説明

ビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーおよび脱ハロゲン化触媒

【課題】ビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーおよび脱ハロゲン化触媒を提供する。
【解決手段】高度分岐高分子であるハイパーブランチポリマーにビタミンB12化合物を共有結合で固定化し、高い触媒効率と、これまでの単分子触媒とは異なる生成物選択性を有する新規ハイブリッド触媒の提供、およびビタミンB12化合物を高分子に固定化することで、ビタミンB12触媒を容易に回収・再利用できる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーおよび脱ハロゲン化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイパーブランチポリマーはデンドリマーと共にデンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類され、従来の高分子は一般的に紐状の形状であるのに対し、これらのデンドリティックポリマーは積極的に分枝を導入している点でその特異な構造を有し、特に末端基数の多さがデンドリティックポリマーの最も顕著な特徴である。このような末端基数の多いデンドリティックポリマーは、末端基の種類によって分子間相互作用が大きく左右されるので、ガラス転移温度や溶解性、薄膜形成性などが大きく変化し、一般の線状高分子にはない特徴を有する。
ハイパーブランチポリマーのデンドリマーに対する利点は、その合成の簡便さが挙げられ、特に工業的生産においては有利である。一般にデンドリマーが保護−脱保護を繰り返し合成されるのに対し、ハイパーブランチポリマーは1分子中に2種類の置換基を合計3個以上もつ、いわゆるABX型モノマーの1段階重合により合成される。
ビタミンB12は、テトラピロール系の平面配位子であるコリン環内の4個の窒素原子にコバルトが配位した金属錯体であり、中心コバルトが+1ないし+3の酸化状態をとることができるので、この多様な電子状態が自在に変化することにより、多彩な反応の触媒として応用されている。
高分子表面へのビタミンB12の固定化は、修飾電極の耐久性向上を目指したものや(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)、高分子薄膜上への固定化(非特許文献4参照)が報告されているが、高度分岐高分子上へ固定化した検討はなされていない。また、電極上にビタミンB12化合物を共有結合で担持した修飾電極を用いて、電解質溶液中で電解還元することが報告されているが(非特許文献5参照)、かかる方法では、電解質溶液に伝導性を与えるために、大量の電解質を用いる必要があった。また触媒となるビタミンB12化合物を回収・再利用するにはクロマトグラフィによる分離操作が必要であり、多大な労力を必要とした。
【非特許文献1】「ヘルベチカ・ケミカ・アクタ(Helv.Chim.Acta.)」、(スイス)1985年、68、p.1301
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティ・ケミカル・コミュニケーションズ(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)」、(英国)、1989年、p.1094
【非特許文献3】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.)」、(米国)、1999年、121、p.2909
【非特許文献4】「シンレット(Synlett)」、(米国)、2000年、11、p.1694
【非特許文献5】「ケミカル・コミュニケーションズ(Chem.Commun.)」、(英国)、2004年、p.50−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高度分岐高分子であるハイパーブランチポリマーにビタミンB12化合物を共有結合で固定化し、高い触媒効率と、これまでの単分子触媒とは異なる生成物選択性を有する新規ハイブリッド触媒の提供、およびビタミンB12化合物を高分子に固定化することで、ビタミンB12触媒を容易に回収・再利用できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ハイパーブランチポリマーにビタミンB12化合物を共有結合で固定化した触媒を合成した。本触媒は、脱ハロゲン化反応において、高い触媒活性を有するとともに、複数のビタミンB12部位を近接した場所に固定化しているため、これまでの触媒と異なり還元時に炭素−炭素結合を促進する効果を見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明は、第1観点として、ハイパーブランチポリマーの少なくとも1つの官能基にビタミンB12化合物を共有結合で固定化した構造を有し、ゲル浸透クロマトグラフィによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が2,000ないし20,000,000であるビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー、
第2観点として、前記官能基がヒドロキシル基であり、前記共有結合がエステル結合である、第1観点記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー、
第3観点として、下記の式(1)で表される構造を重合開始部位とし、下記の式(2)で表される直鎖構造の繰り返し単位と下記の式(3)で表される枝分かれ構造の繰り返し単位とを有し、かつ式(2)で表される直鎖構造の繰り返し単位の総数が1ないし100,000の整数で、式(3)で表される枝分かれ構造の繰り返し単位の総数が2ないし100,000の整数であるビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【化1】

【化2】

【化3】

{式(1)ないし式(3)中、A1は式(4)または式(5)
【化4】

【化5】

(式(4)および式(5)中、A3はエーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよ
い炭素原子数1ないし20の直鎖状、枝分かれ状または環状のアルキレン基を表し、X1
、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1ないし20のアル
キル基、または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表す。)で表される構造を表し、A2はエーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1ないし20の
直鎖状、枝分かれ状または環状のアルキレン基を表し、R1は水素原子またはメチル基を
表し、R2は水素原子、炭素原子数1ないし20の直鎖状もしくは枝分かれ状のヒドロキ
シルアルキル基、炭素原子数3ないし20の直鎖状もしくは枝分かれ状のエポキシ基を含むアルキル基、または式(6)
【化6】

(式中、R3ないしR9のいずれか1つは、前記式(2)中のA2−O基の酸素原子と共有
結合する単結合を表し、前記A2−O基と共有結合しないR3ないしR9は、それぞれ独立
してヒドロキシル基または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表し、Y1はシアノ
基、ヒドロキシル基またはメチル基を表し、Y2はCo原子に配位している水分子を表す
。)
で表されるビタミンB12化合物を表す(ただし、少なくとも1つ以上のビタミンB12化合物を含む。)。}、
第4観点として、分子末端にN,N−ジエチルジチオカーバメート基を有する、第3観点記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー、
第5観点として、前記A1が式(7)または式(8)
【化7】

