説明

ビンカアルカロイドN酸化物および類似体による過剰増殖疾患の処置

本発明は、過増殖障害を処置するための活性を有するビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物に関する。さらに、本発明は、ビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物を、過増殖障害を処置するために単独で、または一つもしくは複数の他の活性物質もしくは処置と併用して用いる薬学的組成物および方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、過剰増殖障害を処置するための活性を有するビンカアルカロイドN酸化物に関する。さらに、本発明は、過剰増殖障害を処置するために、ビンカアルカロイドN酸化物を単独で、または一つもしくは複数の他の活性物質もしくは処置と併用して用いる薬学的組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
米国において4人に1人は癌により死亡し、癌は死因の第二位である。U.S. Cancer Statistics Working Group; United States Cancer Statistics: 2000 Incidence, Atlanta (GA): Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, and National Cancer Institute (2003)(非特許文献1)。米国国立癌研究所は、ほぼ1000万人のアメリカ人が浸潤性癌の既往を有するが、米国癌学会は、2004年において、130万人を超えるアメリカ人が浸潤性癌と診断され、50万例を超える症例が死亡すると報告している。American Cancer Society, Cancer Facts & Figures 2004(非特許文献2)。これらの統計値には、米国において診断されると予想される基底細胞癌および扁平上皮癌の100万人の症例は含まれない。
【0003】
癌は、以下が含まれる、癌が発生する臓器および細胞組織に基づいて分類される:(i)癌腫(上皮組織、すなわち体表面を覆う、または内部臓器および様々な腺の内側に並ぶ細胞層を起源とする最も一般的な種類の癌):(ii)白血病(骨髄、リンパ節、および脾臓が含まれる血液形成組織を起源とする);(iii)リンパ腫(リンパ系の細胞を起源とする);(iv)黒色腫(皮膚の上皮細胞の間に存在する色素細胞を起源とする);および(v)肉腫(骨、筋、および血管のような体の結合組織を起源とする)。(Molecular Biology of the Cell: Third Edition, "Cancer," Chapter 24, pp.1255-1294, B. Alberts et al., (eds.), Garland Publishing, Inc., New York (1994)(非特許文献3);およびStedman's Pocket Medical Dictionary; Williams and Wilkins, Baltimore (1987)(非特許文献4)を参照されたい)。これらの広い癌の分類において、例を挙げれば、乳癌、肺癌、膵臓癌、結腸癌、前立腺癌のような100を超える癌の亜分類が存在する。
【0004】
癌細胞は、様々な化学物質、放射線、ウイルス、に対する曝露による、またはいくつかのまだ完全に理解されていない内部の細胞シグナル伝達事象が起こった場合の細胞DNAに対する損傷(すなわち、変更されたDNA配列または変更された発現パターン)の結果として発生する。たいていの場合、細胞DNAが損傷されるようになると、細胞は死滅するか、またはDNAを修復することができる。しかし、癌細胞の場合、損傷したDNAは修復されず、細胞は分裂し続け、改変された細胞生理学および機能を示す。
【0005】
新生物または腫瘍は、異常な加速された生育速度(すなわち、過剰増殖細胞生育)に起因する細胞塊である。腫瘍細胞が一つの塊に限定され続ける限り、腫瘍は良性であると見なされる。しかし、癌様腫瘍は、他の組織の浸潤能を有し、悪性と呼ばれる。一般的に、癌細胞は、二つの遺伝的特性:すなわち細胞とその子孫が1)正常な制止に抵抗して繁殖する、および2)他の細胞の領土に浸潤して定着すること、によって定義される。
【0006】
癌様腫瘍は、非常に複雑な脈管構造と分化組織とを含む。癌様腫瘍の大多数は、放射線療法および化学療法が含まれる標準的な抗癌剤処置に対して比較的耐性である低酸素成分を有する。Brown, Cancer Res. 59:5863 (1999)(非特許文献5);およびKunz, M. et al, Mol Cancer 2:1 (2003)(非特許文献6)。Thomlinson and Grayは、血管と壊死腫瘍組織との間に存在する組織の厚さ100〜150 μmの低酸素層について記述するヒト腫瘍の最初の解剖学的モデルを紹介した。
【0007】
研究により、多数の癌様組織内の低酸素組織が一連の複雑な機構によって癌の進行を促進することが示されている。Brown、前記、およびKunzら、前記を参照されたい。これらは、一定のシグナル伝達経路および遺伝子調節機構の活性化、遺伝子変異の選択プロセスの誘導、腫瘍細胞のアポトーシス、および腫瘍の血管新生である。これらの機構のほとんどは腫瘍の進行に寄与する。したがって、組織の低酸素症は、腫瘍の攻撃性および転移に関する中心的な要因であると見なされている。腫瘍内の低酸素組織を標的とする治療は、確かに腫瘍関連癌および/または障害に苦しむ患者に対して改善された処置を提供するであろう。
【0008】
癌のほかに、所定の組織における低酸素症の発症に関連する多数の過剰増殖疾患および/または障害が存在する。たとえば、Shweikiらは、不適切な酸素レベルによってしばしば、低酸素組織の需要を代償するために、新生血管形成が起こることを説明している。新生血管形成は、血管内皮増殖因子(VEGF)のような一定の増殖因子の発現によって媒介される。Shweiki et al., Nature 359:843 (1992)(非特許文献7)。しかし、組織発現を制御するための十分なフィードバック機構がないまま、一定の組織または増殖因子が低酸素症に反応して直接または間接的にアップレギュレートされると、様々な疾患および/または障害が結果として起こる可能性がある(すなわち、低酸素症により悪化した過剰増殖)。例として、VEGFの過剰発現レベルを有する低酸素症により悪化した過剰増殖疾患および/または障害には、加齢黄斑変性および糖尿病性網膜症のような眼の血管新生疾患と共に肝硬変が含まれる。Frank, Ophthalmic Res. 29:341 (1997)(非特許文献8);Ishibashi et al, Graefe's Archive Clin. Exp. Ophthamol. 235:159 (1997)(非特許文献9);Corpechot et al., Hepatology 35:1010 (2002)(非特許文献10)を参照されたい。
【0009】
ビンカアルカロイドは、マダガスカルツルニチニチソウ(Madagascar periwinkle)において当初発見されたクラスの化学療法剤である。現在公知のビンカアルカロイドには、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが含まれる。ビンカアルカロイドは、分裂中期における有糸分裂を阻害することによって作用する。これらのアルカロイドは、チューブリンに結合し、このように、細胞が分裂する際にその染色体を周囲に移動させるために必要な紡錘糸の形成を防止する。これらのアルカロイドはまた、細胞のDNAおよびRNA合成能を妨害するように思われる。それらは全て、1週間に1回、その硫酸塩の剤形で静脈内投与されるが、これらの溶液は不適切に投与されれば致死的となり、静脈から漏出するとかなりの組織刺激を引き起こしうる。さらなる詳細に関しては、米国特許第6,555,547号(特許文献1)を参照されたい。
【0010】
米国特許第6,365,735号(特許文献2)は、以下の一般式(I)のビンカアルカロイドを調製するためのプロセスを開示している:

式中、
R'1は、水素原子、またはアルコキシ、アシル、ホルミル、もしくはハロゲノアシル基を表し、
R'2は、水素原子またはアルキル基を表し、
R'3およびR"3は、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR'3およびR"3は共にカルボニル基を形成し、またはそうでなければR'3およびR'5は共にエポキシ架橋もしくは二重結合を形成し、
R'4は、水素原子、またはアルキルオキシカルボニル、ヒドロキシメチル、もしくはアルカノイルオキシメチル基を表し、好ましくはアルキルオキシカルボニル基を表し、
R'5およびR"5は、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシル、アルカノイルオキシル、エチル、もしくは2-ヒドロキシエチル基を表し、
R'6は、水素原子、またはエチル、2-ヒドロキシエチル、もしくはアセチル基を表し、
R'7は、水素原子またはシアニド基を表し、
R1は、水素原子、またはアルキル、ホルミル、もしくはアシル基を表し、好ましくは水素またはアルキル基を表し、
R2は、水素原子またはアルコキシ基を表し、
R3は、水素原子、ヒドロキシル、もしくはアルカノイルオキシル基を表し、またはそうでなければR3およびR4は共に、エポキシ架橋もしくは二重結合を形成し、
R4は、水素原子、またはヒドロキシルもしくはアルカノイルオキシル基を表し、またはそうでなければR4およびR5は共にエポキシ架橋を形成し、
R6は、アルキルオキシカルボニル、ヒドラジド、アセトアミド、ヒドロキシメチル、またはアルカノイルオキシメチル基を表し、
R5およびR7は、水素原子、またはヒドロキシルもしくはアルカノイルオキシル基を表すと共に、その酸付加塩およびその四級アンモニウム塩を表す。
【0011】
ビンブラスチン、ビンクリスチン、アンヒドロビンブラスチンおよび微の出るビンのようなさらなるクラスのビンカアルカロイドと共に特異的ビンカアルカロイドも同様に開示される。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,555,547号
【特許文献2】米国特許第6,365,735号
【非特許文献1】U.S. Cancer Statistics Working Group; United States Cancer Statistics: 2000 Incidence, Atlanta (GA): Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, and National Cancer Institute (2003)
【非特許文献2】American Cancer Society, Cancer Facts & Figures 2004
【非特許文献3】Molecular Biology of the Cell: Third Edition, "Cancer," Chapter 24, pp.1255-1294, B. Alberts et al., (eds.), Garland Publishing, Inc., New York (1994)
【非特許文献4】Stedman's Pocket Medical Dictionary; Williams and Wilkins, Baltimore (1987)
【非特許文献5】Brown, Cancer Res. 59:5863 (1999)
【非特許文献6】Kunz, M. et al, Mol Cancer 2:1 (2003)
【非特許文献7】Shweiki et al., Nature 359:843 (1992)
【非特許文献8】Frank, Ophthalmic Res. 29:341 (1997)
【非特許文献9】Ishibashi et al, Graefe's Archive Clin. Exp. Ophthamol. 235:159 (1997)
【非特許文献10】Corpechot et al., Hepatology 35:1010 (2002)
【発明の開示】
【0013】
発明の簡単な概要
本発明は、癌および炎症のような過剰増殖障害を処置するための化合物、組成物、および方法に関する。本発明の一つの局面は、以下の式Iを有するビンカアルカロイドN酸化物、またはその薬学的に許容される塩に向けられる:

式中、
R'1は、水素、アルキル、アルコキシ、アシル、ホルミル、またはハロゲノアシル基を表し;
R'2は、水素またはアルキル基を表し;
R'3およびR"3は、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR'3およびR"3は共にカルボニル基を形成し、またはそうでなければR'3およびR'5は共にエポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R'4は、水素、アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシメチル、もしくはアルカノイルオキシメチル基を表し、好ましくはアルキルオキシカルボニル基を表し;
R'5およびR"5は、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン原子1〜3個によって置換されてもよいC1-C7アルキル、アルカノイルオキシ、または2-ヒドロキシエチル基を表し;
R'6は、水素、エチル、2-ヒドロキシエチル、またはアセチル基を表し;
R'7は、水素またはシアノを表し;
R1は、水素、アルキル、ホルミル、またはアシル基を表し、好ましくは水素またはアルキル基を表し;
R2は、水素またはアルコキシを表し;
R3は、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR3およびR4は共に、エポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R4は、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR4およびR5は共にエポキシ架橋を形成し;
R6は、アルキルオキシカルボニル、ヒドラジド、アセトアミド、ヒドロキシメチル、アルカノイルオキシメチル基、もしくは -C(=O)-A-NH-Pを表し、式中-A-は-NH-、-NH-alk-COO-、もしくは-NH-alk-COONH-の一つであり、alkは直鎖もしくは分岐C1-C7アルキル基であり、および-NH-Pはペプチド残基であり、またはR5およびR6は共にオキサゾリジン-2,4-ジオン環を形成し;
R5およびR7は、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表すと共に、その酸付加塩およびその四級アンモニウム塩を表し;
R8およびR'8のそれぞれは、Oであるかまたは存在しないが、ただしR8およびR'8の少なくとも一つはOであり;ならびに
nは1または2である。
【0014】
一つの態様において、n=2である場合、R'5およびR"5の一つは、R'3またはR"3と共に二重結合を形成し、その場合他方はエチルではない。
【0015】
一つの態様において、式Iを有する化合物は、ビンブラスチンN酸化物、デスアセチルビンブラスチンN酸化物、ビノレルビンN酸化物、ビンクリスチンN酸化物、もしくはビンフルニンN酸化物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0016】
本発明のもう一つの局面は、過剰増殖障害を処置するための方法に関する。本発明の一定の局面において、過剰増殖障害は癌である。一つの態様において、癌は固形腫様である。もう一つの態様において、癌は、結腸癌、脳癌、神経膠腫、多発性骨髄腫、頭頚部癌、肝細胞癌、黒色腫、卵巣癌、子宮頚癌、腎臓癌、および非小細胞肺癌からなる群より選択される。さらなる態様において、癌は、急性および慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、頚部過形成、絨毛上皮腫、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、本態性血小板増加症、尿生殖器癌、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵臓インスリノーマ、髄様甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄性およびリンパ球性白血病、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真正赤血球増加症、原発性脳癌、原発性マクログロブリン血症、前立腺癌、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0017】
本発明のさらなる局面において、過剰増殖障害は、加齢黄斑変性、クローン病、硬変、慢性炎症関連障害、増殖性糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、未熟児網膜症、肉芽腫症、臓器または組織移植に関連する免疫過剰増殖、免疫増殖性疾患または障害、たとえば炎症性腸疾患、乾癬、リウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、網膜低酸素症に二次的な血管過剰増殖、または血管炎のいずれか一つである。
【0018】
一つの態様において、本発明は、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の治療有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者における過剰増殖疾患を処置、改善、または予防する方法に向けられる。もう一つの態様において、ビンカアルカロイド類似体は、ビンブラスチンN酸化物、デスアセチルビンブラスチンN酸化物、ビノレルビンN酸化物、ビンクリスチンN酸化物、およびビンフルニンN酸化物、またはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0019】
一定の態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の規則正しい投与療法は、反復投与された場合に腫瘍の生育を阻害して、N酸化物の最大耐用量の投与と比較してより少ない毒性の副作用を産生する、N酸化物に関する確立された最大耐用量(MTD)より低い用量でN酸化物の投与を含む。特定の機構に拘束されることなく、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の規則正しい投与は、腫瘍細胞自身と比較して腫瘍の血管を形成する脈管構造の細胞を標的とする可能性があると考えられる。したがって、腫瘍生育の阻害は、腫瘍細胞が腫瘍生育および播種にとって肝要な、機能的微小脈管構造を確立することができないことに起因する可能性がある。
【0020】
本発明のさらなる局面は、式Iを有する化合物の治療有効量を一つまたは複数の活性物質または処置と併用して、動物に投与する段階を含む、動物における過剰増殖障害を処置、改善、または予防するための方法である。一つの態様において、一つまたは複数の活性物質または処置は、化学療法剤、放射線治療物質/処置、抗血管新生剤、血管標的化物質、低酸素症誘導因子1(HIF1)阻害剤、Hsp90阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、カスパーゼ誘導物質、CDK阻害剤、およびアポトーシス促進分子である。もう一つの態様において、一つまたは複数の活性物質または処置は、過剰増殖障害を処置するために用いる、用いられている、または有用であることが知られている。
