説明

フォトニック・ファイバー・トリガー式レーザー装置

30nsよりも短い幅のレーザーパルスを内部光学軸に沿って発生する装置であって、2mよりも光学的距離が短いレーザー共振器を含み、この共振器は2つの反射端を含み、そしてMPFフォトニック・ファイバーを組み込んでおり、レーザーダイオードからの少なくとも一つのポンピング波によってMPFファイバーは連続的にポンプされ、レーザー媒体はレーザー波を案内する媒体であって、そして非常に弱い信号でのMPFファイバーの利得は通過する毎に10よりも大きく、レーザー共振器は光変調器を組み込んでいる。本発明に従ってこの光変調器は内部レーザービームの軸を電気的な制御により2つの安定方向に沿って偏向させ、第1の方向と一致する軸に沿って内部レーザービーはレーザー作用のトリガーを阻止するに足るロスを受け、第2の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームの少なくとも一部分は共振器の第1の端を閉じている光学的戻し手段によりそれ自身の方へ反射され、レーザー共振器の他端は少なくとも部分的に反射する手段により閉じられ、そして変調器は光がキャビティを走るのにかかる時間よりも前に長い切替時間を有し、そして共振器の非常に弱い信号での利得よりもはるかに大きいロス・ファクターを有し、そして増幅媒体が分極状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトニック・ファイバー・トリガー式レーザー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリガー式の輝度の高い、幅の狭いレーザーパルスの生成原理は以前から知られている。それは、レーザー媒体を含むキャビティ内での波の再生増幅を、レーザー媒体の利得よりも大きいロスを導入することによって阻止することにある。利得媒体に十分なエネルギーを蓄積できるポンピング期間後にトリガーの光伝播を急増させて、非常に迅速に増幅されるキャビティ内の波をつくって、光パルスを放射させる。生成したパルスの幅はレーザー媒体の利得に逆比例し、そしてレーザーキャビティの長さに比例する。従来は、利得媒体はレーザー・バーであり、そしてトリガー装置は音響光学もしくは電気光学変調器である。さらに、レーザー遷移を呈するイオンをコアにドープした二重シース光学ファイバーを使用して非常に品質の高い、そして平均パワーの高い光ビームを発生できることが知られている。これらの方式は比較的に小さい作動領域(典型的には直径が10ミクロン以下)を呈し、それ故連続作動しても高エネルギーレーザーパルスによりファイバーの面が損傷することはない(損傷スレショールドは10nsパルスに対して約20−50J/cm)。
【0003】
フォトニック・レイヤーを持つレーザー・ファイバーもしくはMPF(マルチクラッド・フォトニック・ファイバー)フォトニック・レイヤーを持つレーザー・ファイバーもしくはMPF(マルチクラッド・フォトニック・ファイバー)は知られており、そしてジェイ・リムパート、エヌ・デグル‐ロビン、アイ・マネック‐ホニンガー、エフ・サリン、エフ・ローザー、エイ・リーム、ティ・シュライバー、エス・ノルテ、エイチ・ツエルマー、エイ・チュンネレウマン、ジェイ・ブロング、エイ・ピーターソン、そしてシー・ジャコブソンの論文、「高パワー、ロッドタイプ・フォトニック・クリスタル・ファイバーレーザー」、オプト・エクスプレス13、1055−1058(2005)で呈示されている。MPFレーザーは光学的増幅器を含んでおり、その増幅器のガラスファイバーはドープしたコアと、生成した波の案内を確かなものとする少なくとも一つの周縁シースとから形成されている。コアには一般に稀土イオン、ネオジムもしくはイッテリビウムをドープする。チャンネルもしくは空気キャピラリー(ホール)を幾何学的に配列して得られる光学的構造により案内は確実なものとされる。この構造は生成された波が遭遇するインデックスを人工的に低下させ、そして50μm程度の直径のファイバーコアーをモノ‐モードで伝播させれるようにする。この大きなコア直径のお陰でその生成された波のエネルギーは大きな表面にわたって広がることができ、そしてファイバー増幅器の基本的な両限界、すなわちフロー・ハンドリングと非線形効果とを押し戻せる。このような技術により1mJから10mJ程度のエネルギーを持つ1nsから30nsの比較的短いレーザーパルスを発生することも考えられる。
