説明

フォトクロミック基を有する触媒系の存在下でオレフィンポリマーを製造する方法

本発明は、式:R−CH=CH−R(式中、R及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に環を形成してもよい)の少なくとも一種のオレフィンを、−60〜200℃の温度及び0.5〜100barの圧力において、溶液中、懸濁液中、又は気相中で、1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する触媒系の存在下で重合又は共重合することによって、オレフィンポリマーを製造する方法、対応する触媒系、本発明の触媒系を製造する方法、フォトクロミック基を有する特定の遷移金属配位化合物、それぞれの場合において特定のフォトクロミック基を有する特定のシクロペンタジエニル誘導体及びその前駆体、オレフィンの重合のための本発明の触媒系の使用、重合触媒を製造するための特定の遷移金属配位化合物の使用、及び本発明の重合方法によって得られるポリオレフィンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式:R−CH=CH−R(式中、R及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に環を形成してもよい)の少なくとも一種のオレフィンを、−60〜200℃の温度及び0.5〜100barの圧力において、溶液中、懸濁液中、又は気相中で、1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する触媒系の存在下で重合又は共重合することによって、オレフィンポリマーを製造する方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する触媒系、本発明の触媒系を製造する方法、フォトクロミック基を有する特定の遷移金属配位化合物、それぞれの場合において特定のフォトクロミック基を有する特定のシクロペンタジエニル誘導体及びその前駆体、オレフィンの重合のための本発明の触媒系の使用、重合触媒を製造するための特定の遷移金属配位化合物の使用、並びに本発明の重合方法によって得られるポリオレフィンに関する。
【背景技術】
【0003】
目的に合わせたポリオレフィンを製造する目的で、オレフィンの重合及び共重合のための触媒成分として遷移金属配位化合物、特にメタロセンを使用することについての研究及び開発は、大学及び産業界において過去15年間にわたって精力的に追求されている。これらの新しい触媒系は、しばしば「シングルサイト触媒」とも呼ばれている。
【0004】
メタロセン触媒系を用いて製造されるエテンをベースとするポリオレフィン、特にメタロセン触媒系を用いて製造されるプロペンをベースとするポリオレフィンは、現在、劇的に成長する市場区分を示す。メタロセンとは別に、シクロペンタジエニルリガンドを含まない新しい種類の遷移金属配位化合物が、触媒成分として近年急速に検討されている。例は、フェノキシイミンリガンドを含む初期遷移金属のコンプレックス(EP 874005)、或いは非荷電のリガンド、例えばジイミン又はビスイミノピリジンを含む「後期遷移金属」、例えばNi、Pdのコンプレックス(WO 96/23010)、Fe又はCoのコンプレックス(WO 98/27124)である。
【0005】
フォトクロミック基を有する遷移金属コンプレックスは、基本的には公知である。Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,2019−2021においては、触媒としての銅−ジチエニルエテンコンプレックスの存在下でのエチルジアゾアセテートを用いたスチレンの立体選択的シクロプロパン化が記載されている。rac−meso異性体化が起こる橋架ジルコノセンの光化学異性体化も、同様に公知である(Organometallics 1997,16,1724−1728)。しかしながら、リガンド系それ自体は分離して検討するとこのプロセス中において変化しない。
【0006】
所定の構造的な特徴、例えば、タクチシティ、コモノマー導入量、モル質量又はモル質量分布を有する特定のポリマーを製造する方法は、種々のプロセスパラメータによって調整及び制御することができる。好適な手段は、例えば、触媒、特に必須の触媒成分としての遷移金属配位化合物の選択、重合温度の選択、モノマー又はコモノマーの濃度、又はモル質量調整剤である水素のような調整剤の添加である。
【0007】
反応器ブレンド、即ち一つの製造プラントから直接得ることのできる少なくとも二種類の異なる所定のポリマーの混合物を製造するために、原則として二つの経路をとることが可能である。一つの所定の触媒系、例えば「シングルサイト触媒」を用いる場合には、触媒系を、例えば直列に接続されている少なくとも二つの反応器を有する反応器カスケードか、又は異なる反応条件を有する所定の複数の領域が存在する多領域反応器において達成されるように、重合プロセス中におけるその滞留時間中に少なくとも二種類の所定の異なる反応条件にかけなければならない。
【0008】
議論されている更なる可能性は、その性質のために同一の重合条件下で異なるポリマーを生成する少なくとも二種類の触媒系を用いることである。
二つの概念、即ち異なる反応条件の使用と異なる触媒系の使用とを組み合わせることによって、目標とする形態で反応器ブレンドを製造する更なる可能性が与えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、既に知られている制御の可能性とは関係なしに目的に合わせたポリオレフィンを製造することができるように目標とする形態で重合プロセスを制御する更なる手段が提供されるポリオレフィンの製造方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明者らは、少なくとも一つの触媒成分が少なくとも一つのフォトクロミック基を有する1以上の触媒成分を含む触媒系を用いる、冒頭において言及し特許請求の範囲で規定する、オレフィンポリマーの製造方法を見出した。更に、本発明者らは、対応する触媒系及びそれを製造する方法、それぞれフォトクロミック基を有する特定の遷移金属配位化合物及び特定のシクロペンタジエニル誘導体、並びに本発明の重合方法によって得ることのできるポリオレフィンを見出した。
【0011】
本発明の目的のために、フォトクロミズムという用語は、可視光又は紫外光によって引き起こされる、物質の、その色(吸収スペクトル)が出発化合物と異なる他の物質への可逆的な変化である。逆反応は、異なる波長の光によるか又は熱によって引き起こすことができ、或いは自然発生的に起こる場合もある。有機化合物の場合においては、有機フォトクロミック基の可逆的な変化のために必要なエネルギー、即ち特定の波長の光は、それぞれのフォトクロミック系及びその特定の置換パターンに依存する。フォトクロミック系の例及び用途は、Chem.Rev.2000,100,1685−1890に記載されている。
【0012】
本発明方法においては、式:R−CH=CH−R(式中、R及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、又は1〜20個の炭素原子、特に1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に1以上の環を形成してもよい)の少なくとも一種のオレフィンを重合する。
【0013】
かかるオレフィンの例は、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子を有する1−オレフィン、例えばエテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、又は4−メチル−1−ペンテン、或いはスチレン及びスチレン誘導体のような非置換若しくは置換ビニル芳香族化合物、或いは1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチルノルボルナジエンのようなジエン、或いはノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はメチルノルボルネンのような環式オレフィンである。
【0014】
本発明方法においては、エテン、プロペン、又は1−ブテンを単独重合するか、或いはこれらの一つを、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び/又は1−オクテン、及び/又はノルボルネンのような環式オレフィン、及び/又は4〜20個の炭素原子を有するジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、又はエチルノルボルナジエンのような更なるコモノマーと一緒に共重合することが好ましい。特に、プロペンをエテンと共重合するか、エテンをブテン又はヘキセンと共重合するか、ブテンをプロピレン及び/又はエテンと共重合する。本発明方法は、エラストマー又はプラストマー、例えばMacromol.Chem.Phys.2005,206,1231−1240に記載されているポリプロピレンプラストマーを製造するのに極めて特に有用である。
【0015】
本発明方法は、−60〜200℃の範囲、好ましくは0〜150℃、特に50〜100℃の範囲の温度で行うことができる。
本発明方法は、0.5〜100bar、好ましくは5〜65barの圧力で行うことができる。
【0016】
本発明方法は、公知の方法で、溶液中、懸濁液中、又は気相中において、オレフィンの重合のために用いられる通常の反応器内で行うことができる。本方法は、連続的か又はバッチ式で、好ましくは連続的に、1以上の段階で行うことができる。溶媒又は懸濁媒体としては、不活性炭化水素、例えばプロパン、イソブタン、又はヘキサン、或いはモノマーそれ自体、例えばプロペンを用いることができる。本方法は、例えば、第1の重合工程において溶媒又は懸濁媒体中、好ましくはプロペン中で重合を行い、第2の重合工程において気相中で反応、特に共重合を行う反応器カスケードで行うことができる。
【0017】
本発明方法における平均滞留時間は、通常0.5〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。
本発明方法は、1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する触媒系の存在下で行う。
【0018】
高度にアイソタクチックなポリプロピレンの製造のために好適な伝統的なチーグラー・ナッタ触媒の場合においては、フォトクロミック基は、例えば、公知の内部及び外部ドナー化合物、例えばジエーテル誘導体、スクシネート誘導体、又はベンゾエート誘導体に結合させることができる。
【0019】
通常少なくとも一種の遷移金属配位化合物及び少なくとも一種の共触媒を含む「シングルサイト触媒」の場合においては、フォトクロミック基は、遷移金属配位化合物又は共触媒の一部であってよい。遷移金属配位化合物の場合においては、フォトクロミック基は、好ましくは、遷移金属配位化合物のリガンドに結合しており、フォトクロミック基それ自体は好ましくは遷移金属中心に配位しない。
【0020】
本発明方法において用いるフォトクロミック基は、通常、好ましくは1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体からなる群から選択され、特に1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、及びジヒドロピレン誘導体から選択され、特に好ましくは1,2−ジ(3−チエニル)エテン誘導体の中から選択される、有機、即ち炭素含有基である。
【0021】
光によって引き起こされるフォトクロミック基の異性体化は、原則として、重合反応の前、又は重合反応中に起こすことができる。
フォトクロミック基の異性体化のために用いる光は、通常、150nm〜1000nm、特に180nm〜800nmの範囲の波長を有する。
【0022】
光源としては、原則として、白熱灯、水銀灯、発光ダイオード、又は種々のタイプのレーザーのような全ての公知の発光システムを用いることができる。光源の選択は、フォトクロミック基の変化のために必要なエネルギーに依存する。
【0023】
本発明方法は、好ましくは、少なくとも一部の時間の間、フォトクロミック基を状態Aから状態Bへ又は状態Bから状態Aへ変化させるのに好適な少なくとも一つの光源の存在下で行う。
【0024】
この状態Aから状態B及びその逆の変化は、例としてジアリールエテン骨格の場合を用いて図式的に示すことができる。
【0025】
【化1】

