説明

ビニル基含有αオレフィン系重合体とその製法

【課題】狭分子量分布の結晶性ビニル基含有α-オレフィン/非共役環状ポリエン共重合体を提供すること。
【解決手段】
特定のα-オレフィンに由来する構成単位、及び特定のビニル含有非共役環状ポリエンに由来する構成単位からなる、狭分子量分布の結晶性ビニル基含有α−オレフィン系共重合体およびそれを含んでなる組成物である。該共重合体は、フェノキシイミン骨格を有する配位子を有する特定の遷移金属触媒から効率的に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル基を含有した結晶性のα-オレフィン系重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α-オレフィンと非共役ポリエンを共重合することで得られる結晶性のα-オレフィン重合体は、その二重結合を変性することで、シリコン変性オレフィン系ワックス等に変換が可能で、該シリコン変性オレフィン系ワックスは化粧用途等に有望である。(特許文献1)。このようなビニル基含有のα−オレフィン・非共役ポリエン重合体を製造する方法として、メタロセン系触媒によるビニル基含有非共役環状ポリエンの共重合が提案されているが、ビニル基含有非共役環状ポリエンの分子内に存在する二種類の二重結合(環状オレフィン部とビニル部)の内の環状オレフィン部のみの選択的重合が進行しない、すなわちビニル部も一部重合に関与してしまう結果、ポリマーへのビニル基導入効率が低下することが多かった。ビニル基含有量の高い共重合体を得ようとすると通常は分子量分布が広がってしまいゲル化が生じる等の問題がある。ひいては、機械物性、特に引張特性等の硬化材料に関わる物性に悪影響を及ぼす可能性があった。
【特許文献1】特願2003−415102
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の背景の下、結晶性のビニル基含有α-オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体(以下、ビニル基含有α-オレフィン系重合体と呼ぶことがある)の開発、及び、該ビニル基含有α-オレフィン重合体の効率的な製造方法が望まれている。
【0004】
本発明者らは、環状オレフィン部の重合反応性に優れる一方で、ビニル基含有環状オレフィンが有するビニル基の重合性が低いという反応選択性を有する重合系を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の重合条件下においてこのような重合反応が進行し、その結果として、狭分子量分布のビニル基含有α-オレフィン共重合体を開発することが可能となり、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るビニル基含有α−オレフィン共重合体(A)は、下記一般式(I)で表される炭素数2から30のα−オレフィン由来の構成単位と下記一般式(II)で表される化合物由来の構成単位とを含む結晶性の重合体である。
【0006】
【化1】

【0007】
(式(I)中、R300は炭素数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基または水素原子を示す。)
【0008】
【化2】

【0009】
〔式(II)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0ないし10の正の整数であり、R75〜R76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0010】
また、本発明に係るビニル基含有α−オレフィン系共重合体(A)は、通常の用途で使用される範囲においては、下記一般式(I)で表される炭素数2から30のα−オレフィン由来の構成単位と下記一般式(II)で表される化合物由来の構成単位からなる結晶性の重合体であることが好ましく、これら以外の任意成分を特に必要としない。
【0011】
α-オレフィン由来成分としては、一般式(I)の中から少なくとも1種以上のα-オレフィン由来成分が選ばれることが好ましく、さらにエチレンまたはプロピレン由来成分であることが好ましく、エチレン由来成分であることが特に好ましい。
【0012】
前記一般式(I)および(II)で表される構成単位の合計重量に対する(II)の割合をV重量%としたときに、Vが0.01〜20の範囲にあり、135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.01〜20dl/gの範囲にあり、融点が80℃以上であり、分子量分布Mw/Mnが2.7以下であることを特徴としている。
【0013】
本発明に係るビニル基含有α-オレフィン系重合体(A)は、
少なくとも一般式(I-a)で表される少なくとも1種の炭素数2から30のα−オレフィンと、一般式(II-a)で表される少なくとも1種の非共役環状ポリエンを、
【0014】
【化3】

【0015】
〔式(I-a)中、R300は水素原子または炭素数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【0016】
【化4】

