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあるものであり、当業者であれば理解されるように、異なる実施形態を形成する。例えば、請求の範囲において、任意の請求された実施形態は任意の組み合わせで用いることができる。
【0073】
さらに、幾つかの実施形態は、コンピュータシステムのプロセッサにより、またはその機能を実行するその他の手段により実行できる、方法またはその方法の要素の組み合わせとして本明細書に記載されている。そのため、そのような方法または方法の要素を実行するための必要な命令を有するプロセッサが、上記方法または方法の要素を実行する手段を形成する。さらに、本明細書に記載された装置の実施形態の構成要素は、本発明を実行するために構成要素によって実行される機能を実行する手段の一例である。
【0074】
本明細書で与えられる説明において、多数の細部詳細が示されている。しかしながら、本発明の実施形態はそれら細部詳細無しに実施するようにしてもよい。その他の例においては、本説明の理解を損なうことのないように、周知の方法、構造および技術については詳細には示していない。
【0075】
本願明細書において用いられるように、別に指定されない限り、共通の物を記述するための、順序を示す形容詞「第1の」、「第2の」、「第3の」等の使用は、同様の物の異なる例が言及されていることを単に示すだけのものであり、そのように記述されている物が、時間的に、空間的に、順位において、または任意の他の様式のいずれかによって、所与の順序になっていなければならないことを示唆するように意図されるものではない。
【0076】
請求の範囲および本明細書における説明において、“comprising”、“comprised of”または“which comprises”(備える、有する、含む)という用語の何れか1つは、その後に続く少なくとも構成要素/機能を含むがその他を排除しないという意味のオープンタームである。そのため、“comprising”という用語が請求の範囲で使用される場合、その後に列挙される、手段、構成要素またはステップに限定されるものとして解釈すべきではない。例えば、“a device comprising A and B”という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスであると限定すべきではない。本明細書に記載されているように、“including”または“which includes”または“that includes”という用語の何れか1つも、その用語に続く少なくとも構成要素/機能を含むがその他を排除しないという意味のオープンタームである。そのため、“including”は“comprising”と同義語である。
【0077】
同様に、“coupled”(接続または結合される)は、請求の範囲において使用されたときに、直接的な接続または結合のみに限定して解釈すべきではないことに留意されたい。用語“coupled”および“connected”(接続または連結される)は、それらの派生語とともに使用することもできる。当然のことながら、それら用語はお互いの同義語として意図されたものではない。すなわち、「デバイスBと接続されたデバイスA」という表現の範囲は、デバイスAの出力がデバイスBの入力に直接接続されているデバイスまたはシステムに限定すべきではない。それは、Aの出力とBの入力の間のパスが存在し、そのパスを、その他のデバイスまたは手段を含むパスとしてもよいことを意味している。“coupled”は、2またはそれ以上の要素が、直接的に、物理的または電気的接触状態にあるか、あるいは2またはそれ以上の要素が、互いに直接的な接触状態にはないが、協働状態にあるか、相互作用を行うことを意味している。
【0078】
以上、本発明の或る好ましい実施形態に特に言及して説明したが、本発明は、以下の請求の範囲の精神を逸脱することなく、本発明の変形および修正を行い得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動入力デバイスであって、
ユーザの複数の指によって起動される一連の起動ポイントと、
前記ユーザの手の現在の方向を測定するモーションセンサと、
前記複数の起動ポイントおよび前記モーションセンサと相互接続された処理手段であって、前記モーションセンサは、入力デバイスの一連の現在アクティブな起動ポイントと前記方向とを実質的に連続して出力するようになっている処理手段と、を備えることを特徴とする手動入力デバイス。
【請求項2】
指当たりの前記起動ポイントの数は少なくとも2ポイントであり、これらのポイントはユーザの指の異なる部分と互いに情報の遣り取りを行うために互いから隔置されていることを特徴とする請求項1に記載の手動入力デバイス。
【請求項3】
指当たりの起動ポイントの数は少なくとも3であることを特徴とする請求項1に記載の手動入力デバイス。
【請求項4】
ユーザの前記複数の指は親指を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項5】
前記モーションセンサは、前記デバイスの角回転速度を検知する方向センサを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項6】
前記モーションセンサは、前記デバイスのロール、ピッチおよびヨー指標を出力することを特徴とする請求項5に記載の手動入力デバイス。
【請求項7】
前記モーションセンサは、前記デバイスの任意の相対的動きを検知する位置センサを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、ユーザによる使用時に起動ポイントのカウンタバランスをとる重み付きの先細りにされた部分をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項9】
前記起動ポイントの相対位置は個々の指に対して調整可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項10】
前記起動ポイントはマイクロスイッチから形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項11】
前記処理手段は前記出力の無線送信用無線送信手段と相互接続されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項12】
前記起動ポイントの各々は、個々に作動されるか、他の起動ポイントと組み合わされて作動されるかのいずれかによって作動され得ることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項13】
前記起動ポイントは半音階の音に対応づけられることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項14】
前記デバイスの方向を示す1本の軸は、音のピッチのオクターブを出力するために対応づけられることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項15】
前記デバイスの方向を示す1本の軸は一連のゾーンに対応づけられることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の手動入力デバイス。
【請求項16】
少なくとも2個の手動入力デバイスであって、個々のデバイスは、
ユーザの複数の指によって起動される一連の起動ポイントと、
前記ユーザの手の現在の方向を測定するモーションセンサと、
前記入力デバイスの前記起動ポイントおよび方向のための前記モーションセンサと相互接続された処理手段と、を備え、
別の処理ユニットが、個々のデバイスの個々の処理手段と相互接続されると共に、前記複数の手動入力デバイス間の差動出力を計算するように設けられることを特徴とする手動入力デバイス。
【請求項17】
実質的に、添付図面を参照して以上本明細書に記載したようなものであることを特徴とする手動入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−508828(P2013−508828A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534499(P2012−534499)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001409
【国際公開番号】WO2011/047438
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512104535)
【Fターム(参考)】