説明

ビニル水素ポリシロキサン接着剤組成物

本発明は、ビニル水素ポリシロキサンを提供する。このビニル水素ポリシロキサンは、少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子と、少なくとも2個のケイ素に結合したビニル基とを有するオルガノポリシロキサンとを含む。このビニル水素ポリシロキサンのケイ素原子の総数の割合として、ケイ素原子の約25%から約90%が水素原子と結合し、かつ約10%から約45%がビニル基と結合している。ケイ素に結合した水素基の数の、ケイ素に結合したビニル基の数に対する比は、約1.3から約6である。本発明は、少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンおよびヒドロシリル化触媒を含むシリコーン組成物;少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンの硬化生成物を含むシリコーン接着剤;および少なくとも1種の当該シリコーン接着剤を含む積層体も提供する。高温または直火に曝されると、これらのビニル水素ポリシロキサンは、チャーを形成し、種々の基材への接着を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、接着剤組成物、特に、ビニル水素ポリシロキサンを含む接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン接着剤は、高い熱安定性、良好な耐湿性、優れた柔軟性、高いイオン純度、低いアルファ粒子放出、および種々の基材への良好な接着性を含む、シリコーンに特有の特性の組合せによって、種々の用途において有用である。例えば、シリコーン接着剤は、自動車産業、電子産業、建設産業、電気機器産業、および航空宇宙産業において広く使用されている。
【0003】
しかし、従来のシリコーン接着剤は、高温、例えば直火に直接的接触することにより遭遇する温度に曝されると、接着剤は分解してチャー(char:炭化物)を生じる。このチャーは、典型的には、接着剤を基材へ接着不能にする粉末である。
【0004】
前述の事項を考慮して、硬化して、その接着剤の分解温度を超える温度への暴露中および暴露後も高度の接着を保持する接着剤を形成するシリコーン組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/088645号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/088646号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/092032号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2007/018756号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上で取り上げたニーズは、ビニル水素ポリシロキサンを提供する本発明の種々の実施態様によって満たされる。本明細書において用語「ビニル水素ポリシロキサン」とは、Si−H単位(例えば、MeHSiO2/2、HMeSiO1/2)およびSi−Vi単位(例えば、ViMeSiO2/2、ViMeSiO1/2、ViSiO3/2)の両方を含むオルガノポリシロキサンをさす。本発明のビニル水素ポリシロキサンは1分子あたり少なくとも2個のSi−H単位および少なくとも2個のSi−Vi単位を含む。ビニル水素ポリシロキサンは、燃焼または空気中高温、例えば約500℃から約1000℃に曝されると、ビニル水素ポリシロキサンの具体的組成に依存して、高収率でセラミック炭化物を形成する。しかし、このセラミック炭化物は、約700℃から約1000℃の温度範囲において種々の基材への接着を保持する。したがって、ビニル水素ポリシロキサンおよびそれを含む組成物は、例えば、耐火等級窓、例えばドア、窓、および防火壁に用いられるガラスなどに対する接着剤に有用となり得る。
【0007】
本発明の一つの実施態様では、ビニル水素ポリシロキサンを提供する。このビニル水素ポリシロキサンは、1分子あたり平均少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子と、少なくとも2個のケイ素に結合したビニル基とを含む。分子中のケイ素原子の総数のうち、25%から90%が水素原子に、および10%から45%がビニル基に結合している。さらに、ケイ素に結合した水素原子の、ケイ素に結合したビニル基に対する比は、1.3〜6である。
【0008】
本発明の別の実施態様では、シリコーン組成物を提供する。このシリコーン組成物は、(A)上述されたビニル水素ポリシロキサンと、(B)ヒドロシリル化触媒とを含む。
【0009】
本発明のさらなる実施態様では、シリコーン接着剤を提供する。接着剤は上述した少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンの硬化生成物を含む。
【0010】
本発明のさらに別の実施態様では、積層体を提供する。この積層体は第一の基材、第一の基材上に重ねられる少なくとも1つの追加の基材、および隣接した基材を接着するシリコーン接着剤コーティングを含む。これらの基材は、平面の、複雑な、またはでこぼこな外形を有する固いまたは柔軟な任意の材料からなっていてよい。接着剤コーティングは、各基材の少なくとも1つの面の少なくとも一部の上にある、ただし、接着剤コーティングの少なくとも一部が、隣接した基材の対向した面に直接的に接触していることを条件とする。接着剤コーティングは、上述した少なくとも1種のシリコーン接着剤を含み、単層コーティングであっても多層コーティングであってもよい。積層体は、炎への直接的暴露を含む、高熱〜厳しい高熱、例えば700℃から1000℃に曝されても接合を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の積層体の一つの実施態様の断面図を示す。