【0026】
上記記載の本発明方法は、好ましくは、少なくとも一種の遷移金属配位化合物、及び適当な場合には共触媒を含む触媒系の存在下で行い、ここで、遷移金属配位化合物は、少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はそれと縮合している少なくとも一つのリガンドを含む。遷移金属配位化合物が、例えば異なる波長の光によって異性体化させることができる二種類の異なるフォトクロミック基を含む場合には、本発明方法において目標とする形態で重合プロセスを制御する更なる方法の可能性が開かれる。
【0027】
本発明の重合方法における遷移金属配位化合物としては、原則として、遷移金属中心のリガンドの一つがフォトクロミック基を有することができるならば、特に好適な共触媒を用いて予備活性化した後の、全ての公知の種類の重合活性遷移金属化合物を用いることができる。重合触媒を製造するための触媒成分として用いることのできる種々の種類の遷移金属配位化合物が、Chem.Rev.2000,vol.100,No.4に記載されている。
【0028】
本発明方法においては、遷移金属中心に結合しており、且つ少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はそれと縮合している、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンドからなる群から選択される少なくとも一つのリガンドを含む遷移金属配位化合物が好ましい。
【0029】
更に、本発明方法においては、遷移金属が、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族、好ましくはTi、Zr、Hf、Cr、及びFe、特に好ましくはZr、Hf、Cr、及びFe、特にZr及びHfからなる元素の群から選択され、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含み、リガンドが、好ましくは、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンド、好ましくはシクロペンタジエニル誘導体、及び三つの配位窒素原子を有する非荷電の三座窒素リガンド、特にシクロペンタジエニル誘導体からなる群から選択される遷移金属配位化合物が好ましい。
【0030】
本発明方法において用いることのできる遷移金属配位化合物の実例(しかしながら、これは本発明の範囲を限定するものではない)は、
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
である。
本発明は、更に、好ましくは本発明方法において触媒成分として用いることができる遷移金属配位化合物を提供する。この遷移金属配位化合物において、遷移金属は、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族、好ましくはTi、Zr、Hf、及びFe、特に好ましくはZr、Hf、及びFe、特にZr及びHfからなる元素の群から選択され、遷移金属配位化合物は、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含む。この本発明の遷移金属配位化合物においては、フォトクロミック基は、好ましくは、1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体、特に1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、及びジヒドロピレン誘導体、特に好ましくは1,2−ジ(3−チエニル)エテン誘導体からなる群から選択される。
【0035】
本発明は、更に、遷移金属が、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族、好ましくはTi、Zr、Hf、Cr、及びFe、特に好ましくはZr、Hf、及びFe、特にZr及びHfからなる元素の群から選択され、少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はそれと縮合している、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンド、好ましくはシクロペンタジエニル誘導体、及び三つの配位窒素原子を有する非荷電の三座窒素リガンド、特にシクロペンタジエニル誘導体からなる群から選択される少なくとも一つのリガンドを含む、遷移金属配位化合物を提供する。この遷移金属配位化合物もまた、好ましくは本発明方法における触媒成分として用いることができる。
【0036】
式(I):
MX (I)
(式中、
は、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンドからなる群から選択されるリガンドであり、且つZは、1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体からなる群から選択されるフォトクロミック基:PCGを有し;
Aは、二価の原子又は二価の基から構成される、リガンドZとZとの間の橋架基であり;
は、Zと同一か又は異なり、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンドからなる群から選択され、Zは、場合によっては、1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体からなる群から選択されるフォトクロミック基:PCGを有していてよく;
pは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
Mは、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族からなる元素の群から選択される遷移金属であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれ、有機又は無機基であり、二つの基Xは、また互いに結合していてもよく;
mは、0、1、2又は3である)
の遷移金属配位化合物が好ましい。
【0037】
は、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンド、好ましくはシクロペンタジエニル誘導体、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電の三座窒素リガンド、特にシクロペンタジエニル誘導体からなる群から選択されるリガンドであり、Zは、1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体、好ましくは1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、及びジヒドロピレン誘導体、特に好ましくは1,2−ジ(3−チエニル)エテン誘導体からなる群から選択されるフォトクロミック基:PCGを有する。
【0038】
は、好ましくは、式(II)のシクロペンタジエニルリガンド、或いは可視光又は紫外光の照射によって生成し、式(IIa)を有するその異性体である。
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、
は、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
は、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基、特に水素であり;
、R、R、Rは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、ハロゲン、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、或いは二つの隣接する基RとR及び/又はRとRは、それらを結合する原子と一緒に、4〜40個の炭素原子を有し、またSi、Ge、N、P、O、S、Se、及びTe元素からなる群から選択されるヘテロ原子も有していてよい、単環又は多環で、置換又は非置換の、脂肪族又は芳香族環系を形成し;
、Rは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
は、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
nは、式(I)において定義した通りであり、即ち、非橋架リガンドZの場合には0であり、Aに結合しているリガンドZの場合には1であり;
は、単結合、又は1〜40個の炭素原子を有する二価の有機基であり;
は、O、S、Se、Te、NR、PR、又はCRであり、ここで、基Rは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
、Tは、同一か又は異なり、それぞれ、O、S、Se、Te、NR、又はPRである)
本発明による置換基は、更に限定しない限りにおいて、以下のように定義される。
【0041】
本明細書において用いる「1〜40個の炭素原子を有する有機基」という用語は、例えば、C〜C40アルキル基、C〜C10フルオロアルキル基、C〜C12アルコキシ基、飽和C〜C20複素環基、C〜C40アリール基、C〜C40ヘテロ芳香族基、C〜C10フルオロアリール基、C〜C10アリールオキシ基、3〜24個の炭素原子を有するシリル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C40アリールアルキル基、又はC〜C40アリールアルケニル基を指す。有機基は、それぞれの場合において有機化合物から誘導される。而して、有機化合物であるメタノールは、原則として、一つの炭素原子を有する三種類の異なる有機基、即ち、メチル(HC−)、メトキシ(HC−O−)、及びヒドロキシメチル(HOC(H)−)を生成する。
【0042】
本明細書において用いる「アルキル」という用語は、線状或いは環式であってもよい単分岐若しくは多分岐の飽和炭化水素を包含する。メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル、又はtert−ブチルのようなC〜C18アルキル基が好ましい。
【0043】
本明細書において用いる「アルケニル」という用語は、集積していても交互であってもよい1以上のC−C二重結合を有する線状又は単分岐若しくは多分岐の炭化水素を包含する。
【0044】
本明細書において用いる「飽和複素環基」という用語は、例えば、1以上の炭素原子、CH基、及び/又はCH基が、好ましくはO、S、N、及びP元素からなる群から選択されるヘテロ原子によって置換されている、単環式又は多環式で置換又は非置換の脂肪族又は芳香族炭化水素基を指す。置換又は非置換の飽和複素環基の好ましい例は、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニルなど、並びにそのメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、及びtert−ブチル−置換誘導体である。
【0045】
本明細書において用いる「アリール」という用語は、例えば、線状又は分岐鎖のC〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、C〜C10アルケニル、又はハロゲン、特にフッ素によって単置換若しくは多置換されていてもよい、芳香族及び場合によっては縮合している多環芳香族炭化水素基を指す。置換及び非置換アリール基の好ましい例は、特に、フェニル、ペンタフルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−n−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、9−アントリル、9−フェナントリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル、又は4−トリフルオロメチルフェニルである。
【0046】
本明細書において用いる「ヘテロ芳香族基」という用語は、例えば、1以上の炭素原子が、窒素、リン、酸素、又はイオウ原子、或いはこれらの組み合わせによって置換されている芳香族炭化水素基を指す。これらは、アリール基と同様に、場合によっては、線状又は分岐鎖のC〜C18アルキル、C〜C10アルケニル、又はハロゲン、特にフッ素によって単置換又は多置換されていてもよい。好ましい例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジニル、ピラジニルなど、並びにそのメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、及びtert−ブチル−置換誘導体である。
【0047】
本明細書において用いる「アリールアルキル」という用語は、例えば、そのアリール基がアルキル鎖を介して分子の残りの部分に結合しているアリール含有置換基を指す。好ましい例は、ベンジル、置換ベンジル、フェネチル、置換フェネチルなどである。
【0048】
フルオロアルキル及びフルオロアリールという用語は、対応する基の少なくとも一つの水素原子、好ましくは1より多く最大で全ての水素原子がフッ素原子によって置換されていることを意味する。好ましいフッ素含有基の例は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ペルフルオロ−tert−ブチルフェニルなどである。
【0049】
特に、式(II)又は(IIa)のリガンドZ上の置換基は、以下のように定義される。
基Rは、水素、或いは1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、C〜C40アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アリール、C〜C10フルオロアリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、アリールアルキル、アリールアルケニル、又はアルキルアリール、O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びS元素からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有する、2〜40個の炭素原子を有する飽和複素環又はC〜C40ヘテロ芳香族基(ここで、ヘテロ芳香族基は更なる基R10によって置換されていてもよく、ここでR10は、1〜20個の炭素原子を有する有機基、例えば、C〜C10、好ましくはC〜Cアルキル、C〜C15、好ましくはC〜C10アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜18個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル、又はフルオロアリールであり、複数の基R10は同一であっても異なっていてもよい)である。Rは、好ましくは、線状のC〜C12、好ましくはC〜Cアルキル基、分岐鎖のC〜C12、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C10、好ましくはC〜Cシクロアルキル基、置換フリル基、又は置換チエニル基である。基Rは、特に好ましくは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、又はシクロヘキシルである。
【0050】
基Rは、水素、或いは1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、C〜C40アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アリール、C〜C10フルオロアリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、アリールアルキル、アリールアルケニル、又はアルキルアリール、O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びS元素からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有する、2〜40個の炭素原子を有する飽和複素環又はC〜C40ヘテロ芳香族基(ここで、ヘテロ芳香族基は更なる基R10によって置換されていてもよい)である。Rは、好ましくは水素である。
【0051】
基R、R、R、及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のようなハロゲン、好ましくはフッ素、或いは、1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、環式、分岐鎖、又は非分岐鎖の、C〜C20、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C20、好ましくはC〜Cアルケニル基、C〜C22、好ましくはC〜C10アリール基、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキル基(上記において、基は、また、ハロゲン化されていてもよい)、O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びS元素からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有する、2〜40個の炭素原子を有する飽和複素環又はC〜C40ヘテロ芳香族基(ここで、ヘテロ芳香族基は更なる基R10によって置換されていてもよい)であるか、或いは二つの隣接する基RとR及び/又はRとRは、それらを結合する原子と一緒に、4〜40個の炭素原子を有し、またSi、Ge、N、P、O、S、Se、及びTe、特にN及びS元素からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよい、単環又は多環で、置換又は非置換の、脂肪族又は芳香族環系を形成する。基RとR又はRとRは、それぞれの場合において好ましくはそれらを結合する原子と一緒に、置換又は非置換、特に非置換の1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基を形成する。
【0052】
基R及びRは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、水素、或いは1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、環式、分岐鎖、又は非分岐鎖の、C〜C20、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルコキシ基、C〜C20、好ましくはC〜Cアルケニル基、C〜C22、好ましくはC〜C10アリール基、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキル基(上記において、基は、また、ハロゲン化されていてもよい)、O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びS元素からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有する、2〜40個の炭素原子を有する飽和複素環又はC〜C40ヘテロ芳香族基(ここで、ヘテロ芳香族基は更なる基R10によって置換されていてもよい)である。R及びRは、好ましくは、それぞれ、水素、メチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、イソプロピル、メトキシ、又はエトキシ、特にメチルである。
【0053】
基Rは、水素、或いは1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、C〜C40アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アリール、C〜C10フルオロアリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、アリールアルキル、アリールアルケニル、又はアルキルアリール、O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びS元素からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有する、2〜40個の炭素原子を有する飽和複素環又はC〜C40ヘテロ芳香族基(ここで、ヘテロ芳香族基は更なる基R10によって置換されていてもよい)でである。Rは、好ましくは、水素、線状のC〜C12、好ましくはC〜Cアルキル基、分岐鎖のC〜C12、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C10、好ましくはC〜Cシクロアルキル基、置換又はアルキル置換C〜C14アリール基、置換フリル基、又は置換チエニル基、例えば2−(5−メチル)チエニルである。基Rは、特に好ましくは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、又はシクロヘキシルである。
【0054】
は、単結合、又は1〜40個の炭素原子を有する二価の有機基である。Tは、好ましくは、単結合、二価の基CR10、又は二価の基CR10−CR10(ここで、基R10は、同一であっても異なっていてもよく、上記に定義したとおりである)である。Tは、特に好ましくは単結合である。
【0055】
は、O、S、Se、Te、NR、PR、又はCR(ここで、Rは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、或いは1〜40個の炭素原子を有する有機基、例えば、環式、分岐鎖、又は非分岐鎖の、C〜C20、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C20、好ましくはC〜Cアルケニル基、C〜C22、好ましくはC〜C10アリール基、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキル基(上記において、基は、また、ハロゲン化されていてもよい)、O、N、S、P、及びSe、特にO、N、及びS元素からなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有する、2〜40個の炭素原子を有する飽和複素環又はC〜C40ヘテロ芳香族基(ここで、ヘテロ芳香族基は更なる基R10によって置換されていてもよい)である)である。Tは、好ましくはSである。
【0056】
、Tは、同一か又は異なり、それぞれ、O、S、Se、Te、NR、又はPR(ここで、Rは上記に定義した通りである)である。T及びTが、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、S、Se、又はNR、特にSであることが好ましい。
【0057】
Aは、二価の原子又は二価の基からなる、リガンドZ及びZの間の橋架基である。Aの例は、
【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
−B(R12)−、−B(NR1213)−、−Al(R12)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S((O))−、−N(R12)−、−C(O)−、−P(R12)−、又は−P(O)(R12)−、特に、
【0061】
【化8】

