説明

ファクシミリ装置

【課題】通話をしながらファクシミリを送信する場合と、通話を終了してファクシミリを送信する場合と、の少なくとも2通りの料金をユーザに通知可能なファクシミリ装置を提供する。
【解決手段】ファクシミリ装置は、通信部と、本体制御部と、表示部16と、を備える。通信部は、通話及びファクシミリ通信を実行可能であって、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方に切り替えて使用する単独通信と、一方の使用中に前記他方を並行して使用する並行通信と、をそれぞれ実行可能である。本体制御部は、単独通信によって発生する他方の料金である単独通信料金と、並行通信によって発生する他方の料金である並行通信料金と、を算出可能である。表示部16は、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する旨の指示を受けたときに、本体制御部が求めた単独通信料金と並行通信料金とを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話機能及びファクシミリ通信機能を同時に使用可能なファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、受話器等を備え、通話機能を有するファクシミリ装置が知られている。この種のファクシミリ装置において従来から利用されている公衆回線網は、回線交換方式で通信を行うため、異なる種類の通信(音声通信とデータ通信)を同時に行うことが困難である。そのため、従来のファクシミリ装置では、通話機能とファクシミリ通信機能とを同時に使用することができない。
【0003】
この点、近年では、従来の公衆回線網に代えて、次世代ネットワーク(Next Generation Network、NGN)を利用した通信が実用化され始めている。このNGNは、パケット交換方式により通信を行うため、異なる種類の通信を同時に行うことができる。従って、例えば通話とファクシミリ通信とを並行して行うことが可能となる。特許文献1及び2は、このNGNを利用したネットワークプリンティングシステムを開示する。
【0004】
特許文献1のネットワークプリンティングシステム(画像形成出力管理システム)は、LANに接続されたPC等のクライアント装置及び画像形成装置と、当該LANとNGNを介して接続されるサービス管理サーバと、で構成されている。クライアント装置は、サービス管理サーバの許可を取得することで、画像形成装置を用いた印刷が可能になるように構成されている。また、サービス管理サーバは、クライアント装置の印刷枚数(印刷コスト)等が所定の値を超えると、クライアント装置の印刷を許可しないように構成されている。
【0005】
また、特許文献2では、特許文献1の構成と同等のネットワークプリンティングシステム(印刷サービス提供システム)が開示されている。なお、特許文献2では、NGNを介して、印刷コストを計算する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−86029号公報
【特許文献2】特開2010−27036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、NGNを用いて通信を行う場合、音声通信を行うかデータ通信を行うか(又は両方を同時に行うか)によって、所定時間あたりの通信料金が異なることが考えられる。また、データ通信を行う場合には、利用する帯域によって、更に通信料金が異なることも考えられる。
【0008】
そのため、通話とファクシミリ通信を並行して利用可能なファクシミリ装置では、以下の課題が生じることがある。即ち、通話中に資料を送る必要が生じた場合等に、通話をしながらファクシミリを送信する送信方法と、通話を終了してファクシミリを送信する送信方法と、で料金がどれくらい違うかを即座に把握することができない。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、通話をしながらファクシミリを送信する場合と、通話を終了してファクシミリを送信する場合と、の少なくとも2通りの料金をユーザに通知可能なファクシミリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のファクシミリ装置が提供される。即ち、このファクシミリ装置は、通信部と、演算部と、表示部と、を備える。前記通信部は、通話及びファクシミリ通信を実行可能であって、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方に切り替えて使用する単独通信と、前記一方の使用中に前記他方を並行して使用する並行通信と、をそれぞれ実行可能である。前記演算部は、前記単独通信によって発生する前記他方の料金である単独通信料金と、前記並行通信によって発生する前記他方の料金である並行通信料金と、を算出可能である。前記表示部は、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち前記一方の使用中に前記他方を使用する旨の指示を受けたときに、前記演算部が求めた前記単独通信料金と前記並行通信料金とを表示する。
