説明

フィルム及びフィルム製造方法

【課題】温度によって性質が変化し、微細構造を有するフィルムを製造する。
【解決手段】所定の温度で疎水性と親水性とに可逆的に変化する温度応答性重合体と、ポリスチレンとが溶媒に溶解された溶液をつくる。温度応答性重合体は、疎水性部と親水性部とをもつ第1単独重合体を生成可能な第1化合物と、温度応答性を有する第2単独重合体を生成可能な第2化合物との共重合体であり、疎水性部とを成す第1構成単位と温度応答性部を成す第2構成単位からなる。溶液を流延ベルトの上に流延して流延膜を形成する。流延膜に結露させ、溶媒と水滴とを蒸発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度応答性を有するフィルム及びフィルム製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学分野や電子分野では微細な孔を複数備えるいわゆる多孔構造の材料が求められている。このような要求に応える微細多孔構造をもつ材料としては、μmスケールの微細な孔が多数形成されて蜂の巣状の構造、すなわちハニカム構造をもつポリマーフィルムがある。また、医療分野でも微細多孔構造をもつフィルムは求められている。医療分野でのニーズとしては、再生医療材料となる微細多孔フィルムがあり、例えば、細胞培養の足場として使用される。
【0003】
多孔フィルムの製造方法としては、所定のポリマーの溶液を流延して流延膜を形成し、この流延膜上に結露させて乾燥させることで、μmスケールのハニカム構造をもつフィルムとする方法がある。そして、この方法では、ハニカム構造となるように流延膜中に微細な孔を多数形成する。孔の形や径をできるだけ均一につくる方法としては、疎水性の重合体(ポリマー)と両親媒性の重合体とを有機溶媒に溶かし、この溶液で流延膜を形成し、結露と乾燥とを所定条件で実施する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、細胞培養の他に超撥水基板として用いることができ、孔径が0.01〜100μmの貫通孔を有し、非水溶性重合体からなるハニカム構造のフィルムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、培養された細胞は、培養時の足場材料(以降、細胞培養基材と称する)から剥がすことが求められる場合が多い。そこで、低温で親水性を発現し高温で疎水性となる温度応答性材料で構成されたフィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。このフィルム上で細胞を培養すると、培養細胞と密着しているフィルムの温度を所定温度以下に冷やすことにより、培養細胞をフィルムから容易に剥離することができる。このような温度応答性という性質を利用して、多孔質材料の表面に温度応答性材料をグラフトした温度応答性多孔質体が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−291367号公報
【特許文献2】特開2007−319006号公報
【特許文献3】国際公開第2002/010349号パンフレット
【特許文献4】特開2005−133080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の多孔フィルムや特許文献2のフィルムでは、微細な孔が比較的均一に形成されているものの、例えば、細胞培養基材としてこれらを用いた場合には、培養細胞を容易に剥がすことができるとはいえない。したがって、フィルムに密着した状態で使用可能な用途に使用が限定されたり、培養細胞を剥がすために何らかの化学的処理や物理的処理を施すことが必要となる。このような処理を施すと、培養細胞が変化してしまったり、培養細胞の活性が失われたり、膜状の培養細胞を剥がすときに破れてしまうことがある。したがって、化学的処理や物理的処理をせずに他の因子で表面状態あるいは性質が変化するような材料でフィルムをつくることが望まれる。
【0008】
また、特許文献3の温度応答性材料は、温度が因子となって表面の性質が変化するので、例えば、これを細胞培養に用いると培養細胞の剥離の容易化という点で効果はある。しかし、この温度応答性材料から得られるフィルムは表面が平滑であるものか、あるいは、数百μmスケールのハニカム構造であるので、用途の広がりがあるとはいえない。例えば、細胞培養基材として用いた場合にも、その培養機能の点で問題がある。そして、特許文献4の温度応答性多孔質体は、孔が不均一であるので、同様に、用途の広がりに期待がもてない。例えば、細胞培養基材に用いるとしても、培養することができる細胞の種類が極めて限定されてしまう、という問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、温度が因子となって性質が変化し、微細構造を有するフィルム及び温度応答性を有するフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルムは、径が互いに同じである複数の孔、または、各間の距離が互いに同じであるように形成された複数の突起部を、フィルム面に有し、両親媒性の第1単独重合体を生成可能な第1化合物と、親水性と疎水性とに所定の温度で可逆的に変化する温度応答性の第2単独重合体を生成可能な第2化合物との重合反応により得られ、前記第1単独重合体の第1繰り返し単位が複数連なる疎水性部と、前記第2単独重合体の第2繰り返し単位が複数連なる温度応答性部とを有する重合体が含まれることを特徴として構成されている。
【0011】
前記重合体は前記疎水性部と前記温度応答性部との共重合体であることが好ましく、前記重合体は、前記第1単独重合体の親水性部に、前記温度応答性部が付加されている構造であることが好ましい。
【0012】
第1繰り返し単位は下記の式(1)で表す構造を有し、第2繰り返し単位は下記の式(2)で表す構造を有することが好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
また、本発明は、径が互いに同じである複数の孔、または、各間の距離が互いに同じであるように形成された複数の突起部を、フィルム面に有し、上記の式(1)で表される第1繰り返し単位と上記の式(2)で表される第2繰り返し単位とを有する重合体が含まれることを特徴とするフィルムを含んで構成されている。
【0016】
また、本発明のフィルムは、疎水性の重合体を含むことが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の多孔フィルム製造方法は、両親媒性の第1単独重合体を生成可能な第1化合物と、親水性と疎水性とに所定の温度で可逆的に変化する温度応答性の第2単独重合体を生成可能な第2化合物との重合反応により得られる第1重合体と、疎水性の第2重合体とが有機溶媒に溶解している溶液を、支持体に流延して流延膜を形成する流延膜形成工程と、前記流延膜に結露させる結露工程と、前記溶媒と前記結露工程で生じた水滴とを流延膜から蒸発させて、フィルム面に複数の孔が形成された多孔フィルムとする蒸発工程とを有し、前記第1重合体は、前記第1単独重合体の第1繰り返し単位が複数連なる疎水性部と、前記第2単独重合体の第2繰り返し単位が複数連なる温度応答性部とを有することを特徴として構成されている。
【0018】