【0062】
(上記において、
は、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素又はゲルマニウム、特に好ましくはケイ素であり;
12、R13、及びR14は、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルキル基、C〜C10フルオロアルキル基、C〜C10フルオロアリール基、C〜C10アリール基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルコキシ基、C〜C15アルキルアリールオキシ基、C〜C10、好ましくはC〜Cアルケニル基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40アリールアルケニル基、又はC〜C40アルキルアリール基であるか、或いは、二つの隣接する基は、それらを結合する原子と一緒に、4〜15個の炭素原子を有する飽和又は不飽和環を形成する)
である。
【0063】
Aの好ましい態様は、橋架基:ジメチルシランジイル、メチルフェニルシランジイル、ジフェニルシランジイル、メチル−tert−ブチルシランジイル、ジメチルゲルマンジイル、エチリデン、1−メチルエチリデン、1,1−ジメチルエチリデン、1,2−ジメチルエチリデン、1,1,2,2−テトラメチルエチリデン、ジメチルメチリデン、フェニルメチルメチリデン、及びジフェニルメチリデン、特にジメチルシランジイル、ジフェニルシランジイル、及びエチリデンである。
【0064】
Aは、特に好ましくは、置換シリレン基又は置換若しくは非置換エチレン基、好ましくは置換シリレン基、例えばジメチルシランジイル、メチルフェニルシランジイル、メチル−tert−ブチルシランジイル、又はジフェニルシランジイル、特にジメチルシランジイルである。
【0065】
は、Zと同一か又は異なり、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンドからなる群から選択され、Zは、場合によっては、1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体、好ましくは1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、及びジヒドロピレン誘導体、特に好ましくは1,2−ジ(3−チエニル)エテン誘導体からなる群から選択されるフォトクロミック基:PCGを有していてもよい。
【0066】
pは、0又は1、好ましくは1である。
nは、0又は1、好ましくは1である。
Mは、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族、好ましくはTi、Zr、Hf、Cr、及びFe、特に好ましくはZr、Hf、及びFe、特にZr及びHfからなる元素の群から選択される遷移金属である。
【0067】
基Xは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、有機又は無機の基であり、二つの基Xは、また、互いに結合していてもよい。Xは、好ましくは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは塩素、水素、C〜C20、好ましくはC〜Cアルキル、特にメチル、C〜C20、好ましくはC〜Cアルケニル、C〜C22、好ましくはC〜C10アリール、アルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキル基、−OR11、又は−NR1111aであり、二つの基X、好ましくは二つの基−OR11は、また、互いに結合していてもよい。また、二つの基Xが、置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成してもよい。基R11及びR11aは、それぞれ、C〜C10、好ましくはC〜Cアルキル、C〜C15、好ましくはC〜C10アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子及びアリール基中に6〜22個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル、又はフルオロアリールである。Xは、特に好ましくは、塩素、メチル、又はジメチルアミドである。
【0068】
mは、0、1、2、又は3である。Z及びZがシクロペンタジエニル誘導体であり、MがZr又はHfである場合には、mは好ましくは2である。
が、式(II)のシクロペンタジエニルリガンド、或いは可視光又は紫外光の照射によって生成し、式(IIa)を有するその異性体:
【0069】
【化9】

【0070】
(式中、
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、又はシクロヘキシル、特にメチルであり;
は、水素であり;
、R、R、Rは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、フッ素、又はC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、若しくはイソプロピルであり、或いは二つの隣接する基RとR及び/又はRとRは、それらを結合する原子と一緒に、置換又は非置換、特に非置換の1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基を形成し;
、Rは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、水素、メチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、イソプロピル、メトキシ、又はエトキシ、特にメチルであり;
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、又はシクロヘキシル、好ましくは水素であり;
は、単結合であり;
は、Sである)
であり;
Aが、リガンドZとZとの間の橋架基であり、ジメチルシランジイル、ジフェニルシランジイル、又はエチリデン、特にジメチルシランジイルであり;
が、Zと同一か又は異なり、Zに関して定義した通りであり、或いは、場合によってはフォトクロミック基PCGとして1,2−ジ(3−チエニル)エテン誘導体を含んでいてもよいシクロペンタジエニル基(ここで、シクロペンタジエニル基は、具体的には、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基、置換又は非置換のインデニル基、置換又は非置換のフルオレニル基、或いは置換又は非置換のシクロペンタ[b]チエニリデン基であり;
pが、1であり;
nが、0又は1であり;
Mが、Ti、Zr、又はHf、特にZr又はHfであり;
基Xが、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、塩素、メチル、又はジメチルアミド、好ましくは塩素であり;
mが、2である)
である式(I)の遷移金属配位化合物が好ましい。
【0071】
本発明の遷移金属配位化合物の合成は、基本的に公知である。好適な遷移金属源、例えば四塩化ジルコニウムを、所望のリガンド、例えばそのリチウム塩の形態の2当量のシクロペンタジエニルリガンドとを反応させることが通常的である。橋架リガンド、例えば橋架シクロペンタジエニルリガンドを有する遷移金属配位化合物を合成するためには、まず所望のシクロペンタジエニル基を互いに結合させ、続いて、通常は予備脱プロトン化の後に、遷移金属源と反応させることができる。例えば、WO 03/045964においては、二つの異なるシクロペンタジエニルリガンドを有する橋架ビスシクロペンタジエニルメタロセンの合成が記載されている。橋架ビスシクロペンタジエニルメタロセンの合成においては、得られる遷移金属配位化合物は、通常、しばしばラセミ又は擬似ラセミ並びにメソ又は擬似メソと称される種々のジアステレオマーの形態で得られる(WO 03/045551を参照)。ジアステレオマーの分離は、基本的に公知である。
【0072】
上記記載の合成を、下記の式(I)の好ましい遷移金属配位化合物の例によって示すが、これは本発明の範囲を限定するものではない。以下の例では、更に、好ましいリガンド前駆体Z−Hの合成も示す。
【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
本発明は、更に、式(III)、(IV)、及び/又は(V):
【0076】
【化12】

