説明

フィルム部材、フィルム成形物、フィルム部材の製造方法、フィルム成形物の製造方法

【課題】電気配線等の設計の自由度を高めたフィルム部材やフィルム成形物を提供する。
【解決手段】フィルム層と、所定の画像が形成された加飾層と、金属配線が形成された金属配線層と、形状保持層と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム部材、フィルム成形物、フィルム部材の製造方法、フィルム成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、保護層と、着色材が含有された接着層と、基盤層と、を備えた加飾フィルムが知られている。また、この加飾フィルムをフィルムインモールド成形により成形されたプラスチック成形体が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−125680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のプラスチック成形体は、例えば、自動車の各種スイッチ類をまとめた操作盤(コンソール)や電子機器の外装等に用いられる。ところで、高度な電子化の発達により、上記の操作盤や外装の内部は、電気配線が密に張り巡らされており、設計の自由度が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるフィルム部材は、フィルム層と、所定の画像が形成された加飾層と、金属配線が形成された金属配線層と、形状保持層と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、加飾層と金属配線層を備え、加飾層によって視覚的に美観を与えるとともに、他方で金属配線層では電気的接続が可能となる。そして、例えば、当該フィルム部材を成形することにより、これまで困難であった三次元の配線形成を容易に実現することが可能となる。この場合、特に、電気的接続が可能となると、例えば、自動車の操作盤に用いた場合には、内部の電気配線を省くことができ、設計の自由度を高めることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるフィルム部材は、前記フィルム層と、前記フィルム層上に形成された前記加飾層と、前記加飾層上に形成された接着層と、前記接着層上に配置された前記形状保持層と、前記形状保持層上に形成された前記金属配線層と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、加飾層と金属配線層とを三次元成形品として実施することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるフィルム部材は、前記フィルム層と、前記フィルム層上に形成された前記加飾層と、前記加飾層上に形成された第1接着層と、前記第1接着層上に形成された遮光層と、前記遮光層上に形成された第2接着層と、前記第2接着層上に形成された前記金属配線層と、前記金属配線層上に形成された前記形状保持層と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、加飾層と金属配線層とを三次元成形品として実施することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるフィルム部材の前記金属配線層は、カーボンナノチューブで形成されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、高電気伝導性を有するフィルム部材を提供することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるフィルム部材では、前記金属配線層における前記金属配線が網の目形状を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、フィルム部材を延ばした場合に、金属配線に対する応力が緩和されるので、配線の切断を防止することができる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかるフィルム成形物は、上記のフィルム部材をフィルムインモールドで成形して、モールド樹脂層を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、加飾層と金属配線層を備えた三次元成形物を提供することができる。これにより、例えば、自動車の操作盤に用いた場合には、内部の電気配線を省くことができ、設計の自由度を高めることができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかるフィルム成形物は、前記モールド樹脂層の表面から前記金属配線層の表面まで通じる端子案内孔を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、モールド樹脂層の表面から金属配線層の表面まで通じる端子案内孔を通じて、容易に電気的接続を行うことができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかるフィルム成形物は、前記フィルム層の表面から前記金属配線層の表面まで通じる端子案内孔を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、フィルム層の表面から金属配線層の表面まで通じる端子案内孔を通じて、容易に電気的接続を行うことができる。
