説明

フッ素樹脂粒子用分散剤、フッ素樹脂粒子分散液及びフッ素樹脂塗料

【課題】フッ素樹脂粒子、特にPTFE粒子を有機溶剤等の粘度の低い液中で安定に分散させることが可能なフッ素樹脂粒子用分散剤を提供する。また、当該分散剤を用いたフッ素樹脂粒子分散液及び当該分散液を配合したフッ素樹脂塗料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフッ素化合物と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との共重合体からなることを特徴とするフッ素樹脂粒子用分散剤。
【化1】


(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基等を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、A及びAは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜3のアルキレン基又は直接結合を表し、Aは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又はスルホンアミドを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)等のフッ素樹脂の粒子を有機溶剤等の液中で分散させる際に用いる分散安定性を付与する分散剤に関する。また、当該分散剤を用いたフッ素樹脂粒子分散液及び当該分散液を配合したフッ素樹脂塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素樹脂粒子、特にPTFE粒子を有機溶剤等の粘度の低い液中で安定に分散させることは、フッ素樹脂粒子の表面エネルギーの低さと比重の大きさから、非常に困難であった。この課題を解決するため、これまでは、炭素原子数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物を用いた分散剤が用いられてきた。しかしながら、近年、炭素原子数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物は分解することにより、環境及び生体への蓄積性が高いパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)又はパーフルオロオクタン酸(PFOA)を生成しうることが明らかになり、市場では、構造上これらを生成し得ない炭素原子数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物のみを用いた製品が求められている。
【0003】
前記炭素原子数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物の例としては、炭素原子数が4のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系脂肪族系ポリマーエステルが挙げられる(例えば、特許文献1の実施例を参照。)。このフッ素系脂肪族系ポリマーエステルは、パーフルオロアルキル基を1分子中に1つしか有さない単量体をフッ素系脂肪族系ポリマーエステルの原料として用いているため、分散安定性が不十分である問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−213062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、フッ素樹脂粒子、特にPTFE粒子を有機溶剤等の粘度の低い液中で安定に分散させることが可能なフッ素樹脂粒子用分散剤を提供することである。また、当該分散剤を用いたフッ素樹脂粒子分散液及び当該分散液を配合したフッ素樹脂塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、1分子中にパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基が酸素原子を介して連結されている基を2つ有する単量体と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との共重合体を、フッ素樹脂粒子用分散剤として用いると、分散安定性に優れたフッ素樹脂粒子分散液が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるフッ素化合物と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との共重合体からなることを特徴とするフッ素樹脂粒子用分散剤を提供するものである。
【0008】
【化1】

(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基が酸素原子を介して連結されている炭素原子数の総数が1〜20のパーフルオロアルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、A及びAは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜3のアルキレン基又は直接結合を表し、Aは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は下記一般式(2)で表されるスルホンアミドを表す。)
【0009】
【化2】

(一般式(2)中のRは、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【0010】
また、当該分散剤を用いたフッ素樹脂粒子分散液及び当該分散液を配合したフッ素樹脂塗料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフッ素粒子用分散剤は、環境及び生体への蓄積性が高いパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)又はパーフルオロオクタン酸(PFOA)を生成しうる炭素原子数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物を有しておらず、環境及び生体への影響が低く、安全な製品である。また、本発明のフッ素粒子用分散剤を用いることで、有機溶剤等の液中でフッ素樹脂粒子を安定して分散することができるので、経時的にフッ素粒子の沈降等を生じない保存安定性に優れたフッ素樹脂分散液を得ることができる。さらに、このフッ素樹脂分散液を用いると保存安定性に優れたフッ素樹脂塗料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる一般式(1)で表されるフッ素化合物は、例えば、下記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物と、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0013】
【化3】

(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基が酸素原子を介して連結されている炭素原子数の総数が1〜20のパーフルオロアルキル基を表し、A及びAは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜3のアルキレン基又は直接結合を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は下記一般式(2)で表されるスルホンアミドを表す。)
【0014】
【化4】