【0077】
(式中、変数R、R、R、R、R、R、R、R、R、T、T、T、及びTは、式(II)において定義したとおりである)
の化合物、或いはその二重結合異性体及び/又はその光異性体を提供する。
【0078】
したがって、
が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、又はシクロヘキシル、特にメチルであり;
が、水素であり;
、R、R、Rが、同一か又は異なり、それぞれ、水素、フッ素、又はC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、若しくはイソプロピルであり、或いは二つの隣接する基RとR及び/又はRとRは、それらを結合する原子と一緒に、置換又は非置換、特に非置換の1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基を形成し;
、Rが、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、水素、メチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、イソプロピル、メトキシ、又はエトキシ、特にメチルであり;
が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、又はシクロヘキシル、好ましくは水素であり;
が、単結合であり;
、T、Tが、それぞれSである;
式(III)、(IV)、及び(V)の化合物、或いはその二重結合異性体及び/又はその光異性体が特に好ましい。
【0079】
式(III)、(IV)、及び(V)の新規化合物は、全て、フォトクロミック基として1,2−ジ(3−チエニル)エテン誘導体を有する式(II)又は(IIa)の特に好ましいシクロペンタジエニルリガンドZの直接の前駆体である。式(I)の特に好ましい新規遷移金属配位化合物のフォトクロミック特性は、式(III)、(IV)、又は(V)の対応する出発化合物の選択によって決定される。
【0080】
したがって、本発明は、また、遷移金属配位化合物を製造するための式(III)の化合物の使用も提供する。
式(V)の化合物から出発して、ケト官能基と、例えばグリニャール化合物又はリチウムアルキルとを反応させることによって、水素と異なる基Rを導入することができる。
【0081】
かかる反応の例は、2,3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5−メチル−6H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オンとブチルリチウムとを反応させ、続いて水性処理を行って、中間体として形成される第3級アルコールを処理において脱水することによる、6−ブチル−5−メチル−2,3−ビス(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェンの合成である。
【0082】
【化13】

【0083】
式(III)、(IV)、及び(V)の化合物は、原則として、例えばChem.Rev.2000,100,1685−1890において記載されているように、遷移金属配位化合物の合成以外の目的でフォトクロミック化合物として用いることもできる。式(III)、(IV)、及び(V)の化合物は、分子スイッチであり、例えば、この形態で新規な光電子工学部品又は記憶媒体の構築を可能にするために、ポリマーを製造するためか又は液晶を製造するための成分として用いることもできる。
【0084】
本発明の重合方法において用いる好ましい触媒系は、少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はこれと縮合している少なくとも一つのリガンドを含む遷移金属配位化合物だけでなく、少なくとも一種の共触媒も含む。
【0085】
したがって、本発明は、また、オレフィンの重合のための触媒系を製造するための、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含む遷移金属配位化合物の使用も提供する。
【0086】
遷移金属配位化合物と一緒に重合活性触媒系を形成する共触媒は、遷移金属配位化合物を、少なくとも一種のオレフィンに対して重合活性を示す種に変化させることができる。したがって、共触媒は、時々、活性化化合物とも称される。重合活性の遷移金属種は、しばしばカチオン種である。この場合においては、共触媒は、しばしば、カチオン形成性化合物とも称される。
【0087】
好適な共触媒又はカチオン形成性化合物は、例えば、アルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物のような化合物である。本発明方法における共触媒としてアルミノキサンを用いることが好ましい。
【0088】
遷移金属配位化合物を重合反応において使用する前にアルミノキサンを用いて予備活性化する、オレフィンポリマーを製造するための本発明方法が特に好ましい。この予備活性化行程においては、遷移金属配位化合物を、例えばそのままか又は溶液として、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサンの溶液と、一定時間、例えば1分〜48時間、好ましくは5分〜4時間接触させて、触媒系を形成する。
【0089】
遷移金属配位化合物としてメタロセンコンプレックスを用いる場合には、共触媒は、しばしばメタロセニウムイオン形成性化合物とも称される。
アルミノキサンとしては、例えばWO 00/31090に記載されている化合物を用いることができる。特に好適なアルミノキサンは、一般式(XI)又は(XII):
【0090】
【化14】

【0091】
(式中、R51は、C〜Cアルキル基、好ましくはメチル又はエチル基であり、vは、5〜30、好ましくは10〜25の整数である)
の開鎖又は環式アルミノキサン化合物である。
【0092】
これらのオリゴマーアルミノキサン化合物は、通常、トリアルキルアルミニウムの溶液を水と反応させることによって調製される。一般に、この方法で得られるオリゴマーアルミノキサン化合物は、種々の長さの線状及び環式鎖分子の両方の混合物の形態であり、vは平均値とみなされる。また、アルミノキサン化合物は、他の金属アルキル、好ましくはアルミニウムアルキルと混合して存在させることもできる。
【0093】
更に、炭化水素基又は水素原子の一部が、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、又はアミド基によって置換されている変性アルミノキサンを、一般式(XI)又は(XII)のアルミノキサン化合物に代えて用いることもできる。
【0094】
本発明方法においては、遷移金属配位化合物からの遷移金属に対するアルミノキサン化合物からのアルミニウムの原子比が、1:1〜100,000:1の範囲、好ましくは5:1〜20,000の範囲、特に10:1〜2,000:1の範囲となるような量で、遷移金属配位化合物及びアルミノキサン化合物を用いることが有利であることが見出された。
【0095】
非荷電の強ルイス酸としては、一般式(XIII)
(XIII)
(式中、Mは、元素周期律表の第13族の元素、特にB、Al、又はGa、好ましくはBであり;
、X、及びXは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、又はハロアリール、或いは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、特にハロアリール、好ましくはペンタフルオロフェニルである)
の化合物が好ましい。
【0096】
非荷電の強ルイス酸の更なる例は、WO 00/31090において与えられている。
、X、及びXが、同一であり、好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである一般式(XIII)の化合物が特に好ましい。
【0097】
共触媒又はカチオン形成性化合物として好適な更なる非荷電の強ルイス酸は、ボロン酸と2当量のトリアルキルアルミニウムとの反応からの反応生成物、或いはトリアルキルアルミニウムと、2当量の、酸性でフッ素化、特にペルフッ素化されている炭素化合物、例えばペンタフルオロフェノール又はビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸との反応からの反応生成物である。
【0098】
ルイス酸カチオンを有する好適なイオン性化合物としては、一般式(XIV):
[(Ya+)Q・・・Qd+ (XIV)
(式中、Yは、元素周期律表の第1〜16族の元素であり、
〜Qは、マイナス1価の基、例えば、C〜C28アルキル、C〜C15アリール、それぞれアリール基中に6〜20個の炭素原子及びアルキル基中に1〜28個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、場合によっては置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよいC〜C10シクロアルキル、ハロゲン、C〜C28アルコキシ、C〜C15アリールオキシ、シリル、又はメルカプチル基であり;
aは、1〜6の整数であり;
zは、0〜5の整数であり;
dは、a−zの差に相当するが、dは1以上である)
のカチオンの塩様化合物が挙げられる。
【0099】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、及びスルホニウムカチオン、並びにカチオン性遷移金属コンプレックスである。特に、トリフェニルメチルカチオン、銀カチオン、及び1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンに言及することができる。これらは、好ましくは、非配位対イオン、特にWO 91/09882においても言及されているようなホウ素化合物、好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを有する。
【0100】
非配位アニオンを有する塩は、また、ホウ素又はアルミニウム化合物、例えばアルミニウムアルキルを、反応して2以上のホウ素又はアルミニウム原子と結合することのできる更なる化合物、例えば水、並びにホウ素又はアルミニウム化合物との反応によってイオン化イオン性化合物、例えばトリフェニルクロロメタンを形成する第3の化合物と化合させることによっても調製することができる。更に、同様にホウ素又はアルミニウム化合物と反応する第4の化合物、例えばペンタフルオロフェノールを加えることもできる。
【0101】
カチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物は、好ましくは更に非配位対イオンを有する。ブレンステッド酸としては、プロトン化アミン又はアニリン誘導体が特に好ましい。好ましいカチオンは、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム、及びN,N−ジメチルベンジルアンモニウム、並びに後者二つの誘導体である。
【0102】
共触媒又はカチオン形成性化合物として好ましいイオン性化合物は、特に、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びN,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0103】
また、ジアニオン:[(CB−C−B(C2−におけるように2以上のボレートアニオンが互いに結合していてもよく、或いはボレートアニオンは、好適な官能基を有する橋架基を介して担体粒子の表面に結合していてもよい。
【0104】
更なる好適な共触媒又はカチオン形成性化合物は、WO 00/31090に列記されている。
本発明方法においては、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、又はカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物の量は、通常、式(I)の有機遷移金属化合物を基準として0.1〜20当量、好ましくは1〜10当量である。
【0105】
更なる好適な共触媒又はカチオン形成性化合物は、ジ[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボロキシ]メチルアランのようなホウ素−アルミニウム化合物である。適切なホウ素−アルミニウム化合物は、例えば、WO 99/06414において開示されている。
【0106】
また、上記記載の共触媒又はカチオン形成性化合物の全ての混合物を用いることもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、及びイオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを含むもの、及び/又は非荷電の強ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む。
【0107】
遷移金属配位化合物及び共触媒又はカチオン形成性化合物の両方を溶媒中で用いることが好ましく、溶媒は、6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素、特にキシレン及びトルエンが好ましい。
【0108】
本発明方法における触媒は、更に、一般式(XV):
(R52(R53(R54 (XV)
(式中、
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期律表の第13族の金属、即ち、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はタリウムであり;
52は、水素、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール又はアリールアルキルであり;
53及びR54は、同一か又は異なり、それぞれ、水素、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、又はアルコキシであり;
rは、1〜3の整数であり;
s及びtは、0〜2の整数であり、r+s+tの合計はMの価数に相当する)
の金属化合物を更に含んでいてもよく、ここで式(XV)の金属化合物は、通常、共触媒又はカチオン形成性化合物と同一ではない。また、式(XV)の種々の金属化合物の混合物を用いることもできる。
【0109】
一般式(XV)の金属化合物の中で、
が、リチウム、マグネシウム、又はアルミニウムであり、
53及びR54が、それぞれC〜C10アルキルであるものが好ましい。
【0110】
式(XV)の特に好ましい金属化合物は、n−ブチルリチウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリメチルアルミニウム、並びにこれらの混合物である。
【0111】
式(XV)の金属化合物を用いる場合には、遷移金属配位化合物からの遷移金属原子に対する式(XV)からのMのモル比が800:1〜1:1、特に200:1〜2:1となるような量で触媒中に含ませることが好ましい。
【0112】
遷移金属配位化合物及び少なくとも一種の共触媒を含む触媒系は、用いる重合法に依存して、更に担体を含むことができる。
かかる担持触媒系を得るために、非担持触媒系を担体と反応させることができる。担体、遷移金属配位化合物、及び共触媒を配合する順番は、原則として重要ではない。遷移金属配位化合物及び共触媒は、互いに独立して又は同時に固定化することができる。個々のプロセス工程の後に、固体を、脂肪族又は芳香族炭化水素のような好適な不活性溶媒で洗浄することができる。
【0113】
担体としては、有機又は無機の任意の不活性の固体であってよい微粉砕担体を用いることが好ましい。特に、担体は、タルク、層状ケイ酸塩、無機酸化物、又は微粉砕ポリマー粉末(例えばポリオレフィン)のような多孔質の固体であってよい。
【0114】
好適な無機酸化物は、元素周期律表の第2、3、4、5、13、14、15及び16族の元素の酸化物の中から見出すことができる。担体として好ましい酸化物の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、又はチタン元素の混合酸化物、並びに対応する酸化物混合物を含む。単独で、又は上記記載の好ましい酸化物担体と組み合わせて用いることができる他の無機酸化物は、例えば、MgO、ZrO、TiO、又はBである。好ましい混合酸化物は、例えば、か焼ハイドロタルサイトである。
【0115】
用いる担体材料は、好ましくは、10〜1000m/gの範囲の比表面積、0.1〜5mL/gの範囲の孔容積、及び1〜500μmの平均粒径を有する。50〜500m/gの範囲の比表面積、0.5〜3.5mL/gの範囲の孔容積、及び5〜350μmの範囲の平均粒径を有する担体が好ましい。200〜400m/gの範囲の比表面積、0.8〜3.0mL/gの範囲の孔容積、及び10〜100μmの平均粒径を有する担体が特に好ましい。
【0116】
無機担体は、例えば吸着水を除去するために熱処理にかけることができる。かかる乾燥処理は、概して、80〜300℃、好ましくは100〜200℃の範囲の温度において行われ、100〜200℃における乾燥は減圧下及び/又は不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気下で行うことが好ましく、或いは、無機担体は、200〜1000℃の温度でか焼して、適当な場合には固体の所望の構造及び/又は表面上の所望のOH濃度を設定することができる。また、担体は、化学的に処理することもでき、この目的のためには、金属アルキル、好ましくはアルミニウムアルキルのような通常のデシカント、クロロシラン又はSiCl、或いはメチルアルミノキサンを用いることができる。適当な処理法は、例えばWO 00/31090に記載されている。
【0117】
また、無機担体材料は、化学的に変性することもできる。例えば、シリカゲルを(NHSiFで処理することによりシリカゲル表面をフッ素化することができ、或いは、シリカゲルを、窒素、フッ素、又はイオウ含有基を有するシランで処理することによって、相応して変性されたシリカゲル表面を形成することができる。
【0118】
また、微粉砕ポリオレフィン粉末(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレン)のような有機担体材料を用いることもでき、好ましくは、同様に、使用前に適当な精製及び乾燥操作を用いて、吸着湿分、残留溶媒、又は他の不純物を除去する。また、官能化ポリマー担体、例えば、その官能基、例えばアンモニウム又はヒドロキシ基を介して少なくとも一つの触媒成分を固定化することができるポリスチレンをベースとする担体を用いることもできる。
【0119】
担持触媒系の好ましい製造方法においては、好適な溶媒中で、少なくとも一つの遷移金属配位化合物を、活性化化合物又はカチオン形成性化合物としての少なくとも一つの共触媒と接触させて、可溶性又は不溶性、好ましくは可溶性の反応生成物、付加体、又は混合物を与える。
【0120】
この方法で得られた製剤は、次に、脱水又は不動態化した担体材料と混合し、溶媒を除去し、得られた担持有機遷移金属化合物触媒系を乾燥して、溶媒の全部又は殆どが担体材料の孔から確実に除去されるようにする。担持触媒は、通常、自由流動粉末として得られる。上記のプロセスの工業的な実施は、WO 96/00243、WO 98/40419、又はWO 00/05277に記載されている。
【0121】
更なる好ましい態様は、まず共触媒又はカチオン形成性化合物を担体成分に施し、続いてこの担持共触媒又はこのカチオン形成性化合物を遷移金属配位化合物と接触させることを含む。
【0122】
したがって、更なる重要な共触媒系は、以下の成分を配合することによって得られる配合物である。
第1成分:少なくとも一種の所定のホウ素又はアルミニウム化合物;
第2成分:少なくとも一種の、少なくとも一つの酸性水素原子を有する非荷電の化合物;
第3成分:少なくとも一種の担体、好ましくは無機酸化物担体、及び場合によっては、第4の成分として、塩基、好ましくは有機窒素含有塩基、例えばアミン、アニリン誘導体、又は窒素複素環化合物。
【0123】
これらの担持共触媒の製造において用いられるホウ素又はアルミニウム化合物は、好ましくは、式(XVI):
【0124】
【化15】

