説明

フィブラート系薬剤を含有する製剤及びその製造方法

【課題】投与量が少なくても、トリグリセライド、遊離脂肪酸、フィブリノーゲンなどの血中濃度を有効に低減可能な製剤を提供する。
【解決手段】スタチン系薬剤のうちベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物(ピタバスタチンなど)と、フィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)とを組み合わせて製剤を調製する。スタチン系薬剤中、前記スタチン系化合物(ピタバスタチンなど)の含有量は10〜100重量%程度であってもよく、前記スタチン系化合物(ピタバスタチンなど)1重量部に対するフィブラート系薬剤の割合は1〜500重量部程度であってもよい。製剤は、前記活性成分(スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤)と、生理学的に許容可能な担体とを用いて調製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤とを含み、メタボリックシンドローム、高脂血症、糖尿病、糖尿病合併症などの予防及び/又は治療剤として有用な製剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スタチン系薬剤は、コレステロール生合成経路の律速酵素であるヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)還元酵素を阻害することにより、コレステロールの合成を抑制する作用を有しており、高脂血症の予防・治療剤として広く用いられている。代表的なスタチン系薬剤として、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチンなどが知られている。これらのスタチン系薬剤は血中の総コレステロール、低密度リポタンパク結合性(LDL)コレステロール濃度を低減する効果が比較的高い。しかし、血中のトリグリセライド濃度を低減する活性及び高密度リポタンパク結合性(HDL)コレステロールを増大させる活性はさほど大きくない。
【0003】
そのため、総コレステロール、LDL−コレステロール及びトリグリセライド濃度を低減でき、しかもHDL−コレステロール濃度を上昇できる製剤(又は薬剤)が求められている。特に、少ない投与量で上記薬理活性を示す安全性の高い製剤(医薬組成物)が求められている。
【0004】
一方、フィブラート系薬剤は、肝臓でのトリグセリド合成ないし分泌を抑制することにより、LDLコレステロール及びトリグリセライドを低下させるとともにHDLコレステロールを上昇させる活性を有しており、高脂血症の予防・治療剤として知られている。しかし、フィブラート系薬剤は血中の総コレステロール低減活性はさほど大きくない。
【0005】
なお、スタチン系薬剤及びフィブラート系薬剤は、単独で用いるほか、様々な薬剤と組み合わせることが知られている。例えば、(1)フェノフィブラート及びベザフィブラートと糖尿病治療剤として知られるメトホルミンとを組み合わせたインスリン非依存性糖尿病による高血糖症を緩和するための医薬組成物(例えば、特許文献1参照)、(2)フェノフィブラート、ベザフィブラート、クリノフィブラート等とコレステリルエステル転送タンパク質阻害化合物とを組み合わせた高脂血症、アテローム性動脈硬化症又は高コレステロール血症治療剤(例えば、特許文献2参照)、(3)フェノフィブラート、ベザフィブラート、クリノフィブラート等と回腸胆汁酸輸送阻害化合物とを組み合わせた高脂血症、アテローム性動脈硬化症又は高コレステロール血症治療剤(例えば、特許文献3参照)、(4)ロバスタチン、セリバスタチン等とβ遮断薬とを組み合わせたアテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症及び高リポタンパク質血症の予防・治療剤(例えば、特許文献4参照)、(5)プラバスタチン、セリバスタチン等とインスリン抵抗性改善薬として知られているピオグリタゾン等とを組み合わせることによる炎症性疾患の予防・治療剤として有用なTNF−α抑制剤(例えば、特許文献5参照)、(6)プラバスタチン、シンバスタチン等と高血圧治療剤であるアムロジピンとを組み合わせた狭心症、アテローム硬化症又は高血圧と高脂血症の合併症の治療剤(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0006】
また、特開2004−523552号公報(特許文献7)には、フィブラートのバイオアベイラビリティを実質的に向上させ、絶食患者で吸収される薬物の活性種の量と、摂食患者での薬物の活性種の量との差異を実質的に低減することを目的とし、スタチンと、リン脂質表面活性物質により安定化されているフェノフィブラート微粒子との組み合わせを含有する剤形であって、スタチンとフェノフィブラートによる処置を必要としている患者に、治療的に有効な用量のスタチンと、治療的に有効な分量のフェノフィブラート活性種とを提供し、絶食時の前記患者へのフェノフィブラート活性種の該分量が、脂肪含有食を摂食時の前記患者への前記量により提供されるフェノフィブラート活性種の分量の少なくとも80%である剤形が開示されている。特表2005−512516号公報(特許文献8)には、同時投与薬物処置を必要としている患者に対する同時投与のためにスタチン及び非スタチン薬物を適切に選択するための方法が開示されている。WO2005/034908号公報(特許文献9)には、活性物質としてのフィブラート及びスタチン又はその薬理学的に活性な塩を含む粒状材料であって、活性物質の全量の少なくとも80w/w%が、疎水性、親水性及び水混和性ベヒクルからなる群より選択されたベヒクルに溶解している材料が開示されており、この材料がフィブラート及び/又はスタチンのバイオアベイラビリティを向上できると記載されている。また、「診療と新薬」第40巻、第9号(2003年9月)第779〜785頁(非特許文献1)には、ピタバスタチン4mg1日1回6日間投与とフェノフィブラート160mg1日1回又はゲムフィブロジル600mg1日2回7日間併用投与した時の薬物動態パラメータを比較し、薬物相互作用の有無を検討した結果、併用してもピタバスタチン未変化体の血中濃度が過度に上昇する可能性は低く、薬物相互作用の程度が低いことが記載されている。
