説明

ピニオンギヤ高周波加熱処理装置とその熱処理方法

【課題】ピニオンギヤのシャフト部に形成されるネジ部の円周上を均一に加熱して加熱斑を防止して熱処理の信頼性向上を図り、さらに装置のコスト、コンパクト化を図ったピニオンギヤの熱処理装置および熱処理方法を提供する。
【解決手段】ピニオンギヤ7の軸部72を環状に囲繞する高周波加熱コイル61と、軸部72の軸線GLが高周波加熱コイル61の軸線CLと略一致すると共に、高周波加熱コイル61の内周面と軸部72の外周面とに全周にわたり均一な隙間63を有するように軸部72を内嵌してピニオンギヤ7を支持する筒状のガイド部材4と、ガイド部材4をガイド部材4の軸線RL周りに回動させる歯車機構3と、歯車機構3を駆動する駆動モータ31と、該駆動モータ31及び加熱装置6を制御する制御装置11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピニオンギヤのシャフト部に形成されるネジ部の外周上を均一に加熱する高周波加熱装置とその熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ピニオンギヤは自動車用駆動車軸のデファレンシャル装置に装着されており、このデファレンシャル装置へ変速装置からの回転駆動力を入力する動力伝達部材として用いられている。
図7に示すように、ピニオンギヤ06はデファレンシャル装置のリングギアに噛合う傘歯車部061と、傘歯車部061の軸線と同軸線で、傘歯車部061を軸支する軸部062から構成されている。
ピニオンギヤ06は機械加工の後に耐摩耗性を向上させるため、浸炭槽にて全体を浸炭焼入れが行われ、焼入れ後に仕上げ加工が施される。
ピニオンギヤ06をデファレンシャル装置に組付けるために配設されている、ピニオンギヤ06の軸部062の中間部に設けられたネジ部063にも浸炭焼入れが施される。
ところが、ピニオンギヤ06をデファレンシャル装置に組付けるためのネジ部063は浸炭焼入れが施されることにより脆弱になっているため、ネジ部063の軟質化が必要となる。
【0003】
そのため、図7に示す装置でネジ部063に対して焼鈍熱処理を行っている。
傘歯車06のネジ部063の外周部には高周波加熱装置01の誘導加熱部05の加熱コイル051が全周を囲繞して配置されている。
図8は加熱コイル051がネジ部063の外周を囲繞して、高周波装置055に接続されているイメージ図を表したものであり、053はネジ部063と加熱コイル051の絶縁被覆電線052との隙間である。
【0004】
また、高周波加熱装置を使用した先行技術として、特開平10−43815号公報(特許文献1)が開示されている。
特許文献1にはワークである溶接管の外周に、高周波加熱コイルを巻回して、焼鈍加熱部分の前後を第1のガイドローラと溶接管保持とで保持し、溶接管の焼鈍加工と矯正加工を連続して行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−43815号公報公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図7、8に示すような構造では、図8の加熱コイル051はZ部においてネジ部063から離れ、また、分岐部分であるため、誘導加熱に対する空白部が生じ、誘導加熱温度が周囲の部分より弱くなり、加熱斑が発生しやすい不具合を有している。
また、特許文献1の方法では、ワークの管部材を高周波加熱コイルに装着し、ワークを焼鈍加熱部分の前後で第1のガイドローラと溶接管保持とで保持して、管部材を送り進める構造であり、熱処理が行われる前後でワークを保持するだけであり、管部材の表面に均一に熱処理するために、高周波加熱コイルの軸芯に、ワークの軸芯を一致させて、且つ、ワークの外周と高周波加熱コイルとの隙間を一定に保持するような構造、機構までの開示はない。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ピニオンギヤの軸芯をガイド部材によって、高周波加熱コイルの軸芯に一致させ、且つ容易に着脱できるようにすると共に、ガイド部材と共にピニオンギヤを、軸線を中心に回動させることにより、ピニオンギヤのシャフト部に形成されるネジ部の円周上を均一に加熱して加熱斑を防止して信頼性向上を図り、さらに装置のコスト、コンパクト化を図ったピニオンギヤ高周波加熱処理装置とその熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、歯車部と該歯車部の軸線と同軸で且つ一体的