説明

ピリミジルアミノベンズアミド化合物であるタンパク質キナーゼ阻害剤および17−AAGのようなHSP90阻害剤を含む組合せ

本発明は、a)ピリミジルアミノベンズアミド化合物;およびb)HSP90阻害剤化合物を含む医薬組合せ、ならびにこのような組合せを使用する増殖性疾患の処置または予防のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、増殖性疾患、腫瘍、骨髄腫、白血病、乾癬、再狭窄、強皮症および線維症における、ピリミジルアミノベンズアミド化合物および熱ショックタンパク質の阻害剤、例えば、HSP70およびHSP90を含む医薬組合せ、ならびにこのような組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖性疾患患者に対する多数の処置の選択肢があるにもかかわらず、有効なおよび安全な抗増殖剤の必要性および組合せ治療の選択的使用の必要性が残っている。
【0003】
シャペロンのHSP90ファミリーは、4種の既知のメンバー:サイトソルのHSP90αおよびHSP90β、小胞体のgrp94およびミトコンドリアのtrap−1からなる。HSP90は変性したまたは“フォールディングされていない”タンパク質のATP−依存再フォールディングのため、ならびに様々な細胞の成長反応に関わる重要なタンパク質から細胞外因子の構造成熟のために必要である豊富な細胞シャペロンである。クライアントタンパク質と呼ばれるこれらのタンパク質は、ステロイド受容体、ならびに様々なタンパク質キナーゼを含む。HSP90は真核細胞生存のために必要であり、多くの腫瘍において過剰発現している。癌細胞はHSP90ATPase活性の一時的な阻害に対する感受性を示すため、HSP90阻害剤が新たな抗癌剤としての可能性を有することを示す。それぞれのHSP90ファミリーメンバーはN−末端ドメインに少しの他のATP−結合タンパク質で発見されている保存されたATP結合部位を所有している。HSP90の弱いATPase活性は様々なコシャペロンタンパク質と相互作用して刺激される。いくつかの天然化合物、例えば、ゲルダナマイシンまたはラジシコールはHSP90のATP−結合部位で結合し、そのATPase活性を阻害する。細胞系およびインビボにおいて、HSP90に結合するこれらの薬剤はクライアントタンパク質のフォールディングを妨げ、これは次にプロテアソームで分解される。ゲルダナマイシン誘導体である17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)は、現在、いくつかの施設において血液悪性腫瘍および固形腫瘍のフェーズIおよびフェーズII臨床試験が行われている。17−AAGでの最初の臨床経験は、前臨床系における活性に関連する薬剤の濃度はヒトにおいて許容できる毒性で達成できる予備的証拠を提供し、少なくとも或るサロゲートおよび腫瘍区画における標的調節の早期徴候を提供した。17−AAGの用量規定毒性は肝臓である。17−AAGの乏しい溶解性が処方/投与を難しくさせており、その合成は難しい(一般に発酵により得ている)。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
今回、例えば、下記に定義のとおりの少なくとも1種のピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤を含む組合せが、増殖性疾患、例えば、腫瘍、骨髄腫、白血病、乾癬、再狭窄、強皮症および線維症に有効な効果を有することを見いだした。
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、キナーゼ依存疾患の処置のための医薬組成物の製造のための、式(I):
【化1】

〔式中、
は水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを示し;
は水素、所望により1個またはそれ以上の同一のまたは異なるラジカルRにより置換されている低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2または3個の環窒素原子および0または1個の酸素原子および0または1個の硫黄原子を含む単−もしくは二環式ヘテロアリール基を示し(該基はそれぞれの場合に非置換またはモノ−もしくはポリ置換である);
はヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、アミノ、モノ−もしくはジ置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2または3個の環窒素原子および0または1個の酸素原子および0または1個の硫黄原子を含む単−もしくは二環式ヘテロアリール基(該基はそれぞれの場合に非置換またはモノ−もしくはポリ置換である)を示すか、または
およびRは共に所望により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルによりモノ−もしくはジ置換されている4、5または6個の炭素原子を有するアルキレン;4または5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素および3または4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;または1個の窒素および3または4個の炭素原子を有するアザアルキレン(ここで、窒素は非置換であるかまたは低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、またはピラジニルにより置換されている)を示し;
は水素、低級アルキル、またはハロゲンを示す〕
で示されるピリミジルアミノベンズアミド化合物、およびこのような化合物のN−オキシドまたは薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0006】
上記および下記で使用される一般用語は、他に記載のない限り、好ましくは本明細書内において下記の意味を有する:
【0007】
接頭語“低級”は、最大7個まで(7を含む)、とりわけ最大4個まで(4を含む)の炭素原子を有するラジカルを示し、問題となる該ラジカルは直線または分岐(1個または複数の分岐)のいずれかである。