【化8】

(式中、mは2ないし10の整数を表す。)で表される構造である、第3観点記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー、
第6観点として、前記A2が、−(CH2n−(式中、nは2ないし10の整数を表す
。)である、第3観点記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー、
第7観点として、前記ビタミンB12化合物が式(9)
【化9】

(式中、R3ないしR8は、それぞれ独立してヒドロキシル基または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表し、Y1はシアノ基、ヒドロキシル基またはメチル基を表し、Y2はCo原子に配位している水分子を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、第3観点記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー、
第8観点として、第1観点ないし第7観点のいずれかに記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーを含むラジカル型有機合成反応触媒、
第9観点として、脱ハロゲン化反応を促進することを特徴とする第8観点記載のラジカル型有機合成反応触媒、
第10観点として、炭素−炭素結合反応を促進することを特徴とする第8観点記載のラジカル型有機合成反応触媒、
第11観点として、ハイパーブランチポリマーの少なくとも1つのヒドロキシル基と、ビタミンB12化合物のいずれか1つのカルボキシル基とを、縮合剤の存在下で反応させることを特徴とするビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーの製造方法、である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー触媒を用いれば、脱ハロゲン化反応を高収率で実施することが可能となるとともに、これまでの反応では主生成物とすることが難しかった炭素−炭素結合反応物を高収率で得ることが可能となる。また、反応混合液からビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー触媒を容易に分離でき、触媒の再利用が可能となる。さらに、本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー触媒は、電気化学的に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーは、ハイパーブランチポリマーの少なくとも1つの官能基にビタミンB12化合物を共有結合で固定化した構造を有し、ゲル浸透クロマトグラフィによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が2,000ないし20,000,000であるビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーである。
ここで、共有結合で固定化した構造とは、例えば、ハイパーブランチポリマーの少なくとも1つのヒドロキシル基とビタミンB12化合物のいずれか1つのカルボキシル基が、エ
ステル結合により結合した構造である。
本発明に用いられるビタミンB12化合物とはビタミンB12骨格を有する化合物であり、例えば、ビタミンB12(シアノコバラミン)が挙げられる。
具体的な本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーは、前記式(1)で表される構造式を重合開始部位とし、式(2)で表される直鎖構造の繰り返し単位と式(3)で表される枝分かれ構造の繰り返し単位とを有するビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーである。
また、式(2)で表される直鎖構造の繰り返し単位の総数が1ないし100,000の整数であり、式(3)で表される枝分かれ構造の繰り返し単位の総数が2ないし100,000の整数であるビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーである。
【0008】
式(1)および式(3)中のA1は、式(4)または式(5)で表される構造を表す。
式(2)におけるA2並びに式(4)および式(5)におけるA3は、エーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1ないし20の直鎖状、枝分かれ状または環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1ないし20のアルキル基、または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表す。
式(1)中のR1は、水素原子、またはメチル基を表す。
式(2)中のR2は、水素原子、炭素原子数1ないし20の直鎖状もしくは枝分かれ状
のヒドロキシル基、炭素原子数3ないし20の直鎖状もしくは枝分かれ状のエポキシ基を含むアルキル基、または前記式(6)で表されるビタミンB12化合物を表す(ただし、少なくとも1つ以上のビタミンB12化合物を含む)。
2のヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシ
エチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などの直鎖状ヒドロキシアルキル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル基、3−メチル−2−ヒドロキシプロピル基などの枝分かれ状ヒドロキシルアルキル基が挙げられる。
式(6)で表されるビタミンB12化合物としては、例えば、前記式(9)で表されるビタミンB12関連化合物が挙げられる。
式(6)において、R3ないしR8におけるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素原子数1ないし20のアルコキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
2およびA3のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、ノルマルプロピレン基、ノルマルブチレン基、ノルマルヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等の分岐状アルキレン基が挙げられる。また環状アルキレン基としては、炭素原子数3ないし30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。
1、X2、X3およびX4の炭素原子数1ないし20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1ないし20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルマルペンチルオキシ基等が挙げられる。特にX1
2、X3およびX4としては、水素原子又は炭素原子数1ないし20のアルキル基が好ま
しい。
また、式(1)のA1としては、式(4)または式(5)で表される構造であることが
好ましい。式(5)中、mは2ないし10の整数を表し、mとしては2または3が好ましい。
【0009】
本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーの製法としては、例えば、ハイパ
ーブランチポリマーの少なくとも1つのヒドロキシル基と、ビタミンB12化合物のいずれか1つのカルボキシル基とを、縮合剤の存在下で反応させる製法が挙げられる。本反応は、不活性溶媒中、塩基を添加して行うことが好ましい。
原料となるハイパーブランチポリマーは、官能基としてヒドロキシル基を有していれば特に限定されないが、例えば、N,N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレートとメタアクリル酸2−ヒドロキシエチルとのランダム共重合体(商品名オプトビーズHPEMA−HEMA(日産化学工業(株)製))が挙げられる。
縮合剤としては、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、クロロギ酸エステルやトシル酸クロライドのような酸クロライド(混合酸無水物法)、または2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物のような酸無水物等が挙げられる。
塩基としては、例えば、三級アミンが使用され、具体的には、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、またはトリエチルアミン等が挙げられる。
不活性溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル及びアセトニトリル等のニトリル系溶媒等並びにこれらの溶媒の混合溶液が挙げられる。
反応温度は、溶媒の氷点から沸点の範囲であれば特に制限されないが、操作上0℃ないし80℃が好ましい。反応時間は、反応の速度に依存するが、数時間から数十日間が好ましい。
【0010】
本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーは、ラジカル型有機合成反応の触媒として使用することができ、例えば、脱ハロゲン化反応、炭素−炭素結合反応等に好適に使用できる。
本発明のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー触媒を用いた脱ハロゲン化反応および炭素−炭素結合反応は、有機ハロゲン化物を有機溶媒中でビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー触媒と酸化チタンのような固体光触媒の共存下、光照射することにより行うことができる。
固体光触媒は、光を照射することにより触媒活性を示す固体であるが、紫外光照射ではハイブリッド触媒の分解の恐れがあり、可視光を照射することにより触媒活性を示す可視光応答型の光触媒が好ましく用いられる。可視光応答型光触媒としては、酸化チタンが挙げられ、通常、結晶性のもの、例えばアナターゼ型、ルチル型、アナターゼ・ルチル型、ブルッカイト型が用いられる。
照射する光は、固体光触媒として紫外光応答型の光触媒を用いた場合は紫外光が、可視光応答型の光触媒を用いた場合は可視光がそれぞれ用いられる。
本発明の脱ハロゲン化反応および炭素−炭素結合反応に用いうる溶媒としては、基質およびビタミンB12錯体に対して反応しないもの、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどが挙げられる。酸化チタンが光増感作用を効率良く起こすためには、価電子帯のホールと高い反応性を示す、アルコール類を含む溶媒系が望ましい。
本発明の脱ハロゲン化方法および炭素−炭素結合反応に適用される有機ハロゲン化物は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を有する有機化合物であって、例えば1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン〔DDT〕、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2−ジクロロエタン〔DDD〕、2−ブロモエチルベンゼン、2−クロロエチルベンゼン、臭化ベンジル、塩化ベンジルなどのハロゲン化芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、フルオロトリクロロメタン、1,1,1−トリクロロメタン、ブロモホルム、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、臭化アリル、塩化アリル、ヨウ化メチルなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0011】
脱ハロゲン化温度は、通常20℃ないし40℃、好ましくは30℃ないし35℃程度である。脱ハロゲン化に要する時間は、通常6時間ないし24時間程度である。
ビタミンB12化合物において、中心金属原子であるコバルト原子は通常、3価または2価であるが、−0.4ないし−2.0V vs. Ag/AgClの電位をかけると1価に還元される。コバルト原子が1価に還元されたビタミンB12化合物は、高い還元力を示すので、本発明の脱ハロゲン化方法では、かかるビタミンB12化合物が、有機ハロゲン化物に作用して還元し、脱ハロゲン化するものと考えられる。
脱ハロゲン化後のビタミンB12化合物は、反応混合物から脱ハロゲン化物を回収した後、再利用することができる。脱ハロゲン化物を回収せずに、そのまま再利用することも可能である。
【実施例】
【0012】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。UV−visスペクトル、IRスペクトル、MALDI−TOF−MS、GPC、GC−MS、NMR、ESRスペクトル、サイクリックボルタモグラム、蛍光偏光度、DLS、TEMは次の装置により測定した。
UV−visスペクトル:U−3000型紫外可視分光光度計((株)日立製作所製)
IRスペクトル:FT−IR460plus(日本分光(株)製))
MALDI−TOF−MS:Autoflex((株)ブルカー製)
GPC:LC−9201R(日本分析工業(株)製)
GC−MS:GC−MS−QP5050AHガスクロマトグラフ質量分析計((株)島津製作所製)
NMR:AVANCE 500 核磁気共鳴装置((株)ブルカー製)
ESRスペクトル:JES−FE1GX−バンドESR測定装置(日本電子(株)製)
サイクリックボルタモグラム:CV−500W(BAS(株)製)
蛍光偏光度:FP−750型分光蛍光光度計(日本分光(製))
DLS:ファイバー光学動的光散乱光度計(大塚電子(株)製)
TEM:透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H8000)
HPLC(GPC):高速液体クロマトグラフEZChrom Elite((株)日立ハイテクフィールディング製)
HPLC(GPC)用カラム:KD−805、KD−804、KD−802(昭和電工(株)製)
【0013】
参考例1(ビタミンB12誘導体の合成)
【化10】

