説明

ピーク電圧保護回路および方法

関連する高電圧NPNトランジスタ(T3)を破壊に対して保護するためのピーク電圧保護回路であり、この保護回路は、関連する高電圧NPNトランジスタ(T3)のベース−コレクタ電圧に関係づけられたセンサ電圧を感知するための低電圧NPN素子(T15)を含む。この回路はさらに、関連する高電圧NPNトランジスタ(T3)のベース−コレクタ電圧をトリガと同時に制限するための起動回路を含む。低電圧NPN素子(15)は、低電圧NPNトランジスタ(T15)の降伏電圧をセンサ電圧が超えると同時に起動回路をトリガするように起動回路に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタのピーク電圧保護の保護回路および方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラー電話無線周波数(RF)電力増幅器(PA)の重要な仕様は、その堅牢性である。最悪条件のもとでもPAは故障してはならない。アンテナの不整合状態、およびPAの最大出力電力のもとでは、電力トランジスタの降伏電圧(BV)を超えることもある大きなコレクタ・ピーク電圧が発生する。GSM PAは、10:1のVSWR、すべての位相、およびVbat=4.7Vに耐えなければならず、したがって十分に堅牢でなければならない。
【0003】
バイポーラIC技術では、コレクタ−ベースBVと遷移周波数fTが強く関係しており、すなわちBVとfTの積はほぼ一定である。したがって、堅牢性と速度の間での妥協点が選択されなければならない。適切なエピ厚およびコレクタ・ドープ・プロファイルを選択することによってトレードオフがなされる。GSM PA用に最適化されたバイポーラIC技術は、比較的高いBVに調整され、その結果、中程度のfTを有する。このことは、その技術の実現可能な利得を低減させ、したがってPAの電力付加効率を低減させる。
【0004】
シリコン技術では、エピ厚とコレクタ・ドーピング・プロファイルは、速度と堅牢性の間での最適なトレードオフを実現するように調整される。SiGeプロセスに関するこれらのトレードオフを記載する最近の文献は、「Current Status and Future Trends of SiGe BiCMOS Technology」、IEEE Transactions on Electron Devices, Vol.48、No 11、2001年11月、に見出される。
【0005】
低周波高電力スイッチ応用例では、「スナバ」と呼ばれることが多いツェナーやダイオードなどを用いてスイッチング・トランジスタを保護することが一般的である。これらは、スイッチング・デバイスに対する最大ピーク電圧を制限し、したがってその堅牢性を確保する。
【0006】
BUK1M200-50DLDのデータシート「Quad channel TOPFET」は、様々なタイプの集積化保護に言及している。
【0007】
集積回路の静電放電(ESD)保護に関し、多くの異なる方法が知られている。ダイオードおよびクロウバーが最も一般に使用される。ESDパルスに対する保護を記載する文献の例としては、「Diode Network Used as ESD Protection in FR Applications」、Proceedings EOS/ESD Symposium、2001年、337〜345ページ、および「New ESD protection schemes for BiCMOS processes with application to cellular radio designs」、International Symposium on Circuits and Systems 1992, Proceedings Vol.6、3〜6、1992年5月、がある。
【0008】
米国特許第6525611号B1Aは、最大コレクタ・ピーク電圧を制限する方法を記載している。コレクタ電圧を監視するためにピーク検出器が使用される。コレクタ電圧があるレベルにさしかかると、PAバイアス電流が低減され、したがって出力電力が低減される。この特許は、SiGe技術の軽減された降伏電圧要件により獲得され得る、可能性のある電力増幅器性能改善に言及している。
【0009】
特許出願国際公開第03/034586号A1は、過大なコレクタ・ピーク電圧を防止するための方法として代替制御ループを開示している。
【0010】
米国特許第5977823号は、RFトランジスタをベースとするRF増幅器を記載している。クリップ回路を使用してRF増幅器の直線性が改善される。このクリップ回路の一実施態様では、RFトランジスタの降伏電圧と、RFトランジスタよりも本質的に降伏電圧が低い別のトランジスタの降伏電圧との差を利用することによって、少ない製造ばらつき(production spread)に対する要求が緩和される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