【0004】
これらのMPFレーザーは利得領域が非常に高度に封じ込められているお陰で極度に高い利得を呈する。このような封じ込めはトリガリングにより生成されたエネルギーに大きな吸収長と高度の制限とを課すのがこれまで普通であった。
【0005】
しかしながら、ポンピング期間中利得よりもロスを大きく維持することは非常に困難である。吸収長を減らし、そして作動域の大きさを同時に増加するために特別なフォトニック・ファイバーを使用できる。リンパート等(2005年2月にビエンナで開催されたアドヴァンスド・ソリッド・ステート・フォトニックス会議)はこれらのファイバーの一つを使って高エネルギーのナノ秒パルスを発生した。それでも、ポンピングの間キャビティをブロックするためポッケルスセルを使って非常に急速なトリガリング(<5ns)に頼っていた。その場合、レーザーは100kHz程度のレートに制限され、そして特にトリガリング・システムは費用がかかる。さらに、トリガリング・システムは共振器内を伝播する波の分極に対して敏感であり、そしてそれの効率はファイバーを通る伝播中分極解消により低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビーム品質を回折限界近くに維持し、そして平均パワーを非常に高く(>50W、数百ワット程に)保ちながら、非常に短いパルス(<30ns)を発生することができる。そうするには、フォトニック・レーヤーを持つレーザー・ファイバー、所謂MPF(マルチクラッド・フォトニック・ファイバー)を特定の形態で作動する音響光学型変調器と組み合わせて使用するのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は短い幅のレーザーパルスを周期的に発生する装置に係るものであって、その装置は2mよりも光学長が短いレーザー共振器を含み、この共振器は2つの反射端を含み、そしてレーザー媒体を組み込んでおり、そのレーザー媒体の一方の端のコリメーション光学手段により焦点を結ぶパワー半導体レーザーダイオードからの少なくとも一つのポンピング波によってレーザー媒体は連続的にポンプされ、そのレーザー媒体で内部レーザービームは案内され、そして非常に弱い信号でのレーザー媒体の利得はその利得媒体を通る毎回ごとに10よりも大きく、そして前記のレーザー共振器には光変調器も組み込んでいる。
【0008】
短い幅のレーザーパルスの幅はほぼ30nsよりも短い。
【0009】
本発明によれば、光変調器は内部レーザービームの軸を偏向させ、そして光変調器は電気的な制御により2つの安定方向に沿って作動され、第1の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームはレーザー作用のトリガーを阻止するに足るロスを蒙り、その場合レーザーパルス発生装置はオープン・キャビティ・モードである。そして第2の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームの少なくとも一部分は共振器の第1の端を閉じている光学的戻し手段によりそれ自身の方へ反射され、その場合レーザーパルス発生装置はクローズド・キャビティ・モードである。レーザー共振器の第2の端は増幅媒体の他側にあって、少なくとも部分的に反射する手段により閉じられている。変調器の切替時間は光がキャビティを走るのにかかる時間よりも大きく、そしてオープン・キャビティ・モードに対応する状態で生じるロス・ファクターが非常に弱い信号での共振器の利得よりも大きくなるようにしてレーザーパルス発生装置を使用する。
【0010】
本発明の様々な実施例で以下の手段をそれだけで、もしくは技術的に可能なあらゆる組み合わせで利用できる。
− レーザー媒体はMPFフォトニック・ファイバーである。
− 変調器は音響光学型変調器である。
− 変調器は作動モードで共振器の閉鎖を直接確保する。
− 第1の方向と一致する軸に沿う内部レーザービームはレーザー作用のトリガー(ロック・モード)を阻止するに足るロスを蒙り、その場合レーザーパルス発生装置はオープン・キャビティ・モードである。変調器は不作動状態である。