【0017】
〔式(II-a)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0ないし10の正の整数であり、R75〜R76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0018】
(P)下記一般式(III)で表される遷移金属化合物と、(Q)(Q-1)有機金属化合物、(Q-2)有機アルミニウムオキシ化合物、(Q-3)遷移金属化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、とからなる触媒系を用いて製造されるが、本発明はこの触媒系に何ら限定されるものではない。
【0019】
【化5】

【0020】
〔式中、Mは3族から11族の遷移金属を表す。mは、1〜4の整数を示し、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R同士が結合されることはない)、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
本発明に記載のオレフィン重合方法により、効率良くビニル基含有α−オレフィン系共重合体(A)を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明のビニル基含有α−オレフィン系共重合体(A)に含まれるビニル基は架橋用途のみでなく、エポキシ化、ヒドロキシル化、カルボキシル化、アミノ化、ヒドロシリル化等の変性や、極性モノマーでグラフト変性を行うことによって、α−オレフィン共重合体に官能基を導入することが可能となり、極性基含有ポリオレフィン製造の原料として利用することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のビニル基含有α−オレフィン系重合体は、既存の重合体に比較して分子量分布が狭く、且つビニル基含有量が高いという特徴を有する。該共重合体からは加工性、強度特性に優れた架橋物を得ることができ、また、該共重合体に含まれるビニル基部分を極性基に変換することによって、接着性のポリオレフィンをはじめとした様々な機能が付与されたポリオレフィン系材料の提供を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のα−オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体、およびその製造方法について具体的に説明する。
【0024】
α−オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体(A)
[α-オレフィン]
本発明において使用可能なα-オレフィンは、前記一般式(I)に対応する下記一般式(I-a)で表されるモノマーである。
【0025】
【化6】

【0026】
〔式(I-a)中、R300は水素原子または炭素数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
上記α−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられるが、そのα−オレフィンとしては炭素数2〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。中でも、炭素原子数2〜10のα−オレフィンが好ましく、特にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましく、最も好ましいのはエチレンである。
【0027】
[非共役ポリエン]
本発明で用いられる非共役環状ポリエンは、前記一般式(II)に対応した下記式(II-a)で表されるポリエンである。
【0028】
【化7】

【0029】
〔式(II-a)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0ないし10の正の整数であり、R75〜R76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0030】
上記一般式(II-a)で表わされる非共役環状ポリエンとしては、具体的には、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセシル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、8-ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンなど挙げられる。このなかでも、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、8-ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンが好ましく、さらに5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましい。これらのノルボルネン化合物は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明のα−オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体の非共役環状ポリエン含量としては、前記一般式(II)で表される非共役環状ポリエン由来の構成単位の重量の、前記一般式(I)で表わされる炭素数2から30のα−オレフィン由来の構成単位と、前記一般式[II]で表される非共役ポリエン由来の構成単位の合計重量に対する割合をV重量%としたときに、Vが0.01〜25の範囲にあり、好ましくは0.1〜20であり、さらに好ましくは0.5〜15であり、特に好ましくは1.5〜12の範囲である。
【0032】
また本発明では、上記(II-a)で表される化合物の他に、本発明の目的とする物性を損なわない範囲で、以下に示す他の非共役ポリエン(II-a’)を併用することもできる。この場合、他の非共役ポリエン(II-a’)に由来する構成単位の重量は、前記一般式(I)で表わされる炭素数2から30のα−オレフィン由来の構成単位と、前記一般式(II)で表される非共役ポリエン由来の構成単位の重量の合計100重量%に対し、0.01〜15重量%程度である。本発明においては、他のポリエン(II-a’)に由来する構成単位を含まないことが好ましい態様である。
【0033】
このような、他の非共役ポリエン(II-a’)としては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエンなどが挙げられる。
【0034】
本発明のα−オレフィン・非共役環状ポリエン重合体(A)の135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は0.01〜20dl/gの範囲にあり、好ましくは0.02〜15dl/g、さらに好ましくは0.05〜10dl/gであることが望ましい。
【0035】
本発明のα−オレフィン・非共役ポリエン重合体(A)の分子量分布Mw/Mnは2.7以下であり、好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.1以下である。この分子量分布Mw/Mnが上記範囲にあると、加工性にすぐれるとともに、強度特性に優れた成形体を提供することができる。
【0036】
共重合体(A)を製造するための触媒系
好ましい特性を有する本発明の共重合体を製造するための使用可能な重合触媒系の構成としては、(P)下記一般式(II)で表される遷移金属化合物と、(Q)(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、(B-3)遷移金属化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、を用いることが好ましい。
【0037】
(P)遷移金属化合物
本発明で用いられるオレフィン重合触媒を構成する(P)遷移金属化合物は、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0038】
【化8】