【0008】
複数形が化合物、塩などに対して使用されるとき、これは1つの化合物、塩などの意味も含む。
【0009】
すべての不斉炭素原子は(R)−、(S)−または(R,S)−配置、好ましくは(R)−または(S)−配置で存在し得る。化合物はしたがって異性体の混合物または純粋な異性体、好ましくはエナンチオマー−純粋なジアステレオマーとして存在し得る。
本発明はまた式(I)の化合物の可能である互変異性体に関する。
【0010】
低級アルキルは好ましくは1(1を含む)から7個(7を含む)、好ましくは1(1を含む)から4個(4を含む)の炭素原子を有するアルキルであり、直線または分岐である;好ましくは、低級アルキルはブチル、例えば、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、プロピル、例えば、n−プロピルまたはイソプロピル、エチルまたはメチルである。好ましくは低級アルキルはメチル、プロピルまたはtert−ブチルである。
低級アシルは好ましくはホルミルまたは低級アルキルカルボニル、特に、アセチルである。
【0011】
アリール基はラジカルの芳香環炭素原子に位置する結合を介して分子に結合している芳香族性ラジカルである。好ましい態様において、アリールは6から14個の炭素原子を有する芳香族性ラジカル、とりわけフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルまたはフェナントレニルであり、そして非置換であるかまたは、とりわけアミノ、モノ−もしくはジ置換アミノ、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、フェニル、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、低級アルキルフェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル、例えば、とりわけトリフルオロメタンスルホニル、ジヒドロキシボラ(−B(OH))、ヘテロシクリル、単−もしくは二環式ヘテロアリール基および環の隣接したC−原子で結合しているジオキシ低級アルキレン、例えば、ジオキシメチレンから選択される、1個またはそれ以上、好ましくは3個まで、とりわけ1または2個の置換基により置換されている。アリールはさらに好ましくはフェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチルであり、それぞれの場合において、非置換であるかまたは独立してハロゲン、とりわけフッ素、塩素、または臭素;ヒドロキシ;低級アルキル、例えば、メチル、ハロゲン−低級アルキル、例えば、トリフルオロメチル、またはフェニルによりエーテル化されたヒドロキシ;2個の隣接したC−原子に結合しているジオキシ低級アルキレン、例えば、ジオキシメチレン、低級アルキル、例えば、メチルまたはプロピル;ハロゲン−低級アルキル、例えば、トリフルオロメチル;ヒドロキシ−低級アルキル、例えば、ヒドロキシメチルまたは2−ヒドロキシ−2−プロピル;低級アルコキシ−低級アルキル;例えば、メトキシメチルまたは2−メトキシエチル;低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、例えば、メトキシカルボニルメチル;低級アルキニル、例えば、1−プロピニル;エステル化カルボキシ、とりわけ低級アルコキシカルボニル、例えば、メトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルまたはイソ−プロポキシカルボニル;N−モノ−置換カルバモイル、特に低級アルキル、例えば、メチル、n−プロピルまたはイソ−プロピルによりモノ置換されているカルバモイル;アミノ;低級アルキルアミノ、例えば、メチルアミノ;ジ−低級アルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノまたはジエチルアミノ;低級アルキレンアミノ、例えば、ピロリジノまたはピペリジノ;低級オキサアルキレン−アミノ、例えば、モルホリノ、低級アザアルキレン−アミノ、例えば、ピペラジノ、アシルアミノ、例えば、アセチルアミノまたはベンゾイルアミノ;低級アルキルスルホニル、例えば、メチルスルホニル;スルファモイル;またはフェニルスルホニルからなる群から選択される1または2個の置換基により置換されている。
【0012】
シクロアルキル基は好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、非置換であるかまたは1個またはそれ以上の、とりわけ1または2個のアリールに対する置換基として上記されている基から選択される置換基、もっとも好ましくは低級アルキル、例えば、メチル、低級アルコキシ、例えば、メトキシまたはエトキシ、またはヒドロキシ、そしてさらにオキソにより置換されているか、またはベンゾ環、例えば、ベンゾシクロペンチルまたはベンゾシクロヘキシルと縮合していてよい。
【0013】
置換アルキルは、1個またはそれ以上、とりわけ3個までの置換基は、主にハロゲン、とりわけフッ素、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、およびフェニル−低級アルコキシカルボニルから選択される基が存在し得る、前記のアルキル、とりわけ低級アルキル、好ましくはメチルである。トリフルオロメチルがとりわけ好ましい。
【0014】
