説明

フォトレジスト供給装置

【課題】レジスト瓶の交換にあたって無駄を省き、作業効率を向上するためのフォトレジスト供給装置を提供する。
【解決手段】半導体ウエハ8へのレジストの供給を行っていくうちに、レジスト瓶2a内のレジスト20aを消耗して、空になった場合、配管A13aに設置された状態センサー12が検出し、これを配管A13aに介装されたコック14へ通知する。コック14はこの通知を受けると閉塞して配管A13a内へ気泡が混入することを防止する。このため、レジスト瓶2aの交換作業において、バッファタンク4でレジストごと気泡を除去する作業を行う必要がない。また、この交換作業の間、レジスト充填容器2bには十分な量のレジストが充填充填されており、第二の加圧制御部3bによってポンプ6にレジスト20bを送り続けることができるために、この交換作業の間でも、レジストの供給が滞ることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハにレジストを供給するフォトレジスト供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術とは、光を利用して微細パターンを基板に転写する技術である。フォトレジストと呼ばれる感光性材料の薄層を形成しておいた基板に、ガラス板上に所望のパターンを描いたマスクを通して可視光あるいは紫外光を露光する。この露光によってフォトレジストの現像液に対する溶解度が変化するため、現像工程で、マスクに対応するパターンがフォトレジストに転写されることになる。この技術は半導体ウエハの製造には不可欠である。
【0003】
フォトレジスト供給装置は、従来、レジストを充填したレジスト瓶にレジストを吸引する配管を挿入して、装置内へレジストを供給する構成となっている。レジストは、レジスト内へ混入した気泡を除去するドレインや、異物を除去するフィルタ等を経由してポンプに接続されたノズルより半導体ウエハの表面へ吐出される。吐出されたレジストは、半導体ウエハが載置された台座ごと回転しているために遠心力によって半導体ウエハ表面に均一に拡散することにより塗布される。
【0004】
特許文献1に提案されている液体材料供給装置は、材料供給容器内の液体材料を間接加圧して送出し、バッファ容器に一旦溜め、このバッファ容器からポンプ装置によって材料供給ノズルに送出するようにしたため、バッファ容器内の液体材料量を管理することで、ポンプ装置へ連続的に送り続けることができ、材料供給容器内の液体材料を残さず使い切ることを可能としている。また、直接加圧手段として固形または液状の微粒子状物が予め除去されたエアを使用するとともに、ポンプ装置と材料供給ノズルとの間に三方弁を設けて、ポンプ装置で取り出した液体材料を短い管路でバッファ容器へ循環返送することで、従来装置で発生していた気泡の混入やダストの発生を抑えることができ、品質の高い加工が可能としている。
【特許文献1】特開2005−311001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の液体材料供給装置(フォトレジスト供給装置)は、バッファボトル内のレジストの残量がわずかである状況下において材料供給容器(レジスト瓶)の交換を行う場合、バッファボトル内のレジストへの加圧手段がなく、交換作業の間は液体材料供給装置(フォトレジスト供給装置)の運転を行うことができないため、作業効率が悪い。さらに、材料供給容器(レジスト瓶)内の液体材料(レジスト)の液量が無くなるまで配管に介装したセンサーが検知しないので、材料供給容器(レジスト瓶)の交換を行う際、この配管に気泡が混入してしまう。したがって、混入した気泡を除去するため、配管内に介装したドレインやバッファボトルなどの機構によって気泡を除去する作業が必要となる。
【0006】
また、材料供給容器(レジスト瓶)内を加圧するのみでは容器の底に残った液体材料(レジスト)をうまく容器外へ吸い出すことができないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、レジスト瓶の交換にあたって無駄を省き、作業効率を向上するためのフォトレジスト供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のフォトレジスト供給装置では、交換自在に装填されるレジスト瓶に充填されたレジストをポンプに接続されたノズルから吐出して半導体ウエハの表面に供給するにあたって、前記レジスト瓶内のレジストを加圧して、このレジスト瓶の排出口に接続された配管より送出する第一の加圧制御手段と、前記配管を介して前記レジスト瓶に接続され、前記第一の加圧手段によって前記配管から流入したレジストを充填するレジスト充填容器と、前記レジスト充填容器内のレジストを加圧して、前記ポンプへ送出する第二の加圧制御手段とを備えることで実現する。