に形成された軸部とを有するピニオンギヤの前記軸部に熱処理を行うピニオンギヤの高周波加熱装置において、前記軸部を環状に囲繞する高周波加熱コイルを有する加熱装置と、前記歯車部の第1の軸線が前記環状高周波加熱コイルの第2の軸線と略一致すると共に、前記環状の高周波加熱コイルの内周面と前記軸部の外周面とに全周にわたり均一な隙間を有するように前記軸部を内嵌して前記ピニオンギヤを支持する筒状のガイド部材と、該ガイド部材に連結し、該ガイド部材を前記第2の軸線周りに回動させる駆動機構と、該駆動機構を駆動する駆動モータと、該駆動モータの駆動及び前記加熱装置の加熱条件を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、ガイド部材にて歯車の第1の軸線と、環状高周波加熱コイルの第2の軸線とを略一致させて、第2の軸線周りにピニオンギヤ全体を回動させるので、熱処理される軸部全周が均等に加熱され、軸部の熱処理品質が安定する。
また、筒状のガイド部材の内部に軸部を嵌合させることによって、環状の高周波加熱コイルの内周面と前記軸部の外周面とに全周にわたり均一な隙間を有するようにピニオンギヤを支持できるため、ピニオンギヤの高周波加熱装置への着脱が容易になり、作業性が向上する。
さらに、筒状のガイド部材であるため、軸部を軸方向に一定の長さにわたって支持するため、ピニオンギヤの支持が安定化する。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記ガイド部材は複数個配設され、且つ前記駆動機構を構成する歯車のうち、前記ガイド部材に連結されたドリブンギヤは、該ドリブンギヤ同士が噛合って回転駆動力を前記複数のガイド部材に伝達する構造にするとよい。
【0011】
このような構成により、ガイド部材を複数個配設して、それぞれを連動させて回転可能にしたので、複数のピニオンギヤが同時に加熱処理可能になるため作業効率が向上すると共に、ガイド部材に連結されたドリブンギヤ同士を噛合わせて回転駆動力をガイド部材に伝達させる構造なので、歯車機構が簡素化でき、装置全体をコンパクトにまとめることができ、装置全体のコストを抑制できる。
【0012】
また、本願発明において好ましくは、前記軸部の回転を検知する回転センサを、前記軸部に設けられているスプライン軸形成部に対向させて配設するとよい。
【0013】
このような構成により、ガイド部材内に嵌合している被加熱対象のワークであるピニオンギヤが、ガイド部材の回転に対し滑りが生じていないかを、駆動源のモータの回転ではなく、ワークの回転を直接検出して正常に回転しているかを判断することで、高周波加熱の加熱斑を防止する。
【0014】
また、本願発明において好ましくは、前記制御装置は、焼入処理がなされた前記ピニオンギヤに対して、前記高周波加熱コイルが配置された軸部の焼鈍処理を行うために、予熱を制御する予熱手段と、予熱による熱が表面と中間層部との温度差を少なくする放置時間を制御する放冷手段と、主加熱を行う加熱手段とを備えるとよい。
【0015】
このような構成により、予熱の予熱手段による処理後に、予熱が表面と中間層部との温度差を少なくする放置時間を制御する放冷手段を設けたので、表面が過度に加熱されるのを防止でき、焼鈍処理の斑を防止できる。
【0016】
また、本願発明のピニオンギヤの高周波加熱処理方法において、焼入処理がなされた前記ピニオンギヤを前記ガイド部材に支持し、前記高周波加熱コイルを通電し予熱を行う予熱行程と、その後、一定時間放冷する放冷行程と、その後一定時間前記高周波加熱コイルを通電して本加熱を実施し、その後、さらに一定時間放冷する放冷行程とを有し前記焼き入れ後のピニオンギヤの軸部に焼鈍処理を行うことを特徴とする。
【0017】
このような方法発明においては、前記装置発明で説明したのと同様に表面が過度に加熱されるのを防止でき、焼鈍処理の斑を防止できる焼鈍処理を実施することができる。
その結果、ピニオンギヤの前記軸部に熱処理を行うピニオンギヤのシャフト部に形成されるネジ部の円周上を均一に加熱して加熱斑を防止して信頼性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガイド部材にて歯車の第1の軸線と、環状高周波加熱コイルの第2の軸線とを容易に略一致させることができ、且つ回動させるので、加熱斑が容易に解消でき、歯車の熱処理品質が安定する。