さらに、本発明は、ハニカム構造となるように前記複数の孔が形成された前記多孔フィルムを、厚み方向の中央部で切断して、前記孔が形成されてある前記フィルム面側を除去することにより、フィルム面に複数の突起を有するフィルムとするフィルム製造方法を含んで構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、温度が因子となって性質が著しく変化、具体的には親水性と疎水性という性質が可逆的に変化するという温度応答性をもち、また、微細な均一構造をもったフィルムを容易に製造することができるので、培養細胞の剥離が容易な細胞培養基材をはじめとする多様な用途での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る多孔フィルムの平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。(A)は隔壁がない多孔フィルムの断面図であり、(B)は隔壁がある多孔フィルムの断面図である。
【図4】本発明の多孔フィルムを製造する設備の概略図である。
【図5】本発明の別の実施様態であるフィルムの断面図である。
【図6】図5のフィルムの製造方法に関する説明図である。
【図7】本発明の別の実施態様であるフィルムの断面図である。
【図8】本発明の温度応答性重合体のNMRチャートである。
【図9】本発明の温度応答性重合体のNMRチャートである。
【図10】本発明の温度応答性重合体のNMRチャートである。
【図11】本発明の温度応答性重合体のNMRチャートである。
【図12】温度応答性重合体における、NMRチャートのピークに対応する各結合の説明図である。
【図13】本発明の温度応答性重合体のFT−IRチャートである。
【図14】温度応答性重合体における、FT−IRチャートの吸収ピークに対応する各結合の説明図である。
【図15】本発明の多孔フィルムの光学顕微鏡写真である。
【図16】本発明の多孔フィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の別の実施態様であるフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】本発明のフィルムにおける水滴の接触角のグラフである。
【図19】本発明の多孔フィルムの光学顕微鏡写真である。
【図20】流延ベルトの走行速度と開口径APとの関係を表すグラフである。
【図21】温度応答性重合体の溶液の光の透過率と温度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフィルムは、温度応答性重合体を含み、この温度応答性重合体は、互いに異なる第1及び第2化合物の重合反応により得られる重合体である。
【0022】
一方の第1化合物は、重合することにより両親媒性の第1単独重合体(ホモポリマー)を生成可能な物質であり、この第1単独重合体は疎水性部と親水性部とを有することにより両親媒性を示す。この第1単独重合体は、疎水性部としての主鎖と親水性部としての親水基とを有する構造であってもよいし、疎水性部としての主鎖の末端に親水性部としての親水基がある構造であってもよい。疎水性部は、第1繰り返し単位が複数連なる構造を有し、第1化合物は親水性部と重合することにより第1繰り返し単位となる構造とを有する。
【0023】
他方の第2化合物は、重合することにより、温度応答性の第2単独重合体(ホモポリマー)を生成可能な物質である。第2単独重合体が有する温度応答性とは、所定の温度で親水性と疎水性とに可逆的に変化する性質、すなわち、疎水性と親水性とに関する温度応答性である。つまり、第2単独重合体は、温度が下げられて所定の温度に達すると、親水性に変化し、水に溶けるようになる。第2単独重合体は、このような温度応答性を発現する温度応答性部として、第2繰り返し単位が複数連なる構造を有し、第2化合物は重合により第2繰り返し単位となる構造を有する。なお、疎水性から親水性に、親水性から疎水性に性質が変わる温度を、以降の説明においては、「応答温度」と称する。
【0024】
温度応答性重合体は、以上のような第1化合物と第2化合物との重合反応によりつくられ、第1単独重合体の疎水性部と、第2単独重合体の温度応答性部とを有する構造とされている。この構造により、疎水性と親水性とを温度制御によりコントロールすることができる。これにより、この温度応答性重合体は、疎水性と親水性とに所定の温度で可逆的に変化する温度応答性素材をつくることができる。温度応答性素材としては、細胞との密着力を温度により制御することができる細胞培養基材や、空気中の水分を選択的に捕捉するような水捕捉素材が例として挙げられる。そして、上記の温度応答性重合体は、重合度や分子量の制御により、成型加工も可能となるので、細胞培養基材や水捕捉材素材として好適な形状の形成が可能である。
【0025】
温度応答性重合体を用いた細胞培養基材上で細胞培養した場合、すなわち、この温度応答性重合体からなる細胞培養基材上やこの温度応答性重合体が他の材料と混合されている細胞培養基材上で細胞を培養した場合には、培養細胞と密着している細胞培養基材の温度を培養時の温度から徐々に下げ、応答温度以下にすることにより疎水性を低減して親水性を高め、培養細胞に化学的処理や物理的処理を加えることなく培養細胞を材料から剥がすことができる。したがって、培養された状態を保持したままの細胞を、使用に供することができるようになる。なお、培養細胞と密着している細胞培養基材を、応答温度以下の水や生理食塩水等に入れると、水中や生理食塩水中で培養細胞を材料から容易に剥離することができる。
【0026】
このような温度応答性重合体を含む細胞培養基材で細胞培養すると、(1)3次元培養された細胞、すなわちスフェロイドが必要とされる用途の場合には、スフェロイドの厚みを低減することなく厚みを保持して剥がすことができるようになるので、例えば肝機能に優れた肝細胞凝集体を得ることができる、(2)単層(モノレイヤ)培養細胞等の薄膜状の培養細胞であっても、これを破損することなく剥がすことができるようになるので、培養細胞を膜状物として得ることができる、という効果がある。
【0027】
また、温度応答性重合体を含む水捕捉素材としてのフィルムをつくった場合には、このフィルムに対し、一方の面側から、水と疎水性物質との混合物を接触させ、このフィルムの温度を応答温度以下に冷却すると、水のみがフィルムに保持またはフィルムを通過し、水と疎水性物質とを分離することができる。
【0028】
さらに、上記のような温度応答性重合体は、疎水性部をもつので、有機溶媒に溶かしてフィルムの態様に形成しやすいという利点をもち、さらに、温度応答性部をもつので、低温に保持すると、後述のような水滴の形成及び保持により、複数の微細な孔を有するフィルム等を容易に製造することができるという利点がある。
【0029】
温度応答性重合体における温度応答性部の質量割合は、1%以上95%以下であることが好ましい。この質量割合が1%よりも小さい場合には、温度応答性を発現しない場合があり、一方、95%よりも大きいと、疎水性有機溶剤に溶解する必要がある場合に疎水性有機溶剤への溶解性が低すぎて溶解しないことがある。なお、この質量割合は、温度応答性部の式量をx1,温度応答性重合体の分子量をy1とするときに100×x1/y1の式で求める百分率である。
【0030】
親水性を発現すべき温度、すなわち応答すべき温度は、第2繰り返し単位の構造により制御される。
【0031】
温度応答性重合体は、疎水性部と温度応答性部とが連なって重合体の主鎖を成すような、疎水性部と温度応答性部との共重合体であることが好ましい。これにより、疎水性部と温度応答性部との一方が主鎖であり他方が側鎖であるような共重合体と比べて、細胞を培養すべき材料としてこの共重合体を薄膜、すなわちフィルムに形成した場合の強度が大きく、フィルム表面に温度応答性部が露出する傾向が大きい。このような効果は、この共重合体を疎水性の高分子材料と混合してポリマーブレンドやポリマーアロイをつくり、このポリマーブレンドやポリマーアロイでフィルムをつくった場合も同様である。
【0032】
そして、本発明の温度応答性重合体は、第1単独重合体を生成させた場合の親水性部に温度応答性部が付与された構造であることが好ましい。第1単独重合体における親水性部の存在量は予測可能であることから、温度応答性部を付与した場合の温度応答性部の存在量も予測できることになる。したがって、製造すべき温度応答性重合体においては、温度応答性部の量を予め決定しておくことができ、これにより、疎水性から親水性に変化する温度における培養細胞の剥離し易さを制御することが可能となる。
【0033】
第1単独重合体を生成させた場合の親水性部に温度応答性部が付与された構造であるような温度応答性重合体について、第1の例は、第1単独重合体が疎水性部としての主鎖と親水性部としての側鎖とを有する構造となるような第1化合物を原料として使用する場合であって、この場合に得られる温度応答性重合体は、疎水性部としての主鎖と、温度応答性部としての側鎖とを有する。また、第2の例は、第1単独重合体が末端に親水基をもつ構造となるような第1化合物を原料として使用する場合であって、この場合に得られる温度応答性重合体は、疎水性部と温度応答性部とが連なって主鎖をなすような共重合体である。第1及び第2のいずれの例においても、温度応答性部は、付加反応により親水性部である親水基に付与されたものであってもよいし、置換反応により親水基の一部または全体を置換したものであってもよい。また、第2の例においては、ラジカル重合反応等の付加重合反応により得られる共重合体も含まれる。
【0034】
なお、第1化合物と第2化合物との物質量比等を変えることにより、親水性を示したときの温度応答性重合体の親水性の度合いを変えることができる。なお、本発明において「疎水性」とは、表面が平滑である形状(例えば、フィルム)にして、その表面に水滴を載せたときの水滴の接触角が90°以上となる場合を指し、「親水性」とは90°未満となる場合を指す。ここで、平滑とは、算術平均粗さRaが10nm未満である。
【0035】
第1化合物としては、下記の構造式(3)で示すN−ドデシルアクリルアミド(DAm)(分子量Mw:239.4)が好ましい。なお、このDAmを重合させると、下記式(1)で表す第1繰り返し単位を有する第1単独重合体が得られる。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
第2化合物としては、下記の構造式(4)で示すN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)(分子量Mw:113.16)が好ましい。なお、このNIPAmを重合させると、下記式(2)で表す第2繰り返し単位を有する第2単独重合体が得られる。この第2単独重合体は、ポリN−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAm)であり、約32℃よりも高い温度では疎水性を示し、約32℃以下の低い温度では親水性を示す。これは、PNIPAmは側鎖にアミド及びイソプロピル基を有しており、約32℃よりも高い温度ではイソプロピル基による作用で疎水性が強くなり、約32℃以下では32℃よりも高い温度と比べてアミド結合部の水との親和性が非常に高いからである。
【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
DAmとNIPAmとにより得られる温度応答性重合体は、式(1)の繰り返し単位が複数連なる疎水性部と式(2)の繰り返し単位が複数連なる温度応答性部とを有し、下記の式(5−I)で表す第1構成単位と下記の式(5−II)で表す第2構成単位からなる。この温度応答性重合体を表す式(5)においては、mは5〜5000の整数、nは5〜5000の整数を表す。
【0042】
【化7】

【0043】
式(5)に示す温度応答性重合体(poly(N−dodecylacrylamide−co−N−isopropylacrylamide),略記はP(DAm−co−NIPAm))は、数平均分子量Mnが4200以上27322以下の範囲、重量平均分子量Mnが10000以上70000以下の範囲、Mw/Mnが2.5以上4.0以下の範囲であることが好ましい。
【0044】
式(5)で表す温度応答性重合体においては、温度応答性部である第2構造単位の、温度応答性重合体に対する質量割合は、前述の通り、1%以上95%以下であることが好ましい。なお、共重合させるべきDAmとNIPAmとの比率を変えることにより、式(5)で表す温度応答性重合体の応答温度を、10℃以上50℃以下の範囲で変えることができる。
【0045】
式(5)に示す温度応答性重合体は、DAmとNIPAmとをラジカル開始剤ととともに溶媒に溶解して、ラジカル重合させることにより得ることができる。この反応では、合成すべきP(DAm−co−NIPAm)において(5)の式中のm及びnが1以上5000以下の範囲になるように、DAmとNIPAmとのモル比と、開始剤の物質量とを決定し、これらの各成分を溶媒に溶解させた後、反応開始剤の開裂温度以上の温度で重合を実施する。なお、この際に用いる溶媒は、反応開始剤の開裂温度よりも高い沸点をもつものとする。
【0046】
DAmとNIPAmとのラジカル重合における反応開始剤としては、特に限定されないが、式(6)で示すアゾイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、略称はAIBN、C12、分子量Mw:約160)、過酸化ベンゾイル(BPO)等が好ましく、中でもAIBNが特に好ましい。ただし、反応開始剤はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化8】

【0048】
DAmとNIPAmとのラジカル重合における溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、テトラヒドロフランが好ましく、中でもベンゼンが特に好ましい。ただし、溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0049】
なお、本発明のポリマーは、第1化合物と第2化合物とに加えて、これら第1及び第2化合物とは異なる第3化合物を用いてもよい。すなわち、第1化合物と第2化合物と第3化合物との重合体であってもよい。ただし、第3化合物は、第2繰り返し単位の重合部に起因する温度応答性を損なわない範囲の量で用いる。
【0050】
以上のような温度応答性重合体を用いることにより、培養細胞を容易に剥がすことができるフィルムが製造される。以下の例では、第1化合物としてDAmを、第2化合物としてNIPAmをそれぞれ用いた温度応答性重合体を含むフィルム及びその製造方法について説明する。
【0051】
図1は本発明の第1のフィルムの概略平面図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図である。図3の(A)は隔壁がない態様、(B)は隔壁がある態様である。フィルム11は、一方のフィルム面に複数の孔12を有するいわゆるハニカム構造の多孔フィルムである。孔12は、互いに略一定の形状及びサイズであり、規則的に配列する。そして、孔12は、図2及び図3に示すように、一方のフィルム面に窪みとして形成される場合もあるし、一方のフィルム面から他方のフィルム面に突き抜けるように貫通して形成される場合(図示せず)もあり、本発明はいずれの態様も含む。
【0052】