【0021】
一つの態様において、動物において過剰増殖障害を処置、改善、または予防する方法は、ビンカアルカロイドN酸化物またはその類似体の治療有効量を動物に投与する段階を含む。特定の態様において、ビンカアルカロイド類似体N酸化物は、一つまたは複数の活性物質または処置、たとえば化学療法剤または放射線療法剤/処置と併用して、ビンブラスチンN酸化物、デスアセチルビンブラスチンN酸化物、ビノレルビンN酸化物、ビンクリスチンN酸化物、およびビンフルニンN酸化物、またはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0022】
本発明の好ましい態様において、一つまたは複数の化学療法剤は、過剰増殖障害の処置のために用いられる、用いられている、または有用であることが知られている任意の化学療法剤となりうる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、一つまたは複数の放射線療法剤または処置は、外部照射放射線治療、近接照射療法、熱療法、放射線手術、荷電粒子放射線療法、中性子放射線療法、光線力学療法、または放射性核種療法となりうる。
【0024】
本発明の一つの態様において、式Iを有する化合物は、一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤または処置の投与の前、間、および/または後に投与することができる。本発明のもう一つの態様において、一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤または処置と併用して式Iを有する化合物を投与する方法は、1回より多く繰り返される。
【0025】
式Iを有する化合物と、本発明の一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤または処置との併用は、相加的効力または相加的治療効果を有するであろう。本発明はまた、治療効果が相加的より大きい相乗的併用を含む。好ましくは、そのような併用は、望ましくないまたは副作用を低減または回避するであろう。一定の態様において、本発明に含まれる併用治療は、式Iを有する化合物または任意の化学療法剤または放射線療法剤または処置の単独の投与と比較して、改善された全体的な治療を提供するであろう。一定の態様において、既存のまたは実験的化学療法剤または放射線療法剤または処置の用量は、低減されるか、またはより少ない回数投与され、これは患者のコンプライアンスを増加させて、それによって治療を改善して、望ましくないまたは有害な効果を低減させるであろう。
【0026】
さらに、本発明の方法は、これまで無処置の患者にとって有用であるのみならず、放射線療法、化学療法、および/または手術が含まれるがこれらに限定されるわけではない、現在の標準的なおよび/または実験的癌治療に対して部分的または完全に不応性である患者の処置においても有用であろう。好ましい態様において、本発明は、他の治療に対して不応性または無反応性であることが示されているまたはその可能性がある過剰増殖障害の処置または改善のための治療法を提供するであろう。
【0027】
いかなる理論にも拘束されないが、本発明のN酸化物化合物のいくつかは、細胞障害性が大きく減損したプロドラッグとして機能するであろうと考えられている。これらのN酸化物化合物は、標的組織内での低酸素状態において活性化されて(すなわち、窒素原子で還元されて)、分裂紡錘糸における微小管形成阻害が起こり、それによって分裂中期での分裂細胞の停止、細胞の複製能の減損が起こると考えられている。本発明の他のN酸化物化合物は、内因性の細胞障害活性を有する可能性がある。多数の病理組織は、過剰増殖を促進する有意な低酸素成分を有することから、組織のこの部分が優先的に標的化されると考えられる。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の1つの局面は、式Iを有するビンカアルカロイドN酸化物に向けられる:

式中、R1〜R8、R'1〜R'8、R"3、R"5、およびnは先に定義されたとおりである。
【0029】
本発明のもう一つの局面に従って、式Iを有する化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量と、少なくとも一つの他の活性物質は、少なくとも一つの薬学的に許容される担体を有する薬学的組成物の剤形で提供される。一定の状態において、少なくとも一つの他の活性物質は、化学療法剤(活性なビタミンD化合物が含まれる)である。式Iを有する化合物は、他の活性剤と共に1つの製剤で、または独立して製剤化されてもよい。
【0030】
本発明の一つの局面に従って、式Iを有する化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量がそれを必要とする動物に投与される、過剰増殖障害を処置、改善、または予防するための方法が提供される。本発明の一定の局面において、過剰増殖障害は癌である。
【0031】
本発明のさらなる局面は、式Iを有する化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を、少なくとも一つの活性物質または処置と併用して、それを必要とする患者に投与する段階を含む、過剰増殖障害を過剰増殖障害を処置、改善、または予防するための方法に関する。一定の態様において、式Iを有する化合物と化学療法剤との併用が投与される。一つの態様において、化学療法剤は、ゲムシタビンおよびイリノテカンから選択される。
【0032】
式Iを有する化合物によって処置されうる過剰増殖障害には、任意の数の癌のような、低酸素症によって悪化する任意の過剰増殖疾患および/または障害が含まれる。一般的に、そのような癌には、膀胱、脳、乳房、頚部、結腸、子宮内膜、食道、頭頚部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、口腔、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃および精巣の癌が含まれるがこれらに限定されるわけではない。これらの癌の一定のものは、より具体的に、急性および慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、頚部過形成、絨毛上皮腫、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、本態性血小板増加症、尿生殖器癌、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵臓インスリノーマ、髄様甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄性およびリンパ球性白血病、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真正赤血球増加症、原発性脳癌、原発性マクログロブリン血症、前立腺癌、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、またはウィルムス腫瘍と呼ばれてもよい。一つの態様において、癌は固形腫瘍である。もう一つの態様において、癌は、結腸癌、脳癌、神経膠腫、多発性骨髄腫、頭頚部癌、肝細胞癌、黒色腫、卵巣癌、子宮頚癌、腎臓癌、および非小細胞肺癌からなる群より選択される。
【0033】
本発明に従って処置される可能性がある動物には、式Iを有する化合物の投与によって恩典が得られる可能性がある全ての動物が含まれる。そのような動物には、ヒト、イヌおよびネコのようなペット、ならびにウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等のような獣医学動物が含まれる。
【0034】
本明細書において用いられるように、「アルキル」という用語は、不飽和の非環式炭化水素ラジカルを指す。「低級アルキル」という用語は、炭素原子約2〜約10個、好ましくは炭素原子約2〜約8個、およびより好ましくは炭素原子1〜約6個を含有する非環式炭化水素ラジカルを指す。適したアルキルラジカルの例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチル等が含まれる。
【0035】
「アルコキシ」という用語は、炭素原子1〜20個、好ましくは炭素原子1〜8個、より好ましくは炭素原子1〜約4個、および付着点における酸素原子が含まれる、直鎖状、分岐、または環状の炭化水素立体配置およびその組み合わせを意味する。適したアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が含まれる。「低級アルコキシ」は、炭素原子1〜4個を有するアルコキシ基を指す。
【0036】
「アシル」または「アルカノイル」という用語は、カルボニル基に付着したアルキル基を意味する。
【0037】
「ハロゲノアシル」という用語は、トリフルオロアセチル、ペンタフルオロプロピオニル等が含まれる、一つまたは複数のハロゲン基(たとえば、F、Cl、Br、およびI基)によって置換されたアシル基を意味する。
【0038】
本明細書において用いられるように、「非N酸化物」という用語は、窒素原子の位置で酸化されていないアミン化合物を指す。例として、ビンブラスチンは、ビンブラスチンN酸化物の非N酸化物型である。
【0039】
本明細書において用いられるように、「薬学的組成物」という用語は、個々の構成要素または成分がそれ自身薬学的に許容される組成物を定義すると理解され、たとえば、経口投与が予見される場合には、経口で使用するために許容され、局所投与が予見される場合には、局所的に許容され、および静脈内投与が予見される場合には、静脈内に許容される。
【0040】
本明細書において用いられるように、「治療有効量」という用語は、障害の一つもしくは複数の症状の改善が起こる、障害の進行を予防する、または障害の後退を引き起こすために十分な治療物質の量を指す。たとえば、癌の処置に関して、治療有効量は、好ましくは腫瘍生育速度を減少させる、腫瘍塊を減少させる、転移数を減少させる、腫瘍が進行するまでの時間を増加させる、または生存時間を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%増加させる治療物質の量を指す。
【0041】
本明細書において用いられるように、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、動物における病理的な細胞(たとえば、過剰増殖または新生物細胞)の発生の減少を指す。予防は完全であってもよく、たとえば被験者における病理的な細胞の完全な非存在であってもよい。予防はまた、被験者における病理的な細胞の発生が、本発明を用いない場合に起こるであろう場合より少ないように、部分的であってもよい。
【0042】
式Iを有する化合物は、薬学的に許容される塩として提供されうる。薬学的に許容される塩(たとえば、酸付加塩)の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、安息香酸、およびシュウ酸塩のような無機および有機酸付加塩;ならびにヒドロキシナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、トロメタン)、およびN-メチル-グルカミンのような塩基による無機および有機塩基付加塩が含まれる。塩は典型的に、遊離の塩基と比較して類似の生理的特性を有することから、一定の酸付加塩は、好ましい物理化学特性、たとえば溶解度の増強、安定性の増加を示す可能性がある。一つの特定の薬学的に許容される塩は、マレイン酸に由来し、塩は、マレイン酸水素または二マレイン酸塩のいずれかである。
【0043】
本発明の一定の化合物は、光学異性体が含まれる立体異性体として存在してもよい。本発明には、全ての立体異性体およびそのような立体異性体のラセミ混合物と共に、当業者に周知である方法に従って分離されてもよい個々のエナンチオマーの双方が含まれる。本発明の一定の化合物は、ビンカアルカロイド類似体における一つまたは複数の置換基が一つまたは複数のキラル中心を含有するジアステレオ異性体として存在してもよい。
【0044】
一定の態様において、N酸化物形成は、個々のエナンチオマー(たとえば、アキラルビンカアルカロイドまたは類似体の非立体選択的N-酸化において)、エナンチオマーの混合物(たとえば、アキラルビンカアルカロイドまたは類似体の立体選択的N-酸化において)、個々のジアステレオ異性体(たとえば、エナンチオマーとして純粋なアキラルビンカアルカロイドまたは類似体の立体選択的N-酸化において)、またはジアステレオ異性体の混合物(たとえば、アキラルビンカアルカロイドまたは類似体のエナンチオマー混合物の非立体選択的N-酸化において)の形成の際に新しいキラル中心を作製する。このように、本発明には、エナンチオマーおよびジアステレオ異性体の全てのN酸化物混合物と共に、立体選択的反応を用いて調製されてもよい、または当業者に周知である方法に従って分離されてもよい個々のジアステレオ異性体およびエナンチオマーが含まれる。
【0045】
本発明の一定の態様において、式Iを有する化合物は、一つまたは複数の他の活性物質(たとえば、化学療法剤)または処置と併用して投与される。非制限的な例によって、患者は、式Iを有する化合物の治療有効量を、放射線物質/処置または化学療法剤の投与と併用して投与することによって、癌のような過剰増殖障害を処置してもよい。
【0046】
他の態様において、本発明の化合物は、腫瘍の血管新生を遮断、阻害、または調整する抗血管新生剤のような物質と併用して投与される。好ましい態様において、抗血管新生物質は、過剰増殖障害の処置のために用いられる、用いられている、または有用であることが知られている任意の抗血管新生物質となりうる。抗血管新生物質の例には、ベバシズマブ(Avastin(商標))、VEGF-TRAP、抗VEGF-受容体抗体、アンジオスタチン、エンドスタチン、バチマスタット、カプトプリル、軟骨由来阻害剤、ゲニステイン、インターロイキン12、ラベンダスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、組換え型ヒト血小板因子4、テコガラン、トロンボスポンジン、TNP-470、VEGFアンタゴニスト、抗-VEGFモノクローナル抗体、可溶性VEGF受容体キメラタンパク質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、siRNA、抗VEGFアプタマー、色素上皮由来因子、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来増殖因子阻害剤、線維芽細胞由来増殖因子阻害剤、MMP(マトリクスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断剤、インターフェロン-α、ポリ硫酸ペントサン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA-4、スクアラミン、6-O-クロロアセチル-カルボニル-フマギロール、サリドマイド、トロポニン-1、インドリンチオン、ピリドピリミジン、キノアゾリン、フェニル-ピロロ-ピリミジン、トラスツズマブ、カルシウム流入阻害剤(CAI)、ネオマイシン、スクアラミン、マリマスタット、プリノマスタット(AG-3340)、メタスタット(COL-3)、およびシノリン誘導体が含まれる。本発明の化合物と併用して投与されてもよいさらなる抗血管新生化合物は、米国特許第5,192,744号、第5,426,100号、第5,733,876号、第5,840,692号、第5,854,205号、第5,990,280号、第5,994,292号、第6,342,219号、第6,342,221号、第6,346,510号、第6,479,512号、第6,719,540号、第6,797,488号、第6,849,599号、第6,869,952号、第6,887,874号、第6,958,340号号、および第6,979,682において記述される。
【0047】
一定の態様において、本発明の化合物は、血管標的化物質(血管損傷物質とも呼ばれる)と併用して投与される。一つの態様において、血管標的化物質は、悪性または非悪性の血管増殖障害の処置のためである。他の態様において、血管標的化物質は、過剰増殖障害の処置のために用いられる、用いられている、または有用であることが知られている任意の血管標的化物質となりうる。本発明の化合物と併用して投与されてもよい血管標的化物質の例には、DMXAA 5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、ZD6126、N-アセチルコルヒノル-O-ホスフェート(たとえば、米国特許第6,906,048号を参照されたい)としても知られる(5S)-5-(アセチルアミノ)-9,10,11-トリメトキシ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,c]シクロヘプテン-3-イルリン酸二水素;コンブレタスタチンA4およびそのプロドラッグのような官能化スチルベン誘導体(たとえば、米国特許第6,919,324号および第6,773,702号を参照されたい);ジオレオイルトリメチル-アンモニウムプロパン(DOTAP)、N-[l-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、l,2-ジミリストイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチル(DMRIE)、ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、またはN-(l-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、またはたとえば、ジオレオイルホスファチジル-コリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、もしくは1,2-sn-ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPE)、または他の任意の天然もしくは合成の静電気的中性脂質(たとえば、米国特許第6,680,068号を参照されたい)が含まれる任意の他の天然もしくは合成陽イオン脂質;米国特許第6,593,374号において記述されるような、ベンゾ[b]チオフェン、インドール、およびベンゾフラン分子骨格を組み入れる血管標的化物質が含まれる。
【0048】
他の態様において、本発明の化合物は、低酸素症誘導因子(HIF1)と併用して投与される。一つの態様において、HIF1阻害剤は、悪性または非悪性血管増殖障害の処置のためである。他の態様において、HIF1阻害剤は、過剰増殖障害の処置のために用いられる、用いられている、または有用であることが知られている任意のHIF1阻害剤となりうる。本発明の化合物と併用して用いるために適したHIF1阻害剤の例には、トポテカン、P13キナーゼ阻害剤;LY294002;ラパマイシン;[(E)-(lS,4S,10S,21R)-7-[(Z)-エチリデン]-4,21-ジイソプロピル-2-オキサ-12,13-ジチア-5,8,20,23-テトラアザビシクロ-[8,7,6]-トリコス-l6-エン-3,6,9,19,22-ペンタノン(FR901228、デプシペプチド)のようなヒストンデアセチラーゼ阻害剤;ゲルダナマイシン、17-アリルアミド-ゲルダナマイシン(17-AAG)、および他のゲルダナマイシン類似体、ならびにラディシコールおよびKF58333のようなラディシコール誘導体のような熱ショックタンパク質90(Hsp90)阻害剤;ゲニステイン;インダノン;スタウロスポリン;PD98059(2'-アミノ-3'-メトキシフラボン)のようなタンパク質キナーゼ-1(MEK-1)阻害剤;PX-12(1-メチルプロピル-2-イミダゾリルジスルフィド);プリューロチン(pleurotin)PX478;キノキサリン-1,4-ジオキシド;酪酸ナトリウム(NaB);ニトロプルシッドナトリウム(SNP)、および他のNO供与体;ノボビオシン、パンゼム(2-メトキシエストラジオールまたは2-ME2)、ビンクリスチン、タキサン、エポチロン、ディスコデルモライドおよび前述のいずれかの誘導体のような微小管阻害剤;クマリン、バルビツール酸およびチオバルビツール酸類似体;カンプトテシン;ならびにYC-1が含まれる。米国特許第6,979,675号を参照されたい。