【0125】
(式中、
基R55は、同一か又は異なり、それぞれ、水素、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜C20ハロアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C20アリール、C〜C20ハロアリール、C〜C20アリールオキシ、C〜C40アリールアルキル、C〜C40ハロアリールアルキル、C〜C40アルキルアリール、C〜C40ハロアルキルアリールであるか、或いはR55は、OSiR56基であり;
ここで、基R56は、同一か又は異なり、それぞれ、水素、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜C20ハロアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C20アリール、C〜C20ハロアリール、C〜C20アリールオキシ、C〜C40アリールアルキル、C〜C40ハロアリールアルキル、C〜C40アルキルアリール、C〜C40ハロアルキルアリール、好ましくは、ハロゲン、C〜Cアルキル、又はC〜C20アリールアルキルであり;
は、ホウ素又はアルミニウム、好ましくはアルミニウムである)
の化合物である。
【0126】
式(XVI)の特に好ましい化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムである。
少なくとも一つの酸性水素原子を有し、式(XVI)の化合物と反応することのできる非荷電の化合物は、好ましくは、式(XVII)、(XVIII)、又は(XIX):
【0127】
【化16】

【0128】
(式中、
57は、同一か又は異なり、それぞれ、水素、ハロゲン、1〜40個の炭素原子を有するホウ素非含有有機基、例えば、C〜C20アルキル、C〜C20ハロアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C20アリール、C〜C20ハロアリール、C〜C20アリールオキシ、C〜C40アリールアルキル、C〜C40ハロアリールアルキル、C〜C40アルキルアリール、C〜C40ハロアルキルアリール、Si(R59基又はCH(SiR59基であり;
ここで、R59は、1〜40個の炭素原子を有するホウ素非含有有機基、例えば、C〜C20アルキル、C〜C20ハロアルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C20アリール、C〜C20ハロアリール、C〜C20アリールオキシ、C〜C40アリールアルキル、C〜C40ハロアリールアルキル、C〜C40アルキルアリール、C〜C40ハロアルキルアリールであり;
58は、1〜40個の炭素原子を有する二価の有機基、例えば、C〜C20アルキレン、C〜C20ハロアルキレン、C〜C20アリーレン、C〜C20ハロアリーレン、C〜C40アリールアルキレン、C〜C40ハロアリールアルキレン、C〜C40アルキルアリーレン、C〜C40ハロアルキルアリーレンであり;
Dは、元素周期律表の第16族の元素、又はNR60基であり、ここで、R60は、水素、又はC〜C20炭化水素基、例えば、C〜C20アルキル又はC〜C20アリールであり、Dは酸素であることが好ましく;
hは、1又は2である)
の化合物である。
【0129】
式(XVII)の好適な化合物は、水、アルコール、フェノール誘導体、チオフェノール誘導体、又はアニリン誘導体であり、ハロゲン化、特にペルフッ素化アルコール及びフェノールが特に重要である。特に好適な化合物の例は、ペンタフルオロフェノール、1,1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、及び4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニルである。
【0130】
式(XVIII)の好適な化合物は、ボロン酸及びボリン酸、特にペルフッ素化アリール基を有するボリン酸、例えば(CBOHである。
式(XIX)の好適な化合物は、二価の炭素含有基が好ましくはハロゲン化、特にペルフッ素化されているジヒドロキシ化合物である。かかる化合物の例は、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニルハイドレートである。
【0131】
式(XVI)の化合物と式(XVII)又は(XIX)の化合物との組み合わせの例は、トリメチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、トリメチルアルミニウム/1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、トリメチルアルミニウム/4−ヒドロキシ−2,2’,3,3’,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェニル、トリエチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、又はトリイソブチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、或いはトリエチルアルミニウム/4,4’−ジヒドロキシ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェニルハイドレートであり、例えば、以下のタイプの反応生成物を形成することができる。
【0132】
【化17】

