説明

フッ化カルシウム単結晶の評価方法、及び光学部材用の硝材の製造方法

【課題】 半導体リソグラフィー装置の光学系に用いるレンズ、プリズム、窓材等の真空紫外光を透過させて使用するフッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を簡便に高精度で評価する。
【解決手段】 フッ化カルシウム単結晶の透過スペクトルを測定し、前記透過スペクトルにおける、亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率となる吸収波長を、該透過スペクトルにおける吸収波長が120〜200nmの範囲から決定し、該吸収波長の変化により、前記フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決決定する。この方法により高度な分析技術の必要なICP質量分析等の精密化学分析に比べて、非破壊で、短時間かつ簡便に亜鉛不純物濃度を評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化カルシウム単結晶の評価方法、及び該単結晶からなる光学部材用の硝材の製造方法に関する。さらに詳しくは、波長200nm以下の紫外線、例えばArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、固体レーザー等を光源とする半導体リソグラフィーの露光装置および光源装置、CVD装置等のレンズ、プリズム、窓材等の光学部材の硝材に用いる高純度のフッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を簡便な方法により決定する評価方法、及び該評価方法を用いた光学部材の硝材を製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの高性能化、高集積化に伴い、半導体リソグラフィー技術においてはさらなる微細化加工が要求されている。この微細化加工のために半導体リソグラフィー装置に用いられるレーザー光源の短波長化が進んでおり、現在では波長193nmのArFエキシマレーザーが使用されている。また、半導体チップ製造における、さらなる微細化とスループット向上を目的に、レーザー光源の高出力化も進められている。
【0003】
上記半導体チップ製造に用いられる、半導体リソグラフィーの露光装置や光源装置のレンズ、プリズム、窓材等の光学部材の硝材としては、真空紫外域の200nm以下の短い波長の光に対する高い透過性や、ArFエキシマレーザー等のエネルギーの高い紫外線レーザーの長期期間照射において透過率等の光学的特性が低下しない優れた耐久性が要求されており、該光学部材の硝材としてフッ化カルシウム単結晶が使用されている。
【0004】
フッ化カルシウム単結晶の紫外線レーザーに対する透過性や耐久性は、該単結晶中の不純物の含有量、特に、単結晶の酸素汚染によって著しく損なわれることが知られている。そこで、フッ化カルシウム等の、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のフッ化物単結晶の製造において、原料の精製工程、単結晶育成工程、アニール工程等の各々の製造工程では、スカベンジャーと呼ばれる脱酸素物質を用いて、フッ化物に吸着した酸素や水分、フッ化物中の酸化物や炭酸塩、その他の酸素源の除去が行われている。上記スカベンジャーとして、フッ化鉛、フッ化亜鉛等が知られている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0005】
一方で、鉛、亜鉛等の金属元素は、カルシウムと同じ2価の金属元素であるため、上記スカベンジャーの使用により、これらの元素がフッ化物単結晶に取り込まれてしまい、フッ化物単結晶の透過スペクトルに影響を及ぼすことがある。例えば、フッ化カルシウム単結晶中に亜鉛が、100ppmレベルのオーダーで存在するとArFレーザー等の真空紫外線レーザーやX線、γ線照射後の透過率が低下してしまうことが知られている(非特許文献2参照)。
【0006】
また、亜鉛不純物濃度が数ppmレベルであっても、フッ化カルシウム単結晶のレーザー光に対する二光子吸収が大きくなることも、本発明者らの検討の結果わかった。
【0007】
二光子吸収とは、照射されるレーザーのエネルギー密度の上昇とともに非線形に上昇する吸収特性のことであり、照射レーザーのエネルギー密度(H)に対する吸光度(A)のプロットの傾き(dA/dH)から求めることができる。二光子吸収の大きなフッ化カルシウム単結晶を半導体リソグラフィー装置等の光学部材の硝材に用いると、照射するレーザーが硝材に吸収されやすくなり、照射されるレーザーのエネルギー密度とともに硝材の透過率が低下し、該硝材を透過するレーザー光の強度が弱まる傾向がある。さらに、レーザーエネルギーの吸収量が多くなることで、短期的には、吸収したエネルギーが熱として放出され、熱膨張により光学部材の屈折率や複屈折が変化してレンズ性能が低下したり、透過するレーザー光の偏光度等の質を低下させたりする原因となり、長期的には硝材の劣化が起こり、光学部材の耐久性が低下する傾向がある。