【0049】
一定の態様において、本発明の化合物は、Hsp90阻害剤と併用して投与される。一つの態様において、Hsp90阻害剤は、悪性または非悪性の血管増殖障害を処置するためである。他の態様において、Hsp90阻害剤は、過剰増殖障害の処置において用いられる、用いられている、または有用であることが知られている任意のHsp90阻害剤となりうる。本発明の化合物と併用して用いられてもよいHsp90阻害剤の例には、ゲルダナマイシン、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、米国特許第6,890,917号において記述されるようなゲルダナマイシン誘導体、デキサメタゾンおよび米国特許第6,872,715号において記述されるようなベンゾキノンアンサミシンが含まれる。さらなるHsp90阻害剤は、米国特許第6,613,780号、第6,281,229号、および第6,903,116号において開示される。
【0050】
他の態様において、本発明の化合物は、細胞のシグナル伝達に関与するチロシンおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼおよびチロシンキナーゼ受容体の阻害剤と併用して投与される。これらには、Src、Abl、血小板由来増殖因子受容体、血管内皮増殖因子受容体、c-Met、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮細胞増殖因子受容体、インスリン増殖因子受容体、mTOR、Flt-3、CSF-1受容体、AKT、Poloキナーゼ、オーロラキナーゼ、STAT3、PI-3キナーゼ、Ras、Raf、およびマイトジェン活性化キナーゼ、MEK、ERKの阻害剤が含まれる。チロシンキナーゼおよびセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤の例には、AMG706、ZA6474、BAY 43-9006、ダサチニブ、CEP-701、XL647、XL999、ラパチニブ、MLN518/CT53518、PKC412、ST1571、AMN107、AEE 788、OSI-930、OSI- 817、SUl 1248、AG-03736、GW-786034m、CEP-7055が含まれる(がこれらに限定されるわけではない)。
【0051】
他の態様において、本発明の化合物は、HDAC阻害剤と併用して投与される。例にはSAHA、MS-275、MGCD0103、LBH589、PXDl0l、FK228が含まれる(がこれらに限定されるわけではない)。
【0052】
他の態様において、本発明の化合物は、ベルカデのようなプロテアソーム阻害剤と併用して投与される。
【0053】
他の態様において、本発明の化合物は、TRAIL、抗DR4/DR5(TRA8)抗体、IAP、スルビビンまたはカスパーゼ活性化を刺激する他の低分子のような、アポトーシス促進物質と併用して投与される。
【0054】
他の態様において、本発明の化合物は、CDK阻害剤のような、細胞周期調節物質阻害剤と併用して投与される。
【0055】
「組み合わせて」とは、一つより多い処置の使用を指す。用語「組み合わせて」の使用は、過剰増殖障害を処置する被験体に施す処置の順番を制限しない。初回の処置は、過剰増殖障害を有する被験体へ二回の処置を施すことを含む任意の反復レジメンの前、同時に、後、または間に実施できる。例えば、初回の処置は、処置の5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前に実施でき;あるいは二回目の処置の5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後に実施できる。このような処置としては、例えば、一つまたは複数の化学療法薬または放射線治療薬/処置と組み合わせた式Iを有する化合物の投与が含まれる。
【0056】
用語「化学療法薬」は、本明細書において、癌などの過剰増殖障害の処置、予防、または改善に有効であることが当業者に公知の任意の化学療法薬を指すものと意図される。化学療法薬としては、低分子、合成薬、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、三重螺旋および生物活性タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されるわけではないDNAおよびRNAポリヌクレオチド)、抗体、合成または天然の無機分子、模擬薬、および合成または天然の有機分子が含まれるがこれらに限定されるわけではない。過剰増殖障害の処置または改善に有用であることが公知であるか、または使用されてきたか、もしくは現在使用されている任意の薬剤は式Iを有する化合物と組み合わせて使用され得る。過剰増殖障害の処置または改善に用いられてきた、または現在用いられている治療薬に関する情報については、例えばHardman et al., eds., 2002, Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Therapeutics 10th Ed, Mc-Graw-Hill, New Yorkを参照されたい。
【0057】
本発明の方法および組成物に有用な具体的な化学療法薬としては、アルキル化剤、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、エピポドフィロトキシン、抗生物質、ホルモンおよびホルモン拮抗薬、酵素、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、イミダゾテトラジン誘導体、細胞保護剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答調節物質、レチノイド、治療抗体、分化剤、免疫調節剤、血管新生抑制剤、ならびに抗血管新生剤が含まれる。
【0058】
特定の化学療法薬としては、アバレリックス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生ワクチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセット、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンディフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロナートが含まれるがこれらに限定されるわけではない。特定の態様において、化学療法薬は、ゲムシタビンおよびイリノテカンから選択される。
【0059】
化学療法薬は、当業者が過剰増殖障害の処置に有効であると認識する用量で投与され得る。特定の態様において、化学療法薬は、式Iを有する化合物の相加または相乗効果により、当技術分野において用いられる用量より低い用量で投与され得る。
【0060】
本発明の方法および組成物に有用な治療薬としては、活性ビタミンD化合物もしくはその模擬物、抗腫瘍薬(例えばアクチノマイシンD、イリノテカン、ビンクリスチン、ビノレルビン、SN-38、アザシチジン(5-アザシチジン、5AzaC)、サリドマイド、ビンブラスチン、メトトレキサート、アザチオプリン、フルオロウラシル、ドキソルビシン、マイトマイシン、ドセタキセル、パクリタキセル)、血管新生阻害剤(例えばVEGF-TRAP、アンジオスタチン、エンドスタチン、VEGFのアプタマー拮抗薬、バチマスタット、カプトプリル、軟骨由来阻害剤、ゲニステイン、インターロイキン12、ラベンダスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、組換え型ヒト血小板第四因子、テコガラン、トロンボスポンジンおよびTNP-470)、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、CDK阻害剤、HSP阻害剤、血管拡張薬(例えば硝酸塩、カルシウムチャネル遮断剤)、抗凝固薬(例えばヘパリン)、抗血小板薬(例えばアスピリン、IIb/IIIa受容体の遮断剤、クロピドグレル)、抗トロンビン(例えばヒルジン、イロプロスト)、免疫抑制薬(例えばシロリムス、トラニラスト、デキサメタゾン、タクロリムス、エベロリムス、A24)、コラーゲン合成阻害剤(例えばハロフジノン、プロピルヒドロキシラーゼ、C-プロテイナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤)、抗炎症薬(例えばコルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症薬)、17β-エストラジオール、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子拮抗薬、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、チオプロテアーゼ阻害剤、血小板由来増殖因子拮抗薬、一酸化窒素、およびアンジオペプチンが含まれる。一つの態様において、治療薬はタキサン、例えばパクリタキセルまたはドセタキセルである。
【0061】
特定の態様において、患者は、本発明の化合物を含む組成物を投与する前に、低酸素症イメージング技術に供される。低酸素腫瘍細胞の存在の判定に好適である画像化技術の例としては、コンピュータ断層撮影法(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、および陽電子放出断層撮影(PET)が含まれる。このような可視化法の使用は、本発明の低酸素活性化抗増殖組成物を用いた処置に特に好適である患者群を選択するのに都合よく用いることができる。
【0062】
本態様において、本発明は、過剰増殖疾患の処置、予防、または改善を必要とする動物において過剰増殖疾患を処置、予防、または改善する方法であって、該過剰増殖疾患が低酸素組織を特徴とするか決定すること、および該動物を有効量の本発明の化合物で処置することを含む方法を目的とする。
【0063】
用語「放射線治療薬」は、本明細書において、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意の放射線治療薬を指すことを意図する。例えば、放射線治療薬は、近接照射療法または放射性核種療法で投与される放射線治療薬のような薬剤でよい。このような方法は、化学療法、手術、および/または他の放射線治療のような、しかしこれらに限定されない一つまたは複数の追加の癌療法を実施することを更に含んでもよい。
【0064】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効量の近接照射療法を含む処置と組み合わせて式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌処置法に関する。近接照射療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。一般的に、近接照射療法は、腫瘍は放射性線源に最大に曝露し、一方健常組織の曝露は好ましくは最小限にするように、放射線源を癌処置する被験体の体内、好ましくは腫瘍自体の中に挿入することを含む。
【0065】
特定の態様において、近接照射療法は、腔内近接照射療法であり得る。別の態様において、近接照射療法は、組織内近接照射療法であり得る。近接照射療法が腔内近接照射療法または組織内近接照射療法であるかに係わらず、近接照射療法は高線量率、連続低線量率、またはパルス線量率で実施できる。例えば、高線量率近接照射療法レジメンは、60Gyの線量を、6日間にわたって10回に分けて照射できるが、連続低線量率近接照射療法レジメンは合計線量約65Gyを、約40〜50cGy/時で連続的に投与できるがこれらに限定されるわけではない。高線量率、連続低線量率、およびパルス線量率の近接照射療法の他の例は、当技術分野において周知である。例えばMazeron et al., Sem. Rad. Onc. 12:95-108(2002)を参照。
【0066】
上記近接照射療法のいずれかに実施することができる代表的な放射性同位体としては、リン32、コバルト60、パラジウム103、ルテニウム106、ヨード125、セシウム137、イリジウム192、キセノン133、ラジウム226、カリフォルニウム252、または金198が含まれるがこれらに限定されるわけではない。他の放射性同位体を、そのような放射性同位体の望ましい物理特性に従って近接照射療法に実施するために選択してもよい。当業者は、放射性同位体の半減期、放射された放射線の周囲組織貫通度、放射される放射線のエネルギー、放射性同位体の適切な遮蔽の容易度もしくは困難度、放射性同位体の利用可能性、および投与前の放射性同位体の形態変更の容易度もしくは困難度を含むがこれらに限定されない多くの特性が、放射性同位体の近接照射療法における使用の好適性に影響することを容易に理解する。
【0067】
近接照射療法に有用である更なる照射法、および装置、ならびに組成物は、米国特許第6,319,189号、第6,179,766号、第6,168,777号、第6,149,889号、および第5,611,767号に記載されており、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0068】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効量の放射性核種を含む処置と組み合わせて、式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌処置法に関する。放射性核種療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。一般的に、放射性核種療法は、癌性細胞内に優先的に蓄積またはその表面に結合する放射性同位体の全身投与を含む。放射性核種の優先的な蓄積は、急速増殖中の癌細胞内への放射性核種の取込み、特異的標的化のない癌性組織による放射性核種の特異的蓄積(例えば甲状腺癌内のヨード131蓄積)、または新生物に特異的な生体分子への放射性核種の接合を含むがこれらに限定されるわけではない数多くのメカニズムによって仲介され得る。
【0069】
放射性核種療法で投与できる代表的な放射性同位体としては、リン32、イットリウム90、ジスプロシウム165、インジウム111、ストロンチウム89、サマリウム153、レニウム186、ヨード131、ヨード125、ルテリウム177、およびビスマス213が含まれるがこれらに限定されるわけではない。これらの放射性同位体は全て、標的化に特異性を提供する生体分子に結合できるが、ヨード131、インジウム111、リン32、サマリウム153、およびレニウム186は、このような接合をせずに全身投与することができる。当業者は、放射性核種療法の特定新生物標的化に用いる特異的生体分子を、その新生物上に存在する細胞表面分子に基づいて選択することができる。例えば肝癌は、そのような腫瘍で頻繁に過剰発現するフェリチンに特異的な抗体によって特異的に標的化され得る。癌処置用の抗体-標的化放射性同位体の例としては、ZEVALIN(イブリツモマブチウキセタン)およびBEXXAR(トシツモマブ)が含まれるが、これらは共にB細胞抗原CD20に特異的な抗体を含み、非ホジキンリンパ腫の処置に用いられる。
【0070】
特定の細胞に対する特異性を提供する生体分子の他の例は、Thomasの論文、Cancer Biother. Radiopharm. 17:71-82(2002)の中で概説されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。更には、放射性核種療法に有用な投与方法および組成物は、米国特許第6,426,400号、第6,358,194号、第5,766,571号、および第5,563,250号に見出すことができ、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を、治療有効量の遠隔照射療法を含む処置と組み合わせて投与することを含む癌を処置するための方法に関する。遠隔照射療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。一般に、遠隔照射療法は、被験体内の画定容積に高エネルギー線を照射し、それによりその容積内に細胞死を引き起こすことを含む。照射される容積には、処置される癌全てが含有されることが好ましく、可能な限り健常組織は含有されないことが好ましい。
【0072】
特定の態様において、遠隔照射療法は、三次元原体照射療法であり得る。別の態様において、遠隔照射療法は連続過分割放射線療法であり得る。更に別の態様において、遠隔照射療法は、強度変調放射線療法であり得る。更に別の態様において、遠隔照射療法はヘリカルトモセラピーであり得る。更に別の態様において、遠隔照射療法は用量増加を伴う三次元原体照射療法であり得る。更に別の態様において、遠隔照射療法は、単分割定位放射線療法、分割定位放射線療法、および分割定位誘導原体放射線療法を含むがこれらに限定されるわけではない定位放射線療法であり得る。
【0073】
遠隔照射療法は、当業者に公知の任意の手段によって発生または操作できる。例えば、遠隔照射療法で使用する光子線は、多葉コリメーターによって成形することができる。遠隔照射療法で使用する光子線発生に好適な装置の別の例は、ガンマナイフおよびリニアックを基本とする定位装置が含まれる。特定の態様において、遠隔照射療法の実施は、処置位置の患者の三次元モデルに従ってコンピュータにより制御される。このようなモデルは、例えばコンピュータ断層撮影法(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、および陽電子放出断層撮影法(PET)によって生成することができる。このような視覚化法は、処置される健常組織の容積を最小化するのに好都合であり、それによって患者に投与される放射線の総線量をより高くさせる。
【0074】
これに加えて、健常組織は、例えば鉛のシールドのような遮蔽装置を、そのような保護が必要である場所に設置することによって、遠隔照射療法の影響から任意で保護される。あるいは、またはこれに加えて、処置される癌性組織に放射線を集中させ、健常組織を保護するために、金属製の反射シールドを配置して光子線を任意で反射することもできる。いずれのシールドの配置も、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0075】
遠隔照射療法に有用な実施方法、および装置、ならびに組成物は、米国特許第6,449,336号、第6,398,710号、第6,393,096号、第6,335,961号、第6,307,914号、第6,256,591号、第6,245,005号、第6,038,283号、第6,001,054号、第5,802,136号、第5,596,619号、および第5,528,652号に見出すことができ、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0076】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効用量の温熱療法を含む処置と組み合わせて式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌を処置する方法に関する。温熱療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。特定の態様において、温熱療法は、凍結融解壊死治療法であり得る。別の態様において、温熱療法は、高温療法であり得る。更に別の態様において、温熱療法は、腫瘍の温度を高温療法より高くする治療法であり得る。