【0133】
少なくとも一種の式(XVI)の化合物と少なくとも一種の式(XVII)の化合物との反応生成物の例は、
【0134】
【化18】

【0135】
である。
原則として、成分は任意の方法で配合することができる。
適当な場合には、少なくとも一種の式(XVI)の化合物と少なくとも一種の式(XVII)、(XVIII)、又は(XIX)の化合物、及び場合によっては有機窒素塩基との反応からの反応生成物を、更に、担体と一緒に担持共触媒系を形成するために式(XI)、(XII)、(XIII)及び/又は(XV)の有機金属化合物と配合する。
【0136】
好ましい態様においては、第1成分、例えば式(XII)の化合物、及び第2成分、例えば式(XVII)、(XVIII)又は(XIX)の化合物を配合し、第3成分としての担体、及び第4成分としての塩基を別々に配合し、次に二つの混合物を互いに反応させる。この反応は、好ましくは不活性の溶媒又は懸濁媒体中で行う。形成された担持共触媒は、遷移金属配位化合物、及び適当な場合には式(XV)の金属化合物と反応させて触媒系を形成する前に、不活性の溶媒又は懸濁媒体を除去することができる。
【0137】
また、触媒固体を、まずα−オレフィン、好ましくは線状のC〜C10−1−アルケン、特にエチレン又はプロピレンと共に予備重合し、次に得られた予備重合触媒固体を実際の重合において用いることもできる。予備重合において用いる触媒固体と、その上に重合するモノマーとの質量比は、通常、1:0.1〜1:200の範囲である。
【0138】
更に、変性成分として、少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレン、又はフェニルジメチルビニルシラン、静電防止化合物、又は好適な不活性化合物、例えばワックス又はオイルを、担持触媒系の製造中又は製造後に添加剤として加えることができる。遷移金属配位化合物に対する添加剤のモル比は、通常、1:1000〜1000:1、好ましくは1:5〜20:1である。
【0139】
本発明の重合方法においては、触媒系は、一般に、オレフィンの重合又は共重合のための、触媒系の製造において用いる式(XV)の一つ又は複数の金属化合物と異なっていてもよい、一般式(XV)の更なる金属化合物と一緒に用いる。この更なる金属化合物は、一般に、モノマー又は懸濁媒体に加え、触媒活性を損なう可能性のある物質をモノマーから取り除く役割を果たす。また、1種以上の更なる共触媒又はカチオン形成性化合物を、重合プロセスにおける触媒系に更に加えることもできる。
【0140】
オレフィンポリマーを製造するための本発明方法によって得ることのできるポリオレフィンも、同様に本発明の対象である。
本発明は、更に、1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する、オレフィンポリマーを製造するための本発明方法において用いられる触媒系を提供する。この触媒系は、チーグラー・ナッタ触媒又は「シングルサイト触媒」のいずれかであってよい。「シングルサイト触媒」類からの触媒系が好ましい。
【0141】
したがって、本発明は、更に、触媒成分を互いに接触させ、触媒系が、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する、オレフィンポリマーを製造するための触媒系の製造方法を提供する。触媒成分を配合する順番は、原則として重要ではない。しかしながら、触媒成分は、好ましくは、文献において記載されており、それぞれの触媒タイプのために有用であることが見出されている順番の一つで配合する。
【0142】
少なくとも一種の遷移金属配位化合物、及び少なくとも一種の共触媒を含み、遷移金属配位化合物が、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含む、上記においてより詳細に説明した種類の触媒系が好ましい。ここで、遷移金属配位化合物は、好ましくは、遷移金属中心に結合し、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、二つ又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の二座又は三座窒素リガンドからなる群から選択される少なくとも一つのリガンドを含む。
【0143】
本発明は、更に、オレフィンの重合のための、本発明の触媒系の使用を提供する。
担体を含んでいてもよい上記記載の本発明の触媒系は、単独か、或いは、同様に担持されていてもよく、本発明の重合プロセスにおいてオレフィンの単独重合、共重合、又はオリゴマー化に好適な1以上の更なる触媒系と一緒に用いることができる。ここで、少なくとも一つの更なる触媒系は、本発明の触媒系とは別々に調製することができ、或いはこれと一緒に製造することができる。而して、異なる触媒系は、例えば、担体上に一緒に存在させることができ、或いは、担持又は非担持触媒系として互いに独立して存在させることができ、これは、任意の方法で予備混合して、一緒か、又は別々に、即ち互いに独立して重合反応器中に計量することができる。更なる触媒系は、好ましくは、光によって変化する可能性のないものである。ポリオレフィンを製造するために本発明の触媒系と一緒に用いることができる公知の触媒系の例は、特に、チタンをベースとする伝統的なチーグラー・ナッタ触媒、酸化クロムをベースとする伝統的なフィリップス触媒、或いは、好ましくは遷移金属成分として、メタロセン、拘束幾何形状コンプレックス(例えば、EP−A−0416815、又はEP−A−0420436を参照)、例えばUS6437161に記載されているようなクロムシングルサイトコンプレックス、ニッケル−及びパラジウム−ビスイミン系(WO 9803559−A1に記載のようにして調製することができる)、又は鉄−及びコバルト−ピリジンビスイミン化合物(WO 9827124−A1に記載のようにして調製することができる)を含むシングルサイト触媒である。本発明の触媒系を、重合のための少なくとも一つの更なる触媒と一緒に用いる場合には、シングルサイト触媒、特に鉄−ピリジンビスイミン化合物をベースとするものを用いることが好ましい。
【0144】
本発明方法においては、触媒系中のフォトクロミック基の存在によって、重合プロセス及び製造されるポリマーの目標とする形態での操作を制御する更なる手段が提供される。この更なる制御手段は、温度、圧力、又は水素濃度のような公知の制御手段とは無関係である。フォトクロミック基の現在の状態、又はフォトクロミック基の二つの状態の数比によって、触媒系の重合特性が変化する。
【実施例】
【0145】
本発明を以下の実施例によって説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0146】
一般的手順
空気感受性材料を含む有機及び有機金属化合物の合成は、他に示さない限り、予め乾燥したガラス容器内において窒素雰囲気下で行った。濾過及び取り扱い、秤量及び乾燥のような操作は、窒素流が通過する配置の真空雰囲気乾燥ボックス内で行った。空気感受性化合物の合成において用いた溶媒は、Aldrichの無水グレードであった。幾つかの場合においては、溶媒を、モレキュラーシーブ、活性アルミナ、又は担持銅触媒を通して、GrubbsらのOrganometallics 1996,15(5),1518〜1520に記載されているものと同様の手順で濾過を行うことによって更に精製した。
【0147】
出発物質として用いた5−メチル−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−オンは、J.Am.Chem.Soc.1998,120,10786〜10787にしたがって合成した。
【0148】
カップリング実験で用いたパラジウム触媒、及びジルコニウム−(IV)−クロリドは、Strem Chemical Co.(MA,USA)から購入した。ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)クロリド(NiDPPP)は、Aldrich Chemical Companyから購入した。
【0149】
重合において用いたメチルアルモキサン(トルエン中の溶液;30重量%のMAO)は、Albemarle Corp.から入手し、Al(i−Bu)(トルエン中の1M溶液)は、Aldrich Chemical Companyから入手した。
【0150】
固有粘度数:粘度数は、S5測定ヘッドを有するUbbelohde粘度計PVS1(いずれもLaudaから入手)内において、デカリン中、135℃で測定した。試料の調製のために、20mgのポリマーを、135℃において20mLのデカリン中に2時間かけて溶解した。15mLの溶液を粘度計内に配置し、この装置によって、一貫した結果が得られるまで、最小で3回の流出時間測定を行った。流出時間から、IV=(t/t−1)*1/c(式中、tは溶液の流出時間の平均値、tは溶媒の流出時間の平均値、cは溶液の濃度(g/mL)である)にしたがってIVを算出した。
【0151】
ゲル透過クロマトグラフィー:Watersの150C−GPC装置を用いて、1,2,4−トリクロロベンゼン中、145℃において、ゲル透過(GPC)を行った。HS−Entwicklungsgesellschaft fur wissenschaftliche Hard− und Software mbH,Ober−Hilbersheimから入手したソフトウェアであるWin−GPCを用いて、データを評価した。カラムは、100〜10g/モルの範囲のモル質量を有するポリプロピレン標準試料を用いて較正した。ポリマーの質量平均モル質量(M)及び数平均モル質量(M)を測定した。Q値は、数平均モル質量(M)に対する質量平均モル質量(M)の比である。
【0152】
融点の測定:ISO標準規格3146にしたがって、DSC測定により、20℃/分の加熱速度での200℃への第1の加熱段階、20℃/分の冷却速度での25℃への動的結晶化、及び20℃/分の加熱速度での再び200℃への第2の加熱段階で、融点Tを測定した。融点は、第2の加熱段階において測定されたエンタルピー対温度の曲線が最大値を示す温度であった。
【0153】
密度(g/cm)は、ISO1183にしたがって測定した。
メチル基含量は、ASTM D6248−98と同様にIR分光法を用いて測定した。
337nmの窒素レーザーを備えたApplied Biosystem Voyager System 6033上で、飛行マススペクトルのレーザー脱離イオン化時間をとった。スペクトルは、ポジティブモード及びネガティブモードの両方での反射器の操作によって集めた。加速電圧は、76%のグリッド電圧において20000Vであった(標準値)。質量は、ポジティブモード(M+1)又はネガティブモード(M−1)のいずれかで報告する。−35(塩素)のフラグメントの親イオン又は分子フラグメントに関して算出されたアイソトープ分布パターンを用いて、報告された構造を確認した。
【0154】
実施例
1.{ビス(2,3−(3’−ベンゾチアフェン−イル)]シクロペンタ[b]チエニル)ZrCl(1)
(1a)2,3−ジブロモ−4,5−ジヒドロ−5−メチルシクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(1a)
【0155】
【化19】

【0156】
35.7g(225ミリモル)の臭素を、20.5g(250ミリモル)の酢酸ナトリウム、50mLの水、及び15.2g(100ミリモル)の5−メチル−6H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オンの混合物に滴加した。添加が完了したら、反応混合物を30分間撹拌し、サンプリングした(GCMSは一つの臭素のみが付加されたことを示した)。更に15g(94ミリモル)の臭素を滴加した。反応混合物を更に1時間撹拌した後、水中に注ぎ入れた。有機物をジクロロメタンで抽出し、pHが中性になるまで重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄し、次に水で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次に真空中で溶媒を除去した。29.31gの暗紫色の自由流動固体が回収された(GCMSによると95%)。この物質を、更なる精製を行わずに続く工程において用いた。
【0157】
1H-NMR δ (CDCl3): 3.2 (m, 1H), 2.98 (m, 1H), 2.57 (m, 1H), 1.3 (t, 3H). EIMS: m/e (%) = 312.9 (3), 311.9 (32), 310.9 (10.0), 309.9 (62), 308.9 (11.0), 307.9 (31), 306.9 (4), 296.9 (51), 295.5 (9), 294.9 (100), 292.9。
【0158】
(1b)2,3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5−メチル−4H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(1b)
【0159】
【化20】