【0008】
上記のとおり、フッ化カルシウム単結晶のレーザー光に対する二光子吸収は、該単結晶中に含有される数ppm程度の亜鉛不純物によって大きくなるため、フッ化カルシウム単結晶を、光学部材用途の硝材に用いるためには、該単結晶中に残存する亜鉛不純物の含有量を極力低減させることが必要である。そして、係る用途に用いるフッ化カルシウム単結晶を製造するためには、該単結晶の製造工程、或いは製造した単結晶の品質管理において、原料のフッ化カルシウム、及び製造された単結晶中の亜鉛不純物濃度を数ppmのオーダーで把握する必要がある。
【0009】
従来、フッ化カルシウム単結晶中に含まれる数ppm以下の微量亜鉛不純物を検出、定量分析する方法としては、結晶試料を粉砕、溶解して、ICP質量分析やICP発光分析等の精密化学分析を行なう方法が挙げられる(特許文献2参照)。しかしながら、このような化学分析はICP質量分析装置の他に、結晶サンプルが汚染しない状態で粉砕、溶解等を行なうための非常にクリーンな試料調整等の前処理および測定のための設備も必要となる。さらに、分析に際しては高度な分析の知識と技能を要し、多大な時間と労力がかかってしまうという課題があり、上記のICP質量分析法を実際のフッ化カルシウム単結晶の製造における工程管理、品質管理に適用することは困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−227293号公報
【特許文献2】特開2002−255687号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】住谷圭二、外4名、「半導体リソグラフィー用CaF2単結晶」、日本結晶成長学会誌、日本結晶成長学会、2006年、Vol.33、No.3、p15〜20
【非特許文献2】大場点、「フッ化カルシウム結晶育成におけるスカベンジング技術」、日本結晶成長学会誌、日本結晶成長学会、2006年、Vol.33、No.3、p10〜14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度をICP質量分析等の精密化学分析を行なうことなく、簡便な方法により決定する該単結晶の評価方法、及び該評価方法を用いた、前記光学部材用途に使用するフッ化カルシウム単結晶硝材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。まず最初に、フッ化カルシウム単結晶の真空紫外吸収スペクトルにおいて、透過率が0%となる吸収端波長が、亜鉛の含有量によって長波長側にシフトすることに着目し、該吸収端波長のシフトによる、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛含有量の評価方法を検討した。しかしながら、一般的な市販の真空紫外分光光度計で透過率スペクトルを測定した場合、上記吸収端が確認できる120nm付近の低波長域では、測定装置の検出器に迷光が入り、あるいは、検出側部材の経時の劣化状態によって安定したスペクトルが得られず、吸収端波長を精度よく測定することが困難であることが判明した。そこで、本発明者らは、フッ化カルシウム単結晶の真空紫外吸収スペクトルの吸収端に起因して透過率が低下する領域の波長が、不純物亜鉛の濃度に比例して長波長側にシフトする点に着目し、さらに検討を行った。その結果、種々の亜鉛不純物濃度のフッ化カルシウム単結晶の真空紫外吸収スペクトルを測定し、該透過スペクトルの吸収波長が120〜200nmの範囲において、特定の透過率となる吸収波長を読み取り、該吸収波長と亜鉛不純物濃度との間に高い相関があることを見出した。そして、フッ化カルシウム単結晶の真空紫外吸収スペクトルを測定し、該透過スペクトルの吸収波長が120〜200nmの範囲において、特定の透過率となる吸収波長を読み取り、読み取られた吸収波長から、微量の亜鉛不純物濃度を精度よく評価できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決定する、フッ化カルシウム単結晶の評価方法であって、
該フッ化カルシウム単結晶の透過スペクトルを測定し、
前記透過スペクトルにおける、亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率となる吸収波長を、該透過スペクトルの吸収波長が120〜200nmの範囲から決定し、該吸収波長の変化により、前記フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決定することを特徴とする、フッ化カルシウム単結晶の評価方法である。
【0015】
上記本発明において、高精度に微量の亜鉛濃度を評価できるという観点から、亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率が、30〜70%の範囲であることが好ましい。
【0016】
