説明

フォトマスクブランクス、及びフォトマスク

【課題】高感度であり、保存安定性及びセーフライト適性に優れたフォトマスクブランクス、並びに、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れたフォトマスクの提供。
【解決手段】基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含有する感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。一般式(I)中、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CR1112−、又は−NR13−を表す。但し、X及びXの少なくとも一方は、酸素原子、硫黄原子、又は−NR13−である。Yは、酸素原子、硫黄原子又は=NR14を表す。R〜R14は、それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R〜R14は、それぞれ互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成していてもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスクブランクス及びフォトマスクに関する。より詳細には、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いうるフォトマスクを作製しうるフォトマスクブランクス、それにより得られたフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられるフォトマスクとしては、金属クロム層(Cr層)を設けたCrマスク、ハロゲン化銀乳剤層を設けたEmマスク(エマルションマスク)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
Crマスクは、石英やガラス等の透明基材上にクロム層をスパッタリング法により形成後、この上にエッチングレジストを塗布などにより設け、HeCdレーザー(442nm)などによる露光、アルカリ水溶液などでの現像によるエッチングレジストのパターニング、クロムのエッチング、及びエッチングレジストの剥離を行って作製される。Crマスクは、ピンホール等の欠陥修正可能で、高解像度、高耐久性(耐傷性)、高洗浄性にも優れるというメリットを有する。その一方、Crマスクは、作製工程が煩雑なため高価であり、また、製造プロセスにおいてクロムエッチングが行われることに起因する廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0004】
Emマスクは、ハロゲン化銀乳剤層(感光性組成物層)を石英やガラス等の透明基材上に設け、YAGレーザーなどにより露光、現像、定着処理で作製されるものである。Emマスクの作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、光に対する感度が高いため、露光エネルギーが小さくてもよく(〜0.1mJ/cm)、また、環境にも優しく、安価なフォトマスクブランクスである。この反面、Emマスクは、感光性材料としてハロゲン化銀を用いるため、解像度が余り高くなく(3μm程度)、極微細なパターンを作製するには不向きであり、また感光性組成物層がゼラチン膜であるため耐久性に乏しい。また、Emマスクは、欠陥修正が実質的に困難であるという欠点を有している。
【0005】
また、他のタイプのフォトマスクとして、黒色顔料等の黒色材料及び光ラジカル系の重合性成分を含有し、かつ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性組成物層を有するフォトマスクブランクスを用いて作製されるものが知られている(特許文献1、2参照。)。該フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、フォトマスク作製時に照射される近紫外ないし可視領域における吸光度が小さいため高感度であり、一方、フォトマスク使用時に照射される紫外領域の光の吸収特性が良好なため、感光性組成物層を露光・現像することにより、解像度に優れたフォトマスクを得ることができる。また、このフォトマスクは、金属膜を必要とせず、レリーフ画像であるため欠陥修正を簡便に行うことができ、感度や解像度等のバランスがよく、安価で環境への負荷も小さいという特徴も有する。
【0006】
フォトマスクの作製に、黒色材料を含む光ラジカル系の重合性組成物を含む感光性層を有するフォトマスクブランクスを用いる場合、350nmから450nm等の如き短波光源を用いた半導体レーザーによる走査露光システムを用いたパターン形成も可能となる。しかしながら、このような感光性層を有するフォトマスクブランクスを露光して画像形成を行う際には、黒色材料が露光光を吸収してしまうため、感光性層の深部、即ち基板付近では硬化が充分ではないことから、現像時に感光性層の深い部分がえぐり取られて庇形状になってしまい、得られるフォトマスクの解像度、画像エッジ部の直線性が低下するという問題があることが判った。また、強い露光条件で露光すると、非硬化部であるべき部分が硬化してしまうという予期せぬ硬化反応が起こってしまうことがあり、得られるフォトマスクの解像度が低下するという問題があった。
【0007】
レーザーによる走査露光に供されるフォトマスクブランクスが有する課題としては、高感度と保存安定性を両立することにより、レーザー光照射部と未照射部において、形成される画像のオン−オフをいかに拡大するかという点が挙げられる。
【0008】
また、ラジカル重合系の感光性層を有するフォトマスクブランクスの場合、酸素による重合阻害に起因する低感度化を抑制するために酸素遮断層を感光性層上に設けるが、この酸素遮断層の機能により、高感度化に起因するカブリの発生なども問題となっていた。
なお、酸素遮断性層に関しては、例えば、光重合型ネガ型平版印刷版原版の分野で酸素遮断層の酸素透過性を制御してセーフライト適性などの取り扱い性等を向上させることが提案され記載されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
また、光重合性の感光性組成物においては、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が、特に紫外領域において好適な光重合開始剤として古くから知られている。例えば、特許文献4には、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物と、ケトクマリン系化合物を用いる開始系が記載されているが、この開始系は、波長480nm程度に吸収を持つため、波長350nm〜450nmのバイオレットレーザーに対して感度が悪く、また黄灯下でのセーフライト性に劣るものである。
【0010】
このように、高感度と保存安定性を達成するとともに、解像度と画像エッジ部の直線性をに優れたフォトマスクが得られるフォトマスクブランクスは未だ提供されておらず、従来にはない新たな技術が求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2005−283914号公報
【特許文献2】特開2001−343734号公報
【特許文献3】特開2004−117669号公報
【特許文献4】特公平5−88244号公報
【非特許文献1】教育文科会編、「フォトファブリケーション」、日本フォトファブリケーション協会発行、67〜80ページ、1992年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、遮光材料を大量に含有する場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ保存安定性及びセーフライト適性に優れたフォトマスクブランクス、並びに、該フォトマスクブランクスを用いて作製された、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れたフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素(以下、適宜「特定増感色素」と称する。)と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含有する感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(I)中、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CR1112−、又は−NR13−を表す。但し、X及びXの少なくとも一方は、酸素原子、硫黄原子、又は−NR13−である。Yは、酸素原子、硫黄原子、又は=NR14を表す。R〜R14は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R〜R14は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成していてもよい。
【0015】
<2> 前記基板が、厚み0.1mm以上20mm以下である透明なガラスである<1>に記載のフォトマスクブランクス。
【0016】
<3> 前記(B)重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び有機硼素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤である<1>又は<2>に記載のフォトマスクブランクス。