(一般式(2)中のRは、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【0015】
なお、本発明において、A又はAが「直接結合」であるとは、A又はAが他の原子を介さず、RとX又はRとXが直接結合していることを意味する。これは、一般式(3)だけではなく、一般式(1)においても同様である。
【0016】
前記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0017】
前記一般式(3)中のR−A−X−又はR−A−X−の具体例としては、CFCHO−、CCHO−、CCHO−、CCHO−、C11CHO−、C13CHO−、CCHCHO−、C13CHCHO−、CCHCHS−、C13CHCHS−、CFSON(CH)−、CFSON(C)−、CSON(C)−、CSON(C)−、COCF(CF)CHO−、COCF(CF)CFOCF(CF)CHO−、COCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)CHO−、COCF(CF)CHCHO−、COCF(CF)CFOCF(CF)CHCHO−、COCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)CHCHO−、COCF(CF)CHCHS−、COCF(CF)CFOCF(CF)CHCHS−、COCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)CHCHS−等が挙げられる。また、前記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物のより具体的な例として、下記式(3)−1〜(3)−36で表わされる化合物が挙げられる。
【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
前記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平1−193236号公報、特開平9−67334号公報、特開2002−3428号公報等に記載の方法により製造することができる。
【0023】
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいう。
【0024】
【化9】

(一般式(4)中のRは、水素原子又はメチル基を表し、Aは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表す。)
【0025】
前記一般式(4)中のAは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表すが、具体的には、エチレン基(−CHCH−)、プロピレン基(−CHCHCH−)、又は分岐したプロピレン基(−CHCH(CH)−、−CH(CH)CH−)が挙げられる。
【0026】
さらに、前記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式(4)−1〜8で表わされる化合物が挙げられる。
【0027】
【化10】

【0028】
上記の化合物の中でも、前記一般式(4)中のAがエチレン基である式(4)−1で表される2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、式(4)−4で表される2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0029】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物の製造において、前記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物と、前記一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応させる際には、前記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物1モルに対して、前記一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを、0.80〜1.20モルになるように仕込むのが好ましく、より好ましくは0.98〜1.00モルとなるように仕込むのがよい。また、この反応(ウレタン化反応)においては、前記一般式(3)で表される水酸基を有するフッ素化合物の2級水酸基と前記一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの末端イソシアネート基の反応を促進させるために、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類;ジブチルスズジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート等のジラウリレートを触媒として用いることができる。触媒の添加量は、反応混合物全体に対して0.001〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.1質量%である。反応時間は1〜10時間が好ましい。また反応温度は30〜120℃が好ましく、より好ましくは30〜100℃である。
【0030】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物の製造において、反応はいずれも無溶剤あるいは、イソシアネート基に不活性なアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の溶剤を反応溶剤として用いることができる。
【0031】
上記の合成により得られる前記一般式(1)で表されるフッ素化合物の具体例としては、例えば、下記式(1)−1〜(1)−54で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【0036】
【化15】

【0037】
【化16】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
これらのフッ素化合物の中でも、前記一般式(1)中のAがエチレン基(−CHCH−)であるもの、例えば、前記式(1)−1、(1)−2、(1)−6、(1)−7、(1)−8、(1)−12、(1)−13、(1)−14、(1)−15、(1)−19、(1)−22、(1)−23、(1)−27、(1)−28、(1)−29、(1)−33、(1)−34、(1)−35、(1)−39、(1)−40、(1)−41、(1)−44、(1)−46、(1)−47、(1)−48、(1)−49、(1)−50、(1)−51等の構造を有する化合物が好ましい。
【0041】
本発明のフッ素樹脂粒子用分散剤は、前記一般式(1)で表されるフッ素化合物及びポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分とした共重合体である。このポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体分子中にエチレン性不飽和基とポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物であれば特に制限はない。エチレン性不飽和基としては、原料の入手性、重合反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が適している。
【0042】
前記ポリオキシアルキレン鎖は(OR)xで表されるものを挙げることができ、Rは炭素原子数2〜4のアルキレン鎖であり、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCHCHCH−、−CH(CH)CH(CH)−、−CH(CHCH)CH−〔エチルエチレン〕であることが好ましい。xは正の整数であり、好ましくは2〜50の整数であり、さらに好ましくは2〜30の整数である。前記のポリオキシアルキレン鎖中のオキシアルキレン単位はポリ(オキシプロピレン)におけるように同一のオキシアルキレン単位のみで構成されてもよく、また、オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位とが連結したもののように、異なる2種以上のオキシアルキレン単位が規則的に連結したブロック共重合体であっても、不規則に連結したランダム共重合体であってもよい。
【0043】
ポリオキシアルキレン鎖の末端に結合する原子又は基は、水素原子であっても他の任意の基であっても良いが、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20)、アリル基(好ましくは炭素原子数1〜20)、アリール基(例えば、炭素原子数6〜10)であることが好ましい。アリール基は、アルキル基(例えば、炭素原子数1〜10)、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、ポリオキシアルキレン鎖は1つ又はそれ以上の連鎖結合(例えば、−CONH−Ph−NHCO−、−S−等;Phはフェニレン基を表す。)で連結されていてもよい。さらに、分岐鎖状のオキシアルキレン単位を供するため、連鎖結合部位に3又はそれ以上の原子価を有することもできる。
【0044】
ポリオキシアルキレン鎖部分の分子量としては、連鎖結合部を含め150〜3,000であることが好ましい。また、前記ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、下記一般式(5)で表される単量体が挙げられる。
【0045】
【化19】

