説明

ヒートシンク取付構造

【課題】プリント配線板に設けられた半導体スイッチング素子及び通電パターンから発熱された熱をヒートシンクで放熱させるヒートシンク取付構造を提供する。
【解決手段】電子機器は、プリント配線板2の下面に半導体スイッチング素子51を搭載し、プリント配線板2から放熱を行うためのヒートシンクを上面に取り付けて構成されている。プリント配線板2には、通電パターン20a〜20cが形成されている。半導体スイッチング素子51は、通電パターン20a〜20cを通した電源供給のオン・オフを切り換えるスイッチング動作を行い、通電パターン20a〜20cを通した電源供給のオン・オフを切り換える。ヒートシンクは、プリント配線板2の上面の通電パターン20c及び半導体スイッチング素子51の配置位置と対向する箇所に、通電パターン20a,20bを本体で覆うようにしてプリント配線板2に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子を搭載したプリント配線板に対するヒートシンクの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチング素子を表面実装したプリント配線板では、半導体スイッチング素子が頻繁にスイッチングを行う断続運転時には、スイッチングに伴い半導体スイッチング素子での発熱量が増大する。これに対し、スイッチングの頻度が少ない連続駆動時には、断続駆動時ほど半導体スイッチング素子で発熱が生じないものの、スイッチングでオンされた負荷に対して電流が継続して供給されることから、半導体スイッチング素子の出力側に接続された配線パターン(以下、配線パターンの中で特に発熱量が多いものを通電パターンという)での発熱量が増大する。
【0003】
このため、半導体スイッチング素子を備えた従来の電子機器では、プリント配線板に固定されたヒートシンクに半導体スイッチング素子を取り付けたり、通電パターンの拡幅化や厚肉化を行い、半導体スイッチング素子や通電パターンで発生する熱を放熱している。また、特許文献1のプリント基板では、パワー半導体モジュールからの放熱を行うためのヒートシンクにパターン形成面に取り付けた放熱用端子を接触させ、通電パターンで発生した熱を放熱用端子を介してヒートシンクで放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−17624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のプリント配線板では、通電パターンを幅広や肉厚にし、又は、放熱用の端子を別途設けることで通電パターンからの放熱をしていたことから、プリント配線板を備えた電子機器がその分大型化し、製造コストも増大していた。
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決することのできるヒートシンク取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のヒートシンク取付構造は、一端側にて、通電パターン及び前記通電パターン上の半導体スイッチング素子が配置される基板と、前記基板の他端側にて、通電パターンの一部および前記半導体スイッチング素子に対向する位置に取り付けられるヒートシンクと、を備えたヒートシンク取付構造であって、前記半導体スイッチング素子の駆動時による前記通電パターンの発熱および前記半導体スイッチング素子の発熱を、前記ヒートシンクにより放熱することを特徴とする。
また、本発明は、前記半導体スイッチング素子の断続駆動時には、少なくとも前記半導体スイッチング素子の発熱を前記ヒートシンクにより放熱し、前記半導体スイッチング素子の連続駆動時には、その連続駆動に伴う前記通電パターンの発熱を、前記半導体スイッチング素子の発熱と共に前記ヒートシンクにより放熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体スイッチング素子及び通電パターンからプリント配線板に放熱された熱をヒートシンクで放熱できるため、半導体スイッチング素子の断続駆動時にも連続駆動時にも、ヒートシンクのみで効果的に半導体スイッチング素子及び通電パターンの温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態の電子機器を示す図であり、(a)は上面側からの斜視図,(b)は下面側からの斜視図,(c)はプリント配線板の拡大断面図である。
【図2】プリント配線板へのヒートシンクの取付構造を示す図であり、(a)は基板の上面側,(b)は下面側から見たヒートシンクの取付位置を示している。
【図3】プリント配線板からの放熱状態を示す図であり、(a)は半導体スイッチング素子の断続駆動時,(b)は連続駆動時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の電子機器1を示す図である。図2は、ヒートシンク4の取付構造を示す図である。図3は、通電パターン20a〜20cからの放熱状態を示す図である。なお、以下の説明で用いる上下の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0011】
図1に示す電子機器1は、モータ駆動回路をプリント配線板2に搭載して構成されたモータ駆動ユニットであり、図1(b)に示すように、プリント配線板2の下面(一端側)に半導体スイッチング素子51を搭載して構成されている。プリント配線板2は、図1(c)に示すように、基板2Aの上面及び下面に銅箔部2Bを形成し、各銅箔部2Bを覆うようにして基板2Aの上面(他端側)及び下面にレジスト層2Cを設けて構成されている。プリント配線板2の上面には、駆動対象となるモータに対する電源供給線にプリント配線板2上の回路を接続するための出力コネクタ3が取り付けられている。
【0012】
出力コネクタ3は、相手側のコネクタが被着される被着部31と、被着部31から延びた接続端子32とを備えており、プリント配線板2の銅箔部2Bに接続端子32が接続されている。プリント配線板2の上面には、プリント配線板2から放熱を行うためのヒートシンク4が取り付けられている。ヒートシンク4は、平板状を呈した本体41の上面に複数の放熱板42を備えており、本体41の下面に貼着された熱伝導シート(不図示)を介して本体41をプリント配線板2に密着させ、本体41をネジ43でプリント配線板2にネジ止めされている。
【0013】
図2に示すように、プリント配線板2の上面及び下面には、銅箔部2Bで配線パターンが構成されたパターン形成部2a〜2nが備えられている。各パターン形成部2a〜2nは、上面及び下面に実装された半導体スイッチング素子51等の電子部品、又は、他のパターン形成部2a〜2nと銅箔部2Bで形成された配線パターン(不図示)で接続されている。また、プリント配線板2の上面及び下面には、銅箔部2Bで形成された通電パターン20a〜20cが備えられている。