【0017】
<4> 前記(E)遮光材料の含有量が、前記感光性組成物層に含まれる全固形分に対し10質量%以上60質量%以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【0018】
<5> <1>〜<4>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
<6> 前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が0.1μm以上20μm以下である<5>に記載のフォトマスク。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、遮光材料を大量に含有する場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ保存安定性及びセーフライト適性に優れたフォトマスクブランクス、並びに、該フォトマスクブランクスを用いて作製された、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れたフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のフォトマスクブランクス、及び該フォトマスクブランクスを用いて作製されたフォトマスク(本発明のフォトマスク)について説明する。
【0021】
[フォトマスクブランクス]
本発明のフォトマスクブランクスは、基板上に(A)増感色素、(B)重合開始剤、(C)エチレン性不飽和化合物、(D)バインダーポリマー、及び(E)遮光材料を含有する感光性組成物層と、ポリオキシアルキレン基を側鎖に含むポリビニルアルコール誘導体を含有する酸素遮断性層と、をこの順に有することを特徴とする。
以下、本発明のフォトマスクブランクスにおける各構成要素について説明する。
【0022】
〔感光性組成物層〕
本発明のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、(A)特定増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含有する感光性組成物層である。
【0023】
感光性組成物層は、近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な層である。即ち、感光性組成物層は、近紫外光ないし可視光による像様の露光後、現像液を用いて現像処理することにより、画像形成が可能な層である。感光性組成物層は、特に、環境問題上アルカリ現像型であるが好ましく、本発明においては、上記(A)〜(E)の成分を含み、露光部分が硬化してアルカリ現像液に不溶化して遮光層を形成する、ネガ型の層を好適に用いている。
【0024】
<(A)一般式(I)で表される増感色素(特定増感色素)>
本発明のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、下記一般式(I)で表される増感色素(特定増感色素)を含有する。
【0025】
【化2】

【0026】
一般式(I)中、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CR1112−、又は−NR13−を表す。但し、X及びXの少なくとも一方は、酸素原子、硫黄原子、又は−NR13−である。Yは、酸素原子、硫黄原子、又は=NR14を表す。R〜R14は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R〜R14は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成していてもよい。
【0027】
特定増感色素の特徴の一つは、350nm〜450nmの波長領域に、特に優れた吸収特性を有することにある。さらに、特定増感色素は、感光性組成物層中に含有される後述する(B)重合開始剤の分解を重合開始剤の分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。
【0028】
一般に、増感色素/重合開始剤からなる光開始系の増感機構は、(a)増感色素の電子励起状態から重合開始剤への電子移動反応に基づく、重合開始剤の還元的分解、(b)重合開始剤から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、重合開始剤の酸化的分解、(c)増感色素の電子励起状態から重合開始剤へのエネルギー移動に基づく、重合開始剤の電子励起状態からの分解、といった経路が知られるが、特定増感色素は、は、これら何れのタイプの増感反応をも優れた効率で引き起こすことが可能であると推測される。
【0029】
また、本発明のフォトマスクブランクスが発揮する高感度及び優れた保存安定性は、特定増感色素を感光性組成物層の必須成分として含有することに依拠するものである。その作用機構は明らかではないが、以下のように推測される。
【0030】
まず、特定増感色素の高感度化への寄与については、特定増感色素は高強度の発光(ケイ光及び/又はリン光)スペクトルを示すことから、一つの可能性として、特定増感色素は励起状態の寿命が比較的長いため、重合開始剤との反応の効率化に作用していることが推測される。その他、特定増感色素の分子構造が、増感反応初期過程(電子移動等)の効率化や、さらに、重合開始剤が分解に至った後に引き続き進行する反応の効率化に寄与している可能性も推測される。次に、特定増感色素が保存安定性の向上への寄与については、特定増感色素の構造上の極性効果が、感光層組成物中における結晶析出の抑制に関係しているためと推測される。特に、特定増感色素がより極性の小さい構造を取る時には、結晶化が効果的に抑制され、保存安定性がより高まるものと推測される。
【0031】
一般式(I)で表される増感色素は、下記一般式(II)で表される表される増感色素であることが好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
一般式(II)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、−CR1112−、又は−NR13−を表す。R11、R12、R13、R17〜R26は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R11、R12、R13、R17〜R26は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成していてもよい。
【0034】
一般式(II)で表される増感色素において、Xが−CR1112−(例えば、ジアルキルカーボン)であるとき、増感色素は結晶性が抑えられ、感光性組成物層の保存安定性が優れるため特に好ましい。そのような特定増感色素としては、例えば、下記一般式(III)で表される増感色素が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
一般式(III)中、Alkは炭素原子数1から10の枝分かれしてもよいアルキル基を表す。R17〜R26は、それぞれ前記一般式(II)で定義したR17〜R26と同じである。
【0037】
一般式(I)〜(III)について更に詳細に説明する。
一般式中、R及びRは、それぞれ、好ましくは、水素原子、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表す。
【0038】
〜R10、R19〜R26は、好ましくは、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。
【0039】
又はXが、−CR1112−を表す場合、R11及びR12としては、それぞれ独立に、アルキル基、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基が好ましい。
又はXが、−NR13を表す場合、R13としては、アルキル基、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基が好ましい。
【0040】
次に、R〜R14、R19〜R26で表される各置換基の好ましい例について具体的に述べる。
【0041】
好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、及び環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0042】
置換アルキル基の置換基としては、1価の非金属原子団の基が挙げられ、その好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0043】
アルコキシ基の好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基が上げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましく、より好ましくは塩素原子が挙げあれる。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基が好ましく、より好ましくはメトキシカルボニル基があげられる。
置換アルコキシ基及び置換アルコキシカルボニル基における置換基は、置換アルキル基の置換基として前記したものと同様である。
【0044】