【0160】
5g(28ミリモル)のチアナフタレン−3−ボロン酸(Aldrich)、及び2.35g(22.4ミリモル)の炭酸ナトリウムを、70mLの脱気ジメトキシエタン/水(9:1)中に溶解した1.7g(5.78ミリモル)の2,3−ジブロモ−5−メチル−6H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オンの溶液に加えた。フラスコの雰囲気を窒素で置換し(更に反応混合物を脱気した)、次に正圧の窒素流下において、0.7g(0.6ミリモル)のテトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Strem、99.9%)を加えた。反応混合物を2時間還流した後、冷却した。次に、反応混合物を1N−HCl溶液中に注ぎ入れ、水、重炭酸塩飽和溶液、次に水で洗浄した。反応混合物を、硫酸マグネシウム上で乾燥し、(1)ヘキサン、次に(2)50:50のジクロロメタン(生成物を回収するため)を用いてシリカを通して濾過した。真空中で溶媒を除去した。2.03g(GCMSによると92.8%)の生成物(1b)が得られた。この生成物を、更なる精製を行わずに続く反応において用いた。
【0161】
(1b)のスケールアップ合成
サイドアーム及びテフロン(登録商標)製撹拌棒を有する250mLのフラスコ内に、70mLの脱気エチレングリコール−ジメチルエーテル/水(水10%)中の9.3g(30ミリモル)の2,3−ジブロモシクロペンタ[b]チオフェン−6−オンの溶液を配置した。25g(140ミリモル)のチアナフタレン−3−ボロン酸(Aldrich)、続いて11.7g(110ミリモル)の炭酸ナトリウムを加えた。2.0g(2ミリモル)のPd(PPh(Strem)を加え(更に30mLのDME溶液を用いて成分を洗浄した)。次にフラスコの内容物を3時間還流した。混合物を冷却し、氷冷した1N−HCl溶液中に注ぎ入れ、次に50:50のジクロロメタン/ヘキサン溶液を用いて有機物を回収した。有機物を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次に溶媒を真空中で除去した。次に、固体をヘキサンで洗浄した後、乾燥した。15.8gの淡黄色の粉末が回収された。FIDGC/GCMSによると91%の生成物であった。
【0162】
EIMS, m/z (%): 418 (17), 417 (29), 416 (100), 410 (11), 375 (2), 374 (3), 373 (9), 372 (2), 346 (10), 340 (16), 327 (11);
1H-NMR δ (CDCl3) (異性体): 7.8 (m, 2H), 7.15-7.55 (m, 8H), 3.5 (2d, 1H), 3.2 (m, 1H), 3.05 (m, 1H), 2.6 (m, 1H), 1.3 (2s, 3H)。
【0163】
(1c)6−ブチル−5−メチル−2,3−ビス(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−4,5−ジヒドロシクロペンタ[b]チオフェン(1c)
【0164】
【化21】

【0165】
n−ブチルリチウムの溶液(5ミリモル、2mL、ヘキサン中2.5M)を、80mLのジエチルエーテル中に溶解した2.08g(5ミリモル)の2,3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5−メチル−6H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オン(1b)の溶液に加えた。反応混合物を18時間撹拌した後、水中に注ぎ入れた。ジクロロメタン及びヘキサンを含む1:1溶液を用いて有機物を回収し、水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次に真空中で溶媒を除去した。この方法で、1.35gの橙色のペースト状物が回収され、ヘキサンからジクロロメタンへ増大する勾配を用いた35gのシリカ上での分取HPLCによって分取した。化合物(1c)の収量は0.23gであった。FIDGC/GCMSによると3種類の異性体があった。
【0166】
EIMS, m/z (%): (主異性体): 459 (5), 458 (19), 457 (33), 456 (100), 454 (1), 430 (10), 430 (10), 429 (16), 429 (16), 428 (29), 427 (93)。
1H-NMR δ (CDCl3): 7.6-8.0 (m, 3H), 7.6 (d, 1H), 7.65-7.20 (m, 6H), 3.18 (s, 1H), 2.6 (t, 3H), 2.1 (s, 1H), 1.75 (m, 2H), 1.5 (m, 2H), 1.03 (t, 3H)。
【0167】
(1d)2,3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6−ジヒドロ−5−メチル−4H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オール(1d)
【0168】
【化22】

【0169】
リチウムアルミニウムヒドリドの溶液(1.8ミリモル、1.8mL、ジエチルエーテル中1M)を、70mLのジエチルエーテル中に溶解した1.59g(3.8ミリモル)の3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5−メチル−6H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オンの溶液に滴加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、氷上に注いだ。ジエチルエーテルを用いて有機物を回収し、水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、次に濾過した。溶媒を真空中で除去した。1.18gの(1d)が明褐色の粉末として回収された。この物質のGCMS分析では、装置によって部分的に脱水されたオレフィンのみが示された。
【0170】
1H-NMR δ (CDCl3): 7.7 (m, 2H), 7.45 (m, 1H), 7.2 (4H), 3.4 (m, 0.5H), 3.0-1.9 (7m, 3H), 1.3 (3m, 3H)。
【0171】
(1e)2,3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5−メチル−4H−シクロペンタ[b]チオフェン(1e)
【0172】
【化23】

【0173】
0.6gのパラトルエンスルホン酸一水和物を、50mLのトルエン中に溶解した1.1gの2,3−ジ(ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6−ジヒドロ−5−メチル−4H−シクロペンタ[b]チオフェン−6−オール(1d)の溶液に加えた。混合物を1時間還流し、冷却し、次に水中に注ぎ入れた。ジクロロメタン/ヘキサンの50/50混合物を用いて有機物を回収し、水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次に真空中で溶媒を除去した。1.18gの明褐色の粉末が回収され、これを次にヘキサンから再結晶させた。0.44gの(1e)が回収された。
【0174】
1H-NMR δ (CDCl3): 7.9-7.7 (m, 2H), 7.44 (d, 1H), 7.4-7.1 (m, 5H), 3.56 (m, 0.3H), 3.50 (m, 0.3H), 3.5 (s, 0.3), 3.17 (m, 1H), 3.02 (m, 1H), 2.53 (2d, 1H), 1.33 (2s, 3H)。
【0175】
(1)ビス(2,3−(3’−ベンゾチアフェン−イル)]シクロペンタ[b]チエニル)ジルコニウムジクロリド(1)
【0176】
【化24】

【0177】
テフロン(登録商標)製の撹拌棒を有する50mLのガラス容器内に、30mLのジエチルエーテル中でスラリー化した1.04g(2.5ミリモル)の3−ヒドロ−[2,3−(3’−ベンゾチアフェン−イル)]シクロペンタ[b]チオフェン(1e)を配置した。溶液を254nmのランプで90分間照射し(照射中に色が白色から紫色に変化した)、次にn−ブチルリチウムの溶液を滴加した(2.5ミリモル、1mL、ヘキサン中2.5M)。反応混合物を更に1時間撹拌し、次に0.3g(1.25ミリモル)の四塩化ジルコニウムを乾燥粉末としてゆっくりと加えた。反応混合物を一晩撹拌した後、濾過した。固体を新鮮なジエチルエーテルで洗浄した。次に、固体をジクロロメタン中でスラリー化し、濾過し、次に真空中で溶媒を除去した。最後に、ジクロロメタン濾液から回収した固体をペンタンで洗浄し、次に真空中で乾燥した。(1)の収量:0.90gの(1)が橙色の自由流動粉末として得られた。
【0178】
1H-NMR δ (CDCl3): 8.0-6.9 (m, 16H), 6.9-6.1 (4m, 4H), 2.1 (2s, 6H)。
MS(LD-TOF-ネガティブモード): 922[M- -35](-Clの消失)。
【0179】
(2)ジメチルシリル[(5−メチル−2,3−ビス(ベンゾチアフェン−3−イル)シクロペンタ[b]チエン−6−イル)][(2,5−ジメチル−3−フェニル−シクロペンタ[b]チエン−6−イル)]ジルコニウムジクロリド(2)
(2a)クロロ−ジメチル−(2,5−ジメチル−3−フェニルヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−イル)シラン(2a)
【0180】
【化25】

【0181】
n−ブチルリチウムの溶液(60ミリモル、24mL、ヘキセン中2.5M)を、100mLのジエチルエーテル中に溶解した12.7g(56.2ミリモル)の2,3−ジメチル−3−フェニル−6−ヒドロシクロペンタ[b]チオフェンの溶液に加えた。撹拌を容易にするために更に100mLのジエチルエーテルを加えた。反応混合物を5時間撹拌すると白色のスラリーになった。
【0182】
別のフラスコ内で、50mLのジエチルエーテル中に溶解した10.9g(86ミリモル)のジクロロジメチルシランを含む溶液を調製した。上記のフラスコからの内容物をカニューラを通して加え、18時間撹拌した後、真空中で溶媒を除去した。固体をジクロロメタン中でスラリー化した後、濾過した。溶媒を濾液から除去した。6.37gの暗褐色の粘稠な油状物が回収された。EIMS, m/z (%): [M] 318, (100%)。
【0183】
(2b)ジメチル−[5−メチル−[(2,3−ビス(ベンゾチアフェン−3−イル)ヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−イル)][(2,5−ジメチル−3−フェニルヒドロシクロペンタ[b]チオフェン−6−イル)]シラン(異性体)(2b)
1.04g(2.5ミリモル)の(2,3−ビス(ベンゾチアフェン−3−イル)シクロペンタ[b]チオフェンを、80mLのジエチルエーテル中に溶解した。溶液を、254nmのUV光下で90分間撹拌した。次に、n−ブチルリチウムを含む溶液を加えた(2.5ミリモル、1mL、ヘキサン中2.5M)。反応混合物を2時間撹拌した後、ジエチルエーテル中に溶解した0.82g(2.6ミリモル)のクロロジメチル−(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタ[b]チオフェン−6−イル)]シランを含む溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を72時間撹拌した後、水中に注ぎ入れた。20%のジクロロメタン/ヘキサン溶液を用いて有機物を回収し、有機物を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空中で溶媒を除去した。ヘキサン及びジクロロメタン勾配を用いてシリカゲル(Iscoカラム、110g)を通して1.75gの生成物を濾過した(HPLC)。この方法で、0.21gの(2b)が明桃色の自由流動粉末として回収された。
【0184】
1H-NMR δ(CDCl3): 8.0-7.6 (m, 5H), 7.6-7.0 (m, 10H), 6.6-6.4 (2s, 2H), 4.2-3.8 (1d, 2s, 2H), 2.5 (s, 3H), 2.5 (m, 6H), -0.5 (m, 6H); LCMS, [M] = 683。
【0185】
(2)ジメチルシリル[(5−メチル−(2,3−ビス(ベンゾチアフェン−3−イル)シクロペンタ[b]チエン−6−イル)][(2,5−ジメチル−3−フェニル−シクロペンタ[b]チエン−6−イル)]ジルコニウムジクロリド(2)
【0186】
【化26】