製造ばらつきに関係しない正確な保護電圧閾値を実現し、トランジスタをピーク電圧破壊に対して保護する保護回路および方法を提供することが本発明の目的とみなされてよい。加えて、この回路および方法は、RFトランジスタを保護するのに十分なだけ高速でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、関連する高電圧NPNトランジスタを破壊に対して保護するように適合されたピーク電圧保護回路を設けることによって達成され、この保護回路は、
関連する高電圧NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧に関係づけられたセンサ電圧を感知するように接続された低電圧NPN素子と、
関連する高電圧NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧をトリガと同時に制限するように適合された起動回路とを含み、
低電圧NPNトランジスタの降伏電圧をセンサ電圧が超えると同時に起動回路をトリガするように、低電圧NPN素子が起動回路に接続されている。
【0013】
最新のSiおよびSiGeプロセスでは、エピ厚と組み合わせて降伏電圧およびfTを最適化するために、コレクタ内選択注入(SIC)が使用される。このSICを阻止すると、SICを用いたものと比較して降伏電圧が高いトランジスタが得られる。SIC阻止を用いたトランジスタは、高電圧NPN(HV−NPN)トランジスタと表される。SIC阻止を用いない素子またはトランジスタは、低電圧NPN(LV−NPN)素子またはトランジスタと表される。
【0014】
第1の態様によれば、HV−NPNトランジスタの降伏限界ベース−コレクタ電圧であることを示す電圧を感知するために、LV−NPN素子(コレクタ−ベース接続)が使用され、HV−NPNトランジスタは、例えばRF電力増幅器(PA)内の、破壊に対する保護が必要なRFトランジスタでもよい。その場合、起動回路がトリガされる閾電圧を規定するためにLV−NPN素子の(非破壊的)降伏が使用され、この起動回路は、HV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を直接または間接的に制限し、または低減させる働きをする。すなわちLV−NPN降伏電圧が閾電圧として使用される。LV−NPNの降伏電圧がHV−NPNの降伏電圧よりも本質的に低いので、保護を起動させるのにLV−NPNを使用すると、保護されるべきHV−NPNトランジスタの降伏電圧よりも低い電圧で保護が確実に起動されるようになる。この降伏電圧比率は、例えば1.5であればよい。IC技術は、より高い3以上などの比率を可能にするが、このような高い比率は実用性が低いとみなされてよい。
【0015】
言い換えると、第1の態様による保護回路は、異なるコレクタ−ベース・ドーピング・プロファイルを用いた各トランジスタ間の降伏電圧の本質的な差を利用するものである。その結果、検出閾値レベルとRFデバイスの実際の降伏電圧の間の安全余裕が、温度や工程ばらつきなどにわたって適切に規定される。
【0016】
HV−NPNトランジスタの降伏電圧の絶対値(BVHV)、およびLV−NPN素子の降伏電圧の絶対値(BVLV)は、様々な動作条件および製造ばらつきにより変わることがあるが、BVLVがBVHVよりも低くなることは依然として本質的なものであり、そのようなものとしてBVLVは、HV−NPNトランジスタの保護に関して電圧閾値として使用するのに都合がよい。BVLVを保護電圧閾値の基準として使用すると、保護されるべきHV−NPNトランジスタの破壊BVLVよりも保護閾値が低いことが保証され、したがって安全余裕が少なく使用されてもよい。絶対的な保護電圧閾値が使用される場合は、起こるおそれのある破壊が、HV−NPNのBVHVが実際に超えられる前に常に検出されることを保証するために、最悪条件を考慮した大きな安全余裕を取り入れる必要がある。したがって、より低い電圧閾値が選択されなければならず、これによってHV−NPNの動作領域に不必要な限界が取り入れられる。あるいは、より高い降伏電圧を有するようにHV−NPNが選択されなければならず、このことは、トランジスタの実現可能なfTを限定することになる。
【0017】
降伏電圧BVHVおよびBVLVのばらつきが同様に工程ばらつきと相関しているために、これらの電圧のばらつきが同じ方向、およびほぼ同じ量で発生することになるので、降伏電圧BVHVおよびBVLVの差によって与えられる安全余裕は正確である。
【0018】
LV−NPN素子は、HV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を直接感知するように接続されてよい。この構成を用いると、LV−NPN素子の降伏電圧と等しいトリガ閾電圧が得られる。しかし、代わりに、LV−NPN素子は、さらなる構成要素を使用することなどによって、HV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧に間接的に関係づけられた電圧を感知するように接続されてもよく、それによって起動回路が、LV−NPN素子の降伏電圧と異なるHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧でトリガされるようになる。