〜R10、R19〜R26として好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらのなかで、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0045】
〜R10、R19〜R26として好ましい置換アリール基の置換基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、1価の非金属原子団の基を有するものが挙げられる。その好ましい置換基の例としては、前述のアルキル基、置換アルキル基、並びに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
【0046】
ヘテロアリール基としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、又は多環芳香族環から誘導される基が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジンや等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環してもよい。
置換ヘテロアリール基の置換基は、上記置換アリール基の置換基に関して記載したものと同様である。
【0047】
17、R18としては、置換若しくは非置換のアルキル基が好ましく、その好ましい例は前記Rで記載したものと同様である。
【0048】
一般式(I)における各置換基の組み合わせとしては、R及びRが、水素原子又はそれぞれが互いに結合して4員環又は5員環の脂肪族性の環を形成しており、R〜R10が、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基であり、X及びXが、それぞれ独立に、−CR1112−、−NR13−、又は硫黄原子であり、Yが、酸素原子、硫黄原子、又は=NR14であり、R11〜R14が、置換もしくは非置換のアルキル基となる組み合わせであることが好ましい。
【0049】
一般式(II)における各置換基の組み合わせとしては、R17〜R26は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基であり、Xは、酸素原子、硫黄原子、−CR1112−、又は−NR13−となる組み合わせであることが好ましい
【0050】
一般式(III)における各置換基の組み合わせとしては、R17〜R26は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基となる組み合わせであることが好ましい。
【0051】
以下に、特定増感色素の好ましい具体例(化合物(1)〜化合物(21))を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
特定増感色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特定増感色素の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05質量部〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.1質量部〜20質量部、さらに好ましくは0.2質量部〜10質量部の範囲である。
【0055】
特定増感色素は公知の方法で合成できる。以下に、化合物(1)として前掲した特定増感色素の合成例を具体的に述べる。なお、化合物(1)以外の特定増感色素についても、化合物(1)の合成例に準じて合成することができる。
【0056】
(化合物(1)の合成例)
2−メチレン−1,3,3−トリメチルインドレニン17.3gをトルエン40mlと室温で混合し、ピリジン8.3mlを加えた後、室温で20分間撹拌した。次に、トリホスゲン5gをトルエン20mlに溶解し、氷冷下ゆっくり滴下した。滴下後、室温まで昇温し、1時間撹拌した。室温で1時間撹拌した反応液に対し、発泡しなくなるまで炭酸水素ナトリウム飽和溶液を滴下しトリホスゲンをクエンチした。次いで、水200mlを加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルートルエンの有機相を塩化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。洗浄後、この有機相を濃縮すると濃紫固形物が得られた。得られた固形物をメタノールでリスラリーした後、更にアセトンで再結晶し、目的の化合物(1)、2gを得た。
【0057】
特定増感色素に関しては、さらに、感光性組成物層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、特定増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの増感色素の析出を抑制することが可能となる。
【0058】
また、特定増感色素と、後述する重合開始剤におけるラジカル発生能を有する部分構造(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール、オニウム等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高めることができる。
【0059】
さらに、本発明における感光組成物層の水系の現像液への処理適性を高める目的に対しては、親水性基(カルボキシル基若しくはそのエステル、スルホン酸基若しくはそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基若しくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は、感光性組成物層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。
【0060】
その他、特定増感色素には、例えば、感光性組成物層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基、エポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、ガラス等の無機物への密着性を向上させることができる。そのほか、目的に応じ、特定増感色素をポリマー化するなど方法も利用できる。
【0061】
特定増感色素について、どのような構造とするのか、単独で使用するのか2種以上併用するのか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、フォトマクスブランクスの最終的な性能設計に併せて適宜設定できる。例えば、特定増感色素を2種以上併用することで、感光性組成物層への相溶性を高めることができる。
【0062】
また、特定増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな特定増感色素を使用することにより、その添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光性組成物層の膜物性の点からも有利である。
【0063】
なお、特定増感色素に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の汎用の増感色素を併用することもできる。
【0064】
感光性組成物層の感光性、得られるフォトマスクの解像度や、露光膜の物性は、光源波長での吸光度に大きな影響を受ける。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば、5μm以上の厚い膜を硬化させる目的に対しては、このような低い吸光度の方がかえって硬化度を上げられる場合もある。従って、これらを考慮して特定増感色素の添加量を適宜選択することが望ましい。
【0065】
例えば、感光性組成物層を比較的薄い膜厚とする場合には、特定増感色素の添加量は、感光性組成物層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。吸光度は、特定増感色素の添加量と感光性組成物層の厚みとにより決定されるため、所定の吸光度は両者の条件を制御することにより得られる。感光性組成物層の吸光度は、常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量がフォトマスクブランクスとして必要な範囲において適宜決定された厚みの感光性組成物層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に感光性組成物層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0066】
<(B)重合開始剤>
本発明における感光性組成物層は、重合開始剤を含有する。
本発明における重合開始剤としては、特許文献、その他の文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。本発明においては、単独で用いる光重合開始剤、2種以上の光重合開始剤を併用した系を総括して単に光重合開始剤という。
【0067】
本発明における重合開始剤には特に制限はなく、露光波長に応じて適宜選択され、例えば400nm付近の光を光源として用いる場合には、光重合開始剤として、ベンジル、ベンゾイルエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物等の公知の光重合開始剤から広く選択して使用される。
【0068】