【図2】図2は、先の実施態様の積層体であって、第二の基材上の第二のシリコーン接着剤コーティングと、第一の基材の第二の反対側の面上の第三のシリコーン接着剤コーティングとをさらに含む積層体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴および長所を具体的な実施態様を時々参照しながら記述する。しかし、本発明はさまざまな形で具体化することができ、本明細書に説明する実施態様に限定されるものと解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が十分且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分伝達するであろう。
【0013】
別段の表示がない限り、明細書および請求項で用いた量、特性、重量、条件その他すべてを表す数は、すべての事例において用語「約」にて修飾されていると理解されるべきである。従って、別段の表示がない限り、明細書および請求項で説明する数値的特性は、本発明の実施態様で得られる所望の特性により変化することができる近似値である。本発明の広い範囲を説明する数値的範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例で説明される数値的値はできるだけ正確に報告する。しかし、数値的値は、本質的に、それぞれの測定で見られる誤差から生じるある種の誤差を含んでいる。
【0014】
本発明の実施態様によるビニル水素ポリシロキサンは、ケイ素に結合した水素原子(Si−H単位)と、ケイ素に結合したビニル基(Si−Vi単位)との両方を含むポリシロキサンである。各分子は、平均して少なくとも2個のSi−H単位と、少なくとも2個のSi−Vi単位とを含む。さらに、各分子は、モル%Si−H、モル%Si−Vi、およびモル比Si−H/Si−Viによって規定される。モル%Si−Hは、分子中のSi−Hのモル数の、分子中のケイ素の全モル数に対する比として定義される。同様に、モル%Si−Viは、分子中のSi−Viのモル数の、分子中のケイ素の全モル数に対する比として定義される。比Si−H/Si−Viは、モル%Si−Hの、モル%Si−Viに対する比として定義される。ビニル水素ポリシロキサンは、以下で記述するように、水素またはビニルのいずれでもない、ケイ素に結合した原子および基を含んでいてよい。
【0015】
本発明の実施態様によるビニル水素ポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、超分岐状、軽度に架橋した網目状、またはこれらの任意の混合組み合わせであってよく、オリゴマーから高分子量ポリマーを含むまでのざまざまの大きさであってよい。例えば、ビニル水素ポリシロキサンは、300から1,000,000まで;あるいは500から500,000まで;あるいは1,000から100,000まで;あるいは2,000から50,000まで;あるいは3,000から25,000までの重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0016】
平均式として表現すると、本発明の実施態様によるビニル水素ポリシロキサンは、例えば、式(I):
[(RSiO(3−m)/2)(OH)[(RSiO(2−n)/2)(OH)(RSiO1/2 (I)
(式中、各Rは、いずれも脂肪族不飽和を含まない、C1−6のヒドロカルビルまたはハロゲン置換C1−6ヒドロカルビルであり;各Rは、独立に、ビニルまたはRであり;各Rは、独立に、水素、ビニル、またはRであり;各Rは、独立に、水素、ビニル、またはRであり;各Rは、独立に、いずれも脂肪族不飽和を含まない、C1−10ヒドロカルビルまたはハロゲン置換C1−10ヒドロカルビルであり;xは0〜0.50であり;yは0.5〜0.999であり;zは0.001〜0.20であり;x+y+z=約1;ならびに、mおよびnは、それぞれ独立に、0〜0.05である)
で表すことができる。
【0017】
また、式(I)で、あらゆる変数が以下の条件でさらに規定される:(1)ビニル水素ポリシロキサンは、少なくとも2個のSi−H単位および少なくとも2個のSi−Vi単位を含み;(2)(上述により定義した)モル%Si−Hは、25%から90%まで、あるいは25%から86%まで、あるいは25%から80%まで、あるいは25%から72%まで、あるいは40%から90%まで、あるいは40%から86%まで、あるいは40%から80%まで、あるいは40%から72%までであり;(3)(上述により定義した)モル%Si−Vi単位は、10%から45%まで、あるいは10%から40%まで、あるいは10%から35%まで、あるいは10%から30%まで、あるいは20%から45%まで、あるいは20%から40%まで、あるいは20%から35%までであり;かつ、(4)(上述により定義した)比Si−H/Si−Viは、1.3から6まで、あるいは1.5から4まで、あるいは1.8から2.5までである。
【0018】
で表されるC1−6ヒドロカルビル基またはハロゲン置換ヒドロカルビル基は、脂肪族不飽和を含まず、典型的には1から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有する非環式ヒドロカルビル基またはハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐または非分岐構造を有していてよい。Rで表されるヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1‐メチルプロピル、2‐メチルプロピル、1,1‐ジメチルエチル、ペンチル、1‐メチルブチル、1‐エチルプロピル、2‐メチルブチル、3‐メチルブチル、1,2‐ジメチルプロピル、2,2‐ジメチルプロピル、およびヘキシルなど);シクロアルキル(例えば、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなど)が挙げられる。Rで表されるC1−6のハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、3,3,3‐トリフルオロプロピル、3‐クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2‐トリフルオロエチル、2,2,3,3‐テトラフルオロプロピル、および2,2,3,3,4,4,5,5‐オクタフルオロペンチルが挙げられる。
【0019】
