説明

ビード部材の製造装置及び製造方法

【課題】ビード部材を製造するときに、ビードコアの外周に貼り付けるビードフィラの先端部と後端部を正確かつ滑らかに接合する。
【解決手段】ビードコアCを周方向に回転させて、ビードコアCの外周に向けて押出機10からゴムを押し出す。押出機10のゴムの押出先端部に設けた口金20の成形部31により、押し出されたゴムをビードフィラ形状に成形して回転するビードコアCの外周に貼り付け、ビードコアCの外周に対するビードフィラの成形終了に合わせて押出機10によるゴムの押し出しを停止させる。口金20の成形部31につながる案内部32により、回転するビードコアCに貼り付けたビードフィラの先端部を成形部31へ案内してビードフィラの後端部に接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードコアの外周にビードフィラを貼り付けて、タイヤのビード部に配置されるビード部材を製造するビード部材の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未加硫タイヤの成形工程では、予め環状のビードコアの外周にビードフィラを貼り付けてビード部材を形成した後、被成形体の側面にビード部材を配置して未加硫タイヤを製造することが行われている。また、このビード部材の製造装置として、従来、押出機により未加硫のゴムを押し出してビードフィラを成形し、ビードフィラを切断等してビードコアに貼り付けて、ビード部材を製造する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図10は、このような従来のビード部材の製造装置の例を示す要部側面図であり、製造装置の概略構成を模式的に示している。
この従来のビード部材の製造装置100は、図示のように、未加硫のゴムを加熱混練して押し出す押出機110と、押出機110の先端に設けられた口金111とを備え、口金111の開口部からゴムを押し出して所定の断面形状のビードフィラFを成形する。また、製造装置100は、環状のビードコアCを保持して回転(図の矢印R)させる回転手段101と、ビードフィラFを押出機110からビードコアCまで搬送する搬送装置(図示せず)と、カッター等からなるビードフィラFの切断装置102とを備えている。
【0004】
ビード部材Bの製造時には、ビードフィラFを搬送中に冷却して、その先端部をビードコアCの外周に貼り付け、回転手段101でビードコアCを回転させて、ビードコアCの外周にビードフィラFを1周配置する。続いて、切断装置102によりビードフィラFを切断して、ビードフィラFの後端部と先端部とを接合し、ビードフィラFビードコアCに貼り付けてビード部材Bを製造する。その際、ビードフィラFの先後端部は、部分的に重ね合わせて人手により押さえ付け、重ね合わせた部分を貼り合わせて接合するのが一般的である。
【0005】
このように、従来の製造装置100では、ビード部材Bを製造する毎に、予め成形したビードフィラFを切断して端部同士を接合するが、その長さが不足して端部間に隙間が生じるのを防止する必要があるため、ビードフィラFは若干長く切断される。これに伴い、ビードフィラFの余剰部分が重ね合わされて接合される結果、接合部で厚さが増加してビードフィラFの厚さが周方向で変化し、或いは、接合部のビードフィラFに厚さ方向や高さ方向のズレ(段ズレ)が生じる虞がある。また、ビードフィラFの重ね合わせた部分を押さえ付けて接合することで、ビードフィラFが高さ方向に変形し、接合部の高さが部分的に高くなることもある。