なかでも、重合開始剤としては、特定増感色素との共存下で光照射されたときに、増感色素の光励起エネルギーを受け取って活性ラジカルを発生し、エチレン性不飽和化合物を重合に到らしめるラジカル発生剤である、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、ジアリールヨードニウム塩、有機硼素酸塩、及び有機過酸化物等が好ましく挙げられ、さらに、露光感度、基板に対する感光性組成物層の密着性、及び保存安定性等の面から、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、及び有機硼素酸塩が好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましい。
【0069】
これらの重合開始剤については、特開2004−317652号、特開2005−47947号、特開2005−91618号公報、特開2005−134893号、特開2005−250158号、特開2005−300650号、特開2006−267289号、特開2007−47742号、特開2007−99836号、特開2007−206216号、特開2007−248863号、特開2007−249036号、特開2008−242093号、特開2008−276167号、特開2007−99836号の各公報に記載の重合開始剤が使用できる。
【0070】
本発明における好ましい光重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物について説明する。
【0071】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許第24629号、欧州特許第107792号、米国特許第4410621号、欧州特許第215453号及びドイツ特許公開3211312号等の各明細書に記載の種々の化合物を使用することが可能である。好ましいものとしては、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)−ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、及び2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール等を挙げることができる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は2種以上併用してもよい。
【0072】
光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いる場合、該ヘキサアリールビスイミダゾール化合物の使用量は、後述するエチレン性不飽和化合物の総量100質量部に対し、0.05質量部〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.2質量部〜30質量部である。
なお、ヘキサアリールビイミダゾール化合物と共に、他の光重合開始剤を併用してもよい。
【0073】
光重合開始剤は、必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物と併用することにより、更に光開始能力が高められることが知られている。特に、上述のヘキサアリールビイミダゾール化合物は、これらの水素供与性化合物(連鎖移動剤)と併用することで、高い感度を得ることができる。
光開始能力が高く本発明に好適な水素供与性化合物としては、上記に列記した化合物の中でも、メルカプト基含有化合物が挙げられる。
【0074】
感光性組成物層中における(B)重合開始剤の含有量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5質量部〜15質量部、更に好ましくは1質量部〜10質量部の範囲である。
【0075】
<(C)エチレン性不飽和化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物)>
本発明における感光性組成物層は、(C)エチレン性不飽和化合物を含有する。
エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に少なくとも一つ有する化合物であり、感光性組成物層が活性光線の照射を受けた時、(B)重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化に寄与する。
【0076】
エチレン性不飽和化合物は、例えば、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0077】
エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸とアルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸とアミン化合物とのアミド類が用いられ、具体的には、特開2001−343734号公報の〔0012〕、特開2003−107697号公報の〔0020〕〜〔0025〕、特開2003−186176号公報の〔0029〕〜〔0038〕、特開2006−259558号公報の〔0126〕〜〔0140〕、特開2007−47742号公報の〔0173〕〜〔0187〕、特開2007−86165号公報の〔0140〕〜〔0149〕に記載の化合物が使用される。
【0078】
本発明において好ましく用いられるエチレン性不飽和化合物としては、イソシアネート基を複数有する化合物と水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートとの付加反応によって得られるウレタン結合を複数有する重合性化合物が好ましく用いられ、例えば、特公昭56−17654号公報に記載されている。
【0079】
なお、エチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物層の全質量に対し、5質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは30質量%〜70質量%の範囲である。
【0080】
<(D)バインダーポリマー>
本発明における感光性組成物層は、バインダーポリマーを含有する。
本発明に用いるバインダーポリマーは、特に限定されることはないが、アルカリ水溶液への溶解性・現像性の観点から、酸基を有する有機重合体が好ましく、カルボキシル基を有する有機重合体がさらに好ましい。
【0081】
バインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子骨格が好ましく、これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。具体的には、特開2001−343734号公報の段落〔0011〕、特開2003−107697号公報の段落〔0017〕〜〔0019〕、特開2003−186176号公報の段落〔0022〕〜〔0027〕、特開2006−259558号公報の段落〔0143〕〜〔0147〕、特開2007−86165号公報の段落〔0152〕〜〔0154〕等に記載のバインダーポリマーが好ましく用いられる。
バインダーポリマーとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0082】
上記の中でも、感光性組成物層が含有するバインダーポリマーとしては、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂、及び、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0083】
本発明において特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物、及び、必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることができる。
これらポリウレタン樹脂を合成する際の原料である、ジイソシアネート化合物や、ジオール化合物については、特開2007−57597号公報の〔0050〕〜〔0132〕に挙げられ、好ましく用いられる。
【0084】
更に、本発明におけるバインダーポリマーとして好適な、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン合成時に側鎖に架橋性基を導入して得られる上記のポリウレタン樹脂の他に、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシル基を有するポリウレタンに高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂を用いることもできる。
本発明では、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開2001−109139号、特開2001−117217号、特開2001−312062号、特開2003−131397号の各公報に記載のポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0085】
本発明に用いることができるバインダーポリマーとして好適な別の例としては、(a)カルボン酸(その塩を含む)を含有する繰り返し単位(以下、適宜、繰り返し単位(a)と称する。)を有する重合体、(b)ラジカル架橋性を付与する繰り返し単位(以下、適宜、繰り返し単位(b)と称する。)を有する重合体、及び繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)とを有する共重合体が挙げられる。
【0086】