【0007】
しかし、これらの文献には、HMG−CoA還元酵素阻害薬としてのベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物(ピタバスタチンなど)とフィブラート系薬剤とを組み合わせた製剤(医薬製剤など)は具体的に開示されていない。
【特許文献1】特表2002−502869号公報
【特許文献2】特表2002−533410号公報
【特許文献3】特表2002−533413号公報
【特許文献4】特表2003−528928号公報
【特許文献5】特開2001−294537号公報
【特許文献6】特開2001−514224号公報
【特許文献7】特開2004−523552号公報(請求項1及び段落番号[0062])
【特許文献8】特表2005−512516号公報(請求項1)
【特許文献9】WO2005/034908号公報(請求項1)
【非特許文献1】「診療と新薬」第40巻、第9号(2003年9月)第779〜785頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、トリグリセライドの血中濃度を有効に低減可能な製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、遊離脂肪酸の血中濃度を大幅に低減可能な製剤を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、フィブリノーゲンの血中濃度を顕著に低減することができ、血栓の形成を抑制して、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの糖尿病関連疾患の治療又は予防に有効な製剤を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、総コレステロール、LDL−コレステロール及びトリグリセライドの血中濃度を低減し、HDL−コレステロールの血中濃度を有効に上昇可能な製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、投与量が少なくても前記活性を有効に発現できる製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、安全性の高い併用医薬製剤(合剤)及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、スタチン系薬剤のうちベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物(ピタバスタチンなど)とフィブラート系薬剤とを組み合わせて投与すると、(i)トリグリセライドの血中濃度を有効に低減できること、(ii)遊離脂肪酸及び/又はフィブリノーゲンの血中濃度を有効に低減できること、(iii)遊離脂肪酸及び/又はフィブリノーゲンの血中濃度を有効に低減できるとともに、さらにトリグリセリドの血中濃度を低減できること、さらには(iv)総コレステロール、LDL−コレステロールの血中濃度を有効に低減できるだけでなく、HDL−コレステロールの血中濃度を有効に上昇できることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の製剤(又は医薬組成物)は、ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物で少なくとも構成されたスタチン系薬剤と、フィブラート系薬剤とを含んでいる。前記製剤において、前記スタチン系化合物1重量部に対してフィブラート系薬剤の割合が1〜500重量部(但し、ピタバスタチン1重量部に対してフェノフィブラート1重量部の割合を除く)である。前記製剤において、スタチン系化合物及びフィブラート系薬剤の含有量は、製剤全体に対して、固形分換算で、0.01〜99重量%程度であってもよい。
【0016】
前記フィブラート系薬剤は、ベザフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、クロフィブラートアルミニウム、フェノフィブラート、シンフィブラート、フェノフィブリン酸、ゲムフィブロジル又はそれらの塩から選択された少なくとも一種であってもよい。
【0017】
前記スタチン系化合物は、前記ベンゾピリジン骨格に、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、C6−10アリール基、及びハロゲン化C6−10アリール基から選択された少なくとも一種の置換基を有していてもよい。このようなスタチン系化合物には、ベンゾピリジン骨格に前記置換基を有していてもよいベンゾピリジルエチル基又はベンゾピリジルビニル基などを有する3,5−ジヒドロキシペンタン酸又はその誘導体などであってもよい。この誘導体としては、前記3,5−ジヒドロキシペンタン酸の塩又はラクトン体(3−ヒドロキシ−δ−バレロラクトンなど)などが挙げられる。前記製剤において、スタチン系薬剤は、少なくともピタバスタチンで構成してもよい。スタチン系薬剤中、前記ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物(ピタバスタチンなど)の含有量は10〜100重量%程度であってもよい。前記スタチン系化合物(ピタバスタチンなど)とフィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)との重量割合は、例えば、前者1重量部に対して後者1〜500重量部(例えば、3〜300重量部)程度の範囲から選択でき、前者1重量部に対して後者5〜250重量部程度であってもよい。なお、製剤は、液剤などであってもよいが、通常、生理学的に許容可能な担体を含む固形製剤である場合が多い。
【0018】
本発明の製剤は、少なくとも前記スタチン系化合物で構成されたスタチン系薬剤と、フィブラート系薬剤と、生理学的に許容可能な担体とを用いて、慣用の方法で製造することができる。このような製造方法において、前記スタチン系薬剤1重量部に対して1〜500重量部の割合でフィブラート系薬剤(但し、ピタバスタチン1重量部に対してフェノフィブラート1重量部の割合を除く)を用いて製剤を製造する。
