説明

フォトレジスト用共重合体の製造法

【課題】 耐熱性、感度、解像度等のレジスト性能に優れ、微細なパターンを鮮明且つ精度よく形成できるフォトレジスト用共重合体を提供する。
【解決手段】 フォトレジスト用共重合体の製造法では、(A)(i)アルキル基で置換されていてもよいスチレン、(ii)下記式(1)


(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜12の第1級若しくは第2級アルキル基、オキシラン環若しくはオキセタン環含有基等を示す)で表される不飽和カルボン酸エステル、及び(iii)N−置換マレイミドの3種の単量体群より選択された少なくとも2種の単量体群に含まれる2以上のモノマーと、(B)アルカリ可溶性基含有モノマーとを、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等の重合開始剤を用いて共重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト用共重合体とその製造法、より詳しくはフォトレジスト等の感光性樹脂又はこの感光性樹脂を得るための前駆体などとして有用なフォトレジスト用共重合体とその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系モノマー及び/又はアクリル系モノマーを重合して得られる共重合体はレジスト等の感光性樹脂又はこの感光性樹脂を得るための前駆体として使用されている。そして、これらの共重合体の耐熱性、感度、解像度等のレジスト性能を向上させるため、従来は、共重合体の組成比や分子量を調整したり、酸価を調整することによりアルカリ溶液(現像液)に対する溶解残渣を減少させたり、特定の化合物を用いて共重合体を修飾することにより解像度を向上させる試みがなされてきた。
【0003】
しかし、上記方法で得られる共重合体によっても、必ずしも十分満足できるレジスト性能は得られていない。また、共重合体の組成比を調整したり、共重合体を修飾する方法により共重合体の耐熱性、感度、解像度を向上させる場合には、レジストの膜減りやレジストの線幅の減少が生じる等の問題がある。また、共重合体の分子量を低下させると、アルカリ溶液に対する溶解性は向上するものの、ポリマーのドライエッチング耐性が低下してしまうという問題もある。
【0004】
特開2001−2717号公報には、特定構造の重合開始剤を用いて、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化するレジスト用樹脂を製造する方法が開示されている。しかし、この公報に記載されている重合体も感度等の点で十分とはいえない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−2717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性、感度、解像度等のレジスト性能に優れ、微細なパターンを鮮明且つ精度よく形成できるフォトレジスト用共重合体とその製造法を提供することにある。
本発明の他の目的は、レジストの膜減りや線幅減少がなく、ドライエッチング耐性が高く、しかも耐熱性、感度、解像度等のレジスト性能に優れるフォトレジスト用共重合体とその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の2種以上のモノマーを特定構造の重合開始剤を用いて共重合させると、耐熱性、感度及び解像度等のレジスト性能に著しく優れたフォトレジスト用共重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)(i)アルキル基で置換されていてもよいスチレン、(ii)下記式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜12の第1級若しくは第2級アルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、又はオキシラン環若しくはオキセタン環含有基を示す)
で表される不飽和カルボン酸エステル、及び(iii)N−置換マレイミドの3種の単量体群より選択された少なくとも2種の単量体群に含まれる2以上のモノマーと、(B)アルカリ可溶性基含有モノマーとを、下記式(2)
【化2】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、又は炭素数7〜16のアラルキル基を示す)
で表される重合開始剤を用いて共重合させることを特徴とするフォトレジスト用共重合体の製造法を提供する。
【0009】
この製造法の1つの態様においては、少なくとも、アルキル基で置換されていてもよいスチレン(i)又はN−置換マレイミド(iii)と、式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)と、アルカリ可溶性基含有モノマー(B)とを重合させる。
【0010】
式(1)のR2におけるオキシラン環若しくはオキセタン環含有基として、例えば、下記式(a)、(b)又は(c)が挙げられる。
【化3】

(式中、A1、A2、A3は、それぞれ、単結合又は連結基を示し、R9、R10は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。式(a)中のオキセタン環、式(b)中のシクロヘキサン環、式(c)中のオキシラン環は置換基を有していてもよい)
【0011】
アルカリ可溶性基含有モノマー(B)として、例えば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物を使用できる。
【0012】
式(2)で表される重合開始剤として、例えば、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が用いられる。
【0013】
式(2)で表される重合開始剤の使用量は、モノマーと重合開始剤の総量に対して、例えば1〜10重量%程度である。
【0014】