また、ガイド部材に回転駆動用ドリブンギヤを直接連結したので駆動装置の構造が簡素化でき、装置のコスト、コンパクト化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る、高周波加熱装置全体構成のブロック図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る、高周波加熱装置の概略平面配置図を示す。
【図3】図2のA−A線に沿った概略断面図を示す。
【図4】本発明にて実施するピニオンギヤの外観図を示す。
【図5】本発明の環状高周波加熱コイルの通電回路イメージ図を示す。
【図6】本発明の実施形態に係る、熱処理の手順を示すタイミングチャートである。
【図7】従来技術の高周波加熱装置の概略図を示す。
【図8】従来技術における、高周波加熱装置の環状高周波加熱コイルの通電回路イメージ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る全体構成を示すブロック図で、高周波加熱装置1と、高周波加熱装置1にピニオンギヤ7が装着されているか否かを検出する光センサ9と、高周波焼鈍処理中にピニオンギヤ7が回転しているか否かを検出する回転センサ8と、エリア内に作業者が侵入したか否かを検出する光センサ10及びそれらの装置を制御する制御装置11とで構成されている。
さらに、制御装置11はピニオンギヤ7の回転速度、加熱温度及び加熱の手順等を制御する。
【0022】
本発明が適用されるピニオンギヤ7は図4に示すように、傘状の歯車形状をした傘歯車71と、傘歯車71の第1の軸線GLと同軸線上に、傘歯車71側から、第1軸部75、第1軸部75から間隔を有して第1軸部75より縮径の第2軸部76、外径が第2軸部76より小さいネジ部73及びネジ部73から間隔を有して変速装置(図示省略)からの車両駆動力をデファレンシャル装置に伝達するスプライン軸部74が順次形成されている。
【0023】
図2は本発明の実施形態を示す、高周波加熱装置全体を示す平面図であり、図3は図2のA−A線に沿った概略断面図を示す。
高周波加熱装置1はベース2に取付台21が載置されている。取付台21にはピニオンギヤ7の軸線GL(図4参照)を後述する加熱装置6の加熱コイル61の第2の軸線CLと略一致させるための第1ガイド部材4及び第2ガイド部材5が配設されている。(以後、第1ガイド部材4と第2ガイド部材5は同じ形状なので、構造説明においてはガイド部材4のみとする)ガイド部材4は取付台21に固着されたガイドスリーブ41とガイド部材4の外周との間にボールベアリング42を介して嵌入され、ガイド部材4の軸線RLを中心に回動可能になっている。
【0024】
第1ガイド部材4にはピニオンギヤ7の第1軸部75が嵌入する第1ガイド部43と、第1ガイド部43から軸線方向に間隔を有して、第1軸部75より縮径の第2軸部が嵌入する第2ガイド部45が形成されている。
そして、第1ガイド部43と第2ガイド部45との間はテーパ状に形成された第3ガイド部44が設けられている。これら第1ガイド部43、第2ガイド部45及び第3ガイド部44は同一の軸線RL上に形成されている。
従って、ピニオンギヤ7の軸部72は第1ガイド部43と第2ガイド部45とによって、ピニオンギヤ7の軸線はガイド部材4の軸線に対し容易に一致するようになっている。
また、第1ガイド部43と第2ガイド部45との間の第3ガイド部44はテーパ状に形成されているので、ピニオンギヤ7をガイド部材4に嵌入する際に、ピニオンギヤ7の軸部72の先端部が、ガイド部材4の内壁面を滑らかに導かれて嵌入されるので、装着作業が容易となる。
【0025】
6は加熱装置で、ピニオンギヤのネジ部73の外周を加熱コイル61が外嵌するように配置されている。
図5に、加熱コイル61とネジ部73の位置関係のイメージ構造を示すように、2個のピニオンギヤ7のネジ部73周囲に沿って加熱コイル61が配設されている。加熱コイル61は絶縁被覆電線62をコイル状にして、そのコイル状の空間部にネジ部73を位置させて、ネジ部73の外周と絶縁被覆電線62とは全周にわたって一定の間隔で隙間を有している。
加熱コイル61は高周波装置65からネジ部73の周囲に沿って配索され、高周波装置65に戻る回路となっている。
加熱コイル61に高周波電流を流すと、加熱コイル61に高周波磁束が発生し、高周波磁束の誘導作用により、ネジ部73の外周部が加熱される。
加熱コイル61の軸線CLはガイド部材4の軸線RL及びピニオンギヤ7の軸線GLと同軸線上に位置するようにセットされる。
尚、図5では熱処理の同時実施個数を2個としているが、個数を増加する場合は、例えば、図5の加熱コイル61を複数のネジ部73に対して直列状に増加して接続させればよい。