(a)カルボン酸を含有する繰り返し単位(繰り返し単位(a))としては特に限定されないが、アクリル酸に由来する繰り返し単位、メタクリル酸に由来する繰り返し単位、及び下記一般式(i)で表される繰り返し単位が好ましく用いられる。
【0087】
【化7】

【0088】
一般式(i)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子よりなる群から選択される2以上の原子を含んで構成され、その原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
【0089】
一般式(i)においてRで表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その総原子数は、2〜82であることが好ましく、2〜50であることがより好ましく、2〜30であることがさらに好ましい。Rで表される連結基は置換基を有していてもよい。ここで示す総原子数とは、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、Rで表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることがさらに好ましく、5〜10であることが最も好ましい。
なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0090】
一般式(i)においてRで表される連結基として、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、あるいはこれらの基を構成する任意の炭素原子上の水素原子を除き(n+1)価の基としたものなどが挙げられ、これらの基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有するものが好ましい。特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を
挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基が挙げられる。
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
【0091】
共重合体における繰り返し単位(a)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜50、好ましくは5〜25、より好ましくは5〜15である。
【0092】
(b)ラジカル架橋性を付与する繰り返し単位(繰り返し単位(b))はとしては特に限定されないが、ラジカル架橋性基としてエチレン性不飽和基を有するものが好ましく用いられる。
【0093】
ラジカル架橋性基は、具体的には、置換基を有してもよいアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基など)、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アルキニル基(エチニル基、プロパギル基など)、プロピオロイル基などが挙げられる。
【0094】
共重合体における繰り返し単位(b)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜90、好ましくは20〜85、より好ましくは40〜80である。
【0095】
また、本発明におけるバインダーポリマーは、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、適宜、繰り返し単位(1)と称する。)を含んでいてもよい。
【0096】
【化8】

【0097】
一般式(1)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、Yは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、炭素数5から12の脂環式アルキル基、炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、Rは、炭素数1から18のアルキル基、炭素数5から20の脂環構造を有するアルキル基又は炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。
【0098】
繰り返し単位(1)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0099】
一般式(1)の他にも、繰り返し単位として、側鎖に、エステル基、アミド基を有するアクリル樹脂、メタクリル樹脂、又はウレタン樹脂が好ましく用いられている。
【0100】
これらの繰り返し単位の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0101】
感光性組成物層の現像性を維持する観点からは、バインダーポリマー分子量としては、重量平均分子量で、5000〜300000の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は20000〜150000である。
【0102】
バインダーポリマーは、感光性組成物層中に任意の量で含有させることができるが、画像強度等の観点からは、感光性組成物層の全固形分中、好ましくは10質量%〜90質量%、より好ましくは30質量%〜80質量%である。
【0103】
<(E)遮光材料>
本発明における感光性組成物層は、遮光材料を含有する。
本発明における遮光材料とは、フォトマスクが適用される活性光線の波長の光を反射、吸収することにより透過させない機能を有する材料であり、具体的には、マスクとして使用する際の露光光源(水銀灯、メタルハライド灯キセノン灯等)が発する波長域200nm〜450nm、好ましくは250nm〜400nm程度、の光を実質遮光できるものであり、塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上であることを要し、好ましくは、3.0以上であるものを指す。
【0104】
本発明における遮光材料は、フォトマスクブランクスにより作製されたフォトマスクの使用目的等に応じて適宜選択すればよい。遮光材料として具体的には、特開2001−343734号公報の段落〔0015〕〜〔0016〕、特開2003−107697号公報の段落〔0027〕、〔0035〕〜〔0016〕、特開2003−186176号公報の段落〔0041〕〜〔0043〕、特開2004−302012号の段落〔0038〕〜〔0040〕に記載の金属粒子(金属化合物粒子、複合粒子、コア・シェル粒子などを含む)、顔料その他の粒子、フラーレンなどが好適に用いられる。
本発明に用いうる遮光材料としては、黒色材料であることが好ましく、該黒色材料としては、黒色顔料及び金属微粒子の少なくとも1種であることが好ましい。
以下、本発明に適用しうる遮光材料について詳細に説明する。
【0105】
本発明における遮光材料として特に好ましくは、カーボンブラックである。
遮光材料としてカーボンブラックを用いる場合、感光性組成物層は、カーボンブラックのみを含有してもよいし、カーボンブラックと、他の色材(例えば、他の着色剤)を併用してもよい。カーボンブラックと他の色材を併用する場合には、感光性組成物層に含有される全着色剤中50質量%以上がカーボンブラックであると、感光性組成物層の色濃度を高濃度にする点で好ましい。
【0106】
顔料を遮光材料として用いる場合、100nm以下の平均粒径を有する顔料が好ましく、1nm以上60nm以下のものがより好ましい。
なお、顔料は、感光性組成物層の形成に用いる感光性組成物中において、各種分散剤により分散されていることが好ましい。
【0107】
感光性組成物層固形分中の遮光材料の含有量は、フォトマスクブランクスにより作製されるフォトマスクの濃度や、膜厚、フォトマスクを作製する際の感度、解像性等を考慮して決められ、その種類によっても異なるが、10質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは15質量%〜35質量%である。
【0108】
<(F)その他の成分>
感光性組成物層には、前記(A)〜(E)成分の必須成分に加えて、目的に応じて種々の化合物を併用することができ、例えば、特開平9−25360号公報に記載のUV吸収剤や特開2004−302012号公報の段落〔0047〕に記載の熱重合禁止剤を添加することができる。
さらに、感光性組成物層には必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0109】
<感光性組成物層の形成>
感光性組成物層は、前述した各必須成分及び任意成分を含有する塗布液(感光性組成物層形成用塗布液)を、適切な基板上にスピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、あるいはカーテンコーター等を用いて直接塗布により設けることが可能である。
【0110】
感光性組成物層の膜厚は、膜厚の均一性、解像度及び感度の観点から、0.3μm〜7μmの範囲が好ましい。特に好ましい膜厚は、0.5μm〜3μmである。
【0111】
〔酸素遮断性層〕
本発明のフォトマスクブランクスは、感光性組成物層上に、酸素の透過性を適切に制御するための酸素遮断性層を有することが好ましい。
以下、酸素遮断性層について説明する。
【0112】