【0022】
[適用例9]本適用例にかかるフィルム部材の製造方法は、フィルム層上に所定の画像を形成する加飾層形成工程と、
金属配線を形成する金属配線層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、加飾層と金属配線層を備え、加飾層によって視覚的に美観を与えるとともに、他方で金属配線層では電気的接続が可能となる。そして、例えば、当該フィルム部材を成形することにより、これまで困難であった三次元の配線形成を容易に実現することが可能となる。この場合、特に、電気的接続が可能となると、例えば、自動車の操作盤に用いた場合には、内部の電気配線を省くことができ、設計の自由度を高めることができる。
【0024】
[適用例10]本適用例にかかるフィルム成形物の製造方法は、上記のフィルム部材の製造方法によって製造されたフィルム部材を用いてフィルムインモールドを行い、モールド樹脂層を形成するモールド樹脂層形成工程を含むことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、加飾層と金属配線層を備えた三次元成形物を提供することができる。これにより、例えば、自動車の操作盤に用いた場合には、内部の電気配線を省くことができ、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態にかかるフィルム部材の構成を示す断面図。
【図2】第1実施形態にかかるフィルム部材の金属配線のパターン例を示す模式図。
【図3】第1実施形態にかかるフィルム部材の製造方法を示す工程図。
【図4】第1実施形態にかかるフィルム成形物の構成を示す断面図。
【図5】第1実施形態にかかるフィルム成形物の製造方法を示す工程図。
【図6】第2実施形態にかかるフィルム部材の構成を示す断面図。
【図7】第2実施形態にかかるフィルム部材の製造方法を示す工程図。
【図8】第2実施形態にかかるフィルム成形物の構成を示す断面図。
【図9】第2実施形態にかかるフィルム成形の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0028】
[第1実施形態]
(フィルム部材の構成)
まず、第1実施形態にかかるフィルム部材の構成について説明する。図1は、第1実施形態にかかるフィルム部材の構成を示す断面図である。図1に示すように、フィルム部材1Aは、フィルム層11と、所定の画像が形成された加飾層12と、金属配線が形成された金属配線層15と、形状保持層としてのバッキングシート14等を備えている。
【0029】
さらに、詳細には、フィルム層11と、フィルム層11上に形成された加飾層12と、加飾層12上に形成された接着層13と、接着層13上に配置されたバッキングシート14と、バッキングシート14上に形成された金属配線層15とを備えている。なお、本実施形態では、フィルム層11の表面には、フィルム層11を保護する保護層20が設けられている。
【0030】
フィルム層11は、表面が平滑で透明性を有する熱可塑性樹脂から構成される。上記透明性とは加飾層12が透視可能な程度を意味する。従って、無色透明でもよいし、着色透明であってもよい。フィルム層11は、例えば、10〜500μm程度である。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の1種単独或いは2種以上の混合物等が用いられる。なお、本実施形態では、フィルム層11上に保護膜20を備えたが、当該保護膜20を省略してもよい。この場合において、フィルム層11に、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤などの滑剤を添加してもよい。このようにすれば、耐擦傷性等を保持することができる。
【0031】
加飾層12は、図柄や絵柄等の画像を形成することにより装飾効果を高めるものである。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼調模様、煉瓦積調模様、布目模様、皮絞模様、文字、記号、図形、幾何学模様、単独又は組み合わせで適宜形成される。加飾層12は、例えば、インクジェット法を用いて形成することができる。この場合、紫外線硬化型インクを吐出ヘッドから液滴として、フィルム層11上に紫外線硬化型インクを塗布する。そして、塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射して、フィルム層11上に紫外線硬化型インクを定着させることにより形成される。なお、インクジェット法で用いられるインクは、紫外線硬化型のものに限られず、赤外線硬化型や可視光硬化型等のインクでもよい。この場合、硬化に適した光源を用いればよい。また水系インクや溶剤系インクでもよい。さらには、インクジェット法に限らず、例えば、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等を適宜適用することができる。
【0032】