ビタミンB12誘導体を以下に示す操作で合成し、1つのカルボキシル基を有する(CN)2Cob(III)6C1エステル、および2つのカルボキシル基を有する(CN)2
ob(III)5C1エステルの混合物を得た。
シアノコバラミン2.5g(1.9x10-3 mol)のメタノール溶液300mLに
98%冷濃硫酸30mLを滴下した。遮光条件下、窒素雰囲気下で120時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、冷水100mLを加えた後、固体炭酸ナトリウムで中和し、シアン化カリウム1.0g(1.5x10-2 mol)を加えた。四塩化炭素(100
mLx2)、塩化メチレン(100mLx2)の順に抽出を行い、塩化メチレン抽出液を水(100mLx2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧乾固した。ベンゼン/n−へキサンで再沈殿を行い、紫色粉末(914mg 収率45%)を得た。UV−visスペクトル(図1)、IRスペクトル(図2)、MALDI−TOF−MS(図3)で同定を行った。
※ これらの同定により、四塩化炭素抽出液には7ヶ所の側鎖がメチルエステル化された
(CN)2Cob(III)7C1エステルが抽出された。
【0014】
参考例2
<N、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレートの合成>
2Lの反応フラスコに、クロロエチルメタクリレート[ランカスター社製]100g、N、N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]178g、アセトン1100gを仕込み、撹拌下で、温度40℃で14時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末を1,2−ジクロロエタンに再溶解させ、1,2−ジクロロエタン/水系で分液後、1,2−ジクロロエタン相から1,2−ジクロロエタンを留去させて黄色液体の目的物171g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(相対面積百分率)は96%であった。
【0015】
参考例3
<ジチオカルバメート基を分子末端に有するアクリル−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル系ハイパーブランチポリマーの合成>
1Lの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレート40g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル[純正化学(株)製]20g、およびテトラヒドロフラン400gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下で、温度30±5℃で6時間行った。次にこの反応液をヘキサン3000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、得られたポリマーをテトラヒドロフラン170gに再溶解した後、この溶液をヘキサン1500gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、うす黄色粉末の目的物27.3gを得た。得られたポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定された重量平均分子量Mwは24,000であり、分散度Mw/Mnは4.06であった。
得られたハイパーブランチポリマーは、下記の化学式(101)で示される構造式を重合開始部位とし、化学式(102)で示される直鎖構造の繰り返し単位と化学式(103)で示される枝分かれ構造の繰り返し単位を有するハイパーブランチポリマーである。
【化11】