【0019】
起動回路は、その関連するHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を、HV−NPNトランジスタの利得を低減させることによって制限するように適合されてよい。
【0020】
好ましい実施形態では、LV−NPN素子は、逆バイアスされたコレクタ−ベース・ダイオードとして接続されたLV−NPNトランジスタを含む。このLV−NPN素子は、静電放電(ESD)ダイオードを含んでよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、起動回路は、HV−NPNトランジスタのコレクタ出力をトリガと同時にクランプするように適合されたクランプ・トランジスタを含む。別の実施形態では、起動回路は、HV−NPNトランジスタへの入力信号をトリガと同時に減衰させるように適合された減衰器を含む。さらに別の実施形態では、起動回路は、HV−NPNトランジスタのDCバイアス電圧をトリガと同時に低減させるように適合されており、それによってHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を低減させる。起動回路はまた、HV−NPNトランジスタの前にある増幅器段の利得および/またはDCバイアス電圧をトリガと同時に低減させるように適合されてもよく、それによってHV−NPNトランジスタへの入力信号振幅を低減させて、そのベース−コレクタ電圧を低減させる。
【0022】
さらに別の実施形態では、起動回路は、関連するHV−NPNトランジスタを含み、LV−NPN素子の降伏電圧をセンサ電圧が超えると同時に、HV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を直接低減させるようにLV−NPN素子が適合されている。
【0023】
LV−NPN素子は、関連するHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を感知するように接続されてよい。
【0024】
LV−NPN素子は、関連するHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ降伏電圧とは異なる、その約1.5分の1の降伏電圧を示す。
【0025】
本発明の第2の態様は、ベース−コレクタ破壊に対してHV−NPNトランジスタを保護するために、HV−NPNトランジスタとLV−NPN素子の間の降伏電圧の差を利用するステップを含む、HV−NPNトランジスタをピーク電圧保護する方法を提供する。
【0026】
好ましくは、この方法は、LV−NPN素子を使用してHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧と関係づけられたセンサ電圧を感知するステップと、LV−NPN素子の降伏電圧をセンサ電圧が超えると同時にHV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を低減させるステップとを含む。
【0027】
HV−NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を低減させるステップは、HV−NPNトランジスタの電圧利得を低減させるステップを含んでもよい。
【0028】
LV−NPN素子は、好ましくはダイオード構成の形でLV−NPNトランジスタを含む。
【0029】
本発明の第3の態様は、
高電圧電力トランジスタと、
第1の態様による保護回路とを含む
RF電力増幅器を設ける。
【0030】
本発明の第4の態様は、第3の態様によるRF電力増幅器を含む電子チップを設ける。
【0031】
本発明の第5の態様は、第3の態様によるRF電力増幅器を含むRFデバイスを設ける。このRFデバイスは、移動電話、ラップトップ・コンピュータ、携帯情報端末(PDA)、PCMCIAカードから成る群から選択されてよい。
【0032】
第1の態様による保護回路、第2の態様による保護方法、または第3の態様によるRF電力増幅器はまた、広範な他の種類の機器内に適用されてもよいことを理解されたい。非網羅的な例としては、光ライン・ドライバなどのライン・ドライバ、スイッチ電源、消費電力管理ユニット(PMU)がある。
【0033】
以下では、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0034】