(一般式(5)中のX’は、酸素原子又は−NR−(Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6〜24のアラルキル基である。)を表し、Y’は置換基を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン鎖を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6〜24のアラルキル基を表し、mは2〜100の整数を表す。)
【0046】
前記一般式(5)中の各基における置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜12のアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜12のアリール基)、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、前記一般式(5)中のY’としては、炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐状のアルキレン鎖であることが好ましく、mとしては、2〜50であることが好ましく、特に、3〜30の整数であることが好ましい。
【0047】
前記ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体としては、ポリオキシアルキレンアクリレート、ポリオキシアルキレンメタクリレート等が挙げられる。これらは、ヒドロキシポリ(オキシアルキレン)と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド、無水アクリル酸、無水メタクリル酸等とを反応させることによって製造することができる。
【0048】
前記ヒドロキシポリ(オキシアルキレン)の市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製の「アデカプルロニック」、グリコ・プロダクス社製の「カルボワックス」、ローム・アンド・ハース社製の「トリトン」、第一工業製薬株式会社製の「PEG」等が挙げられる。また、これらのヒドロキシポリ(オキシアルキレン)を用いて、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート等を製造して用いることもできる。
【0049】
一方、市販品の単量体としては、例えば、日油株式会社製の水酸基末端ポリ(オキシアルキレン)のモノ(メタ)アクリレートとして、ブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500B等が挙げられる。
【0050】
また、日油株式会社製のアルキル基末端ポリ(オキシアルキレン)のモノ(メタ)アクリレートとして、ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550等が挙げられる。
【0051】
さらに、共栄社化学株式会社製のライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EA等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0052】
また、前記一般式(1)で表されるフッ素化合物及び前記ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体以外の単量体を共重合体の原料として併用してもよい。また、この単量体としては、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物及び前記ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体以外の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等が挙げられる。
【0054】
より具体的には、アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0055】
アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等、ビニルエステル類:ビニルビチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等、その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレン等も挙げられる。
【0056】
前記共重合体を合成する際に、用いる単量体類の使用割合としては、特に限定されるものではないが、分散性能に優れる点から、単量体類100質量部中、前記一般式(1)で表されるフッ素化合物が5〜90質量部含まれていることが好ましく、特に10〜80質量部含まれていることが好ましく、10〜70質量部含まれていることが最も好ましい。また、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体が10〜95質量部含まれることが好ましく、特に15〜80質量部含まれていることが好ましい。
【0057】
また、前記共重合体の重量平均分子量としては、2,000〜150,000の範囲であることが好ましく、3,000〜100,000の範囲であることがより好ましく、4,000〜80,000の範囲であることが特に好ましい。共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれの共重合体でもよいが、好ましくは、ランダム共重合体である。なお、前記共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーショングラフによるもので、その測定条件は、実施例に記載する。
【0058】
前記共重合体は、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等により製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。例えば、前記一般式(1)で表されるフッ素化合物とポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との混合物を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。用いる単量体の重合性に応じ、反応容器に単量体類と開始剤とを滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成の共重合体を得るために有効である。
【0059】
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)等の金属キレート化合物、リビングラジカル重合を引き起こす遷移金属触媒等が挙げられる。さらに必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いることができる。
【0060】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも行うことができるが、作業性の点から溶剤存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0061】
本発明のフッ素樹脂粒子用分散剤を用いることで、フッ素樹脂粒子の沈降を抑制して、保存安定性に優れた本発明のフッ素樹脂粒子分散液を得ることができる。フッ素樹脂粒子分散液に用いるフッ素樹脂粒子としては、例えば、四フッ化エチレン(以下、「TFE」という。)の重合体であるPTFE、TFEと共重合可能なフッ素原子を有する単量体との共重合体(以下、「変性PTFE」という。)等が挙げられる。
【0062】
前記TFEと共重合可能なフッ素原子を有する単量体としては、例えば、炭素原子数3以上、好ましくは炭素原子数3〜6のパーフルオロアルケン、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキルビニルエーテルが挙げられる。パーフルオロアルケンとしては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等が挙げられる。また、パーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)等が挙げられる。
【0063】
前記TFEと共重合可能なフッ素原子を有する単量体の中でも、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)及びパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が好ましく、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)がより好ましい。また、フッ素樹脂粒子の粒径としては、0.01μm〜5μmの範囲のものを用いることができる。
【0064】
本発明のフッ素樹脂粒子分散液を調製する際の本発明のフッ素樹脂粒子用分散剤の使用量は、フッ素樹脂粒子100質量部に対して、0.5〜40質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。
【0065】
本発明のフッ素樹脂粒子分散液を調製する際に分散媒体としては、水のほか、有機溶剤として、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のエーテル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、パーフルオロメタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0066】
本発明のフッ素樹脂粒子分散液の調製は、前記フッ素樹脂粒子、分散媒体及び本発明のフッ素樹脂粒子用分散剤を混合後、分散撹拌機、ペイントシェイカー、ボールミル、ビーズミル、各種ミキサー等の装置を用いて、分散することにより行うことができる。
【0067】
また、有機溶剤を分散媒体としたフッ素樹脂粒子分散液は、フッ素樹脂粒子を水に分散したフッ素樹脂粒子分散水性組成物の市販品(例えば、3M社製「ダイニオンPFA6900N」等)に、有機溶剤である分散媒体に本発明のフッ素樹脂粒子用分散剤を溶解したものを加えた後、水から有機溶剤に置換することによっても調製することができる。