そのため、これらに対処して、ビードフィラF及びビード部材Bの周方向の均一性を高くする観点から、ビードフィラFの先後端部を正確かつ滑らかに接合して、接合部の寸法や形状の精度を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−225377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、ビード部材を製造するときに、ビードコアの外周に貼り付けるビードフィラの先端部と後端部を正確かつ滑らかに接合して、ビードフィラの接合部の寸法や形状の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環状のビードコアの外周に、ゴムで成形されたビードフィラを貼り付けてビード部材を製造するビード部材の製造装置であって、ビードコアを保持して周方向に回転させる回転手段と、回転するビードコアの外周に向けてゴムを押し出す押出機と、押出機のゴムの押出先端部に設けられ、押し出されたゴムをビードフィラに成形してビードコアの外周に貼り付ける口金と、押出機を制御してゴムの押し出しを開始させ、ビードフィラの成形終了に合わせてゴムの押し出しを停止させる制御手段と、を備え、口金が、押出機から押し出されるゴムをビードフィラ形状に成形して回転するビードコアの外周に貼り付ける成形部と、ビードコアに貼り付けたビードフィラの先端部を成形部へ案内してビードフィラの後端部に接合させる案内部とを有することを特徴とする。
また、本発明は、環状のビードコアの外周に、ゴムで成形されたビードフィラを貼り付けてビード部材を製造するビード部材の製造方法であって、ビードコアを周方向に回転させる工程と、回転するビードコアの外周に向けて押出機からゴムを押し出す工程と、押出機のゴムの押出先端部に設けた口金の成形部により、押し出されたゴムをビードフィラ形状に成形して回転するビードコアの外周に貼り付ける工程と、ビードフィラの成形終了に合わせて押出機によるゴムの押し出しを停止させる工程と、口金の案内部により、ビードコアに貼り付けたビードフィラの先端部を口金の成形部へ案内してビードフィラの後端部に接合させる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビード部材を製造するときに、ビードコアの外周に貼り付けるビードフィラの先端部と後端部を正確かつ滑らかに接合して、ビードフィラの接合部の寸法や形状の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のビード部材の製造装置により製造するビード部材の構造を示す断面図である。
【図2】本実施形態のビード部材の製造装置の概略構成を模式的に示す要部側面図である。
【図3】本実施形態のビード部材の製造装置の概略構成を模式的に示す要部側面図である。
【図4】図2の口金を拡大して示す側面図である。
【図5】図4の矢印X方向から見た口金の底面図である。
【図6】図4のY−Y線矢視断面図である。
【図7】口金のゴム通路の概略形状を示す斜視図である。
【図8】ビードフィラの接合過程を順に示す要部断面図である。
【図9】図9Aは、ビード部材の高さを測定した箇所を示す図であり、図9B、Cは、ビードフィラの高さの変化を示すグラフである。
【図10】従来のビード部材の製造装置の例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のビード部材の製造装置と製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の製造装置(以下、製造装置という)により製造するビード部材の構造を示す断面図である。
ビード部材Bは、図示のように、少なくとも、ビードコアCと、ビードコアCの外周に配置されたビードフィラFとを有し、タイヤのビード部からタイヤ半径方向外側に向けて、タイヤ側面の所定範囲に配置される。
【0012】
ビードコアCは、複数のスチールコードC1を束ねて断面矩形状の環状に形成され、半径方向外側の外周にビードフィラFが配置される。ビードフィラFは、未加硫のゴムにより、ビードコアCの外周から半径方向外側に向かって先細り状に延びる、所定高さHの断面三角形状(ここでは直角三角形状)に成形され、ビードコアCを囲んで環状に形成される。製造装置は、環状のビードコアCの外周に、ゴムで成形されたビードフィラFを1周貼り付けてビード部材Bを製造する。
【0013】
図2、図3は、この製造装置の概略構成を模式的に示す要部側面図であり、図2はビード部材Bの製造途中の状態を、図3はビード部材Bの製造が完了した状態を示している。