【化12】

【化13】

得られたポリマーのNMRの測定結果を図4に示した。194ppm、50ppm、および13ppmのN、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレートに由来するピークの積分値の平均値と67ppm、および60ppmのメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに由来するピークの積分値の平均値から、上記の化学式(102)で示される直鎖構造の繰り返し単位の総量と化学式(101)で示される枝分かれ構造の繰り返し単位の総量の比は1.0対1.1であった。
【0016】
参考例4
<分子末端が還元されたアクリル−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル系ハイパーブランチポリマーの合成>
300mLガラス製反応フラスコに、参考例3で得たジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(Mw:23000、Mw/Mn:4.15)8g、テトラヒドロフラン59gを仕込み、撹拌し、うす黄色透明溶液を調製した後、水素化トリブチルスズ[アルドリッチ社製]11.5gを添加した。反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯させ、内部照射による光反応を、撹拌下、温度30±5℃で2時間行った。次に、この反応溶液をヘキサン1Lに添加して3度、ハイパーブランチポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末のジチオカルバメート基が水素に置換されたハイパーブランチポリマー2.9gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,000、分散度Mw/Mnは3.10であった。得られたハイパーブランチポリマーをDMFへ溶解させ、50μg/mLとなるように調整した溶液の紫外可視吸収スペクトル測定結果を図5に示した。還元反応前に観測されたジチオカーバメート基に由来する280nmを中心とするピークが、還元反応後消失しているのが観測された。これより得られたハイパーブランチポリマーは
、化学式(101)で示される構造式を重合開始部位とし、化学式(102)で示される直鎖構造の繰り返し単位と化学式(103)で示される枝分かれ構造の繰り返し単位を有するハイパーブランチポリマーのジチオカルバメート基が還元されたハイパーブランチポリマーである。
【0017】
実施例1(B12−HBPハイブリッド触媒の合成)
【化14】

ビタミンB12誘導体をエステル結合により参考例3で合成したハイパーブランチポリマーに結合させた。
2口のナス型フラスコにハイパーブランチポリマー101mg(HEMAのヒドロキシル基2.57x10-4mol)、ビタミンB12誘導体((CN)2Cob(III)6C1エステルおよび(CN)2Cob(III)5C1エステルの混合物)556 mg(5.11x10-4 mol,1.99eq)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)94
.0mg(7.69x10-4mol,3.0 eq)を入れ、窒素置換した。これに乾燥塩化メチレン2.00mLを加えた。氷浴上で塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC/HCl)198mg(1.03x10-3mol,4.01 eq)を添加し、室温に戻して撹拌した。4時間後反応を止め、塩化メチレン20mLを加え、水(15mLx2)で洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾固した。GPC(クロロホルム、280nm)により精製を行った。分取した第一成分(ブロード成分)をクロロホルム/n−ヘキサンで再沈殿を行い、赤紫色の粉末213mg(B12成分114mg(収率20%)、HBP成分99mg(収率99%))を得た。精製前と精製後のGPCチャートをそれぞれ(図6)、(図7)に示す。
分取した第一成分のUV−visスペクトルを(図8)に示す。
【0018】
※ ビタミンB12誘導体の固定化量について
12−HBPハイブリッド触媒単位重量当りのビタミンB12誘導体の固定化量は、重量濃度既知の塩化メチレン溶液を調製し、UV−visスペクトルを測定し、369nmにおける吸光度から算出した。上記の縮合反応において、反応体の化学量論比を変えることで、ビタミンB12誘導体固定化量の異なるハイブリッド触媒を合成することに成功した。反応体の化学量論比に対するビタミンB12誘導体固定化量を(表1)に示す。
【表1】

【0019】
実施例2(B12−HBPハイブリッド触媒による有機ハロゲン化物の脱ハロゲン化反応)
【化15】

≪B12−HBPハイブリッド触媒による臭化フェネチルの脱ブロモ化(エントリーNo.1)≫
12−HBPハイブリッド触媒は、1g当りのビタミンB12誘導体固定化量が493mgのものを用いた。B12−HBPハイブリッド触媒(ビタミンB12誘導体2.4x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(3.0x 10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)30mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで攪拌下にブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により反応器外表面における紫外線強度1.76mWcm-2で紫外線を24時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。
一方、B12−HBPハイブリッド触媒は、反応後酸化チタンとともに約6割を濾別回収でき、残りは過剰量のn−ヘキサンを加えることで再沈濾別することができる。
【0020】
≪ビタミンB12誘導体による臭化フェネチルの脱ブロモ化(エントリーNo.2)≫
ビタミンB12誘導体は、(CN)2Cob(III)7C1エステルを用いた。ビタミンB12誘導体(2.4x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(3.0x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)30mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで攪拌下にブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により反応器外表面における紫外線強度1.76mWcm-2で紫外線を24時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。
【0021】
≪HBP共存下での臭化フェネチルの脱ブロモ化(エントリーNo.3)≫
(2−ブロモエチル)ベンゼン(3.0x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgおよびハイパーブランチポリマー(日産化学工業(株)製、商品名オプトビーズHPEMA−HEMAランダム共重合体 )0.88mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)30mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで攪拌下にブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により反応器外表面における紫外線強度1.76mWcm-2で紫外線を24時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。
【0022】
結果を(表2)に示す。
【表2】