【0077】
凍結融解壊死治療法は、新生物塊を凍結し、細胞内および細胞外に氷晶を蓄積させること;細胞膜、タンパク質、および細胞小器官を破壊すること;ならびに高浸透圧環境を誘導し、それにより細胞死を起こさせることを含む。凍結融解壊死治療は、一回、二回、または複数回の凍結-融解サイクルで実施でき、更には凍結および融解の期間は、当業者によって最大の腫瘍細胞死を調節され得る。凍結融解壊死治療に用いることができる一つの例示的な装置は、液体窒素を真空絶縁して組み入れる凍結探針である。例えばMurphy et al., Sem. Urol. Oncol. 19:133-140(2001)を参照されたい。しかしながら、約-180℃〜約-195℃の局所温度を達成できる任意の装置を凍結融解壊死治療法に用いることができる。凍結融解壊死治療法に有用な方法および装置は、米国特許第6,383,181号、第6,383,180号、第5,993,444号、第5,654,279号、第5,437,673号、および第5,147,355号に記載されており、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
高温療法は、典型的には、新生物塊の温度を約42℃〜約44℃の範囲に上げることを含む。癌の温度は、この範囲より更に上げることができる;しかしながら、そのような温度は、周囲の健常組織への傷害を増大させるが、処置される腫瘍内の細胞死は増大されない。腫瘍は、高温療法では、非限定的に、当業者に公知の任意の手段によって加熱できる。例えば、腫瘍はマイクロ波、高密度焦点式超音波療法、強磁性サーモシード(thermoseed)、局所電流場、赤外線照射、湿式もしくは乾式高周波アブレーション、レーザー光凝固、レーザー組織内温熱療法、および電気焼灼法により加熱できるがこれらに限定されるわけではない。マイクロ波および高周波は、導波管アプリケータ、ホーン、スパイラル、電流シート、およびコンパクトアプリケータにより発生させることができる。
【0079】
腫瘍の温度を上げるための他の方法、および装置、ならびに組成物は、Wustらの論文、Lancet Oncol. 3:487-97(2002)に概説されており、米国特許第6,470,217号、第6,379,347号、第6,165,440号、第6,163,726号、第6,099,554号、第6,009,351号、第5,776,175号、第5,707,401号、第5,658,234号、第5,620,479号、第5,549,639号、および第5,523,058号に記載されており、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0080】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効量の放射線手術を含む処置と組み合わせた、式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌を処置する方法に関する。放射線手術は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。一般的には、放射線手術は被験体内の画定容積を、手動で方向付けられる放射線源に曝露し、それによってその容積内に細胞死を引き起こさせることを含む。放射線が照射される容積は、処置される癌全体を含有するのが好ましく、可能な限り健常組織を含有しないことが好ましい。典型的には、処置される組織はまず従来の手術技術を用いて露出され、次に放射線源が外科医によって手動でその領域に向けられる。あるいは、放射線源は、例えば腹腔鏡を用いて放射線照射対象組織の近くに配置され得る。放射線手術に有用な方法および装置は更に、Valentini et al., Eur. J. Surg. Oncol. 28:180-185(2002)および米国特許第6,421,416号、第6,248,056号、および第5,547,454号に記載されており、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効量の荷電粒子放射線療法を含む処置と組み合わせた、式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌を処置する方法に関する。荷電粒子放射線療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。特定の態様において、荷電粒子放射線療法は陽子線放射線療法であり得る。別の態様において、荷電粒子放射線療法はヘリウムイオン放射線療法であり得る。一般的には、荷電粒子放射線療法は、被験体内の画定容積に荷電粒子線を照射し、それによってその容積内に細胞死を引き起こすことを含む。照射される容積は、処置される癌全体を含有するのが好ましく、可能な限り健常組織を含有しないことが好ましい。荷電粒子放射線療法を実施するための方法は、米国特許第5,668,371号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0082】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効量の中性子放射線療法を含む処置と組み合わせた、式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌を処置する方法に関する。中性子放射線療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。
【0083】
特定の態様において、中性子放射線療法は、中性子捕捉療法であり得る。このような態様において、中性子と照射されると新生物塊内で放射線を放ち、且つ、優先的に蓄積する化合物が被験体に投与される。その後腫瘍は、低エネルギー中性子線が照射され、化合物が活性化されて、そこから癌性細胞を死滅する崩壊生成物が放出される。このような化合物は、典型的はホウ素含有化合物であるが、一般的な体成分よりも有意に大きな中性子捕捉断面積を有する任意の化合物を用いることができる。このような療法において投与される中性子は、典型的には、約0.5eV以下のエネルギーを有する比較的低いエネルギーの中性子である。活性化される化合物は、以下に記載する、またはその全体が参照により本明細書に組み入れられるLaramore, Semin, Oncol. 24:672-685(1997)ならびに米国特許第6,400,796号、第5,877,165号、第5,872,107号、および第5,653,957号に記載されているような、放射線核種の標的化に有用な任意の方法に従って標的組織内に優先的に蓄積させることができる。
【0084】
別の態様において、中性子放射線療法は、高速中性子放射線療法であり得る。一般的には、高速中性子放射線療法は、中性子線を被験体内の画定容積を照射し、それによりその容積内に細胞死を引き起こすことを含む。照射される容積は、処置される癌全体を含有するのが好ましく、可能な限り健常組織を含有しないことが好ましい。一般的には、このような療法では、エネルギーが約10〜約1億eVの範囲の高エネルギー中性子が照射される。任意で、高速中性子放射線療法は、荷電粒子放射線療法と組み合わせられ、混合陽子-中性子放射線療法を実施することもできる。
【0085】
放射線治療薬または処置を含む特定の態様において、本発明は、治療有効量の光線力学療法を含む処置と組み合わせた、式Iを有するビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物を投与することを含む癌を処置する方法に関する。光線力学療法は、非限定的に、癌の処置または改善に有効であることが当業者に公知の任意のスケジュール、用量、または方法に従って実施できる。一般的には、光線力学療法は、新生物塊内に優先的に蓄積し、新生物を光に対し感作する光感作薬を投与し、次に腫瘍を適切な波長の光に曝露することを含む。このような曝露によって光感作薬は、例えば癌性細胞を死滅する一重項酸素のような細胞傷害性薬の産生を触媒する。
【0086】
光線力学療法に用いることができる代表的な光感作薬としては、ポルフィマーナトリウム、5-アミノブラン酸、およびベルテポルフィンのようなポルフィリン;テモポルフィンのようなクロリン;ルテチウムテキセフィリンのようなテキサフィリン;スズエチオプルプリンのようなプルプリン;フタロシアニンならびに二酸化チタンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。光感作薬を活性化するのに用いる光の波長は、皮膚下の腫瘍の深度および投与する光感作薬の吸収スペクトルを含む複数の要因に従って選択され得る。露光時間も光感作薬の吸光効率および細胞傷害性薬へのエネルギーの転移効率によって変化させてもよい。このような決定は、十分当業者の範囲内である。
【0087】
光線力学療法に有用な実施方法、および装置、および組成物は、Hopper, Lancet Oncol. 1:212-219(2000)ならびに米国特許第6,283,957号、第6,071,908号、第6,011,563号、第5,855,595号、第5,716,595号、および第5,707,401号に開示されており、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
過剰増殖障害の処置に利用される具体的な放射線量および実施方法は、共に様々な要因に依存することが認識される。即ち、本発明の方法に従って用いることができる放射線量は、それぞれの状況の具体的な要求によって決まる。線量は、腫瘍の大きさ、腫瘍の位置、患者の年齢および性、照射線量頻度、他の腫瘍の存在、転移の可能性などのような要因に依存する。放射線療法の当業者は、Hall, E. J., Radiobiology for the Radiologist, 5th edition, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, Philadelphia, PA, 2000;Gunderson L. L. and Tepper J. E., eds., Clinical Radiation Oncology, Churchill Livingstone, London, England, 2000;およびGrosch, D. S., Biological Effects of Radiation, 2nd edition, Academic Press, San Francisco, CA, 1980を参照により、任意の特定の腫瘍に対する線量および実施法を容易に確認できる。特定の態様において、放射線治療薬および処置は、式Iを有する化合物の相加または相乗効果によって当技術分野において公知なものより低用量で実施され得る。
【0089】
本発明の組成物は、任意の適切な様式、例えば経口もしくは口腔内投与において、例えば錠剤の形態、溶液の形態、ゼラチンカプセル形態を含む硬質もしくは軟質カプセル形態、サッシェ、またはロゼンジの単位投与形態で投与できる。組成物は、例えば皮膚に、例えばクリーム、ペースト、ローション、ゲル、軟膏、湿布、パップ、プラスター、皮膚パッチなどの形態における適用、あるいは例えば点眼薬、点眼液、または点眼ゲル製剤の形態において、眼科用で非経口的または局所投与することもできる。易流動性の形態、例えば溶液、乳液、および懸濁液を、例えば病巣内注射に利用してもよく、または例えば浣腸もしくは坐薬として直腸投与してもよく、または例えば鼻内噴霧もしくはエアロゾルとして鼻腔内投与してもよい。微結晶粉末は、吸入、例えば鼻、副鼻腔、咽頭、または肺への送達に調合される。経皮組成物/装置、およびペッサリーもまた、本発明の化合物の送達に用いることができる。組成物は、さらに、式Iを有する化合物(または他の活性剤)の送達を促進する薬剤、例えばリポソーム、ポリマーまたはコポリマー(例えば分岐鎖ポリマー)を含有してもよい。本発明の好ましい投与形態としては、経口投与形態および静脈内投与形態が含まれる。
【0090】
静脈内形態としては、ボーラス注射および点滴注射が含まれるがこれらに限定されるわけではない。好ましい態様において、静脈内投与形態は、一般的には被験体の汚染物に対する自然防御を回避することから、無菌であるかまたは被験体に投与する前に滅菌されるまたは滅菌できる。静脈内投与形態の例としては、米国薬局方注射水;塩化ナトリウム注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロースと塩化ナトリウム注射液、および乳酸加リンガー液を含むがこれに限定されない水性溶剤;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない水混和性溶剤;ならびにトウモロコシ油、綿花油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートおよびベンジルベンゾアートを含むがこれらに限定されるわけではない非水性溶剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0091】
本発明の薬学的組成物は、更に一つまたは複数の添加物を含んでよい。当技術分野において周知の添加物としては、例えばデタッキファー(detackifier)、消泡剤、緩衝剤、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、アスコルビルパルミタート、アスコルビン酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロピルガラート、リンゴ酸、フマル酸、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロール、例えばα-トコフェロール(ビタミンE))、保存剤、キレート化剤、粘性調整剤、張度調製剤、芳香剤、着色料、着臭剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、増量剤、可塑剤、潤滑剤、およびそれらの混合物が含まれる。このような添加物の量は、当業者には所望する具体的な特性に従って容易に決定でき、且つ式Iを有する化合物が安定なように、例えば酸化防止剤の添加によって還元されないように製剤化される。
【0092】
添加物は増粘剤を含んでもよい。好適な増粘剤は、例えば薬学的に許容可能なポリマー物質および無機増粘剤を含む当技術分野において公知および使用されているものであってもよい。本薬学的組成物に使用される例示的な増粘剤としては、ポリアクリラートおよびポリアクリラートコポリマー樹脂、例えばポリアクリル酸およびポリアクリル酸/メタクリル酸樹脂;セルロース、およびアルキルセルロース、例えばメチル-、エチル-、およびプロピル-セルロースを含むセルロース誘導体;ヒドロキシアルキル-セルロース、例えばヒドロキシプロピル-セルロース、およびヒドロキシプロピル-メチル-セルロースのようなヒドロキシプロピルアルキル-セルロース;アクリラートセルロース、例えばセルロース-アセタート、セルロース-アセタートフタラート、セルロース-アセタートスクシナート、およびヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタラート;およびナトリウム-カルボキシメチルセルロースのようなその塩;例えばポリ-N-ビニルピロリドン、およびビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマーのようなビニルピロリドンコポリマーを含むポリビニルピロリドン;例えばポリビニルアセタートおよびアルコールを含むポリビニル樹脂、ならびにトラガカントゴム、アラビアゴム、アルギン酸塩、例えばアルギン酸およびその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを含む他のポリマー材料;ならびにアタパルジャイト、ベントナイト、および親水性二酸化ケイ素生成物、例えばアルキル化(例えばメチル化)シリカゲルを含むケイ酸塩、特にコロイド二酸化ケイ素生成物が含まれる。
【0093】
上記のようなこのような増粘剤は、例えば持続放出効果を提供するために含めることができる。しかしながら経口投与を意味する場合は、増粘剤の使用は必要ない。一方、例えば局所適用が予測される場合には、増粘剤の使用が必要とされる。
【0094】
本発明の一つの態様において、式Iを有する化合物は、例えば米国特許第4,923,876号に記載されるように製剤化される。
【0095】
式Iを有する化合物の用量は、特定の化合物の活性および/または毒性、処置される状態、および投与に用いられる薬学的組成物の物理形態によって変わるが、目安としては、0.1〜20mg/kg体重/日の範囲で選択される用量が好適であることが多いと記載されるが、0.1〜50mg/kg体重/日のようなより高い用量が有益なこともある。当業者は、適切な用量を決定する方法に精通している。式Iを有する化合物の毒性、活性、および/または選択性を評価するための方法は、抗増殖活性試験を含む、当技術分野において公知な任意の方法を用いて実施できる。
【0096】
特定の例では、式Iを有する化合物の用量は、例えば少なくとも第二の過剰増殖障害処置と組み合わせて使用する場合はより低くなり、具体的な化合物の活性および/または毒性、処置される状態、および投与に用いられる薬学的組成物の物理的形態に従って変わることがある。
【0097】
本発明の組成物を単位投与形態に調合する場合、式Iを有する化合物は、単位投与当たり0.01〜2000mgの間の量存在することが好ましい。より好ましくは、単位投与当たりの式Iを有する化合物の量は、約0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4750、5000、5250、5500、5750、6000、6250、6500、6750、7000、7250、7500、7750、8000、8250、8500、8750、9000、9250、9500、9750、または10000mg、あるいはその間の任意の量である。
【0098】
組成物の単位投与形態がカプセルの時は、カプセル内に存在する成分の総量は、好ましくは約10〜1000μLである。より好ましくは、カプセル内に存在する成分の総量は約100〜300μLである。別の態様において、カプセル内に存在する成分の総量は、好ましくは10〜1500mg、好ましくは約100〜1000mgである。
【0099】
特定の態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の用量は、メトロノーム投薬(metronomic dosing)によって投与される。本明細書において用語「メトロノーム投薬」とは、最大耐量(MTD)より低い用量を用いて有毒な副作用を最小化しながら休止期間なく、一定間隔で投与する投薬レジメンを指す。本発明の目的に関してメトロノーム投薬に望まれるビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の薬学的作用は、腫瘍増殖の抑制である。「腫瘍増殖の抑制」とは、腫瘍の増殖の抑制を引き起こすこと、および/または腫瘍のサイズの縮小を引き起こすことを意味する。メトロノーム投薬は、腫瘍細胞そのものではなく、腫瘍の血管を形成している血管系の細胞を標的にして、腫瘍上皮細胞にアポトーシスを繰り返し惹起すると考えられている。即ち、メトロノーム投薬は、MTDまたはMTDに近くで細胞毒性薬物を挿間的に適用する間にある、通常休止期間中の腫瘍細胞の明白な修復および回復能力を無力化し、その後正常組織の回復を可能にする休止期間が続くと考えられる。