製造装置1は、図示のように、ビードコアCを保持して周方向に回転させる回転手段2と、回転手段2の半径方向外側(図では左側)に配置された押出機10と、押出機10のゴムの押出先端部に設けられた口金20とを備えている。また、製造装置1は、装置全体を制御する制御手段である制御装置50を備えている。
【0014】
回転手段2は、ビードコアCを着脱可能に保持する円盤状や円筒状の保持部材2Aを有し、保持部材2AによりビードコアCを環状の形状で保持して、ビードコアCを保持部材2Aの軸線回りに回転(図の矢印R)させる。また、回転手段2は、保持部材2Aに連結された駆動装置(図示せず)を有し、保持部材2Aを、駆動装置に設けられたモータ等の駆動源と、その回転動力の伝達機構により回転駆動して、所定の回転速度で回転させて任意の回転角で停止させる。
【0015】
押出機10は、ビードフィラFを成形するためのゴムの供給手段であり、未加硫のゴムを加熱混練して押し出す押出機本体11と、そのゴム押出口に取り付けられたギアポンプ12と、押出機本体11を移動させて回転手段2に接近及び離間(図の矢印J)させる移動手段(図示せず)とを有する。押出機10は、押出機本体11を稼動して、ギアポンプ12内にゴムを送り込み、ギアポンプ12に内蔵された一対の噛み合い歯車(図示せず)を連動して正回転させて、ギアポンプ12から所定量のゴムを連続して押し出す。これにより、押出機10は、回転するビードコアCの外周に向けてゴムを押し出し(図2参照)、ビードコアCが1周等する間を通してゴムを連続供給する。ビードフィラFの成形が終了するときには(図3参照)、押出機10は、ギアポンプ12の噛み合い歯車を逆回転させて、ギアポンプ12からのゴムの押し出しを停止させる。
【0016】
また、この押出機10は、口金20がゴムの押出先端部(ここではギアポンプ12のゴム押出口)に設けられており、押し出したゴムを、口金20内を通過ささてビードコアCに押し付けて貼り付ける。口金20は、押出機10とビードコアCとの間に配置され、ビードコアCに当接して、その外周との間に、ビードフィラFの断面形状に応じた断面形状の、かつ、ビードコアCの周方向に沿って延びるゴム通路を形成する。口金20は、押出機10から押し出されたゴムを、このゴム通路を通過させて所定の断面形状のビードフィラFに成形しつつ、回転するビードコアCの回転方向Rの前方側に押し出して外周に貼り付け、環状のビードフィラFを次第に形成する。
【0017】
製造装置1は、口金20を介して、押出機10によるゴムの押し出しと、ビードフィラFのビードコアCへの貼り付けとを直結し、押出機本体11とギアポンプ12を稼動して、口金20でビードフィラFを成形する。同時に、回転手段2により、ビードフィラFの成形速度に合わせた速度でビードコアCを回転させ、成形したビードフィラFを回転するビードコアCに貼り付ける。このように、製造装置1は、押し出されたゴムを、温度が高く柔らかい状態を維持して成形し、ビードコアCの外周に柔らかい状態のビードフィラFを1周貼り付けてビード部材Bを製造する。その際、製造装置1は、制御装置50により制御して、押出機10や回転手段2を同期して作動させ、それぞれビード部材Bの製造のための各動作を実行させる。
【0018】
制御装置50は、例えばマイクロプロセッサ(MPU)51と、制御処理のための各種プログラムを格納するROM(Read Only Memory)52と、MPU51が直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)53等を備えたマイクロコンピュータを有する。また、制御装置50は、MPU51によりROM52に格納されたプログラムを実行することで得られる機能実現手段として、後述するビード部材Bの製造に関する処理を行う各手段(機能部)を有する。制御装置50は、接続手段(図示せず)を介して、回転手段2や押出機10が接続され、回転手段2を制御して、ビードコアCを所定速度で回転させて停止させる。また、制御装置50は、押出機10、及び、押出機10によるゴムの押し出しを制御してゴムの押し出しを開始させ、口金20を介して、ゴムをビードコアCの外周に連続供給し、ビードフィラFの成形終了に合わせて所定のタイミングで、ゴムの押し出しとビードコアCへのゴムの供給を停止させる。