本発明は、様々な改変および代替形態が可能であるが、特定の実施形態を図面の例によって示しており、また本明細書で詳細に説明する。しかし、本発明は、開示された特定の形態に限定されるものではないことを理解されたい。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲に含まれるすべての改変、等価物、および代替物を包含するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、電力トランジスタの典型的な安全動作領域(SOA)、すなわちコレクタ電流Ic対コレクタ−エミッタ電圧UceのSOAを示す。高いコレクタ電流および電圧、ならびに中程度のコレクタ電流および電圧に対しては、SOAは、Pdissで示された曲線の直線部分で示された損失電力によって制限される。しかし、低いコレクタ電流に対しては、SOAは、破線の円で示されたなだれ増倍の領域AMによって制限され、この領域では降伏が増進し、別の破線の円で示されたなだれ降伏の領域ABに入り込む可能性がある。なだれ降伏領域ABでは、トランジスタは、そのコレクタ−ベース接合の降伏電圧BVに達する。保護に関して検出閾値として使用されてよいクランプ電圧CVの典型的な位置が、太い破線の直線で示されている。クランプ電圧CVが超えられたときに高速の保護が起動されるならば、トランジスタを破壊降伏電圧BVから安全に保つことがなお可能である。
【0036】
図2の上部は、LV−NPNトランジスタ(破線)およびHV−NPNトランジスタ(実線)のドーピング・プロファイルdpの例を位置xの関数として示す。図で明らかなように、LV−NPNおよびHV−NPNトランジスタは、nドープ・コレクタ層を除いて同じドーピング・プロファイルを有し、このnドープ・コレクタ層では、HV−NPNトランジスタのコレクタ内選択注入阻止が明らかに見られ、HV−NPNトランジスタがLV−NPNトランジスタと区別される。
【0037】
図2の下部は、得られたコレクタ電流Iを、2つのトランジスタのタイプについてコレクタ−ベース電圧Ubcの関数として示す。図で分かるように、それぞれBVLVおよびBVHVで示された2つのトランジスタのタイプ間でBVの違いがある。BVLVはBVHVよりも本質的に低くなる。BVLVとBVHVの間のこの差は、図2の上部に示された異なるドーピング・プロファイルによって規定される構造上の違いによるものなので、製造ばらつきや温度などに対して、BV差は十分に範囲が限定される。
【0038】
本発明によれば、BVLVとBVHVのこの本質的な差は、保護回路のピーク電圧検出閾値を規定するために利用される。HV−NPNトランジスタの最大許容ピーク・コレクタ電圧を規定するために、すなわち保護閾電圧を規定するために、LV−NPNトランジスタの非破壊BVLVが使用される。この閾電圧が超えられたときに、起動回路がトリガされる。次いで起動回路は、コレクタ電圧を安全レベルまで低減させるように働いて、HV−NPNトランジスタを保護する。
【0039】
以下の図3〜6では、4つの異なる保護回路動作原理を説明する。4つすべての動作原理が、あまりに高いコレクタ−ベース電圧ピークによる破壊に対して、HV−NPN電力トランジスタT3を保護することに基づいている。T3は電源電圧Vsuppを供給され、入力信号RF_INに応じて負荷Z_Lを駆動する。すべての保護回路が、LV−NPNトランジスタをベースとするコレクタ・ピーク電圧検出器DETを使用し、HV−NPNトランジスタの実効(電圧)利得を制限する回路を起動するのにLV−NPNトランジスタのBVVを利用する。LV−NPNは、その負荷が重くないように接続されているので、BVLVに達することがLV−NPNトランジスタにとっては非破壊的なものになる。好ましくは、電圧検出器として使用されるLV−NPNトランジスタは、そのベース−エミッタが短絡されている。このLV−NPNに直列に1つまたは複数のベース−エミッタ・ダイオードを追加することにより、実効閾値検出レベルがUbe刻みで調整され得る。
【0040】
図3は、第1の保護動作原理を示し、LV−NPN検出器素子をベースとする検出器DETがT3のコレクタ電圧を検出するように接続されている。検出器LV−NPNのBVLVを超えるコレクタ電圧をピーク電圧検出器DETが検出したとき、検出器DETは、T3のコレクタ電圧を何らかの方法でクランプするクランプ回路CLMPをトリガし、その結果、T3のコレクタ電圧は低減されるようになる。T3のコレクタがBVLV、すなわちT3自体の降伏電圧BVHVよりも低い電圧でクランプされるので、T3は破壊に対して保護される。
【0041】
図4は、第2の動作原理を示し、この場合、T3の入力部に配置された減衰器RF−ATTを検出器DETがトリガする。BVLVを超えるコレクタ電圧を検出器DETが検出したとき、DETは、入力信号RF_INを減衰させる減衰器RF−ATTをトリガしてT3への入力を低減させ、したがってT3のコレクタ電圧をそれがBVHVに達する前に低減させる。
【0042】
図5は、第3の動作原理を示し、この場合、T3にDCバイアスをかけるように働く回路DC−Bを検出器DETがトリガする。BVLVを超えるコレクタ電圧を検出器DETが検出したとき、DETはDCバイアス回路DC−Bをトリガし、それに応じてDC−BはT3のDCバイアスを低減させ、したがってコレクタ電圧をそれがBVHVに達する前に低減させる。
【0043】
図6は、第4の動作原理を示し、この場合、BVLVを超えるコレクタ電圧を検出器DETが検出したときに検出器DETがT3を直接トリガする。ここで、T3は、影響を直接受けてそのコレクタ電圧を低減させることができ、したがってBVHVに達しないように保護される。
【0044】