エントリーNo.1、エントリーNo.2の転化率の比較から、ビタミンB12誘導体をHBPに固定化したことにより触媒効率の向上した。これは運動性のある担体に触媒を大量に固定化したことで、反応溶液中でビタミンB12誘導体の局所的な高濃度状態が達成されたため、あるいはHBP担体への基質の取り込み効果によるものであると考えられる。
また、生成物の選択性に関して、B12−HBPハイブリッド触媒では二量体が優先的に生成した。これはビタミンB12誘導体がHBPによって予め近傍に固定化されているため、ラジカル反応中間体のカップリングが容易に進行したためであると考えられる。
【0023】
実施例3(B12−HBPハイブリッド触媒の立体構造評価)
12−HBPハイブリッド触媒として、1g当りのビタミンB12誘導体固定化量が534mgのものを用いた。B12−HBP16.5mgを塩化メチレン100mLに溶解し、KCN水溶液(50mg/100mL)で浸透した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶液を減圧乾固した。得られた固体をメタノールに溶解し、CD測定を行った。また、参照としてビタミンB12誘導体((CN)2Cob6C1エステルおよび(CN)2Cob
5C1エステルの混合物)のCD測定を行った。図9にB12−HBPハイブリッド触媒お
よびビタミンB12誘導体のCDスペクトルを示す。
12−HBPハイブリッド触媒は、ビタミンB12誘導体と同様の円二色性を示した。これはB12−HBPハイブリッド触媒にビタミンB12誘導体の構造が保持されていることを示唆している。
【0024】
実施例4(B12−HBPハイブリッド触媒のTEM測定による粒径評価)
12−HBPハイブリッド触媒として、1g当りのビタミンB12誘導体固定化量が493mgのものを用いた。B12−HBPハイブリッド触媒のメタノール溶液を調製し、該溶液をカーボン蒸着銅メッシュグリッドに滴下し、減圧乾固し、これについて、TEM測定を行った。図10にB12−HBPハイブリッド触媒のTEM像を示す。粒径5ないし8nmの粒子が観察された。
【0025】
実施例5(B12−HBPハイブリッド触媒のDLS測定による粒径評価)
12−HBPハイブリッド触媒として、1g当りのビタミンB12誘導体固定化量が493mgのものを用いた。B12−HBPハイブリッド触媒のメタノール溶液を調製し、DLS測定を行った。固体レーザー(532nm)にて測定した。図11にDLS測定の結果を示す。また個数換算分布から得られる平均粒径は、7.4nmであった。
【0026】
実施例6(B12−HBPハイブリッド触媒中のビタミンB12誘導体の軸配位子変換(アコシアノ体の合成))
【化16】

12−HBPハイブリッド触媒として、1g当りのビタミンB12誘導体固定化量が534mgのものを用いた。B12−HBPハイブリッド触媒29.5mgを塩化メチレン100mLに溶解し、30%過塩素酸水溶液60mLで浸透した。飽和過塩素酸ナトリウム水溶液(50mLx2)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。これにクロロホルムを加え、ヘキサンで再沈殿し、赤色粉末27.0mgを得た。B12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)のUV−visスペクトルを図12に示す。
【0027】
実施例7(B12−HBPハイブリッド触媒中のコバルトの酸化数変換((Co(II)体の合成))
【化17】

12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)26.3mgをアセトニトリル1.0mLに溶解し、次いでメタノール50mL、水50mLを加え、15分間窒素バブリングにより脱気した。これに水素化ホウ素ナトリウム51.3mgを水3.0mLに溶解したものを加え、5分間攪拌した。溶液が暗緑色から橙色になるまで60%過塩素酸を加え、15分間攪拌した。塩化メチレン100mLで抽出し、飽和過塩素酸ナトリウム水溶液(50mLx2)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。これにクロロホルムを加え、ヘキサンで再沈殿し、橙色粉末26.3mgを得た。図13にB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)のUV−visスペクトル、図14にESRスペクトルを示す。
【0028】
実施例8(B12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)の酸化還元挙動)
12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)(ビタミンB12誘導体8.3x10
-4M、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム0.10M)のDMF溶液を調製した。作用電極にグラッシカーボン電極、補助電極に白金電極、参照電極にAg/AgCl電極を用い、CV測定を行った。図15にB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)のサイクリックボルタモグラムを示す。さらに臭化フェネチル20μLを滴下し、CV測定を行った。図16にこのときのサイクリックボルタモグラムを示す。
図15においてCoII/CoIの可逆的な酸化還元波が見られ、B12−HBPハイブリ
ッド触媒が電気化学的に応用可能であることが確認できた。実際に図16においてCoII/CoIの不可逆的な還元波(−0.5V付近)およびコバルトアルキル錯体の1電子還
元波(−1.3V付近)が見られた。これは電気化学的に活性化されたCo(I)種が臭化フェネチルを求核攻撃し、脱ハロゲン化反応が進行していることを示している。
【0029】
実施例9(B12−HBPハイブリッド触媒のミクロ極性の評価)
12−HBPハイブリッド触媒として、1g当りのビタミンB12誘導体固定化量が534mgのものを用いた。B12−HBP16.5mgを塩化メチレン100mLに溶解し、KCN水溶液(50mg/100mL)で浸透した。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶液を減圧乾固した。得られた固体を種々の溶媒に溶解し、それぞれUV−vis測定を行った。表3に種々の溶媒中でのB12−HBPハイブリッド触媒のα帯の吸収極大波数を示す。また図17にB12−HBPハイブリッド触媒のα帯の吸収極大波数と溶媒の極性パラメータETNとの相関を示す。
※コリノイド錯体のUV−visスペクトルは吸収極大の長波長側からα、β、 γ帯と呼ぶ。
※ETN={ET(溶媒)−ET(TMS)}/{ ET(水)−ET(TMS )}
={ET(溶媒)−30.7}/32.4
【表3】