【0019】
ここで、本実施形態の製造装置1では、ビードコアCの外周で、口金20により、ビードフィラFの成形と貼り付けを行うとともに、ビードフィラFの貼り付けを開始した先端部F1と貼り付けを終了する後端部とを接合する。口金20は、これらビードフィラFの成形終了までの各工程を、ビードコアCの回転に伴い、上記したビードコアCとの間に形成されるゴム通路により連続して行う。以下、この口金20について詳細に説明する。
【0020】
図4は、図2の口金20を拡大して示す側面図であり、口金20付近のビードコアCも示している。また、図4では、口金20の内部を透視して、その内部構造も模式的に点線で示している。
口金20は、図示のように、側面視L字状のブロック状をなし、押出機10に取り付けられた基端部21に続いて当接部22が設けられ、当接部22がビードコアCに当接して、ビードコアCの周方向に沿って配置される。また、口金20は、その内部に、ゴム供給路23とゴム通路30とを有する。ゴム供給路23は、一端部(図では左端部)が押出機10のゴム押出口につながり、そこから基端部21を貫通して当接部22まで形成され、他端部(図では右端部)が当接部22でゴム通路30に開口する。これにより、ゴム供給路23は、押出機10のゴム押出口とゴム通路30とを連通させ、押出機10が押し出すゴムをゴム通路30へ供給(図の矢印K1)する。
【0021】
ゴム通路30は、当接部22内に、当接するビードコアCの周方向に沿って、その外周との間に設けられている。このゴム通路30は、ビードコアC上のビードフィラFが通過可能な、かつ、ビードフィラFの断面形状に応じた断面形状の溝状をなし、当接部22を縦断して長手方向の両端面に開口して形成されている。口金20は、押出機10からゴム供給路23を経て供給されるゴムを、ビードコアCの回転(図の矢印R)に応じて、ゴム通路30内をビードコアCの回転方向Rに向かって移動(図の矢印K2)させ、ゴム通路30を順次通過させてビードフィラFに成形する。
【0022】
成形されたビードフィラFは、回転するビードコアCの外周に配置されて貼り付けられ、ビードコアCが1周近く回転すると、先端部F1が、ゴム通路30の逆側から、その内部に再び入り込む(図の矢印K3)。その後、ビードフィラFの先端部F1は、ゴム通路30によりゴム供給路23の開口位置まで案内され、押し出しを停止した押出機10からの最後の供給ゴム(ビードフィラFの後端部)に接合する。このように、ゴム通路30は、ゴム供給路23の開口位置を挟んで、ビードコアCの回転方向Rの前方側と後方側(図では下側と上側)の範囲に、それぞれビードフィラFの成形部31と案内部(接合部)32とを有する。
【0023】
図5は、図4の矢印X方向から見た口金20の底面図である。
口金20は、図示のように、当接部22のゴム通路30を形成する溝内までビードコアCの一部が配置されて、ゴム通路30に対してビードコアCが位置決めされる。同時に、当接部22の溝がビードコアCの外周面で塞がれて、所定形状のゴム通路30がビードコアCの外周に沿って形成される。その際、ゴム通路30の成形部31は、当接部22の端面に開口する開口部33の開口形状が、ビードフィラFの断面形状に応じた三角形状に形成される。口金20は、この開口部33に続く成形部31も同じ断面形状に形成され、ゴム通路30の成形部31と案内部32の境界で、成形部31にゴム供給路23が開口する。
【0024】
図6は、口金20をゴム供給路23の部分で切断して示す図4のY−Y線矢視断面図である。
ここでは、ゴム供給路23が、成形部31のビードコアCから離れた角部に開口し、押出機10からのゴムを、ビードコアCに向かって供給(図の矢印K1)して成形部31内に充填する。口金20は、ビードコアCの回転に伴い、その回転方向Rに成形部31内のゴムを移動させ、成形部31により、ゴムを開口部33から順次押し出して開口形状に応じた断面形状に成形する。これにより、成形部31は、押出機10から押し出されるゴムを、ビードコアCの外周上でビードフィラFの形状に成形する。また、ゴムをビードコアCに押し付けて、成形したゴム(ビードフィラF)を回転するビードコアCの外周に配置し、その周方向に沿って順に貼り付ける。
