説明

フィルムの洗浄ノズル装置

【課題】フィルムの表面に付着した数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れまでも連続的に除去することができ、フィルムの洗浄ノズル装置からフィルムが通り抜けた際に洗浄水がフィルムに付着している量を減少させることができるフィルムの洗浄ノズル装置を提供する。
【解決手段】フィルム12の表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口52と、洗浄液吐出口52の上流側及び下流側において、洗浄液がフィルムの一方の面上を流れるようにフィルムに対して平行に形成された、上流側平面部53Aと下流側平面部53Bと、からなるフィルムの洗浄ノズル装置51に対して、上流側平面部53Aと下流側平面部53Bは、フィルム12表面と等距離となるように配置し、下流側平面部53Bは上流側平面部53Aよりも長く形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムの表面に付着した、埃、フィルム片、汚れを連続的に洗浄するフィルムの洗浄システムに関するものであり、特に、クリーンなものが求められるFPD(フラットパネルディスプレイ)分野、エレクトロニクス分野、光学用分野のフィルムの洗浄ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、FPD(フラットパネルディスプレイ)分野、エレクトロニクス分野、光学用分野等、様々な分野で使用されている。FPD分野、エレクトロニクス分野に使用されるプラスチックフィルムは、製膜、塗工、貼合などの工程を経て部材、プロセス材として使用される。その製造工程は、終始クリーン環境下での取り扱いが必須であり、埃、繊維、フィルム粕などの異物の製品への混入や付着などの欠陥、及びそれらに起因するキズ、押し跡などの物理的欠陥の発生は厳重に管理されている。これらの欠陥の発生頻度に対する市場の要求基準は急速に厳しくなってきている。また、欠陥の程度についても、従来問題とされなかった非常に微細な欠陥が許容されなくなってきており、改善を求められている。
【0003】
このような問題を解消する方法として、近年ではプラスチックフィルムを洗浄することにより塵芥を除去することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、超音波発生ノズルを設け、この超音波発生ノズルから噴出されるエアーによる気流と、超音波による振動によってプラスチックフィルム上の塵埃を除去する洗浄ノズルが提案されている。
【0005】
さらに、特許文献2では、洗浄手段として洗浄ノズルから連続して洗浄液を噴霧し、洗浄液再循環手段として落下した洗浄液を再循環させ、乾燥手段が連続して温風を吹き付ける光学用プラスチックフィルムの洗浄・乾燥方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−239761号公報
【特許文献2】特開2002−292347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、吹き付けたエアーによって剥離した塵埃が付近に散乱しプラスチックフィルムに再付着する恐れや、強固に付着した塵埃については十分に除去できないという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献2では、洗浄液としてアルコール、エステル等を使用した場合は、光学プラスチックフィルムの可塑剤が溶出し、フィルム特性の変化と均一性の低下が問題となる。また、ロールまたはバーによるスキージングのみでは、洗浄液を十分除去できず、生産性が低いという問題がある。
【0009】
そして、これら特許文献1、2のようにプラスチックフィルムを洗浄しても、フィルム上の数μmという非常に微細な異物はフィルムへの付着力が強く、好ましく除去することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プラスチックフィルムの表面に付着した数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れまでも連続的に除去することができ、フィルムの洗浄ノズル装置からフィルムが通り抜けた際に洗浄水がフィルムに付着している量を減少させることができるフィルムの洗浄ノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、走行するフィルムの表裏面の少なくとも一方の面を洗浄する洗浄ノズル装置であって、前記フィルムの表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口と、前記洗浄液吐出口の上流側及び下流側において、前記洗浄液が前記フィルムの一方の面上を流れるように前記フィルムに対して平行に形成された、上流側平面部と下流側平面部と、からなり、前記上流側平面部と前記下流側平面部は、前記フィルム表面と等距離となるように配置され、前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルムの走行方向距離が長いように形成されていることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明は、前記目的を達成するために、走行するフィルムの表裏面の少なくとも一方の面を洗浄する洗浄ノズル装置であって、前記フィルムの表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口と、前記洗浄液吐出口の上流側及び下流側において、前記洗浄液が前記フィルムの一方の面上を流れるように前記フィルムに対して平行に形成された、上流側平面部と下流側平面部と、からなり、前記上流側平面部と前記下流側平面部は、前記フィルムの走行方向距離が同じ長さとなるように形成され、前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルム表面までの距離が近いように配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記目的を達成するために、走行するフィルムの表裏面の少なくとも一方の面を洗浄する洗浄ノズル装置であって、前記フィルムの表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口と、前記洗浄液吐出口の上流側及び下流側において、前記洗浄液が前記フィルムの一方の面上を流れるように前記フィルムに対して平行に形成された、上流側平面部と下流側平面部と、からなり、前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルム表面までの距離が近いように形成され、前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルムの走行方向距離が長いように配置されていることを特徴とする。
【0014】
上記のようにフィルムの洗浄ノズル装置を構成することで、プラスチックフィルムの表面に付着した数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れまでも連続的に除去することができ、洗浄水を除去することができるフィルムの洗浄ノズル装置を提供することができる。
【0015】
即ち、上流側平面部と下流側平面部との長さ、及び/又は、上流側平面部と下流側平面部とフィルム表面との距離、を上記のように構成することで、フィルムの洗浄ノズル装置からフィルムが通り抜けた際に洗浄水がフィルムに付着している量を減少させ、フィルムの洗浄ノズル装置下流でのフィルム乾燥におけるエネルギー負荷を減少させることができる。
【0016】
そして、本発明のフィルムの洗浄ノズル装置は、前記上流側平面部と前記フィルムとの隙間は、0.25mm以下であることが好ましい。
【0017】
即ち、上流側平面部とフィルムとの隙間を0.25mm以下とすることで、洗浄液吐出口から供給された洗浄液が0.25mm以下の狭い隙間で大きな速度勾配を持つようになるので、数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れをフィルムから除去することができる。
【0018】
また、本発明のフィルムの洗浄ノズル装置の洗浄液吐出口には、洗浄液をフィルムに吹き付ける圧力を減圧する減圧機構が設けられていることが好ましい。
【0019】
なお、本発明のフィルムの洗浄ノズル装置は、上記のように構成された洗浄液吐出口、上流側平面部、及び下流側平面部を、走行するフィルムの片面のみを設けたものであっても良いし、走行するフィルムの両面にそれぞれ設けたものであっても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プラスチックフィルムの表面に付着した数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れまでも連続的に除去することができ、フィルムの洗浄ノズル装置からフィルムが通り抜けた際に洗浄水がフィルムに付着している量を減少させることができるフィルムの洗浄ノズル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のフィルムの洗浄ノズル装置を組み入れたフィルムの塗布装置を示す図
【図2】本発明に係る洗浄ノズル装置の第1の実施形態を示す図
【図3】本発明に係る洗浄ノズル装置の洗浄液吐出口の実施形態を示す図
【図4】洗浄ノズル装置の簡易モデルと洗浄液圧力分布との関係を示した図
【図5】本発明に係る洗浄ノズル装置の第2の実施形態を示す図
【図6】本発明に係る洗浄ノズル装置の第3の実施形態を示す図
【図7】本発明に係る洗浄ノズル装置の絞りの他の実施態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、フィルムの塗布装置に本発明のフィルムの洗浄ノズル装置を組み込んだときの全体構成の一例を示す概略側面図である。
【0024】
図1に示すように、フィルムの塗布装置40は、プラスチックフィルムロールの巻出部42、フィルムの洗浄システム10、塗工部44、乾燥部(塗工後の乾燥部)46、巻取部48を順に設けている。プラスチックフィルムロールの巻出部42より順次巻き出されたシート状のプラスチックフィルム12は、搬送ローラ14、16で本発明のフィルムの洗浄システム10に搬送される。