酸素遮断性層は、25℃、1気圧下における酸素透過性が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下であることが好ましく、2.0ml/m・day・atm以上1500ml/m・day・atm以下がより好ましく、5.0ml/m・day・atm以上1000ml/m・day・atm以下がさらに好ましく、10ml/m・day・atm以上800ml/m・day・atm以下が最も好ましい。
【0113】
酸素遮断性層が有する酸素透過性が、上記範囲内であることで、フォトマスクブランクスの製造時及び生保存時に、不要な重合反応が生じることがなく、また、フォトマクスを作製する際の画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生ずるという問題もない。したがって、かかる特徴を有する本発明のフォトマスクブランクスにより、高い解像性と良好な画像エッジ部の直線性とを有するフォトマスクを得ることができる。
このような特性を有する酸素遮断性層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に保護層として詳細に記載されている。
【0114】
本明細書において、酸素遮断性層が有する酸素透過性は、以下の測定方法(モコン法)により測定した酸素透過率である。
−酸素透過性の測定方法−
酸素透過性の高いポリエチレンフィルム(富士フイルム(株)製「エバービュティーペーパー」の表面ゼラチン層を溶解除去することで作製したポリエチレンラミネート紙)に、感光性層上に形成する酸素遮断性層と同様の組成の塗膜を塗布乾燥し、測定用のサンプルを作製する。JIS−K7126B及びASTM−D3985に記載の気体透過度試験方法に則り、モコン社製OX−TRAN2/21を用い、25℃60%RHの環境下で酸素透過率(ml/m・day・atm)を測定する。
【0115】
酸素遮断性層が有する酸素透過性の制御は、例えば、酸素遮断性層が含有する各成分の種類及び含有量の調整(具体的には、例えば、ポリビニルアルコールのケン化度の調整、可塑剤を添加、等)、酸素遮断性層の膜厚の調整、好ましい酸素透過性を示す樹脂の採用等の各手段、或いは、これらの各手段を適宜組み合わせることにより実施することができる。
【0116】
<水溶性高分子化合物>
酸素遮断性層は、酸素遮断性及び現像性の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
【0117】
水溶性高分子としては、比較的結晶性に優れた化合物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタンなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0118】
酸素遮断性層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、酸変性ポリビニルアルコールなど、ポリビニルアルコール誘導体を用いてもよい。
また、同様に、ビニルアルコール単位以外の重合単位を有する共重合体であってもよく、そのような共重合体としては、例えば、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0119】
25℃、1気圧下において、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下の酸素透過性を有する酸素遮断層を形成するにために好適に用いられる水溶性高分子化合物としては、具体的には、例えば、特開2006−259558号公報の〔0179〕に記載のポリビニルアルコール、特開平3−203932号公報に記載のビニルアルコール/オキシアルキレンエーテル共重合体、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。
【0120】
酸素遮断性層における水溶性高分子化合物の含有量は、酸素遮断性層の全固形分中、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
【0121】
<界面活性剤>
酸素遮断性層には、界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。
【0122】
また、酸素遮断性層における界面活性剤の含有量としては、酸素遮断性層の全固形分中、0.1質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0123】
<酸素遮断性層の形成>
酸素遮断性層は、酸素遮断性層を形成するための塗布液を調製し、該塗布液を感光性組成物層上に塗布することにより形成することができる。酸素遮断性層の塗布方法に関しては、逐次に塗設する方法と、一気に重層塗布する方法とを適用できるが、いずれであっても構わない。
【0124】
酸素遮断性層の膜厚は、0.05μm〜1.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1.0μmである。
【0125】
なお、酸素遮断層の具体的な態様としては、上述した事項の他、特開2006−259558号公報の段落番号〔0177〕〜〔0182〕、特開2007−47742号公報の段落番号〔0346〕〜〔0348〕、特開2007−86165号公報の段落番号〔0253〕〜〔0257〕、特開2008−139813号の段落番号〔0211〕〜〔0259〕に記載の保護層に関する事項も好適に適用することができる。
【0126】
〔基板〕
感光性組成物層及び所望により酸素遮断性層を適切な基板上に形成することにより、本発明のフォトマスクブランクスが得られる。
【0127】
基板は目的に応じて適宜選択されるが、基板ごとフォトマスクを形成し、そのまま繰り返し使用するという観点からは、フォトマスクが用いられる露光光源の波長に対して吸収のないもの、例えば、可視光に用いる場合には、透明な基板を用いることが好ましい。ここで、透明な基板とは、350nm〜750nmの波長領域に極大吸収を有さない基板を意味する。
【0128】
<透明基板>
本発明のフォトマスクブランクスにおける透明基板としては、ガラス板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなど)、透明プラスティックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)のごとき透明基板を適用することができる。
透明基板の厚さは、フォトマスクブランクスによって適宜設定することができるが、0.1mm〜20mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1mm〜7mmの範囲であり、更に好ましくは1mm〜5mmの範囲である。
【0129】
<密着性下塗り層>
フォトマスクブランクスにおいては、透明基板上に密着性下塗り層を設けることが好ましい。密着性下塗り層が設けられるときは、感光性組成物層は密着性下塗り層の上に設けられる。密着性下塗り層は、フォトマスクを作製する際に、露光部においては透明基板と感光性組成物層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光性組成物層の透明基板からの剥離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
【0130】
密着性下塗り層は、透明基板との密着性を向上させるために、シリル基を有する化合物を含むことが好ましい。
また、密着性下塗り層としては、感光性組成物層との密着性を上げるために、重合性基を有していることが好ましい。重合性基としては、特にエチレン性不飽和結合を有する基が好ましく、前記「エチレン性不飽和化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物)」に記載の化合物に含まれる基が好ましく用いられる。エチレン性不飽和化合物が有するエチレン性不飽和結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリルエーテル基が好ましく用いられる。
【0131】
密着性下塗り層には、特に、シリル基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物が好ましく用いられる。
【0132】
密着性下塗り層に含まれる化合物としては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランを好適な化合物として挙げることができる。
【0133】
密着性下塗り層の塗設量は、乾燥質量として、2mg/m〜200mg/mが好ましく、5mg/m〜100mg/mがさらに好ましい。
【0134】
このようにして、基板上に、(A)〜(E)の各成分を含む感光性組成物層を形成し、好ましくは、その表面に酸素遮断性層や基板と感光性組成物層との間に密着性下塗り層を形成して、本発明のフォトマスクブランクスを得る。
【0135】
[フォトマスク及びフォトマスクの製造方法]
本発明のフォトマスクは、既述した本発明のフォトマスクブランクスを用い、フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成した遮光層を有することを特徴とする。
具体的には、既述のフォトマスクブランクスを、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後(露光工程)、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液を用いて現像することにより感光性組成物層の未露光部を除去する(現像工程)により、画像様の遮光層(露光部)を有するフォトマスクを得ることができる。