【0012】
これにより、ユーザは、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する指示を行うだけで(料金を表示するための特別な操作を行うことなく)、料金の目安を知ることができる。従って、ユーザは、単独通信を行わせるか並行通信を行わせるかの選択の手がかりを得ることができるので、適切な選択を行うことができる。
【0013】
前記のファクシミリ装置においては、前記単独通信及び前記並行通信のうち何れかがユーザによって選択された場合、前記通信部は、当該選択に伴う処理を行うことが好ましい。
【0014】
これにより、例えば料金の安さを優先したり通信の迅速性を優先したりする等、ユーザの希望に柔軟に対応した処理を行うことができる。
【0015】
前記のファクシミリ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このファクシミリ装置は、原稿の画像情報を読み取る画像読取部を備える。前記演算部は、前記画像読取部が読み取った原稿のデータ量と、通信の速さを示す通信帯域と、に基づいて料金を求める。
【0016】
これにより、データ量又は通信帯域等に基づいて料金が設定されたサービスに対応することができる。また、事前に原稿を読み取ってデータ量を取得することで、より具体的な料金を求めることができる。
【0017】
前記のファクシミリ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち前記一方の使用中に前記他方を使用する旨の指示を受けたときに、前記表示部は、前記単独通信及び前記並行通信の何れを行うかを選択させるための選択画面を表示する。
【0018】
これにより、ユーザは、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する指示を行うだけで(選択画面を表示するための特別な操作を行うことなく)、選択画面を表示させることができる。従って、ユーザが行う操作を簡単にすることができる。
【0019】
前記のファクシミリ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このファクシミリ装置は、料金情報記憶部を備える。前記料金情報記憶部は、通話及びファクシミリ通信に掛かった料金を記憶する。
【0020】
これにより、所定期間(例えば今月)の通信料金の目安をユーザに知らせることができる。
【0021】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のファクシミリ装置が提供される。即ち、このファクシミリ装置は、通信部と、演算部と、を備える。前記通信部は、通話及びファクシミリ通信を実行可能であって、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方に切り替えて使用する単独通信と、前記一方の使用中に前記他方を並行して使用する並行通信と、をそれぞれ実行可能である。前記演算部は、前記単独通信によって発生する前記他方の料金である単独通信料金と、前記並行通信によって発生する前記他方の料金である並行通信料金と、を算出可能である。前記通信部は、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち前記一方の使用中に前記他方を使用する旨の指示を受けたときに、前記演算部が算出した前記単独通信料金と前記並行通信料金とに基づいて、前記単独通信及び前記並行通信のうち料金が安い方を自動的に実行する。
【0022】
これにより、単独通信を行うか並行通信を行うかをユーザが選択する手間を省きつつ、通話及びファクシミリ通信に掛かる料金を安くすることができる。
【0023】
前記のファクシミリ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記通話中にファクシミリ通信に切り替えて通信を行うことを前記単独通信とする。前記通話中に前記ファクシミリ通信を並行して行うことを前記並行通信とする。
【0024】
これにより、通話中にファクシミリ通信に切り替えて使用する単独通信と、通話中にファクシミリ通信を並行して行う並行通信と、に関して、それぞれの通信によって発生する料金を表示すること、及び、料金が安い方の通信を自動的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るファクシミリ装置の機能ブロック図。
【図2】ファクシミリ通信及び通話が行われるタイミングを示す図。
【図3】予測料金の表示例を示す図。
【図4】参考情報の表示例を示す図。
【図5】通話中にファクシミリの送信を指示するときの処理を示すフローチャート。
