説明

フォトレジスト用高分子化合物の製造方法

【課題】重合時の固体付着を起こしにくく、不溶解性微粒子が発生しにくい溶媒を用いたフォトレジスト用高分子化合物の製造方法の提供
【解決手段】酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化する繰り返し単位を含むフォトレジスト用高分子化合物の製造方法であって、分子構造中にシアノ基を持つ溶媒を含む溶媒中で重合することを特徴とするフォトレジスト用高分子化合物の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に使用される化学増幅ポジ型リソグラフィー用高分子化合物の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、遠紫外線、X線、電子線等の各種放射線を用いる微細加工に好適な化学増幅ポジ型半導体リソグラフィー用高分子化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造に用いられるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であるが、現在ではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)によるリソグラフィーが量産の中心になり、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)によるリソグラフィーも量産工程で導入され始めている。更には、フッ素ダイマー(F2)エキシマレーザー光(波長157nm)、極紫外線(EUV)、X線、電子線等によるリソグラフィーも研究段階にある。
【0003】
これらのリソグラフィー技術においては、化学増幅ポジ型リソグラフィー用共重合体が好適に用いられている。該共重合体は、アルカリ現像液に可溶な極性基(以下、「アルカリ可溶性基」ともいう。)を酸の作用に対して不安定であってアルカリ現像液に対する溶解性を抑制する置換基(以下、「酸不安定溶解抑制基」ともいう。)で保護した構造(以下、「酸不安定構造」ともいう。)を有する繰り返し単位と、半導体基板等に対する密着性を高めること及びリソグラフィー溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調整することを目的とする極性基を有する繰り返し単位を含んで構成される。
【0004】
例えば、露光源としてKrFエキシマレーザーを用いるリソグラフィーにおいては、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン由来のフェノール水酸基をアセタール構造や4級炭化水素基等の酸不安定溶解抑制基で保護した繰り返し単位、若しくは(α−アルキル)アクリル酸由来のカルボキシル基をアセタール構造や4級炭化水素基等の酸不安定溶解抑制基で保護した繰り返し単位等を有する共重合体(特許文献1〜4等参照)等が知られている。又、ドライエッチング耐性や、露光前後のアルカリ現像液に対する溶解速度の差(以下、「溶解コントラスト」ともいう。)を向上させるため、脂環式炭化水素基を酸不安定溶解抑制基とした繰り返し単位を有する共重合体(特許文献5〜6等参照)が知られている。
【0005】
露光源としてより短波長のArFエキシマレーザー等を用いるリソグラフィーにおいては、193nmの波長に対する吸光係数が高いヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位を有さない共重合体が検討され、半導体基板等に対する密着性を高めたり、リソグラフィー溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調整したりするための極性基として、ラクトン構造を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献7〜10等参照)や、極性基含有脂環式炭化水素基を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献11等参照)が知られている。
【0006】
ところで、これらフォトレジスト用高分子化合物の製造方法としては、通常、グリコール系溶媒、エステル系溶媒、及びケトン系溶媒などの溶媒中で重合反応が行われており、このなかでも、MEK(メチルエチルケトン)中で重合するのが一般的である。
しかしながら、使用するモノマーの組合せによっては、重合反応中に反応器壁にMEKに難溶の固体が膜状に付着するという問題があり、これまで、重合時の固体付着を防ぐには、重合時のモノマー濃度を下げる必要があるとされていた。
【特許文献1】特開昭59−045439号公報
【特許文献2】特開平05−113667号公報
【特許文献3】特開平10−026828号公報
【特許文献4】特開昭62−115440号公報
【特許文献5】特開平09−073173号公報
【特許文献6】特開平10−161313号公報
【特許文献7】特開平09−090637号公報
【特許文献8】特開平10−207069号公報
【特許文献9】特開2000−026446号公報
【特許文献10】特開2001−242627号公報
【特許文献11】特開平11−109632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、重合時の固体付着を起こしにくく、不溶解性微粒子が発生しにくい溶媒を用いたフォトレジスト用高分子化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フォトレジスト用高分子化合物を製造するに際し、重合時の固体付着を防ぐことについて鋭意検討した結果、分子構造中にシアノ基を持つ溶媒を含む溶媒中で重合することにより、重合時の固体付着を防止できること、フォトレジスト用高分子化合物中の不溶解性の微粒子が減少することにより、レジストパターンの欠陥が減少することを見出し、さらに意外にも、当該製造方法によれば、優れた収量でフォトレジスト用高分子化合物を効率的に製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化するフォトレジスト用高分子化合物の製造方法であって、分子構造中にシアノ基を持つ溶媒を含む溶媒中で重合することを特徴とするフォトレジスト用高分子化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合時の反応槽壁への固体付着が起こりにくくなり、重合時のモノマー濃度を高くでき、優れた収量でフォトレジスト用高分子化合物が得られることから、フォトレジスト用高分子化合物を工業的に有利に合成することが可能になる。