で表されるC1−10ヒドロカルビル基またはハロゲン置換ヒドロカルビル基も、脂肪族不飽和を含まないが、1から10個の炭素原子を有していてよい。典型的には、6個を超える炭素原子が存在する場合には、少なくとも4個、あるいは少なくとも6個の炭素原子は環構造員である。したがって、Rに関して上述した基に加えて、R基は、さらなる基、例えば、メチルシクロヘキシル;ジメチルシクロヘキシル;ナフチル;トリル;キシリル;フェネチル;2‐フェニルプロピル;1‐フェニルプロピル;t−ブチルフェニル;ノルボルニル;またはトリフルオロメチルシクロヘキシルなどを含んでいてよい。
【0020】
式(I)中、下付き文字x、yおよびzは、ビニル水素ポリシロキサンにおいて適用される下付き文字x、yおよびzが指す式に適合するすべての単位のモル分率である。よって、たとえ単一のビニル水素ポリシロキサン分子が、例えば複数の単位:(RSiO(3−m)/2)(OH)を含み得るとしても、Rおよびmの選択は、そのような単位すべての全モル分率がxで選ばれる値に等しい限り、そのような単位すべてで同じである必要がないことは明らかである。下付き文字xは、典型的に、0から0.50までの値を有し;下付き文字yは、典型的に、0.50から0.999までの値を有し;および下付き文字zは、典型的に、0.001から0.20までの値を有する。
【0021】
また、式(I)中、下付き文字mおよびnは、式中の種々の単位に付随するヒドロキシ基の平均数を表す割合である。下付き文字mは、典型的に、0から0.05まで、あるいは0.01から0.04まで、あるいは0.01から0.03までの値を有し;下付き文字nは、典型的に、0から0.05まで、あるいは0.01から0.03まで、あるいは0.01から0.02までの値を有する。
【0022】
前記ビニル水素ポリシロキサン、このビニル水素ポリシロキサンを含む組成物、この組成物を含む接着剤、およびこの接着剤を含む製造された積層体の、接着性および高温特性に悪影響をもたらさない限り、少量のヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキルなどがビニル水素ポリシロキサン中に存在していてもよいことが理解されるであろう。
【0023】
限定することを意図しない代表的な実施態様では、式(I)のビニル水素ポリシロキサンのすべての基Rを、メチル基で表すことができる。このような代表的実施態様がもたらす平均式は、例えば式(II)で表すことができる。
[(RSiO(3−m)/2)(OH)[(RMeSiO(2−n)/2)(OH)(RMeSiO1/2 (II)
この代表的実施態様におけるSi−H、Si−ViおよびSi−H/Si−Viを説明する目的に限って、式(II)中、各Rは、独立に、ビニル、フェニル、またはメチルであり;各Rは、独立に、ビニル、水素、フェニル、またはメチルであり;各Rは、独立に、ビニル、水素、またはメチルであり;m、n、x、yおよびzは上述した式(I)と同じである。さらに、これらの変数は、上述した式(I)のビニル水素ポリシロキサンの条件と同じ条件で規定される。
【0024】
したがって、これらの代表的実施態様によるビニル水素ポリシロキサンの例示的な実例としては、以下のような分子が挙げられる:
(a)(HMeSiO2/20.64(ViMeSiO2/20.33(HMeSiO1/20.03
(b)(HMeSiO2/20.50(ViMeSiO2/20.27(PhMeSiO2/20.20(MeSiO1/20.03
(c)(ViSiO3/20.26(HMeSiO2/20.40(PhMeSiO2/20.20(HMeSiO1/20.14
(d)(MeSiO3/20.04(HMeSiO2/20.44(ViMeSiO2/20.25(PhMeSiO2/20.22(HMeSiO1/20.05
(e)(PhSiO3/20.10(ViSiO3/20.05(HMeSiO2/20.61(ViMeSiO2/20.15(HMeSiO1/20.09
実例(a)では、モル%Si−Hは67%(64%+3%)であり、モル%Si−Viは33%であり、Si−H/Si−Viは2.03である。実例(b)では、モル%Si−Hは50%であり、モル%Si−Viは27%であり、Si−H/Si−Viは1.85である。実例(c)では、モル%Si−Hは54%(40%+14%)であり、モル%Si−Viは26%であり、Si−H/Si−Viは2.08である。実例(d)では、モル%Si−Hは49%(44%+5%)であり、モル%Si−Viは25%であり、Si−H/Si−Viは1.96である。実例(e)では、モル%Si−Hは70%(61%+9%)であり、モル%Si−Viは20%(5%+15%)であり、Si−H/Si−Viは3.50である。
【0025】
本発明の実施態様によるビニル水素ポリシロキサンは、トルエンなどの有機溶媒中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を共加水分解することによって製造することができる。例えば、HMeSiO2/2単位、HMeSiO1/2単位、ViMeSiO2/2単位、およびViSiO3/2単位から本質的になる任意のシリコーンポリマーは、トルエン中、式:MeHSiClを有する化合物、式:MeViSiClを有する化合物、式:MeHSiClを有する化合物、および式:ViSiClを有する化合物を共加水分解することによって製造することができる。この加水分解物混合物から、塩酸水溶液およびシリコーン加水分解物が分離される。次いで、この加水分解物を水で水洗して残余の酸を除去し、穏やかな非塩基性縮合触媒の存在下で加熱して、ポリマーを所望の粘度に増粘させる。所望であれば、ポリマーを、ケイ素に結合したヒドロキシ基を縮合させ且つ低減させるために、有機溶媒中非塩基性縮合触媒でさらに処理することができる。あるいは、塩素以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH、−O(C、−OC(O)CH、−N(CH、−NHCOCH、および−SCHなどを有するシランを、共加水分解反応の出発物質として用いることができる。生成物の特性は、シランの種類、シランのモル比、縮合の程度、および処理条件次第である。
【0026】
本発明の実施態様は、さらに、(A)ビニル水素ポリシロキサン;および(B)ヒドロキシル化触媒を含むシリコーン組成物を対象とする。ここで、シリコーン組成物の成分(A)は先のいずれかの実施態様で記述したビニル水素ポリシロキサンである。
【0027】