【0187】
40mLのジエチルエーテル中の0.18g(0.26ミリモル)のジメチル−[5−メチル−[(2,3−ベンゾチアフェン−3−イル)シクロペンタ[b]チオフェン−6−イル][(2,5−ジメチル−3−フェニルチオフェン−イル)シクロペンタ[b]チオフェン−6−イル]シラン(2b)の溶液を、二つの254nmランプを用いて4時間照射した。照射下において、n−ブチルリチウムを含む溶液を加えた(0.6ミリモル、0.25mL、ヘキサン中2.5M)。反応混合物を18時間撹拌した後、0.6g(0.26ミリモル)の四塩化ジルコニウムを乾燥粉末として加えた。反応混合物を18時間撹拌した後、濾過した。黄色のエーテル溶液から溶媒を除去し、残留した固体を真空中で乾燥した。0.34g。
【0188】
1H-NMR δ (CDCl3): 7.9 (d, 0.5H), 7.8 (d, 0.5H), 7.74 (t, 2H), 7.5 (t, 2H), 7.46-7.1 (m, 10H), 7.0 (m, 1H), 6.6 (2s, 1H), 6.5 (2s, 1H), 2.5-2.3 (m, 6H), 1.1 (m, 6H), 0.05 (s, 3H)。
MS(LD-TOF-ポジティブモード): 843[M++1]。
【0189】
実施例P1:プロペンの溶液重合
テフロン(登録商標)製の撹拌棒を取り付けた30mLのシュレンクチューブ内に、20mLのトルエン、及びMAOを含む溶液(2.8ミリモル、0.9mL、トルエン中1.58M)を配置した。別の容器内において、メタロセン(1)を秤量し、5mLのトルエン及び更なる量のMAO(2.8ミリモル、0,9mL、トルエン中1.58M)を用いて溶液を調製した。色の変化を記録し、溶液を合わせた。溶液を通して約15〜25L/時の速度でプロピレンをバブリングし、時間を記録した。重合反応混合物を酸性メタノール溶液中に注ぎ入れた。ポリマーを濾過によって回収し、アセトンで洗浄し、真空中で乾燥した。これによって、0.12gのポリプロピレンが得られた。重合の結果及びポリマー分析の結果を下表1に示す。
【0190】
実施例P2:254nmのUVを用いたプロペンの溶液重合
上記の実施例P1と同じ方法で、テフロン(登録商標)製の撹拌棒を取り付けた30mLのシュレンクチューブ内に、20mLのトルエン、及びMAOを含む溶液(2.8ミリモル、0.9mL、トルエン中1.58M)を配置した。別の容器内において、メタロセン(1)を秤量し、5mLのトルエン、及び更なる量のMAO(2.8ミリモル、0.9mL、トルエン中1.58M)を用いて溶液を調製した。色の変化を記録し、溶液を合わせた。二つの実験室用低ワット量254nmUVランプをつけ、実験の継続中、シュレンクチューブのそれぞれの側面上に配置した。約15〜25L/時の速度で溶液を通してプロピレンをバブリングし、時間を記録した。重合反応混合物を酸性メタノール溶液中に注ぎ入れた。アセトンを用いてポリマーを沈殿させ、ポリマーを濾過によって回収した。これによって、0.09gのポリプロピレンが得られた。重合の結果及びポリマー分析の結果を下表1に示す。
【0191】
実施例P3:プロペンの溶液重合
P1と同じ方法で、重合反応器及び溶液を準備した。メタロセン(1)の量を10mgに増加し、重合時間を90分に延ばした。これによって、0.38gのポリプロピレンが得られた。重合の結果及びポリマー分析の結果を下表1に示す。
【0192】
実施例P4:254nmのUVを用いたプロペンの溶液重合
P2と同じ方法で、重合反応器及び溶液を準備した。メタロセン(1)の量を10mgに増加し、254nmのUV照射の存在下での重合時間を90分に延ばした。これによって、0.04gのポリプロピレンが得られた。重合の結果及びポリマー分析の結果を下表1に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
実施例P5:エチレン及びヘキセンの溶液共重合
5.2mgのメタロセン(2)及びMAOを含む溶液(0.6mLの30%トルエン溶液)を、250mLのトルエン及び5mLのヘキセンを含む機械的に撹拌している1Lのガラス反応フラスコに加えた。溶液を通して30L/時の速度でエチレンガスをバブリングした。温度を40℃に保持し、時間を記録した。重合の終了時に、反応フラスコをアルゴンでパージし、次に50mLのメタノール及び30mLの1N−HCl水溶液を含む溶液を加えた。濾過によってポリマーを回収し、メタノールで洗浄し、次に乾燥した。これによって、1.1gのポリエチレン−ヘキセンコポリマーが得られた。重合の結果及びポリマー分析の結果を下表2に示す。
【0195】
実施例P6:254nmのUVを用いたエチレン及びヘキセンの溶液共重合
P5と全く同じように行った実験において、反応器及び5.3mgのメタロセン(2)を準備し、重合反応器に加えた。二つの実験用低ワット量254nmUVランプをつけ、実験の継続中反応フラスコのそれぞれの側面上に配置した。P5と同じ方法でポリマーを回収した。これによって、6.5gのポリエチレン−ヘキセンコポリマーが得られた。重合の結果及びポリマー分析の結果を下表2に示す。
【0196】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:R−CH=CH−R(式中、R及びRは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、或いはR及びRは、それらを結合する原子と一緒に環を形成してもよい)の少なくとも一種のオレフィンを、−60〜200℃の温度及び0.5〜100barの圧力において、溶液中、懸濁液中、又は気相中で、1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する触媒系の存在下で重合又は共重合することによって、オレフィンポリマーを製造する方法。
【請求項2】
フォトクロミック基が、1,2−ジアリールエテン誘導体、1,2−ジヘテロアリールエテン誘導体、ジヒドロピレン誘導体、フルギド、アセトアニリド、アルデヒドヒドラゾン、チオインディゴ誘導体、ローダミン誘導体、スピロピラン、スピロオキサジン、アゾベンゼン誘導体、及びアントラキノン誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合を、少なくとも一部の時間の間、フォトクロミック基を状態Aから状態Bへ又は状態Bから状態Aへ変化させるのに好適な少なくとも一つの光源の存在下で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒系が、少なくとも一種の遷移金属配位化合物、及び適当な場合には共触媒を含み、遷移金属配位化合物が、少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はそれと縮合している少なくとも一つのリガンドを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
遷移金属配位化合物が、遷移金属中心に結合しており、且つ少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はそれと縮合している、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンドからなる群から選択される少なくとも一つのリガンドを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1以上の触媒成分を含み、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する、オレフィンポリマーを製造するための触媒系。
【請求項7】
少なくとも一種の遷移金属配位化合物及び少なくとも一種の共触媒を含み、遷移金属配位化合物が、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含む、請求項6に記載の触媒系。
【請求項8】
触媒成分を互いに接触させ、触媒系が、一つの触媒成分において少なくとも一つのフォトクロミック基を有する、オレフィンポリマーを製造するための触媒系の製造方法。
【請求項9】
遷移金属が、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族からなる元素の群から選択され、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含む、遷移金属配位化合物。
【請求項10】
遷移金属が、Sc、Yb、La、Ti、Zr、Hf、Cr、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、及びランタニド族からなる元素の群から選択され、少なくとも一つのフォトクロミック基によって置換されているか又はそれと縮合している、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、或いは単陰荷電又は多陰荷電の単座、二座、又は三座窒素リガンドからなる群から選択される少なくとも一つのリガンドを含む、遷移金属配位化合物。
【請求項11】
式(III)、(IV)、及び/又は(V):
【化1】

(式中、
は、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
は、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
、R、R、Rは、同一か又は異なり、それぞれ、水素、ハロゲン、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり、或いは二つの隣接する基RとR及び/又はRとRは、それらを結合する原子と一緒に、4〜40個の炭素原子を有し、またSi、Ge、N、P、O、S、Se、及びTe元素からなる群から選択されるヘテロ原子も有していてよい、単環又は多環で、置換又は非置換の、脂肪族又は芳香族環系を形成し;
、Rは、同一か又は異なり、好ましくは同一であり、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
は、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
は、単結合、又は1〜40個の炭素原子を有する二価の有機基であり;
は、O、S、Se、Te、NR、PR、又はCRであり、ここで、基Rは、それぞれ、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する有機基であり;
、Tは、同一か又は異なり、それぞれ、O、S、Se、Te、NR、又はPRである)
の化合物、又はその二重結合異性体、及び/又はその光異性体。
【請求項12】
オレフィンの重合のための請求項6又は7に記載の触媒系の使用。
【請求項13】
オレフィンの重合のための触媒系を製造するための、少なくとも一つのフォトクロミック基を有する少なくとも一つのリガンドを含む遷移金属配位化合物の使用。
【請求項14】
遷移金属配位化合物を製造するための式(III)の化合物の使用。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られるポリオレフィン。

【公表番号】特表2009−507114(P2009−507114A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529512(P2008−529512)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008503
【国際公開番号】WO2007/028536
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】