また、レジストポリマー中の不溶解性の微粒子が減少することにより、レジストパターンの欠陥が減少し、半導体製造工程での歩留まりが向上する効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の製造方法は、原料となる単量体を、分子構造中にシアノ基を持つ溶媒を含む溶媒中でラジカル重合させるものであり、ラジカル重合開始剤存在下で行うものである。
【0012】
以下、重合工程(工程(P)ともいう。)について説明する。
【0013】
分子構造中にシアノ基を持つ溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、ヘキサンニトリル、クロロアセトニトリル、ピバロニトリルなどが挙げられ、これらの溶媒は、他の溶媒と混合して用いることができる。
上記他の溶媒は、溶剤として公知の化合物であって、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、更には重合して得られた共重合体を溶解させる化合物であれば特に制限されない。このような例として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
分子構造中にシアノ基を持つ溶媒は、重合時の固体付着防止効果の点から、全溶媒中20重量%以上、さらに40重量%以上、特に70重量%以上使用するのが好ましい。また、本発明の工程(P)のモノマー濃度は、分子構造中にシアノ基を持つ溶媒を使用することから、20質量%から60質量%、好ましくは25質量%から50質量%、特に好ましくは、25質量%から40質量%とすることができる。
【0015】
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量、単量体や重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒の種類、繰り返し単位組成、重合温度や滴下速度等に応じて選択することができる。
【0016】
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤としてはチオール化合物が好ましく、種類は公知のチオール化合物の中から幅広く選択することができるが、水酸基の水素原子を酸不安定性溶解抑制基で置換した構造を有するチオール化合物を選択することが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、目的とする分子量、単量体や重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒の種類、繰り返し単位組成、重合温度や滴下速度等に応じて選択することができる。
【0017】
工程(P)の具体的な操作方法としては、例えば、(1)単量体を重合開始剤と共に溶媒に溶解し、そのまま加熱して重合させる一括昇温法、(2)単量体を重合開始剤と共に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に滴下して重合させる混合滴下法、(3)単量体と重合開始剤と別々に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に別々に滴下して重合させる独立滴下法、(4)単量体を溶媒に溶解して加熱し、別途溶媒に溶解した重合開始剤を滴下して重合させる開始剤滴下法等が挙げられる。
ここで、(1)の一括昇温法、(4)の開始剤滴下法は、重合系内において、(2)の混合滴下法は、重合系内に滴下する前の滴下液貯槽内において、未反応モノマーの濃度が高い状態で低濃度のラジカルと接触する機会があるため、ディフェクト発生原因のひとつである分子量10万以上の高分子量体(ハイポリマー)が生成しやすい。これに比べて、(3)の独立滴下法は、滴下液貯槽で重合開始剤と共存しないこと、重合系内に滴下した際も未反応モノマー濃度が低い状態を保つことから、ハイポリマーが生成しないので、本発明の重合方法としては(3)の独立滴下法が好ましい。尚、(2)の混合滴下法及び(3)の独立滴下法において、滴下時間と共に滴下する単量体の組成、単量体、重合開始剤及び連鎖移動剤の組成比等を変化させても良い。
【0018】
工程(P)の反応温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、単量体及び共重合体の安定性の点で問題があり、反応温度は、40〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0019】
(2)の混合滴下法及び(3)の独立滴下法における滴下時間は、短時間であると分子量分布が広くなりやすいことや、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることから好ましくなく、長時間であると共重合体に必要以上の熱履歴がかかることと、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常30分〜24時間、好ましくは1時間〜12時間、より好ましくは2時間〜8時間の範囲から選択する。
【0020】
(2)の混合滴下法及び(3)の独立滴下法における滴下終了後、及び、(1)の一括昇温法及び(4)の開始剤滴下法における重合温度への昇温後は、一定時間温度を維持するか、若しくはさらに昇温する等して熟成を行い、残存する未反応モノマーを反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくなく、従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、より好ましくは1〜4時間の範囲から選択する。
【0021】
工程(P)によって得られた共重合体の精製方法として、必要に応じ、共重合体から未反応単量体等の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分、重合開始剤等の反応残査物等の不要物を除去する工程(R)や、溶媒を次工程若しくはリソグラフィーに適した溶媒と置換する工程(S)、半導体の形成に好ましくない金属不純物を低減する工程(T)、ハイポリマーやゲル成分等の液中パーティクルや現像欠陥の原因物質を低減する工程(U)が採用されることもできる。
【0022】
以下、共重合体中の繰返し単位について説明する。
1.繰り返し単位(A)
本発明の製造方法で合成されるフォトレジスト用高分子化合物は、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化するものであれば良いが、アルカリ現像液に対する共重合体の溶解性を変化させる点で、繰り返し単位(A)で表わされる共重合体が好ましい。
繰り返し単位(A)は、アルカリ可溶性基としてのカルボキシル基における水素原子を酸解離性解抑制基で保護した構造を有し、式(A)
【0023】
【化1】