【0025】
図1のフィルムの洗浄システム10は、走行するフィルムに洗浄液を用いて洗浄を行う洗浄部36、36と、洗浄したフィルムの乾燥を行う乾燥部38と、を備えている。ここで、洗浄部36は2段、乾燥部38が1段である例を示しているがこの限りでなく、例えば、洗浄部36が3段、乾燥部38が2段であっても良い。なお、フィルムの洗浄システム10には、システム全体をカバーする全体カバー50を有していることが好ましい。
【0026】
本発明における洗浄対象は、プラスチックフィルムの表面に付着した数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れである。
【0027】
そして、本発明に係る洗浄部36には、図2に示すような本発明のフィルムの洗浄ノズル装置51が設けられている。
【0028】
本発明のフィルムの洗浄ノズル装置51は、フィルムを走行させながらフィルム表裏面の少なくとも一方の面側に洗浄液を供給することにより、少なくとも一方の面に沿った水流で洗浄する構造である。洗浄液は絶えず供給されている。
【0029】
図2は、本発明に係るフィルムの洗浄ノズル装置51の実施の形態を示したものであり、側面から見た断面を示した図である。なお、図2のフィルムの洗浄ノズル装置は、フィルムの片面を洗浄する場合である。
【0030】
図2に示したように、フィルムの洗浄ノズル装置51は、フィルム12の表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口52と、洗浄液がフィルム12の一方の面上を流れるようにフィルムに対して平行に形成された上流側平面部53Aと下流側平面部53Bと、からなっている。
【0031】
このように形成されたフィルムの洗浄ノズル装置51は、洗浄液吐出口52の上流側及び下流側に狭い隙間54a、54bが形成され、その隙間54a、54bとフィルム12との間に洗浄液が流れる。このような狭い隙間54a、54bに洗浄液を流すことで、狭い隙間で洗浄液の流速が大きな速度勾配を持つようになるので、フィルム表面との平面部53A、53Bとの間には、フィルム面に平行で且つ流速の早い平行流が発生する。これにより、数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れでもフィルムから除去することが可能となる。
【0032】
そして、本発明の第1の実施形態は、上流側平面部53Aと下流側平面部53Bは、フィルム12表面と等距離となるように配置されている場合に、下流側平面部を上流側平面部よりもフィルムの走行方向距離が長いように形成することを特徴としている(図2参照)。
【0033】
このように形成することでフィルム12が洗浄部36の洗浄ノズル装置51から洗浄液がフィルム進行方向へ流出する流量を低減させることができる。即ち、洗浄されたフィルム12が洗浄部36から下流に搬送される際には、フィルムに付着していた洗浄水を大幅に減少させることができる。
【0034】
ここで、本発明のフィルムの洗浄ノズル装置の洗浄液吐出口52には、洗浄液をフィルムに吹き付ける圧力を減圧する減圧機構が設けられていることが好ましい。
【0035】
なお、本発明のフィルムの洗浄ノズル装置によれば、フィルムに対し平行な水流によって、付着した異物に下記式(富樫他,機械学会)で表される水平方向の力が働き、塵埃を除去することから、フィルムへのダメージを抑え効果的に塵埃を除去することが出来る。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、Fdetは塵埃に働く力、dは塵埃の直径、uは水流の速度、ηは水の粘度係数、cは補正係数を表す。
【0038】
そして、本発明では、例えば、図3に示すように、洗浄ノズル装置51の洗浄液吐出口52を、洗浄液を供給する供給口52aと、供給口52aから供給された洗浄液を減圧するための絞り52bと、減圧された洗浄液をフィルムの洗浄側に吹き出す吹出口52cとで構成することが好ましい。なお、図3は、絞り52bを複数の穿孔を用いた場合の図であり、フィルム長手方向の長さを短くすることが可能であるので、複数の洗浄液吹出口を設ける場合に洗浄ノズル装置をコンパクトにするのに有効である。
【0039】
図4は、図3の洗浄ノズル装置の簡易モデルと洗浄液圧力分布との関係を示したものである。なお、フィルムは上流側及び下流側のローラにより適度な張力が掛かった状態で搬送されている。また、図4の(b)は、本発明である下流側平面部を上流側平面部よりもフィルムの走行方向距離が長いように形成したフィルムの洗浄ノズル装置を示しており、図4の(a)は、比較例として下流側平面部と上流側平面部のフィルムの走行方向距離が同じ長さで形成したフィルムの洗浄ノズル装置について示している。
【0040】
洗浄ノズル装置51の供給口52aに供給する洗浄液の圧力をPsとすると、洗浄液は絞り52bを通り吹出口52cでは圧力Piとなり、フィルムを洗浄した後、排出され圧力Poとなる。この圧力によって洗浄ノズル装置51からフィルム12を引き離そうとする力(図4の三角形Piの面積)が発生する。