【0019】
また、本発明には、遊離脂肪酸及び/又はフィブリノーゲンの血中濃度を低減するための製剤であって、ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物で少なくとも構成されたスタチン系薬剤と、フィブラート系薬剤とを含む製剤も含まれる。このような製剤は、さらにトリグリセライドの血中濃度を低減するための製剤であってもよい。スタチン系薬剤は少なくともピタバスタチンで構成でき、前記スタチン系薬剤1重量部に対してフィブラート系薬剤の割合は1〜500重量部程度であってもよい。
【0020】
本発明の製剤は、特定のスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤とを組み合わせているため、(i)トリグリセライドの血中濃度を低減するのに有効である。(ii)また、遊離脂肪酸の血中濃度を大幅に低減できる。(iii)さらに、前記製剤では、フィブリノーゲンの血中濃度を低減することができ、高い抗血栓作用を有しているため、血小板、凝固線溶系の異常等により生じる血栓や、さらには、糖尿病、糖尿病合併症、メタボリックシンドロームなどの糖尿病に関連する疾患の治療又は予防に有用である。(iv)また、上記組み合わせにより、総コレステロール、LDL−コレステロール及びトリグリセライドの血中濃度を低減し、HDL−コレステロールの血中濃度を有効に増加させるのに有用である。
【0021】
なお、本明細書中、医薬(又は医薬製剤)は、医薬品、医薬部外品なども含む意味で用いる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、特定のスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤とを組み合わせているため、トリグリセリドの血中濃度を有効に低減可能である。また、本発明では、上記のような組み合わせにより、遊離脂肪酸及び/又はフィブリノーゲンの血中濃度を顕著に低減することができる。さらに、フィブリノーゲンの血中濃度を低減できるため、血栓の形成を抑制して、糖尿病、糖尿病合併症、メタボリックシンドロームなどの糖尿病に関連する疾病の治療又は予防に有用である。また、本発明では、遊離脂肪酸及び/又はフィブリノーゲンの血中濃度を低減できるとともに、トリグリセリドの血中濃度を低減することができる。さらに、本発明では、総コレステロール、LDL−コレステロール及びトリグリセライドの血中濃度を低減しつつ、HDL−コレステロールの血中濃度を有効に上昇可能である。しかも、投与量が少なくても前記活性を有効に発現できる。さらに、安全性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明では、スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤とを組み合わせ、合剤を構成する。スタチン系薬剤は、HMG−CoA還元酵素を阻害し、脂質改善作用、特に血中コレステロール類を低下させる成分又は薬剤であればよい。
【0024】
特に、本発明では、前記スタチン系薬剤を、ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物(以下、単にスタチン系化合物と称する場合がある)で少なくとも構成する。前記スタチン系化合物は、ベンゾピリジン骨格に置換基を有していてもよい。なお、ベンゾピリジン骨格とは、キノリン骨格及びイソキノリン骨格を含む意味で用いる。
【0025】
前記スタチン系化合物としては、ベンゾピリジン骨格として、キノリルエチル基などのベンゾピリジルC1−6アルキル基、キノリルビニル基などのベンゾピリジルC2−6アルケニル基などを有する3,5−ジヒドロキシペンタン酸又はその誘導体などが挙げられる。なお、この誘導体としては、前記3,5−ジヒドロキシペンタン酸のC1−6アルキルエステル(メチルエステルなど)、C1−6アルキルアミン(メチルアミンなど)とのアミド、塩又はラクトン体(すなわち、前記3,5−ジヒドロキシペンタン酸が閉環したラクトン体、例えば、3−ヒドロキシ−δ−バレロラクトンなど)などが挙げられる。これらの誘導体のうち、塩(例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの無機塩基との塩など)又はラクトンが好ましい。
【0026】
スタチン系化合物がベンゾピリジン骨格に有する置換基としては、例えば、メチル基などのC1−6アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル基などのC3−6シクロアルキル基;フェニル基などのC6−10アリール基;フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル基などのハロゲン化C6−10アリール基などが挙げられる。スタチン系化合物は、これらの置換基を1つ有していてもよく、同種又は異種の置換基を複数個有していてもよい。スタチン系化合物は、上記置換基のうち、特に、少なくともC3−5シクロアルキル基及び/又はフルオロC6−10アリール基を有するのが好ましい。
【0027】
前記スタチン系化合物のうち、ベンゾピリジン骨格に前記置換基を有していてもよいベンゾピリジルエチル基又はベンゾピリジルビニル基を有する3,5−ジヒドロキシペンタン酸(すなわち、7−ベンゾピリジル−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸又は7−ベンゾピリジル−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸)、特に、キノリルエチル又はキノリルビニル基を有する3,5−ジヒドロキシペンタン酸(すなわち、7−キノリル−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸又は7−キノリル−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸)、又はこれらの誘導体(無機塩基などとの塩、ラクトン体など)が好ましい。前記スタチン系化合物は、特に、ベンゾピリジン骨格に前記置換基(シクロプロピル基及び/又は4−フルオロフェニル基などのフルオロフェニル基など)を有するのが好ましい。