− 第2の方向と一致する軸に沿う内部レーザービームの少なくとも一部分が共振器の第1の端を閉じている光学的戻し手段によりそれ自身の方へ反射される。その場合レーザーパルス発生装置はクローズド・キャビティ・モードにある。変調器は作動状態である。
− 共振器を閉じるのに使う光学的戻し手段は、それの法線と不作動状態の変調器の出力におけるレーザービームとが成す角度が音響光学型変調器のオーダー1もしくは−1とオーダー0との間の角度に等しいように配置されている。
− 共振器を閉じるのに使う光学的戻し手段は、光学的変調器の出力面上のレーザー波の反射処理である。
− 音響光学型変調器がレーザーのロックモード(ポンピング・モードもしくは非トリガーモードとも云う)中電気制御エネルギーを実際に引き込まない。
− 変調器は機械的であり、そしてそれは光学的手段を機械的に動かすことにより作動する。
− 変調器は当初は透明な要素の反射率の変更を利用する手段を含んでいる。
− 反射率の変更を利用する手段は、共振器の軸と共直線となっている伝播軸を有する音響縦波を励起することにより反射率を増加することができる。
− レーザーパルス発生装置が一体構造であり、光学的キャビティの複数の部材がシリカ及び又はガラスから造られており、そして相互に取り付けられている。
− 一体構造の光学的キャビティの中でファイバーの第1の端はファイバーの長さ方向軸に対する法線に対して垂直となっている。
− 一体構造の光学的キャビティの中でコリメーション・レンズはファイバーの第1の端と光変調器との間に配置されている。
− ポンピング波は少なくとも一つのレーザーダイオードによりつくられ、そしてコリメーション光学手段によりファイバーの第2の端に焦点を結ぶ。
− 光学的コリメーション手段(複数)の間に配置されたダイクロイック・ミラーによりレーザー波は出力側で取り出される。
− つくられたパルス状のレーザー放射を線形に偏光させる手段を本装置が含んでいる。
− 増幅媒体が偏光状態を保つ。
− 変調器が2つの偏光状態に異なるロスを挿入する。
− 変調器とファイバーとから成るアセンブリが偏光を保持する。
− 本装置は、ファイバーにより案内されているか、又はファイバーにより案内されていない連続出力のレーザーダイオードによりポンピングされる。
− ポンプと共振器との結合は光学的コリメーション・デバイスのお陰で、もしくはファイバー要素を結合することによって生じる。
− 平均パワーは少なくとも10Wである。
− 平均パワーは少なくとも50Wであるのが好ましい。
− 50kHz以上のレートで1nsと30nsとの間の幅のレーザーパルスを発生できる手段を本装置は含んでおり、この手段は、回折の1.5倍より長い間レーザー出力側でビーム品質を確かなものとしている案内増幅媒体を備えている。
− 本装置のピーク・パワーは少なくとも33kWである(平均パワー>50W、レートは50kHzより大きい、パルス幅は30nsに等しいか、それよりも小さい)。
− 本装置のピーク・パワーは典型的には50kWより大きい(ピーク・パワーはレーザーキャビティの出力側で波を直接計測できるパワーである)。
− 本装置は非線形クリスタルで高調波輻射を発生する手段を含んでいる。
− 本装置は第3次非線形効果を利用している新しい時間周波数を発生する手段、特にフォトニック・ファイバーを含んでいる。
− 本装置は10nmよりもはるかに大きい帯域をカバーしていて、数百ナノメーターに達するスペクトルを発生する手段を含んでいる。
− コリメーション・レンズはファイバーの第1の端と光変調器との間に配置されている。
− ファイバーの第1の端はレーザー波の反射防止手段を備えている。
− ファイバーの第1の端はファイバーの長さ方向軸に対する法線に対して傾斜している。
− ファイバーの長さ方向軸に対する法線に対しての傾斜角度はファイバーのコアの開口数よりも大きく、そして1°と60°との間にある。
− ファイバーの長さ方向軸に対する法線に対してのファイバーの第1の端の傾斜角度は約8°である。
− 反射防止手段はファイバーの第1の端に加えた挿入体である。
− 反射防止手段はファイバーの第1の端の反射防止処理である。
− レーザーが含むリング状の共振器ではレーザー波が外側に向かう路と戻る路で正確に同じ道を辿らない。