【0100】
本明細書においてビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体に関係して用いる用語「MTD」は、N酸化物の臨床評価の一部と見なすことができる。例えば、第I相試験は、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の最大耐量、用量制限毒性(DLT)、および薬物動態の決定を含んでよい。かくして食品医薬品局(FDA)が承認した治療用化合物のMTDはどれも当業者によって決定できる。任意の特定の治療用化合物のMTDは、その剤形(例えば注射製剤、移植可能な生体分解性ポリマー製剤、経口製剤)、送達経路(例えば静脈内、経口、腫瘍内)、送達の方法(例えば輸液、ボーラス注射)、投薬スケジュール(例えば毎時間、毎日、毎週)などによって変わることがある。MTDは、薬物を投与した被験体の50パーセントが投与制限毒性を発生するレベルを最高投与レベルと規定することが多い。臨床意義のあり、且つ一般的に受け入れられている他の規定は、当業者に公知であろう。
【0101】
本発明はまた、メトロノーム治療レジメンも提供する。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体のメトロノーム投薬であって、N酸化物が少なくとも1、2、3、4、5、6、7、もしくは8週間、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、もしくは36ヶ月間投与され、各投与の間隔が約1、2、3、4、5、6、または7日以下であり、且つ各投与時のビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の用量はそのMTDの約0.25%〜約80%である、メトロノーム投薬が提供される。別の態様において、ビンカアルカロイドN酸化物は、そのMTDの80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、23%、20%、18%、16%、14%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以下が投与され、これは100mg/m2〜700mg/m2に当たると推測される。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体を含む組成物を投与する方法であって、該組成物を少なくとも一週間投与する、各投与の間隔が約1日以下であり、且つ各投与時のビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体の用量が、そのMTDまたは本明細書において記載の他用量の約0.25%〜約80%である方法が提供される。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物またはその類似体を含む組成物を投与する方法であって、該組成物を少なくとも一ヶ月間投与し、各投与の間隔が約1週間以下であり、且つ各投与時のN酸化物の用量は、MTDの約0.25%〜約80%または本明細書において記載の他用量である投与方法が提供される。いくつかの態様において、組成物は、一週間あたり少なくとも約1x、2x、3x、4x、5x、6x、7x(即ち毎日)のいずれかで投与される。
【0102】
いくつかの態様において、組成物は、事前に指定した期間連続的に投与でき、例えばMTDの約0.25〜約80%もしくは本明細書において記載する他の用量の組成物を連続的に輸液することができ、このとき事前に指定される期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、または8週間である。いくつかの態様において、次の連続投与(例えば輸液)セッションの間隔は、新たな連続投与セッションが開始された後、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間である。
【0103】
いくつかの態様において、一カ所または複数カ所の体部に貼られた一つまたは複数のパッチを用いて、適用期間あたりN酸化物のMTDの約0.25%から約80%を超えない用量または本明細書において記載する他の用量を送達できる。いくつかの態様において、パッチによる各投与の間隔は、約7日、6日、5日、4日、3日、2日、および1日未満のいずれかである。いくつかの態様において、組成物は、パッチによって、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、または8週間のいずれかの間投与される。いくつかの態様において、連続するパッチ投与の間隔は、一つまたは複数の新たなパッチを貼った後、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間である。ビンカアルカロイドN酸化物およびその類似体のメトロノーム用量の送達に好適である経皮パッチの例は、米国特許第6,977,070号、第7,022,340号、第6,004,581号、第5,939,094号、第5,624,677号、第7,001,609号、第6,632,522号、第6,630,238号、第6,482,871号、第6,086,911号、第5,698,217号、第5,639,469号、第5,244,677号、第4,451,260号、第6,173,851号、第5,223,261号、第5,192,548号、第6,645,528号、第5,700,480号、第6,974,588号、第6,238,693号、第6,000,548号、第4,726,951号、第4,721,619号、第5,225,196号、第4,983,392号、第6,103,257号、第6,110,486号、第5,955,098号、第5,985,317号、および第5,952,000号に見出すことができる。
【0104】
いくつかの態様において、制御放出製剤を用いて、製剤からのビンカアルカロイドのN酸化物または類似体の放出速度を制御し、メトロノーム投薬レジメンを所定期間維持する。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物または類似体のメトロノーム投薬は、分解性ポリマーマトリックス、リザーバー装置、マイクロパーティクル、ナノパーティクル、浸透ポンプ、またはpH依存コーティングを用いて維持される。これらの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物または類似体は、適用期間当たり、該N酸化物のMTDの約0.25%から約80%を超えない用量、または本明細書において記載する他の用量で送達される。
【0105】
いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物または類似体のメトロノーム投薬であって、該N酸化物は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、もしくは8週間、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、もしくは36ヶ月間投与され、各投与の間隔は約1週間以下であり、且つ各投与時のN酸化物の用量は約25mg/m2〜約500mg/m2であるメトロノーム投薬が提供される。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物または類似体のメトロノーム投薬であって、該N酸化物は少なくとも3ヶ月間投与され、各投与の間隔が約一週間以下であり、且つ各投与時のN酸化物の用量は約25mg/m2〜約500mg/m2であるメトロノーム投薬が提供される。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物または類似体のメトロノーム投薬であって、該N酸化物は少なくとも1ヶ月間投与され、各投与の間隔が約1日、2日、3日、4日、5日、6日、または1週間以下であり、且つ各投与時のN酸化物の用量は約25mg/m2〜約500mg/m2であるメトロノーム投薬が提供される。いくつかの態様において、ビンカアルカロイドのN酸化物または類似体のメトロノーム投薬であって、該N酸化物は少なくとも1週間投与され、各投与の間隔が約12、24、36、48、60、72、84、96、108、または120時間以下であり、且つ各投与時のN酸化物の用量は約25mg/m2〜約500mg/m2であるメトロノーム投薬が提供される。いくつかの態様において、投与当たりのビンカアルカロイドのN酸化物または類似体の用量は、約25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、および500mg/m2未満のいずれかである。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも一週間当たり約1x、2x、3x、4x、5x、6x、および7x(即ち毎日)のいずれかで投与される。いくつかの態様において、各投与の間隔は、約7日、6日、5日、4日、3日、2日、および1日未満のいずれかである。
【0106】
本発明の組成物中の成分の相対比率は、当然関係する組成物の具体的なタイプに依存して大きく変わる。相対比率はまた、組成物中の成分の具体的な機能によっても変わる。相対比率はまた、用いる具体的な成分および生成組成物に望まれる物理的性質、例えば局所使用向け組成物の場合には、それが自由流れ液体かペーストかによっても変わる。任意の具体例における実行可能な比率の決定は、一般的には当業者の能力の範囲内であろう。従って、以下に示す全ての比率および記載する相対重量範囲は、個々の発明の教示を示すものであり、本発明の最も広い局面を制限するものではないと解釈すべきである。
【0107】
本発明の組成物中の式Iを有する化合物の量は、当然、例えば意図する投与経路、および存在する他の成分の範囲に応じて変わる。しかしながら一般的には、式Iを有する化合物は、組成物全重量を基に、約0.005重量%〜20重量%の量存在するのが好適であろう。特定の態様において、式Iを有する化合物は、組成物全重量を基に、約0.01重量%〜15重量%の量存在するのが好適であろう。
【0108】
前記に加えて、本発明は前記に規定した薬学的組成物の製造工程であって、その個々の構成要素を均質混合物にすること、および必要に応じて得られた組成物を単位投与形態にすること、例えば該組成物を錠剤、ゼラチンカプセル、例えば軟質もしくは硬質ゼラチンカプセル、または非ゼラチンカプセル内に充填することを含む工程も提供する。
【0109】
本発明のN酸化物の出発原料は公知であり、例えば米国特許第6,555,547号、第6,365,735号、第RE37,449号、第6,127,377号、第5,369,111号、第5,030,620号、第5,024,835号、第4,831,038号、第4,765,972号、第RE30,561号、および第4,160,767号に記載されている。
【0110】
特定の状況では、ビンカアルカロイド類似体の二つ以上の窒素原子を同時に酸化してもよい。特定の例では、多数あるN酸化物基の一つまたは複数を選択的に還元し、他のN酸化物基の一つまたは複数はそのまま残すことができる。かくして本発明は、特定の窒素原子がN酸化物形成に関わりやすいか、または特定のN酸化物基が還元を受けやすいかには関係なくN酸化物形成に好適な窒素原子の一つまたは複数がN酸化物とてし存在する、N酸化物類似体の調製を熟慮する。好適な保護基の組み合わせ(Greene, T. W.; Wuts, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, second edition, Wiley Interscience, 1991を参照)を利用して、これら窒素原子が酸化を受けないようにすることも想定される。
【0111】
例を挙げると、ビンカアルカロイド類似体中に存在できる第一級および第二級アミンは、例えばt-ブチルスルホニル(BUS)基を用いて保護できる。Jarowicki K. and Kocienski, P., J. Chem. Soc., Perkin Trans 1, 4005-4037, 4029(1998); Sun, P. and Weinreb, S. M. J. Org. Chem. 62: 8604-08(1997)。BUS保護基は、アミンをt-ブチルスルフィニルクロリドと反応させ、続いて、例えばジメチルジオキシラン、m-クロロ過安息香酸、またはRuCl3触媒NaIO4を用いてスルフィニルアミドを酸化することにより誘導できる。BUS保護第一級または第二級アミン調製における酸化段階はまた、化合物中に存在する任意の第三級アミンおよびヘテロ芳香族窒素を酸化することができる。かくしてこの保護基は、第一級および第二級アミンに導入でき、一方第三級およびヘテロ芳香族窒素原子を同時に酸化する。
【0112】
BUS保護基はアルキルリチウム、グリニャール試薬、0.1M HClのMeOH溶液(20℃、1時間)、0.1M TFAのジクロロメタン溶液(20℃、1時間)といった強力な試薬、および180℃での熱分解に対して安定である。BUS保護された第二級アミンは、カチオンスカベンジャとしてアニソールを含有する0.1Mトリフルオロ酸のジクロロメタン溶液を用いて、0℃、15〜30分で開裂できるが、一方第一級アミンは室温でよりゆっくり放出される。望ましい場合には、BUS保護第一級および第二級アミンは共に、カチオンスカベンジャとしてアニソールを含有する0.1Mトリフルオロ酸のジクロロメタン溶液を用いて、25℃、2.5時間で脱保護できる。かくしてBUS保護基は第一級および第二級アミンの同時保護を可能にし、一方で第三級アミンおよびヘテロ芳香族窒素原子をN酸化物に酸化することもできる。更には、BUS保護基は、第一級および第二級アミンを同時に保護しながら第三級アミンおよびヘテロ芳香族窒素原子をN酸化物に酸化し、第二級アミンを選択的に脱保護して、第二級アミンをアルキル化して第三級アミンにし、生じた第三級アミンを酸化し、第一級アミンを脱保護することも可能にする。あるいは、第一級および第二級アミンは、BUS保護基で保護でき、第二級アミンを選択的に脱保護し、第二級アミンを、例えばBoc保護基を用いて保護し、次に第一級アミンを選択的に脱保護してからアルキル化および酸化することもできる。かくして、第一級アミンおよび第二級アミンがビンカアルカロイド類似体中に存在する時には、BUS保護基を用いて、他のアミンに影響をおよぼすことなく、アミンの一つをN酸化物に変換できる。
【0113】
Boc基を使用したアミン保護の最近の進歩は、穏やかな条件の下での基の導入および除去を可能にした。例えば、ビンアルカロイド類似体のアミン基は、該類似体とBoc-ON(2-(Boc-オキシミノ)-2-フェニルアセトニトリル、Aldrich Co.より入手可能)を、ベンゼン中、粉末亜鉛存在下で、25℃で20分間(またはアミンが電子欠損アニリンの場合には6時間)混合するだけで、Boc基により保護できる。Spivey, A. C. and Maddaford A. Annu. Rep. Prog. Chem., Sect. B, 95: 83-95(1999)を参照。アルキルエステルは許容される。
【0114】
Boc保護されたアミンは、一般的にはトリフルオロメンタンスルホン酸を用いて脱保護されるが、最近の進歩した方法は、酸不安定性の基に影響を及ぼさない、より穏やかな酸性条件を用いる。例えば、Boc保護されたp-アニシジンを4-クロロフェノール存在下、180℃で加熱すると、酸感受性のメトキシエノール(-CH=C(OCH3)-)に影響することなくアミン基は脱保護される。Jarowicki, K. and Kocienski, P., J. Chem. Soc. Perkin Trans 1, 4005-4037, 4025(1998)。このようにして、ビンカアルカロイド中の第一級および第二級アミンをBoc基で保護した後、第三級アミンを酸化してから、第一級および第二級アミンを脱保護することができる。
【0115】
最近、新規の塩基感受性アミノ保護基1,1-ジオキソベンゾ[b]チオフェン-メトキシカルボニル(Bsmoc)も報告されている。Bsmocは、そのクロロホルマートまたはN-ヒドロキシ-スクシニミド誘導体を経て導入される。Bsmoc基は第三級アミンに対して24時間安定であるが、ピペリジンを用いると3〜5分以内に除去される。Jarowicki, K. and Kocienski, P., J. Chem. Soc. Perkin Trans 1, 4005-4037, 4027(1998)。それ故に、Bsmoc保護基でビンカアルカロイド類似体中の第一級および第二級アミンを好都合に保護してから第三級アミンを酸化し、その後で保護基を穏やかな条件で取り外すことができる。
【0116】
特定の芳香族第一級アミンおよび二重結合に隣接する特定の第二級アミンが存在する場合には、特定のヘテロ芳香族窒素原子を選択的に酸化できることも報告されている。Delia, T. J. et al. J. Org. Chem. 30:2766-68(1965)。例えばm-クロロ過安息香酸を用いてシトシンを酸化すると、芳香族第一級アミンおよび第二級アミンが存在するにも関わらず、シトシン3-N酸化物を生じる。このように特定の芳香族第一級アミンおよび第二級アミンが存在する状態でも、ヘテロ芳香族窒素原子および第三級アミンを酸化することができる。
【0117】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例示であり、それらを限定するわけではない。臨床治療で一般的に経験する様々な条件およびパラメータのその他好適な変更および適合、ならびに当業者にとって明らかな好適な変更および適合は、本発明の精神および範囲内である。
【0118】
実施例
1H NMRスペクトルはD2OまたはCDCl3を溶媒として用いてINOVA-300 MHzまたはINOVA-500 MHz分光計より得られた(s、d、t、ddおよびmは、それぞれ、一重項、二重項、三重項、二重項の二重項、および多重項を示す)。分析用薄層クロマトグラフィーは、シリカゲル60 F254で予めコーティングされた、EMD Chemicals, Inc.製のポリエステルで裏打ちされたプレート上で実施した。ラジアル薄層クロマトグラフィーは、本発明者らの研究室にて石膏を含むシリカゲル60 PF254(EMD Chemicals, Inc.)でコーティングした層厚 2mmのシリカプレートを用いてHarrison Research Chromatron(7924T)上で実施した。分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は4.6mm×250mmのMICROSORB C18カラムを用いて1800〜2100 psiの圧力にて実施した。ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンのN酸化物の合成手順は、ビノレルビンの酸化手順のためのP. Mangenyらより応用した。ビンブラスチンN酸化物が形成されると、新しい立体中心が形成される。本発明者らは、マレイン酸塩の単結晶X線解析によって、後述の合成されたビンブラスチンN'b-酸化物において新しく導入された酸素原子の立体配置が近傍のエチル基に対してシスであることを見出している(図1)。本発明では式IにおけるR8またはR'8窒素原子のいずれかのN酸化物の双方のエピマーが意図される。ビンブラスチンN酸化物はビノレルビンの合成における中間体である。Mangeny, P. et al. Tetrahedron. 35:2175-2179 (1979)を参照されたい。
【0119】
実施例1
ビンブラスチンN'b-酸化物の合成