以下の説明においては、フィルム面における開口径すなわち多孔フィルム11を平面として見た平面示における孔12の径を開口径AP、孔12における径の最大値を孔径D、隣り合うふたつの孔12の中心と中心との距離を中心間距離L1、多孔フィルム11の厚みを厚みTA、孔12の底部における多孔フィルムの厚み、すなわち多孔フィルムの厚みの最小値を底部厚みT1、孔12の深さを孔深さL2、隣り合う孔12と孔12との平面示における距離を孔間距離L3と称し、孔12と孔12との隔壁13の厚みには符号TPを付す。
【0053】
開口径APは10nm以上100μm以下の範囲とされている。これにより、表面が平滑ないわゆる平膜よりも、濡れ性の効果を大きくすることができる。また、孔12が形成されてフィルム面に凹凸があるような多孔フィルム11では、平膜に比べて表面の見かけ上の濡れ性がより強調されて発現する。そこで、多孔フィルム11では、開口径APは、上記範囲で一定とされている。これにより、濡れ性が均一になる。濡れ性が均一になると、不均一なものにくらべて、細胞の培養条件がより均一化されたり、水の捕捉作用がより均一化される、という効果がある。
【0054】
開口径APが一定であるとは、開口径変動係数が最大でも10%であること、すなわち0%以上10%以下の範囲であることを意味する。開口径変動係数は以下の方法で求める。まず、平面示において1mm×1mmの隣り合うエリアを任意の方向にn(nは自然数)個とる。そして、各エリアにおける開口径APの平均値を求め、それぞれの平均値をAPS(1),APS(2),・・・APS(n−1),APS(n)とする。そして、これらの各平均値の平均APAを、{APS(1)+APS(2)+・・・+APS(n−1)+APS(n)}/nの式で求める。そして、平均値APS(1)をもつ第1エリアの開口径変動係数は、100×|APS(1)−APA|/APAで求める。すなわち、開口径変動係数は1mm×1mmのエリア毎に求める値であって、平均値APS(n)をもつ第nエリアの開口径変動係数は、100×|APS(n)−APA|/APAで求める。
【0055】
なお、孔径Dは、所定の範囲で一定とされている。これにより、開口径APが一定であることの上記効果がより高まる。
【0056】
孔径Dが一定であるとは、孔径変動係数が最大でも10%であること、すなわち0%以上10%以下の範囲であることを意味する。孔径変動係数は、前述の開口径変動係数の求め方において、開口径APを孔径Dに代えて求める。すなわち以下である。まず、上記のように区分けした各エリアにおける孔径Dの平均値を求め、それぞれの平均値をDS(1),DS(2),・・・DS(n−1),DS(n)とする。そして、これらの各平均値の平均DSAを、{DS(1)+DS(2)+・・・+DS(n−1)+DS(n)}/nの式で求める。そして、平均値DS(1)をもつ第1エリアの孔径変動係数は、100×|DS(1)−DSA|/DSAで求め、平均値DS(n)をもつ第nエリアの孔径変動係数は、100×|DS(n)−DSA|/DSAで求める。
【0057】
多孔フィルム11のようにフィルム面の一方に窪みとして孔12が形成される場合には、孔径Dが開口径APよりも大きい。つまり、隔壁13の厚みTPは、フィルム面から内部に向かって徐々に小さくなる。中心間距離L1は、孔径Dよりも小さい場合もあるが、図3の(B)のように大きい場合もある。図3の(A)のフィルム11では、孔12と孔12とが連なるように形成されており、したがって、このハニカム構造の多孔フィルム11の内部には連通路が形成され、隔壁13が無い。このように連通路があるハニカム構造の多孔フィルム11は、本発明の一例であり、本発明はこの態様に限定されない。例えば、図3の(A)のように、孔と孔とが連なっておらず隔壁13により独立しており、フィルムの内部に連通路がない多孔フィルム11も含まれ、このように略ハニカム構造である場合も含まれる。
【0058】
細胞を培養する素材の水に対する接触角が大きいほど、細胞培養でスフェロイドを形成し易い。そして、多孔フィルム11の平面示における全面積に対する開口面積の割合が大きいほど、水に対する接触角は大きくなる傾向がある。全面積に対する開口面積の割合は、平面示での単位面積をSU、単位面積SUにおける孔の開口部の面積の和をSAPとするときに、SAP/SUで求める値である。したがって、開口径APと孔間距離L3との制御により水に対する接触角を制御することができる。
【0059】
深さL2、底部厚みT1、孔12の疎密の程度は、後述する製造方法において水滴を発生させ始めてから水滴を蒸発させるまでの時間、溶媒を蒸発させる速度及び時間、流延すべき溶液の固形分濃度等により制御される。
【0060】
開口径APや孔径D等で決まる孔12の大きさは、厚みTAに依存する傾向がある。すなわち、開口径APや孔径Dがより小さくなるように孔12を形成する場合には、厚みTAが小さくなるように多孔フィルム12をつくるとよい。また、孔12を大きく形成する場合には厚みTAが大きくなるように多孔フィルム12をつくるとよい。厚みTAの制御方法については、後述する。
【0061】
多孔フィルム11は、厚みL1が0.05μm以上100μm以下の多孔フィルム17,33,34を製造する場合や、孔31の径D1が0.05μm以上100μm以下、隣りあう孔31の中心間距離L2が0.1μm以上120μm以下であるような多孔フィルム17を製造する場合に特に効果がある。
【0062】
多孔フィルム11は、疎水性のポリマーと温度応答性重合体との混合物からなる。ただし、式(5)で示す温度応答性重合体の式(5−I)で表す疎水性部の重合度mが100以上5000以下のように大きい場合には、疎水性のポリマーを用いずに温度応答性重合体のみでも多孔フィルム11としてもよい。
【0063】
多孔フィルム11における温度応答性重合体の質量割合を大きくするほど、多くの温度応答性部が含まれていることになるので、多孔フィルム11の温度を温度応答性部の応答温度以下にした場合の細胞の剥離し易さがさらに向上したり、水分捕捉材料としての捕捉水分量を多くすることができる。多孔フィルム11における温度応答性重合体の質量割合は、1%以上90%以下の範囲であることが好ましく、20%以上80%以下の範囲がより好ましい。この質量割合が1%よりも小さいときには、温度応答性重合体の機能、すなわち、温度応答性が十分に発現せずに培養細胞の容易な剥離ができなかったり水分捕捉材料としての水分捕捉作用が十分には得られない場合がある。一方、この質量割合が90%よりも大きいときには、疎水性部による溶媒への溶解性が十分に得られない場合があり、そのためにフィルムを製造するための溶液をつくることができないことがある。なお、上記の質量割合は、温度応答性重合体の質量をx2,多孔フィルム11の質量をy2とするときに100×x2/y2の式で求める百分率である。
【0064】
疎水性の重合体と温度応答性重合体とは、ポリマーブレンドやポリマーアロイの態様であってもよく、互いの結合の有無は問わない。ただし、製膜のための溶液をつくる際、あるいはつくった溶液を流延してフィルムとするまでの間に、形成すべき孔の開口径APよりも大きなサイズで相分離することがないような方法で混ぜ合わせることが好ましい。したがって、疎水性の重合体と温度応答性重合体の疎水性部とに親和性がある方が好ましい。なお、大きな相分離が認められる場合には、疎水性の重合体と温度応答性重合体の疎水性部との親和性を向上させるためのいわゆる相溶化剤を用いてもよい。
【0065】
疎水性の重合体と温度応答性重合体との混合物のつくり方は特に限定されず、以下の(1)〜(3)の各方法を例として挙げることができる。