本発明は、また、前記の製造法により得られるフォトレジスト用共重合体を提供する。この共重合体の数平均分子量は、例えば3000〜30000程度である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造法によれば、耐熱性、感度、解像度等のレジスト性能に優れ、微細なパターンを鮮明且つ精度よく形成できるフォトレジスト用共重合体を得ることができる。こうして得られるフォトレジスト用共重合体を用いると、レジストの膜減りや線幅減少を抑制でき、ドライエッチング耐性も向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の製造法では、単量体として、(A)(i)アルキル基で置換されていてもよいスチレン、(ii)前記式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル、及び(iii)N−置換マレイミドの3種の単量体群より選択された少なくとも合計で2種の単量体群に含まれる2以上のモノマーと、(B)アルカリ可溶性基含有モノマーとを用いる。
【0017】
前記アルキル基で置換されていてもよいスチレン(i)における「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基が挙げられる。これらのなかでも、メチル基又はエチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。前記アルキル基はスチレンのビニル基及びベンゼン環の何れに結合していてもよい。
【0018】
アルキル基で置換されていてもよいスチレン(i)の代表的な例として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン(o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン)などが挙げられる。アルキル基で置換されていてもよいスチレン(i)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。単量体(i)は皮膜にレジストとして必要な硬度を付与する機能を有する。
【0019】
前記式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)において、式(1)中、R1における炭素数1〜6のアルキル基及びその好ましい例は前記と同様である。R2における炭素数1〜12の第1級若しくは第2級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などが挙げられる。炭素数2〜12のアルケニル基としては、例えば、アリル、3−ブテニル、5−ヘキセニル基等の第1級又は第2級アルケニル基などが挙げられる。
【0020】
また、R2におけるオキシラン環若しくはオキセタン環含有基としては、特に限定されず、例えば、(1)エステル結合を構成する酸素原子(R2に隣接する酸素原子)に、直接、オキシラン環、オキセタン環、又はオキシラン環若しくはオキセタン環が縮合した脂環式環が結合している基、(2)炭化水素基を構成する炭素原子に、オキシラン環、オキセタン環、又はオキシラン環若しくはオキセタン環が2つの炭素原子を共有して縮合した脂環式環が結合している基、(3)炭化水素基を構成する炭素原子間に、オキシラン環、オキセタン環、又はオキシラン環若しくはオキセタン環が2つの炭素原子を共有して縮合した脂環式環が挿入されている基などが挙げられる。オキシラン環が2つの炭素原子を共有して縮合した脂環式環としては、例えば、エポキシシクロペンタン環、エポキシシクロヘキサン環、エポキシシクロオクタン環などが例示される。
【0021】
前記オキシラン環若しくはオキセタン環含有基の代表的な例として、前記式(a)、(b)、又は(c)で表される基が挙げられる。式中、A1、A2、A3は、それぞれ、単結合又は連結基を示し、R9、R10は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。式(a)中のオキセタン環、式(b)中のシクロヘキサン環、式(c)中のオキシラン環は置換基を有していてもよい。
【0022】
1、A2、A3における連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、酸素原子(エーテル結合)、硫黄原子(チオエーテル結合)、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。2価の炭化水素基として、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等のアルキレン基(例えば、炭素数1〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等);ビニレン、プロペニレン基等のアルケニレン基(例えば、炭素数2〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等);1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基(例えば、3〜8員程度のシクロアルキレン基等);シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基(例えば、3〜8員程度のシクロアルキリデン基等);1,4−フェニレン基等のアリレン基などが挙げられる。2価の炭化水素基等が2以上結合した基としては、例えば、2種の炭化水素基が2以上結合した基、複数個(例えば2個)の炭化水素基が酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を介して結合した基などが挙げられる。
【0023】
好ましい連結基には、アルキレン基(特にメチレン基等のC1-4アルキレン基)等の2価の炭化水素基、アルキレン基(特にメチレン基等のC1-4アルキレン基)等の2価の炭化水素基の複数個(例えば2個)が、酸素原子又は硫黄原子を介して結合した基(−C1-4アルキレン−O−C1-4アルキレン−、−C1-4アルキレン−S−C1-4アルキレン−等)などが含まれる。
【0024】
9、R10における炭素数1〜6のアルキル基としては前記と同様である。式(a)中のオキセタン環、式(b)中のシクロヘキサン環、式(c)中のオキシラン環に結合していてもよい置換基としては、レジスト性能を損なわないような置換基であればよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基等のアルキル基(C1-6アルキル基等)、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ基等のアルコキシ基(C1-6アルコキシ基等)などが挙げられる。