【0028】
このようなスタチン系化合物の具体例としては、(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−3−キノリル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸などの5−{2−[2−シクロプロピル−4−(p−フルオロフェニル)−3−キノリル]ビニル}−3,5−ジヒドロキシペンタン酸、あるいはその塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩[ピタバスタチン(又はピタバスタチンカルシウム)などのカルシウム塩など)など]又はそのラクトン体などが挙げられる。本発明では、スタチン系化合物、特に、スタチン系薬剤を少なくともピタバスタチンで構成するのが好ましい。
【0029】
本発明において、スタチン系薬剤は、少なくとも前記特定のスタチン系化合物で構成する限り特に制限されず、他のスタチン類(スタチン系活性成分)、例えば、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、又はそれらの塩(プラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物など)などを含有してもよい。これらの他のスタチン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
スタチン系薬剤中、ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物(ピタバスタチンなど)の割合(含有量)は、10〜100重量%(例えば、20〜95重量%)、好ましくは25〜100重量%(例えば、30〜90重量%)、さらに好ましくは50〜100重量%(例えば、60〜80重量%)程度であってもよい。
【0031】
フィブラート系薬剤(又はフィブラート系活性成分)は、脂質改善作用成分、特に血中トリグリセライド及び/又は血中コレステロールなどを低下させる成分又は薬剤であればよく、例えば、肝臓でのトリグリセライド合成ないし分泌を抑制し、リポタンパク質リパーゼを活性化することなどにより、脂質改善作用を示す化合物であってもよい。フィブラート系薬剤としては、例えば、ベザフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、シンフィブラート、フェノフィブリン酸、ゲムフィブロジル又はそれらの塩(クロフィブラートアルミニウムなど)などが例示できる。これらのフィブラート系薬剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
好ましいフィブラート系薬剤(又はフィブラート系活性成分)は、フェノフィブラート、ベザフィブラート、及びこれらの塩(生理学的又は薬学的に許容可能な塩など)、特にフェノフィブラートである。
【0033】
上記フィブラート系薬剤の塩及びスタチン系薬剤の塩(生理学的又は薬学的に許容可能な塩など)としては、前記例示の塩に限らず、例えば、無機又は有機塩基との塩、無機又は有機酸との塩、中性、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、アンモニウムなどが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;ピリジン、ピコリンなどの複素環式アミン;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン;ジシクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミン;N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどのアルキレンジアミン誘導体などが挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などのモノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、シュウ酸などの多価カルボン酸;酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸などのオキシカルボン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられる。中性アミノ酸としては、例えば、グリシン、バリン、ロイシンなどが挙げられ、塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどが挙げられ、酸性アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0034】
なお、前記スタチン系薬剤及びフィブラート系薬剤には、それぞれの活性化合物の誘導体(エステル、含水塩、水和物など)やプロドラッグも含まれる。前記スタチン系薬剤やフィブラート系薬剤は、光学活性体であってもよくラセミ体であってもよい。
【0035】
前記特定のスタチン系化合物(ピタバスタチンなど)とフィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)との重量割合は、前者/後者=0.01/99.99〜99/1(例えば、0.1/99.9〜90/10)程度の範囲からHDL−コレステロールを有意に上昇可能な範囲で選択できる。両者の割合は、前者/後者=0.5/99.5〜10/90程度であってもよい。前記スタチン系薬剤(又は前記スタチン系化合物(ピタバスタチンなど))とフィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)との割合は、通常、前記スタチン系薬剤(又はスタチン系化合物(ピタバスタチンなど))1重量部に対して、フィブラート系薬剤1〜500重量部程度から選択でき、例えば、3〜300重量部、好ましくは5〜250重量部(例えば、10〜250重量部)、さらに好ましくは15〜200重量部(例えば、20〜150重量部)程度である。但し、血中のコレステロール濃度及びトリグリセリド濃度を低減するための製剤において、ピタバスタチンとフェノフィブラートとの組み合わせにおいては、通常、ピタバスタチン1重量部に対してフェノフィブラート1重量部の割合は除かれる。前記スタチン系薬剤(又は前記スタチン系化合物(ピタバスタチンなど))とフィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)との割合は、前記スタチン系薬剤1重量部に対して、例えば、7〜120重量部、好ましくは10〜100重量部程度であってもよい。