さらに本発明では、上記フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度の評価方法を組み込んだ、200nm以下の波長のレーザー光を用いる半導体リソグラフィー装置の光学系に用いるフッ化カルシウム単結晶からなる光学部材用の硝材を選別し、製造する方法も提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の評価方法によれば、一般的な市販の真空紫外分光光度計を用いた透過スペクトルの測定を行なうのみで、フッ化カルシウム中の亜鉛不純物濃度を精度よく評価することが可能となる。また、本発明の亜鉛不純物濃度の評価方法は、従来のICP質量分析等の精密化学分析法に比べて、複雑な測定試料の前処理操作や、高度な分析技術を要することなく、短時間かつ簡便に亜鉛不純物濃度を測定することができる。さらに、本発明の評価方法は、測定サンプルを破壊することなく評価を行うことが可能であり、評価サンプルの採取数、保管数を大幅に低減させることも可能である。以上より、本発明の評価方法は、半導体リソグラフィー装置の光学系の光学部材に用いるフッ化カルシウム単結晶の評価技術として極めて有用である。
【0018】
さらに、フッ化カルシウム単結晶からなる光学部材用の硝材の製造工程に本発明である評価方法を用いることで、効率良く、品質と信頼性の高い硝材を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】亜鉛不純物濃度の異なる、フッ化カルシウム単結晶サンプル(a)〜(h)の120〜200nmの波長範囲の各透過スペクトルである。
【図2】図1の透過スペクトルにおける、フッ化カルシウム単結晶サンプルの透過率が50%である吸収波長と、ICP質量分析法で測定した亜鉛不純物濃度との相関関係を示すグラフである。
【図3】図1の透過スペクトルにおける、フッ化カルシウム単結晶サンプルの基準透過率を40%、50%、60%とした場合の吸収波長と、ICP質量分析法で測定した亜鉛不純物濃度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の評価方法により、基準透過率を50%として評価したフッ化カルシウム単結晶サンプルの亜鉛不純物濃度と、ArFエキシマレーザーで測定した二光子吸収係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を、一般的な市販の真空紫外分光光度計を用いた透過スペクトルの測定を行なうのみで、決定することが特徴である。
【0021】
図1は、亜鉛不純物濃度の異なる9種のフッ化カルシウム単結晶サンプルの120〜200nmの波長範囲の各透過スペクトルを示したものである。図1において、サンプル(a)の亜鉛不純物濃度が一番高く、以下亜鉛不純物濃度が高いサンプルから、アルファベット順に並べたものである。この透過スペクトルからも明らかな様に、フッ化カルシウム単結晶単結晶の真空紫外吸収スペクトルの吸収端に起因して透過率が低下する領域の波長は、該単結晶中の亜鉛不純物濃度が高い程、長波長側にシフトしていることがわかる。
【0022】
そこで、図1の透過スペクトルにおいて、フッ化カルシウム単結晶サンプルの透過率が50%である吸収波長と、ICP質量分析法で測定した亜鉛不純物濃度とを比較すると、該単結晶サンプル中の亜鉛不純物濃度と、透過率が50%である吸収波長とは、非常に高い相関を示すことが判る(図2参照)。
【0023】
このように、上記透過スペクトルの吸収波長が120〜200nmの範囲から亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率を定め、該透過率となる吸収波長を読み取ることで、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を、簡便に、かつ高精度に決定することが可能である。本発明の評価方法は、特にppmオーダーでの管理が必要な、真空紫外光透過材料用のフッ化カルシウム単結晶の評価に適用することが好ましい。
【0024】
本発明において真空紫外光透過材料とは、波長が200nm以下の紫外線を透過させる材料を指し、代表的にはArFエキシマレーザーやFエキシマレーザーを光源に用いる半導体リソグラフィーの露光装置や光源装置等の光学部材が挙げられる。このような光学部材として具体的には、各種のレンズ、プリズム、ミラー、窓材等が挙げられる。
【0025】
また真空紫外光の光源としては、上記したエキシマレーザー以外にも、Xeランプ、Krランプ等も実用化されており、これらのランプの窓材等の評価に用いることもできる。
【0026】
以下、本発明のフッ化カルシウム単結晶の評価方法を詳しく説明する。
【0027】
<フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度と透過率の相関データの作成>