前記シリコーン組成物の成分(B)は、成分(A)中のケイ素に結合した水素原子とビニル基との間のヒドロシリル化反応を開始させるヒドロシリル化触媒である。公知のヒドロシリル化触媒を成分(B)として用いることができる。具体的には、白金化合物、例えば、クロロ白金酸およびそのアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のジケトン錯体、白金のアセチルアセタート錯体、ならびにビニル官能性シロキサンとの白金錯体などによって例示される。白金化合物に加えて、ヒドロシリル化触媒は、ロジウムのトリフェニルホスフィン錯体などのロジウム化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体などのパラジウム化合物;過酸化物およびアゾ化合物などのラジカル発生剤;ならびに、ルテニウム、イリジウム、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、鉛、アルミニウム、およびニッケルの化合物によっても例示される。個々の場合に応じて、単一触媒が用いられるか、あるいは二種以上の異なる触媒が組み合わせられて用いられ得る。種々の可能性のうちで、白金化合物が最適であり、考慮される反応において優れた活性を示す。
【0028】
成分(B)は、典型的に、触媒量、すなわち、付加反応を生じさせるために最少の量で存在する。白金化合物の場合には、成分(B)は、好ましくは、成分(A)1,000,000重量部あたり白金として0.01から1,000重量部、より好ましくは成分(A)1,000,000重量部あたり白金として0.1から100重量部の濃度で存在する。
【0029】
これらの実施態様による、一般に上述された成分(A)および(B)を含む組成物は、追加の成分、例えば、ヒドロシリル化触媒抑制剤、接着促進剤、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、難燃剤、流動性調整剤、充填剤、希釈剤、またはこれらの任意の組み合わせを、そのような追加の成分が、ビニル水素ポリシロキサンが硬化して接着剤の分解温度を超える温度への暴露中および暴露後に高い炭化物収率および高い接着性を有する接着剤を形成することを妨げないことを条件として、含有することができる。
【0030】
ヒドロシリル化触媒抑制剤の例として、以下に限定されないが、トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、およびベンゾトリアゾールなどの窒素化合物;硫黄含有化合物;アセチレン化合物;アセチレン性アルコール;少なくとも2個のアルケニル基を含有する化合物;アルキニル官能性化合物;ヒドロペルオキシ化合物;ならびにマレイン酸誘導体が挙げられる。以下が好ましい抑制剤である:マレイン酸ジエステル;個々の分子中にアルキニルおよびアルコール性ヒドロキシルの両方を有する化合物(例えば、3,5‐ジメチル‐1‐ヘキシン‐3‐オール、2‐フェニル‐3‐ブチン‐2‐オール、および1‐エチニル‐1‐シクロヘキサノール);個々の分子中に2個以上のアルキニル基を含有する化合物;少なくとも2個のアルケニル基を含有する化合物、例えば1,3‐ジビニル‐1,1,3,3‐テトラメチルジシロキサンなど;ビニルシクロシロキサン;トリフェニルホスフィン類;3‐メチル‐3‐ペンテン‐1‐イン;ならびに3,5‐ジメチル‐3‐ヘキセン‐1‐イン。
【0031】
ヒドロシリル化触媒抑制剤を本発明のビニル水素ポリシロキサンの合成の際に用いる場合には、抑制剤の濃度は、ポリマー各1,000,000重量部に対して好ましくは0.1〜50,000重量部である。抑制剤の濃度が高すぎると、抑制剤は、硬化プロセスを阻害するであろう。
【0032】
例示的な反応性希釈剤として、以下に限定されないが、シランまたはシロキサンが挙げられ、それらのいずれも、アルケニル基、ケイ素に結合した水素基、またはそれらの混合を含んでいてよい。
【0033】
例示的な充填剤として、以下に限定されないが、無機充填剤、例えば、酸化物、窒化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、またはこれらの任意の混合物など;および有機充填剤、例えば、PTFE、ポリスチレン、シリコーンエラストマー粉末、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0034】
本シリコーン組成物は、典型的には、有機溶剤を含まない。しかし組成物は、組成物の粘度を下げるため、あるいは組成物の基材への適用を容易にするために、有機溶剤をさらに含んでいてよい。
【0035】
シリコーン組成物は、主成分および任意の追加の成分を、所定割合で、有機溶剤の助けにより、あるいは助けなしに、周囲温度で混合することによって製造することができる。種々の成分の添加順序は、シリコーン組成物をすぐに用いることとなる場合には重要ではないが、ヒドロシリル化触媒は、組成物の早期硬化を抑えるために、好ましくは約30℃以下の温度で最後に添加する。
【0036】
混合は、当業者に公知の任意の技術、例えば、ミリング、混合、および攪拌などによって、バッチ工程または連続工程のいずれかで行うことができる。具体的混合装置は、成分の粘度および最終シリコーン組成物の粘度によって決められる。
【0037】
本発明の実施態様は、シリコーン接着剤をさらに対象とする。シリコーン接着剤それぞれは、上述により説明しかつ例示した少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンの、硬化生成物を含む。用語「少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンの硬化生成物」は、本発明の実施態様による少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンから誘導され、三次元網目構造を有する架橋ポリシロキサンをさす。
【0038】
本シリコーン接着剤は、典型的に、多くの因子、例えば接着剤の組成および膜厚などによって決まる高い透明性を有する。例えば、50μmの厚さを有するシリコーン接着剤膜は、典型的に、電磁スペクトルの可視領域(約400nmから約700nm)内の光に対して、少なくとも80%、あるいは少なくとも90%の透過率を有する。
【0039】