【0025】
式(a)で表される基として、例えば、オキセタニル基、3−メチル−3−オキセタニル基、3−エチル−3−オキセタニル基、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル基、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル基、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル基、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル基、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル基、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル基、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル基、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル基などが挙げられる。
【0026】
式(b)で表される基として、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、2−[3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ]エチル基、3−[3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ]プロピル基、及びこれらの基のシクロヘキサン環にメチル基が1〜3個結合した対応する基などが挙げられる。
【0027】
式(c)で表される基として、例えば、オキシラニル基、グリシジル基、2−メチルグリシジル基、2−エチルグリシジル基、2−オキシラニルエチル基、2−グリシジルオキシエチル基、3−グリシジルオキシプロピル基、グリシジルオキシフェニル基などが挙げられる。
【0028】
前記式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)のうち、R2が炭素数1〜12の第1級又は第2級アルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基である化合物(ii-1)の代表的な例には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸アリルなどが含まれる。単量体(ii-1)は皮膜にレジストとして必要な硬度を付与する機能を有すると共に、スチレン系単量体を共重合させる際、その共重合を円滑に進行させる働きを有する。
【0029】
式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)のうち、R2がオキシラン環若しくはオキセタン環含有基である化合物(ii-2)の代表的な例には、例えば、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレートなどが含まれる。単量体(ii-2)は、架橋剤を用いた架橋により、或いはポリマー分子内にあるアルカリ可溶性基(例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基等)との反応により硬化させ、皮膜にレジストとして必要な硬度を付与するとともに、ポリマーをアルカリ不溶性に変化させる機能を有する。従って、この単量体の構造単位を含むポリマーはネガ型レジスト用ポリマーとして特に有用である。なお、前記架橋剤としては、オキシラン環若しくはオキセタン環を開環させて架橋反応を生じさせるものであればよく、レジストの分野で通常用いられる架橋剤(例えば、ヒドロキシル基含有化合物、カルボキシル基又は酸無水物基含有化合物、ポリアミン等)を使用できる。
【0030】
式(I)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。例えば、前記の単量体(ii-1)の1種以上と単量体(ii-2)の1種以上とを組み合わせて使用できる。
【0031】
前記N−置換マレイミド(iii)としては、特に限定されず、例えば、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミドなどのN−シクロアルキルマレイミド;N−アダマンチルマレイミド、N−ノルボルニルマレイミドなどのN−橋架け炭素環式基置換マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミドなどのN−アルキルマレイミド;N−フェニルマレイミドなどのN−アリールマレイミド;N−ベンジルマレイミドなどのN−アラルキルマレイミドなどが挙げられる。これらのなかでも、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミドや、N−橋架け炭素環式基置換マレイミドなどが好ましい。N−置換マレイミド(iii)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。単量体(iii)は皮膜にレジストとして必要な硬度を付与する機能を有するとともに、共重合反応を円滑化する働きを有する。
【0032】
前記(A)のモノマー成分としては、前記(i)〜(iii)の3種の単量体群より選択された少なくとも2種の単量体群に含まれる2以上(トータルで)のモノマーを用いればよいが、なかでも、(A)としては、(1)アルキル基で置換されていてもよいスチレン(i)と式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)の組み合わせ、(2)(ii)とN−置換マレイミド(iii)の組み合わせ、(3)(i)と(ii)と(iii)の組み合わせが好ましい。
【0033】
前記(1)の場合、(i)と(ii)の割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは3/97〜98/2である。なお、(1)の場合には、式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)として、特に、R2が炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基である化合物(ii-1)を用いるのが好ましい。(ii-1)を用いることにより、(i)のモノマーと前記アルカリ可溶性基含有モノマー(B)等の共重合反応をより円滑に進行させることができる。この場合、(i)と(ii-1)の割合は、例えば、前者/後者(重量比)=70/30〜99/1、好ましくは80/20〜98/2、さらに好ましくは90/10〜97/3である。この割合が大きすぎると共重合反応が円滑に進行しにくくなり、逆に小さすぎると皮膜の硬さが不十分になりやすい。