【0024】
式(A)中、R10は水素原子、又はフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を示し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられ、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0025】
11は、炭素数1〜2の炭化水素基、酸素原子又は硫黄原子で架橋した炭素数7〜12の有橋脂環炭化水素基を示し、具体的には、ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環等を有する炭化水素基を挙げることができ、好ましくはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環を有する炭化水素基である。尚、nは0又は1の整数である。
【0026】
12は酸解離性溶解抑制基を示し、好ましくは、式(C1)若しくは式(C2)から選ばれる構造である。
【0027】
【化2】

【0028】
式(C1)中、oはR12の結合部位を示し。R34及びR35はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができる。R36は炭素数1〜12の飽和炭化水素基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等を挙げることができる。尚、R34は、R35又はR36と結合して環を形成しても良く、R34がR35と結合した環の具体例として、ヒドロフラン環、ヒドロピラン環等を、又、R34がR36と結合した環の具体例として、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等をそれぞれ挙げることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
式(C2)中、oはR12の結合部位を示す。R31及びR32はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができる。R33は炭素数1〜12の飽和炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等を挙げることができる。尚、R33はR31若しくはR32と結合して環を形成しても良く、当該環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等が挙げられる。
【0031】
式(C2)においては、特に、R33に、R31又はR32が結合して、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の環が共重合体に含まれると、リソグラフィー前後でのアルカリ現像液に対する溶解性の差が大きく、微細パターンを描くのに好ましい。
【0032】
すなわち、繰り返し単位(A)において、繰り返し単位(A’)で表わされる繰り返し単位が特に好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
以下に、繰り返し単位(A)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
【化16】

【0047】
【化17】

【0048】
3.繰り返し単位(D)
本発明の製造方法で合成されるフォトレジスト用高分子化合物は、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化するものであれば良いが、半導体基板への密着性を高める点、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御する点で、水酸基、カルボニル基などの極性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含むことがより好ましく、これらの繰り返し単位の例としては、式(D)
【0049】
【化18】

【0050】
式(D)中、R40は水素原子、又はフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を示し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R41は単結合、又は炭素数1〜2の炭化水素基、酸素原子若しくは硫黄原子で架橋しても良い炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を示し、具体的には単結合、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環、炭素数1−3のアルキル基、又は水酸基を置換基として有しても良いアダマンタン環等を挙げることができる。
【0051】
式(D)中、R42は水酸基、又は式(L)
【0052】
【化19】

【0053】
式(L)中、R43〜R48のいずれか1つ若しくは2つが式(D)におけるR41と結合する単結合を示すか、又は、式(L)を構成する環がR41との間で縮合した多環を形成する。残りのR43〜R48は水素原子、又は炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を示す。また、nは1又は2の整数を表す。
【0054】
繰り返し単位(D)において、繰り返し単位(D’)で表わされる繰り返し単位が特に好ましい。
【0055】
【化20】

【0056】
以下に、繰り返し単位(D)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
【化21】

【0058】
【化22】

【0059】
【化23】

【0060】
【化24】

【0061】
【化25】

【0062】
【化26】

【0063】
【化27】

【0064】
4.繰り返し単位(E)
本発明においては、必要に応じ、耐エッチング性、溶解性の制御などのレジスト特性を向上させる目的で、必要な置換基を持つ繰り返し単位(E)を導入することができる。
【0065】
以下に、繰り返し単位(E)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、置換基を持つ繰り返し単位(E)を導入する場合、基盤密着性を向上させる点で、下記E101〜E205までの脂環又は芳香環の一部の水素を水酸基で置換した繰り返し単位を導入することもできる。
【0066】
【化28】