本発明の評価方法では、フッ化カルシウム単結晶サンプルの基準透過率における吸収波長を、前記図2に示されるような、機器分析法による亜鉛不純物濃度と、真空紫外分光光度計で測定した透過スペクトルより読み取られる、基準透過率における吸収波長との相関データと対比して、該フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決定する。
【0028】
なお、上記相関データは、種々の機器分析法によって亜鉛不純物濃度が予めわかっているフッ化カルシウム単結晶について、前述した方法で真空紫外分光光度計の測定を行い、特定の透過率における吸収波長を求めることで得ることができる。亜鉛不純物濃度を測定する方法としては、ICP質量分析、ICP発光分析、原子吸光分析、二次イオン質量分析、グロー放電質量分析、蛍光X線分析等の公知の機器分析法が使用できる。中でもICP質量分析が、検出感度が高く、1ppm以下の微量の亜鉛不純物濃度まで精度よく測定できるために、機器分析法として特に好ましい。
【0029】
また、上記相関データを用いて、サンプルのフッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決定するに際しては、相関データのグラフから直接読み取る方法でもよく、また、相関データから近似式を求めておいて、この近似式から算出しても何ら構わない。
【0030】
<評価に用いるサンプル>
本発明の評価に用いるサンプルの厚さ(透過スペクトル測定方向の長さ:光路長)は特に制限されず、サンプルの加工装置や、真空紫外分光光度計に応じて適宜決定すれば良い。しかしながら、サンプルがあまり薄過ぎると測定する透過スペクトルのノイズが大きくなり、ベースラインが不安定になったりして測定精度が低下する傾向にある。逆に、サンプルが厚過ぎるとサンプル加工が困難になり、測定面の平行度や直角度、表面粗さ等の加工精度が悪くなり、測定精度が低下する傾向にある。よってサンプル厚さと加工精度の兼ね合いが重要であり、十分なサンプル加工精度を確保できる厚さで測定するのが好ましい。従って、サンプルの厚さは1mm〜200mm、より好ましくは5mm〜100mmの範囲とすることが、十分な測定精度、及びサンプル加工精度を確保できる点から好ましい。
【0031】
なお、上記サンプルの厚さが厚くなるほど光の吸収量が大きくなるため、測定したスペクトルの透過率がサンプル厚さとともに変化する。そのため、前記相関データを得るためのサンプルと、実際に亜鉛不純物濃度を評価するサンプルの厚さを同等にすれば、サンプルの厚さによる透過率の変化を考慮に入れずに、フッ化カルシウム単結晶のサンプルの中の亜鉛不純物濃度を決定できるため好ましい。上記のとおり、サンプルの厚さにより測定したスペクトルの透過率が変化するため、亜鉛不純物濃度を精度良く評価するためには、サンプルの加工は可能な限り精密に行うことが好ましい。しかしながら、サンプル厚さの調整を精密に行おうとすればするほど、サンプルの加工に、高度な加工技術を要求し、しかも加工時間が長時間となる傾向にある。従ってサンプル間の厚さの変動は、目的の亜鉛不純物濃度の評価精度に応じて適宜設定すれば良い。通常、サンプル中の亜鉛不純物濃度の評価をppmオーダーで行う場合、サンプル間の厚さの変動は、−20〜+20%の範囲以下、より好ましくは−10〜+10%の範囲以下であれば十分である。
【0032】
また、サンプルの厚さを同等にしない場合には、相関データを得る際に、亜鉛不純物濃度が既知の数種のフッ化カルシウム単結晶から厚さの異なる数種類のサンプルを作製して真空紫外分光光度計測定を行ない、亜鉛不純物濃度とサンプル厚さと測定する特定の透過率における吸収波長との関係の相関データを予め取得しておくことで、任意の厚さのサンプルの亜鉛不純物濃度を評価することもできる。
【0033】
フッ化カルシウム単結晶は、波長200nm以下の波長の光に対しては屈折率が高くなるために、サンプル表面の研磨と洗浄が完全で、すなわち表面粗さや汚染による光損失がまったくない状態で、結晶自体の透過率(内部透過率)が100%であると仮定した場合、表面での多重反射による損失があり、実測の透過率は100%よりも低くなる。例えば、波長193nmでは92.27%(理論透過率)となる。200nm以下では、波長が短くなるほど、フッ化カルシウムの屈折率が高くなるために理論透過率は低下してくる。このように、相関データを得るためのサンプルと厚さの異なるサンプルを使用すると、該特定の透過率における吸収波長を求める操作が煩雑になるため、相関データを得るためのサンプルと、実際に亜鉛不純物濃度を評価するサンプルの厚さを同等にする方法で測定することが好ましい。もちろん、測定した透過スペクトルを、全波長における屈折率により内部透過率に換算し、吸光度のスペクトルに変換することで、サンプル厚さによる規格化が可能となり、任意の厚さのサンプルで、該特定の透過率(あるいは吸光度)における吸収波長を求めてもよい。
【0034】