モノ−もしくはジ置換アミノは、とりわけ互いに独立して低級アルキル、例えば、メチル;ヒドロキシ−低級アルキル、例えば、2−ヒドロキシエチル;低級アルコキシ低級アルキル、例えば、メトキシエチル;フェニル−低級アルキル、例えば、ベンジルまたは2−フェニルエチル;低級アルカノイル、例えば、アセチル;ベンゾイル;置換ベンゾイル(該フェニルラジカルはとりわけニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、およびカルバモイルから選択される1個またはそれ以上、好ましくは1または2個の置換基により置換されている);およびフェニル−低級アルコキシカルボニル(フェニルラジカルは非置換であるかまたはとりわけニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、およびカルバモイルから選択される1個またはそれ以上、好ましくは1または2個の置換基により置換されている);好ましくはN−低級アルキルアミノ、例えば、N−メチルアミノ、ヒドロキシ−低級アルキルアミノ、例えば、2−ヒドロキシエチルアミノまたは2−ヒドロキシプロピル、低級アルコキシ低級アルキル、例えば、メトキシエチル、フェニル−低級アルキルアミノ、例えば、ベンジルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−フェニル−低級アルキル−N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルフェニルアミノ、低級アルカノイルアミノ、例えば、アセチルアミノ、またはベンゾイルアミノおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノからなる群から選択される置換基(フェニルラジカルはそれぞれの場合において非置換であるかまたはとりわけニトロまたはアミノ、またはハロゲン、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、カルバモイルまたはアミノカルボニルアミノにより置換されている)から選択される1または2個のラジカルにより置換されているアミノである。ジ置換アミノはまた低級アルキレンアミノ、例えば、ピロリジノ、2−オキソピロリジンノまたはピペリジノ;低級オキサアルキレン−アミノ、例えば、モルホリノ、または低級アザアルキレン−アミノ、例えば、ピペラジノまたはN−置換ピペラジノ、例えば、N−メチルピペラジノまたはN−メトキシカルボニルピペラジノである。
【0015】
ハロゲンはとりわけフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、とりわけフッ素、塩素、または臭素である。
エーテル化ヒドロキシはとりわけC−C20アルキルオキシ、例えば、n−デシルオキシ、低級アルコキシ(好ましい)、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、またはtert−ブチルオキシ、フェニル−低級アルコキシ、例えば、ベンジルオキシ、フェニルオキシ、ハロゲン−低級アルコキシ、例えば、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシまたは1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ、または1または2個の窒素原子を含む単−もしくは二環式ヘテロアリールにより置換されている低級アルコキシ、好ましくはイミダゾリルにより置換されている低級アルコキシ、例えば、1H−イミダゾール−1−イル、ピロリル、ベンゾイミダゾリル、例えば、1−ベンゾイミダゾリル、ピリジル、とりわけ2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、とりわけ2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、とりわけ3−イソキノリニル、キノリニル、インドリルまたはチアゾリルである。
【0016】
エステル化ヒドロキシはとりわけ低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、低級アルコキシカルボニルオキシ、例えば、tert−ブトキシカルボニルオキシ、またはフェニル−低級アルコキシカルボニルオキシ、例えば、ベンジルオキシカルボニルオキシである。
エステル化カルボキシはとりわけ低級アルコキシカルボニル、例えば、tert−ブトキシカルボニル、イソ−プロポキシカルボニル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル、フェニル−低級アルコキシカルボニル、またはフェニルオキシカルボニルである。
【0017】
アルカノイルは一級アルキルカルボニル、とりわけ低級アルカノイル、例えば、アセチルである。
N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイルはとりわけ独立して低級アルキル、フェニル−低級アルキルおよびヒドロキシ−低級アルキル、または低級アルキレン、オキサ−低級アルキレンまたはアザ−低級アルキレンから選択される1または2個の置換基により置換されており、所望により末端窒素原子で置換されている。
【0018】
0、1、2または3個の環窒素原子および0または1個の酸素原子および0または1個の硫黄原子を含む単−もしくは二環式ヘテロアリール基は(基はそれぞれの場合に非置換またはモノ−もしくはポリ置換である)、ヘテロアリールラジカルを式(I)の残りの分子に結合している環において不飽和であり、好ましくは環、結合している環、所望によりまたなんらかの縮合環において、少なくとも1個の炭素原子が窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子により置換されているヘテロ環式部分を意味する;該結合している環は好ましくは5から12個、より好ましくは5または6個の環原子を有する;非置換であるかまたはアリールに対して置換基として上記定義のもの、もっとも好ましくは低級アルキル、例えば、メチル、低級アルコキシ、例えば、メトキシまたはエトキシ、またはヒドロキシの群から選択される1個またはそれ以上、とりわけ1または2個の置換基により置換されていてよい。好ましくは単−もしくは二環式ヘテロアリール基は2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。より好ましくは単−もしくは二環式ヘテロアリール基はピロリル、イミダゾリル、例えば、1H−イミダゾール−1−イル、ベンゾイミダゾリル、例えば、1−ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、とりわけ5−インダゾリル、ピリジル、とりわけ2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、とりわけ2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、とりわけ3−イソキノリニル、キノリニル、とりわけ4−もしくは8−キノリニル、インドリル、とりわけ3−インドリル、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニル、およびフラニルからなる群から選択される。本発明の1つの好ましい態様において、ピリジルラジカルはオルト位の窒素原子でヒドロキシにより置換されており、したがって少なくとも部分的にピリジン−(1H)2−オンである対応する互変異性体形で存在する。他の好ましい態様において、ピリミジニルラジカルは2および4位の両方をヒドロキシにより置換されており、したがっていくつかの互変異性体形、例えば、ピリミジン−(1H、3H)2,4−ジオンで存在する。