【0034】
また、前記(2)の場合、(ii)と(iii)の割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは3/97〜98/2である。なお、(2)の場合には、式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)として、特に、R2がオキシラン環若しくはオキセタン環含有基である化合物(ii-2)を用いるのが好ましい。この場合、(ii-2)と(iii)の割合は、例えば、前者/後者(重量比)=20/80〜99/1、好ましくは40/60〜98/2である。この割合が大きすぎると、皮膜の硬さが不十分になったり共重合反応が円滑に進行しにくくなり、逆に小さすぎると、架橋反応等が不十分になり、ネガ型レジスト用として用いた場合に非露光箇所だけでなく露光箇所のポリマーもアルカリ現像液に溶解して、微細なパターンを鮮明且つ精度よく形成することが困難になりやすい。
【0035】
前記(3)の場合の各モノマー成分の割合は、前記(1)及び(2)に準じて設定できる。
【0036】
アルカリ可溶性基含有モノマー(B)は、ポリマーにアルカリ可溶性を付与する機能を有する。これによって、ポリマーは現像時にアルカリ溶液(現像液)に溶解するので、この単量体の構造単位を含むポリマーはフォトレジスト用ポリマーとして有用である。また、アルカリ可溶性基含有モノマー(B)は、架橋剤を用いた架橋により、或いはポリマー分子内にあるオキシラン環若しくはオキセタン環含有基[例えば、前記単量体(ii-2)に由来する基など]との反応により硬化させ、皮膜にレジストとして必要な硬度を付与するとともに、ポリマーをアルカリ不溶性に変化させる機能を有するので、この単量体の構造単位を含むポリマーはネガ型レジスト用ポリマーとして極めて有用である。なお、前記架橋剤としては、アルカリ可溶性基(例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基等)と架橋反応を生じさせるものであればよく、レジストの分野で通常用いられる架橋剤(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアナート、エポキシ樹脂等)を使用できる。なお、ネガ型レジストの場合、光照射によりさらに重合を進行させて分子量を高くすることにより、露光部の樹脂をアルカリ不溶性に変化させることもできる。
【0037】
アルカリ可溶性基含有モノマー(B)におけるアルカリ可溶性基としては、レジストの分野で通常用いられる基であればよく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基などが挙げられる。アルカリ可溶性基含有モノマー(B)の代表的な例として、不飽和カルボン酸又はその酸無水物、ヒドロキシスチレン又はその誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。これらのなかでも、特に不飽和カルボン酸又はその酸無水物が好ましい。
【0038】
不飽和カルボン酸又はその酸無水物として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)が例示される。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。アルカリ可溶性基含有モノマー(B)は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
前記単量体成分(A)と(B)の割合は、用いるモノマーの種類やレジストのタイプ(ネガ型又はポジ型)によっても異なるが、通常、前者/後者(重量比)=40/60〜98/2、好ましくは50/50〜95/5、さらに好ましくは60/40〜92/8程度である。この割合が大きすぎるとアルカリ現像液に対して溶解しにくくなり、逆に小さすぎると皮膜の硬さが不十分になりやすい。
【0040】
本発明の製造法では、レジストとして必要な諸機能[アルカリ可溶性機能、耐エッチング性付与機能、透明性付与機能、基板に対する密着性機能、レジスト溶剤に対する溶解性機能、酸により構造の一部が脱離してアルカリ可溶性となる酸脱離性機能(ポジ型レジスト用の場合)等]を付与したり、共重合反応を円滑に行うため、必要に応じて上記以外の単量体成分を共重合に付してもよい。但し、前記単量体成分(A)と(B)の総和は、全単量体成分に対して、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、実質的に(A)と(B)のみで共重合体を構成してもよい。
【0041】
本発明では、重合開始剤として前記式(2)で表される化合物を用いる。重合開始剤として式(2)で表される化合物を用いると、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のニトリル基含有重合開始剤や過酸化物系重合開始剤を用いた場合と比較して、光透過性が高く、耐熱性に優れ、しかもアルカリ溶液に対する溶解性の高いポリマーが得られる。そのため、このポリマーをフォトレジスト用として用いると、高い感度及び解像度で所望のパターンを得ることができる。また、レジストの膜減りやレジストの線幅の減少、ドライエッチング耐性の低下を抑制できる。
【0042】
式(2)中、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、又は炭素数7〜16のアラルキル基を示す。
【0043】
炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。これらのなかでも、炭素数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0044】
炭素数6〜15のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数7〜16のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0045】