【図6】通話中にファクシミリの送信を指示するときの処理を示すフローチャート。
【図7】変形例における、通話中にファクシミリの送信を指示するときの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るファクシミリ装置1の機能ブロック図である。
【0027】
本実施形態のファクシミリ装置1は、ファクシミリ通信機能に加え、音声通話機能、及びテレビ電話機能を有している。また、ファクシミリ装置1は、次世代ネットワーク(NGN)に接続されており、このNGNを介して他の機器とセッション(通信経路)を確立することができる。ファクシミリ装置1は、このセッションを介して、画像データのやり取り(ファクシミリ通信)、音声のやり取り(音声通話)、音声及び映像のやり取り(テレビ電話)を行うことができる。
【0028】
NGNの通信方式には、従来の電話回線のような回線交換方式ではなく、パケット交換方式が採用されている。従って、NGNを介して接続されたファクシミリ装置間では、ファクシミリ通信と通話とを並行して行うことができる。また、NGNでは、通信プロトコルとしてSIP(Session Initiaion Protocol)が採用されており、NGN内には図略のSIPサーバが配置されている。SIPサーバは、SIPを利用して、回線番号等をIPアドレスと対応付ける処理、及び、通信対象の機器を呼び出してセッションを確立する処理等を行っている。
【0029】
本実施形態のファクシミリ装置1は、図1に示すように、LAN30に接続されている。このLAN30には、図略のPC等に加え、ルータ31が接続されている。ルータ31は、LAN30及びNGN40に接続されており、LAN30に接続される機器(ファクシミリ装置1等)をNGN40に接続するための中継装置として機能する。
【0030】
ファクシミリ装置1は、NGN40を介して、通話機能付きのファクシミリ装置50,60等と通信(通話及びファクシミリ通信)を行うことができる。なお、以下の説明では、ファクシミリ装置1がファクシミリ通信を行う対象の機器と、ファクシミリ装置1が通話を行う対象の機器と、をまとめて「対象機器」と称することがある。
【0031】
次に、本実施形態のファクシミリ装置1の構成を説明する。本実施形態のファクシミリ装置1は、ファクシミリ原稿の送信前に、当該原稿を読み取ってデータ量を取得する構成である。そして、取得したデータ量に基づいてファクシミリの送信に伴う通信料金の予測値(以下、予測料金と称する)を求めて、表示するように構成されている。
【0032】
ファクシミリ装置1は、図1に示すように、本体制御部(演算部)10と、画像読取部11と、画像メモリ12と、画像形成部13と、受話器14と、操作部15と、表示部16と、フラッシュメモリ(料金情報記憶部)17と、通信部18と、ネットワークアダプタ19と、を備える。また、これらの構成は、バス20によって互いに接続されている。バス20としては、例えばPCI(Peripheral Component Interconnect)の規格に従って構成されたものを用いることができる。
【0033】
ネットワークアダプタ19は、ファクシミリ装置1がLAN30に接続するためのインタフェースであり、ファクシミリ装置1本体内の各部(本体制御部10等)と前記バス20を介して接続されている。
【0034】
本体制御部10は、装置全体の制御を行うためのものであり、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びCPU(中央演算処理装置)等で構成される。ROMには、装置の各部のハードウェアを制御するためのプログラム(ファームウェア等)が記憶されている。RAMは、プログラムのロード及び実行に使用されるほか、一時的なデータの記憶メモリとして用いられる。CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行する装置として用いられる。CPUは、例えば、ファクシミリ原稿のデータ量に基づいて前記予測料金を算出する処理(詳細は後述)を行う。
【0035】
画像読取部11は、スキャナ機能を実現するためのものである。本実施形態の画像読取部11は、CCDセンサ又は密着型イメージセンサ等の読取装置を備えている。画像読取部11は、この読取装置によってファクシミリ送信原稿等を読み取り、当該原稿の画像データを取得する。ここで取得された画像データのデータ量は、予測料金を求めるために用いられる。
【0036】
画像メモリ12は、画像読取部11で取得した画像データを一時記憶するためのものである。
【0037】
画像形成部13は、プリンタ機能を実現するためのものであり、ファクシミリ受信原稿を紙等の記録媒体に記録するための出力装置を備える。この出力装置としては、LED等の光源を用いて感光体にトナーを選択的に付着させて、ヒートローラ及びプレスローラによってそのトナーを記録媒体に熱転写して印刷を行う方式のものを採用することができる。なお、記録方法はこの熱転写方式に限られず、例えば感熱方式を採用しても良い。