本発明のレーザーはトリガーパルスレーザーであり、高利得であって、案内モードであって(MPFファイバーを有する)、パルス幅は短く、そして簡単な光電子トリガリング手段を使用し、それのトリガリング時間はパルス幅にとって決定的ではなく、そしてレーザーパルス幅よりも大きくてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付図を参照して本発明の実施例を以下に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0012】
図1で、反射ミラー8とMPF光ファイバー6の平らな端6’との間でレーザー伝播波長におけるレーザー共振器は形成されている。MPFファイバーの第2の端は切られているか、または磨かれてファイバーの長さ方向軸と(1°と60°との間で)典型的には8°の角度を形成している。傾斜している端の側でファイバーから射出される光ビームは音響光学変調器7のレンズ14を使って平行とされる。そして、この光ビームは音響光学変調器7に入射し、この変調器7はビームに対して少なくとも2つの異なる角度の路を出力側につくる。電子モジュール15によって所望の射出レートで変調器7は作動される。電子モジュールは作動中変調器内でつくられる高周波の音響波を制御している。ミラー8の法線が変調器の入射ビーム(これは不作動状態の変調器での出力ビームと一致する)と作動状態の変調器内の1もしくは−1のオーダーの回折ビームとの間の角度に一致する角度Θ10を形成するようにミラー8を配置する。
【0013】
一つもしくは幾つかのパワーレーザーダイオード13から取り出したポンピング波によりMPFファイバーは連続して、長さ方向にポンピングされる。ポンピング・ダイオードはファイバーにより案内されていることが好ましい。ポンピング波はコリメーション光学手段11によって、具体的には球面収差を修正したレンズ(ダブレット、トリプルスもしくは非球面レンズ)によってMPFファイバー6の傾斜していない端の側に焦点を結ぶ。ポンピング状態で電子モジュール15からの供給は止まっていて、変調器は制御信号をつくらず、そしてそのときは変調器は透過性、等方性物質のブロックのように作用する。そのときMPFファイバー6から取り出された光ビームは偏向することなく変調器を通り、鏡8の法線に対して角度Θを成して鏡に当たり、そしてそれは戻ってこず、従ってファイバーの中に戻ってはこない。レーザー伝播をトリガーするため電子モジュール15を作動し、変調器7の中に音響波をつくる。この音響波によりMPFファイバー6からくる入射ビームに鏡8に対して垂直になる角度Θの偏向を生じさせ、そしてそのビームはそれ自体の方に戻って、MPFファイバー内で増幅される。
【0014】
ファイバーの傾斜面と反対のファイバーの面6’は第2の鏡として働き、部分的に反射し、そして共振効果を生じさせ、それによりレーザー効果が上がり光パルスを生じさせる。電子モジュール15の作動により所定レートのパルスを含むレーザービームをMPFファイバーの端面を通して送り、そしてそのレーザービームはダイクロイック・ミラー12によりポンピングビームから分けられる。
【0015】
こうしてつくられたパルスビームの空間品質は、MPFファイバーの特性によって定められるため、回折限界に非常に近い。
【0016】
例えば、コア直径が50μmのオーダーであるMPFファイバーを使う。例えば、断面積が10,000平方ミクロンと250,000平方ミクロンの間の範囲にある導波シースを含むダブルクラッドファイバー構造体を使う。増幅媒体は長さ/直径の高い比を有し、その断面積は500平方ミクロンと10,000平方ミクロンとの間にあり、そして増幅媒体の長さは10cmと1.5mとの間にある。ファイバーの増幅媒体は非常に弱い信号でも利得を生じるのが好ましく、その利得媒体の通過ごとに10よりも利得が大きいのが典型である。ファイバーの構造体は増幅媒体内でレーザー波を案内することができる。
【0017】