【0026】
加熱コイル61は電気的絶縁板23を介してステー22に取付けられている。さらに、ステー22はベース2に電気的絶縁板24を介して固着されている。
従って、加熱コイル61はベース2との間に二重の電気的絶縁構造が施されている。
【0027】
3は駆動機構である歯車機構で、駆動モータ31の出力軸に連結されたドライブギヤ32と、ドライブギヤ32に噛合して支持軸37を中心に回動するアイドラギヤ33と、アイドラギヤ33と噛合して第1ガイド部材4の上部に外嵌し、第1ガイド部材4の軸線RLを中心に第1ガイド部材4を回動させる第1ドリブンギヤ34と、第1ドリブンギヤ34と噛合し、第2ガイド部材5の上部に外嵌して、第2ガイド部材5の軸線RLを中心に第2ガイド部材5を回動させる第2ドリブンギヤ35とで構成されている。
【0028】
駆動モータ31には内部にモータ回転の回転数を減速して出力軸から出力する減速機構(図示省略)と、回転を早期に止めるブレーキ装置を備えている。
駆動モータ31はベース2に固定された支持台25に載置されたギヤケース36の上面に取付けられ、出力軸がギヤケース36内に突出した状態になっており、出力軸の先端部にドライブギヤ32が固着されている。
アイドラギヤ33はギヤケース36の上面に固定され、ギヤケース36内に延出した支持軸37にボールベアリング38を介して支持軸37を中心に回動可能に支持されている。
第1ドリブンギヤ34が外嵌している第1ガイド部材4は、該第1ガイド部材4とガイドスリーブ41との間に介装されているボールベアリング42のインナレース上面に、第1ガイド部材4の外周部から外方へ延出したフランジ部47が載置され、第1ガイド部材4は該インナレースと共に第1ガイド部材4の軸線RLを中心に回動可能になっている。
そして、第1ドリブンギヤ34は第1ガイド部材4の外周部に外嵌すると共に、フランジ部47の上面に載置された構造を成し、第1ドリブンギヤ34とフランジ部47とをボルト39にて固定している。
第2ドリブンギヤ35の第2ガイド部材5との結合構造は第1ドリブンギヤ34と同じなので省略する。
尚、本実施形態では制御装置11によって、ドリブンギヤ(ガイド部材)の回転速度は45〜55RPMにて実施したが、加熱装置の出力、焼鈍の要求仕様及び材質等により、適宜調整すると良い。
【0029】
第1ドリブンギヤ34と第2ドリブンギヤ35の上面には、第1及び第2ガイド部材4、5の上端縁を外嵌する孔を有したカバー27がボルト28(図2参照)にて締結されている。
【0030】
また、ピニオンギヤ7を第1及び第2ガイド部材4、5の正規位置に嵌装した時に、ピニオンギヤ7のスプライン軸部74が位置する部分に対向して回転センサ8、8が配設されている。
スプライン軸部74の歯形を利用して、ピニオンギヤ7が第1及び、第2ガイド部材4、5と共に回転しているか否かを検出するもので、加熱温度の斑の発生を防止して、熱処理品質の安定化を図ることができる。
【0031】
9は光センサで、高周波加熱装置1の両サイドに位置して、第1及び第2ガイド部材4、5にピニオンギヤ7が載置されているか、否かを検出する装置で、ピニオンギヤ7が載置されている場合は光センサが発光する光を遮ることにより、ピニオンギヤ7載置を確認する。
この信号に基づいて制御装置11が作動し、高周波加熱装置1の誤作動を防止する。
一方、光センサ10は焼鈍中に作業者が高周波加熱装置1の危険エリアに侵入した場合に、光センサ10の信号に基づいて、制御装置11が作動し、直ちに熱処理稼働を中止する等の安全装置である。
【0032】
図6は高周波加熱装置1の熱処理手順を示すタイムチャートであり、第1及び第2ガイド部材4、5にピニオンギヤ7が載置されているのを確認後、まず、加熱コイル61に通電して15〜20秒間予熱を行う予熱工程を実施する。
その後、通電を止めて1.5〜3.5秒間の放冷を行う放冷工程を実施する。これは、高周波加熱は急激に加熱温度が上昇して、表面だけが異常に高くなり、内部との温度差が大きいので、ピニオンギヤ7を放置することにより表面とその内側の中間層との温度差(内側の温度を上げる)をなくして焼鈍の条件を整えるためである。
次に、15〜20秒間の焼鈍加熱工程を実施する。その後大気中に放置して徐冷する放冷行程を実施する。
尚、それぞれの手段における時間は制御装置11によって、高周波加熱装置1の出力、焼鈍の要求仕様及び材質等により適宜調整すればよい。
本実施形態での焼鈍の加熱温度は700〜750℃にて実施した。
【0033】