(1)温度応答性重合体の原料である第1化合物と第2化合物とを重合用の溶媒に入れ、重合反応の開始前、重合反応中、重合反応の終了後のいずれかのタイミングで、この溶液の中に疎水性の重合体を加え、攪拌する。攪拌後、溶媒を除去する。
(2)疎水性の重合体が溶解している溶液中に、温度応答性重合体を加えて攪拌して混ぜ合わせる。その後、溶媒を除去する。
(3)疎水性の重合体と温度応答性重合体とを、周知の溶融混練機で混ぜ合わせる。
【0066】
式(5)で表す温度応答性重合体との混合物を構成する疎水性の重合体としては、式(7)で表すポリスチレンが好ましい。なお、ポリスチレンは、アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチックのいずれも用いることができる。また、ポリスチレンに代えて、生分解性の重合体であるポリ(ε−カプロラクトン)を疎水性の重合体として用いることができる。生分解性重合体は生体内で代謝されることが知られている。このため、疎水性の重合体として生分解性重合体を用いることにより、in vitroのみならずin vivoでの細胞リリースが可能となる期待が大いに高まる。このように、疎水性重合体として生分解性重合体を用いてつくった本発明のフィルムは、温度応答性を持ちながらも、さらに生分解するので、例えば生分解性の細胞培養基板としての利用が期待できる。
【0067】
【化9】

【0068】
図4は多孔フィルムの製造設備41の概略図である。温度応答性重合体と疎水性の重合体とを溶解した溶液42を支持体に流延して流延膜22を形成する流延膜形成工程、流延膜22の上に結露させて水滴を形成する結露工程、流延膜22から溶媒と結露により生じた水滴とを蒸発させる蒸発工程は、いずれも流延室43で実施される。流延室43で気体となった溶媒は、流延室の外部に備えられる回収装置(図示せず)で回収される。本実施形態では、流延工程と結露工程とを行うための第1エリア46と、水滴を成長させ、溶媒を蒸発させる第2エリア47と、水滴を蒸発させる第3エリア48とが区画された一体型の流延室43を用いているが、それぞれのエリアを独立させてもよい。ただし、第1エリアと第2エリアとは互いにできるだけ近くに設けられることが好ましい。以上のような第1〜第3エリア46〜48を経ることにより、流延膜22は自己組織化して所定の様態の空隙を有する多孔フィルム11となる。
【0069】
支持体として用いる流延ベルト21はローラ52,53に掛け渡され、流延ダイ56は流延ベルト21の上方に備えられる。ローラ52,53のうち、少なくとも一方は図示しない駆動装置により回転し、これにより流延ベルト21は連続走行する。ローラ52,53は、温調機54により温度を調整され、これにより、ローラ52,53に接触する流延ベルト21が温度制御される。
【0070】
第1エリア46では、流延ダイ56から溶液42が流出されると、流延ベルト21の上に流延膜22が形成される。流延膜22の走行路の上方には送風吸引ユニット61が設けられてある。送風吸引ユニット61は、加湿空気を流延膜22の近傍で流し出す送風口61aと、流延膜22の周辺気体を吸排気する吸気口61bとを有するとともに、送風系における風の温度、露点、湿度、風速、吸気系における吸引力を独立して制御する送風コントローラ(図示せず)を備える。送風口61aには、塵埃度、つまり加湿空気の清浄度を保つためのフィルタが備えられる。送風ユニット61aは流延ベルト21の走行方向に複数並べて設けられてもよい。
【0071】
ここで、送風口61aからの風の露点をTDとするとき、TD−TSで求められる値をΔTとする。ΔTが下記の式(I)を満たすように、表面温度TSと露点TDとの少なくともいずれか一方を制御する。なお、流延膜22の表面温度TSは、例えば、市販される赤外式温度計等の非接触式温度測定手段を流延膜22の近傍に設けて測定することができる。ΔTが3℃未満であると、水滴が発生しにくく、一方ΔTが30℃よりも大きいと水滴が急激に発生してしまい、水滴の大きさが不均一になったり、水滴が2次元、つまり平面に並ばずに3次元に重なってできてしまうことがある。なお、第1エリア46においては、ΔTは大きな値から小さい値に変化させることが好ましい。これにより、水滴の発生速度や発生する水滴の大きさをコントロールすることができ、2次元、つまり流延膜22の面方向に径が均一な水滴を形成することができる。
3℃≦ΔT≦30℃・・・(I)
【0072】
第1エリア46においては、流延膜22の表面温度TSは、流延ベルト21と、この流延ベルト21に対向して配された温度制御板(図示なし)とにより制御されるが、いずれか一方により制御されてもよい。また、露点TDについては、送風吸引ユニット61から出される加湿空気の条件を制御することにより制御される。
【0073】
第2エリア47には、複数の送風吸気ユニット63が流延膜22の走行路に沿って順に配される。図4では2つの送風吸気ユニットを図示するが、この数に限定されない。複数の送風吸気ユニット63のうち最も上流側のひとつは、第1エリア46の送風吸気ユニット61のすぐ下流側とされる。これは第1エリア46で形成された水滴を、一様に成長させるためである。第1エリア46と第2エリア47とが互いに離れるほど、つまり水滴を形成してから第2エリア47に入るまでの時間が長くなるほど、成長し終えたときの水滴の大きさが不均一になってしまう。
【0074】
第2エリア47では、ΔTが下記の式(II)を満たすように、表面温度TSと露点TDとの少なくともいずれか一方を制御する。表面温度TSの制御は、主に温度制御板(図示なし)によりなされる。この温度制御板は、第1エリアの温度制御板と基本的には同一の構造であり、流延ベルト21の走行方向に沿って温度を変化させることができる。また、露点TDの制御は送風口63aからの加湿空気の条件制御によりなされる。なお、この第2エリア47においては、流延膜22の表面温度TSは、上記と同様な温度測定手段を流延膜22の近傍に設けて測定することができる。第2エリア47の条件をこのように設定することにより、水滴をゆっくり成長させて毛管力により水滴の配列を促し、均一な水滴を密に形成することができる。ΔTが0℃以下の場合には、水滴の成長が不十分で密な状態に形成せず、孔の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。また、ΔTが10℃よりも大きいと、水滴が局所的に多層化、つまり三次元的に形成され、孔の形状や大きさ及び多孔フィルムにおける孔の配列が不均一となることがある。
0℃<ΔT≦10℃・・・(II)
【0075】
第2エリア47においては、表面温度TSは露点温度TDと略同等であることが望ましい。
【0076】
水滴を成長させている間に、できるだけ多くの溶媒を流延膜22から蒸発させることが好ましい。第2エリア47における表面温度TSと露点TDとを上記範囲にすることにより、溶媒を十分に蒸発させるとともに、急激な蒸発を抑制することができる。また、水滴を蒸発させずに溶媒だけを選択的に蒸発させることが好ましい。したがって、溶媒としては、同温同圧下において水滴よりも蒸発速度が速いものが好ましい。これにより、溶媒の蒸発に伴い水滴が流延膜22の内部に入り込むことがより容易になる。
【0077】
第3エリア48には、複数の送風吸気ユニット71〜74が流延膜22の走行路に沿って順に配される。図4では4つの送風吸気ユニットを図示しているがこの数に限定されない。送風吸気ユニット71は、前述の送風吸気ユニット61と同じ構成を有するが、これに限定されるものではない。
【0078】