シリコーン接着剤は、ビニル水素ポリシロキサンを含むシリコーン組成物を硬化することにより製造することができる。そのようなシリコーン組成物は、上述されている。シリコーン組成物は、大気圧下で、室温(23±2℃)から250℃、あるいは室温から200℃、あるいは室温から150℃の温度への暴露によって硬化され得る。シリコーン組成物を、一般に、ビニル水素ポリシロキサンを硬化(架橋)させるのに十分な時間の間、加熱する。例えば、組成物を、典型的に、150℃から200℃までの温度で、0.1時間から3時間加熱する。
【0040】
これらのビニル水素ポリシロキサン成分に起因して、本発明の実施態様によるシリコーン接着剤は、ビニル水素ポリシロキサンの特定の組成に依存して、炎または空気中例えば約500℃から約1000℃の高温に曝されると、高収率でセラミック炭化物を形成する。このセラミック炭化物は、約700℃から約1000℃までの温度範囲において種々の基材に対する接着を保持することができる。
【0041】
本発明の実施態様はさらに、第一の基材と、第一の基材上に重ねられる少なくとも1つの追加の基材と、隣接した基材を接着するシリコーン接着剤とを含む積層体に関する。本明細書において用いる用語「上に重ねられる」とは、各追加の基材が、第一の基材および任意の1つ以上の介在する基材の上方に位置を占めているが、それらに直接的に接触しないことをさす。
【0042】
基材は、平面的な、複雑な、または不規則な外形を有する、硬いかまたは柔軟な、任意の物質であってよい。基材は、電磁スペクトルの可視領域(約400nm〜約700nm)の光に対し透明であっても不透明であってもよい。また、基材は、導電体、半導体、または不導体であってよい。基材の例としては、以下に限定されないが、半導体(例えば、シリコン、二酸化ケイ素の表面層を有するシリコン、炭化ケイ素、リン化インジウム、およびヒ化ガリウムなど);石英;溶融石英;酸化アルミニウム;セラミック;ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、鉛アルカリガラス、ホウ酸塩ガラス、シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウ酸鉛ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、アルミノケイ酸リチウムガラス、カルコゲニドガラス、リン酸塩ガラス、およびアルカリバリウムケイ酸塩ガラスなど);金属箔;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなど);フルオロカーボンポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニルなど);ポリアミド(例えばナイロンなど);ポリイミド;ポリエステル(例えば、ポリ(メチルメタクリラート)など);エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスルホン;ならびにポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0043】
さらに、1つ以上の基材は強化されたポリマーフィルム、例えば強化されたシリコーン樹脂フィルムであってよい。強化されたシリコーン樹脂フィルムは、繊維強化材〔例えば、ガラス繊維織物もしくはガラス繊維不織布、または、ほぐしたガラス繊維(loose glass fiber)など〕を、シリコーン樹脂を含む硬化性シリコーン組成物に含浸させることによって製造することができる。この繊維含浸シリコーン樹脂組成物を、その後加熱して、シリコーン樹脂を硬化させる。種々のタイプの硬化性シリコーン組成物から製造された強化シリコーン樹脂フィルムは、以下の国際特許出願の公開:WO2006/088645、WO2006/088646、WO2007/092032、およびWO2007/018756において例示されているとおり、当技術分野で公知である。
【0044】
積層体は、典型的に、1から20の追加の基材、あるいは1から10の追加の基材、あるいは1から4つの追加の基材を含む。積層体が、積層ガラスである場合には、少なくとも1つの基材がガラスであり、任意に、少なくとも1つの基材が上述した強化シリコーン樹脂フィルムである。
【0045】
この積層体のシリコーン接着剤コーティングは、各基材の少なくとも1つの面の少なくとも一部に、シリコーン接着剤コーティングの少なくとも一部が隣接した基材の対向する両面に直接的に接触することを条件として、存在する。このシリコーン接着剤コーティングは、先の実施態様で提供した少なくとも1種のシリコーン接着剤を含む。接着剤のビニル水素ポリシロキサン成分が高温で接を保持する炭化物を形成するので、積層体は炎または高温に曝された場合に接合したままである。一つの実施態様では、積層体は、約700℃から約1000℃の炎源に少なくとも30から120分間曝された後でも接合したままである。
【0046】
前記シリコーン接着剤コーティングは、シリコーン接着剤の1層を含む単一層コーティングであっても、少なくとも2種の異なるシリコーン接着剤の2つ以上の層を含む多層コーティングであってもよい。多層コーティングでは、直接的に隣接する層が、異なるシリコーン接着剤を含んでいてよい。本明細書で用いる用語「異なる」は、少なくとも2種のシリコーン接着剤のそれぞれが(1)少なくとも2種のシリコーン接着剤のうちのもう一つの硬化組成と同じでない硬化組成を有すること、(2)少なくとも2種のシリコーン接着剤のうちのもう一つの硬化物特性と異なる硬化物特性を示すこと、または、(3)(1)および(2)の両方であることを意味する。多層コーティングは、例えば、2から7層、2から5層、または2から3層を含んでもよい。しかし、多層コーティングの全体の厚さが約10mmを超えない限り、任意の層の数が本発明の範囲内で想定される。
【0047】
単一層シリコーン接着剤コーティングは、例えば、0.03μmから10mm、0.1μmから1mm、または1μmから10μmの厚さを有することができる。多層コーティングは、例えば、0.06μmから1mm、0.2μmから2mm、または1μmから150μmの厚さを有することができる。シリコーン接着剤コーティングの全体の厚さが0.03μm未満であると、コーティングは不連続になり得る。シリコーン接着剤コーティングの厚さが10mmを超えると、コーティングは接着性の低下、クラッキング、または両方を示す可能性がある。