【0038】
受話器(送受話器)14は、ユーザが通話のために使用するものであり、図略のスピーカ部とマイクロフォン部とで構成されている。スピーカ部は、前記対象機器から受信した音声データを再生するためのものである。マイクロフォン部は、ユーザの音声を取得するためのものである。マイクロフォン部が取得した音声は、音声データに変換されて、対象機器に送信される。
【0039】
操作部15は、ファクシミリ通信及び通話の指示、及びファクシミリ装置1の各種設定等を行うためのものである。具体的には、操作部15は、回線番号等を入力するためのテンキー、ファクシミリの送信及び通話の開始を指示するスタートボタン、方向キー、及び決定キー等を備えている。
【0040】
表示部16は、操作部15で入力された操作の内容に応じた各種情報を表示することができる。各種情報としては、例えば、今までのファクシミリ通信履歴(通話履歴)の一覧、及び予測料金等、各種の情報を表示することができる。また、表示部16は、テレビ電話の使用時に、通話の相手の映像を表示するためにも用いられる。
【0041】
フラッシュメモリ17は、不揮発性のメモリであり、各種のソフトウェア及びファクシミリ装置1において用いられる設定等を記憶することができる。また、フラッシュメモリ17は、回線提供業者の料金設定を記憶している。この料金設定は、本体制御部10が予測料金を算出するときに利用される。この料金設定では、例えば、利用する通信帯域、及び、複数種類の通信(音声通信及びデータ通信)を同時に行うか否か、等に基づいて所定時間あたりの料金が設定されている。
【0042】
また、フラッシュメモリ17は、本体制御部10が求めた予測料金を記憶するように構成されている。そして、本体制御部10は、このフラッシュメモリ17の記憶内容に基づいて、例えば、今月の予測料金の合計値(今月の通信料金)を表示部16に表示することができる。
【0043】
通信部18は、対象機器と通信を行うように構成されている。通信部18は、具体的には、対象機器とセッションを確立又は切断することに加え、ファクシミリ通信及び通話を行うことができる。
【0044】
セッションの確立は、ユーザからファクシミリの送信指示を受けたとき(通話の指示を受けたとき)に行われる。通信部18は、前記SIPサーバに対して対象機器の回線番号の通知等を行うことにより、当該対象機器との間にセッションを確立することができる。また、対象機器からのファクシミリを受信したとき(着信があったとき)にも、当該対象機器との間にセッションが確立される。
【0045】
なお、セッションには、通信可能なメディア(コンテンツ)の種類(メディアタイプ)が設定されている。例えば、ファクシミリ通信を行う際には、メディアタイプに「データ(イメージデータ)」を設定する必要がある。また、音声通話を行う際には、メディアタイプに「音声」を設定する必要があり、テレビ電話を行う際には、メディアタイプに「音声」及び「映像」を設定する必要がある。なお、メディアタイプの分類方法及び名称は例示であり、適宜の分類方法及び名称を用いることができる。
【0046】
また、セッションには、通信中にメディアタイプを追加することが可能である。従って、例えばファクシミリ通信中において、メディアタイプに音声を追加することで、ファクシミリ通信を切断せずに(ファクシミリ通信と並行して)音声通話を行うことができる。一方、通話中において、メディアタイプにデータを追加することで、通話を切断せずにファクシミリ通信を行うことができる。なお、本明細書において、「通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方に切り替えて使用する」ことを単独通信と称し、「通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を並行して使用する」ことを並行通信と称する。
【0047】
また、通信部18は、設定された複数のメディアタイプのうち1つを削除すること、及び、セッションを切断すること(メディアタイプを全て削除すること)が可能となっている。
【0048】
ファクシミリ通信及び通話は、セッションの確立後に行われる。ファクシミリ通信は、セッションのメディアタイプとしてデータが設定されているときに、当該セッションを介して、対象機器との間で原稿の画像データをやり取りすることで行われる。一方、音声通話は、セッションのメディアタイプとして音声が設定されているときに、通話の相手の音声データと、ユーザの音声データと、をやり取りすることで行われる。テレビ電話は、セッションのメディアタイプとして音声及び映像が設定されているときに、通話の相手の音声データ及び映像データと、ユーザの音声データ及び映像データと、をやり取りすることで行われる。
【0049】