表面温度TSと露点TDとが下記の式(III)を満たすように、表面温度TSと露点TDとの少なくともいずれか一方を制御する。表面温度TSの制御は、主に温度制御板76によりなされる。また、露点TD制御は送風口63aからの乾燥空気の条件制御によりなされる。なお、この第3エリア48においては、流延膜22の表面温度TSは、上記と同様な温度測定手段を流延膜22の近傍に設けて測定することができる。第3エリア48の条件をこのように設定することにより、水滴の成長を止めて蒸発させ、均一な孔をもつ多孔フィルム17を製造することができる。TS≦TDとすると、水滴の上にさらに結露して、形成された多孔構造を破壊してしまうことがある。
TS>TD・・・(III)
【0079】
第3エリア48では、水滴の蒸発を主たる目的としているが、第3エリア48に至るまでに蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させる。
【0080】
第3エリア48における水滴の蒸発工程では、送風吸引ユニット71〜74に代えて減圧乾燥装置を用いてもよい。第3エリア48の内部の空気を吸引して減圧にすることにより乾燥する減圧乾燥を行うことで、溶媒と水滴との蒸発速度をそれぞれ調整することがより容易になる。これにより、有機溶媒の蒸発と水滴の蒸発とをより良好にし、水滴をより良好に流延膜22の内部に形成することができるので、前記水滴が存在する位置に、大きさ、形状が制御された孔31を形成することができる。
【0081】
フィルム製造設備41は、さらに、流延膜22を流延ベルト21から剥ぎ取る際に、流延ベルト21から剥離した多孔フィルム17を支持する剥取ローラ57を備え、多孔フィルムは次工程に送られる。次工程とは、例えば、多孔フィルム17に種々の機能を施すための機能付与工程や、多孔フィルム17をロール状に巻き取る巻取工程等である。
【0082】
本発明において、送風吸引ユニット61,63,64からの加湿空気の送風速度は、流延膜22の移動速度、つまり流延ベルト21の走行速度との相対速度が0.05m/秒以上20m/秒以下の範囲であることが好ましい。前記相対速度が0.05m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されないうちに、流延膜22が第3エリア48(図4参照)に導入されてしまうことがある。一方、前記相対速度が20m/秒を超えると、流延膜22の露出面が乱れたり、結露が充分に進行しなかったりする場合がある。
【0083】
なお、本実施形態では、連続的に溶液42を流延することにより、長尺の多孔フィルム17を製造する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、溶液42を断続的に流延して、シート状の多孔フィルムを次々に製造する場合も含まれる。また、本実施形態では、第2エリア47から第3エリア48にかけての搬送方向や第3エリア48から剥ぎ取りにかけての搬送方向を曲線としているが、流延から多孔フィルム11を得るまでのすべての搬送路が平面となるように搬送方向を直線にしてもよい。
【0084】
なお、幅方向の長さが流延ダイ56よりも短い流延ダイを、支持体の幅方向に複数ならべて、幅が小さな流延膜を形成することもできる。さらに、流延工程における支持体の搬送を、より短い時間間隔で間欠的にすることにより、より小さなキャスト膜を支持体上に複数形成することもできる。また、流延ダイの溶液の流出口を幅方向で複数に仕切り、溶液42を断続的に流延することにより、短冊状の多孔フィルムを次々と製造することもできる。さらに、特開2007−291367号公報の多孔フィルムの製造条件を適用することができる。
【0085】
また、多孔フィルム11は、バッチ式流延でも製造することができる。例えば、以下の方法である。ガラス板等を流延用の支持体として用い、この支持体の上に、溶液を載せて延展して流延膜を形成する。そして、支持体を冷却して流延膜を冷却したり、流延膜周辺に加湿空気を流す等して結露させる。流延膜から溶媒と結露により生じた水滴とを蒸発させて多孔フィルム11とする。なお、ガラス等の支持体に形成した流延膜から多孔フィルム11をつくる場合には、ガラス板上の流延膜を、図4のような、露点、湿度、温度等が独立制御される第1エリア46〜第3エリア48に順次おくとよい。
【0086】
図5は、本発明のフィルムの第2の態様であり、フィルムの断面図である。このフィルム81は、フィルム面の一方に複数の突起82を有する。突起82は、フィルム面の下方に向かうほど径が大きくなる柱形状である。各突起82の高さは、互いに同じとされている。突起82の端部における径L3は1nm以上5μm以下、隣り合う突起82と突起82との中心間距離L4は10nm以上100μm以下、突起82と突起82との距離L5は5nm以上100μmの範囲でそれぞれ一定となっている。
【0087】
フィルム81は、一方のフィルム面に径が互いに同じである孔を複数有するハニカム構造の多孔フィルムを、厚み方向の中央部で切断して、前記一方のフィルム面側を除去することにより、製造することができる。前記中央部とは、厚み方向における中央とは限らず、上面と下面との間であればよい。そして、ハニカム構造の多孔フィルムでは、開口径APよりも孔径Dが大きくなるように孔が形成されており、厚み方向で孔径Dが最大となっている位置、すなわち隔壁13が最も薄くなっている位置で切断することが好ましい。フィルム81は、図6に示すように、多孔フィルム11の孔が形成されてある一面に対し、粘着剤を表面に有するフィルム84を貼り付け、このフィルム84を矢線Aで示す引っ張り方向に、剥がすように引っ張ることにより、容易に製造することができる。この方法によると、厚み方向で孔径Dが略最大となる位置、すなわち、孔と孔との間のポリマー部分、すなわち隔壁13の厚みTPが最も小さい位置で、多孔フィルム11が切断され、簡易にフィルム81を製造することができる。
【0088】
図7は、本発明のフィルムの第3の態様であり、フィルムの断面図である。このフィルム91は、一方のフィルム面に突起92が備えられる。この突起92は、先端にちかづくほど径が小さくなる針状の突起である。この形状に代えて、同一径で延びている突起部の先端のみが尖った形状の突起としてもよい。各突起92の高さは、互いに同じとされている。フィルム91では、隣り合う突起92の先端同士の距離L5が開口径であり、距離L5は5nm以上100μm以下の範囲で一定とされている。このフィルム91は、開口径APが同じフィルム81(図5参照)と比べて、水に対する接触角がより大きく、細胞のスフェロイド化においてさらに大きな効果がある。このように、多孔フィルム11、フィルム81、フィルム91の順に、水に対する接触角が大きくなるので、疎水性を示すときの疎水性の強さが大きくなる。したがって、こうした形状により、疎水性を示すときの疎水性の強さを制御することができると言える。
【0089】
フィルム91も、フィルム81と同様に、多孔フィルム11から同じ方法でつくることができる。すなわち、多孔フィルム11における開口径AP、孔径D、中心間距離L1を制御することにより、フィルム81とフィルム91とをつくりわけることができる。なお、ハニカム構造の多孔フィルム11の孔と孔とが連通して連通路が形成されている場合には、フィルム81の製造方法と同じ方法で厚み方向の中央部で切断すると、その連通路で容易に切断される。これは、連通路が形成されている位置が、厚み方向において最も強度が弱いからであり、本実施形態のようにフィルム84を利用した剥ぎ取りによる製造方法は、このようなハニカム構造の性質を生かした簡易な製造方法と言える。
【0090】
以下、本発明の実施例を挙げるが本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0091】
[実験1]〜[実験5]