【0009】
また、前記フォトレジスト供給装置に、前記レジスト瓶が空になったことを検知する状態センサーと、前記配管に介装され、前記状態センサーの検知に応じて閉塞するコックとを備えてもよい。
【0010】
また、前記フォトレジスト供給装置において、前記レジスト瓶が、前記排出口を下向きにして装填されるようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記フォトレジスト供給装置において、混入した気体を除去するためのバッファタンクを前記レジスト充填容器と前記ポンプとを接続する配管に介装してもよい。
【0012】
さらにまた、前記フォトレジスト供給装置において、混入した気体を光学的に検知するためのエアセンサーと、前記エアセンサーの検知に応じて開放することで前記気体を除去する弁とを前記レジスト充填容器と前記ポンプとを接続する配管に介装してもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記のレジスト瓶を交換する間においても、第二の加圧制御手段によりレジスト充填容器からポンプへレジストを送出し続けることができるため、装置の運転を継続可能となり、作業効率が向上する。したがって、半導体ウエハの生産性が向上する。
【0014】
上記の状態センサー及びコックを用いることで、上記のレジスト瓶を交換する時にレジストを送出する配管内に気泡が混入することがなくなるので、気泡を除去する作業が必要なくなり、さらに作業効率が向上する。したがって、半導体ウエハの生産性がさらに向上する。
【0015】
また、前記レジスト瓶を装置に装填する際に、その排出口を下向きにした態勢で装填可能とすることで、レジスト瓶内のレジストをほとんど残量がなくなるまで使用することが可能となり、無駄に廃棄されるレジストを削減できるのでコスト面で有利である。
【0016】
さらに、上記のエアセンサー及び弁を用いて混入した気泡を除去することにより、装置の品質を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に本発明のフォトレジスト供給装置の構成を示す。レジスト瓶2aは、ガロン瓶といわれるレジストを充填した瓶で、レジストの製造業者より納入されるものである。このレジスト瓶2aは、フォトレジスト供給装置1に装填してレジスト20aを供給し、レジスト20aが無くなると新たな容器に交換される。
【0018】
レジスト瓶2aは、排出口17を下方に向けて配管A13aと接続され、この配管A13aはレジスト充填容器2bの中に挿入されている。この配管A13aには、レジスト瓶2a内のレジスト20aを全て消耗し、空になったことを検知する状態センサー12と、この状態センサー12と図示しない配線によって接続され、上記の検知に応じて閉塞するコック14が介装されている。また、状態センサー12は、検知と同時に、これをフォトレジスト供給装置1の制御端末(図示せず)に通知するか、もしくは音や光で作業者に通知するようにして、レジスト瓶2aの交換作業を促す。なお、新たなレジスト瓶が装填されて交換作業が完了すると、レジスト20aが満たされたことを状態センサー12は検知し、コック14に通知して、コック14は再び開放される。
【0019】
レジスト瓶2a内には第一の加圧制御部3aから伸びた送気管A16aが挿入されている。第一の加圧制御部3aは、容器内部のレジスト20aを加圧して配管A13aよりレジスト充填容器2bへ送出する手段であり、送気管A16aから、例えば、高純度の窒素をレジスト瓶2aの容器内へ送り込むことで加圧する。
【0020】