【0036】
本発明の製剤は、他の高脂血症用薬(例えば、ニコモール、ニセリトロールなどのニコチン酸及びその誘導体;イオン交換薬;プロブコールなど)、抗狭心症薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬(中枢性αアゴニスト、末梢性交感神経抑制薬、自律神経節遮断薬、α遮断薬、前記β遮断薬などの交感神経抑制薬;血管拡張薬;前記Ca拮抗薬;ACE阻害薬;アンジオテンシンII受容体拮抗薬など)、昇圧薬、糖尿病薬、抗炎症剤、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEなど)、アミノ酸(システインなど)などを含んでいてもよい。
【0037】
本発明の製剤の形態は特に制限されず、固形製剤(粉剤、粒剤、丸剤、ピル、錠剤、カプセル剤、座剤など)、半固形製剤(クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤など)、液剤(溶液剤、懸濁剤、乳剤、グミ剤、シロップ剤、エリキシル剤、ローション剤、注射剤など)などであってもよい。なお、カプセル剤は、液体充填カプセルであってもよく、顆粒剤などの固形剤を充填したカプセルであってもよい。また、製剤は凍結乾燥製剤であってもよい。さらに、本発明の製剤は、薬剤の放出速度が制御された製剤(徐放性製剤、速放性製剤)であってもよい。
【0038】
さらに、製剤は経口投与製剤であってもよく非経口投与製剤であってもよい。さらに、製剤は局所投与製剤(溶液剤、懸濁剤、パップ剤など)であってもよい。本発明の製剤は固形製剤(特に経口投与製剤)である場合が多い。
【0039】
製剤は、通常、生理学的に許容可能な担体を含んでおり、この担体は、剤形、投与形態、用途などに応じて、例えば、局方及び「医薬品添加物辞典2000」(薬事日報社、2002年3月25日第2刷発行)に収載されている成分から選択できる。例えば、固形製剤の担体としては、賦形剤、結合剤および崩壊剤から選択された少なくとも一種の担体を使用する場合が多く、脂質などの添加剤を用いてもよい。
【0040】
前記賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類又は糖アルコール類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウムなどの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。結合剤としては、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン;寒天、アラビアゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールなどの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩(カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムなど)、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)など)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
液剤の担体のうち油性担体としては、動植物系油剤(ホホバ油、オリーブ油、やし油、綿実油などの植物系油剤;スクアランなどの動物系油剤など)、鉱物系油剤(流動パラフィン、シリコーンオイルなど)などが例示できる。水性担体としては、水(精製又は無菌水、注射用蒸留水など)、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、水溶性有機溶媒[エタノール、イソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール;(ポリ)アルキレングリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなど);グリセリンなど]、ジメチルイソソルビド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。また、半固形剤の担体は、前記固形製剤の担体及び/又は液剤の担体から選択してもよい。また、半固形剤の担体は、脂質を含んでいてもよい。
【0042】
脂質としては、ワックス類(蜜ろう、カルナバろう、ラノリン、パラフィン、ワセリンなど)、長鎖脂肪酸エステル(飽和又は不飽和脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸と多価アルコール(ポリC2−4アルキレングリコール、グリセリン又はポリグリセリンなど)とのエステル(グリセライドなど)など)、硬化油、高級アルコール(ステアリルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールなど)、高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸など)、金属石鹸類(例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩など)などが例示できる。
【0043】