第1化合物としてのDAmと第2化合物としてのNIPAmとの物質量比(モル比)を表1のように変えて、式(5)で表す5種類の温度応答性重合体を合成した。重合反応を実施する前に、DAm、NIPAm、AIBNをそれぞれ再結晶により精製した。DAmの再結晶はエチルアセテートで、NIPAmの再結晶はトルエン:ヘキサン=1:1の混合物で、AIBNの再結晶はメタノールで実施した。
【0092】
DAmとNIPAmとを表1の各質量で溶媒としてのベンゼンに溶かす。そして開始剤としてのAIBNをこの溶液に入れる。この反応溶液を凍結脱気した後に、反応溶液が入っている反応器内を窒素置換する。そして、反応溶液を65℃程度になるように加熱して重合反応を開始させる。6時間の重合反応後、反応溶液の温度を室温(例えば、25℃±5℃)に戻し、再沈殿により析出させた。再沈殿させるときには、反応溶液をアセトニトリルあるいは熱ヘキサン中に入れた、そして、遠心分離により白色沈殿を得、得られた白色沈殿を室温(例えば25℃±5℃)で一晩減圧乾燥し、温度応答性重合体の固形物を得た。
【0093】
得られた各温度応答性重合体につき、収量(単位;g)、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Mw/Mn、1H−NMR測定、FT−IR測定をそれぞれ実施した。これらの結果は表1に示す。ただし、実験3については、モノマーの物質量比が実験2と同じであったのでFT−IR測定は実施しなかった。
【0094】
表1の「NMR測定結果」欄には、核磁気共鳴測定装置(日本電子(株)(JEOL)製、型式:ECX−400)による吸収スペクトルチャートを示す図面番号を記載する。
【0095】
また、表1の「FT−IR測定結果」欄には、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、型式:FT−200)によるスペクトルチャートを示す図面番号を記載する。なお、本測定は、KBrペレット中で実施したものである。
【0096】
【表1】

【0097】
図8〜図11のNMRチャートによると、実験1〜5のいずれも、モノマーであるDAm及びNIPAmの二重結合のピークが無く、式(5)の構造を示す各ピークが見られることが確認された。なお、図12には、式(5)の構造における各結合に符号を付している。
【0098】
図13の(a)〜(d)の各IRチャートによると、実験1,2,4,5のいずれも、モノマーであるDAm及びNIPAmの二重結合の吸収ピークが無く、式(5)の構造を示す各ピークが見られることが確認された。なお、図14には、式(5)の構造における各構造に符号を付している。
【実施例2】
【0099】
ポリスチレンと実施例1の実験1,実験2,実験4,実験5で得られた各温度応答性重合体とからなる多孔フィルム11を製造した。まず、多孔フィルム11における温度応答性重合体の質量割合が10%となるように、ポリスチレン90質量部と温度応答性重合体10質量部とを溶媒に溶解して、10mg/mLの固形分濃度の溶液42をつくった。溶媒はクロロホルムである。この溶液42を流延支持体としてのガラス板の上に35mL〜40mL流延して流延膜22を形成した。
【0100】
図4のフィルム製造設備41に代えて、この第1エリア46、第2エリア47、第3エリア48が直線状に配され、流延ダイ56が無い第1エリア46を備えた多孔フィルム製造設備(図示無し)を用いて多孔フィルム11を製造した。この多孔フィルム製造設備は、支持体としてのガラス板を、第1エリア46から第3エリア48まで搬送する搬送手段を備える。この搬送手段を用いてガラス板を走行させることにより流延膜22は第1エリア46、第2エリア47、第3エリア48を順次通過した。第1〜第3エリア46〜48における各ΔTの条件をそれぞれ10℃≦ΔT≦20℃、0℃<ΔT≦5℃、−30℃≦ΔT≦−0.5℃とした。ただし、ΔTは、上流側のエリアよりも下流側のエリアの方が小さくなるようにした。各多孔フィルム11は、図3(B)のように隔壁13が有る多孔フィルム11である。各多孔フィルム11の表面の光学顕微鏡写真を図15に、断面の走査型電子顕微鏡写真を図16に示す。図15及び図16の各写真に記載する実験番号は、それぞれ、用いた温度応答性重合体をつくった実施例1における実験番号である。光学顕微鏡は、オリンパス(株)製のBX51であり、走査型電子顕微鏡は、日立製ミニスコープTM1000である。
【実施例3】
【0101】
実施例2により得られ隔壁13がある多孔フィルム11から、柱状の突起82を有するフィルム81を製造した。使用した多孔フィルム11は、実施例1の実験1で得られた温度応答性重合体を使用した多孔フィルム11であり、図15の「実験1」として写真を示した多孔フィルム11である。
【0102】
得られたフィルム81の走査型電子顕微鏡写真を図17に示す。用いた顕微鏡は、前述の日立製ミニスコープTM1000である。得られたフィルム81は、突起82の端部における径L3は0.8μmで一定、隣り合う突起82と突起82との中心間距離L4は5.0μmで一定、突起82と突起82との距離L5は4.3μmで一定であった。
【実施例4】
【0103】
実施例2で得られた多孔フィルム11のうち、実施例1の実験1,2,4で得られた各温度応答性重合体を用いた3つの多孔フィルム11から、それぞれ柱状の突起82を有するフィルム81をつくった。そして、各フィルム81について、突起82があるフィルム面上での水滴の接触角CAsを、フィルム81の温度を変えて測定した。
【0104】
図18のグラフは、3つのフィルム81における水滴の接触角のグラフである。縦軸は接触角CAs(単位:°)、横軸は各フィルム81の温度(単位:℃)を示す。図18の四角が示す「実験1」とは、フィルム81に含まれる温度応答性重合体が実施例1の実験1で得られたものであることを意味し、三角が示す「実験2」とは実施例1の実験2、丸が示す「実験4」とは実施例1の実験4で得られたものであることをそれぞれ意味する。
【0105】
本実施例4の結果、図18に示すように、30℃以上の温度では接触角CAsが150°程度と、いわゆる超撥水領域といわれるような高い接触角を示すが、温度を8℃付近にまで冷却すると、接触角CAsは90°以下まで低下した。このことから、温度応答性重合体を含む本発明のフィルムは、温度を下げることによって高い疎水性から親水性へと変化することがわかる。
【実施例5】
【0106】
実施例2におけるポリスチレンを、生分解性ポリマーの一種であるポリ(ε−カプロラクトン)に代えた。そして、このポリ(ε−カプロラクトン)と、実施例1の実験1で得られた温度応答性重合体とからなる多孔フィルム11を製造した。ポリ(ε−カプロラクトン)と温度応答性重合体との質量割合等の他の条件は、実施例2と同じである。得られたフィルム11は、図3の(B)に示すように、隔壁13が形成されてある。
【0107】
得られた多孔フィルム11の表面の光学顕微鏡写真を図19に示す。この多孔フィルム11の開口径APは2.5μmであり、隔壁13が最も薄くなる断面における隔壁13の厚みTPは500nmであった。この結果から、疎水性の重合体として生分解性ポリマーであるポリ(ε−カプロラクトン)を用いた場合にも、ポリスチレンを用いた場合と同様に、温度応答性をもつ多溶液を孔フィルム11が得られることがわかる。なお、図19の写真中の白線の長さは5μmである。
【実施例6】
【0108】