ビタミンB12誘導体は種々の溶媒に溶解した場合にその極性が増大するとともに、UV−visスペクトルのα、γ帯が短波長シフトすることが知られている。図17でB12−HBPハイブリッド触媒はビタミンB12誘導体と同様の挙動を示した。これは、B12−HBPハイブリッド触媒中のビタミンB12誘導体がバルクと同様のミクロ極性の環境にあること、すなわちバルクと同様に溶媒和されていることを示唆している。
【0030】
実施例10(B12−HBPハイブリッド触媒のミクロ粘性の評価)
蛍光プローブとして2−(4−イミダゾリル)−N−[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフタレンスルホニル]エチルアミン(ダンシルヒスタミン)を用いた。B12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)(ビタミンB12誘導体3.1 x 10-5M)の塩化メ
チレン溶液を調製し、ビタミンB12誘導体に対して0.9等量のダンシルヒスタミンを加えた。335nmの励起光を照射した際の、固定波長498nmの蛍光強度から蛍光偏光度(P)を算出した。結果を表4に示す。なお蛍光偏光度は以下の式に従って算出した。
【化18】

P=(IVV−GxIVH)/(IVV+GxIVH),G=IHV/IHH
VV:P90,A90のときの蛍光強度成分P0:励起側偏光子の目盛りが0度
VH:P90,A0 のときの蛍光強度成分P90:励起側偏光子の目盛りが90度
HV:P0 ,A0 のときの蛍光強度成分A0:励起側偏光子の目盛りが0度
HH:P0 ,A90のときの蛍光強度成分A90:励起側偏光子の目盛りが90度
【表4】

12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)の蛍光偏光度は、ビタミンB12誘導体と同様に小さな値が算出された。これはB12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)に配位したダンシルヒスタミンがミクロ粘性の低い環境にあることを示している。すなわち、B12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)中のビタミンB12誘導体はバルクと同様に束縛の小さな環境にあると考えられる。
【0031】
実施例11(B12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)の拡散係数の算出)
12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)(ビタミンB12誘導体5.0x10-4M、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム0.10M)のDMF溶液を調製した。作用電極にグラッシカーボン電極、補助電極に白金電極、参照電極にAg/AgCl電極を用い、掃引速度0.05V/sないし0.5V/sにおいてCV測定を行った。またビタミンB12誘導体として[Cob(II)7C1エステル]ClO4(5.0x10-4M)を用い、同様にCV測定を行った。CoII/CoIの可逆な酸化還元波に関して、掃引速
度vの平方根に対して還元ピーク電流ipcと酸化ピーク電流ipaの和をプロットしたものを図18に示す。得られたプロットの直線の傾きから、以下の式に従い拡散係数を算出した。結果を表5に示す。
p= 2.69x105 AcD1/21/2
p:ピーク電流/A
A:作用極面積/cm2
c:ビタミンB12誘導体のバルク濃度/molcm-3
v:掃引速度/Vs-1
D:拡散係数/cm2-1
【表5】

12−HBPハイブリッド触媒は、ビタミンB12誘導体よりも小さな拡散係数が算出された。B12−HBPハイブリッド触媒ではビタミンB12誘導体が高分子量の担体に固定化されているため、溶液中での運動性が低下したことを示している。
【0032】
実施例12(B12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)の定電位電解反応)
実施例8のB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)の酸化還元過程で生成する錯体種を同定するために、定電位電解反応をUV−visスペクトルにより追跡した。B12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)(ビタミンB12誘導体5.0 x 10-4M、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム0.10M)のDMF溶液を調製した。作用電極にグラッシカーボン電極、補助電極に白金電極、参照電極にAg/AgCl電極を用い、−1.2 V vs Ag/AgClにて定電位電解したときのUV−visスペクトルの変化を図19に示す。[Cob(II)7C1エステル]ClO4から393nmに吸収極大をもつCob(I)7C1エステルへの変換が観測された。電解により生
成したCob(I)7C1エステルは、0 V vs Ag/AgClで電解することに
より定量的に酸化種(Co(II)種およびCo(III)種)へと変化した。これらの結果より、ビタミンB12誘導体はHBP固定化された状態で電気化学的にCo(I)種へ活性化可能であることが確認された。
【0033】
実施例13(酸化チタンを用いたB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)の還元活性化)
BB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)(ビタミンB12誘導体 6.0x10-5M)を含むメタノール溶液3.0mLに酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)0.10mgを加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で20分照射した。このときのUV−visスペクトルの変化を図20に示す。[Cob(II)7C1エステル]ClO4から391nmに吸収極大をもつCob(I)7C1エステルへの変換が観測された。この結果より、ビタミンB12誘導体はH
BP固定化された状態においても、酸化チタンの励起電子によりCo(I)種へ活性化可能であることが確認された。
【0034】
実施例14(B12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)による有機ハロゲン化物の脱ハロゲン化反応)
質量スペクトルはGC−MS−QP5050AHガスクロマトグラフ質量分析計((株)島津製作所製)により測定した。
≪B12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)による臭化フェネチルの脱ブロモ化
(エントリーNo.4)≫
12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)(ビタミンB12誘導体 2.0x1
-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(1.9x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)25mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で8時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。

≪ビタミンB12誘導体([Cob(II)7C1エステル]ClO4)による臭化フェネチルの脱ブロモ化 (エントリーNo.5)≫
ビタミンB12誘導体は、[Cob(II)7C1エステル]ClO4 を用いた。ビタミンB12誘導体(2.0x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(1.9x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)25mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で8時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。

≪ビタミンB12誘導体([Cob(II)7C1エステル]ClO4)およびHBP共存下での臭化フェネチルの脱ブロモ化 (エントリーNo.6)≫
ビタミンB12誘導体は、[Cob(II)7C1エステル]ClO4 を用いた。ビタミンB12誘導体(2.0x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(1.9x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgおよびハイパーブランチポリマー(日産化学工業(株)製、商品名HPEMA−HEMAランダム共重合体)0.46mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)25mlに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で8時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。