以下では、説明した保護動作原理の3つの実施形態を図7、8、および9に関連して説明する。3つすべての実施形態で、HV−NPN電力トランジスタT3をベースとするRF PAが、入力信号RF_INに応じて負荷Z_Lを駆動するように接続されている。電源電圧はVsuppである。極端な条件(高い電池電圧Vsupp、高い負荷インピーダンスZ_L、高い出力電力)のもとでは、T3のコレクタ・ピーク電圧が大きくなる。T3は、トランジスタT1およびT2をベースとするDCバイアス回路によってDCバイアスをかけられる。図7、8、および9の3つすべての実施形態において、ピーク電圧検出器は、逆バイアスされたコレクタ−ベース・ダイオードとして構成されたLV−NPNトランジスタT15として実施される。ピーク電圧検出器は、良好な電流対応能力に関して最適化された構造を有するESDダイオードとして実施されてもよく、したがって小型になる。
【0045】
図7は、前述の第1の動作原理、すなわちクランプ回路に基づく動作原理による保護回路を用いたRF PAの一実施形態を示す。クランプ回路は、HV−NPNトランジスタT16およびT17を含む。T3のピーク・コレクタ電圧がUbe_17+BV_T15+U_Re2、すなわち検出電圧閾値を超えたとき、電流がT15中を流れ、T17を駆動する。T17およびその縦続接続トランジスタT16は、大きなクランプ電流を伝導する。したがって、T3のコレクタ電圧は制限される。
【0046】
検出器LV−NPNトランジスタT15は、実際のクランプ・トランジスタT17をトリガする逆バイアス接続として構成される。T17の電流利得により、T15に必要な電流対応能力が限定され、比較的小型のデバイスを使用することが可能になる。T17は通常モードで動作する。その電力損失は、トランジスタT16を使用することによって限定され、したがって損失電力がT17とT16に分散する。さらに、縦続接続の使用によりT17のなだれ降伏を防止する。T16のベース基準電圧を生成するために、ダイオードのスタックが使用される。このスタック中の多数のダイオードは、電池電圧が高い場合であってもクランプ内のどんな漏洩電流も防止する。図7に示された例では、5Vの最大電源電圧に関連して8ダイオードからなるスタックが使用されている。
【0047】
LV−NPN T15、およびHV−NPN T16、T17の非破壊降伏は高速であり、したがってRFトランジスタT3のコレクタ電圧変動に十分に追従することができる。使用されるフィード・フォワード回路概念は、良好な安定性を保証する。分散形PAのダイ領域上に保護を分散させるために、複数のクランプが並列に使用されてもよい。T17の電力密度が高いためにT17の熱不安定性をもたらすかもしれない。この熱不安定性は、分散形(エミッタ)負帰還Re2を適用することによって、RFトランジスタT3の熱安定性と同様に改善され得る。
【0048】
図8は、前述の第2または第3の保護動作原理に基づく保護回路の一実施形態を示す。RFトランジスタT3の最大コレクタ電圧を制限するために、検出器LV−NPN T15トランジスタが使用されてRF減衰器、および/またはバイアス回路をトリガする。TNM1は、T3のDCバイアスをトリガと同時に低減させるように働き、一方、TNM2は、T3のRF入力信号をトリガと同時に減衰させるように働く。図8の回路では、RFトランジスタT3の最大コレクタ電圧、すなわち検出閾電圧は、Uth_NM1/2+BV_T15に等しい。
【0049】
図9は、前述の第4の保護動作原理、すなわち保護されるべきPAトランジスタの直接トリガに基づく保護回路の一実施形態を示す。図9では、RFトランジスタT3のピーク・コレクタ電圧を制限するために、検出器LV−NPNトランジスタT15がRF HV−NPNトランジスタT3を直接トリガする。最大コレクタ電圧、すなわち保護閾電圧は、Ube_T3+BV_T15+U_Reに等しい。
【0050】
請求項には、分かりやすくするためだけに図への参照符号が含まれている。図の例示的実施形態についてのこれらの参照は、請求項の範囲を制限しているとみなされるべきものでは決してない。
【0051】
本発明の保護の範囲は、本明細書に記載された実施形態に限定されないことに注意されたい。本発明の保護の範囲も、請求項中の参照番号によって限定されない。「含む」(comprising)という語は、請求項で言及されたもの以外の部品を排除しない。素子の前に付く「a(an)」という語は、複数のこれらの素子を排除しない。本発明の部品を形成する手段は、専用のハードウェアの形でも、プログラム式目的プロセッサの形でも実施されてよい。本発明は新規の各特徴、または各特徴の組合せに存在する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】RF電力トランジスタの安全動作領域(SOA)を示すグラフである。
【図2】LV−NPNトランジスタとHV−NPNトランジスタの相違を示す図である。上部が2つのトランジスタのタイプのドーピング・プロファイルを示し、下部がそれらの異なるコレクタ−ベース降伏電圧を示す。
【図3】クランプ回路に基づく第1の保護動作原理を示す図である。
【図4】入力減衰に基づく第2の保護動作原理を示す図である。