また、高い測定精度が得られるという観点から、サンプルの測定面、すなわち透過スペクトルを測定する際にビームが入射、及び出射する二面の表面粗さRqは、二乗平均平方根(RMS)値で1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましい。サンプルの測定面の表面粗さは、高精度の光学研磨を施すことにより調整すれば良い。また、測定する2面の平行度は0.1度以下であることが好ましく、さらに0.05度以下であることが好ましい。
【0035】
また、真空紫外分光光度計による透過率測定の際に、サンプル測定面が水分、有機物や無機物等で汚染されていると、これら汚染物による吸収や散乱が測定精度を著しく低下させる傾向にある。従って、そのため、透過率測定の前に、サンプル測定面を洗浄し、該測定面を清浄にしておくことが好ましい。
【0036】
上記サンプル測定面の洗浄方法として具体的には、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の有機洗浄溶剤や純水を用いた拭き取り、超音波洗浄等、水銀ランプ等の紫外線を照射できる装置を用いる紫外線洗浄等が挙げられる。紫外線洗浄により、サンプル測定面に極微量存在する有機汚染物を紫外線で分解、さらに紫外線で発生するオゾンにより効果的に分解除去することができる。上記の洗浄方法は、それぞれ組合せて行うことがより好ましい。また、洗浄後のサンプル測定面の汚染を避けるため、洗浄後は速やかに真空紫外分光光度計による透過率測定を実施することが特に好ましい。
【0037】
<透過スペクトルの測定>
本発明の評価方法において、前記サンプルを真空紫外分光光度計により、透過スペクトルの測定を行う。真空紫外分光光度計としては、200nm以下の波長範囲が測定可能な、一般的な真空紫外分光光度計を用いることができる。波長200nm以下の透過率測定においては、サンプル測定雰囲気に酸素が存在すると、酸素による吸収が大きく測定結果に影響を及ぼすため、分光光度計内のサンプルを保持するサンプル室内雰囲気中の酸素濃度は、2ppm以下特に1ppm以下であることが好ましい。上記サンプル室内雰囲気中の酸素濃度は、200nm以下の光を吸収しない窒素等のガスを流通あるいは密閉することにより、低減させることができる。あるいは、サンプル室内を減圧排気して酸素を低減する方法でもよい。さらには、サンプル室内の減圧排気と窒素等の置換を数回繰り返すことで、酸素濃度を低減させることもより好ましい方法である。
【0038】
<亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率>
前記透過スペクトルにおける、亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率となる吸収波長を、該透過スペクトルの吸収波長が120〜200nmの範囲から読み取る。透過スペクトルの吸収波長が120〜200nmの範囲は、フッ化カルシウムの吸収端に起因して透過率が急激に低下する領域であり、該基準透過率となる吸収波長のシフトから微量の亜鉛不純物濃度を精度よく評価することが可能である。
【0039】
上記基準透過率は、該透過率となる吸収波長が120〜200nmの範囲となるものであれば、特に制限されず、適宜決定することが可能である。
【0040】
基準透過率となる透過率があまり低すぎると、前述のとおり、測定装置の検出器に迷光が入り、あるいは、検出側部材の経時の劣化状態によって安定したスペクトルが得られにくい場合がある。
【0041】
また、基準透過率となる透過率があまり高すぎると、前記評価サンプル中の酸素やその他の不純物や格子欠陥等の量によっては、これらの不純物や格子欠陥等により、透過率が変動する場合がある。
【0042】
従って、高い測定精度で吸収波長を読み取ることが可能であるという観点から、基準透過率としては、透過率が30〜70%、特に好ましくは、45〜60%の範囲で適宜決定することが好ましい。
【0043】
<本発明の評価方法の利用方法>
上記のとおり、本発明の評価方法により、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を、一般的な市販の真空紫外分光光度計を用いた、フッ化カルシウム単結晶の透過スペクトルの測定を行なうのみで、決定することができる。
【0044】
また、本発明の評価方法は、半導体リソグラフィー装置の光学系に用いるフッ化カルシウム単結晶からなる光学部材の硝材を製造する際において、フッ化カルシウム単結晶を得るすべての工程における、該単結晶中の亜鉛不純物濃度の評価方法として用いることができる。上記の工程として具体的には、前述の育成工程により製造されたフッ化カルシウム単結晶の評価、該単結晶中の残留歪を取り除いて複屈折を低減させるためのアニール(熱処理)工程後のフッ化カルシウム単結晶の評価、アニール工程を経たフッ化カルシウム単結晶を各種光学部材へと加工した後の評価等が挙げられる。
【0045】
特に、本発明の評価方法は、波長200nm以下のレーザー光を用いる半導体リソグラフィーの露光装置や光源装置の光学系に用いるフッ化カルシウム単結晶からなる光学部材用の硝材の製造方法に組み入れることにより、最終的な製品の透過率やレーザー耐久性等の二光子吸収が関係する品質を予測しやすくなるため、好ましい。