添加剤としては、例えば、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)、崩壊助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、乳化剤(例えば、非イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤など)、分散剤、懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、pH調整剤又は緩衝剤(クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝剤など)、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤(安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類など)、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤(例えば、甘味剤など)、着色剤(ベンガラなどの染顔料など)、矯臭剤又は香料(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0044】
本発明の製剤は、特定のスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤とを組み合わせているため、単独のスタチン系薬剤やフィブラート系薬剤に比べて、トリグリセライドの血中濃度を有効に低減できる。また、上記の組み合わせにより、前記特定のスタチン系薬剤及びフィブラート系薬剤をそれぞれ単独で用いた場合に比べ、相乗的に遊離脂肪酸の血中濃度を低減することができる。さらに、上記組み合わせを用いると、血中のフィブリノーゲン濃度を低減することが可能であり、フィブリン凝固及び/又は血小板凝集に伴う血栓の形成を抑制することができる。特に、糖尿病に関連する疾患(糖尿病、糖尿病合併症、メタボリックシンドロームなど)では、血小板、凝固線溶系等の異常により、血小板の粘着能、凝集能などが亢進し、血栓が形成し易い。しかし、血栓の形成し易い状態であっても、上記組み合わせにより、フィブリノーゲンの血中濃度を低減できるため、高い抗血栓作用が得られ、糖尿病に関連する疾患の予防又は治療に有効である。また、上記組み合わせにより、トリグリセライドのみならず、総コレステロール及びLDL−コレステロールの血中濃度を有効に低減できる。しかも、HDL−コレステロールの血中濃度を有効に上昇させることができる。
【0045】
さらに、本発明の製剤(又は医薬組成物)は安全性が高い。例えば、臨床試験での他のスタチン系薬剤での有害事象の発現率が9%程度であるのに対して、前記スタチン系化合物(ピタバスタチンなど)及びフィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)の安全性が高く、有害事象の発現率を5〜6%程度に低減できる可能性がある。製剤中のスタチン系薬剤及びフィブラート系薬剤の割合は、適用又は投与対象、年齢及び体重、症状、投与回数、投与方法などに応じて選択できる。前記特定のスタチン系化合物(又はスタチン系薬剤)及びフィブラート系薬剤の含有量は主に投与量に依存し、例えば、製剤全体に対して、固形分換算で、例えば、0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%、さらに好ましくは1〜80重量%(例えば、5〜50重量%)程度であってもよい。製剤中の前記特定のスタチン系化合物(又はスタチン系薬剤)及びフィブラート系薬剤の含有量は、通常、5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%程度である。
【0046】
なお、本発明には、スタチン系薬剤を含む製剤とフィブラート系薬剤を含む製剤とを組み合わせたキットも含まれる。
【0047】
本発明の製剤は、前記スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤及び担体(生理学的に許容可能な担体など)を用いて慣用の製造方法により製造でき、例えば、固形剤は、有効成分(ピタバスタチンなどの特定のスタチン系化合物(又はスタチン系薬剤)及びフィブラート系薬剤)とともに、担体を用いて調製できる。例えば、顆粒剤は、押出造粒、噴霧造粒などにより有効成分と担体成分とを造粒し、必要により整粒することにより調製できる。錠剤は、前記造粒物を必要により担体及び/又は添加剤と混合し、圧縮成形することにより製造できる。また、粒剤や錠剤は、必要により、味のマスキング、胃溶性、腸溶性や持続性を付与するため自体公知の方法でコーティングしてもよい。カプセル剤は、カプセルに顆粒剤や液剤を充填することにより調製できる。
【0048】
液剤は、有効成分と、液状担体(精製水などの水性担体、油性担体など)と、必要により、固形又は半固形製剤の担体、添加剤(乳化剤、分散剤、懸濁剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、矯味剤、pH調整剤や緩衝剤など)とを混合(例えば、溶解、懸濁、乳化など)することにより調製でき、必要により滅菌処理される。
【0049】
半固形剤は、有効成分と、半固形剤の担体と、必要により添加剤とを、必要により加熱下、混合又は練合することにより調製できる。
【0050】
本発明の製剤の投与量及び投与スケジュールは、投与経路、患者の疾患の程度、患者の年齢、性別や体重などに応じて選択され、通常、少ない投与量であっても上記薬理活性を有効に発現できる。例えば、ピタバスタチンなどの特定のスタチン系化合物(又はスタチン系薬剤)の投与量は、1日当たり、成人に対して0.1〜10mg、好ましくは0.5〜7mg、さらに好ましくは1〜5mg程度であってもよく、フィブラート系薬剤の投与量は、1日当たり、成人に対して1〜500mg、好ましくは5〜300mg(例えば、10〜250mg)、さらに好ましくは30〜200mg(例えば、50〜150mg)程度であってもよい。
【0051】