【0068】
本発明のフッ素樹脂粒子分散液は、そのままフッ素樹脂塗料として用いることができるが、このフッ素樹脂粒子分散液に、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、フタロシアニンブルー等の有機又は無機の着色剤;炭酸カルシウム、シリカ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、ガラス粉等の無機充填剤;老化防止剤、防腐剤、防軟剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤などを添加混合して、フッ素樹脂塗料として用いることもできる。
【0069】
本発明のフッ素樹脂塗料は、必要に応じて、上記のフッ素樹脂粒子分散液を調製する際に用いる分散媒体として例示した有機溶媒等を用いて希釈し、粘度を調節して塗工適性を付与できる。また、本発明のフッ素樹脂塗料の塗工方法としては、ディピング塗工、スプレー塗工、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター等の方法が挙げられる。
【0070】
また、本発明のフッ素樹脂塗料が好適に適用できる基材としては、例えば、アルミニウム板、亜鉛板、鉄板、ステンレス鋼板等の金属板;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ウレタン樹脂、SBR等の熱可塑性樹脂の成形品;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂の成形品;ガラス、セラミック、スレート板、岩石、硅カル板、鉱石等の無機材料などの基材を挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0072】
(合成例1)
〔式(1)−13で表されるフッ素化合物の合成〕
メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)100gに、式(3)−8で表される化合物78.4g(0.1mol)、式(4)−4で表される化合物(昭和電工株式会社製「カレンズMOI」)15.5g(0.1mol)、メトキノン0.05g及びオクチル酸スズ0.05gを加え、80℃で4時間反応した。減圧下MIBKを留去し、目的物である式(1)−13で表される化合物93.9g(0.1mol)を得た。
【0073】
(合成例2)
〔式(1)−8で表されるフッ素化合物の合成〕
MIBK100gに、式(1)−8で表される化合物58.4g(0.1mol)、式(4)−4で表される化合物(昭和電工株式会社製「カレンズMOI」)15.5g(0.1mol)、メトキノン0.05g及びオクチル酸スズ0.05gを加え、80℃で4時間反応した。減圧下MIBKを留去し、目的物73.9g(0.1mol)を得た。
【0074】
(実施例1)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(1)の合成〕
合成例1で得られた式(1)−13で表されるフッ素化合物36.7質量部及びヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)63.3質量部をMIBK133.3質量部に溶解した後、重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」)5質量部を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で、105℃のMIBK100質量部に3時間かけて滴下し、さらに9時間重合反応を行い、フッ素樹脂粒子用分散剤(1)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をゲルパーミエーショングラフ(以下、「GPC」という。)により分析した結果、重量平均分子量は、6,900であった。
【0075】
[重量平均分子量の測定方法]
GPCによる重量平均分子量は、下記の条件により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
装置:東ソー株式会社製「HLC8220システム」
分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgelSuperH−RC」を2本、東ソー株式会社製「TSKgelGMHHR−N」を4本使用。
カラム温度:40℃
移動層:和光純薬工業株式会社製テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0076】
(実施例2)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(2)の合成〕
合成例1で得られた式(1)−13で表されるフッ素化合物36.7質量部及びヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)63.3質量部をMIBK133.3質量部に溶解した後、重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」)5質量部を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で、95℃のMIBK100質量部に4時間かけて滴下し、さらに8時間重合反応を行い、フッ素樹脂粒子用分散剤(2)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、15,600であった。
【0077】
(実施例3)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(3)の合成〕
合成例1で得られた式(1)−13で表されるフッ素化合物61.2質量部及びヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)38.8質量部をMIBK133.3質量部に溶解した後、重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」)5質量部を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で、105℃のMIBK100質量部に3時間かけて滴下し、さらに9時間重合反応を行い、フッ素樹脂粒子用分散剤(3)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、4,600であった。
【0078】
(実施例4)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(4)の合成〕
合成例1で得られた式(1)−13で表されるフッ素化合物61.2質量部及びヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)38.8質量部をMIBK133.3質量部に溶解した後、重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」)5質量部を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で、95℃のMIBK100質量部に4時間かけて滴下し、さらに8時間重合反応を行い、フッ素樹脂粒子用分散剤(4)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、14,900であった。
【0079】
(実施例5)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(5)の合成〕
合成例2で得られた式(1)−8で表されるフッ素化合物58.8質量部及びヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)41.2質量部をMIBK133.3質量部に溶解した後、重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」)5質量部を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で、105℃のMIBK100質量部に3時間かけて滴下し、さらに9時間重合反応を行った。その後、MIBKを減圧留去し、共重合体であるフッ素樹脂粒子用分散剤(5)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、7,600であった。
【0080】
(実施例6)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(6)の合成〕
合成例1で得られた式(1)−13で表されるフッ素化合物43.0質量部及びヒドロキシポリ(オキシエチレン)のモノメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステル M−230G」)57.0質量部をMIBK133.3質量部に溶解した後、重合開始剤(和光純薬工業株式会社製の2,2’−アゾビス(イソ酪酸ジメチル))5質量部を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で、80℃のMIBK100質量部に4時間かけて滴下し、さらに8時間重合反応を行った。その後、MIBKを減圧留去し、共重合体であるフッ素樹脂粒子用分散剤(6)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、9,700であった。
【0081】
(比較例1)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(7)の合成〕
実施例1で用いた式(1)−13で表されるフッ素化合物36.7質量部を下記式(6)−1で表されるフッ素化合物31.7質量部に代え、ヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)の使用量を63.3質量部から68.3質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、フッ素樹脂粒子用分散剤(7)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、7,200であった。
【0082】
【化20】