【0046】
<光学部材用の硝材の製造方法>
一般に、フッ化カルシウム単結晶からなる光学部材の製造は、大まかに分類すると、単結晶のインゴットを育成し、該インゴットから硝材(ブランク)を得、次いで該硝材から各種光学部材へと加工する各工程から構成される。光学部材の種類によって要求される品質(例えば、透過率や吸収特性、レーザー耐久性等)が異なる。硝材中の亜鉛不純物含有量が、上記の品質に影響を及ぼす傾向にあるため、光学部材とする前の段階、すなわち硝材までの段階で本発明の評価方法を適用して単結晶中の亜鉛不純物濃度を評価し、その結果に基づいて該硝材から光学部材を得ることで、効率良く光学部材を製造することが可能である。
【0047】
以下、本発明の評価方法を組み入れた、光学部材用の硝材の製造方法を説明する。
【0048】
<フッ化カルシウム単結晶の育成方法>
本発明の光学部材用の硝材の製造方法において、原料溶融液からフッ化カルシウム単結晶のインゴットを育成する方法は、特に限定されず、公知の融液凝固法を採用することができる。具体的には、チョクラルスキー法、ブリッジマン法、垂直勾配氷結(VGF)法、キロポーラス法等が挙げられる。
【0049】
<評価用サンプルの取得>
前述のとおり、本発明の評価方法は真空紫外分光光度計を用いた測定を含むため、測定面が十分に研磨されたサンプルを準備する必要がある。したがって、単結晶のインゴット自体を本発明の評価方法で直接評価することは困難であり、フッ化カルシウム単結晶のインゴットから硝材を得る際に、該インゴットから硝材と評価用サンプルとを別々に得る必要がある。そこで、上記インゴットから複数のブロックを切り出し、各々のブロックから硝材と評価用サンプルを切り出し、同じブロックから硝材と評価用サンプルを取得する。このように、同じブロックから硝材と評価用サンプルを取得するため、各評価用サンプルの評価結果を、同一のブロックから得た硝材の亜鉛不純物濃度とすることができる。上記評価用サンプルは、同じフッ化カルシウム単結晶ブロックから取得した硝材の極めて近い位置から取得することが好ましい。また、一つのブロックから複数の硝材および/または評価用サンプルを取得してもよい。
【0050】
融液凝固法で製造されたインゴットは円柱状の形状をしている場合が多く、また硝材としても円柱(円盤)状のものが必要とされる場合が多いため、通常は得られたインゴットを輪切りにして複数の円盤状のブロックを得ればよい。より具体的には、切断装置によりインゴットの上端部と下端部を切り離し、さらに直胴部を複数のフッ化カルシウム単結晶ブロックに加工すればよい。フッ化カルシウム単結晶ブロックから硝材および評価用サンプルを得る方法も特に限定されず、公知の切断、研削、研磨等の加工方法を適宜採用すればよい。また、上記硝材の加工を、評価用サンプルの評価と平行して、あるいは、後述する硝材の選別後に最終形状まで加工してもよい。
【0051】
なお、得ようとする光学材料の硝材の大きさが評価用サンプルよりも小さい場合、あるいは、硝材よりも大きな評価用サンプルの準備が可能な場合には、硝材を加工するブロックを評価用サンプルとして亜鉛不純物濃度を評価した後に、硝材に加工することもできる。或いは、加工した硝材が、本発明の評価方法で亜鉛不純物濃度を評価できる大きさ、形状、研磨等の条件を満たしていれば、直接的に硝材の亜鉛不純物濃度を評価してもよい。
【0052】
<硝材を選別する工程>
上記工程で得られた各評価用サンプルを、前述した本発明の評価方法により評価し、評価結果から、該評価用サンプルと同じフッ化カルシウム単結晶ブロックから取得した硝材を光学部材とした際の該光学部材の亜鉛不純物濃度を決定する。
【0053】
同じ半導体リソグラフィーの露光装置や光源装置の光学材料に用いる光学部材であっても、光学部材の種類や照射されるレーザーのエネルギー密度等の違いによって求められる透過率やレーザー耐久性等のレベルは異なるため、上記評価結果に基づいて所望の光学部材として使用できるか否か、あるいは、該硝材をどのような用途向けとすることができるかを判断できる。一般的には、半導体リソグラフィー装置の投影系、照明系、光源系の順に、またレーザーの照射エネルギー密度が高いほど、高いレーザー耐久性が要求される。
【0054】
以上のような工程を経て製造され、目的とする用途に対して必要な透過率やレーザー耐久性を有する(良品)と判断された硝材は、半導体リソグラフィー装置の光学系に用いる光学部材へと最終加工を行なった後でも、亜鉛不純物濃度が管理できており、必要な透過率やレーザー耐久性等の二光子吸収に関係する品質を有すると判断できる。
【0055】
なお、前述したフッ化カルシウム単結晶のブロックから所望の形状を有する硝材を得る操作以外にも、硝材としての最終製品とするまでの間には、必要に応じてアニール(熱処理)を行なって残留歪等を除去する操作を行なったり、あるいは、透過率、レーザー耐久性、複屈折、屈折率均一性、散乱点の有無や個数、濁り等の光学物性の計測を行ったりすることも可能である。
【0056】
