説明

ファンモータ及び電子機器

【課題】性能が安定し、メーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が高く、コストが抑えられるファンモータ及びこれを備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】プロペラ111と、プロペラ111を駆動するためのモータと、プロペラ111及びモータを囲繞するハウジング12とを備えたファンモータ1において、ハウジング12には、通風方向の一方の先端側(矢印Xの方向の先端側)に、所定の通気孔124aを有するファンプレート124が一体に形成されている。また、ファンプレート124は係止部124bを備え、モータに接続する導線113は、係止部124bによってファンプレート124に沿って係止され、外部に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータ及びこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の処理能力の向上、小型化の進展はめざましく、電子回路を用いた電子機器の利用分野は拡大の一途をたどっている。電子機器においては、半導体部品などの発熱に基づく内部の温度の上昇を低減することが、寿命の長期化、信頼性の向上のために不可欠である。そのため、一般の電子機器は、内部の温度の上昇を抑えるためのファンユニットを備えているものが多い。このファンユニットに関連する発明は以前より多くなされており、その一例を特許文献1に見ることができる。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、ファン及びファンを駆動するためのモータを支持する内枠部材と、内枠部材の外周面の略全体を覆う、モータに電源を供給するための電源供給コネクタが備えられた外枠部材と、内枠部材にはめ込まれた防振部材を貫通し、内枠部材の外周面と外枠部材の内周面とが当接しないように内枠部材と外枠部材とを固定する固定部材とを備えたファンユニットに関するものである。
【0004】
特許文献1に記載の発明によると、モータを支持している内枠部材が防振部材を介して外枠部材に、内枠部材の外周面と外枠部材の内周面とが当接しないように固定されているので、ファンユニットの振動が電子機器などの装置の筐体に伝達されるのを抑制することができ、その結果、騒音や、電源供給コネクタの歪み・変形などを抑制することができる。
【0005】
また、ファンユニットについては、電子機器などの装置への取り付け構造に関連する発明も以前より多くなされており、その一例を特許文献2に見ることができる。
【0006】
特許文献2に記載の発明は、ファンと、ファンを囲繞するハウジングとを備えたファンユニットの、切り欠き凹部を備えた取り付け基板への取り付け構造に関するものであり、ハウジングと嵌合する保持枠と、取り付け基板の切り欠き凹部の左右内縁を圧入保持する圧入溝とを備えたホルダを用いて、ファンユニットを取り付け基板へ取り付けることとしている。
【0007】
特許文献2に記載の発明によると、ねじやビスなどの固定具を用いることなく容易に、ファンユニットを取り付け基板へ取り付けることができるので、取り付け作業の作業性を向上させることができる。また、ファンユニットを上側に引き抜くだけで、ファンユニットを取り付け基板から取り外すことができるので、ファンユニットの交換が容易となる。
【特許文献1】特開2004−241655号公報
【特許文献2】特開2003−304085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来においては、プロペラと、プロペラを駆動するためのモータと、プロペラ及びモータを囲繞するハウジングとを備えたファンモータは、ファンホルダとの嵌合が行われた上で、電子機器などの装置に取り付けられてきた。ここで、ファンホルダは、通風方向の一方の面が、所定の通気孔を有するファンプレートで形成されており、プロペラ回転時の風の流路を確保しつつ、人の手やほこりなどの進入を防ぐことなどを目的としてファンモータと嵌合される。
【0009】
しかしながら、従来においては、ファンモータとファンホルダとは別部材であって、電子機器などの装置に取り付けられる際に嵌合されるので、ファンモータとファンホルダとの嵌合状態の良否に応じて騒音レベルが大きく変化してしまい、性能が安定しないという問題があった。また、ファンモータとファンホルダとの相性によって、騒音、風量、静圧などが大きな影響を受ける場合があり、ファンモータのメーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が低いという問題もあった。
【0010】
また、ファンモータとファンホルダとを嵌合可能な構成とする必要があるので、電子機器などの装置の内部の温度の上昇を抑えるという本来の目的からは外れた、嵌合のための部材が多く必要となり、そのためにコストアップするという問題もあった。また、ファンホルダの製作に必要な金型費用のためにコストアップするという問題もあった。
【0011】
上記の問題点を鑑みて、本発明においては、性能が安定し、メーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が高く、コストが抑えられるファンモータ及びこれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては、電子機器は、ファンモータを備えた電子機器であって、前記ファンモータは、プロペラと、前記プロペラを駆動するためのモータと、前記プロペラ及び前記モータを囲繞するハウジングとを備えたファンモータであって、前記ハウジングには、通風方向の一方の先端側に、所定の通気孔を有するファンプレートが一体に形成されており、前記ファンプレートは係止部を備え、前記モータに接続する電源供給部材は、前記係止部によって前記ファンプレートに沿って係止され、前記ファンモータの外部に導かれることを特徴とする。
【0013】
これによると、性能が安定し、メーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が高く、コストが抑えられるファンモータを備えた電子機器が提供される。