【0136】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて作製されるフォトマスク(本発明のフォトマスク)としては、該フォトマスクブランクスを、350nm以上450nm以下の光を放射するレーザー(より好ましくは、390nm以上450nm以下の光を放射するレーザー)を用いて画像様露光した後、現像することにより作製されたものが好適な態様である。
以下、本発明のフォトマスクを製造するための各工程について説明する。
【0137】
〔露光工程〕
露光工程は、フォトマスクブランクスを、線画像、網点画像、等を有する透明原画を通して画像様に露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行うことが好ましい。
本発明のフォトマスクブランクスの画像形成には、レーザーによる露光が好適に用いられる。
【0138】
露光光源としては、350nm以上450nm以下の範囲の光を放射するレーザーが好ましい。例えば、以下のものが挙げられる。
ガスレーザーとしては、Arイオンレーザー(364nm、351nm)、Krイオンレーザー(356nm、351nm)、He−Cdレーザー(441nm、325nm)などが挙げられ、固体レーザーとしては、Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm)などが挙げられ、半導体レーザー系では、KNbOリング共振器(430nm)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)などが挙げられ、その他のレーザーとして、Nレーザー(337nm)、XeF(351nm)などが挙げられる。
【0139】
これらの中でも、特に、AlGaInN半導体レーザー(InGaN系半導体レーザー400nm〜410nm)が、波長特性、コストの面で好適である。
【0140】
〔現像工程〕
現像液としては、特に制限はなく、公知の現像液などが例示できるが、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようなアルカリ剤は、これを含有するアルカリ性水溶液の濃度が0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜15質量%、最も好ましくは1質量%〜12重量%になるように添加される。
【0141】
また、現像液として用いられるアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号及び同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0142】
特に好ましい現像液としては、特開2002−202616号公報に記載の非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
【0143】
また、炭酸イオン及び炭酸水素イオンを含む現像液におけるpHとしては、8.5〜10.8の範囲であることが好ましく、pH9.0〜10.5であることがより好ましく、pH9.5〜10.3であることが特に好ましい。このpH範囲内であると、非画像部の現像性が低下せず、また、空気中の炭酸ガスの影響により処理能力が変動しないので好ましい。
【0144】
現像工程において、露光後のフォトマスクブランクスに、現像液を接触させる態様としては、手処理、浸漬処理、及び機械による処理などが挙げられる。
【0145】
手処理としては、例えば、スポンジや脱脂綿に充分現像液を含ませ、全体を擦りながら処理し、処理終了後は充分に水洗する態様が挙げられる。
【0146】
浸漬処理としては、例えば、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液の入ったバットや深タンクに浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら充分に水洗する方法が挙げられる。浸漬時間は、約60秒であることが好ましい。
【0147】
機械処理には、自動現像機を用いることができる。自動現像機を用いる場合としては、例えば、現像槽に仕込んだ現像液をポンプで汲み上げて、露光後のフォトマスクブランクスにスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって、露光後のフォトマスクブランクスを浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を、一枚毎の露光後のフォトマスクブランクスに必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。どの方式においても、高圧洗浄、ブラシやモルトンなどの機構があるものがより好ましい。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0148】
また、現像する際における現像液の温度としては、20℃〜35℃の範囲が好ましく、25℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0149】
〔その他の工程〕
また、フォトマスクブランクスに対しては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面に加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、感光性組成物層中の画像形成反応が促進され、感度の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うことも有効である。
【0150】
通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は150℃〜500℃の範囲加熱処理を行う。
【0151】
また、フォトマスクブランクスに対する画像形成後においては、画像上に熱硬化型のエポキシ樹脂等の保護膜を設けてもよい。画像上に保護膜を設けることにより、更に膜強度を向上させることもできる。
【0152】
以上のようにして、本発明のフォトマスクブランクスを用いてフォトマスク(本発明のフォトマスク)が得られる。
【0153】
本発明のフォトマスクにおける遮光層の膜厚は、0.8μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.8μm以下がより好ましい。
また、本発明のフォトマスクにおける遮光層は、365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上であることが好ましく、4.0以上がより好ましい。
本発明のフォトマスクにおける遮光層の最も好適な態様は、遮光層の膜厚及び365nmにおけるO.D.の双方が、上記の範囲を満たす態様である。
【0154】
また、本発明のフォトマスクブランクスは高解像度の画像形成が可能であるために、微細な線幅の画像をエッジ直線性が良好な状態で形成することができる。このようなフォトマスクブランクスを用いて形成されるフォトマスクの好適な態様の一つは、遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、好ましくは0.1μm以上30μm以下である態様である。形成されるL/Sは、より好ましくは0.1μm以上25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下のものであり、前記本発明のフォトマスクブランクスにより、このような微細な線幅のL/Sを有する遮光層の形成が可能となった。
【0155】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて得られたフォトマスクは、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において好適に用いることができる。
本発明で用いるフォトマスクを、紫外感光性のレジストのパターニング用に用いる際には、超高圧水銀灯などの紫外線露光機にバンドパスフィルターを組み入れて、露光波長を選択することも可能である。
【実施例】
【0156】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0157】
[実施例1〜5、比較例1〜2]
1.フォトマスクブランクスの作製
(密着性下塗り層の形成)
ガラス基板(10cm×10cm、厚み2.3mm)上に、下記組成の密着性下塗り層組成物を、乾燥後の塗布層の質量が0.005g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、下塗り層を形成した。
【0158】
<密着性下塗り層組成物>
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製) 3.60g
・メチルエチルケトン 32.40g
【0159】
(感光性組成物層の形成)
下塗り層を形成したガラス基板(10cm×10cm)上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−1を、乾燥塗布質量が1.4g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光性組成物層を形成した。
【0160】
<感光性組成物層用塗布液組成物P−1>
・カーボンラック分散液(下記に示す分散液) 16.0質量部