【0048】
積層体を形成するため、最初に、シリコーン接着剤コーティングを第一の基材の少なくとも1つの面の少なくとも一部に適用する。ここで、シリコーン接着剤および基材は、上述により説明し、例示したとおりのものである。シリコーン組成物を、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、スクリーンプリンティング、およびロールコーティングなどの従来法を用いて、基材に適用することができる。溶剤が存在する場合には、溶剤は、典型的には、フィルムを加熱する前に被覆基材から蒸発させる。蒸発に適する任意の手段、例えば簡単な空気乾燥、真空の適用、または加熱(最高50℃まで)を用いることができる。接着剤コーティングは、基材の1つ以上の面の一部、または各基材の1つ以上の面のすべてに適用することができる。例えば、積層体がガラスペインを含む積層ガラスであれば、シリコーン接着剤コーティングは、各ペインの一つの面上に、両面上に、または両面上および端部に存在していてよい。その結果、追加の基材を接着剤コーティング上に適用し、接着剤を硬化させることができる。さらに、最上部の基材上にコーティングプロセスを繰返し、その後さらなる追加の基材を適用することによって、追加の基材を適用することができる。
【0049】
任意に、適用したシリコーン接着剤コーティングの膜厚は、以下の工程を1回以上繰り返すことにより増やすことができ、積層体の追加の基材の適用に備えて最上部層を未硬化のままにしておくために最後の繰り返しにおいて工程(ii)を省略することができる:(i)上述したビニル水素ポリシロキサンを含むシリコーン組成物を基材に適用して、単一層または多層コーティングを形成させる;(ii)シリコーン接着剤を製造する方法において上述した条件下で、コーティングのシリコーン組成物を硬化させる。このような場合、シリコーン組成物を、基材よりむしろ硬化した接着剤膜上に適用し、同じシリコーン組成物を各適用に用いる。
【0050】
多層シリコーン接着剤コーティングは、コーティングの隣接層が互いに異なる組成または異なる硬化物特性を有するシリコーン接着剤を用いて製造されることを除いて、単一層コーティングを製造するに用いられる方法と同じ方法で製造することができる。そのような製法では、典型的に、各シリコーン接着剤コーティングを、シリコーン接着剤の次の層を適用する前に、少なくとも部分的に硬化させる。例えば、二層を有するシリコーン接着剤コーティングを含むコーティングされた基材は、(i)上述したシリコーン組成物を基材に適用して第一のコーティングを形成させる工程、(ii)第一のコーティングのビニル水素ポリシロキサンを少なくとも部分的に硬化させる工程、(iii)(i)における組成とは異なるシリコーン組成物を、部分的に硬化した第一のコーティング上に適用して第二のコーティングを形成させる工程、および(iv)第二のコーティングのビニル水素ポリシロキサンを硬化させる工程によって製造することができる。工程(ii)から(iv)は、3層以上を含むシリコーン接着剤コーティングを形成することが所望される場合には繰返すことができる。すべての事例において、工程(iv)を、コーティングプロセスの最後の繰り返しで省略して、積層体の次の基材の適用に備えて最上部層を未硬化のままにしておく。
【0051】
図1に示すように、本発明による積層体の一つの実施態様は、第一の対向面100Aおよび第二の対向面100Bを有する第一の基材100;第一の基材100の第一の対向面100A上の第一のシリコーン接着剤コーティング102(ここで、第一シリコーン接着剤コーティング102は、上述により説明した少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンの硬化生成物を含む);および第一のシリコーン接着剤コーティング102上の第二の基材104、からなる。
【0052】
図2に示すように(同種の参考数字は同種の要素を表している)、積層体の先の実施態様は、第二の基材104上に第二のシリコーン接着剤コーティング106、および第一の基材100の反対側の第二の面100B上に第三のシリコーン接着剤コーティング108(ここで第二および第三の接着剤コーティングは、それぞれ、上述により説明した少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンポリマーの硬化生成物を含む)を含むことができる。
【0053】
積層体を製造するに適した方法を、図1で示した積層体についてここで説明する。この積層体は、(i)上述したシリコーン組成物を基材の第一の面上に適用して第一の接着剤膜を形成させる工程;(ii)第一の接着膜上に第二の基材を適用する工程;および(iii)第一の接着剤膜のビニル水素ポリシロキサンポリマーを硬化させる工程によって製造することができる。追加のシリコーン接着剤コーティングおよび基材を含む積層体は、同様の方法で製造することができる。積層体が少なくとも1つの多層シリコーン接着剤コーティングを含む場合には、典型的に、コーティングの各層を、次の層が形成される前に少なくとも部分的に硬化させる。
【実施例】
【0054】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解されるであろう。これらの実施例は、例証のために示すものであり、限定することを意図するものではないことを当業者は認識するであろう。
【0055】
本発明により具体化される、例示的なビニル水素ポリシロキサン組成物を、表1に記載した出発物質から以下の方法によって製造した:(1)シランおよびトルエンの混合物を、冷却した脱イオン水に、攪拌しながら徐々に添加した。その間、反応混合物温度は、氷浴を用いて30℃以下に制御した;(2)添加完了後、反応混合物を60℃で10分間攪拌した;(3)混合物を分液ロートで相分離させ、水相を排出し、有機相を脱イオン水で4回洗浄した;(4)次いで、水洗した溶液を、0.5重量%のDowex2030(登録商標)固体酸触媒(架橋された、スルホン化ポリスチレン、ダウコーニング社)の存在下で1時間加熱還流させ、その間ディーン・スターク・トラップを用いて連続的に水を除去した;(5)固体触媒をろ過によって除去した;(6)トルエン溶媒を真空ストリッピングによって除去した。最終生成物は透明な液体であった。ポリジメチルシロキサン(PDMS)を対照とするゲル透過クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量を表1に表示した。モル分率を単位として算出した出発物質の量を表2に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