硫酸ビンブラスチンはAsian Talentから購入した。硫酸ビンブラスチンの610mg試料をジクロロメタン 20mLに溶解して、続いて、5%炭酸ナトリウム水溶液 20mLを加えて振盪した。有機相を分離して、水性の溶液をジクロロメタン(2×20mL)およびクロロホルム(20mL)で順次抽出した。一つにまとめた有機相および抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させて、乾固するまで飛散させ、ビンブラスチンフリー塩基 526mg(97%)を粘着性の白色固体として得た。ビンブラスチンフリー塩基の純度は、ガードカラムMICROSORB 100-5 C18をセットしたホルダーを含むVarian CHROMSEP HPLCカラム SS 250×4.6mmを用いて、グラジエント:30/70(アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸)/(0.1%トリフルオロ酢酸水溶液)〜100/0(アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸)/(0.1%トリフルオロ酢酸水溶液)、検出 254nmおよび270nmにて、1H 300MHz NMRおよびHPLC(99.1%AUC)により確認した。
【0120】
0℃のCH2Cl2(5mL)中ビンブラスチンフリー塩基(526mg、0.65mmol)の撹拌した溶液に、CH2Cl2の6mL中m-クロロペルオキシ安息香酸(168mg、0.97mmol)の冷却した溶液を滴下して加えた。反応の進行はシリカゲルTLC(溶離液:5:0.7 CHCl3−MeOH;ビンブラスチンのRf=0.65;ビンブラスチンN酸化物のRf=0.25))により追跡した。反応は約2分後に完了した。m-クロロ安息香酸および残りのm-クロロペルオキシ安息香酸を除去するために、溶液を炭酸ナトリウム水溶液(10mL、5g/100mL)で洗った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を減圧下で飛散させて、未精製のビンブラスチンN酸化物(600mg)を得た。シリカゲルのショートカラム上でのクロマトグラフィー(溶離液:5:0.5 CHCl3−MeOH)、続いてラジアルクロマトグラフィー(溶離液:5:0.5 CHCl3−MeOH)により、ビンブラスチンN酸化物(340mg、64%)がベージュ色の粉末として得られた。より大量の調製物においては、N酸化物はシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:5:0.3 CHCl3−MeOH〜5:0.7 CHCl3−MeOH)によって同等の純度および収量で得ることができる。シリカゲルはクロマトグラフィーの前にメタノールで不活性化しなければならない。CDCl3中ビンブラスチンN'b酸化物の500MHz 1H NMRスペクトルは割り付けられた構造と一致する。HPLC、 >98% AUC。
【0121】
ビンブラスチンN酸化物の塩酸塩。ビンブラスチンN酸化物の55mg(0.066mmol)試料をメタノール4mLに溶解した。溶液を−30℃まで冷却して、続いて2N HCl水溶液の33μL(0.066mmol)を加えた。得られた溶液を5分間、撹拌した。次に、溶媒を飛散させて、残渣を脱イオン水(4mL)に溶解して、ろ過し、ビンブラスチンN酸化物のHCl塩をやや吸湿性の白色粉末として得るために凍結乾燥した。D2O中300MHz 1H NMRスペクトルは割り付けられた構造と一致する。
【0122】
ビンブラスチンN酸化物のマレイン酸塩。ビンブラスチンN酸化物の15mg(0.018mmol)試料をメタノール2mLに溶解した。この溶液に、室温にてメタノール0.170mLに溶解したマレイン酸2mg(0.018mmol)を加えた。溶液を5分間撹拌した後、飛散させた。残渣にジクロロメタン(5mL)を加えて、次にビンブラスチンN酸化物のマレイン酸塩17mgを得るために溶液を乾固するまで濃縮した。試料をNMRスペクトルに備えてD2O(0.7mL)に溶解して、このNMRスペクトルは割り付けられた構造と一致した。D2O溶液を室温で一晩静置した。板状の白色結晶が分離した。単結晶X線解析(図1)により、新たに導入された酸素原子がN'b窒素原子に接続して、この酸素原子は図1に示す通り20位のエチル基に対してシスであることが確認された。ビンブラスチンN'b酸化物中のN酸化物酸素原子の立体配置は、MoncriefおよびLipscomb(Moncrief, J. W.; Lipscomb, W. N. Acta Cryst. 1966, 21, 322)によって報告されたX線結晶構造に示されるように脱水リューロクリスチンメチオジドのメチオジドメチル基のそれと同一である。
【0123】
実施例2
ビノレルビンN'b酸化物の合成
ビノレルビンフリー塩基はAsia Talentから購入した。必要な場合は、9:1 CHCl3−MeOHを溶離液として用いたシリカゲルのラジアルクロマトグラフィーにより精製を行った。
【0124】
ビノレルビンN'b酸化物は本質的にはビンブラスチンN'b酸化物を調製するために用いた同一の手順を用いて合成した。CHCl3(2.5mL)中m-クロロペルオキシ安息香酸(45mg、0.26mmol)を0℃において窒素下でCHCl3(4.5mL)中精製ビノレルビン(150mg、0.20mmol)の撹拌した溶液に加えた。15分後、混合液を炭酸ナトリウム水溶液(27mL、40g/L)に注ぎ入れて、CHCl3(20mL)で抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥してろ過した後、CHCl3抽出液を減圧下で飛散させて、未精製ビノレルビンN酸化物(125mg、83%)を得た。薄層クロマトグラフィー(シリカ;9:1 CHCl3/MeOH)は、少量の初期ビノレルビンの存在を示した(ビノレルビンのRf=0.37、ビノレルビンN'b酸化物のRf=0.18)。シリカゲルを用いたラジアルクロマトグラフィー(溶離液、9:1 CHCl3/MeOH)より、ビノレルビンN'b酸化物を類白色の固体が得られた(100mg;75%)。試料を酢酸エチル/ヘキサンに溶解して、続いてこの封をしていないフラスコを、封をしていないヘキサンのフラスコを入れた密閉容器に収容した。ヘキサンはビノレルビンN'b酸化物溶液中にゆっくりと拡散するので、ビノレルビンN'b酸化物は類白色の粉末(80mg;53%)として沈殿した。300MHz 1HNMRスペクトルは割り付けられた構造と一致した。N'b酸化物の酸素原子の立体配置は、X線結晶学によってビンブラスチンN酸化物に認められたものと同一の立体化学を割り付けられる。
【0125】
実施例3
ビンクリスチンN'b酸化物の合成
硫酸ビンクリスチンはAsian Talentから購入した。硫酸ビンクリスチンの480mg試料を7:3 クロロホルム/メタノールの10mLに溶解して、続いて、5%炭酸ナトリウム水溶液の15mLを加えて振盪した。有機相を分離した後、水性の溶液にジクロロメタン(2×20mL)およびクロロホルム(2×20mL)を順次加えて抽出した。一つにまとめた有機相および抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させて乾固するまで濃縮し、ビンクリスチンフリー塩基の420mg(98%)が粘着性の黄白色の固体として得られた。ビンクリスチンフリー塩基の純度は、1H 300MHz NMRおよびHPLC(99.0% AUC)により確認した。
【0126】
ジクロロメタン2mL中m-クロロペルオキシ安息香酸(132mg、0.76mmol)を0℃でジクロロメタン(4mL)中ビンクリスチンフリー塩基(420mg、0.51mmol)の撹拌した溶液に滴下しながら加えた。反応の進行はシリカゲルTLC(溶離液:5:0.5 CHCl3−MeOH;ビンクリスチンのRf=0.65;ビンクリスチンN酸化物のRf=0.30)により追跡して、約2分後に完了した。m-クロロ安息香酸および残りのm-クロロペルオキシ安息香酸を除去するために、溶液を炭酸ナトリウム水溶液(8mL、5g/100mL)で洗った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧下で飛散させ、未精製のビンクリスチンN酸化物(450mg)が得られた。シリカゲルのショートカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:5:0.5 CHCl3−MeOH)およびその後のシリカゲルを用いたラジアルクロマトグラフィー(溶離液:5:0.5 CHCl3−MeOH)により、ビンクリスチンN酸化物(288mg、67%)が類白色の粉末として得られた。CDCl3中の300MHz 1H NMRスペクトルは割り付けられた構造と一致した。逆相HPLCにより、>98%(AUC)が示された。N酸化物酸素原子の立体配置は、X線結晶学によりビンクリスチンN酸化物に見出されたものと同一の立体化学が割り付けられる。
【0127】
実施例4
ビンカアルカロイドおよび類似体であるそのN酸化物のリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、および血液学的悪性疾患に由来する細胞における細胞毒性
ビンカアルカロイドおよび類似体であるそのN酸化物の異なるリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫の細胞株に対する細胞毒性について、インビトロにおいて正常酸素(normoxic)および0.2%O2低酸素の条件下で試験を行う。各化合物における50%阻害濃度(IC50)を求めるために、MTTまたはアラマーブルー色素を用いた標準的生存性アッセイを行う。培養した腫瘍細胞を正常酸素または低酸素条件下で8時間以上、化合物で処理して、24〜48時間後に生存性を測定する。一部のケースにおいて、作用機序を確認するために、生体内還元酵素に対する酵素阻害物質を細胞と共に同時培養する。陽性対照は化学療法剤を当技術分野において有効であることが示されている用量で使用する。結果は、ビンカアルカロイドおよびその関連するN酸化物類似体が血液学的悪性疾患に由来する多くの細胞株に対して細胞毒性であることを示すはずであり、IC50値はナノモルないしナノモルよりも低い範囲内である。ビンカアルカロイドの類似体であるN酸化物は、正常酸素または正常酸素または良好酸素(euoxic)条件下において親化合物よりも強いまたは示差的な細胞毒性を示すと期待される。
【0128】
実施例5
ビンカアルカロイドおよび類似体であるそのN酸化物のリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、および血液学的悪性疾患に由来する細胞における抗腫瘍活性
ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物のインビボにおける抗腫瘍効果について、血液学的悪性疾患の同種および異種移植実験用マウスモデルを用いて調べる。例えば、DBA/2マウス(n=12/群)に1×105個のマウスL1210または1×106個のP388白血病腫瘍細胞を腹腔内(ip)接種する。腫瘍移植後、マウスにビンカアルカロイドまたは類似体N酸化物の10〜1000mg/kgを静脈内投与により投与する。物質は、最適な投与スケジュールの恩典を得るために、単回または反復投与計画(即ち、週1回、q3d)にて投与してよい。腫瘍負荷マウスの生存期間の延長に関して、溶媒対照を投与したマウスに比してビンカアルカロイドおよびN酸化物類似体投与の効果は、予め定めた生存期間エンドポイントを用いて比較する。体重低下、神経毒性、リンパ球減少症および好中球減少症などの急性毒性の症状についても動物をモニターする。陽性対照として、標準的な物質を用いて投与を比較する。
【0129】
関連する例において、ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物のインビボにおける抗腫瘍効果をヌードマウスにおけるNamalwaヒトリンパ腫異種移植モデルを用いて調べる。雌性nu/nuマウス(n=10/群)にヒトNamalwaリンパ腫細胞を皮下注射により移植する。対の対応するマウスは、カリパス計測により測定されるように腫瘍が約50〜100mm3の大きさである時点で異なる処置群に無作為化する。マウスは、週1回または3日に1回のスケジュールで静脈内投与によりビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物の10〜1000mg/kgを投与する。化合物の抗腫瘍効果は、当技術分野において公知の確立された基準および慣例によって腫瘍増殖阻害(TGI)および腫瘍増殖遅延(TGD)として評価する。さらに、処置効果をミトキサントロンまたはドキソルビシンなどの当技術分野で公知の標準的物質とも比較する。
【0130】
関連する例において、ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物のインビボにおける抗腫瘍効果を、免疫不全マウスにおける急性リンパ球性白血病(ALL)のヒト異種移植モデルにおいて実証する。NOD/SCIDマウスに一次性ヒトALL腫瘍細胞を移植する。腫瘍の移植および負荷は標準的な白血病識別マーカーを用いてフローサイトメトリーによりモニターして、対の対応するマウスを対照または投与群に無作為化する。移植後7〜10日にマウスにビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物の10〜1000mg/kgを週1回または3日に1回のスケジュールで静脈内投与により静脈内(iv)に注射する。マウスは定期的に採血して、FACS解析により腫瘍負荷について評価する。化合物の有効性を調べるために、投与前後の血液1ml当たりの白血病腫瘍細胞の数を比較する。動物は、体重低下、神経毒性、リンパ球減少症および好中球減少症などの急性毒性の症状についてもモニターする。陽性対照として、処置を標準的な物質と比較する。
【0131】
さらに、ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物を化学療法物質および/または放射線療法と併用した際のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0132】
加えて、ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物を抗CD52(キャンパス)、抗CD20(リツキサン、ゼバリン、ベキサール)、抗CD22(リンホシド)抗CD33(マイロターグ)、またはHLA-DR(Lym-1、オンコリン)などの治療用モノクローナル抗体と併用した際のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0133】
また、ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物をイマタニブ(グリベック)などの小分子キナーゼ阻害物質と併用した際のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0134】
実施例6
ビンカアルカロイド類似体およびそのN酸化物の固形腫瘍ラインにおける細胞毒性
ビンカアルカロイドおよび類似体であるそのN酸化物の異なる固形腫瘍細胞株に対する示差的な細胞毒性は、インビトロにおいて正常酸素条件および0.2%O2の低酸素条件下にて実証される。ビンブラスチンN酸化物およびビンクリスチンN酸化物のインビトロにおけるヒトH460肺腺癌、HT29結腸直腸腺癌、A549肺非小細胞癌、FaDU頭頚部腫瘍細胞株に対する処置効果から得られた結果を図2A〜2Dおよび3A〜3D、ならびに表1および2に示す。腫瘍細胞株は標準的条件下においてDMEM−10%FBSで培養した。100mmプラスチック培養皿に1×106個の腫瘍細胞を播種して、ビンカアルカロイドまたはN酸化物類似体を0.01〜100nMの用量範囲で適用した。細胞を、静かに振盪しながら37℃にて14時間、低酸素装置(INVIVO2400 Hypoxia Workstation, Ruskin Technology)内で一定レベルの低酸素(0.2%O2-5%CO2−平衡N2)に曝露した。同様に処理した細胞を正常酸素(空気-5%CO2)条件下において37℃でインキュベートした。24〜72時間後に生存性を評価するため、細胞を回収して48穴プラスチック培養プレートで細胞1×103個/ウェルの密度にて新鮮な培地に再度接種した。簡潔に言うと、アラマーブルーを0日目および3日目に反復ウェルに加えて、プレートリーダー(530〜560nm励起、590発光)を用いて蛍光を判定する前に37℃にてさらに3〜6時間、細胞をインキュベートした。増殖阻害パーセントを算出して、各薬剤濃度において対照処理細胞に対してプロットした。対になる正常酸素および低酸素処理について、50%増殖阻害濃度(IC50)の値を算出した。低酸素細胞毒性比(HCR)は、低酸素条件に対する正常酸素条件下での化合物のIC50の比として求められた。
【0135】
図2A〜2Dおよび表1に示す通り、ビンブラスチンN酸化物は、H460肺、HT29結腸直腸およびA549肺の腺癌細胞を含む多数のヒト固形腫瘍細胞株に対して、親化合物であるビンブラスチン化合物に比して正常酸素条件下で低い細胞毒性活性を有することが実証された。低酸素曝露時におけるビンブラスチンN酸化物処理は、図2Dおよび表1に示す通りビンブラスチンと同等の活性を持つ強力な細胞毒性活性を有することが実証された。表1に示す通り、ビンブラスチンN酸化物における3〜21のHCR値は、インビトロでの多くのヒト固形腫瘍細胞株に対するこの化合物の低酸素誘発性の細胞毒性を実証する。
【0136】
(表1)低酸素条件に対する正常酸素条件に曝露したヒト腫瘍細胞株に対するビンブラスチンN酸化物またはビンブラスチンの細胞毒性および50%阻害濃度(IC50)

* HCRは(IC50空気)/(IC50低酸素)として定義される。
【0137】
図3A〜3Dおよび表2に示す通り、ビンクリスチンN酸化物は、多数のヒト固形腫瘍細胞株に対して、親化合物であるビンクリスチン化合物に比して正常酸素条件下で低い細胞毒性活性を有することが実証された。低酸素曝露時におけるビンブラスチンN酸化物処理は、ビンクリスチンと同等の活性を持つ強力な細胞毒性活性を有することが実証された(図3Dおよび表2)。表2に示す通り、ビンクリスチンN酸化物における5〜25のHCR値は、インビトロでの多くのヒト固形腫瘍細胞株に対するこの化合物の低酸素誘発性の細胞毒性を実証する。
【0138】
(表2)低酸素条件に対する正常酸素条件に曝露したヒト腫瘍細胞株に対するビンクリスチンN酸化物またはビンクリスチンの細胞毒性および50%阻害濃度(IC50)

* HCRは(IC50空気)/(IC50低酸素)として定義される。
【0139】
実施例7
試験管内腫瘍細胞感受性試験を用いた固形腫瘍ラインに対するビンカアルカロイド類似体およびそのN酸化物の細胞毒性
異なる固形腫瘍細胞株に対するビンカアルカロイドおよび類似体であるそのN酸化物の示差的細胞毒性は、インビトロにおいてクローン形成(試験管内腫瘍細胞感受性)試験を用いて正常酸素条件下および0.2%O2低酸素条件下において実証される。低酸素(0.2%O2)条件に対する正常酸素(20%O2)条件への曝露後のH460肺癌腫瘍細胞の生存可能コロニーの生育に対するビンブラスチンN酸化物の処置効果から得られた結果を図4に示す。
【0140】