次に、本実施形態のファクシミリ装置1によって行われる具体的な通信処理について図2から図6までを参照して説明する。図2は、通話及びファクシミリ通信が行われるタイミングを示す図である。図3は、予測料金の表示例を示す図である。図4は、参考情報の表示例を示す図である。図5及び図6は、通話中にファクシミリの送信を指示するときの処理を示すフローチャートである。なお、以下で示す例では、単独通信として、通話中にファクシミリ通信に切り替えて通信を行う場合を説明し、並行通信として、通話中に並行してファクシミリ通信を行う場合を説明する。
【0050】
ユーザは、電話をかけるときは、受話器14を上げ、操作部15のテンキーを用いて対象機器の回線番号を入力する。そして、ユーザがスタートボタンを押すことにより、ファクシミリ装置1は、通話の指示を受け付ける(S101)。そして、ファクシミリ装置1は、SIPサーバに回線番号等を通知することで、対象機器との間にセッションを確立させる(S102)。ここでは、通話を行うためにセッションを確立したため、当該セッションに設定されているメディアタイプは音声となっている。
【0051】
セッションを確立した後では、当該セッションを介して、ファクシミリ装置1と対象機器との間で音声データの送受信が可能となる(S103)。これにより、ユーザは、電話をかけた相手と通話を行うことができる。
【0052】
次に、通話中にユーザがファクシミリを送信する場合について説明する。ユーザが画像読取部11に原稿をセットして操作部15のスタートキーを押すことにより、ファクシミリの送信指示がファクシミリ装置1に対して出力される(S104)。ファクシミリ装置1は、この指示を受けて、画像読取部11に原稿の読取りを行わせる(S105)。これにより、送信する原稿の画像データ及びデータ量を取得することができる。
【0053】
本体制御部10は、取得したデータ量及びフラッシュメモリ17が記憶している料金設定に基づいて、前記単独通信時の予測料金(以下、単独通信料金と称する)と、前記並行通信時の予測料金(以下、並行通信料金と称する)と、を求める(S106)。
【0054】
フラッシュメモリ17が記憶する料金設定において、例えば複数種類の通信を同時に行うときの通信料金が高く設定されている場合、並行通信料金が高くなることが一般的である。しかし、並行通信の場合には通信速度の大きな帯域を使用することが考えられるため、通信時間が短くなり、結果として単独通信料金よりも並行通信料金の方が低料金となる場合も考えられる。このように、単独通信及び並行通信のどちらの送信方法を用いれば料金が安くなるかは、料金設定及び通信環境等に応じて異なる。
【0055】
そして、ファクシミリ装置1は、図3に示すように、算出した予測料金及び送信方法の選択画面を表示部16に表示する(S107)。図3の表示部16には、通話をしながらファクシミリを送信するとき(並行通信時)の予測料金(並行通信料金)と、通話を終了してファクシミリを送信するとき(単独通信時)の予測料金(単独通信料金)と、が表示されている。ユーザは、操作部15の方向キーを操作することにより、送信方法を囲っている枠を移動させることができる。そして、ユーザが希望する送信方法に枠を合わせて決定キーを押すことにより、送信方法が選択(決定)される。
【0056】
なお、所定のキーを押すことにより、図4に示すように、所定時間あたりの通信料金を表示したり、今月の累計料金を表示したりするように構成しても良い。
【0057】
次に、ユーザが「通話をしながらファクシミリを送信」を選択したときの流れについて説明する。この場合、図2(a)に示すように、ファクシミリ通信及び通話が並行して行われる。ファクシミリ装置1は、ユーザの選択を受けて(S108)、セッションのメディアタイプにデータを追加する(S109)。これにより、現在のセッションに設定されたメディアタイプは、音声及びデータとなる。これにより、ファクシミリ装置1は、画像読取部11が読み取った画像データを対象機器に対して送信することができる。そして、ファクシミリ装置1は、対象機器にファクシミリを送信する(S111)。
【0058】
ファクシミリ装置1は、ファクシミリの送信が完了(S112)した後に、通話をしながらファクシミリを送信したか否かの判断を行う(S113)。今回の説明では通話をしながらファクシミリを送信したため、ファクシミリ装置1は、セッションに設定されたメディアタイプのうちデータを削除する(S114)。これにより、現在のセッションに設定されたメディアタイプは、音声のみとなる。そして、ファクシミリ装置1は、通話が終了した(S115)後に、セッションを切断する(S116)。
【0059】
次に、ユーザが「通話を終了してファクシミリを送信」を選択したときの流れについて説明する。この場合、図2(b)に示すように、通話を終了してファクシミリ通信が行われる。ファクシミリ装置1は、ユーザの選択を受けて、メディアタイプを音声からデータに切り替える(S110)。これにより、音声による通話は終了し、セッションに設定されたメディアタイプはデータのみとなる。
【0060】