式(2)で表される化合物の代表的な例として、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジブチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。なかでも、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が特に好ましい。
【0046】
式(2)で表される重合開始剤の使用量は、円滑な共重合を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常、モノマー(全単量体成分)及び重合開始剤の総量に対して、1〜10重量%程度であり、好ましくは2〜8重量%程度である。
【0047】
共重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合など、スチレン系ポリマーやアクリル系ポリマーを製造する際に用いる慣用の方法により行うことができる。これらのなかでも溶液重合が好ましい。モノマー、重合開始剤は、それぞれ、反応系に一括供給してもよく、その一部又は全部を反応系に滴下してもよい。例えば、一定温度に保持したモノマーと重合溶媒の混合液中に、重合開始剤を重合溶媒に溶解した溶液を滴下して重合する方法や、予め単量体、重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を、一定温度に保持した重合溶媒中に滴下して重合する方法(滴下重合法)などを採用できる。
【0048】
重合溶媒は単量体組成等に応じて適宜選択できる。重合溶媒として、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルやジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のグリコールエーテル類などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。重合温度は、例えば30〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。
【0049】
上記方法により、(A)(i)アルキル基で置換されていてもよいスチレン、(ii)前記式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル、及び(iii)N−置換マレイミドの3種の単量体群より選択された少なくとも2種の単量体群に含まれる2以上のモノマーに対応する構造単位(繰り返し単位)と、(B)アルカリ可溶性基含有モノマーに対応する構造単位(繰り返し単位)とを有する共重合体が生成する。共重合体の数平均分子量は、例えば3000〜30000、好ましくは3500〜25000、さらに好ましくは4000〜20000程度である。
【0050】
上記方法で得られた重合液は、必要に応じて固形分濃度を調整したり、濾過処理を施した後、これに、光酸発生剤、架橋剤(ネガ型レジストの場合)、樹脂、着色剤等の適宜な添加物を添加することにより、フォトレジスト用樹脂組成物として利用することができる。また、重合により生成したポリマーを沈殿又は再沈殿等により精製し、この精製したポリマーを、前記適宜な添加物とともにレジスト用溶媒に溶解することにより、フォトレジスト用樹脂組成物として利用することもできる。前記光酸発生剤、架橋剤等の添加物、レジスト用溶媒としては、モノマー組成等に応じて、レジストの分野で一般に使用されるものを用いることができる。
【0051】
ポリマーの沈殿又は再沈殿に用いる溶媒は有機溶媒及び水の何れであってもよく、またその混合溶媒であってもよい。有機溶媒として、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0052】
こうして得られる共重合体は、例えば、露光にg線、i線、エキシマレーザー(例えば、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArCl、F2、Kr2、KrAr、Ar2等)などを用いたフォトレジスト用ポリマー、とりわけネガ型のフォトレジスト用ポリマーとして好適に使用される。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、共重合体の数平均分子量は、(株)島津製作所製のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(商品名「K2479」)を用いて測定した。分析条件は以下の通りである。
カラム:SHIMAZU Shin-pack GPC-80M
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)1ml/min
温度(オーブン):40℃
検出器:RI
【0054】
実施例1
セパラブルフラスコに、3−メトキシブチルアセテート210g、スチレンモノマー230g、メタクリル酸メチル10g、及びメタクリル酸65gを入れ、窒素置換後、温度を80℃に上げた。内容物の温度が80℃になった時点で、重合開始剤としてジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)25gを3−メトキシブチルアセテート160gに溶解した溶液を約7時間かけて滴下した。重合開始剤溶液の滴下が終了した後、約1時間反応を継続した後、反応容器を冷却し反応を終了した。この溶液に、3−メトキシブチルアセテート300gを加え、固形分濃度を調整し、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体の3−メトキシブチルアセテート溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は29.5重量%、酸価は42.4mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は60mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は8000であった。
【0055】
実施例2