ファイバー内の利得が非常に大きいので(通過ごと10より大きく、そして典型的には通過ごと100よりも大きい)、各パルスの幅はレーザーキャビティ内に一度入って戻る走行時間によって決められ、変調器の立上げ時間によっては決められない。短いファイバーMPF(2mよりも短く、そして好ましくは1mよりも短い)で提案された構造形態となっているということで、10nsよりも幅の狭いパルスが、100nsよりも応答時間が大きい変調器でつくられることとなる。そうするには、ポンピング期間中ロスが非常に高くなっていることを保証することが必要である(そうでないと、レーザー効果はトリガリングと独立して生じることになる)。音響光学モジュールの第1回折オーダーでレーザーをトリガーし、そして主とし音響光学モジュールが作動されていないときにポンピングすることによって、変調器に制御信号がかかっていないキャビティが開いたままとしている(ループが形成されていない)ことを保証できる。作動モードにおけるファイバーの非常に大きい利得は、変調器が100%以下の回折効率で作動していることによってもたらされるロスを大きく補償する。反対に、受動態様では音響光学モジュールは受動光学要素のように働き、100よりもはるかに大きいロス・ファクターが(例えば、1000当り2程度のスプリアス・リターン・レートで)保障される。
【0018】
ワイドモード・光ファイバーと1もしくは−1オーダーで作動する音響光学変調器との組合せが、高い平均パワーで作動しながら、ビーム品質の優れた強くそして短いパルスの生成を保障していることは理解できよう。
【0019】
最適動作のためには、いくつかの条件を守らなければならない。具体的には、MPFファイバーからファイバーの傾斜端側のレンズを通ったビームの広がりは音響光学変調器がつくる偏向角度Θよりも小さくなるようにレンズを選択し、位置決めをしなければならない。同様に、変調器に面しているファイバーの端、すなわち傾斜端をつくってファイバーの両端の間でのレーザー発振を防ぐようにするのが好ましい。そうするためには、MPFファイバーのコアの開口数よりもはるかに大きい角度でファイバーの垂直線に対してファイバーの端を傾斜させる。代替的に、又はそれに加えて、変調器側のファイバーの端に挿入体を組合せ、その挿入体の外面(出力)はファイバーの軸に垂直ではないようにするか、もしくは反射防止処理をする。同様に、短いパルス、10nsよりも短い幅のパルスを発生させるにはファイバーの長さを1mよりも短くしなければならない。
【0020】
さらに一般的には、光学系の反射、もしくは伝播を急速変調する他のどんな方法でも変調器は利用してもよい。例えば、精密機械光学システムがパルスのトリガリングに必要な光学的な角度のスイッチング効果を得ることができる。その場合リターン・ミラー8を精密機械光学システムに取り付け、そして光ビームのそれ自体に向かう戻り位置から別の位置へトグル切り替えができるようにする。
【0021】
変調器の切り替え時間は、レーザーキャビティ内へ一度行って戻る時間よりも速くなければならないということはなくても、急速(典型的には数百nsよりも小さい)でなければならない。パルス幅は増幅媒体の利得により決定され、スイッチの切り替え速度により決定されるのではないからである。
【0022】
同様に、理解すべき重要なこととして、レーザー媒体は本発明では毎通過当り非常に高い利得(10より大きい)を有しているので、大抵の光変調器を作動するだけではレーザー効果を阻止するに足るだけのロスをキャビティ内に持ち込むことはできない。最早、レーザー放出は妨げられず、またパルスの形で生じることを強制されない。それ故本発明において重要なことはレーザー媒体にエネルギーを蓄積する間は変調器を不作動状態とし、不作動状態の変調器を通過するビームは変調されることなく、増幅媒体の方に戻れないようにする。この動作態様は本発明以前に説明されていたレーザーシステムのアセンブリで使用されていた装置のキャビティトリガリング動作とは反対である。従来のレーザーシステムは作動した変調器がもたらす変調を利用して蓄積状態でレーザーキャビティをロックし、そして全サイクルに対して短時間中変調器を不作動状態にしてパルス放出をトリガーしている(利得の小さいレーザーの場合ロスを最小とする構成)。
【0023】
別の有利な実施例において(すなわち、MPFファイバーの両端によりポンピングするための前述の説明への補遺)ポンプ信号は変調器との関連で直接MPFファイバーの端に加えられる。そのような場合、変調器をポンプ波が通過するか、又はレンズ14と変調器7との間、もしくはファイバー6の端(傾斜した、反射防止処理をしたもしくは挿入体を含んでいる端)と変調器7との間にダイクロイック・ミラーを配置して変調器をポンプ波から離すようにするだけでMPFファイバー内に長さ方向にポンプ波を注入することができる。
【0024】