【0039】
〔式中、Mは3族から11族の遷移金属を表す。mは、1〜4の整数を示し、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R同士が結合されることはない)、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0040】
Mは周期律表第3から11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3から6族の金属原子であり、より好ましくは4族または5族の金属である。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、コバルト、鉄、ルテニウム等が挙げられるが、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムであり、特に好ましくは、チタンである。
【0041】
mは1から4の整数を示すが、好ましくは1または2、さらに好ましくは2である。
【0042】
一般式(III)中、炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0043】
また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0044】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0045】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0046】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。
【0047】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0048】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0049】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
【0050】
次に上記で説明したR〜Rの例について、より具体的に説明する。
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などが挙げられる。アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。 アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
【0051】
〜Rは、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0052】
またRはフェニル基に直接結合した炭素が1級,2級および3級炭素である脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基および芳香族基であり、Rとして好ましい脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状(2級)のアルキル基;脂環族炭化水素基としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,4,6-トリメチルシクロヘキシル、3,5-ジメチルシクロヘキシル、2,3,4,5,6ペンタメチルシクロヘキシル、2,2-ジメチルシクロヘキシル、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキシル、3,5-ジ-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;芳香族基としてはフェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;および、これらの基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基または炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基などの置換基がさらに置換した基などが好ましく挙げられる。
【0053】
本発明では、Rとしては特に、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状(2級)のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることが好ましく、あるいはフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基であることも好ましい。
【0054】
また、mが2以上の場合には、R〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上の場合にはR同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0055】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
【0056】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0057】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0058】
炭化水素基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
【0059】
ヘテロ環式化合物残基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられる。
【0060】
酸素含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
イオウ含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p-トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p-クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p-トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
窒素含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
ホウ素含有基として具体的には、BR(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
【0064】
リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
ケイ素含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0066】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0067】
スズ含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0068】
ハロゲン含有基として具体的には、PF、BFなどのフッ素含有基、ClO、SbClなどの塩素含有基、IOなどのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
なお、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0071】
以下に、(P)上記一般式(III)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
【化12】

【0076】
【化13】

【0077】
【化14】

【0078】
【化15】

【0079】
【化16】

【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
なお、上記例示中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、n-Prはノルマルプロピル基を、i-Prはイソプロピル基を、n-Buはノルマルブチル基を、i-Buはイソブチル基を、t-Buはターシャリーブチル基を、Phはフェニル基を示す。
【0084】
このような遷移金属化合物(P)の製造方法は、特に限定されることなく、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0085】
まず、遷移金属化合物(P)を構成する配位子は、サリチルアルデヒド類化合物を、R-NHで表わされる第1級アミン類化合物(Rは前記と同義である。)、例えばアルキルアミン類化合物と反応させることにより得られる。具体的には、両方の出発化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、またはトルエン等の炭化水素溶媒が好ましい。次いで、室温から還流条件で、約1〜48時間攪拌すると、対応する配位子が良好な収率で得られる。配位子化合物を合成する際、触媒として、蟻酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒を用いてもよい。また、脱水剤として、モレキュラーシーブス、無水硫酸マグネシウムまたは無水硫酸ナトリウムを用いたり、ディーンスタークにより脱水しながら行うと、反応進行に効果的である。
【0086】
次に、こうして得られた配位子を遷移金属M含有化合物と反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させてフェノキサイド塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と低温で混合し、−78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。また、フェノキサイド塩を調製する際に使用する塩基としては、n−ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジン等を例示することができるが、この限りではない。
【0087】
また、化合物の性質によっては、フェノキサイド塩調製を経由せず、配位子と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することもできる。さらに、合成した遷移金属化合物中の金属Mを、常法により別の遷移金属と交換することも可能である。また、例えばR〜Rの一つ以上が水素である場合には、合成の任意の段階において、水素以外の置換基を導入することができる。
【0088】
また、遷移金属化合物を単離せず、配位子と金属化合物との反応溶液をそのまま重合に用いることもできる。
【0089】
(Q-1)有機金属化合物
本発明で用いられる(Q-1) 有機金属化合物として、具体的には下記のような周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
【0090】
(Q-1a) 一般式 RAl(OR)
(式中、R およびR は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0091】
(Q-1b) 一般式 M AlR
(式中、M はLi、NaまたはKを示し、R は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0092】
(Q-1c) 一般式 R
(式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、MはMg、ZnまたはCdである。)で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0093】
前記(Q-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物などを例示できる。
【0094】
一般式 RAl(OR)3−m
(式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 R AlX3−m
(式中、R は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 R AlH3−m
(式中、R は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 RAl(OR
(式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0095】
(Q-1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ tert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;(i-C)Al(C10)(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;R2.5Al(OR)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0096】
また(Q-1a)に類似する化合物も使用することができ、たとえば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C)AlN(C)Al(C)などを挙げることができる。
【0097】
前記(Q-1b)に属する化合物としては、
LiAl(C)、LiAl(C15)などを挙げることができる。またその他にも、(B-1) 有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムなどを使用することもできる。
【0098】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。
【0099】
(Q-1) 有機金属化合物のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0100】
上記のような(Q-1) 有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0101】
(Q-2) 有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で用いられる(Q-2) 有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0102】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0103】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0104】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0105】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
【0106】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0107】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0108】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0109】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(IV)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0110】
【化20】