【0025】
図7は、口金20のゴム通路30の概略形状を示す斜視図であり、図4の矢印Z方向から見た形状を模式的に示している。
口金20は、図示のように、ゴム通路30に、成形部31につながる上記した案内部32を有し、案内部32でビードフィラFの先後端部同士を接合する。案内部32は、ビードフィラFの入口部34が成形部31を拡大した形状に、かつ、成形部31につながる端部が成形部31の形状に一致した形状に形成されるとともに、それらの間が次第に縮小するように形成されている。
【0026】
このように、案内部32は、入口部34から成形部31に向かって次第に縮小して成形部31につながり、その両側の構成面(側面)がテーパ面状に形成される。案内部32には、ビードコアCの回転に伴い、ビードフィラFの先端部F1が入り込んで成形部31に向かって通過する(図の矢印K3)。案内部32は、この通過するビードフィラFの先端部F1を、テーパ面状の構成面に接触させてならしつつ、先端部F1の形状を、成形部31の形状に合わせて徐々に変形させて調整する。即ち、この案内部32は、次第に縮小して成形部31につながる形状調整通路(ならし通路)を構成し、通過するビードフィラFの先端部F1の形状を調整する。また、案内部32は、ビードコアCに貼り付けたビードフィラFの先端部F1を通過させて、後述するように、成形部31へ案内して、成形部31で成形されるビードフィラFの後端部に、重なり等なく突き合わせて接合させる。
【0027】
次に、製造装置1により、ビード部材Bを製造する手順や動作、及び、ビード部材Bの製造方法について説明する。製造時には、まず、回転手段2(図2参照)によりビードコアCを保持し、押出機10を回転手段2に接近させて、口金20をビードコアCの所定位置に当接させる。続いて、回転手段2によりビードコアCを周方向に回転させるとともに、回転するビードコアCの外周に向けて押出機10からゴムを押し出す(図4参照)。この押し出されたゴムを、上記のように、押出機10のゴムの押出先端部に設けた口金20の成形部31により、ビードフィラFの形状に成形して、回転するビードコアCの外周に貼り付ける。また、ビードフィラFをビードコアCの外周全体に貼り付けて(図3参照)、ビードコアCの外周に対するビードフィラFの成形終了に合わせて、押出機10によるゴムの押し出しを停止させ、ビードフィラFの先後端部を接合する。
【0028】
図8は、ビードフィラFの接合過程を順に示す要部断面図であり、図4に示す口金20とビードフィラFを切断して示している。
ビードフィラFは、口金20の成形部31から押し出されると(図8A参照)、外部から作用する圧力が低下して、その先端部F1(他の部分も同様)が、開口部33の形状に対して厚さ方向や高さ方向に膨張(図では、高さ方向の膨張分ゴムF2のみ示す)する。ビードフィラFの先端部F1は、ビードコアCが1周する際に、ビードコアCの回転に伴い、口金20の案内部32に、その大きく開口する入口部34から入り込んで成形部31に向かって移動する。
【0029】
製造装置1は、この口金20の案内部32により、ビードフィラFの先端部F1を、膨張分ゴムF2を中心に磨り潰しや引き延ばす等して、上記のようにならしながら、口金20の成形部31へ案内する。これにより、案内するビードフィラFの先端部F1の形状を成形部31の形状に調整し、先端部F1を成形部31まで移動させる(図8B参照)。また、製造装置1は、先端部F1が案内部32内で所定の位置に達したときに、押出機10によるゴムの押し出しを停止させ、押出機10から残圧で押し出された最後のゴムを成形部31で成形する。この成形部31内に位置するビードフィラFの後端部F3に、成形部31まで移動させた先端部F1を突き合わせて接合し、接合した両端部F3、F1を、成形部31を通過させてならしてビードフィラFの形状に成形する。なお、押出機10からのゴムは、ビードフィラFの先端部F1が成形部31まで移動した後も残圧で押し出されて先端部F1に付着し、先端部F1の所定範囲に配置されてから押し出しが停止して、先端部F1とともに成形部31を通過して成形される。従って、押出機10によるゴムの押し出しは、押し出されたゴムがビードフィラFの先端部F1の所定範囲、例えば接合端部から0.5mm〜2mmの範囲に配置されたときに、このビードフィラの成形終了に合わせて停止する。