ヒトH460肺腺癌腫瘍細胞を標準条件下においてDMEM-10%FBSで培養して、100mmプラスチック培養皿に細胞1×106個/培養皿の密度で播種した。続いて、細胞を0.01〜100nMの用量範囲のビンブラスチンN酸化物で処理した。細胞を静かに振盪しながら37℃にて14時間、低酸素装置(INVIVO2400 Hypoxia Workstation, Ruskin Technology)内で一定レベルの低酸素(0.2%O2-5%CO2−平衡N2)に曝露した。同様に処理した細胞を正常酸素(空気-5%CO2)条件下において37℃でインキュベートした。7日後に生存可能なコロニーの生育を調べるために、細胞を回収して新しいプラスチック培養プレートで細胞1×105個/ウェルの密度にて新鮮な培地に再度接種した。コロニーを固定して、0.4%クリスタルバイオレットで染色して、7日後に数を数えた。正常酸素および低酸素条件下において対照処理した細胞に比して生育可能コロニーの数をブロックするための50%阻害濃度を算出した。図4に示す通り、ビンブラスチンN酸化物は、低酸素条件下でのその強力な細胞毒性活性に比して、正常酸素条件下ではH460肺腫瘍細胞に対して低い細胞毒性活性を有した。ビンブラスチンN酸化物は、インビトロにおいて生存可能なH460腫瘍コロニーの生育に対して約20の低酸素細胞毒性比を示す(図4)。結果は、ビンブラスチンN酸化物が、低酸素下において活性化されてインビトロでヒト固形腫瘍細胞株に対して低いナノモルのIC50阻害活性を持つ強力な細胞毒となるプロドラッグであることを実証した。
【0141】
実施例8
ヒト固形腫瘍細胞株に対するビンカアルカロイドN酸化物類似体の細胞毒性の活性化は酸素依存性である
本発明者らの結果は、ビンカアルカロイドN酸化物類似体は正常酸素条件下では低い細胞毒性活性を有するが低酸素条件下では強力な細胞毒性物質へと活性化されることを実証する。ヒトH460肺腺癌腫瘍細胞を標準的条件下においてDMEM-10%FBSで培養した。100mmプラスチック培養皿に1×106個/培養皿の腫瘍細胞を播種して、ビンカアルカロイドまたはN酸化物類似体を0.01〜100nMの用量範囲で適用した。細胞を、静かに振盪しながら37℃にて14時間、低酸素装置(INVIVO2400 Hypoxia Workstation, Ruskin Technology)内で一定レベルの低酸素(0.2%、1%または5%O2-5%CO2−平衡N2)に曝露した。同様に処理した細胞を正常酸素(空気-5%CO2)条件下において37℃でインキュベートした。24〜72時間後に生存性を評価するため、細胞を回収して48穴プラスチック培養プレートで細胞1×103個/ウェルの密度で新鮮な培地に再度接種した。簡潔に言うと、アラマーブルーを0日目および3日目に反復ウェルに加えて、プレートリーダー(530〜560nm励起、590発光)を用いて蛍光を判定する前に37℃にてさらに3〜6時間、細胞をインキュベートした。増殖阻害パーセントを算出して、各薬剤濃度において対照処理細胞に対してプロットした。対になる正常酸素および低酸素処理について、50%増殖阻害濃度(IC50)の値を算出した。低酸素細胞毒性比(HCR)は、((低酸素におけるIC50)/(正常酸素におけるIC50))として定義された。図5において、本発明者らは、ヒトH460肺腺癌細胞に対する細胞毒性の活性化が酸素依存性であることを実証している。酸素濃度が低下するに伴って、培養したH460肺腫瘍細胞に対するビンブラスチンN酸化物の高い細胞毒性が観察された。検査した0.2%、1%および5%O2の部分O2濃度に対してプロットしたビンブラスチンN酸化物の低酸素細胞毒性比(HCR)を図5に示す。
【0142】
実施例9
LC/MS-MS分析により測定される低酸素性癌細胞におけるビンカアルカロイドN酸化物のそれぞれの親化合物への生体内還元
本明細書において、本発明者らは、クロマトグラフィーおよび質量分析法での分析によって検出されるように、ビンブラスチンN酸化物およびビクリスチンN酸化物が(0.2%O2)低酸素条件下においてそれぞれの親化合物に生体内還元されることを実証する。ヒトH460肺腺癌腫瘍細胞を100mm培養皿に細胞1×106個/培養皿の密度で播種して、無処理またはビンカアルカロイドN酸化物類似体を0.02〜7μMの用量範囲で適用した。細胞を、静かに振盪しながら37℃にて12時間、低酸素装置(INVIVO2400 Hypoxia Workstation, Ruskin Technology)内で一定レベルの低酸素(0.2%O2-5%CO2−平衡N2)に曝露した。同様に処理した細胞を正常酸素(空気-5%CO2)条件下において37℃でインキュベートした。DNA含有量の分析およびLC/MS/MS分析に備えて、細胞を回収して、DNA溶解緩衝液(20mMトリス-HCL、pH 8.0、1mM EDTA、0.1%トリトンX-100)に溶解して、-80℃に保存した。測定したビンカアルカロイドまたはN酸化物類似体の濃度を実験において溶解した細胞の量に対して正規化するために、溶解物を融解して、Hoescht 33258色素および蛍光(λ励起 350nm、λ発光 455nm)を用いてDNAを分析した。溶解物を、0.1%酢酸およびビンカアルカロイド内部標準を含むメタノール 150mlと混合して、10分間、ボルテックスにかけ、18000gで5分間、遠心分離した。清澄化した上清を、ガラス挿入物がセットされたHPLCバイアルに移して、LC-MS/MSで分析した。クロマトグラフィーはAcquity BEH C18カラムを備えたAcquity UPLCシステムで実施して、0.1%(v:v)ギ酸の水溶液を移動相Aとして、0.1%(v:v)ギ酸のアセトニトリル溶液を移動相Bとして使用した。質量分析はMicromass Quattro Micro三連四重極質量分析計を用いて実施した。
【0143】
図6A〜6Dには、正常酸素および低酸素条件下においてビンブラスチンN酸化物で処理したH460腫瘍細胞由来の細胞外培地のHPLC/MS-MS分析のビンブラスチンおよびビンブラスチンN酸化物類似体のクロマトグラムを示す。ビンブラスチンのクロマトグラムは、低酸素条件下でのビンブラスチンの遊離の増加およびビンブラスチンN酸化物のピークの減少を明瞭に示している。図7Aおよび7Bでは、低酸素または正常酸素条件下において0.2μMビンブラスチンN酸化物で処理した細胞の溶解物または細胞外培地から質量分析を用いて測定されたビンブラスチンN酸化物およびビンブラスチン親化合物の定量的な量を示す。各化合物の量は標準曲線から算出した。これらの結果は、低酸素曝露下ではビンブラスチンN酸化物がビンブラスチンに生体内還元されて、処理細胞の溶解物および細胞外培地の双方で検出されることを明らかに示している。処理細胞における低酸素活性化時のビンブラスチンの細胞外遊離は、ビンブラスチンN酸化物類似体が強力なバイスタンダー細胞毒性作用を有す可能性があることを示している。
【0144】
図8Aおよび8Bでは、低酸素または正常酸素条件下において7μMビンクリスチンN酸化物で処理したH460肺腺癌細胞の溶解物または細胞外培地から質量分析を用いて測定されたビンクリスチンN酸化物およびビンクリスチン親化合物の定量的な量を示す。各化合物の量は標準曲線から算出した。これらの結果は、低酸素曝露下においてビンクリスチンN酸化物がビンクリスチンに生体内還元されて、処理細胞の溶解物および細胞外培地の双方で検出されることを明確に示している。処理細胞における低酸素活性化時のビンクリスチンの細胞外遊離は、ビンクリスチンN酸化物類似体が強力なバイスタンダー細胞毒性効果を有する可能性があることを示している。
【0145】
実施例10
ビンカアルカロイドN酸化物類似体は、インビボにおいてそれらの親化合物であるビンカアルカロイドに比して低い全身および致死毒性を有する
本発明者らは、本明細書において、ビンブラスチンN酸化物およびビンクリスチンN酸化物の類似体が、げっ歯類においてインビボでそれぞれの親化合物であるビンブラスチンおよびビンクリスチンに比して低い全身および致死毒性を有することを実証する。
【0146】
6〜60mg/kgのビンブラスチンN酸化物を3日に1回、合計5回(q3d×5)腹腔内(ip)に注射した雌性胸腺欠損nu/nuマウスの28日間急性毒性試験の結果を図9に示す。体重は週2回、投与後2週までモニターした。また、陽性対照として、マウスに4または6mg/kgビンブラスチンを同じくq3d×5のスケジュールでip注射した。ビンブラスチンN酸化物を6〜60mg/kgの用量範囲で、またはビンブラスチンを4〜6mg/kgで投与したマウス(n=5/群)の体重低下%を図9に示す。ビンブラスチンを致死量の4または6mg/kgで投与したマウスは、それぞれ、10.8または9.8日の中間死亡日で死亡した。これに対して、ビンブラスチンN酸化物をビンブラスチンの致死量の15倍までの用量で投与したマウスは、最終投与後14日の時点で有意な体重低下または毒性の肉眼的症状の証拠を示さなかった。
【0147】
0.6〜10mg/kgのビンクリスチンN酸化物を3日に1回、合計5回(q3d×5)静脈内(iv)に注射した雌性胸腺欠損nu/nu腫瘍負荷マウスの28日間急性毒性試験の結果を図10に示す。体重は週2回、投与後2週までモニターした。また、陽性対照として、マウスに0.6または1mg/kgビンクリスチンを同じくq3d×5のスケジュールでiv注射した。ビンクリスチンN酸化物を0.6〜10mg/kgの用量範囲で、またはビンクリスチンを0.6〜1mg/kgで投与したマウス(n=5/群)の体重低下%を図10に示す。ビンクリスチンを投与したマウスは、投与実施中に有意な体重低下を示した。これに対して、ビンクリスチンN酸化物をビンクリスチンの最大耐用量の10倍までの用量で投与したマウスは、最終投与後14日の時点で有意な体重低下または毒性の肉眼的症状の証拠を示さなかった。
【0148】
実施例11
マウスの固形腫瘍モデルにおけるビンカアルカロイドおよび類似体であるそのN酸化物の抗腫瘍活性
ビンカアルカロイドおよび類似体であるN酸化物のインビトロにおける抗腫瘍効果を異種移植マウスモデルを用いて調べる。例えば、ヒトH460肺腺癌、HT29結腸直腸腺癌、またはA549肺癌腫瘍断片(約1mm3)を雌性ヌード(nu/nu)マウスに皮下(sc)移植する。腫瘍が約100mm3の大きさに達したら(移植後25日)、動物を一群当たり10匹に対で対応させる。マウスにビンカアルカロイドN酸化物の類似体を1〜200mg/kgの用量でq3d×5のスケジュールにてiv注射する。また、陰性対照としてマウスに賦形剤を、陽性対照として生体内還元された親化合物を最大耐用量で同一スケジュールを用いて投与する。腫瘍をカリパスで週2回測定して、式:腫瘍体積(mm3)=((幅)2×長さ)/2を用いて腫瘍体積を算出する。動物は毒性の徴候をモニターして、試験当初の5日間は1日1回、その後、試験終了までは週2回、体重を測定する。プロトコールに予め決められた通り、腫瘍が予め定められたエンドポイントの大きさである1200mm3に達するか、または試験終了(60日目)のいずれか早い時点で、各動物を積極的に安楽死させる。エンドポイント到達時間(TTE)は、各マウスについて、TTE(日)=(log10(エンドポイント体積mm3)−b)/mとして算出して、式中、bは対数変換した腫瘍増殖データセットの線形回帰より得られる線の切片であり、mは勾配である。投与の転帰は、日を単位として表される対照(C)群に対する投与(T)群の中央TTEの増加として(TGD=T−C)、または対照群の中央TTEのパーセント%TGD=((T−C)/C)×100として定義される腫瘍増殖遅延(TGD)から求められる。試験に残っている動物のパーセントを投与後時間の関数として表すためにKaplan-Meierのプロットを作成する。投与群対対照群の間の統計学的有意性は対数順位解析により調べる。
【0149】
もう一つの例において、雌性ヌードマウス(nu/nu)にヒトBxPC-3膵腫瘍の断片をsc移植する。腫瘍が約60〜80mm3の大きさに達した時点で、動物を一群当たり10匹のマウスを含む投与および対照群に対で対応させる。マウスにビンカアルカロイドN酸化物類似体を1〜200mg/kgの用量でq3d×5のスケジュールにてiv注射する。さらに、同一スケジュールを用いて、陰性対照としてマウスに溶媒を、また陽性対照として生体内還元された親化合物を最大耐用量で投与する。腫瘍を週2回、カリパスで計測して、式:腫瘍体積(mm3)=((幅)2×長さ)/2を用いて腫瘍体積を算出する。動物は毒性の徴候をモニターして、試験当初5日間は1日1回、その後は試験終了まで週2回、体重を測定する。プロトコールに予め決められた通り、実験は、溶媒対照群の腫瘍の大きさが平均 約2000mm3に達した時点(約27日)で終了する。終了後直ちにマウスを体重測定して屠殺し、腫瘍を摘出して、群当たりの平均腫瘍体積を算出する。各群について、投与群の平均腫瘍体積の変化/対照群の平均腫瘍体積の変化×100(ΔT/ΔC)として定義される腫瘍増殖阻害(TGI)を算出する。統計学的比較は、ANOVAおよびDunnett多重比較検定を順次用いて実施する。
【0150】
ビンカアルカロイドN酸化物の抗腫瘍活性は、同所性(ot)固形腫瘍異種移植モデルにおいても評価する。一つの態様において、雌性胸腺欠損マウスに対して膵実質に2.5×106個のヒトBxPC-3膵細胞を直接注射する。溶媒(陰性対照)、10〜200mg/kgビンカアルカロイドN酸化物類似体(iv)、または40mg/kgゲムシタビン(ip)の投与を腫瘍移植後14日目にq3d×5のスケジュールで開始する。投与群は一群当たり12匹のマウスからなる;組織学的解析に備えて、各群にさらに5匹のマウスを追加する。マウスは疾病の症状を1日2回モニターして、施設倫理委員会が概略を定めた基準に基づいて積極的に安楽死させる;屠殺日を癌死亡日と見なす。試験の最重要なエンドポイントである生存期間の延長はKaplan-Meierのプロットを用いて調べて、対照群と比較した投与反応の統計学的有意性は対数順位検定により解析する。組織学的解析では、マウスを投与期間を通して多くの日に屠殺して、摘出した腫瘍に由来する盲検化した組織切片を腫瘍増殖(BrDUrd取り込み)、低酸素(ピモニダゾール染色)、脈管構造(CD31染色)、アポトーシス(TUNEL染色)および壊死の検出のための標準的な免疫組織学的手法によって解析する。腫瘍微小環境に対して投与した溶媒対照と比較したビンカアルカロイドN酸化物類似体の影響を定性的および定量的に評価する。さらに、転移形成が実証されている肺および肝などのその他の標的臓器を摘出して、転移性の拡散に対する処置の効果を解析する。ホルマリンで固定した厚さ 5μmのパラフィン包埋組織切片をヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)で染色して、転移性腫瘍荷重を計算するために肉眼的病理組織学的解析を盲検法で実施する。侵襲性腫瘍細胞によって占められる空隙の総パーセントを求めて、調べた組織全体のパーセントとして表す。統計学的解析はノンパラメトリックなMann-WhitneyのU検定を用いて計算する。転移性腫瘍細胞の増殖の阻止および低酸素性腫瘍細胞の転移性拡散の阻止に対するビンカアルカロイドN酸化物の効果を調べる。
【0151】
さらに、化学療法剤および/または放射線療法と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0152】
さらに、治療用モノクローナル抗体(抗VEGF、抗EGF)などの生物学的物質と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0153】
さらに、小分子チロシンキナーゼ阻害剤と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0154】
さらに、血管破壊物質、血管障害物質または血管新生阻害物質と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0155】
さらに、低酸素誘導因子-1または-2(HIF-1またはHIF-2)拮抗薬と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0156】
さらに、良好酸素性腫瘍細胞を標的とするその他の治療物質と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0157】
さらに、腫瘍酸素付加を減少させるまたは腫瘍消費を増加させるその他の物質と併用した際のビンカアルカロイドおよび類似体N酸化物のインビボにおける抗腫瘍活性をヌードマウスの異種移植モデルを用いて調べる。
【0158】
実施例12
ビンアルカロイドN酸化物類似体の腫瘍選択性
腫瘍負荷マウスにおいて、ビンアルカロイドN酸化物類似体およびそれらの生体内還元された親化合物代謝物の全身性および局所腫瘍濃度をHPLC/MS-MSなどの定量的分析手順を用いてモニターする。
【0159】
一つの例において、雌性胸腺欠損ヌードマウスに1×107個のH460肺腺癌腫瘍細胞をsc注射する。平均腫瘍体積が300mm3に達した時点で動物に投与する。マウスは一群5匹の投与群に無作為化する。マウスにはビンアルカロイドN酸化物の10〜200mg/kgの単回ivボーラス注射を尾静脈注射によって投与する。用量当たり3匹のマウスを投与後15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間および24時間に屠殺する。HPLC/MS/MSを用いた詳細な分析に備えて、血漿および乾燥腫瘍試料を採取して−80℃に保存する。血漿および腫瘍試料に由来するビンカアルカロイドN酸化物およびその生体内還元された代謝物の定量は、0.1%(v/v)酢酸を含むメタノール中での液体−液体抽出後に求める。液体抽出後、血漿試料に公知の濃度の内部標準を加えて、15000×rpmにて4℃で10分間、遠心分離にかける。得られる上清をAcquity BEH C18カラムを備えたAcquity UPLCシステムを用いてクロマトグラフィーにより分析して、0.1%(v:v)ギ酸の水溶液を移動相Aとして、0.1%(v:v)ギ酸のアセトニトリル溶液を移動相Bとして使用する。質量分析はMicromass Quattro Micro三連四重極質量分析計を用いて実施する。切除した腫瘍試料(約300mg)を冷水中でホモジナイズして公知の内部標準を加えて液体−液体抽出に供する。組織ホモジネートの遠心分離後、上清を回収して、前述の通りのHPLC/MS/MS分析前に、減圧濃縮装置を用いて0.4mlの最終液量まで濃縮する。薬剤投与後に腫瘍選択性が亢進して全身性の曝露が低下することを実証するために、投与後の異なる時期に血漿および腫瘍試料からビンカアルカロイドN酸化物およびその生体内還元された親代謝物の量を分析する。
【0160】
本発明について詳細に記述したので、当業者は、本発明の範囲またはその任意の態様に影響を及ぼすことなく、条件、製剤およびその他のパラメータの幅広い同等の範囲内で同一のことが実施できることを理解する。本明細書で引用されるすべての特許、特許出願および刊行物は本明細書において参照によりそれらの全体が完全に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】ビンブラスチンN酸化物のX線単結晶構造を示す。比較のために、この化合物の化学構造も示す。
【図2】図2A〜2Dは、インビトロにおける多くのヒト固形腫瘍細胞株に対するビンブラスチンN酸化物の低酸素活性化細胞毒性を示す。
【図3】図3A〜3Dは、インビトロにおける多くのヒト固形腫瘍細胞株に対するビンクリスチンN酸化物の低酸素活性化細胞毒性を示す。
【図4】正常酸素条件下に対する低酸素条件下におけるインビトロでの生存可能H460肺腺癌腫瘍コロニーに対するビンブラスチンN酸化物の示差的細胞毒性活性を示す。
【図5】ビンブラスチンN酸化物のH460肺癌細胞に対する細胞毒性の活性化が酸素依存性であることを示す。HCRは、正常酸素条件下でのIC50/低酸素条件下でのIC50として算出された。
【図6】図6A〜6Dは、200nMビンブラスチンN酸化物で処理したH460肺腺癌腫瘍細胞からの細胞外培地のLC/MS-MS分析のクロマトグラムを示し、ビンブラスチンN酸化物が低酸素曝露後にビンブラスチン(親薬剤)に転換されることを実証する。