【図5】DCバイアス低減に基づく第3の保護動作原理を示す図である。
【図6】保護されるべきトランジスタのトリガに基づく第4の保護動作原理を示す図である。
【図7】第1の保護動作原理の好ましい一実施形態を示す図である。
【図8】第2および第3の保護動作原理の好ましい一実施形態を示す図である。
【図9】第4の保護動作原理の好ましい一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連する高電圧NPNトランジスタを破壊に対して保護するピーク電圧保護回路であって、
前記関連する高電圧NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧に関係づけられたセンサ電圧を感知するための低電圧NPN素子と、
前記関連する高電圧NPNトランジスタの前記ベース−コレクタ電圧をトリガと同時に制限するための起動回路とを含み、
前記低電圧NPN素子が、前記低電圧NPN素子の降伏電圧を前記センサ電圧が超えると同時に、前記起動回路をトリガするように前記起動回路に結合される、保護回路。
【請求項2】
前記起動回路が、前記高電圧NPNトランジスタの利得を低減させることによって、前記関連する高電圧NPNトランジスタの前記ベース−コレクタ電圧を制限するように設けられる、請求項1に記載の保護回路。
【請求項3】
前記低電圧NPN素子が、逆バイアスされたコレクタ−ベース・ダイオードとして接続された低電圧NPNトランジスタを含む、請求項1に記載の保護回路。
【請求項4】
前記低電圧NPN素子が静電放電ダイオードを含む、請求項1に記載の保護回路。
【請求項5】
前記起動回路が、前記高電圧NPNトランジスタのコレクタ出力をトリガと同時にクランプするためのクランプ・トランジスタを含む、請求項1に記載の保護回路。
【請求項6】
前記起動回路が、前記高電圧NPNトランジスタへの入力信号をトリガと同時に減衰させるための減衰器を含む、請求項1に記載の保護回路。
【請求項7】
前記起動回路が、前記高電圧NPNトランジスタのDCバイアス電圧をトリガと同時に低減させるように設けられる、請求項1に記載の保護回路。
【請求項8】
前記起動回路が、前記高電圧NPNトランジスタの前にある増幅段のDCバイアス電圧をトリガと同時に低減させるように設けられる、請求項1に記載の保護回路。
【請求項9】
前記起動回路が、前記高電圧NPNトランジスタの前にある増幅段の利得をトリガと同時に低減させるように設けられる、請求項1に記載の保護回路。
【請求項10】
前記起動回路が、前記関連する高電圧NPNトランジスタを含み、前記低電圧NPN素子が、前記低電圧NPN素子の降伏電圧を前記センサ電圧が超えると同時に、前記高電圧NPNトランジスタの前記ベース−コレクタ電圧を直接低減させるように設けられる、請求項1に記載の保護回路。
【請求項11】
前記低電圧NPN素子が、前記関連する高電圧NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧を感知するように接続される、請求項1に記載の保護回路。
【請求項12】
高電圧NPNトランジスタをピーク電圧保護する方法であって、
前記高電圧NPNトランジスタをベース−コレクタ降伏に対して保護するために、前記高電圧NPNトランジスタと低電圧NPN素子の間の降伏電圧の差を利用するステップを含む、方法。
【請求項13】
前記高電圧NPNトランジスタのベース−コレクタ電圧に関係づけられたセンサ電圧を低電圧NPN素子を使用して感知するステップと、
前記低電圧NPN素子の降伏電圧を前記センサ電圧が超えると同時に前記高電圧NPNトランジスタの前記ベース−コレクタ電圧を低減させるステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記高電圧NPNトランジスタの前記ベース−コレクタ電圧を低減させる前記ステップが、前記高電圧NPNトランジスタの電圧利得を低減させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低電圧NPN素子が、ダイオード構成の形の低電圧NPNトランジスタを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
高電圧電力トランジスタ、および請求項1に記載の保護回路を含む、RF電力増幅器。
【請求項17】
請求項16に記載のRF電力増幅器を含む電子チップ。
【請求項18】
請求項16に記載のRF電力増幅器を含むRFデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−514183(P2008−514183A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533014(P2007−533014)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053013
【国際公開番号】WO2006/033052
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】