【0014】
本発明においては、ファンモータは、プロペラと、前記プロペラを駆動するためのモータと、前記プロペラ及び前記モータを囲繞するハウジングとを備えたファンモータにおいて、前記ハウジングには、通風方向の一方の先端側に、所定の通気孔を有するファンプレートが一体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、本発明のファンモータにおいては、プロペラ及びモータを囲繞するハウジングには、通風方向の一方の先端側に、所定の通気孔を有するファンプレートが一体に形成されている。そのため、ファンモータのハウジングに一体に形成されたファンプレートによって、プロペラ回転時の風の流路を確保しつつ、人の手やほこりなどの進入を防ぐことなどが可能となり、ファンホルダが不要となる。したがって、ファンモータとファンホルダとを嵌合する必要が無くなるので、従来の方法における、ファンモータとファンホルダとの嵌合状態の良否に応じて騒音レベルが大きく変化してしまうという問題が解消される。また、ファンモータとファンホルダとを嵌合する必要が無くなるので、従来の方法における、ファンモータとファンホルダとの相性によって、騒音、風量、静圧などが大きな影響を受ける場合があり、ファンモータのメーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が低いという問題も解消される。また、ファンモータとファンホルダとを嵌合する必要が無くなるので、従来の方法における、電子機器などの装置の内部の温度の上昇を抑えるという本来の目的からは外れた、嵌合のための部材が多く必要となり、そのためにコストアップするという問題も解消される。また、ファンホルダが不要となるので、従来の方法における、ファンホルダの製作に必要な金型費用のためにコストアップするという問題も解消される。以上より、性能が安定し、メーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が高く、コストが抑えられるファンモータが提供される。
【0016】
本発明においては、上記構成のファンモータにおいて、前記ファンプレートは係止部を備え、前記モータに接続する電源供給部材は、前記係止部によって前記ファンプレートに沿って係止され、外部に導かれることが望ましい。
【0017】
これによると、本発明のファンモータにおいては、上記構成のファンモータにおいて、ファンプレートは係止部を備え、モータに接続する電源供給部材は、係止部によってファンプレートに沿って係止され、外部に導かれる。したがって、ケーブルや導線などの電源供給部材がプロペラに絡まることなく外部の電源に接続できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、性能が安定し、メーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が高く、コストが抑えられるファンモータ及びこれを備えた電子機器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明すれば以下の通りである。
【0020】
まず、本発明の実施形態に係るファンモータ1について、図1から図3を用いて説明する。図1(a)は、本発明の実施形態に係るファンモータ1を示す斜視図であり、図1(b)は、本発明の実施形態に係るファンモータ1を、図1(a)における矢印Xの方向(通風方向)から見た様子を示す平面図である。ファンモータ1は、ファン11と、ハウジング12とを有している。
【0021】
図2は、ファン11の詳細を示す説明図である。ファン11は、プロペラ111と、モータ112と、導線113(電源供給部材)とを有している。プロペラ111は合成樹脂などからなり、複数枚の羽(図2では5枚)が、円筒状のボス部と一体に形成されたものである。モータ112は、プロペラ111の円筒状のボス部の中空部に備えられており、その底面からは、導線113が延びている。そして、図1(a)における矢印Xの方向と、図2における矢印Xの方向とが一致するように、ファン11がハウジング12に取り付けられる。
【0022】
図3は、ファン11を取り除いた状態のファンモータ1、つまり、ハウジング12を、図1(a)における矢印Xの方向から見た様子を示す平面図である。ハウジング12は、ベース121と、側壁122とスポーク123と、ファンプレート124とを有し、これらは一体に形成されている。また、ハウジング12は、導線孔125と、取り付け孔126とを有している。
【0023】
ベース121は、プロペラ111の円筒状のボス部と、モータ112とが載置される部分である。側壁122は、ファン11の通風方向に平行な4面によって構成される筒状の囲いである。スポーク123は放射状に形成され、ベース121と、側壁122とを連結するものである。
【0024】
ファンプレート124は、ハウジング12の矢印Xの方向の先端側に形成された面であり、通気孔124aと、係止部124bとを有している。ここで、通気孔124aは、プロペラ111回転時の風の流路を確保するためのものである。
【0025】
係止部124bは、ファンプレート124において、矢印Xの反対方向から形成された凹部であり、モータ112の底面より延びている導線113を、ファンプレート124に沿って係止しつつ、導線孔125に導くためのものである。
【0026】
以下、この詳細を図4を用いて説明する。図4は、導線113の経路を示す断面図である。図4に示すように、モータ112の底面より延びている導線113は、係止部124bにおいてファンプレート124の外部に通される。そして、その後、導線孔125に導かれる。
【0027】
導線孔125は、側壁122の、ファンプレート124と対向する側の面から、矢印Xの方向に貫通され、側壁122のファンプレート124側の面の近傍に至り、その後、側壁122の内側に貫通されたL字状の孔である。そして、導線113は、この導線孔125を通って、側壁122の、ファンプレート124と対向する側の面からファンモータ1の外部に導かれる。
【0028】
取り付け孔126は、側壁122の、ファンプレート124と対向する側の面の4隅に設けられている。そして、取り付け孔126にねじやビスなどを通すことによって、ファンモータ1を電子機器などの装置に取り付けることとなる。