セパラブルフラスコに、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとエチル−3−エトキシプロピオネートの混合溶媒[前者/後者(重量比)=340/345]210g、N−シクロヘキシルマレイミド120g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート140g、及びメタクリル酸40gを入れ、窒素置換後、温度を80℃に上げた。内容物の温度が80℃になった時点で、重合開始剤としてジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)15gを前記混合溶媒160gに溶解した溶液を約7時間かけて滴下した。重合開始剤溶液の滴下が終了した後、約1時間反応を継続した後、反応容器を冷却し反応を終了した。この溶液に、前記混合溶媒315gを加え、固形分濃度を調整し、N−シクロヘキシルマレイミド/3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の前記混合溶媒溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は28.9重量%、酸価は26.5mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は85mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は4400であった。
【0056】
実施例3
セパラブルフラスコに、3−メトキシブチルアセテートと3−メトキシ−1−ブタノールの混合溶媒[前者/後者(重量比)=330/340]210g、N−シクロヘキシルマレイミド40g、メチルグリシジルメタクリレート180g、及びメタクリル酸80gを入れ、窒素置換後、温度を80℃に上げた。内容物の温度が80℃になった時点で、重合開始剤としてジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)30gを前記混合溶媒160gに溶解した溶液を約7時間かけて滴下した。重合開始剤溶液の滴下が終了した後、約1時間反応を継続した後、反応容器を冷却し反応を終了した。この溶液に、前記混合溶媒300gを加え、固形分濃度を調整し、N−シクロヘキシルマレイミド/メチルグリシジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の前記混合溶媒溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は29.8重量%、酸価は52.1mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は110mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は8900であった。
【0057】
実施例4
セパラブルフラスコに、3−メトキシブチルアセテートと3−メトキシ−1−ブタノールの混合溶媒[前者/後者(重量比)=330/340]210g、N−シクロヘキシルマレイミド40g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート180g、及びメタクリル酸80gを入れ、窒素置換後、温度を80℃に上げた。内容物の温度が80℃になった時点で、重合開始剤としてジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)30gを前記混合溶媒160gに溶解した溶液を約7時間かけて滴下した。重合開始剤溶液の滴下が終了した後、約1時間反応を継続した後、反応容器を冷却し反応を終了した。この溶液に、前記混合溶媒300gを加え、固形分濃度を調整し、N−シクロヘキシルマレイミド/3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の前記混合溶媒溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は29.5重量%、酸価は52.1mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は130mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は9600であった。
【0058】
比較例1
ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の代わりにジメチル−2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を25g用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体の溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は29.5重量%、酸価は42.4mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は65mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は8000であった。
【0059】
比較例2
ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の代わりにアゾビスイソブチロニトリルを15g用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い、N−シクロヘキシルマレイミド/3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は29.7重量%、酸価は26.1mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は83mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は4500であった。
【0060】
比較例3
ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の代わりにジメチル−2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を30g用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−シクロヘキシルマレイミド/メチルグリシジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は28.9重量%、酸価は52.1mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は103mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は9000であった。