【0019】
ヘテロシクリルはとりわけ窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1または2個のヘテロ原子を有する5、6または7員ヘテロ環式系であり、不飽和または完全にもしくは部分的に飽和であり得、そして非置換であるかまたはとりわけ低級アルキル、例えば、メチル、フェニル−低級アルキル、例えば、ベンジル、オキソ、またはヘテロアリール、例えば、2−ピペラジニルにより置換されている;ヘテロシクリルはとりわけ2−もしくは3−ピロリジニル、2−オキソ−5−ピロリジニル、ピペリジニル、N−ベンジル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル、例えば、2−もしくは3−モルホリニル、2−オキソ−1H−アゼピン−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、または2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルである。
塩はとりわけ式(I)の化合物の薬学的に許容される塩である。
【0020】
このような塩は、例えば、酸付加塩として、好ましくは、塩基性窒素原子を有する式(I)の化合物と有機酸または無機酸との塩、とりわけ薬学的に許容される塩として形成される。適当な無機酸は、例えば、ハロゲン酸、例えば、塩酸、硫酸、またはリン酸である。適当な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸、例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、ケイ皮酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、2−、3−もしくは4−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えば、アスコルビン酸である。
【0021】
負に帯電したラジカル、例えば、カルボキシまたはスルホの存在下において、塩はまた塩基で、例えば、金属またはアンモニウム塩、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩またはアンモニアまたは適当な有機アミンとのアンモニウム塩、例えば、三級モノアミン、例えば、トリエチルアミンまたはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはヘテロ環式塩基、例えば、N−エチル−ピペリジンまたはN,N’−ジメチルピペラジンを形成され得る。
【0022】
塩基性基および酸性基が同じ分子中に存在するとき、式(I)の化合物はまた内部塩を形成し得る。
単離または精製の目的のために、薬学的に許容されない塩、例えば、ピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することもできる。治療的使用のために、薬学的に許容される塩または遊離化合物のみが使用され(適当なとき医薬品の形態)、そしてこれらが好ましい。
【0023】
遊離形の新規化合物と、例えば、新規化合物の精製または同定における中間体として使用され得る塩を含む、それらの塩形との密接な関係を考慮して、上記および下記遊離化合物の言及は適当および好都合なとき、対応する塩もまた意味すると理解されるべきである。
式(I)の範囲内の化合物およびそれらの製造のための方法は2004年1月15日公開WO 04/005281に記載されている(出典明示により本出願に包含させる)。好ましい化合物は構造(II)
【化2】

を有する4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである。
【0024】
HSP−90阻害剤は、例えば、下記アッセイにおいて1−10,000nM、好ましくは1−100nMの範囲のIC50値を有する化合物である:
HSP90の阻害をSchilb et al., J Biomol Screening, Vol. 9, pp. 569-577 (2004)に記載の方法をわずかに改変して、使用して測定する。
式(I)の化合物は0.005から20μM、好ましくは0.01から10μMの範囲のIC50値を示した。
【0025】
適当なHSP90阻害剤は、例えば、下記のものである
A.ゲルダナマイシン誘導体、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、ゲルダナマイシン誘導体、他のゲルダナマイシン−関連化合物;およびラジシコール;
B.2005年7月26日公開、PCT出願第EP2005/008118号に記載の化合物、例えば、式(III):
【化3】

〔式中、
はH、ハロ、置換または非置換低級アルキルであり;
はH、ハロ、置換または非置換低級アルキル、カルボキシ、COR、SO、CX、CXHRCH、CHR、CR(R、またはC(Rであり;
はH、置換または非置換低級アルキル、ハロ、−SONHまたは
【化4】

であり
はHまたはヒドロキシであり;
は低級アルキル;−(CH−NR;−YR;−Y(CH−NR
【化5】

であり;
nは1または2であり;
mは2または3であり;
Xはハロであり;
はアルキレン、O、SまたはNであり;
およびYはそれぞれ独立してメチレン、OまたはNR’であり;