なお、前記キットでは、投与形態は特に制限されず、例えば、スタチン系化合物を含む製剤とフィブラート系薬剤を含む製剤とを一緒に(同時に)投与してもよく、別々に投与に供してもよい。別々に投与する場合、両製剤のうち一方の製剤を投与した後、時間差をおいて他方の製剤を同一対象に投与してもよい。通常、予め投与した一方の製剤の活性成分の効果が持続している間に、他方の製剤を投与する場合が多い。スタチン系化合物とフィブラート系薬剤とを別々に投与する場合、両者を同時に投与したり、一方を含む製剤を投与した後、速やかに他方を含む製剤を投与するのが好ましい。また、スタチン系化合物を含む製剤とフィブラート系薬剤を含む製剤とを、投与に先立って(例えば、投与直前に)、混合(必要により希釈剤などを用いて混合)し、混合物として投与してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の製剤は、メタボリックシンドローム、高脂血症、糖尿病、糖尿病合併症などの予防及び/又は治療剤として有用である。特に、総コレステロール、LDL−コレステロール、トリグリセライド、遊離脂肪酸などの血中濃度を低減し、HDL−コレステロールの血中濃度を上昇させることができるため、高脂血症治療薬として有用である。また、フィブリノーゲンの血中濃度を低減できるため、血栓の形成を抑制して、糖尿病、糖尿病合併症、メタボリックシンドロームなどの糖尿病に関連する疾患の治療又は予防に有用である。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
実施例1(試験例)
ピタバスタチン(PIT)を餌に混ぜ、0.5mg/kg/dayの投与量で、正脂血ウサギに4週間与えた(PIT投与群)。また、フェノフィブラート(FEN)を餌に混ぜ、30mg/kg/dayの投与量で、正脂血ウサギに4週間与えた(FEN投与群)。さらに、PIT及びFENを餌に混ぜ、正脂血ウサギに4週間与えた(併用投与群)。なお、併用投与群では、PITの投与量は0.5mg/kg/day、FENの投与量は30mg/kg/dayとした。
【0055】
薬剤の最終投与後、1日絶食させ、耳介静脈から採血し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)処理を行って、血中を調製した。酵素法用アッセイキット(和光純薬工業(株)製)を用いて、酵素法により、血中の総コレステロール(TC)及びトリグリセライド(TG)濃度を測定した。また、血漿の一部を超遠心処理して、低密度リポタンパク(LDL)、超低密度リポタンパク(VLDL)及び中間密度リポタンパク(IDL)のリポタンパク画分に分離し、各リポタンパク中のコレステロールとTGとを測定した。採血後は、屠殺して、肝臓を摘出し、ホモジナイズして、酵素法により肝臓中のコレステロール含量を測定した。
【0056】
その結果、PIT及びFENをそれぞれ単独で投与したPIT投与群及びFEN投与群に比べ、PIT及びFENの双方を投与した併用投与群では、TC及びTGが顕著に低下していた。また、併用投与群では、PIT投与群及びFEN投与群から予想されるTC及びTGの低下率よりも、さらに低いTC及びTG値を示した。
【0057】
実施例2(試験例)
正脂血モルモットに、ピタバスタチン(PIT)を1mg/kg/dayの投与量で、2週間経口投与した(PIT投与群)。また、正脂血モルモットに、フェノフィブラート(FEN)を30mg/kg/dayの投与量で、2週間経口投与した(FEN投与群)。さらに、PIT及びFENを、正脂血モルモットに2週間経口投与した(併用投与群)。なお、併用投与群では、PITの投与量は1mg/kg/day、FENの投与量は30mg/kg/dayとした。
【0058】
薬剤の最終投与後、1日絶食させ、腹部大動脈から採血した血液を用いて、実施例1と同様に、血漿を調製し、TC及びTG値を測定するとともに、肝臓中のコレステロール含量も測定した。
【0059】
その結果、PIT及びFENをそれぞれ単独で投与したPIT投与群及びFEN投与群に比べ、PIT及びFENの双方を投与した併用投与群では、TC及びTGが顕著に低下していた。また、併用投与群では、PIT投与群及びFEN投与群から予想されるTC及びTGの低下率よりも、さらに低いTC及びTG値を示した。
【0060】
実施例3(試験例)
イヌにおけるフェノフィブラート(FEN)とピタバスタチン(PIT)との併用による血中脂質等の低下作用についての検討
(1)被験体
イヌ(雌雄薬研ビーグル雄11頭及び雌2頭,月齢27〜73ヵ月)を用いて試験を行った。なお、イヌは、室温23±3℃、湿度50±10%、明期8:00〜20:00及び暗期20:00〜8:00に設定したイヌ飼育室内で、ブラケットケージに1頭ずつ飼育した。また、餌として、CD−5M((株)日本クレア製)300gを1日1回摂取させた。なお、水道水は自由摂取させた。
【0061】
(2)被験物質および比較対照物質
被験物質として、フェノフィブラート(FEN)20mg/kg、ピタバスタチン(PIT)2mg/kgを用いた。
【0062】
(3)試験
投与開始前日の給餌から4時間後(Day0−4hr)及び24時間後(Day0−24hr)に、前腕橈骨静脈より採血して、血清及びクエン酸ナトリウム(3.8重量%濃度のクエン酸ナトリム水溶液)加血漿を分取した。次いで、血清については、東芝自動分析装置(東芝メディカルシステムズ(株)製,TBA−120FR)にて、総コレステロール(TC)、トリグリセライド(TG)、リン脂質(PL)及び遊離脂肪酸(NEFA)量を定量した。また、クエン酸ナトリウム加血漿については、トロンビン時間法に従って、フィブリノーゲン量を定量した。
【0063】
上記の定量結果に基づいて、Day0−4hr及びDay0−24hrの血清脂質類の値が比較的安定した値を示した12頭を選別し、TC値を指標として、1群当たり4頭ずつ3群に群分けした。群分け後、各群のイヌに1日1回、FEN単独を20mg/kg(FEN群)、PIT単独を2mg/kg(PIT群)、又はFEN20mg/kg及びPIT2mg/kg(併用群)を7日間連続して経口投与した。なお、給餌は、投薬直後に行った。
【0064】
採血は、7回目投与の4時間後(Day7−4hr)に行い、Day0−4hrと同様に、血清及びクエン酸ナトリウム加血漿を分取し、各検査を実施した。表1に各群の構成を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(4)定量結果の統計処理
定量結果は、平均値±標準誤差で表した。統計解析は、個体毎にDay0−4hrの値に対して、投与後の各採血ポイントでの値の差を算出するとともに、FEN群又はPIT群に対して、併用群の平均値の差を、それぞれF検定にて、等分散性を認めた場合にはStudentのt検定(片側検定)、等分散性が否定された場合にはWilcoxonの順位和検定(片側検定)を用いて検定した。なお、いずれの検定においても5%未満を有意差ありと判断した。