光学キャビティの主要素を、具体的にはコリメーション光学装置14、変調器7そして鏡8、6’をシリカもしくはガラスと言ったアセンブリを作れる材料に纏めて造り込むことにより一体構造としたデバイスにできる。図2はそのような一体構造のアセンブリを例示している。変調器が音響光学変調器であるとき変調器の外面は切断されてファイバーの軸に対して角度Θを成すようにし、そしてその面を処理してそれがレーザー波長を反射してミラー8と同じように動作させる。
【0025】
さらに、本発明の装置には一つもしくは幾つかの非線形クリスタル16が続くようにして(基本周波数の2倍、3倍、4倍、5倍の)基本波のハーモニックスもしくは高調波を輻射させるようにすると非常に有利である。短いパルスときっちりとした回折により限定されたビームとの組合せにより周波数変換の処理能力を最大とすることができ、それ故、非常に平均パワーの高い可視もしくはUV輻射を発生でき、そのような輻射は通常の手段では得ることは困難である。高調波を分離して出せる、ダイクロイック・ミラーを介して続く一つもしくは幾つかの非線形クリスタルの配置例を図3に示す。高調波の発生も非線形クリスタルと組み合わせた図2に示す一体構造の装置で可能である。
【0026】
ここに提示した本発明の構成の範囲でトリガー式レーザー装置の要素を別の構成とすることもできることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のMPFファイバーを持つトリガー式レーザー装置の略図である。
【図2】本発明のトリガー式レーザー装置の実施例を示す。
【図3】本発明の装置の利用例を示す。
【符号の説明】
【0028】
6 MPFファイバー
7 変調器
8 反射ミラー
12 ダイクロイック・ミラー
13 パワーレーザーダイオード
14 レンズ
15 電子モジュール
16 クリスタル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
典型的には30nsよりも短い短い幅のレーザーパルスを周期的に発生する装置であって、2mよりも短い光学長を持つレーザー共振器を含み、この共振器は2つの反射端を含み、そしてMPFフォトニック・ファイバーを組み込んでおり、そのMPFファイバーに照準を合わせる光学手段によって焦点を結ばされたパワー半導体レーザーダイオードからの少なくとも一つのポンピング波によってMPFファイバーは連続的にポンプされ、MPFファイバーが含んでいる媒体中で内部レーザービームは案内され、そして非常に弱い信号でのMPFファイバーの利得はその利得媒体を通る毎回ごとに10よりも大きく、前記のレーザー共振器は光変調器を組み込んでおり、この光変調器は内部レーザービームの軸を偏向させ、そして光変調器は電気的な制御により2つの安定方向に沿って作動され、第1の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームがレーザー作用のトリガーを阻止するに足るロスを蒙り、その場合レーザーパルス発生装置はオープン・キャビティ・モードであって、第2の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームの少なくとも一部分は共振器の第1の端を閉じている光学的戻し手段によりそれ自身の方へ反射され、その場合レーザーパルス発生装置はクローズド・キャビティ・モードであり、レーザー共振器の第2の端は増幅媒体の他側にあって、少なくとも部分的に反射する手段により閉じられている、レーザーパルス発生装置において、
少なくとも33KWのピーク・パワーを発生し、そして変調器の切替時間は光がキャビティを走るのにかかる時間よりも大きく、そしてオープン・キャビティ・モードに対応する状態で生じるロス・ファクターが共振器の非常に弱い信号での利得よりも大きく、 そして増幅媒体が分極状態を維持するようにしてレーザーパルス発生装置を使用することを特徴としたレーザーパルス発生装置。
【請求項2】
変調器は作動状態で共振器の閉鎖を直接確保する請求項1に記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項3】
光変調器は音響光学型変調器である請求項1に記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項4】