【0041】
ここで、フィルム12が洗浄ノズル装置51に接近すると、フィルム12と洗浄ノズル装置36間の流路抵抗が大きくなり吐出口の圧力PiがPi+ΔPiへ上昇し、洗浄ノズル装置51からフィルム12を引き離そうとする力が三角形Pi+ΔPiへと増加する。また、フィルム12が洗浄ノズル装置51から離れた場合も同様に洗浄ノズル装置36からフィルム12を引き離そうとする力が減少し、洗浄ノズル装置51とフィルム12間の距離を自動的に維持できる。
【0042】
そして、本発明の図4(b)では、下流側平面部53Bを上流側平面部53Aよりもフィルムの走行方向距離が長いように形成しているので、下流側平面部53Bの隙間54bでは上流側平面部53Aの隙間54aよりも洗浄液の圧力勾配が緩やかになっている。従って、洗浄部36の洗浄ノズル装置51から洗浄液がフィルム進行方向へ流出する流量を低減させることができる。即ち、洗浄されたフィルム12が洗浄部36から下流に搬送される際には、フィルムに付着していた洗浄水を大幅に減少させることができる。
【0043】
なお、ここで、洗浄液吐出口52から洗浄液排出口(洗浄ノズル装置51から洗浄液が排出される位置60a、60b(図4(b)参照のこと))への洗浄液の流量は下記の数2で表される。
【0044】
【数2】

【0045】
ここで、Qは流量であり、Bは吐出口の幅(フィルム幅)、Hは平面部とフィルムとの離隔距離(隙間の距離)、ηは洗浄水の粘性係数、Piは吐出口での圧力、Poは大気圧、Lは平面部の長さを表す。
【0046】
数2の式から分かるように、流量Qは、平面部の長さLに反比例しているので、上流側平面部53Aの長さよりも下流側平面部53Bの長さを長くすることで、洗浄ノズル装置51から洗浄液が排出される下流側位置60bでの流量を減少させることができる。
【0047】
更に、数2の式から分かるように、流量Qは、平面部とフィルムとの離隔距離の3乗に比例しているので、下流側の隙間54bを上流側の隙間54aよりも狭くすることでも、洗浄ノズル装置51から洗浄液が排出される下流側位置60bでの流量を減少させることができる。
【0048】
図5は、本発明の第2の実施形態を示したものであり、上流側平面部と下流側平面部の長さが同じ長さに形成されている場合であり、下流側平面部53Bが上流側平面部53Aよりもフィルム12表面までの距離が近いように配置されているフィルムの洗浄ノズル装置51を示したものである。このように、フィルムの洗浄ノズル装置51を構成することでも、洗浄ノズル装置51から洗浄液が排出される下流側位置60bでの流量を減少させることができる。
【0049】
また、本発明の第3の実施形態としては、図2と図5の両方の条件を満たしたフィルムの洗浄ノズル装置が考えられる(図6参照)。即ち、下流側平面部54Bを上流側平面部54Aよりもフィルム12表面までの距離が近いようにし、且つ、下流側平面部53Bを上流側平面部53Aよりもフィルムの走行方向距離が長いようにすることが考えられる。このように、フィルムの洗浄ノズル装置51を構成することで、更に洗浄ノズル装置51から洗浄液が排出される下流側位置60bでの流量を減少させることができる。
【0050】
本発明のフィルムの洗浄ノズル装置は、上流側平面部53Aとフィルム12との隙間54a、及び、下流側平面部53Bとフィルム12との隙間54bは、0.25mm以下の幅であることが好ましい。
【0051】
このような狭い隙間54a、54bに洗浄液を流すことで、0.25mm以下の狭い隙間で洗浄液の流速が大きな速度勾配を持つようになるので、フィルム表面との平面部53との間には、フィルム面に平行で且つ流速の早い平行流が発生する。これにより、数μmという非常に微細な埃、フィルム片、汚れでもフィルムから除去することが可能となる。
【0052】
図7(a)は、本発明に係る洗浄ノズル装置51において、洗浄液を減圧するために、図3とは別の態様を示した図であり、図3の絞り52bを細い隙間構造にした場合の図である。図7(b)に示すように複数からなる板構造53a,53b,…53eによって形成され、容易に製作できるという特徴がある。
【0053】
なお、図3や図7のように洗浄液をフィルムに吹き付ける圧力を減圧する減圧機構(絞り)を設けることで、吹出口52cに供給する洗浄液の圧力が、平面部53A、53Bとフィルム12との距離に応じて自動的に調整されることから、平面部53A、53Bとフィルム12との距離を一定に保つ効果がある。
【0054】
以上のように、フィルムの洗浄システム10の洗浄部36で洗浄されたフィルム12は、ローラ24,25により乾燥部38へと送られる。
【0055】
なお、洗浄部36の後段には、フィルムに付着している洗浄液を除去するエアーナイフと、エアーナイフの吹出ロに供給される空気をイオン化する除電機構と、を備えていることが好ましい。
【0056】
本発明の洗浄ノズル装置51を用いた洗浄部36で洗浄されたフィルム12は、洗浄液の付着程度が低いので、フィルムの乾燥時におけるエネルギー負荷を減少させることができる。
【0057】
洗浄・乾燥されたフィルム12は、塗工部44で塗布液が塗布され、ローラで搬送されながら乾燥部46を通過し、巻取部48にてロール状態に巻き取られる。