【0061】
比較例4
ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の代わりにアゾビスイソブチロニトリルを30g用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い、N−シクロヘキシルマレイミド/3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の溶液約1kgを得た。得られた共重合体溶液の固形分濃度は29.1重量%、酸価は52.1mg−KOH/g、B型粘度計により測定した粘度(23℃)は140mPa・sであった。また、共重合体のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は9300であった。
【0062】
評価試験
実施例及び比較例で得られた各共重合体溶液を用いて以下の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(1)現像性
実施例及び比較例で得られた各共重合体溶液を固形分濃度3.6重量%に希釈した。この溶液を、バーコーターを用いて基材(SUS304、0.5×80×80mm、パフ仕上げ、片面SPV、日本テストパネル、標準試験板)に塗布し、120℃のオーブンで2時間乾燥した後に、ステンレス製バットに約1cmの高さに張ったアルカリ現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.35重量%水溶液)に浸漬して、樹脂層が完全に溶解し除去されるまでの時間を計測した。
【0064】
(2)光線透過率
実施例及び比較例で得られた各共重合体溶液(固形分約30重量%)を、10×10mmの石英ガラス容器に入れ、UV−分光器(日立製作所製、商品名「U−3300」)を用いて、波長365nmにおける光線透過率を測定した。なお、ベースとして、各共重合溶液の溶剤と同じ組成の溶剤を同一形状の石英ガラス容器に入れたものを用いた。光線透過率はベースの透過率を基準に計算される。光線透過率は95%以上必要であり、95%未満では感度が悪い。
【0065】
(3)耐熱性
重量を測定したTG/DTA測定用アルミニウム製パンに、実施例及び比較例で得られた各共重合体溶液を20〜40mg入れ、これをオーブン中、120℃の温度で2時間乾燥させ、重量を測定して試料の重量を算出した後、TG/DTA試験機(熱重量測定/示差熱分析試験機;セイコー電子工業製、商品名「TG/DTA6300」)にかけた。酸化アルミニウムを基準試料とした。TG曲線の第1変曲点の温度(融点)を読み取り、樹脂の耐熱性の指標とした。
【0066】
【表1】

【0067】
表より明らかなように、実施例で得られた共重合体は、比較例で得られた共重合体と比較して、現像性、光線透過率及び耐熱性の点で著しく優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)アルキル基で置換されていてもよいスチレン、(ii)下記式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜12の第1級若しくは第2級アルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、又はオキシラン環若しくはオキセタン環含有基を示す)
で表される不飽和カルボン酸エステル、及び(iii)N−置換マレイミドの3種の単量体群より選択された少なくとも2種の単量体群に含まれる2以上のモノマーと、(B)アルカリ可溶性基含有モノマーとを、下記式(2)
【化2】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、又は炭素数7〜16のアラルキル基を示す)
で表される重合開始剤を用いて共重合させることを特徴とするフォトレジスト用共重合体の製造法。
【請求項2】
少なくとも、アルキル基で置換されていてもよいスチレン(i)又はN−置換マレイミド(iii)と、式(1)で表される不飽和カルボン酸エステル(ii)と、アルカリ可溶性基含有モノマー(B)とを重合させる請求項1記載のフォトレジスト用共重合体の製造法。
【請求項3】
式(1)のR2におけるオキシラン環若しくはオキセタン環含有基が、下記式(a)、(b)、(c)
【化3】

(式中、A1、A2、A3は、それぞれ、単結合又は連結基を示し、R9、R10は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。式(a)中のオキセタン環、式(b)中のシクロヘキサン環、式(c)中のオキシラン環は置換基を有していてもよい)
の何れかの基である請求項1又は2記載のフォトレジスト用共重合体の製造法。
【請求項4】
アルカリ可溶性基含有モノマー(B)が不飽和カルボン酸又はその酸無水物である請求項1〜3の何れかの項に記載のフォトレジスト用共重合体の製造法。
【請求項5】
式(2)で表される重合開始剤が、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)である請求項1〜4の何れかの項に記載のフォトレジスト用共重合体の製造法。
【請求項6】
式(2)で表される重合開始剤の使用量が、モノマーと重合開始剤の総量に対して1〜10重量%である請求項1〜5の何れかの項に記載のフォトレジスト用共重合体の製造法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの項に記載の製造法により得られるフォトレジスト用共重合体。
【請求項8】
数平均分子量が3000〜30000である請求項7記載のフォトレジスト用共重合体。

【公開番号】特開2006−83245(P2006−83245A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267699(P2004−267699)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】