また、第一の加圧制御部3aは、レジスト充填容器2b内に設置された液位センサー15と接続されている。この液位センサー15は、レジスト充填容器2b内のレジスト20bの液位を監視して、所定位置以上になったことを検知して第一の加圧制御部3aに通知する。この時、第一の加圧制御部3aは、これ以上レジスト20bの液位が上がってレジスト充填容器2b内が溢れないように、レジスト瓶2a内の加圧動作を停止する。液位センサー15は、液位が所定位置以下になったことを検知すると第一の加圧制御部3aに通知して、第一の加圧制御部3aは加圧を再開する。
【0021】
レジスト充填容器2bには、第二の加圧制御部3bから伸びた送気管B16bが挿入されている。第二の加圧制御部3bは、容器内部のレジスト20bを加圧して配管B13bよりバッファタンク4へ送出する手段であり、この送気管B3bから、例えば、高純度の窒素をレジスト充填容器2b内へ送り込むことで加圧する。また、レジスト充填容器2bは、レジスト瓶2aの交換作業が発生し、レジスト瓶2aからレジスト20aの充填が行われない状況下でも、交換中にフォトレジスト供給装置1がレジストの供給を継続するために十分な量のレジストを予め充填しておける容積を有している。
【0022】
バッファタンク4は、配管B13bを介してレジスト充填容器2bと接続されており、流入したレジストに混入している気泡をドレイン(図示せず)によって除去する処理を行う。
【0023】
エアセンサー18及び弁19は、配管C13cを介してバッファタンク4と接続されており、エアセンサー18は配管C13c内に混入した気泡を光学的に検知するもので、この検知と同時に、接続された弁19に通知して、弁19が気泡の混入したレジストを自動的に配管C13cより排出することを可能としている。
【0024】
フィルタ5は、配管D13dを介して弁19と接続されており、流入したレジストに混入している異物をろ過することで除去する処理を行う。
【0025】
ポンプ6は、配管E13eを介してフィルタ5と接続されており、流入したレジストをノズル7に向けて送出する処理を行う。このポンプ6は、例えばサックバックポンプを使用して、適量のレジストがノズル7より半導体ウエハ8の表面に吐出できるようにする。
【0026】
ノズル7は、ポンプ6と接続されており、流入したレジストを直下にあるウエハステージ9に載置された半導体ウエハ8に向けて吐出する。このウエハステージ9は、支柱10に支持された台であり、自動制御されたモーター(図示せず)により支柱10を中心に回転可能な構造となっている。
【0027】
次に、このフォトレジスト供給装置1の作用効果を説明する。レジスト瓶2aに充填されているレジスト20aは、第一の加圧制御部3aによって加圧され、配管A13aに送出される。ここで、レジスト瓶2aは排出口17を下に向けた態勢で装填されているため、充填されたレジスト20aのほとんどを配管A13aに送出させることができる。したがって、レジスト瓶2aの交換時に残留して無駄になるレジスト20aがほとんどない。なお、交換時に新たなレジスト瓶2aを装填する場合は、フォトレジスト供給装置1に備えられた回転式の装填台(図示せず)に排出口17を上にした態勢で新たなレジスト瓶2aを設置し、180度回転することで排出口17を下に向けて装置に装填するようにすることで作業者の利便性を向上できる。
【0028】
レジスト20aは、配管A13aを通ってレジスト充填容器2bに流出し、充填される。レジスト充填容器2b内のレジスト20bの液位は、第一の加圧制御部3aによって制御されるレジスト瓶2a内の圧力と、第二の加圧制御部3bによって制御されるレジスト充填容器2b内の圧力とによって変動するが、このレジスト20bの液位が所定位置を上回った場合は液位センサー15が検知して第一の加圧制御部3aへ通知し、これを受けた第一の加圧制御部3aがレジスト20aへの加圧を停止することでレジスト充填容器2bが溢れないようにする。レジスト20bの液位が所定位置を下回った場合は、第一の加圧制御部3aがレジスト20aへの加圧を再開する。
【0029】
レジスト充填容器2b内のレジスト20bは、第二の加圧制御部3bによって加圧されて、配管B13bを通ってバッファタンク4へ流入し、ここで混入した気泡を図示しないドレインによって除去される。さらに、レジストは配管C13cを通ってエアセンサー18及び弁19において、ここでも配管C13cに混入した気泡を除去する。そして、レジストは配管D13dを通ってフィルタ5を経由することで混入した異物が除去される。
【0030】