【0058】
本発明に用いられるプラスチックフィルムは、透明なシートまたはフィルム状のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、アクリルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム、及びこれらのプラスチックフィルムの少なくとも片面に、塗布、塗工、貼合、印刷などの処理を施した多層フィルムを挙げることができる。透過率が高く、高いフィルム均一性が求められるトリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルムを用いた場合に、塵芥等に起因した欠点の確認が容易である為、効果が大きい。
【0059】
本発明に用いられるプラスチックフィルムの厚さは、5〜2000μm、好ましくは15〜500μm、特に好ましくは20〜200μmの範囲から任意に選択できる。
【0060】
以上、本発明のフィルムの洗浄ノズル装置について、図に基づいて説明したが、本発明は上記図に記載した構成に限定されるものではなく、各図に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【符号の説明】
【0061】
10…フィルムの洗浄システム、12…フィルム、36…洗浄部、38…乾燥部、40…フィルムの塗布装置、42…巻出部、48…巻取部、50…全体カバー、51…(フィルムの)洗浄ノズル装置、52…洗浄液吐出口、52a…供給口、52b…絞り、53c…吹出口、53A…上流側平面部、53B…下流側平面部、54a…上流側の隙間、54b…下流側の隙間、60a…洗浄液が排出される上流側位置、60b…洗浄液が排出される下流側位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するフィルムの表裏面の少なくとも一方の面を洗浄する洗浄ノズル装置であって、
前記フィルムの表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口と、
前記洗浄液吐出口の上流側及び下流側において、前記洗浄液が前記フィルムの一方の面上を流れるように前記フィルムに対して平行に形成された、上流側平面部と下流側平面部と、からなり、
前記上流側平面部と前記下流側平面部は、前記フィルム表面と等距離となるように配置され、
前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルムの走行方向距離が長いように形成されていることを特徴とするフィルムの洗浄ノズル装置。
【請求項2】
走行するフィルムの表裏面の少なくとも一方の面を洗浄する洗浄ノズル装置であって、
前記フィルムの表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口と、
前記洗浄液吐出口の上流側及び下流側において、前記洗浄液が前記フィルムの一方の面上を流れるように前記フィルムに対して平行に形成された、上流側平面部と下流側平面部と、からなり、
前記上流側平面部と前記下流側平面部は、前記フィルムの走行方向距離が同じ長さとなるように形成され、
前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルム表面までの距離が近いように配置されていることを特徴とするフィルムの洗浄ノズル装置。
【請求項3】
走行するフィルムの表裏面の少なくとも一方の面を洗浄する洗浄ノズル装置であって、
前記フィルムの表裏面の一方の面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吐出口と、
前記洗浄液吐出口の上流側及び下流側において、前記洗浄液が前記フィルムの一方の面上を流れるように前記フィルムに対して平行に形成された、上流側平面部と下流側平面部と、からなり、
前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルム表面までの距離が近いように形成され、
前記下流側平面部は、前記上流側平面部よりも前記フィルムの走行方向距離が長いように配置されていることを特徴とするフィルムの洗浄ノズル装置。
【請求項4】
前記上流側平面部と前記フィルムとの距離は、0.25mm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のフィルムの洗浄ノズル装置。
【請求項5】
前記フィルムの洗浄ノズル装置の前記洗浄液吐出口に、洗浄液をフィルムに吹き付ける圧力を減圧する減圧機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載のフィルムの洗浄ノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−571(P2011−571A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147775(P2009−147775)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】