バッキングシート14は、成形した際に形状を保持するものである。例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の1種単独或いは2種以上の混合物等が用いられる。また、バッキングシート14は、透明性が要求されない場合には、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)を用いてもよい。
【0033】
金属配線層15は、金属配線が形成された層である。金属配線層15は、例えば、インクジェット法を用いて形成することができる。この場合、導電性微粒子を含む機能液を液滴として吐出し、バッキングシート14上に機能液を塗布する。そして、塗布された機能液を固化させることにより金属配線が形成される。導電性微粒子は、数nm〜数十nmの粒径を有し、例えば銀、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム等の金属、あるいはこれらの合金である。ここで言う機能液の固化とは、機能液に含まれる導電性微粒子同士が融着して、金属配線の導電性を示す状態のことである。
【0034】
また、金属配線を、カーボンナノチューブを用いて形成してもよい。カーボンナノチューブは、高い電気伝導性、優れた機械的特性を有するため、高品質なフィルム部材、成形物を提供することができる。
【0035】
なお、金属配線層15の形成は、インクジェット法に限らず、例えば、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等を適宜適用することができる。
【0036】
図2は、第1実施形態にかかるフィルム部材の金属配線のパターン例を示す模式図である。図2に示すように、金属配線層15における金属配線15aは、網の目形状(メッシュ形状)を有している。これにより、例えば、成形時においてフィルム部材が延ばされたときに応力が緩和され金属配線15aの断線を防止することができる。なお、例えば、金属配線15aの形成位置や成形部位等を考慮して、金属配線15aの幅、厚み、網の目形状の密度等を適宜設定することができる。
【0037】
(フィルム部材の製造方法)
次に、第1実施形態にかかるフィルム部材の製造方法について説明する。図3は、第1実施形態にかかるフィルム部材の製造方法を示す工程図である。図3に示すように、フィルム部材の製造方法は、フィルム層上に所定の画像を形成する加飾層形成工程と、金属配線を形成する金属配線層形成工程と、を含むものである。以下、詳細に説明する。
【0038】
まず、図3(a)の加飾層形成工程では、フィルム層11上に加飾層12を形成する。例えば、インクジェット法を用いて、フィルム層11に向けて、機能液を液滴として吐出し、フィルム層11上に機能液を塗布する。そして、塗布された機能液を固化させることにより、加飾層12が形成される。なお、加飾層12の形成方法は、インクジェット法に限定されず、例えば、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等を適宜適用することができる。
【0039】
次いで、図3(b)の接着剤塗布工程では、加飾層12上に接着剤13aを塗布する。
【0040】
次いで、図3(c)のバッキングシート配置工程では、接着剤13a上にバッキングシート14を配置し、接着剤13aを固化することにより、接着層13が形成されるとともに、接着層13上にバッキングシート14が配置される。
【0041】
次いで、図3(d)の金属配線層形成工程では、バッキングシート14上に金属配線を形成する。例えば、インクジェット法を用いて、フィルム層11に向けて、導電性微粒子を含む機能液を液滴として吐出し、バッキングシート14上に機能液を塗布する。そして、塗布された機能液を固化させることにより、金属配線が形成される。また、カーボンナノチューブを含む機能液を液滴として吐出し、これを固化して金属配線を形成してもよい。さらに、金属配線層形成工程では、図2に示すように、網の目形状に金属配線15aを形成してもよい。なお、加飾層12の形成方法は、インクジェット法に限定されず、例えば、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等を適宜適用することができる。
【0042】
以上、上記工程を経ることにより、フィルム部材1Aが形成される(図1参照)。
【0043】
(フィルム成形物の構成)
次に、第1実施形態にかかるフィルム成形物の構成について説明する。図4は、第1実施形態にかかるフィルム成形物の構成を示す断面図である。図4に示すように、フィルム成形物10Aは、フィルム部材1Aをフィルムインモールドして、モールド樹脂層22を備えたものである。本実施形態では、金属配線層15を覆うようにモールド樹脂層22が形成されている。なお、フィルム部材1Aの構成は、図1と同様なので、説明を省略する。
【0044】
モールド樹脂層22は、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を加熱熔融して液状乃至流動状態となったもの、或いは二液硬化型、触媒硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の未硬化液等で構成されている。
【0045】
また、本実施形態のフィルム成形物10Aには、モールド樹脂層22の表面から金属配線層15の表面まで通じる端子案内孔27が設けられている。これにより、外部との電気接続が可能となる。
【0046】