【0111】
式中、Rは炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
【0112】
は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
【0113】
前記一般式(IV)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(V)で表されるアルキルボロン酸と、
−B(OH) …(V)
(式中、Rは前記と同じ基を示す。)
有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0114】
前記一般式(V)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0115】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(Q-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0116】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0117】
上記のような (Q-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0118】
(Q-3) 遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
本発明で用いられる遷移金属化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3) (以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0119】
具体的には、ルイス酸としては、BR(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0120】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0121】
【化21】

【0122】
式中、R9+としては、H+ 、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0123】
10〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0124】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0125】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0126】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0127】
9+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0128】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0129】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0130】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0131】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0132】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VII)または(VIII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0133】
【化22】

(式中、Etはエチル基を示す。)
【0134】
【化23】

【0135】
ボラン化合物として具体的には、たとえば、デカボラン; ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0136】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば、4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0137】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等との有機塩が使用できるが、この限りではない。
【0138】
上記のような (Q-3)イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0139】
本発明に係る遷移金属化合物を触媒とする場合、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)とを併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
【0140】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(P)、(Q-1) 有機金属化合物、(Q-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および(Q-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(Q)とともに、必要に応じて後述するような担体(R)を用いることもできる。
【0141】
(R)担体
本発明で用いられる(R)担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0142】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO-MgO、SiO-Al、SiO-TiO、SiO-V 、SiO-Cr、SiO-TiO-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiOおよび/またはAlを主成分とするものが好ましい。なお、上記無機酸化物は、少量のNaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaSO、Al(SO)、BaSO、KNO、Mg(NO)、Al(NO)、NaO、KO、LiOなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支ない。
【0143】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって、比表面積が50〜1000m/g、好ましくは100〜700m/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0144】
無機塩化物としては、MgCl、MgBr、MnCl、MnBr等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によってを微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0145】
本発明で用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0146】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl型、CdI型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0147】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO)・HO、α−Zr(HPO)、α−Zr(KPO)・3HO、α−Ti(HPO)、α−Ti(HAsO4)・HO、α−Sn(HPO)・HO、γ―Zr(HPO)、γ−Ti(HPO)、γ−Ti(NHPO)・HOなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0148】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜30000Åの範囲について測定される。半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0149】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0150】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)、Zr(OR)、PO(OR)、B(OR)などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13(OH)24]7+、[Zr(OH)14]2+、[FeO(OCOCH)]などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)、Al(OR)、Ge(OR)などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)などを加水分解して得た重合物、SiOなどのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0151】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0152】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0153】