【図7】図7Aおよび7Bは、正常酸素または低酸素条件に曝露した200nMビンブラスチンN酸化物で処理したH460細胞の溶解物(7A)または細胞外培地(7B)のビンブラスチンN酸化物(黒塗りのバー)または生体内還元されたビンブラスチン(白いバー)のLC/MS-MS分析を示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、正常酸素または低酸素条件に曝露した7mMビンクリスチンN酸化物で処理したH460細胞の溶解物(8A)または細胞外培地(8B)のビンクリスチンN酸化物(黒塗りのバー)または生体内還元されたビンクリスチン(白いバー)のLC/MS-MS分析を示す。
【図9】免疫不全マウス(n=5群)における体重低下の平均変化パーセントに対するビンブラスチン酸化物類似体(VBL-NO)またはビンブラスチン投与の影響を示す。すべての物質は、記載した投与量をq3d×5のスケジュール(ピンクの矢じり型)でi.p.投与した。
【図10】腫瘍負荷免疫不全マウス(n=5群)における体重低下の平均変化パーセントに対するビンクリスチン酸化物類似体(VCR-NO)または硫酸ビンクリスチン投与の影響を示す。すべての物質は、記載した投与量をq3d×5のスケジュール(ピンクの矢じり型)でi.v.投与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
R'1が、水素、アルキル、アルコキシ、アシル、ホルミル、またはハロゲノアシル基を表し;
R'2が、水素またはアルキル基を表し;
R'3およびR"3が、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR'3およびR"3が共にカルボニル基を形成し、またはそうでなければR'3およびR'5が共にエポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R'4が、水素、アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシメチル、またはアルカノイルオキシメチル基を表し;
R'5およびR"5が、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン原子1〜3個によって置換されてもよいC1-C7アルキル、アルカノイルオキシ、または2-ヒドロキシエチル基を表し;
R'6が、水素、エチル、2-ヒドロキシエチル、またはアセチル基を表し;
R'7が、水素またはシアノを表し;
R1が、水素、アルキル、ホルミル、またはアシル基を表し;
R2が、水素またはアルコキシを表し;
R3が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシル基を表し、またはそうでなければR3およびR4が共に、エポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R4が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR4およびR5が共にエポキシ架橋を形成し;
R6が、アルキルオキシカルボニル、ヒドラジド、アセトアミド、ヒドロキシメチル、アルカノイルオキシメチル基、もしくは -C(=O)-A-NH-Pを表し、式中-A-が-NH-、-NH-alk-COO-、もしくは-NH-alk-COONH-の一つであり、alkが直鎖もしくは分岐C1-C7アルキル基であり、および-NH-Pがペプチド残基であり、またはR5およびR6が共にオキサゾリジン-2,4-ジオン環を形成し;
R5およびR7が、水素、ヒドロキシ、またはアルカノイルオキシ基を表すと共に、その酸付加塩およびその四級アンモニウム塩を表し;
R8およびR'8のそれぞれが、Oであるかまたは存在しないが、ただしR8およびR'8の少なくとも一つがOであり;ならびに
nが1または2であり;
ただし、式Iの化合物がビノレルビンN'b酸化物またはビンブラスチンN'b酸化物ではない。
【請求項2】
式Iの化合物が、デスアセチルビンブラスチンN酸化物、ビンクリスチンN酸化物、デスアセチルビンフルニンN酸化物、デスアセチルビノレルビンN酸化物、ビンドシンN酸化物およびビンフルニンN酸化物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
最大耐用量未満の用量で式Iの化合物を反復投与する段階を含む、請求項1記載の化合物の規則正しい投与療法。
【請求項4】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量をそれを必要とする動物に投与する段階を含む、過剰増殖障害を処置、改善、または予防する方法:

R'1が、水素、アルキル、アルコキシ、アシル、ホルミル、またはハロゲノアシル基を表し;
R'2が、水素またはアルキル基を表し;
R'3およびR"3が、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR'3およびR"3が共にカルボニル基を形成し、またはそうでなければR'3およびR'5が共にエポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R'4が、水素、アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシメチル、またはアルカノイルオキシメチル基を表し;
R'5およびR"5が、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン原子1〜3個によって置換されてもよいC1-C7アルキル、アルカノイルオキシ、または2-ヒドロキシエチル基を表し;
R'6が、水素、エチル、2-ヒドロキシエチル、またはアセチル基を表し;
R'7が、水素またはシアノを表し;
R1が、水素、アルキル、ホルミル、またはアシル基を表し;
R2が、水素またはアルコキシを表し;
R3が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR3およびR4が共に、エポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R4が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR4およびR5が共にエポキシ架橋を形成し;
R6が、アルキルオキシカルボニル、ヒドラジド、アセトアミド、ヒドロキシメチル、アルカノイルオキシメチル基、もしくは -C(=O)-A-NH-Pを表し、式中-A-が-NH-、-NH-alk-COO-、もしくは-NH-alk-COONH-の一つであり、alkが直鎖もしくは分岐C1-C7アルキル基であり、および-NH-Pがペプチド残基であり、またはR5およびR6が共にオキサゾリジン-2,4-ジオン環を形成し;
R5およびR7が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表すと共に、その酸付加塩およびその四級アンモニウム塩を表し;
R8およびR'8のそれぞれが、Oであるかまたは存在しないが、ただしR8およびR'8の少なくとも一つがOであり;ならびに
nが1または2である。
【請求項5】
以下の段階を含む、それを必要とする動物における過剰増殖障害を処置、予防、または改善する方法:
(a)過剰増殖障害が低酸素組織を特徴とするか否かを決定する段階;および
(b)請求項1記載の化合物の有効量によって動物を処置する段階。
【請求項6】
式Iの化合物が、ビンブラスチンN酸化物、デスアセチルビンブラスチンN酸化物、ビノレルビンN酸化物、ビンクリスチンN酸化物、デスアセチルビンフルニンN酸化物、デスアセチルビノレルビンN酸化物、ビンドシンN酸化物、およびビンフルニンN酸化物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグもしくはジアステレオマーからなる群より選択される、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
化合物の投与前または投与時に、動物を、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、単光子放射コンピュータ断層撮影法、および陽電子放出断層撮影法からなる群より選択される造影技術に供する段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
過剰増殖障害が癌である、請求項4または5記載の方法。
【請求項9】
癌が、膀胱、脳、乳房、子宮頚部、結腸、子宮内膜、食道、頭頚部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、口腔、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、または精巣の癌である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
癌が、急性および慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、頚部過形成、絨毛上皮腫、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、本態性血小板増加症、尿生殖器癌、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵臓インスリノーマ、髄様甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄性およびリンパ球性白血病、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真正赤血球増加症、原発性脳癌、原発性マクログロブリン血症、前立腺癌、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
過剰増殖障害が、加齢黄斑変性、クローン病、硬変、慢性炎症関連障害、糖尿病性網膜症、肉芽腫症、臓器または組織移植に関連した免疫過剰増殖、免疫増殖疾患または障害、たとえば炎症性腸疾患、乾癬、リウマチ性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、網膜低酸素症に対して二次的な血管過剰増殖、または血管炎である、請求項4または5記載の方法。
【請求項12】
一つまたは複数の他の活性物質または処置を動物に投与する段階をさらに含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項13】
一つまたは複数の他の活性物質または処置が、化学療法剤、放射線療法剤/処置、抗血管新生剤、血管標的化物質、HIF1阻害剤、Hsp90阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、カスパーゼ誘導物質、CDK阻害剤、およびアポトーシス促進分子からなる群より独立して選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
化学療法剤が、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生菌、ベバセイズマブ(bevaceizumab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンα、ダウノルビシン、デニロイキンディフチトックス(diftitox)、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンα、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガミシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メソトレキセート、メトクサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガメダーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロネートからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
抗血管新生物質が、ベバシズマブ、アンジオスタチン、エンドスタチン、バチマスタット、カプトプリル、軟骨由来阻害剤、ゲニステイン、インターロイキン12、ラベンダスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、組換え型ヒト血小板第四因子、テコガラン、トロンボスポンジン、TNP-470、抗VEGFモノクローナル抗体、可溶性VEGF-受容体キメラタンパク質、抗VEGF受容体抗体、抗PDGF受容体、インテグリンの阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、siRNA、抗VEGFアプタマーおよび色素上皮由来因子からなる群より選択される、請求項13記載の方法
【請求項16】
化合物が、活性物質または処置の投与の前に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
化合物が、活性物質または処置の投与と同時に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
化合物の投与が、活性物質または処置の投与を過ぎて継続される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
化合物が、活性物質または処置の投与後に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1回繰り返される、請求項12記載の方法。
【請求項21】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはジアステレオマーの治療有効量を含む薬学的組成物:

式中、
R'1が、水素、アルキル、アルコキシ、アシル、ホルミル、またはハロゲノアシル基を表し;
R'2が、水素またはアルキル基を表し;
R'3およびR"3が、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR'3およびR"3が共にカルボニル基を形成し、またはそうでなければR'3およびR'5が共にエポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R'4が、水素、アルキルオキシカルボニル、ヒドロキシメチル、またはアルカノイルオキシメチル基を表し;
R'5およびR"5が、同一であるかまたは異なり、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン原子1〜3個によって置換されてもよいC1-C7アルキル、アルカノイルオキシ、または2-ヒドロキシエチル基を表し;
R'6が、水素、エチル、2-ヒドロキシエチル、またはアセチル基を表し;
R'7が、水素またはシアノを表し;
R1が、水素、アルキル、ホルミル、またはアシル基を表し;
R2が、水素またはアルコキシを表し;
R3が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR3およびR4が共に、エポキシ架橋もしくは二重結合を形成し;
R4が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表し、またはそうでなければR4およびR5が共にエポキシ架橋を形成し;
R6が、アルキルオキシカルボニル、ヒドラジド、アセトアミド、ヒドロキシメチル、アルカノイルオキシメチル基、もしくは -C(=O)-A-NH-Pを表し、式中-A-が-NH-、-NH-alk-COO-、もしくは-NH-alk-COONH-の一つであり、alkが直鎖もしくは分岐C1-C7アルキル基であり、および-NH-Pがペプチド残基であり、またはR5およびR6が共にオキサゾリジン-2,4-ジオン環を形成し;
R5およびR7が、水素、ヒドロキシ、もしくはアルカノイルオキシ基を表すと共に、その酸付加塩およびその四級アンモニウム塩を表し;
R8およびR'8のそれぞれが、Oであるかまたは存在しないが、ただしR8およびR'8の少なくとも一つがOであり;ならびに
nが1または2である。
【請求項22】
化合物が、ビンブラスチンN酸化物、デスアセチルビンブラスチンN酸化物、ビノレルビンN酸化物、ビンクリスチンN酸化物、デスアセチルビンフルニンN酸化物、デスアセチルビノレルビンN酸化物、ビンドシンN酸化物およびビンフルニンN酸化物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグからなる群より選択される、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項23】
化学療法剤、抗血管新生剤、血管標的化物質、HIF1阻害剤、Hsp90阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、カスパーゼ誘導物質、CDK阻害剤、およびアポトーシス促進分子からなる群より独立して選択される一つまたは複数の活性物質をさらに含む、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項24】
化学療法剤が、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生菌、ベバセイズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンα、ダウノルビシン、デニロイキンディフチトックス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンα、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガミシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メソトレキセート、メトクサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペガメダーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロネートからなる群より選択される、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
抗血管新生物質が、ベバシズマブ、アンジオスタチン、エンドスタチン、バチマスタット、カプトプリル、軟骨由来阻害剤、ゲニステイン、インターロイキン12、ラベンダスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、組換え型ヒト血小板第四因子、テコガラン、トロンボスポンジン、TNP-470、抗VEGFモノクローナル抗体、可溶性VEGF-受容体キメラタンパク質、抗VEGF受容体抗体、抗PDGF受容体、インテグリンの阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、siRNA、抗VEGFアプタマーおよび色素上皮由来因子からなる群より選択される、請求項23記載の薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−527480(P2009−527480A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555403(P2008−555403)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/004252
【国際公開番号】WO2007/098091
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508249631)ノバセア インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】