(フィルム成形物の製造方法)
次に、第1実施形態にかかるフィルム成形物の製造方法について説明する。図5は、第1実施形態にかかるフィルム成形物の製造方法を示す工程図である。本実施形態のフィルム成形物の製造方法は、フィルム部材1Aを用いてフィルムインモールドを行ってモールド樹脂層22を形成するモールド樹脂層形成工程を含むものである。以下、詳細に説明する。
【0047】
まず、図5(a)に示すように、フィルム部材1Aを用意する。なお、フィルム部材1Aの製造方法は、図3に示す製造方法と同様なので説明を省略する。
【0048】
次いで、図5(b)に示すように、フィルム部材1Aを成形する。本実施形態では、真空成形型30を用いて、フィルム部材1Aを真空成形する。具体的には、加熱により軟化したフィルム部材1Aを真空成形型30上に載置し、真空成形型に設けられた吸引孔(図示せず)から空気を吸引する。そうすると、図5(b)に示すように、真空成形型30の表面形状に倣ったフィルム部材1Aaが形成される。
【0049】
次いで、図5(c)に示すように、真空成形されたフィルム部材1Aaを用いて射出成形する。具体的には、真空成形されたフィルム部材1Aaを射出成形型の第1金型31aと第2金型31bとで挟み込み、モールド樹脂注入口31cからモールド樹脂をフィルム部材1Aaに向けて注入する。そうすると、フィルム部材1Aaにモールド樹脂22aが金型内に充填される。そして、モールド樹脂22aを固化させた後、第1金型31aと第2金型31bを開放させ、射出成形型から射出成形品を取出す。なお、本射出成形型の第2金型31bには、立てピン(図示せず)が設けられており、フィルム部材1Aaを第1金型31aと第2金型31bとで挟んだときに、立てピンの頂部がフィルム部材1Aaの金属配線層15に接触するように構成されている。このようにして、端子案内孔27が形成される。
【0050】
以上、上記工程を経ることにより、フィルム成形物10Aが形成される(図4参照)。
【0051】
従って、第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0052】
フィルム部材1Aおよびフィルム成形物10Aでは、加飾層12と金属配線層15を具備した。これにより、加飾層12は目視において装飾性を与えるとともに、他方で金属配線層15では電気的接続が可能となり、設計の自由度を高めることができる。例えば、自動車の操作盤に用いた場合には、モールド樹脂層22に設けられ端子案内孔27から電気回路パターンに形成された金属配線層15に接続することにより、電気配線の引き回し本数を省くことができる。
【0053】
[第2実施形態]
(フィルム部材の構成)
次に、第2実施形態にかかるフィルム部材の構成について説明する。図6は、第2実施形態にかかるフィルム部材の構成を示す断面図である。図6に示すように、フィルム部材1Bは、フィルム層11と、所定の画像が形成された加飾層12と、金属配線が形成された金属配線層15と、形状保持層としてのバッキングシート14等を備えている。
【0054】
さらに、詳細には、フィルム層11と、フィルム層11上に形成された加飾層12と、加飾層12上に形成された第1接着層13Aと、第1接着層13A上に配置された遮光層19と、遮光層19上に形成された第2接着層13Bと、第2接着層13B上に形成された金属配線層15と、金属配線層15上に形成されたバッキングシート14とを備えている。なお、本実施形態では、フィルム層11の表面には、フィルム層11を保護する保護層20が設けられている。そして、フィルム層11の表面から金属配線層15の表面まで通じる端子案内孔28を備えている。なお、本実施形態では、フィルム層11の表面には、フィルム層11を保護する保護層20が設けられている。このため、端子案内孔28は、保護膜20表面から金属配線層15の表面まで通じて形成されている。
【0055】
フィルム層11、加飾層12、金属配線層15、バッキングシート14の形態等については第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0056】
遮光層19は、保護膜20側から加飾層12を目視した場合に、金属配線層15等のパターンや着色等が透けて見えることを防止するための層である。遮光層19は、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)等を適用することができる。
【0057】
図2は、第1実施形態にかかるフィルム部材の金属配線のパターン例を示す模式図である。図2に示すように、金属配線層15における金属配線15aは、網の目形状(メッシュ形状)を有している。これにより、延ばしたときに応力緩和で金属配線15aの断線を防止することができる。なお、例えば、金属配線15aの形成位置や成形部位等を考慮して、金属配線15aの幅、厚み、網の目形状の密度等を適宜設定することができる。
【0058】
(フィルム部材の製造方法)
次に、第2実施形態にかかるフィルム部材の製造方法について説明する。図7は、第2実施形態にかかるフィルム部材の製造方法を示す工程図である。図7を示すように、フィルム部材の製造方法は、フィルム層上に所定の画像を形成する加飾層形成工程と、金属配線を形成する金属配線層形成工程と、を含むものである。以下、詳細に説明する。
【0059】