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0154】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
[1] 成分(P)を単独で重合器に添加する方法。
[2] 成分(P)をおよび成分(Q)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[3] 成分(P)を担体(R)に担持した触媒成分、成分(Q)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[4] 成分(Q)を担体(R)に担持した触媒成分、成分(P)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[5] 成分(P)と成分(Q)とを担体(R)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0155】
上記[2] 〜[5] の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
【0156】
成分(Q)が担持されている上記[4]、[5]の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(Q)を、任意の順序で添加してもよい。この場合成分(Q)は、同一でも異なっていてもよい。
【0157】
また、上記の成分(R)に成分(P)が担持された固体触媒成分、成分(R)に成分(P)および成分(Q)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0158】
本発明に係るオレフィンの重合方法では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することによりオレフィン重合体を得る。
【0159】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0160】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(P)は、反応容積1リットル当り、通常10−12〜10−2モル、好ましくは10−10〜10−3モルになるような量で用いられる。
【0161】
成分(Q-1)は、成分(Q-1)と、成分(P)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(Q-1)/M〕が通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。成分(Q-2)は、成分(Q-2)中のアルミニウム原子と、成分(P)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(Q-2)/M〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。成分(B-3)は、成分(Q-3)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(Q-3)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0162】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm、好ましくは常圧〜50kg/cmの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0163】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する成分(Q)の量により調節することもできる。
【0164】
本発明のビニル基含有の結晶性α-オレフィン/非共役環状ポリエン共重合体(A)は、極性モノマー例えば不飽和カルボン酸またはその誘導体(例えば酸無水物、エステル)でグラフト変性することができる。このような不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0165】
不飽和カルボンの酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
【0166】
不飽和カルボン酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0167】
上記の不飽和カルボン酸等のグラフト変性剤(グラフトモノマー)は、それぞれ単独または2種以上の組み合わせで使用されるが、何れの場合も前述したグラフト変性前のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100g当たり、0.1モル以下のグラフト量にするのがよい。
【0168】
上記のようなグラフト量が上記範囲にあるα−オレフィン・非共役環状ポリエンランダム共重合体を用いると、耐寒性に優れた架橋成形体を提供し得る、流動性(成形加工性)に優れた重合体組成物が得られる。
【0169】
グラフト変性したα−オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体は、前述した未変性のα−オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体と不飽和カルボン酸またはその誘導体とを、ラジカル開始剤の存在下に反応させることにより得ることができる。
【0170】
グラフト反応に使用されるラジカル開始剤としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート等のパーオキシエステル類;ジシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;およびこれらの混合物などが挙げられる。中でも半減期1分を与える温度が130〜200℃の範囲にある有機過酸化物が好ましく、特に、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が好ましい。
【0171】
また、不飽和カルボン酸またはその誘導体(たとえば酸無水物、エステル)以外の極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0172】
また、本発明のビニル基含有の結晶性α-オレフィン/非共役環状ポリエン共重合体(A)の二重結合部をエポキシ化等の官能基変換をすることにより、下記一般式(IX)で表わされる官能基含有重合体に変換することができる。
【0173】
【化24】

【0174】
(上記一般式において、Jは酸素原子、硫黄原子、置換基R105を有する窒素原子を示す。R105は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。)
【0175】
さらに、本発明のビニル基含有の結晶性α-オレフィン/非共役環状ポリエン共重合体(A)、及び、上記の官能基含有重合体を適宜変性することにより、下記一般式(X)で表わされる官能基含有重合体に変換することもできる。
【0176】
【化25】

【0177】
(上記一般式中、X、Yは、一方が水酸基、ポリアルキレングリコール基またはアシルオキシ基を表し、他方は下記一般式(V)、一般式(VI)、一般式(VII)のいずれかで示される基、シアノ基、カルボキシル基、エステル基またはアミド基を表し、XとYは互いに結合して5員環を形成していてもよい。)
【0178】
【化26】

【0179】
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、R201は水素原子、炭化水素基、アシル基、ポリアルキレングリコール基を表す)
【0180】
【化27】