本実施形態によれば、ピニオンギヤ7を軸線GLに沿って回動させるので、ネジ部73の焼鈍に斑が生じないので、ピニオンギヤ7の品質確保が容易になる。
また、ピニオンギヤ7を軸線GLに沿って回動させるため、第1、及び第2ガイド部材外周部にドリブンギヤ34、35を固着させ、且つ、アイドラギヤ33から伝達された駆動をドリブンギヤ34でドリブンギヤ35を直接駆動するようにしたので、歯車機構3がコンパクトになり、装置の取扱いが容易となる。
また、歯車機構3の構造が簡素化され、部品点数も少なくなり装置のコストも安価になり、それに伴い、ピニオンギヤ7のコスト低減が得られる。
また、ピニオンギヤ7の焼鈍を同時に2個、またはそれ以上複数個同時に実施可能にしたので、焼鈍作業が効率化して作業コストの低減が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
軸部の外周部を高周波にて熱処理を行う熱処理装置に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 高周波加熱装置
2 ベース
3 歯車機構(駆動機構)
4 第1ガイド部材
5 第2ガイド部材
6 加熱装置
7 ピニオンギヤ
8 回転センサ
9 光センサ
31 駆動モータ
32 ドライブギヤ
33 アイドラギヤ
34 第1ドリブンギヤ
35 第2ドリブンギヤ
41 ガイドスリーブ
43 第1ガイド部
45 第2ガイド部
61 加熱コイル
62 絶縁被覆電線
63 隙間
73 ネジ部
74 スプライン軸部
CL 加熱コイル軸線(第2の軸線)
GL ピニオンギヤ軸線(第1の軸線)
RL ガイド部材軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車部と該歯車部の軸線と同軸で且つ一体的に形成された軸部とを有するピニオンギヤの前記軸部に熱処理を行うピニオンギヤの高周波加熱装置において、
前記軸部を環状に囲繞する高周波加熱コイルを有する加熱装置と、前記歯車部の第1の軸線が前記環状高周波加熱コイルの第2の軸線と略一致すると共に、前記環状の高周波加熱コイルの内周面と前記軸部の外周面とに全周にわたり均一な隙間を有するように前記軸部を内嵌して前記ピニオンギヤを支持する筒状のガイド部材と、該ガイド部材に連結し、該ガイド部材を前記第2の軸線周りに回動させる駆動機構と、該駆動機構を駆動する駆動モータと、該駆動モータの駆動及び前記加熱装置の加熱条件を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とするピニオンギヤの高周波加熱装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は複数個配設され、且つ前記駆動機構を構成する歯車のうち、前記ガイド部材に連結されたドリブンギヤは、該ドリブンギヤ同士が噛合って回転駆動力を前記複数のガイド部材に伝達することを特徴とする請求項1記載のピニオンギヤの高周波加熱装置。
【請求項3】
前記軸部の回転を検知する回転センサを、前記軸部に設けられているスプライン軸形成部に対向させて配設したことを特徴とする請求項1または2記載のピニオンギヤの高周波加熱装置。
【請求項4】
前記制御装置は、焼入処理がなされた前記ピニオンギヤに対して、前記高周波加熱コイルが配置された軸部の焼鈍処理を行うために、予熱を制御する予熱手段と、予熱による熱が表面と中間層部との温度差を少なくする放置時間を制御する放冷手段と、主加熱を行う加熱手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載のピニオンギヤの高周波加熱装置。
【請求項5】
請求項1記載のピニオンギヤの高周波加熱装置を用いて行うピニオンギヤの高周波加熱処理方法において、
焼入処理がなされた前記ピニオンギヤを前記ガイド部材に支持し、前記高周波加熱コイルを通電し予熱を行う予熱行程と、その後、一定時間放冷する放冷行程と、その後一定時間前記高周波加熱コイルを通電して本加熱を実施し、その後、さらに一定時間放冷する放冷行程とを有し焼き入れ後のピニオンギヤの軸部に焼鈍処理を行うことを特徴とするピニオンギヤの高周波加熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−87348(P2012−87348A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233711(P2010−233711)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】