<他の評価用サンプルの取得、評価方法>
インゴットから硝材と評価用サンプルを取得する方法の他の方法として、結晶育成の最初に結晶化した側の端部と、最後に結晶化した側の端部を評価用サンプルとする方法も挙げられる。フッ化亜鉛をスカベンジャーとして用いてフッ化カルシウム単結晶の育成を行う場合、育成初期には成長する単結晶の周囲にスカベンジャーが多く存在するため、先に結晶化した部分の方が結晶中に残存する亜鉛不純物濃度が高くなりやすく、時間経過とともに周囲のスカベンジャーが少なくなっていくため、育成後期に結晶化した部分ほど亜鉛不純物濃度が低くなる傾向にある。よって、結晶育成の最初に結晶化した側の端部と、最後に結晶化した側の端部の亜鉛不純物濃度を本発明の方法で評価すれば、インゴットの他の部分の亜鉛不純物濃度は、該両端部と同等もしくはそれらの中間の亜鉛不純物濃度であると見なすことができる。また、インゴット内の亜鉛不純物濃度のおおよその分布についても知ることも可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
なお、フッ化カルシウム単結晶は、フッ化亜鉛をスカベンジャーとして、チョクラルスキー法により製造したものを用いた。
(1)真空紫外分光光度計による該特定の透過率における吸収波長の測定
真空紫外分光光度計の測定用サンプルとして、15mm×15mm×厚さ10mmのフッ化カルシウム単結晶サンプルを9種類準備した。これらサンプルの透過スペクトルを測定する15mm×15mmの2面を、表面粗さRqがRMS値で0.5nm以下、平行度0.03度以下に光学研磨した。
【0059】
次いで、測定用サンプルをアセトン中で2分間超音波洗浄し、乾燥させた後、低圧水銀ランプを光源とする紫外線オゾン洗浄装置(テクノビジョン社製UV−208)を用いて、出力7mW/cmで15分間の紫外線洗浄を行った。
【0060】
上記の洗浄後直ちに、真空紫外分光光度計(分光計器社製KV201)を用いて120〜200nmの波長範囲でフッ化カルシウム単結晶サンプルの透過スペクトルを測定した。フッ化カルシウム単結晶サンプル(a)〜(h)の透過スペクトルを図1に示す。また、120〜200nmの波長範囲で、透過率が50%となる吸収波長を、上記透過スペクトルから読み取った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

(2)ICP質量分析による亜鉛不純物濃度の測定
上記透過スペクトルを測定したフッ化カルシウム単結晶サンプルを粉砕し、粉砕物をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに秤取り、硝酸で加熱分解した後、希硝酸で定容とした。
【0062】
得られた定容液の亜鉛(Zn)を、ICP質量分析装置(アジレントテクノロジー社製:7500cs)を用いて定量分析し、フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛濃度を求めた。前記の前処理操作である定容液の調整から、3回のICP質量分析を行い、結果の平均値を亜鉛不純物濃度の分析結果とした。分析結果を表1に示す。また、前記透過スペクトルから読み取った、フッ化カルシウム単結晶サンプルの透過率が50%となる吸収波長と、ICP質量分析法による亜鉛不純物濃度の分析結果のプロットを図2に示す。
【0063】
フッ化カルシウム単結晶の透過率が50%となる吸収波長と、該単結晶中の亜鉛不純物濃度とは比例関係にあり、上記プロットより求めた関係式は、高い相関関係を示していることがわかる。
(3)ArFエキシマレーザーによる二光子吸収の測定
上記測定用サンプルの隣接した近傍から、別にフッ化カルシウム単結晶サンプルを取り、以下のようにして二光子吸収の測定を行った。
【0064】
二光子吸収の測定用サンプルは、25mm×25mm×厚さ30mmのフッ化カルシウム単結晶サンプルを準備し、これらサンプルの二光子吸収を測定する25mm×25mmの2面を、表面粗さRqがRMS値で0.5nm以下、平行度0.03度以下に光学研磨した。次いで、測定用サンプルをアセトン中で2分間超音波洗浄し、乾燥させた後、低圧水銀ランプを光源とする紫外線オゾン洗浄装置(テクノビジョン社製UV−208)を用いて、出力7mW/cmで15分間の紫外線洗浄を行った。
【0065】
ArFエキシマレーザーの光源装置(ラムダフィジック製:NovalineA2030)を用いて、パルス繰返し周波数500Hzでフッ化カルシウム単結晶サンプルにレーザー光を照射し、サンプルを透過したレーザー光の強度をエネルギー検出器で計測して透過率を求めた。測定した透過率は、サンプル表面での多重反射による損失を含んでいるため、ArFエキシマレーザーの波長193nmにおけるフッ化カルシウムの理論透過率(=内部透過率が100%)である92.27%の値を用いて、内部透過率に換算した。さらに、内部透過率を吸光度に変換し、厚みで除して、厚さ10mm当たりの吸光度(A)を求めた。サンプルに照射するレーザーのエネルギー密度(H)を0〜30mJ/cmの範囲で変化させて、エネルギー密度(H)に対する厚さ10mm当たりの吸光度(A)をプロットし、その一次近似直線の勾配から二光子吸収係数(dA/dH)を求めた。その結果を表1に示す。