【0181】
(式中、R301,R302は同一または相異なり、水素原子、炭化水素基、アシル基、ポリアルキレングリコール基を表す)
【0182】
【化28】

【0183】
(式中、R401〜R403は同一または相異なり、水素原子、炭化水素基、アシル基、シアノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基を表す)
以下本願発明の実施例を記載する。
【0184】
なお、実施例、比較例で用いた共重合体の組成、極限粘度[η]、分子量分布(Mw/Mn)は、次に述べる方法で測定した。
極限粘度[η];重合体の極限粘度[η]は、135℃デカリン中で測定した。
分子量分布(Mw/Mn);重合体の分子量分布は、GPCにより求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表した。GPCには、カラムに東ソー(株)製のGMH−HT、GMH−HTLを用い、溶媒にはオルソジクロロベンゼンを用いた。
IV(ヨウ素価):NMRより二重結合量を測定したものを標準サンプルとしてIR測定用の検量線を作成(910cm-1のヒ゜ークの大きさ)し、同定した。
【実施例1】
【0185】
十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mLを挿入し、液相及び気相を100NL/hの流量のエチレンガスで飽和させた。その後、このオートクレーブにアルベマーレ製のメチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で1.25mmol、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)0.2ml、引き続き、遷移金属化合物(1)を0.001mmol加え、重合を開始した。上記のエチレンガス雰囲気下25℃常圧で10分間反応させた後、少量のイソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。重合終了後、反応物を5mLの濃塩酸を加えたアセトン/メタノール(それぞれ500mL)混合溶媒に投入してポリマーを全量析出し、撹拌後グラスフィルターでろ過した。ポリマーを130℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン/VNB共重合体を0.25g得た(活性:1500kg/mol・h)。極限粘度[η]は4.4、GPCによる分子量及び分子量分布測定の結果は、Mw;35万、Mw/Mn;2.04であった。IRにより換算したヨウ素価は35.5g/100gであった。
【0186】
【化29】

【実施例2】
【0187】
遷移金属化合物として、化合物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った結果、エチレン/VNB共重合体を1.51g得た(活性:9060 kg/mol・h)。極限粘度[η]は0.10、GPCによる分子量及び分子量分布測定の結果は、Mw;1400、Mw/Mn;1.89であった。IRにより換算したヨウ素価は26.7g/100gであった。
【0188】
【化30】

【0189】
〔比較例1〕
触媒として(t-フ゛チルアミト゛)シ゛メチル(テトラメチルーη5-シクロヘ゜ンタシ゛エニル)シランチタンシ゛クロリト゛(0.001mmol)/トリイソヒ゛チルアルミニウム(0.25mmol)/トリフェニルカルヘ゛ニウムテトラキス(ヘ゜ンタフルオロフェニル)ホ゛レート(0.0012mmol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で重合をおこなった結果、エチレン/VNB共重合体を0.19g得た(活性:1130 kg/mol・h)。GPCによる分子量及び分子量分布測定の結果は、Mw;45万、Mw/Mn;3.15であった。IRにより換算したヨウ素価は12.2g/100gであった。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の結晶性ビニル基含有α−オレフィン系共重合体からは、強度特性に優れた架橋物を得ることができる。さらに、該共重合体に含まれるビニル基部分を変性することによって極性基を導入することが可能になり、接着性ポリオレフィンをはじめとした様々な機能を付与した極性基含有ポリオレフィン材料を開発することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)
【化1】

(式(I)中、R300は水素原子または炭素数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。)で表される炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位と、

下記一般式(II)
【化2】

(式(II)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0ないし10の正の整数であり、R75〜R76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)
で表される環状ポリエンに由来する構成単位を含む、ポリマー骨格中にビニル基結合を含有した結晶性のα−オレフィン/非共役環状ポリエン共重合体(A)。
【請求項2】
α-オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項1記載の結晶性のエチレン/非共役環状ポリエン共重合体(A)。
【請求項3】
分子量分布(Mw/Mn)が2.7以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の共重合体(A)。
【請求項4】
(P)下記一般式(III)で表される遷移金属化合物と、(Q)(Q-1)有機金属化合物、(Q-2)有機アルミニウムオキシ化合物、(Q-3)遷移金属化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、とからなる触媒系を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【化3】

[式中、Mは3族から11族の遷移金属を表す。mは、1〜4の整数を示し、R〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R同士が結合されることはない)、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。]

【公開番号】特開2006−316145(P2006−316145A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138844(P2005−138844)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】