【0029】
図5は、ファンモータ1を備えた電子機器1000の様子を示す説明図である。図5においては、ファンモータ1は、電子機器1000の筐体の外部に、取り付け孔126を用いて取り付けられている。図5より、ファンプレート124によって、プロペラ111回転時の風の流路を確保しつつ、人の手やほこりなどの進入を防ぐことができることが分かる。
【0030】
なお、上記図1から図5においては、説明の都合上一部の部材を省略した。例えば、図1(a)においては、通気孔124aからプロペラ111が覗いているはずであるが、これを省略した。また、図1(b)においては、プロペラ111の羽は5枚見えるはずであるが、3枚のみ示している。
【0031】
上記の通り、本実施形態に係るファンモータ1においては、プロペラ111及びモータ112を含むファン11を囲繞するハウジング12には、通風方向の一方の先端側(矢印Xの方向の先端側)に、所定の通気孔124aを有するファンプレート124が一体に形成されている。そのため、ハウジング12に一体に形成されたファンプレート124によって、プロペラ111回転時の風の流路を確保しつつ、人の手やほこりなどの進入を防ぐことなどが可能となり、ファンホルダが不要となる。
【0032】
したがって、ファンモータとファンホルダとを嵌合する必要が無くなるので、従来の方法における、ファンモータとファンホルダとの嵌合状態の良否に応じて騒音レベルが大きく変化してしまうという問題が解消される。また、ファンモータとファンホルダとを嵌合する必要が無くなるので、従来の方法における、ファンモータとファンホルダとの相性によって、騒音、風量、静圧などが大きな影響を受ける場合があり、ファンモータのメーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が低いという問題も解消される。
【0033】
また、ファンモータとファンホルダとを嵌合する必要が無くなるので、従来の方法における、電子機器などの装置の内部の温度の上昇を抑えるという本来の目的からは外れた、嵌合のための部材が多く必要となり、そのためにコストアップするという問題も解消される。また、ファンホルダが不要となるので、従来の方法における、ファンホルダの製作に必要な金型費用のためにコストアップするという問題も解消される。以上より、性能が安定し、メーカーが示した騒音、風量、静圧などのデータに対する信頼性が高く、コストが抑えられるファンモータ1が提供される。
【0034】
また、本実施形態に係るファンモータ1においては、ファンプレート124は係止部124bを備え、モータ112に接続する導線113は、係止部124bによってファンプレート124に沿って係止され、ファンモータ1の外部に導かれる。したがって、導線113がプロペラ111に絡まることなく外部の電源に接続できることとなる。
【0035】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、プロペラ111は、5枚の羽で構成されていたが、7枚などであってもよい。また、ファンモータ1は、電子機器1000の筐体の外部でなく内部に取り付けることももちろん可能である。また、ファンプレート124は、ハウジング12の矢印Xの方向の先端側でなく、矢印Xの反対方向の先端側に一体に形成することももちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ファンモータ及びこれを備えた電子機器として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態に係るファンモータ1を示す斜視図、図1(b)は、本発明の実施形態に係るファンモータ1を、図1(a)における矢印Xの方向から見た様子を示す平面図。
【図2】ファン11の詳細を示す説明図。
【図3】ファン11を取り除いた状態のファンモータ1、つまり、ハウジング12を、図1(a)における矢印Xの方向から見た様子を示す平面図。
【図4】導線113の経路を示す断面図。
【図5】ファンモータ1を備えた電子機器1000の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0038】
1 ファンモータ
111 プロペラ
112 モータ
113 導線(電源供給部材)
12 ハウジング
124 ファンプレート
124a 通気孔
124b 係止部
1000 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンモータを備えた電子機器であって、
前記ファンモータは、
プロペラと、
前記プロペラを駆動するためのモータと、
前記プロペラ及び前記モータを囲繞するハウジングとを備えたファンモータであって、
前記ハウジングには、通風方向の一方の先端側に、所定の通気孔を有するファンプレートが一体に形成されており、
前記ファンプレートは係止部を備え、
前記モータに接続する電源供給部材は、前記係止部によって前記ファンプレートに沿って係止され、前記ファンモータの外部に導かれることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
プロペラと、
前記プロペラを駆動するためのモータと、
前記プロペラ及び前記モータを囲繞するハウジングとを備えたファンモータにおいて、
前記ハウジングには、通風方向の一方の先端側に、所定の通気孔を有するファンプレートが一体に形成されていることを特徴とするファンモータ。
【請求項3】
前記ファンプレートは係止部を備え、
前記モータに接続する電源供給部材は、前記係止部によって前記ファンプレートに沿って係止され、外部に導かれることを特徴とする請求項2に記載のファンモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−324374(P2007−324374A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153073(P2006−153073)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】