次に、レジストは配管E13eを通ってポンプ6へと送出され、ポンプ6からノズル7へと送出される。ノズル7は流入したレジストを直下にあるウエハステージ9に載置された半導体ウエハ8の表面へ吐出する。半導体ウエハ8は、ウエハステージ9が支柱10を中心に回転するために、その表面に吐出されたレジストは遠心力の作用により中心から均一に拡散して塗布される。
【0031】
半導体ウエハ8へレジストの供給を行っていくうちに、レジスト瓶2a内のレジスト20aを消耗して、空になった場合、配管A13aに設置された状態センサー12が検出し、これを配管A13aに介装されたコック14へ通知するとともに、作業者に交換作業を促す。コック14はこの通知を受けると閉塞して配管A13a内へ気泡が混入することを防止する。このため、レジスト瓶2aの交換作業において、バッファタンク4でレジストごと気泡を除去する作業を行う必要がない。また、この交換作業の間、レジスト充填容器2bには十分な量のレジスト20bが充填されており、第二の加圧制御部3bによってポンプ6にレジスト20bを送り続けることができるために、この交換作業の間でも、レジストの供給が滞ることはない。
【0032】
なお、本実施形態においてレジスト瓶2aは排出口17を下向きにフォトレジスト供給装置1に装填されるようにしたが、排出口17を上向きに装填する構成としてもよい。排出口17を上向きであっても第一の加圧制御部3aによってレジスト充填容器2bにレジスト20aを送ることができるからである。また、状態センサー12と液位センサー15は、センサーの種別に応じた使用態様があるため、本実施形態における使用形態に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のフォトレジスト供給装置の構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1 フォトレジスト供給装置
2a レジスト瓶
2b レジスト充填容器
3a 第一の加圧制御部
3b 第二の加圧制御部
4 バッファタンク
5 フィルタ
6 ポンプ
7 ノズル
8 半導体ウエハ
9 ウエハステージ
10 支柱
12 状態センサー
13a 配管A
13b 配管B
13c 配管C
13d 配管D
13e 配管E
14 コック
15 液位センサー
16a 送気管A
16b 送気管B
17 排出口
18 エアセンサー
19 弁
20a,20b レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換自在に装填されるレジスト瓶に充填されたレジストをポンプに接続されたノズルから吐出して半導体ウエハの表面に供給するフォトレジスト供給装置において、
前記レジスト瓶内のレジストを加圧して、前記レジスト瓶の排出口に接続された配管より送出する第一の加圧制御手段と、
前記配管を介して前記レジスト瓶に接続され、前記第一の加圧手段によって前記配管から流入したレジストを充填するレジスト充填容器と、
前記レジスト充填容器内のレジストを加圧して、前記ポンプへ送出する第二の加圧制御手段とを備えることを特徴とするフォトレジスト供給装置。
【請求項2】
前記レジスト瓶が空になったことを検知する状態センサーと、
前記配管に介装され、前記状態センサーの検知に応じて閉塞するコックとを備えることを特徴とする請求項1記載のフォトレジスト供給装置。
【請求項3】
前記レジスト瓶が、前記排出口を下向きにして装填されることを特徴とする請求項1ないし2記載のフォトレジスト供給装置。
【請求項4】
混入した気体を除去するためのバッファタンクが前記レジスト充填容器と前記ポンプとを接続する配管に介装されていることを特徴とする請求項1ないし3記載のフォトレジスト供給装置。
【請求項5】
混入した気体を光学的に検知するためのエアセンサーと、
前記エアセンサーの検知に応じて開放することで前記気体を除去する弁とが前記レジスト充填容器と前記ポンプとを接続する配管に介装されていることを特徴とする請求項1ないし4記載のフォトレジスト供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−324383(P2007−324383A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153261(P2006−153261)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】