【0067】
(5)結果
表2にDay7−4hrの結果を示した。また、表2には、単独投与群及び併用群のそれぞれについて算出した各成分の血中濃度の相対指数を示すと共に、FEN群の相対指数とPIT群の相対指数との積を示した。なお、相対指数は、各成分について、(投与後の血中濃度の平均値)/(投与前の血中濃度の平均値)に基づいて算出した。
【0068】
【表2】

【0069】
表2から明らかなように、FEN群と比較して、併用群では、ΔTC、ΔNEFA及びΔフィブリノーゲンが有意に低値を示した。なお、ΔTC及びΔNEFAの有意差はいずれもP<0.05であった。また、PIT群と比較して、併用群では、ΔTC及びΔTGは有意に低値を示した。PIT群と比較したΔTC及びΔTGの有意差は、それぞれP<0.05及びP<0.01であった。併用群における脂質類の低下は、FEN及びPITの相加効果と考えられるが、ΔNEFA及びΔフィブリノーゲンの低下は、両剤の相乗効果であると考えられた。なお、血中のTGが低下すると、動物の種類の関係なく、HDL−コレステロールが上昇することが知られている(Progress in Medicine Vol.17 No.2 1997.2 291〜296頁、及びArteriosclerosis,Thrombosis, and Vascular Biology Vol 15, No 11 November 1995 1819〜1828頁)。すなわち、上記試験例におけるTGの有意な低下は、HDL−コレステロールの血中濃度の有意な増加を示している。
【0070】
また、バルジの式(高木敬次郎他:薬物学、1987、南山堂)に基づいて、FEN群の相対指数とPIT群の相対指数との積を、併用群の相対指数と比較したところ、表2から明らかなように、TC、TG、PL及びNEFAのいずれについても、併用群の相対指数に比べ、単独投与群の相対指数の積の値の方が大きくなっており、相乗効果であることが明らかである。
【0071】
なお、WO2006/011495号明細書の実施例では、ピタバスタチン10mg/kg及び/又はフェノフィブラート10mg/kgを用いたとき、TGについて、単独投与群の相対指数の積は、0.650であるのに対し、併用群の相対指数は0.627であり、両者の差は小さい。これに対し、上記表2の結果では、TGについて、併用群の相対指数は0.185であり、単独投与群の相対指数の積は0.244である。これらの比較から、特定のスタチン類の量を少なくすると、TGの血中濃度の低下に顕著な効果が得られることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物で少なくとも構成されたスタチン系薬剤と、フィブラート系薬剤とを含む製剤であって、前記スタチン系化合物1重量部に対してフィブラート系薬剤の割合が1〜500重量部(但し、ピタバスタチン1重量部に対してフェノフィブラート1重量部の割合を除く)である製剤。
【請求項2】
スタチン系化合物及びフィブラート系薬剤の含有量が、製剤全体に対して、固形分換算で、0.01〜99重量%である請求項1記載の製剤。
【請求項3】
フィブラート系薬剤が、ベザフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、クロフィブラートアルミニウム、フェノフィブラート、シンフィブラート、フェノフィブリン酸、ゲムフィブロジル又はそれらの塩から選択された少なくとも一種である請求項1記載の製剤。
【請求項4】
スタチン系化合物が、ベンゾピリジン骨格に置換基を有していてもよいベンゾピリジルエチル基又はベンゾピリジルビニル基を有する3,5−ジヒドロキシペンタン酸又はその誘導体であり、前記置換基が、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、C6−10アリール基、及びハロゲン化C6−10アリール基から選択された少なくとも一種であり、前記誘導体が前記3,5−ジヒドロキシペンタン酸の塩又はラクトン体である請求項1記載の製剤。
【請求項5】
スタチン系薬剤が、少なくともピタバスタチンで構成されている請求項1記載の製剤。
【請求項6】
スタチン系薬剤中、ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物の含有量が10〜100重量%であり、前記スタチン系化合物1重量部に対してフィブラート系薬剤の割合が3〜300重量部である請求項1記載の製剤。
【請求項7】
生理学的に許容可能な担体を含む固形製剤である請求項1記載の製剤。
【請求項8】
ピタバスタチン1重量部に対してフェノフィブラート5〜250重量部を含む請求項1記載の製剤。
【請求項9】
遊離脂肪酸及び/又はフィブリノーゲンの血中濃度を低減するための製剤であって、ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物で少なくとも構成されたスタチン系薬剤と、フィブラート系薬剤とを含む製剤。
【請求項10】
さらにトリグリセライドの血中濃度を低減するための製剤である請求項9記載の製剤。
【請求項11】
スタチン系薬剤が少なくともピタバスタチンで構成されており、前記スタチン系薬剤1重量部に対してフィブラート系薬剤の割合が1〜500重量部である請求項9記載の製剤。
【請求項12】
ベンゾピリジン骨格を有するスタチン系化合物で少なくとも構成されたスタチン系薬剤と、フィブラート系薬剤と、生理学的に許容可能な担体とを用いて製剤を製造する方法であって、前記スタチン系薬剤1重量部に対して1〜500重量部の割合でフィブラート系薬剤(但し、ピタバスタチン1重量部に対してフェノフィブラート1重量部の割合を除く)を用いて製剤を製造する方法。

【公開番号】特開2007−8923(P2007−8923A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151551(P2006−151551)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】