共振器を閉じるのに使う光学的戻し手段は、それの法線と不作動状態の変調器の出力におけるレーザービームとの成す角度が音響光学型変調器のオーダー1もしくは−1とオーダー0との間の角度に等しい請求項3に記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項5】
音響光学型変調器がレーザーのロックモード中電気制御エネルギーを引き込まない請求項3もしくは4に記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項6】
レーザーパルス発生装置が一体構造であり、光学的キャビティの複数の部材がシリカ及び/又はガラスから造られて、そして相互に取り付けられている請求項1ないし5のいずれかに記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項7】
光変調器は機械的であり、そしてそれは光学的手段を機械的に動かすことにより作動する請求項1もしくは2に記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項8】
回折の1.5倍よりもビーム品質のよい、50kHz以上のレートで、30nsよりも幅の短いレーザーパルスを発生できる手段を備えている請求項1ないし7のいずれかに記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項9】
MPFファイバーの一方の端はファイバーの長さ方向軸に対する垂直に対して傾斜している請求項1ないし8のいずれかに記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項10】
MPFファイバーの両端でポンピングする請求項1ないし9のいずれかに記載のレーザーパルス発生装置。
【請求項11】
典型的には30nsよりも短い短い幅のレーザーパルスを周期的に発生する装置であって、2mよりも短い光学長を持つレーザー共振器を含み、この共振器は2つの反射端を含み、そしてMPFフォトニック・ファイバーを組み込んでおり、そのMPFファイバーに照準を合わせる光学手段によって焦点を結ぶパワー半導体レーザーダイオードからの少なくとも一つのポンピング波によってMPFファイバーは連続的にポンプされ、MPFファイバーが含んでいる媒体中で内部レーザービームは案内され、そして非常に弱い信号でMPFファイバーの利得はその利得媒体を通る毎回ごとに10よりも大きく、前記のレーザー共振器は光変調器を組み込んでおり、この光変調器は内部レーザービームの軸を偏向させ、そして光変調器は電気的な制御により2つの安定方向に沿って作動され、第1の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームがレーザー作用のトリガーを阻止するに足るロスを蒙り、その場合レーザーパルス発生装置はオープン・キャビティ・モードであり、第2の方向と一致する軸に沿って内部レーザービームの少なくとも一部分は共振器の第1の端を閉じている光学的戻し手段によりそれ自身の方へ反射され、その場合レーザーパルス発生装置はクローズド・キャビティ・モードであって、レーザー共振器の第2の端は増幅媒体の他側にあって、少なくとも部分的に反射する手段により閉じられているようにした、レーザーパルス発生装置において、
変調器の切替時間は光がキャビティを走るのにかかる時間よりも大きく、そしてオープン・キャビティ・モードに対応する状態で生じるロス・ファクターが非常に弱い信号での共振器の利得よりも大きく、そして増幅媒体が分極状態を維持するようにしてレーザーパルス発生装置を使用し、そして非線形クリスタルで高調波輻射を発生する手段を含むことを特徴としたレーザーパルス発生装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−539574(P2008−539574A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508272(P2008−508272)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050399
【国際公開番号】WO2006/114557
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507356671)
【Fターム(参考)】