そして、上記と同様にファクシミリの送信が完了したときに、ファクシミリ装置1は、通話をしながらファクシミリを送信したか否かの判断を行う(S113)。今回の説明では、通話を終了してファクシミリを送信したため、S114及びS115の処理は行われずに、セッションが切断される(S116)。
【0061】
以上のようにして、単独通信時及び並行通信時の予測料金等をユーザに知らせることができるとともに、ユーザに選択された送信方法を用いて、ファクシミリを送信することができる。
【0062】
なお、上記では、通話中にファクシミリ通信を行う場合に予測料金を表示する方法について説明したが、ファクシミリ通信中に通話を行う場合は、通話がどの時点で終了するかが不明なので、料金の予測が困難である。従って、この場合は、例えば、ファクシミリ通信中に同時に通話を行ったときの所定時間当たりの料金と、ファクシミリ通信後に通話を行ったときの所定時間あたりの料金と、を表示するようにすれば、ユーザに有益な手掛かりを与えることができる。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態のファクシミリ装置1は、通信部18と、本体制御部10と、表示部16と、を備える。通信部18は、通話及びファクシミリ通信を実行可能であって、単独通信と、並行通信と、をそれぞれ実行可能である。本体制御部10は、単独通信料金と並行通信料金とを算出可能である。表示部16は、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する旨の指示を受けたときに、本体制御部10が求めた単独通信料金と並行通信料金とを表示する。
【0064】
これにより、ユーザは、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する指示を行うだけで(料金を表示するための特別な操作を行うことなく)、料金の目安を知ることができる。従って、ユーザは、単独通信を行うか並行通信を行うかの選択の手がかりを得ることができるので、適切な選択を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態のファクシミリ装置1においては、通信部18は、単独通信及び並行通信のうちユーザによって選択された方に伴う処理を行う。
【0066】
これにより、例えば料金の安さを優先したり通信の迅速性を優先したりする等、ユーザの希望に柔軟に対応した処理を行うことができる。
【0067】
また、本実施形態のファクシミリ装置1は、原稿の画像情報を読み取る画像読取部11を備える。本体制御部10は、画像読取部11が読み取った原稿のデータ量と、通信の速さを示す通信帯域と、に基づいて料金を求める。
【0068】
これにより、データ量及び通信帯域に基づいて料金が設定されたサービスに対応することができる。また、事前に原稿を読み取ってデータ量を取得することで、より具体的な料金を求めることができる。
【0069】
また、本実施形態のファクシミリ装置1においては、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する旨の指示を受けたときに、表示部16は、単独通信及び並行通信の何れを行うかを選択するための選択画面を表示する。
【0070】
これにより、ユーザは、通話及びファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方を使用する指示を行うだけで(選択画面を表示するための特別な操作を行うことなく)、選択画面を表示させることができる。従って、ユーザが行う操作を簡単にすることができる。
【0071】
また、本実施形態のファクシミリ装置1は、通話及びファクシミリ通信に掛かった料金を記憶するフラッシュメモリ17を備える。
【0072】
これにより、所定期間(例えば今月)の通信料金の目安をユーザに知らせることができる。
【0073】
上記実施形態の変形例について図7を参照して説明する。図7は、変形例における、通話中にファクシミリの送信を指示するときの処理を示すフローチャートである。なお、図7のフローチャートと図5のフローチャートとの相違点は、図7にはS107に対応する処理がないこと、及び、S108とS207とで処理が異なること、だけである。従って、本変形例では、上記の処理を重点的に説明し、他の処理については説明を省略する。
【0074】
上記実施形態では、ユーザが送信方法を選択する構成であるが、本変形例では、予測料金の安い送信方法をファクシミリ装置1が自動的に選択する構成である。従って、本変形例では、送信料金の表示を行わない構成となっている。
【0075】
また、本変形例では、S207において、ユーザではなくファクシミリ装置1が送信方法の選択を自動的に行う。この選択は、S206において算出した予測料金に基づいて行われる。即ち、ファクシミリ装置1は、単独通信料金及び並行通信料金のうち、算出した料金が安くなるものを自動的に選択し、当該選択に応じた通信を行うように構成されている。なお、S211以降の処理は、図6に示したS112以降と同等であるため、記載を省略する。