接着剤サンプルを、ガラスバイアル中で、上記液体1.5gと1000ppmの白金濃度を有する白金触媒溶液0.01gとを混合することによって調製し、150℃15分間硬化させ、空気中、500℃にて15分間加熱した。500℃で加熱した後の重量損失を、各サンプルについて表3に示した。
【0059】
【表3】

【0060】
例示した各接着剤を用いて、6インチx6インチのG/A/F/A/G積層体を製造した。ここで、Gは、1/8インチ厚フロートガラスを表し;Aは、上述したとおりに製した接着剤組成物を表し;かつ、Fは、強化フィルムであるダウコーニング(登録商標)0−3015(強化された、低粘度二液型シリコーン樹脂、ダウコーニング社)を表す。選択した接着剤を6インチx6インチの2枚のガラス上に塗り、接着剤を塗布したガラス間にダウコーニング0−3015シリコーン樹脂フィルムを挟み込むことによって積層体を製造した。この積層体を、真空中、ミニクレーブ(mini‐clave)内で2時間脱気し、真空を維持しながら1気圧の下で150℃にて2時間硬化させた。
【0061】
硬化した積層体を光透過性について調べた。満足できる光学的品質を有する積層体は、通常80%を超える可視光の透過を有していた。その後、これらをトーチを用いて10分間燃焼させ、燃焼試験後のフィルムのガラスへの接着を、保持された接着に関して評価した。
【0062】
観察により接着レベルを特定し、表に示した。表3中、「良好」な保持された接着は、火炎露出後に、中間層フィルムが2枚のガラス板の少なくとも1枚に強力に接着したままであり、少なくとも一部のエリアが両面をしっかりと接着していると観察されたことを意味する。「接着不可」は、火炎曝露後に、ガラスの両板が自然にばらばらに分離したことを意味する。「不十分」は、ガラス板のほんのわずかな部分のみが中間層に接着したままであることを意味する。
【0063】
比較として、積層体を、樹脂またはポリマーをベースとする従来の接着剤を用いて製造した。用いた従来からの具体的接着剤は、(1)表3中の実施例6として示した、過酸化物硬化ポリジメチルシロキサン、および(2)表3中の実施例7として示した、未処理のダウコーニング0−3015樹脂であった。比較の積層体は、トーチで燃焼させた後、何らの接着の保持も認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[(RSiO(3−m)/2)(OH)[(RSiO(2−n)/2)(OH)(RSiO1/2 (I)
(式中、各Rは、いずれも脂肪族不飽和を含まない、C1−6ヒドロカルビルまたはハロゲン置換C1−6ヒドロカルビルであり、;各Rは、独立に、ビニルまたはRであり;各Rは、独立に、水素、ビニル、またはRであり;各Rは、独立に、水素、ビニル、またはRであり;各Rは、独立に、いずれも脂肪族不飽和を含まない、C1−10のヒドロカルビルまたはハロゲン置換C1−10ヒドロカルビルであり;xは0〜0.50であり;yは0.5〜0.999であり;zは0.001〜0.20であり;x+y+z=約1であり;かつ、mおよびnはそれぞれ、独立に、0〜0.05である)
のビニル水素ポリシロキサンであって、
前記ビニル水素ポリシロキサンは、少なくとも2個のケイ素に結合した水素原子と、少なくとも2個のケイ素に結合したビニル基とを含み;
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の25%〜90%が水素原子であり、R基、R基およびR基の10%〜45%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.3〜6であり;かつ、
前記ビニル水素ポリシロキサンの重量平均分子量が300g/モル〜1,000,000g/モルである、ビニル水素ポリシロキサン。
【請求項2】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の40%から72%が水素原子であり、R基、R基およびR基の20%から35%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.8〜2.5である、請求項1に記載のビニル水素ポリシロキサン。
【請求項3】
前記ビニル水素ポリシロキサンにおいて、各R基がメチルであり;各R基が、独立に、ビニル、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、またはメチルから選ばれる、請求項1に記載のビニル水素ポリシロキサン。
【請求項4】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の25%から80%が水素原子であり、R基、R基およびR基の10%から40%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.5〜4である、請求項3に記載のビニル水素ポリシロキサン。
【請求項5】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の40%から80%が水素原子であり、R基、R基およびR基の20%から40%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.5〜4である、請求項4に記載のビニル水素ポリシロキサン。
【請求項6】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の25%から72%が水素原子であり、R基、R基およびR基の10%から35%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.8〜2.5である、請求項3に記載のビニル水素ポリシロキサン。
【請求項7】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の40%から72%が水素原子であり、R基、R基およびR基の20%から35%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.8〜2.5である、請求項6に記載のビニル水素ポリシロキサン。