【0030】
このように、製造装置1は、口金20の案内部32により、ビードコアCに貼り付けたビードフィラFの先端部F1を口金20の成形部31へ案内して、ビードフィラFの後端部F3に接合させる(図8C参照)。続いて、この接合部F4が成形部31の開口部33から出てから、回転手段2によるビードコアCの回転を停止させ、押出機10を移動させて口金20をビードフィラFから離して、ビードフィラFの貼り付け工程が全て終了する。製造装置1は、以上の工程を経て、環状のビードコアCの外周に、ゴムで成形されたビードフィラFを貼り付けてビード部材Bを製造する。その後、ビード部材Bは、回転手段2から取り外されて次工程へ搬送される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態では、押出機10が押し出すゴムを、口金20の成形部31で成形しつつ回転するビードコアCに貼り付け、ビードフィラFの成形終了に合わせて、押出機10のゴムの押し出しを停止させる。また、ビードフィラFの先端部F1を、口金20の案内部32で成形部31へ案内して後端部F3に接合させる。そのため、ビードフィラFを、ビードコアCの外周の長さに対応する長さに形成しつつ、ビードフィラFの先端部F1を後端部F3の位置に確実に案内でき、端部同士を隙間や重なりがない状態で正確に突き合わせて接合できる。これにより、ビードフィラFを、精度よく確実に接合して、接合部F4の厚さや高さの増加、及び、厚さ方向や高さ方向のズレ(段ズレ)が生じるのを防止でき、周方向に沿うビードフィラFの均一性を向上できる。
【0032】
従って、本実施形態によれば、ビード部材Bを製造するときに、ビードコアCの外周に貼り付けるビードフィラFの先端部F1と後端部F3を正確かつ滑らかに接合して、ビードフィラFの接合部F4の寸法や形状の精度を向上できる。これに伴い、ビードフィラFとビード部材Bの周方向の均一性を高くできるため、ビード部材Bを使用したタイヤの周方向の均一性を向上させることもできる。
【0033】
加えて、この口金20は、案内部32が成形部31に向かって次第に縮小する形状調整通路を有するため、ビードフィラFの先端部F1を、大きく開口する入口部34から案内部32内へ円滑、確実に入り込ませて案内できる。同時に、案内に伴い、形状調整通路により、上記のように通過するビードフィラFの先端部F1をならす等して、その形状を成形部31の形状に向けて無理なく変形させて調整できる。その結果、ビードフィラFの先後端部の形状を合わせて、より正確かつ滑らかに端部同士を接合でき、接合部F4付近の形状精度を一層向上できる。
【0034】
なお、ゴムの押出停止時には、制御装置50により押出機10を制御して、ビードフィラFの成形終了に合わせてゴムの押し出しを停止させ、例えば、ビードフィラFの接合に合わせて、又は、その先端部F1の所定範囲にゴムを押し出したときに、押出機10によるゴムの押し出しを停止させる。ただし、口金20内で、ビードフィラFの先後端部間が周方向に所定距離だけ離れて隙間がある状態で、ゴムの押し出しを停止させることもできる。この場合には、ビードフィラFの膨張分ゴムF2と、停止後の押出機10から残圧で押し出されるゴムとで、ビードフィラFの先後端部間の隙間が埋まるように、押出停止時の先後端部間の所定距離を設定する。これにより、ビードフィラFの成形終了に合わせてゴムの押し出しを停止させて、余分なゴムを発生させずに隙間なくビードフィラFの先後端部を接合でき、ビードフィラFの接合部F4の寸法や形状の精度を更に向上できる。従って、ゴムの押出停止時には、膨張分ゴムF2や残圧によるゴムの量に応じて、口金20内で成形部31側のゴムと、案内部32のビードフィラFの先端部F1とが所定間隔になったときに、押出機10によるゴムの押し出しを停止させるのが好ましい。