【0076】
この構成により、単独通信か並行通信かをユーザが選択する手間を省きつつ、通話及びファクシミリ通信に掛かる料金を安くすることができる。
【0077】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0078】
予測料金の表示方法は一例であり、単独通信料金と並行通信料金とに加え、例えば、「通話を終了してファクシミリを送信する場合、X円節約できます」というように、2通りの料金の差額を計算して表示するようにしても良い。
【0079】
ファクシミリ装置1は、ファクシミリ通信機能以外に、例えばコピー機能やスキャナ機能、プリンタ機能等を備えた多機能周辺装置(Multi Function Peripheral)として構成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ファクシミリ装置
10 本体制御部(演算部)
11 画像読取部
17 フラッシュメモリ(料金情報記憶部)
18 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話及びファクシミリ通信を実行可能であって、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方に切り替えて使用する単独通信と、前記一方の使用中に前記他方を並行して使用する並行通信と、をそれぞれ実行可能な通信部と、
前記単独通信によって発生する前記他方の料金である単独通信料金と、前記並行通信によって発生する前記他方の料金である並行通信料金と、を算出可能な演算部と、
前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち前記一方の使用中に前記他方を使用する旨の指示を受けたときに、前記演算部が求めた前記単独通信料金と前記並行通信料金とを表示する表示部と、
を備えることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファクシミリ装置であって、
前記単独通信及び前記並行通信のうち何れかがユーザによって選択された場合、前記通信部は、当該選択に伴う処理を行うことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファクシミリ装置であって、
原稿の画像情報を読み取る画像読取部を備え、
前記演算部は、前記画像読取部が読み取った原稿のデータ量と、通信の速さを示す通信帯域と、に基づいて料金を求めることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のファクシミリ装置であって、
前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち前記一方の使用中に前記他方を使用する旨の指示を受けたときに、
前記表示部は、前記単独通信及び前記並行通信の何れを行うかを選択させるための選択画面を表示することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のファクシミリ装置であって、
料金情報記憶部を備え、
前記料金情報記憶部は、通話及びファクシミリ通信に掛かった料金を記憶することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項6】
通話及びファクシミリ通信を実行可能であって、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち一方の使用中に他方に切り替えて使用する単独通信と、前記一方の使用中に前記他方を並行して使用する並行通信と、をそれぞれ実行可能な通信部と、
前記単独通信によって発生する前記他方の料金である単独通信料金と、前記並行通信によって発生する前記他方の料金である並行通信料金と、を算出可能な演算部と、
を備え、
前記通信部は、前記通話及び前記ファクシミリ通信のうち前記一方の使用中に前記他方を使用する旨の指示を受けたときに、前記演算部が算出した前記単独通信料金と前記並行通信料金とに基づいて、前記単独通信及び前記並行通信のうち料金が安い方を自動的に実行することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のファクシミリ装置であって、
前記通話中にファクシミリ通信に切り替えて通信を行うことを前記単独通信とし、
前記通話中に前記ファクシミリ通信を並行して行うことを前記並行通信とすることを特徴とするファクシミリ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−46236(P2013−46236A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182773(P2011−182773)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】