図4の多孔フィルム製造設備41を用いて、多孔フィルム11を製造した。溶液42は、実施例2で用いた溶液のうちポリスチレン及び実施例1の実験1で得られた温度応答性重合体を用いた溶液42と同じである。流延ダイ56からの溶液42の流量を一定とし、ローラ52,53の回転速度を変化させることにより流延ベルト21の走行速度を変えることにより、流延膜22の厚みを変化させた。そして、流延ベルト21の走行速度毎に、得られた多孔フィルムの開口径APを求めた。流延ベルト21と、得られた多孔フィルム11の開口径APとの関係を図20に示す。
【0109】
図20のグラフにおいて、縦軸は開口径AP(単位;μm)、横軸は、流延ベルト21の走行速度(単位;μm/s)である。この結果により、流延ベルト21の走行速度を大きくするほど、開口径APが小さな多孔フィルム11を製造することができることがわかる。例えば、開口径APが6μmであるときの走行速度を、2倍の走行速度に変えることにより、約2μmの開口径APをもつ多孔フィルム11をつくることができる。溶液42の流量が一定である場合には、流延ベルト21の走行速度が大きくなるほど流延膜22の厚みは小さくなる。したがって、流延膜22の厚みを小さくするほど、開口径APが小さな多孔フィルム11をつくることができることになる。なお、開口径APが小さいほど孔径Dは小さくなるので、流延膜22の厚みを小さくするほど、孔径Dも小さくすることができる。なお、この実施例6で用いた溶液42に代えて、実施例2で用いた溶液のうちポリスチレン及び実施例1の実験2や実験4で得られた温度応答性重合体を用いた溶液42を使用した場合であっても、開口径APと走行速度とがこの実施例6の結果と同様な傾向を示す。
【0110】
また、多孔フィルム11からは、突起82をもつフィルム81や突起92をもつフィルム81,91をつくることができるので、流延膜22の厚みを小さくするほど、突起同士の距離L5が小さなフィルム81,91をつくることができる。したがって、流延膜22の厚みを制御することにより、フィルム81,91の水に対する接触角をも制御できるようになる。これにより、親水性を示す温度における親水性の強さを、厚みの制御によっても調整できることがわかる。
【実施例7】
【0111】
実施例1の実験1で得られた温度応答性重合体の温度応答性を調べた。重合体の温度応答性は、この重合体を溶解した溶液の光の透過率を求めることで調べることができる。そして、これで求めた下限臨界相溶温度LCST(lower critical solution temperature,下限臨界溶解温度とも言われる)が、温度応答性重合体の応答温度である。なお、この温度応答性重合体のみで、フィルム面が平滑なフィルムを製造した場合に、前述のように、接触角を基準として疎水性と親水性とが変化する温度が、このLCSTに一致する。
【0112】
LCSTを求める方法は、具体的には以下の通りである。まず、温度応答性重合体をクロロホルム中に溶解し、200mg/ミリリットルの濃度の溶液をつくる。この溶液を、光路長が1cmの石英セルに入れて、この石英セルを紫外−可視分光光度計のセルホルダにセットする。セルホルダには、温度可変のジャケットが備えられ、このジャケットにより石英セル内の溶液温度は所定温度に変化する。そして、波長λが600nmの光における溶液の透過率を、10℃から30℃の範囲の互いに異なる温度でそれぞれ測定した。測定結果は、図21に示す。なお、用いた紫外−可視分光光度計は、日本分光(株)製のV−530である。
【0113】
図21のグラフにおいては、縦軸は光の透過率(単位;%)であり、横軸は温度(単位;℃)である。なお、透過率は、理論的には100%が最大値であるが、温度応答性重合体の溶液の屈折率は温度によって変化するので、100%を超えた値が測定される場合もあるが、これは誤差範囲とみなしてよい。四角で示すポイントが、測定値である。各測定値を温度が低い方から順に直線で結ぶと、15℃近傍では下に凸、27℃近傍では上に凸となる。各ポイントを曲線で結んだと仮定して、下に凸の部分から凸の部分へと変化する変曲点を求めると、約24℃のところが変曲点となる。したがって、この温度応答性重合体のLCSTは24℃となり、実施例1の実験1でつくった温度応答性重合体は、24℃の応答温度をもつことが確認された。
【符号の説明】
【0114】
11 多孔フィルム
12 孔
21 支持体
22 流延膜
41 フィルム製造設備
42 溶液
46〜48 第1〜第3エリア
81,91 フィルム
82,92 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径が互いに同じである複数の孔、または、各間の距離が互いに同じであるように形成された複数の突起部を、フィルム面に有し、
両親媒性の第1単独重合体を生成可能な第1化合物と、親水性と疎水性とに所定の温度で可逆的に変化する温度応答性の第2単独重合体を生成可能な第2化合物との重合反応により得られ、前記第1単独重合体の第1繰り返し単位が複数連なる疎水性部と、前記第2単独重合体の第2繰り返し単位が複数連なる温度応答性部とを有する重合体を含むことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記重合体は前記疎水性部と前記温度応答性部との共重合体であることを特徴とする請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記重合体は、前記第1単独重合体の親水性部に、前記温度応答性部が付加されている構造であることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム。
【請求項4】
前記第1繰り返し単位は下記式(1)の構造を有し、前記第2繰り返し単位は下記式(2)の構造を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のフィルム。
【化10】

【化11】

【請求項5】
径が互いに同じである複数の孔、または、各間の距離が互いに同じであるように形成された複数の突起部を、フィルム面に有し、
下記式(1)で表される第1繰り返し単位と下記式(2)で表される第2繰り返し単位とを有する重合体が含まれることを特徴とするフィルム。
【化12】

【化13】

【請求項6】
疎水性の重合体を含むことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
両親媒性の第1単独重合体を生成可能な第1化合物と、親水性と疎水性とに所定の温度で可逆的に変化する温度応答性の第2単独重合体を生成可能な第2化合物との重合反応により得られる第1重合体と、疎水性の第2重合体とが有機溶媒に溶解している溶液を、支持体に流延して流延膜を形成する流延膜形成工程と、
前記流延膜に結露させる結露工程と、
前記溶媒と前記結露工程で生じた水滴とを前記流延膜から蒸発させて、フィルム面に複数の孔が形成された多孔フィルムとする蒸発工程とを有し、
前記第1重合体は、前記第1単独重合体の第1繰り返し単位が複数連なる疎水性部と、前記第2単独重合体の第2繰り返し単位が複数連なる温度応答性部とを有することを特徴とするフィルム製造方法。
【請求項8】
ハニカム構造となるように前記複数の孔が形成された前記多孔フィルムを、厚み方向の中央部で切断して、前記孔が形成されてある前記フィルム面側を除去することにより、
フィルム面に複数の突起を有するフィルムとすることを特徴とする請求項7記載のフィルム製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−293019(P2009−293019A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112222(P2009−112222)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】