【0035】
また、ゴムの押出時には、制御装置50により押出機10によるゴムの押出量を調節して、ビードフィラFの成形位置に応じてゴムの押出量、及び、口金20を介したゴムの供給量を変更することができる。これにより、ここでは、ゴムの押出開始時と、その後の定常押出中とで、ゴムの押出量を変化させ、ビードフィラFの先端部F1を成形するときのゴムの押出量を、他の部分を成形するときの押出量に対して相対的に少なくする。このようにすると、先端部F1に生じる膨張分ゴムF2を少なくして、先端部F1と後端部F3の形状差を小さくでき、それらを段差等なく、より正確、滑らかに接合できる。併せて、先端部F1の形状を口金20の案内部32で調整する量も少なくでき、接合の作業や工程を円滑に行うことができる。その際、ゴムの押出停止動作に応じて直ちにゴムの押し出しが停止する押出機10を使用できるときには、ビードフィラFの接合後も少しの間だけゴムを供給して停止することで、例えば、ゴムの押出量を少なくした先端部F1のゴム量が不足するときに、その付近のゴム量や形状を適宜調節できる。
【0036】
(ビード部材Bの製造試験)
本発明の効果を確認するため、本実施形態の製造装置1により、以上のようにして、ビードフィラFを成形してビード部材B(以下、実施品という)を製造した。実施品では、口金20により、ビードフィラFを、高さH(図1参照)が6mmの断面直角三角形状に成形した。また、比較のため、従来のビード部材の製造装置100(図10参照)により、上記のように、切断したビードフィラFの先後端部を重ね合わせて接合してビード部材B(以下、従来品という)を製造した。従来品では、口金111により、ビードフィラFを、高さHが9mmの断面直角三角形状に成形した。これら実施品と従来品で、それぞれビードコアCの外周からビードフィラFの突端までの高さHを周方向の複数箇所で測定して、高さHの変化を評価した。
【0037】
図9Aは、ビード部材Bの高さを測定した箇所を示す図であり、図9B、Cは、ビードフィラFの高さHの変化を示すグラフである。図9B、Cでは、横軸が図9Aに番号で示す測定箇所であり、縦軸がビードフィラFの測定した高さH(mm)である。
ここでは、ビードフィラFの接合部F4を起点(図9Aの1)にビードフィラFを8等分し、その周方向に沿って互いに45°離れた位置でビードフィラFの高さHを測定した。また、従来品と実施品を2つずつ製造して、それぞれ図9Aの1〜8に対応する箇所で高さHを測定した。
【0038】
その結果、従来品(図9B参照)では、接合部F4である測定箇所1で、他の箇所2〜8よりもビードフィラFの高さHが2mm程度高くなっていた。この高さHの増加は、ビードフィラFの重ね合わせた部分を押さえ付けて接合することで、ビードフィラFが高さ方向に変形し、接合部F4の高さHが部分的に高くなることを示している。これに対し、実施品(図9C参照)では、ビードフィラFの高さHは、接合部F4である測定箇所1でも他の箇所2〜8と同程度であり、測定箇所1〜8の全体に亘り、ビードフィラFの高さHの変化が小さくなった。また、従来品では、ビードフィラFが、接合部F4で厚さ方向に約1mmズレて段ズレが生じたが、実施品は、接合部F4で段ズレ等なく正確かつ滑らかに接合されていた。
【0039】
これより、本発明により、ビード部材Bを製造するときに、ビードフィラFの先端部F1と後端部F3を正確かつ滑らかに接合して、ビードフィラFの接合部F4の寸法や形状の精度を向上できることが証明された。
【符号の説明】
【0040】
1・・・ビード部材の製造装置、2・・・回転手段、2A・・・保持部材、10・・・押出機、11・・・押出機本体、12・・・ギアポンプ、20・・・口金、21・・・基端部、22・・・当接部、23・・・ゴム供給路、30・・・ゴム通路、31・・・成形部、32・・・案内部、33・・・開口部、34・・・入口部、50・・・制御装置、51・・・MPU、52・・・ROM、53・・・RAM、B・・・ビード部材、C・・・ビードコア、F・・・ビードフィラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のビードコアの外周に、ゴムで成形されたビードフィラを貼り付けてビード部材を製造するビード部材の製造装置であって、