≪HBP存在下での臭化フェネチルの脱ブロモ化(エントリーNo.7)≫
(2−ブロモエチル)ベンゼン(1.9x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgおよびハイパーブランチポリマー(日産化学工業(株)製、商品名HPEMA−HEMAランダム共重合体)0.88mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)30mlに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で24時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。

結果を表6に示す。
【表6】

エントリーNo.4、エントリーNo.5の転化率の比較から、ビタミンB12誘導体をHBPに固定化したことにより触媒効率の向上したことが分かる。これは運動性ある担体に触媒を大量に固定化したことで、反応溶液中でビタミンB12誘導体の局所的な高濃度状態が達成されたためと考えられる。
また、生成物の選択性に関して、エントリーNo.4のB12−HBPハイブリッド触媒では二量体選択性が向上した。これはビタミンB12誘導体がHBPによって予め近傍に固定化されているため、ラジカル反応中間体のカップリングが容易に進行したためであると考えられる。またエントリーNo.6ではこのような選択性の向上は見られなかったことから、エントリーNo.4のB12−HBPハイブリッド触媒ではビタミンB12誘導体とHBPを共有結合で固定化し、HBP担体を触媒で高密度に修飾した効果が現れたものと考えられる。
【0035】
実施例15(B12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒の合成)
【化19】

ハイパーブランチポリマーは、参考例4で合成したHPEMA−HEMA−Hを、またビタミンB12誘導体は一つのカルボキシル基を有する(CN)2Cob(III)6C1エステルを用いた。(CN)2Cob(III)6C1エステルをエステル結合によりHPEMA−HEMA−Hに結合させた。
2口のナス型フラスコにHPEMA−HEMA−H 100.5mg(HEMAのヒドロキシル基4.09x10-4mol)、ビタミンB12誘導体((CN)2Cob(III
)6C1エステル)45.1mg(4.19x10-5 mol,0.102eq)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)50.4mg(4.12x10-4mol,1.01eq)を入れ、窒素置換した。これに乾燥塩化メチレン2.50mLを加えた。氷浴上で塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC/HCl)165.1mg(8.61x10-4mol,2.01eq)を添加し、室温に戻して撹拌した。4時間後反応を止め、塩化メチレン50mLを加え、水(30mLx2)で洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾固した。GPC(クロロホルム、280nm)により精製を行い、分取した第一成分(ブロード成分)をKCN水溶液で浸透した。これをクロロホルム/n−ヘキサンで再沈殿し、B12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒を紫色粉末71.4mg(B12成分11.4mg(収率25%)、HPEMA−HEMA−H成分60.0mg(収率60%))として得た。次いで、B12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒単位重量当りのビタミンB12誘導体の固定化量を、重量濃度が既知である塩化メチレン溶液を調製し、UV−visスペクトル
を測定し、371nmにおける吸光度から算出した。さらに、B12−HPEMA−HEMA−H ハイブリッド触媒の重量平均分子量Mwおよび多分散度Mw/MnをHPLC(GPC)(DMF、RI検出、590nm検出)にて算出した。
また上記の縮合反応において、HPEMA−HEMA−Hのヒドロキシル基数に対するビタミンB12誘導体の仕込み等量数を変えることで、ビタミンB12誘導体の固定化量の異なるB12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒を合成した。ビタミンB12誘導体の仕込み等量数、ビタミンB12誘導体の固定化量、ヒドロキシル基修飾率、重量平均分子量Mwおよび多分散度Mw/Mnの関係を表7に示す。またHPEMA−HEMA−H およびB12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒(ヒドロキシル基修飾率37%)のGPCチャート(RI検出)を図21に示す。B12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒(ヒドロキシル基修飾率37%)のGPCチャート(590nm検出)を図22に、UV−visスペクトルを図23に示す。
【表7】

【0036】
実施例16(B12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒による有機ハロゲン化物の脱ハロゲン化反応)
質量スペクトルはGC−MS−QP5050AHガスクロマトグラフ質量分析計((株)島津製作所製)により測定した。
≪ビタミンB12誘導体((CN)2Cob(III)7C1エステル)による臭化フェネチルの脱ブロモ化(エントリーNo.8)≫
ビタミンB12誘導体は、(CN)2Cob(III)7C1エステルを用いた。ビタミンB12誘導体(2.4x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(2.2x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)25mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で14時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。

≪B12−HPEMA−HEMA−H(ヒドロキシル基修飾率4%)による臭化フェネチルの脱ブロモ化(エントリーNo.9)≫
12−HPEMA−HEMA−H(ヒドロキシル基修飾率4%、ビタミンB12誘導体2.0x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(2.2x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)25mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で14時間照射し、GC−MSで生成物解析およ
び定量を行った。

≪B12−HPEMA−HEMA−H(ヒドロキシル基修飾率37%)による臭化フェネチルの脱ブロモ化 (エントリーNo.10)≫
12−HPEMA−HEMA−H(ヒドロキシル基修飾率4%、ビタミンB12誘導体2.0x10-5M)および(2−ブロモエチル)ベンゼン(2.2x10-3M)を、酸化チタン(日本エアロゾル(株)製、「P25」)19mgを含むメタノール(キシダ化学(株)製、試薬1級)25mLに加え、20分間窒素ガスバブリングを行った。次いで該溶液を攪拌下、反応器外表面においてブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により紫外線を紫外線強度1.76mWcm-2で14時間照射し、GC−MSで生成物解析および定量を行った。
結果を表8に示す。
【表8】