はH、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル(heterocycl)、縮合シクロアルキル、縮合ヘテロシクリル(heterocycl)またはNR10と一緒にN原子を有するヘテロ環式環、1−4個の窒素、酸素または硫黄原子を含む3−から8−員ヘテロ環式環(例えば、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリニル、イミダゾリニル、ピペラジニルまたは低級アルキル−ピペラジニル);上記シクロアルキル、とりわけC−Cシクロアルキル、低級アルカノイル(好ましくはアミノ置換基単独または直前に記載の他の非アシル部分との組合せ)およびベンゾイルまたはフェニル−低級アルカノイル(好ましくはアミノ置換基単独または直前に記載の他の非アシル部分との組合せ)、シアノ、シアノ−低級アルキル、例えば、シアノメチル、アミジノ、N−ヒドロキシアミジノ、アミジノ−低級アルキル、例えば、−メチル、またはN−ヒドロキシアミジノ−低級アルキル、例えば、−メチルを形成し;
は低級アルキル、ハロ、低級アルコキシ、または−Y−(CH−N(R)(H)であり;
pは1−3であり;
はHまたは低級アルキルである〕
で示される化合物またはそれらの薬学的に許容される塩;
【0026】
C.2005年7月27日公開、PCT出願第EP2005/008119号に記載の化合物、例えば、式(IV):
【化6】

〔式中、
は置換または非置換低級アルキル、置換または非置換アリール、または置換または非置換アリール低級アルキルであり;
はH、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキルまたは式:
−−−Y−R
(式中、YはO、N、Sまたは低級アルキルであり;そして
は置換または非置換低級アルキル、または置換または非置換アリールである)で示される基であり;
はH、ハロ、または置換または非置換低級アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロアルキル−アルキルまたは置換または非置換アリールアルキルであり;
はHまたはOHである〕
で示される化合物またはそれらの薬学的に許容される塩。
【0027】
特許文献の引用が上記に挙げられているそれぞれの場合において、化合物に関する物質は出典明示により本明細書に包含させる。記載されている、それらの薬学的に許容される塩、対応するラセミ体、ジアセテレオマー、エナンチオマー、互変異性体、ならびに存在するとき上記化合物の対応する結晶変態、例えば、溶媒和物、水和物および多形体も同様に含む。本発明の組合せにおける活性成分として使用される化合物は各々、引用文献に記載されているとおりに製造され、投与され得る。また、上記の2種以上の別々の活性成分の組合せ、すなわち、医薬組合せは本発明の範囲内であり、3種以上の活性成分を含むものも本発明の範囲内である。
【0028】
本発明の特定の発見にしたがって、下記を提供する:
1.a)式(I)のピリミジルアミノベンズアミド化合物;および
b)少なくとも1種のHSP90阻害剤を含む医薬組合せ。
2.処置を必要とする対象における増殖性疾患の処置または予防のための方法であって、該対象に、例えば、同時にまたは連続して、治療有効量の式(I)のピリミジルアミノベンズアミド化合物および例えば、上記のとおりのHSP90阻害剤を共投与することを含む方法。
増殖性疾患の例は、例えば、腫瘍、白血病、乾癬、再狭窄、強皮症および線維症を含む。
3.例えば、上記2)の下に定義されている方法で使用するための上記1)の下に定義されている医薬組合せ。
4.上記2)の下に定義されている方法で使用するための医薬の製造における使用のための上記1)の下に定義されている医薬組合せ。
【0029】
上記特定のとおりの方法における本発明の組合せの有用性は、例えば、下記の方法にしたがって動物試験方法ならびに臨床で立証され得る。
【0030】
今回、驚くべきことにピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せが特に増殖性疾患に対する処置として有用であることを示す治療的特性を有することを見いだした。
【0031】
他の態様において、本発明は増殖性疾患の処置のための方法であって、処置を必要とする哺乳動物に治療有効量のピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤またはそれらの薬学的に許容される塩またはプロドラッグの組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0032】
好ましくは本発明は増殖性疾患に罹患している哺乳動物、とりわけヒトを処置するための方法であって、処置を必要とする哺乳動物に阻害量のピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤またはそれらの薬学的に許容される塩の組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0033】
本明細書の記載において、“処置”なる用語は疾患に罹患するリスクのある患者または疾患ならびに病気に罹患している疑いのある患者の処置を含む、防止または予防処置ならびに治癒または疾患抑制処置の両方を含む。この用語はさらに疾患の進行の遅延のための処置を含む。
【0034】
本明細書で使用される“治癒”なる用語は、増殖性疾患を含む進行する症状の発現の処置において有効であることを意味する。
“防止”なる用語は増殖性疾患を含む疾患の発症または再発の予防を意味する。
【0035】
本明細書で使用される“進行の遅延”なる用語は、処置すべき疾患の前段階または初期にある患者への組み合わせ物の投与を意味し、ここで、該患者は、例えば、対応する疾患の前形態であることが診断されているか、または、該患者は、例えば医学的処置または事故に起因する状態にあって対応する疾患を発症しそうな状態にある。
【0036】
特性の予測できない範囲は、ピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せの使用が増殖性疾患の処置のための薬剤の製造のために特に興味深いことを意味する。
ピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せが、優れた治療利点および他の利点で増殖性疾患の処置のために特に適当であることを立証するために、臨床試験を当業者に既知の方法で実施できる。
【0037】
A.組合せ処置
適当な臨床試験は、増殖性疾患を有する患者における、例えば、オープンラベル、用量漸増試験である。このような試験は特に本発明の組合せの活性成分の相乗効果を証明する。有利な効果は当業者に既知であるこれらの試験の結果を介して直接的に測定され得る。このような試験は、特に、活性成分を使用する単剤療法および本発明の組合せの効果を比較することが適当である。好ましくは、薬剤(a)の用量は最大耐性用量に到達するまで漸増させ、薬剤(b)は固定された量で投与される。あるいは、薬剤(a)は固定された量で投与され、薬剤(b)の用量を漸増させる。それぞれの患者は毎日または断続的にのいずれかで薬剤(a)を投与される。処置の効果は、このような試験における、6週ごとの、例えば、12、18または24週後の症状スコアの評価により測定され得る。
【0038】
本発明の医薬組合せの投与は、本発明の組合せで使用される薬学的活性成分の1種のみを使用する単剤療法と比較して、例えば、症状の緩和、進行の遅延または阻害に関して有利な効果、例えば、相乗的治療効果をもたらすだけでなく、さらに驚くべきことに有利な効果、例えば、少ない副作用、生活の質の改善または死亡率の減少をもたらす。
【0039】
さらなる利点は本発明の組合せの活性成分の用量が少量で使用され得る、例えば、必要量がしばしば少量になるだけでなく頻度を減少させ、副作用の発生または重度を減少させ得る。これは処置される患者の要望および要求に一致する。
【0040】
本明細書で使用される“共投与”または“組合せ投与”などなる用語は選択される複数の治療剤を一人の患者に投与することを含むことを意味し、薬剤は必ずしも同じ投与経路または同じ時点により投与されない処置レジメンを含むことを意図する。
【0041】
本発明の1つの目的は、本発明の組合せを増殖性疾患を標的または予防する共同で治療有効量を含む医薬組成物を提供することである。この組成物において、薬剤(a)および薬剤(b)は共に、一方の後に他方を、または1つの組合せ単位投与形態もしくは2つの個別の単位投与形態で別々に投与され得る。単位投与形態は、また、固定された組合せであり得る。
【0042】
本発明の薬剤(a)および薬剤(b)の別々の投与または少なくとも2種の組合せパートナー(a)および(b)を含む固定された組合せ、すなわち、単一のガレヌス組成物の投与のための医薬組成物は、自体公知の方法で製造され得、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)への経腸、たとえば経口または経直腸および非経腸投与に適したものであり、例えば、上記のとおりの単独または1もしくはそれ以上の薬学的に許容される担体または希釈剤、とりわけ経腸または非経腸投与に適したものと組み合わせた少なくとも1種の薬理学的に活性な組合せパートナーの治療有効量を含む。
【0043】
適当な医薬組成物は、例えば、約0.1%から約99.9%、好ましくは約1%から約60%の活性成分を含む。経腸または非経腸投与用組合せ治療のための医薬品は、例えば、単位用量形のもの、例えば、糖被覆錠剤、錠剤、カプセルまたは坐剤、またはアンプル剤である。他に記載のない限り、これらはそれ自体既知の方法、例えば、慣用の混合、造粒、糖被覆、溶解または凍結乾燥法の手段により製造される。必要な有効量が複数の投与単位の投与により到達し得るため、それぞれの投与形の個々の用量に含まれる組合せパートナーの単位量はそれ自体で有効量を構成する必要はないと理解される。
【0044】
特に、本発明の組合せの各組合せパートナーの治療有効量は、同時にまたは任意の順番で連続して投与され得、そしてその構成成分は別々にまたは固定された組合せとして投与され得る。例えば、本発明の増殖性疾患を予防または処置する方法は、同時にまたは任意の順番で連続して、共同で治療有効量で、好ましくは相乗的有効量で、例えば、本明細書に記載した量に対応する1日用量または断続的用量で、(i)遊離または薬学的に許容される塩の形態の第一の薬剤(a)の投与;および(ii)遊離または薬学的に許容される塩の形態の薬剤(b)の投与を含み得る。本発明の組合せの個々の組合せパートナーは、分割または単一組合せ形態で、治療過程の異なる時点で別々に、または同時一体的に投与され得る。さらに、投与なる用語は、また、組合せパートナー自体にインビボで変換される組合せパートナーのプロドラッグの使用を包含する。したがって、本発明は、同時的または代替的処置のすべてのかかるレジメンを包含するものとして理解されるべきであり、そして“投与”なる用語は、それにしたがって解釈されるべきである。
【0045】
本発明の組合せにおいて使用される各組合せパートナーの有効量は、使用される特定の化合物または医薬組成物、投与経路、処置される状態、処置される状態の重症度に依存して変化し得る。したがって、本発明の組合せの投与レジメンは、投与経路ならびに患者の腎および肝機能を含む様々な因子にしたがって選択される。通常の知識を有する臨床医または医師であれば、容易に、状態の進行を予防、対抗または阻止するのに必要な単一の活性成分の有効量を決定し、そして処方することができる。毒性なしに効果を生じる範囲内の活性成分の濃度を達成する最適精度は、標的部位への活性成分の利用能の動力学に基づくレジメンを必要とする。
【0046】
薬剤(a)または(b)に対する1日用量は、もちろん様々な因子、例えば、選択される化合物、処置される特定の状態および所望の効果に依存して変化し得る。しかしながら、一般的に、満足な結果が単回投与または分割投与として1日あたり約0.03−5mg/kg、特に1日あたり0.1−5mg/kg、例えば、1日あたり0.1−2.5mg/kgの慣用の1日投与割合での薬剤(a)の投与で達成される。薬剤(a)および薬剤(b)はなんらかの慣用の経路、特に、経腸的、例えば、経口的に、例えば、錠剤、カプセル、飲用溶液の形態で、または非経腸的に、例えば、注入溶液または懸濁液の形態で投与され得る。適当な経口投与用の単位投与形態は、約0.02−50mg、通常0.1−30mgの活性成分、例えば、薬剤(a)または(b)と共にそれらの1種またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体を含む。