ビードコアを保持して周方向に回転させる回転手段と、
回転するビードコアの外周に向けてゴムを押し出す押出機と、
押出機のゴムの押出先端部に設けられ、押し出されたゴムをビードフィラに成形してビードコアの外周に貼り付ける口金と、
押出機を制御してゴムの押し出しを開始させ、ビードフィラの成形終了に合わせてゴムの押し出しを停止させる制御手段と、を備え、
口金が、押出機から押し出されるゴムをビードフィラ形状に成形して回転するビードコアの外周に貼り付ける成形部と、ビードコアに貼り付けたビードフィラの先端部を成形部へ案内してビードフィラの後端部に接合させる案内部とを有することを特徴とするビード部材の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたビード部材の製造装置において、
口金の案内部が、成形部に向かって次第に縮小して成形部につながり、ビードコアの回転に伴い通過するビードフィラの先端部の形状を成形部の形状に調整する形状調整通路を有することを特徴とするビード部材の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたビード部材の製造装置において、
制御手段が、口金内で成形部側のゴムと案内部のビードフィラの先端部との間が所定間隔になったときに、押出機によるゴムの押し出しを停止させる手段を有することを特徴とするビード部材の製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたビード部材の製造装置において、
制御手段が、押出機によるゴムの押出量を調節して、ビードフィラの先端部を成形するときのゴムの押出量を相対的に少なくする手段を有することを特徴とするビード部材の製造装置。
【請求項5】
環状のビードコアの外周に、ゴムで成形されたビードフィラを貼り付けてビード部材を製造するビード部材の製造方法であって、
ビードコアを周方向に回転させる工程と、
回転するビードコアの外周に向けて押出機からゴムを押し出す工程と、
押出機のゴムの押出先端部に設けた口金の成形部により、押し出されたゴムをビードフィラ形状に成形して回転するビードコアの外周に貼り付ける工程と、
ビードフィラの成形終了に合わせて押出機によるゴムの押し出しを停止させる工程と、
口金の案内部により、ビードコアに貼り付けたビードフィラの先端部を口金の成形部へ案内してビードフィラの後端部に接合させる工程と、
を有することを特徴とするビード部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたビード部材の製造方法において、
ビードフィラの後端部に接合させる工程が、口金の成形部へ案内するビードフィラの先端部の形状を成形部の形状に調整する工程を有することを特徴とするビード部材の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載されたビード部材の製造方法において、
ゴムの押し出しを停止させる工程が、口金内で成形部側のゴムと案内部のビードフィラの先端部との間が所定間隔になったときに、押出機によるゴムの押し出しを停止させる工程を有することを特徴とするビード部材の製造方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載されたビード部材の製造方法において、
ゴムを押し出す工程が、押出機によるゴムの押出量を調節して、ビードフィラの先端部を成形するときのゴムの押出量を相対的に少なくする工程を有することを特徴とするビード部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−173369(P2011−173369A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40289(P2010−40289)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】