まず、図7(a)の加飾層形成工程では、所定の箇所に貫通孔28aが形成れたフィルム層11上に加飾層12を形成する。例えば、インクジェット法を用いて、フィルム層11に向けて、機能液を液滴として吐出し、フィルム層11上に機能液を塗布する。そして、塗布された機能液を固化させることにより、加飾層12が形成される。なお、加飾層12の形成方法は、インクジェット法に限定されず、例えば、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等を適宜適用することができる。
【0060】
次いで、図7(b)の接着剤塗布工程では、加飾層12上に第1接着剤13Aaを塗布する。このとき、貫通孔28bが形成される。
【0061】
次いで、図7(c)の遮光層形成工程では、第1接着剤13Aa上に遮光層19を形成し、第1接着剤13Aaを固化する。これにより、第1接着層13Aが形成されるとともに、第1接着層13上に遮光層19が形成される。このとき、貫通孔28cが形成される。
【0062】
以上の図7(a)〜(c)に示した接着剤塗布工程〜遮光層形成工程とは別に、以下の工程が実施される。
【0063】
図7(d)の金属配線層形成工程では、バッキングシート14上に金属配線を形成する。例えば、インクジェット法を用いて、導電性微粒子を含む機能液を液滴として吐出し、バッキングシート14上に機能液を塗布する。そして、塗布された機能液を固化させることにより、金属配線が形成される。また、カーボンナノチューブを含む機能液を液滴として吐出し、これを固化して金属配線を形成してもよい。さらに、金属配線層形成工程では、図2に示すように、網の目形状に金属配線15aを形成してもよい。なお、加飾層12の形成方法は、インクジェット法に限定されず、例えば、グラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等を適宜適用することができる。
【0064】
次いで、図7(e)に示すように、図7(a)〜(c)に示した接着剤塗布工程〜遮光層形成工程で形成された形成物と、図7(d)に示した金属配線層形成工程で形成された形成物とを第2接着剤13Baを介して接着させる。そして、第2接着剤13Baを固化することにより、第2接着層13Bが形成される。
【0065】
以上、上記工程を経ることにより、フィルム部材1Bが形成される(図6参照)。
【0066】
(フィルム成形物の構成)
次に、第2実施形態にかかるフィルム成形物の構成について説明する。図8は、第2実施形態にかかるフィルム成形物の構成を示す断面図である。図8に示すように、フィルム成形物10Bは、フィルム部材1Bをフィルムインモールドして、モールド樹脂層22を備えたものである。本実施形態では、バッキングシート14を覆うようにモールド樹脂層22が形成されている。なお、フィルム部材1Bの構成は、図6と同様なので、説明を省略する。
【0067】
モールド樹脂層22は、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を加熱熔融して液状乃至流動状態となったもの、或いは二液硬化型、触媒硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の未硬化液等で構成されている。
【0068】
また、本実施形態のフィルム成形物10Bには、保護膜20の表面から金属配線層15の表面まで通じる端子案内孔28が設けられている。これにより、端子案内孔28を通じて外部との電気接続が可能となる。
【0069】
(フィルム成形物の製造方法)
次に、第2実施形態にかかるフィルム成形物の製造方法について説明する。図9は、第2実施形態にかかるフィルム成形物の製造方法を示す工程図である。本実施形態のフィルム成形物の製造方法は、フィルム部材1Bを用いてフィルムインモールドを行ってモールド樹脂層22を形成するモールド樹脂層形成工程を含むものである。以下、詳細に説明する。
【0070】
まず、図9(a)に示すように、フィルム部材1Bを用意する。なお、フィルム部材1Bの製造方法は、図7に示す製造方法と同様なので説明を省略する。
【0071】
次いで、図9(b)に示すように、フィルム部材1Bを成形する。本実施形態では、真空成形型30を用いて、フィルム部材1Bを真空成形する。具体的には、加熱により軟化したフィルム部材1Bを真空成形型30上に載置し、真空成形型に設けられた吸引孔(図示せず)から空気を吸引する。そうすると、図9(b)に示すように、真空成形型30の表面形状に倣ったフィルム部材1Baが形成される。
【0072】
次いで、図9(c)に示すように、真空成形されたフィルム部材1Baを用いて射出成形する。具体的には、真空成形されたフィルム部材1Baを射出成形型の第1金型31aと第2金型31bとで挟み込み、モールド樹脂注入口31cからモールド樹脂をフィルム部材1Baに向けて注入する。そうすると、フィルム部材1Baにモールド樹脂22aが金型内に充填される。そして、モールド樹脂22aを固化させた後、第1金型31aと第2金型31bを開放させ、射出成形型から射出成形品を取出す。
【0073】
以上、上記工程を経ることにより、フィルム成形物10Bが形成される(図8参照)。
【0074】
従って、第2実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0075】