【0047】
薬剤(b)はヒトに0.5−1,000mgの1日用量範囲で投与され得る。経口投与用の適当な単位投与形は、約0.1−500mgの活性成分と共にそれらの1種またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体を含む。
【0048】
本発明の医薬組合せの投与は、例えば、血液幹細胞の無秩序な増殖の阻害または白血病、例えば、CML(慢性骨髄性白血病)、ALL(急性リンパ性白血病)またはAML(急性骨髄性白血病)の進行、または腫瘍の増殖の減速に関して有利な効果、例えば、相乗的な治療効果をもたらすだけでなく、本発明の組合せにおいて使用される薬学的活性成分1種のみで使用する単剤療法と比較して、さらなる驚くべき有利な効果、例えば、副作用の減少、生活の質の向上または死亡率の減少をももたらす。
【0049】
さらなる利点は、少ない用量の本発明の組合せの活性成分が使用されること、例えば、しばしば必要な用量が減少するだけでなく、頻度も減少すること、または副作用の発生を減少させるために使用され得ることである。これは処置される患者の要望および必要性に一致する。
【0050】
ピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せは独立して、または、1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体および、所望により、1種またはそれ以上の他の慣用の医薬アジュバントと共に組み合わされ得、経腸的に、例えば、経口的に、錠剤、カプセル、カプレットなどの形態で、または非経腸的に、例えば、腹腔内にまたは静脈内に、滅菌注入溶液または懸濁液の形態で投与され得る。経腸および非経腸組成物は慣用の方法により製造され得る。
【0051】
ピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せは、これらの病状において使用するために単独または少なくとも1種の他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用され得る。これらの活性な化合物は、組合せパートナーが独立してまたは別々の量の組合せパートナーと別々の固定された組合せの使用により、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与されるという意味で、同じ医薬品、または、組合せ製品“複数パーツのキット”として組み合わせられ得る。複数パーツのキットのパーツは、例えば、同時にまたは相互に順番に、異なる時点でおよび複数パーツのキットのいずれかのパーツに対して等しいまたは異なる時間間隔で、投与され得る。ピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せと組み合わせて使用するために引用され得る化合物の非限定的な例は、細胞毒性化学療法剤、例えば、シトシナラビノシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、VP−16またはイマチニブなどである。さらに、ピリミジルアミノベンズアミド化合物およびHSP90阻害剤の組合せは、有意な相乗効果をもたらすであろうことを予期する、シグナル形質導入の他の阻害剤または他の癌遺伝子標的剤と組み合わせられ得る。
【0052】
B.処置される疾患
“増殖性疾患”なる用語は限定されないが腫瘍、乾癬、再狭窄、強皮症および線維症を含む。
血液悪性疾患なる用語は、特に白血病、とりわけBCR−ABL、c−KitまたはHSP90を発現するもの(またはBcr−Abl、c−KitまたはHSP90に依存するもの)を意味し、限定されないが、CMLおよびALL、とりわけフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)、ならびにイマチニブ−抵抗性白血病を含む。とりわけ好ましいことは白血病、例えば、CML、ALLまたはAMLに対する本発明の組合せの使用である。もっともとりわけ好ましいことはイマチニブに対して抵抗性を示す疾患における使用である(イマチニブはGleevec(登録商標)の名の下に販売されている)。
【0053】
“固形腫瘍疾患”なる用語はとりわけ卵巣癌、乳癌、大腸癌、一般に胃腸の癌、例えば、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮頸癌、肺癌、例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、前立腺癌またはカポジ肉腫を意味する。
【0054】
記載のタンパク質キナーゼ活性、とりわけ上記および下記チロシンタンパク質キナーゼを阻害する本発明の組合せは、したがって、タンパク質キナーゼ依存疾患の処置において使用され得る。タンパク質キナーゼ依存疾患はとりわけ増殖性疾患、好ましくは良性またはとりわけ悪性腫瘍(例えば、腎臓、脳、肝臓、副腎、膀胱、乳、胃腸(とりわけ胃の腫瘍)、卵巣、大腸、直腸、前立腺、膵臓、肺(とりわけSCLC)、膣または甲状腺の癌腫、肉腫、多発性骨髄腫、グリア芽腫および多数の頭頸部の腫瘍、ならびに白血病);とりわけ大腸癌腫または結腸直腸アデノーマ、または頭頸部の腫瘍、表皮過形成、とりわけ乾癬、前立腺過形成、腫瘍形成、とりわけ上皮性特性の、好ましくは乳癌、または白血病である。それらは腫瘍の退行を引き起こし、腫瘍転移の形成および転移(微少転移)の増殖を予防することができる。加えて、それらは表皮過形成(例えば、乾癬)、前立腺過形成、および腫瘍、とりわけ上皮性特性の、例えば、乳癌の処置において使用され得る。本発明の組合せを、いくつかの、または、とりわけ、個々のチロシンタンパク質キナーゼが含まれる範囲の免疫系の疾患の処置において使用することもできる;さらに、本発明の組合せは、またとりわけ具体的に記載されているものから選択される少なくとも1種のチロシンタンパク質キナーゼによるシグナル伝達を含む、中枢または末梢神経系の疾患の処置において使用され得る。
【0055】