【0066】
本発明の評価方法により、透過率が50%の吸収波長から求めたフッ化カルシウム単結晶の亜鉛不純物濃度と、ArFエキシマレーザーに対する二光子吸収係数の関係を図3に示す。フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度が高くなると、二光子吸収係数が大きくなる傾向がある。表1および図3の結果から、例えば、亜鉛不純物濃度が1.37ppmのサンプル(a)は、二光子吸収係数が1.0×10−5以下のものを要求される硝材には使用できないが、1.5×10−5以下であれば使用可能である。このようにして、亜鉛不純物濃度を評価することで、硝材の製造における早い段階の工程で、得られる硝材の品質を予測して選別することが可能となる。
【0067】
ArFエキシマレーザーに対する二光子吸収特性には、亜鉛不純物以外にも、酸素やその他の不純物元素や、またフッ化カルシウム結晶のフッ素とカルシウムの結晶格子におけるフッ素原子、カルシウム原子の格子欠陥も影響する。そのため、単結晶中の亜鉛不純物濃度だけで硝材の二光子吸収特性を一義的に決定することはできないが、半導体リソグラフィー装置の光学系の硝材に用いるような真空紫外光をよく透過するフッ化カルシウム単結晶は、その製造において、酸素やその他の不純物が混入しないように十分管理された方法でしか製造できないために、二光子吸収特性への酸素やその他の不純物に比べて、亜鉛不純物の影響が大きく、表1および図3の結果が示すとおり、亜鉛不純物濃度からおおよその二光子吸収特性を予測することが可能である。
【0068】
また、ArFエキシマレーザーを用いた二光子吸収の測定は、測定に数時間の時間を要し、高度な測定技術が必要で、さらに光源装置に多大なコストがかかる。そのために、半導体リソグラフィー装置の光学系に用いるフッ化カルシウム単結晶からなる光学部材用の硝材の製造工程において、本発明の評価方法を用いて亜鉛不純物濃度を評価して、得られる硝材の品質を予測できることは非常に有用である。すなわち、本発明の製造方法によれば、効率よくフッ化カルシウム単結晶の硝材を製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決定する、フッ化カルシウム単結晶の評価方法であって、
該フッ化カルシウム単結晶の透過スペクトルを測定し、
前記透過スペクトルにおける、亜鉛不純物濃度を評価するための基準透過率となる吸収波長を、該透過スペクトルにおける吸収波長が120〜200nmの範囲から決定し、該吸収波長の変化により、前記フッ化カルシウム単結晶中の亜鉛不純物濃度を決定することを特徴とする、フッ化カルシウム単結晶の評価方法。
【請求項2】
前記基準透過率が、30〜70%の範囲である請求項1記載のフッ化カルシウム単結晶の評価方法。
【請求項3】
200nm以下の波長のレーザー光を用いる半導体リソグラフィー装置の光学系に用いるフッ化カルシウム単結晶からなる光学部材用の硝材を製造する方法であって、
(A)原料溶融液からフッ化カルシウム単結晶のインゴットを育成する工程、
(B)インゴットを加工して、複数のフッ化カルシウム単結晶ブロックを得る工程、
(C)各フッ化カルシウム単結晶ブロックから、各々少なくとも一つの硝材及び評価用サンプルを得る工程、
(D)各評価用サンプルを、請求項1又は2記載の評価方法により評価する工程、
(E)評価用サンプルの評価結果から、該評価用サンプルと同じフッ化カルシウム単結晶ブロックから得た硝材を光学部材とした際の該光学部材の亜鉛不純物濃度を決定し、該硝材を選別する工程、
を有することを特徴とする前記光学部材用の硝材の製造方法。
【請求項4】
200nm以下の波長のレーザー光を用いる半導体リソグラフィー装置の光学系に用いるフッ化カルシウム単結晶からなる光学部材用の硝材を製造する方法であって、
(A)原料溶融液からフッ化カルシウム単結晶のインゴットを育成する工程、
(B)インゴットの最初、および/または、最後に結晶化した端部側から評価用サンプルを得る工程、
(C)該評価用サンプルを、請求項1又は2記載の評価方法により評価する工程、
(D)評価用サンプルの評価結果から、該インゴットを加工して得た硝材を光学部材とした際の該光学部材の亜鉛不純物濃度を決定し、該硝材を選別する工程、及び
(E)評価用サンプルを得たインゴットの残部から硝材を得る工程、
を有することを特徴とする前記光学部材用の硝材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−220941(P2011−220941A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92544(P2010−92544)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】