表8より、ヒドロキシル基修飾率が増加するに従って二量化選択性が向上することが明らかとなった。これはヒドロキシル基の修飾率が増すに従ってHBP担体中でビタミンB12誘導体の局所濃度が増加することを示唆しており、触媒の濃縮効果が現れたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、参考例1で合成したビタミンB12誘導体のUV−visスペクトル(塩化メチレン)である。
【図2】図2は、参考例1で合成したビタミンB12誘導体のIRスペクトルである(KBr法)。
【図3】図3は、参考例1で合成したビタミンB12誘導体のMALDI−TOF−MSスペクトルである。(a)は全体のスペクトル、(b)は980−1060m/zの領域のスペクトルである。
【図4】図4は、参考例2で得たハイパーブランチポリマーの13C−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、参考例3で得たハイパーブランチポリマーの紫外可視吸収スペクトルである。
【図6】図6は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒の精製前のGPCチャートである。
【図7】図7は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒の精製後のGPCチャートである。
【図8】図8は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒のUV−visスペクトル(塩化メチレン)である。
【図9】図9は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒およびビタミンB12誘導体のCDスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒のTEM像である。
【図11】図11は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒の粒径分布(個数換算分布)を示す。
【図12】図12は、実施例6で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(アコシアノ体)のUV−visスペクトル(塩化メチレン)である。
【図13】図13は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)のUV−visスペクトル(塩化メチレン)である。
【図14】図14は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)のESRスペクトル(クロロホルム−ベンゼン(2:1v/v))である。
【図15】図15は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)のサイクリックボルタモグラムである。
【図16】図16は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)のサイクリックボルタモグラム(臭化フェネチル滴下後)である。
【図17】図17は、実施例1で合成したB12−HBPハイブリッド触媒のα帯の吸収極大波数と溶媒の極性パラメータETNとの相関を示す。
【図18】図18は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)について、CV測定したときの掃引速度の平方根に対するCoII/CoIピーク電流値の和のプロットである。
【図19】図19は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)をDMF中、−1.2VvsAg/AgClにて定電位電解したときのUV−visスペクトル変化を示す。
【図20】図20は、実施例7で合成したB12−HBPハイブリッド触媒(Co(II)体)をメタノール中で紫外線照射したときのUV−visスペクトル変化を示す。
【図21】図21は、HPEMA−HEMA−Hおよび実施例15で合成したB12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒(ヒドロキシル基修飾率37%)のGPCチャート(RI検出)である。
【図22】図22は、実施例15で合成したB12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒(ヒドロキシル基修飾率37%)のGPCチャート(590nm検出)である。
【図23】図23は、実施例15で合成したB12−HPEMA−HEMA−Hハイブリッド触媒(ヒドロキシル基修飾率37%)のUV−visスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイパーブランチポリマーの少なくとも1つの官能基にビタミンB12化合物を共有結合で固定化した構造を有し、ゲル浸透クロマトグラフィによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が2,000ないし20,000,000であるビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【請求項2】
前記官能基がヒドロキシル基であり、前記共有結合がエステル結合である、請求項1記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【請求項3】
下記の式(1)で表される構造を重合開始部位とし、下記の式(2)で表される直鎖構造の繰り返し単位と下記の式(3)で表される枝分かれ構造の繰り返し単位とを有し、かつ式(2)で表される直鎖構造の繰り返し単位の総数が1ないし100,000の整数で、式(3)で表される枝分かれ構造の繰り返し単位の総数が2ないし100,000の整数であるビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【化1】

【化2】

【化3】

[式(1)ないし式(3)中、A1は式(4)または式(5)
【化4】

【化5】

(式(4)および式(5)中、A3はエーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよ
い炭素原子数1ないし20の直鎖状、枝分かれ状または環状のアルキレン基を表し、X1
、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1ないし20のアル
キル基、または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表す。)
で表される構造を表し、A2はエーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよい炭素
原子数1ないし20の直鎖状、枝分かれ状または環状のアルキレン基を表し、R1は水素
原子またはメチル基を表し、R2は水素原子、炭素原子数1ないし20の直鎖状もしくは
枝分かれ状のヒドロキシルアルキル基、炭素原子数3ないし20の直鎖状もしくは枝分かれ状のエポキシ基を含むアルキル基、または式(6)
【化6】

(式中、R3ないしR9のいずれか1つは、前記式(2)中のA2−O基の酸素原子と共有
結合する単結合を表し、前記A2−O基と共有結合しないR3ないしR9は、それぞれ独立
してヒドロキシル基または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表し、Y1はシアノ
基、ヒドロキシル基またはメチル基を表し、Y2はCo原子に配位している水分子を表す
。)
で表されるビタミンB12化合物を表す(ただし、少なくとも1つ以上のビタミンB12化合物を含む。)。]
【請求項4】
分子末端にN,N−ジエチルジチオカーバメート基を有する、請求項3記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【請求項5】
前記A1が式(7)または式(8)
【化7】

【化8】

(式中、mは2ないし10の整数を表す。)で表される構造である、請求項3記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【請求項6】
前記A2が、−(CH2n−(式中、nは2ないし10の整数を表す。)である、請求

3記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【請求項7】
前記ビタミンB12化合物が式(9)
【化9】

(式中、R3ないしR8は、それぞれ独立してヒドロキシル基または炭素原子数1ないし20のアルコキシ基を表し、Y1はシアノ基、ヒドロキシル基またはメチル基を表し、Y2はCo原子に配位している水分子を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項3記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーを含むラジカル型有機合成反応触媒。
【請求項9】
脱ハロゲン化反応を促進することを特徴とする請求項8記載のラジカル型有機合成反応触媒。
【請求項10】
炭素−炭素結合反応を促進することを特徴とする請求項8記載のラジカル型有機合成反応触媒。
【請求項11】
ハイパーブランチポリマーの少なくとも1つのヒドロキシル基と、ビタミンB12化合物のいずれか1つのカルボキシル基とを、縮合剤の存在下で反応させることを特徴とするビタミンB12修飾ハイパーブランチポリマーの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2008−266571(P2008−266571A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49(P2008−49)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】