【請求項8】
(A)請求項1に記載の少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサン;および
(B)少なくとも1種のヒドロシリル化触媒
を含むシリコーン組成物。
【請求項9】
前記ビニル水素ポリシロキサンにおいて、各R基がメチルであり;各R基が、独立に、ビニル、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、またはメチルから選ばれる、請求項8に記載のシリコーン組成物。
【請求項10】
前記シリコーン組成物が有機溶剤を含まない、請求項9に記載のシリコーン組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のビニル水素ポリシロキサンの少なくとも1種の硬化生成物を含むシリコーン接着剤。
【請求項12】
前記ビニル水素ポリシロキサンにおいて、各R基がメチルであり;各R基が、独立に、ビニル、フェニルまたはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、またはメチルから選ばれる、請求項11に記載のシリコーン接着剤。
【請求項13】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の25%から80%が水素原子であり、R基、R基およびR基の10%から40%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.5〜4である、請求項12に記載のシリコーン接着剤。
【請求項14】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の40%から80%が水素原子であり、R基、R基およびR基の20%から40%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.5〜4である、請求項13に記載のシリコーン接着剤。
【請求項15】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の25%から72%が水素原子であり、R基、R基およびR基の10%から35%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.8〜2.5である、請求項12に記載のシリコーン接着剤。
【請求項16】
前記ビニル水素ポリシロキサン中のR基、R基およびR基の総数のうち、R基、R基およびR基の40%から72%が水素原子であり、R基、R基およびR基の20%から35%がビニル基であり、水素である前記基の数の、ビニルである前記基の数に対する比が、1.8〜2.5である、請求項15に記載のシリコーン接着剤。
【請求項17】
第一の基材;
前記第一の基材上に重ねられる少なくとも1つの追加の基材;ならびに
隣接する基材を接合するシリコーン接着剤コーティング
を含む積層体であって、
前記シリコーン接着剤コーティングが、請求項1に記載の少なくとも1種のビニル水素ポリシロキサンの硬化生成物を含み;かつ、
前記シリコーン接着剤コーティングが、各基材の少なくとも1つの面の少なくとも一部の上にあり、但し、前記接着剤コーティングの少なくとも一部が、隣接する基材の対向した両面に直接的に接触していることを条件とする、積層体。
【請求項18】
前記ビニル水素ポリシロキサンにおいて、各R基がメチルであり;各R基が、独立に、ビニル、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、フェニル、またはメチルから選ばれ;各R基が、独立に、ビニル、水素、またはメチルから選ばれる、請求項17に記載の積層体。
【請求項19】
前記積層体が、1〜50個の追加の基材を有する、請求項17に記載の積層体。
【請求項20】
少なくとも1つの前記基材がガラスである、請求項17に記載の積層体。
【請求項21】
少なくとも1つの前記基材が、未強化ポリマーフィルムである、請求項17に記載の積層体。
【請求項22】
前記未強化ポリマーフィルムが、シリコーン樹脂フィルムである、請求項21に記載の積層体。
【請求項23】
少なくとも1つの前記基材が、強化ポリマーフィルムである、請求項17に記載の積層体。
【請求項24】
前記強化ポリマーフィルムが、強化シリコーン樹脂フィルムである、請求項23に記載の積層体。
【請求項25】
前記シリコーン接着剤コーティングが、単層コーティングである、請求項17に記載の積層体。
【請求項26】
前記単層コーティングが、0.1μm〜1mmの膜厚を有する、請求項25に記載の積層体。
【請求項27】
前記シリコーン接着剤コーティングが、第一のシリコーン接着剤の少なくとも1つの層と、少なくとも1種の第二のシリコーン接着剤の少なくとも1つの層とを含む多層コーティングであり、前記少なくとも1種の第二のシリコーン接着剤が、前記第一のシリコーン接着剤とは異なる組成または異なる硬化物特性を有する、請求項17に記載の積層体。
【請求項28】
前記多層コーティングが、二層コーティング、三層コーティング、四層コーティング、五層コーティング、六層コーティング、または七層コーティングである、請求項27に記載の積層体。
【請求項29】
前記多層コーティングが、二層コーティング、三層コーティング、四層コーティング、または五層コーティングである、請求項28に記載の積層体。
【請求項30】
前記多層コーティングが、二層コーティングまたは三層コーティングである、請求項29に記載の積層体。
【請求項31】
前記多層コーティングが0.2μm〜2mmの膜厚を有する、請求項27に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526178(P2012−526178A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509821(P2012−509821)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/030023
【国際公開番号】WO2010/129123
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】