フィルム部材1Bおよびフィルム成形物10Bでは、加飾層12と金属配線層15を具備した。これにより、加飾層12は目視において装飾性を与えるとともに、他方で金属配線層15では電気的接続が可能となり、設計の自由度を高めることができる。例えば、自動車の操作盤に用いた場合には、保護膜20の表面から金属配線層15に通じて形成された端子案内孔28から電気回路パターンに形成された金属配線層15に接続することにより、電気配線の引き回し本数を省くことができる。
【0076】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0077】
(変形例1)第1実施形態では、図4に示すように、モールド樹脂層22に端子案内孔27を設けたが、これに限定されない。例えば、保護膜20の表面から金属配線15aに通じる他の端子案内孔を形成してもよい。このようにすれば、外部から電気接続を取り得る箇所が増えるので、さらに、設計の自由度を高めることができる。同様にして、第2実施形態では、図8に示すように、保護膜20の表面から金属配線層15に通じる端子案内孔28を設けたが、これに限定されない。例えば、モールド樹脂層22の表面から金属配線層15に通じる他の端子案内孔を形成してもよい。このようにすれば、外部から電気接続を取り得る箇所が増えるので、さらに、設計の自由度を高めることができる。
【0078】
(変形例2)上記実施形態では、金属配線層15を、電気配線の代替え手段として説明したが、これに限定されない。例えば、アンテナや電磁波シールド等に適宜適用することができる。このようにすれば、上記同様に、部品の点数を削減し、設計の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B…フィルム部材、1Aa,1Ba…フィルム部材、10A,10B…フィルム成形物、11…フィルム層、12…加飾層、13…接着層、13A…第1接着層、13B…第2接着層、14…形状保持層としてのバッキングシート、15…金属配線層、15a…金属配線、19…遮光層、20…保護膜、22…モールド樹脂層、27,28…端子案内孔、30…真空成形型、31a…第1金型、31b…第2金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と、
所定の画像が形成された加飾層と、
金属配線が形成された金属配線層と、
形状保持層と、を含むことを特徴とするフィルム部材。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム部材において、
前記フィルム層と、
前記フィルム層上に形成された前記加飾層と、
前記加飾層上に形成された接着層と、
前記接着層上に配置された前記形状保持層と、
前記形状保持層上に形成された前記金属配線層と、を備えたことを特徴とするフィルム部材。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルム部材において、
前記フィルム層と、
前記フィルム層上に形成された前記加飾層と、
前記加飾層上に形成された第1接着層と、
前記第1接着層上に形成された遮光層と、
前記遮光層上に形成された第2接着層と、
前記第2接着層上に形成された前記金属配線層と、
前記金属配線層上に形成された前記形状保持層と、を備えたことを特徴とするフィルム部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム部材において、
前記金属配線層は、カーボンナノチューブで形成されたことを特徴とするフィルム部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム部材において、
前記金属配線層における前記金属配線が網の目形状を有することを特徴とするフィルム部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム部材をフィルムインモールドで成形して、モールド樹脂層を備えたことを特徴とするフィルム成形物。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム成形物において、
前記モールド樹脂層の表面から前記金属配線層の表面まで通じる端子案内孔を備えたことを特徴とするフィルム成形物。
【請求項8】
請求項6に記載のフィルム成形物において、
前記フィルム層の表面から前記金属配線層の表面まで通じる端子案内孔を備えたことを特徴とするフィルム成形物。
【請求項9】
フィルム層上に所定の画像を形成する加飾層形成工程と、
金属配線を形成する金属配線層形成工程と、を含むことを特徴とするフィルム部材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルム部材の製造方法によって製造されたフィルム部材を用いてフィルムインモールドを行い、モールド樹脂層を形成するモールド樹脂層形成工程を含むことを特徴とするフィルム成形物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192538(P2012−192538A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56256(P2011−56256)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】