CMLにおいて、造血幹細胞(HSC)における相互に釣り合った染色体転座はBCR−ABLハイブリッド遺伝子を製造する。該遺伝子は発癌性BCR−ABL融合タンパク質をコードしている。ABLは細胞増殖、接着およびアポトーシスを制御する重要な役割を果たす非常に制御されたタンパク質チロシンキナーゼをコードするが、Bcr−Abl融合遺伝子は、HSCを無秩序なクローン増殖を示す表現型を製造し、骨髄間質への付着能力を減少させ、そして変異誘発刺激に対するアポトーシス応答を減少するものへの形質転換をする、構造的に活性化されたキナーゼをコードし、徐々に悪性形質転換体を蓄積する。得られる顆粒球は成熟リンパ球へ発達せず、循環系へ放出され、成熟細胞の不足および感染に対する感受性の増加をもたらす。BCR−ABLのATP−拮抗阻害剤はキナーゼを細胞分裂および抗アポトーシス経路の活性化から妨げ(例えば、P−3キナーゼおよびSTAT5)、Bcr−Abl細胞表現型の死をもたらし、したがってCMLに対して有効な治療を提供することが記載されている。本発明の組合せは、したがってとりわけ過剰発現に関する疾患、とりわけ白血病、例えば、白血病、例えば、CMLまたはALLの治療のために適当である。
【0056】
本発明の広い意味において、増殖性疾患は過増殖性状態、例えば、白血病、過形成、線維症(とりわけ肺疾患、線維症、例えば、腎臓線維症の他の型も)、血管形成、乾癬、血管のアテローム性動脈硬化症および平滑筋増殖、例えば、狭窄または血管形成術後の再狭窄を含む。さらなる局面において、本発明の組合せは関節炎を処置するために使用され得る。
【0057】
本発明の組合せはまた、線維形成疾患、例えば、強皮症(全身性硬化症);タンパク質凝集およびアミロイド形成と関連する疾患、例えば、ハンチントン病の処置または予防;C型肝炎ウイルスの複製の阻害およびC型肝炎の処置;ウイルス感染、例えば、ヒト乳頭腫ウイルス感染と関連する腫瘍の処置;および熱ショックタンパク質に依存するウイルスの阻害のために使用され得る。
【0058】
本発明の組合せは、主に血管の増殖を阻害し、例えば、無秩序な血管形成と関連する多くの疾患、とりわけ眼の血管形成に起因する疾患、とりわけ網膜症、例えば、糖尿病性網膜症または加齢黄斑変性症、乾癬、血管芽細胞腫、例えば、血管腫、メサンギウム細胞増殖性疾患、例えば、慢性または急性腎臓疾患、例えば、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症症候群または移植拒絶反応、またはとりわけ炎症性腎臓疾患、例えば、糸球体腎炎、とりわけメサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症性症侯群、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫性疾患、糖尿病、子宮内膜症、慢性喘息、およびとりわけ腫瘍性疾患(固形腫瘍、白血病および他の血液悪性腫瘍も)、例えば、とりわけ乳癌、大腸癌、肺癌(とりわけ小細胞肺癌)、前立腺癌またはカポジ肉腫に対して有効である。本発明の組合せは、腫瘍の増殖を阻害し、とりわけ腫瘍の転移拡散および微小転移巣の増殖を予防するために適当である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)のピリミジルアミノベンズアミド化合物;および
b)少なくとも1種のHSP90阻害剤を含む医薬組合せ。
【請求項2】
薬剤a)が式(II)
【化1】

で示される4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドから選択される、請求項1に記載の医薬組合せ。
【請求項3】
薬剤b)がゲルダナマイシン誘導体、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、ゲルダナマイシン−関連化合物、ラジシコール、式(III)の化合物および式(IV)の化合物から選択される、請求項2に記載の医薬組合せ。
【請求項4】
増殖性疾患の処置または予防のための薬剤の製造のための、請求項1に記載の医薬組合せの使用。
【請求項5】
該疾患が慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病または消化管間質腫瘍である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
処置を必要とする対象における増殖性疾患の処置または予防のための方法であって、該対象に、例えば、同時にまたは連続して、治療有効量の少なくとも1種のHSP90阻害剤および式(I)のピリミジルアミノベンズアミド化合物を共投与することを含む方法。
【請求項7】
慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病または消化管間質腫瘍の処置のための方法であって、HSP90阻害剤および式(I)のピリミジルアミノベンズアミド化合物の組合せを投与することを含む方法。
【請求項8】
慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病または消化管間質腫瘍の処置のための方法であって、HSP90阻害剤および4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドの組合せを投与することを含む方法。
【請求項9】
慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病または消化管間質腫瘍の処置のための方法であって、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンであるHSP90阻害剤および式(I)のピリミジルアミノベンズアミド化合物の組合せを、投与することを含む方法。

【公表番号】特表2009−504673(P2009−504673A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526269(P2008−526269)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/031561
【国際公開番号】WO2007/022042
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】