【0067】
【化29】

【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1
窒素雰囲気に保った容器にアセトニトリル 84.8g、ノルボルナンラクトンメタクリレート 25.70g、メチルシクロペンチルメタクリレート 36.14g、アゾビスイソブチロニトリル 3.31gを溶解させ、均一な「モノマーフィード液」を調製した。撹拌器と冷却器を備え付けた反応槽にアセトニトリル 30gを仕込んで窒素雰囲気とした後、95℃に加熱したオイルバスに浸した。数分後、フラスコ内はリフラックス状態となり内温は82℃に達した。約25℃に保ったモノマーフィード液を、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて81〜83℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、さらに82〜83℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却した(重合時のモノマー濃度35%)。
フラスコ壁に固体付着は見られなかった。生成したポリマーのMw 5830,Mw/Mn 1.83であった。
【0070】
実施例2
窒素雰囲気に保った容器にアセトニトリル 84.6g、ノルボルナンラクトンメタクリレート 26.39g、メチルシクロペンチルメタクリレート 25.69g、ターシャリーブチルメタクリレート 9.65g、アゾビスイソブチロニトリル 3.62gを溶解させ、均一な「モノマーフィード液」を調製した。撹拌器と冷却器を備え付けた反応槽にアセトニトリル 30gを仕込んで窒素雰囲気とした後、95℃に加熱したオイルバスに浸した。数分後、フラスコ内はリフラックス状態となり内温は82℃に達した。約25℃に保ったモノマーフィード液を、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて81〜83℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、さらに82〜83℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却した(重合時のモノマー濃度35%)。
フラスコ壁に固体付着は見られなかった。生成したポリマーのMw 5760,Mw/Mn 1.85であった。
【0071】
比較例1
窒素雰囲気に保った容器にメチルエチルケトン 108.8g、ノルボルナンラクトンメタクリレート 16.27g、メチルシクロペンチルメタクリレート 22.87g、アゾビスイソブチロニトリル 2.09gを溶解させ、均一な「モノマーフィード液」を調製した。撹拌器と冷却器を備え付けた反応槽にメチルエチルケトン 30gを仕込んで窒素雰囲気とした後、90℃に加熱したオイルバスに浸した。数分後、フラスコ内はリフラックス状態となり内温は79.5℃に達した。約25℃に保ったモノマーフィード液を、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて79〜82℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、さらに80〜82℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却した(重合時のモノマー濃度22%)。
フラスコ壁に白色の固体付着が見られた。この固体はMEKには溶解しなかった。
【0072】
比較例2
窒素雰囲気に保った容器にメチルエチルケトン 108.6g、ノルボルナンラクトンメタクリレート 16.71g、メチルシクロペンチルメタクリレート 16.27g、ターシャリーブチルメタクリレート 6.11g、アゾビスイソブチロニトリル 2.29gを溶解させ、均一な「モノマーフィード液」を調製した。撹拌器と冷却器を備え付けた反応槽にメチルエチルケトン 30gを仕込んで窒素雰囲気とした後、90℃に加熱したオイルバスに浸した。数分後、フラスコ内はリフラックス状態となり内温は79.5℃に達した。約25℃に保ったモノマーフィード液を、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて79〜82℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、さらに80〜82℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却した(重合時のモノマー濃度22%)。
フラスコ壁に白色の固体付着が見られた。この固体はMEKには溶解しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化する繰り返し単位を含むフォトレジスト用高分子化合物の製造方法であって、分子構造中にシアノ基を持つ溶媒を含む溶媒中で重合することを特徴とするフォトレジスト用高分子化合物の製造方法。
【請求項2】
分子構造中にシアノ基を持つ溶媒がアセトニトリルである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
フォトレジスト用高分子化合物が、繰り返し単位として式(A)
【化1】

{式(A)中、R10は水素原子、又はフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を示し、R11は炭素数1〜2の炭化水素基、酸素原子又は硫黄原子で架橋した炭素数7〜12の有橋脂環式炭化水素基を示し、R12は酸解離性溶解抑制基を示し、nは0又は1の整数を示す。}
で表される構造を有する繰り返し単位を含む共重合体である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
フォトレジスト用高分子化合物が、繰り返し単位として式(D)
【化2】

[式(D)中、R40は水素原子、又はフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を示し、R41は単結合、又は炭素数1〜2の炭化水素基、酸素原子若しくは硫黄原子で架橋しても良い炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を示し、R42は水酸基又は式(L)
【化3】

{式(L)中、R43〜R48のいずれか1つ若しくは2つが式(D)におけるR41と結合する単結合を示すか、又は、式(L)を構成する環がR41との間で縮合した多環を形成する。残りのR43〜R48は水素原子、又は炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を示す。nは1又は2の整数を表す。}で表されるラクトン構造を示す。]
で表される構造を有する繰り返し単位を含む共重合体である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
式(A)が下記式(A’)で表されるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【化4】

[式(A’)中、R50は水素原子、又はフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R51は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、nは0又は1を示す。]
【請求項6】
繰り返し単位、式(D)が下記式(D’)で表されるものである請求項4記載の製造方法。
【化5】

[式(D’)中、R61は水素原子、又はフッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を示す。]

【公開番号】特開2009−191237(P2009−191237A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36389(P2008−36389)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】