【0014】
通電パターン20a〜20cは、出力コネクタ3の接続端子32と駆動対象となるモータとを接続する配線パターンである。半導体スイッチング素子51は、通電パターン20a〜20cを通したモータへの電源供給のオン・オフを切り換えるためのものであり、通電パターン20a〜20cを含むプリント配線板2の配線パターンに接続端子51aで接続されている。半導体スイッチング素子51は、プリント配線板2上に形成された制御回路の制御により、通電パターン20a〜20cを通した電源供給のオン・オフを切り換えるスイッチング動作を行い、通電パターン20a〜20cを通した電源供給のオン・オフを切り換える。
【0015】
プリント配線板2の下面に形成されたプリント配線板20cは、半導体スイッチング素子51と隣り合って配置されている。プリント配線板20cには矩形の切欠部20c1が設けられており、この切欠部20c1に半導体スイッチング素子51が配置されている。ヒートシンク4は、プリント配線板2の上面の通電パターン20c及び半導体スイッチング素子51の配置位置と対向する箇所に、通電パターン20a,20bを本体41で覆うようにしてプリント配線板2に固定されている。
【0016】
プリント配線板2上のモータ駆動回路は、半導体スイッチング素子51をスイッチング動作させ、通電パターン20a〜20cを通して出力コネクタ3からモータに電源を供給し、モータを駆動する。半導体スイッチング素子51は、モータに対し連続的に電源を供給する矩形波駆動の際にはスイッチングを行わない連続駆動を行い、PWM(Pulse Width Modulation)制御時にはスイッチングを連続して行う断続駆動を行う。
【0017】
半導体スイッチング素子51では、半導体スイッチング素子51の連続駆動時には定常発熱A(図3(b)参照)が発生し、断続駆動時にはスイッチング動作に伴いスイッチング発熱B(図3(a)参照)も発生する。通電パターン20a〜20cでは、半導体スイッチング素子51の連続駆動時にはモータに対し連続的に電源を供給し、断続駆動時には断続的に電源を供給する。
【0018】
このため、半導体スイッチング素子51の断続駆動時には半導体スイッチング素子51での発熱量が連続駆動時に比べ増大する。また、半導体スイッチング素子51の連続駆動時の通電パターン20a〜20cでの発熱量C(図3(b)参照)は、断続駆動時の通電パターン20a〜20cでの発熱量D(図3(a)参照)に比べ増大する。この結果、半導体スイッチング素子51の連続駆動時には半導体スイッチング素子51に比べて通電パターン20a〜20cでの発熱量が多くなり、断続駆動時には半導体スイッチング素子51に比べて通電パターン20a〜20cでの発熱量が少なくなる。
【0019】
このように、プリント配線板2での発熱状態は、モータの駆動制御に伴い変化するが、半導体スイッチング素子51での発熱も、通電パターン20a〜20cでの発熱も、通電パターン20a〜20cの延設経路に沿うようにして、半導体スイッチング素子51及び通電パターン20a〜20cの形成位置に対向する位置に配置されたヒートシンク4により、プリント配線板2から外部に放熱される。
【0020】
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体スイッチング素子51の出力側に接続された通電パターン20cの延設経路に沿うようにして、半導体スイッチング素子51及び通電パターン20cの形成位置に対向する位置にヒートシンク4が配置されていることから、半導体スイッチング素子51及び通電パターン20cからプリント配線板2に放熱された熱を、ヒートシンク4で放熱することができる。このため、半導体スイッチング素子51の断続駆動時にも連続駆動時にも、ヒートシンク4のみで効果的に半導体スイッチング素子51及び通電パターン20cの温度上昇を抑えることができる。従って、通電パターン20a〜20cの拡幅化や肉厚化、及び、放熱用の部品点数を抑えることで、プリント配線板2を備えた電子機器1の小型化及び低コスト化を測ることが可能となる。
【0021】
上記実施形態では、ヒートシンク4の配置される上面にも通電パターン20a,20bを備えている場合について説明したが、上面には通電パターンを備えていない構成としてもよい。また、通電パターン20a〜20cの形状も任意である。
【0022】
また、上記実施形態では、通電パターンを電源供給線と接続するための出力コネクタ3がプリント配線板2に配置されている場合について説明したが、出力コネクタ3を備えていなくてもよい。また、上記実施形態では、モータ駆動回路が形成されたプリント配線板2に本発明を適用した場合について説明したが、半導体スイッチング素子51を用いて負荷を駆動させる他のプリント配線板にも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 電子機器
2 プリント配線板
2A 基板
2B 銅箔部
2C レジスト層
2a〜2n パターン形成部
20a〜20c 通電パターン
3 出力コネクタ
31 被着部
32 接続端子
4 ヒートシンク
41 本体
42 放熱板
43 ネジ
51 半導体スイッチング素子
51a 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にて、通電パターン及び前記通電パターン上の半導体スイッチング素子が配置される基板と、
前記基板の他端側にて、通電パターンの一部および前記半導体スイッチング素子に対向する位置に取り付けられるヒートシンクと、
を備えたヒートシンク取付構造であって、
前記半導体スイッチング素子の駆動時による前記通電パターンの発熱および前記半導体スイッチング素子の発熱を、前記ヒートシンクにより放熱する
ことを特徴とするヒートシンク取付構造。
【請求項2】
前記半導体スイッチング素子の断続駆動時には、少なくとも前記半導体スイッチング素子の発熱を前記ヒートシンクにより放熱し、
前記半導体スイッチング素子の連続駆動時には、その連続駆動に伴う前記通電パターンの発熱を、前記半導体スイッチング素子の発熱と共に前記ヒートシンクにより放熱する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−142176(P2011−142176A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1361(P2010−1361)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】