・エチレン性不飽和化合物(C−1)(下記構造の化合物) 4.2質量部
・バインダーポリマー(D−1)(下記構造の高分子バインダー) 3.6質量部
(MW:50000)
・特定増感色素又は比較増感色素(下記表1に記載の化合物) 0.21質量部
・重合開始剤(表1に記載の化合物) 0.81質量部
・連鎖移動剤(F−1)(下記構造の化合物) 0.3質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤 0.05質量部
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 58質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53質量部
【0161】
【表1】

【0162】
感光性組成物層用塗布液組成物P−1の調製に用いたカーボンブラック分散液の詳細は、以下の通りである。
【0163】
<カーボンラック分散液>
−カーボンラック分散液の組成−
・カーボンブラック 12g
(Degussa社製 Special Black350(DBP=45ml/100g、窒素吸着比表面積=65m/g))
・分散剤(Bykchemie社製 Disperbyk182) 6g
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 42g
ここで、DBPとは、カーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレート(DBP)量を表す。
−カーボンラック分散液の調製−
上記の組成を、モーターミルM−50(アイガー社製)で、粒子径0.5mmのジルコニアビーズ200gを加え、周速9m/sで6時間分散し、カーボンブラック分散液を得た。この分散液を1000倍に希釈し、レーザードップラー法により測定した粒子径分布は0.01μm〜0.5μmの範囲内であった。
【0164】
表1に特定増感色素として記載される化合物(1)、化合物(2)、化合物(11)、化合物(20)及び化合物(21)は、特定増感色素の具体例として前掲した化合物である。
【0165】
実施例及び比較例の感光性組成物層用塗布液組成物の調製に用いた、重合開始剤(B−1)、エチレン性不飽和結合含有化合物(C−1)、バインダーポリマー(D−1)、及び、連鎖移動剤(F−1)の構造を以下に示す。重合開始剤:CGI7460は、チバ・ガイギー社製の市販の開始剤(有機硼素酸塩系光重合開始剤)である。
【0166】
【化9】

【0167】
(酸素遮断性層の形成)
この感光性組成物層上に、下記組成の酸素遮断性層塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥して酸素遮断性層を形成した。酸素遮断性層の膜厚(μm)を、「SURFCOM130A、東京精密(株)製」にて直接膜厚測定したところ0.2μmであった。
また、前記の方法によりこの酸素遮断性層の酸素透過性を測定したところ、170ml/m・day・atmであった。
【0168】
<酸素遮断性層塗布液>
・水 87g
・PVA−405((株)クラレ製) 6g
・PVP−K30(BASF社製) 6g
・EMALEX710(日本エマルジョン(株)製、界面活性剤) 1g
【0169】
以上のようにして、透明基板上に感光性組成物層と酸素遮断性層とを備えた実施例1〜5のフォトマクスブランクス(1)〜(5)、及び比較例1〜2のフォトマスクブランクス(C1)〜(C2)を得た。
【0170】
2.フォトマスクブランクスの評価
(1)感度評価
以上のようにして得られた実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスクを得た。露光感度は、露光量を変化させながら、このフォトマスクのライン/スペース20μm/20μmを再現しうる露光量を最適露光量と定めて評価した。この数値が小さいほど高感度で画像形成しうると評価する。結果を下記表2に併記した。
なお、現像、加熱処理後の各フォトマスクの365nmの吸光度は、約4.0であった。また、各フォトマスクについて、東京精密(株)社製サーフコム480Aにより測定した遮光層の膜厚は、各々、1.5μmであった。
【0171】
<アルカリ現像液組成>
下記組成からなるpH11.95の水溶液
・水酸化カリウム 0.2g
・1Kケイ酸カリウム 2.4g
(SiO/KO=1.9)
・下記化合物 5.0g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 91.3g
【0172】
【化10】

【0173】
(2)解像度測定、画像エッジ部直線性評価
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスク(実施例及び比較例のフォトマスク)を得た。露光量は、露光量を振り、フォトマスクのライン/スペース10μm/10μmが再現する際の露光量を最適露光量と定め、その際併せて同条件で4,6,8、15、20、25,30μmのライン/スペースも描画し、再現できているうちで最も細い線を解像度とした。
さらに、10μmのラインのエッジ部を(株)キーエンス製のマイクロスコープ(商品名:VHX−100F)にて撮影し、エッジ部の直線性のバラツキを標準偏差σで表した。σ値が小さいほど直線性に優れていることを表す。結果は表2に併記した。
【0174】
(3)保存安定性評価(露光量変化率評価)
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクスを、高温条件下(60℃)で3日間保存した後に、前記(1)感度評価と同様にして、露光光量を振り、ライン/スペース10μm/10μmが再現する際の露光量を求めた。前記(1)感度評価の結果として示される初期の最適露光量(X)と、3日間保存後の露光量(X)との差(X−X)の値が小さく、下記式で示す露光量変化率(%)が10%以内であれば保存安定性が良好であると評価する。結果は表2に併記した。
露光量変化率(%)=(X−X)/X×100
【0175】
(4)黄色灯下でのセーフライト適性
フォトマスクブランクスを黄色灯照明(約470nm以下の波長の光を遮断した条件)下に、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間放置した後、前記(1)感度評価と同様にして、走査露光及び現像処理を行い、形成されたL/Sの画像を目視で評価し、前記(1)感度評価で形成された画像と比較して目視にて画像に変化が生じるまでの応答かでの放置時間を求め、以下の基準で評価した。結果は表2に併記した。
【0176】
−評価基準−
A:放置時間が20分以上で画像に変化が生じた
B:放置時間が10分以上20分未満で画像に変化が生じた
C:放置時間が1分以上10分未満で画像に変化が生じた
D:放置時間が1分未満で画像に変化が生じた
【0177】
【表2】

【0178】
表2から明らかなように、各実施例のフォトマスクブランクスは、高感度であり、且つ、保存安定性、セーフライト性にも優れており、これにより得られた各フォトマスクは、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、(A)下記一般式(I)で表される増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含有する感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。
【化1】


(一般式(I)中、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CR1112−、又は−NR13−を表す。但し、X及びXの少なくとも一方は、酸素原子、硫黄原子、又は−NR13−である。Yは、酸素原子、硫黄原子、又は=NR14を表す。R〜R14は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R〜R14は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記基板が、厚み0.1mm以上20mm以下である透明なガラスである請求項1又は請求項1に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項3】
前記(B)重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び有機硼素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤である請求項1又は請求項2に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項4】
前記(E)遮光材料の含有量が、前記感光性組成物層に含まれる全固形分に対し10質量%以上60質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
【請求項6】
前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が0.1μm以上20μm以下である請求項5に記載のフォトマスク。

【公開番号】特開2010−237277(P2010−237277A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82537(P2009−82537)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】