【0083】
(比較例2)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(8)の合成〕
実施例2で用いた式(1)−13で表されるフッ素化合物36.7質量部を前記式(6)−1で表されるフッ素化合物31.7質量部に代え、ヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)の使用量を63.3質量部から68.3質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、フッ素樹脂粒子用分散剤(8)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、11,900であった。
【0084】
(比較例3)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(9)の合成〕
実施例3で用いた式(1)−13で表されるフッ素化合物61.2質量部を前記式(6)−1で表されるフッ素化合物52.8質量部に代え、ヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)の使用量を38.8質量部から47.2質量部に変更した以外は実施例3と同様にして、フッ素樹脂粒子用分散剤(9)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、11,900であった。
【0085】
(比較例4)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(10)の合成〕
実施例4で用いた式(1)−13で表されるフッ素化合物61.2質量部を前記式(6)−1で表されるフッ素化合物52.8質量部に代え、ヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)の使用量を38.8質量部から47.2質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、フッ素樹脂粒子用分散剤(10)(共重合体30質量%のMIBK溶液)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、14,900であった。
【0086】
(比較例5)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(11)の合成〕
実施例5で用いた式(1)−8で表されるフッ素化合物58.8質量部を下記式(6)−2で表されるフッ素化合物34.6質量部に代え、ヒドロキシポリ(オキシプロピレン)のモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPP−1000」)の使用量を41.2質量部から65.4質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、共重合体であるフッ素樹脂粒子用分散剤(11)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、4,200であった。
【0087】
【化21】

【0088】
(比較例6)
〔フッ素樹脂粒子用分散剤(12)の合成〕
実施例6で用いた式(1)−13で表されるフッ素化合物43.0質量部を前記式(6)−1で表されるフッ素化合物37.0質量部に代え、ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のモノメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステル M−230G」)の使用量を57.0質量部から63.0質量部に変更した以外は実施例6と同様にして、共重合体であるフッ素樹脂粒子用分散剤(12)を得た。この共重合体をGPCにより分析した結果、重量平均分子量は、7,500であった。
【0089】
[フッ素樹脂粒子分散液の調製]
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られたフッ素樹脂粒子用分散剤(1)〜(12)を用いて、下記の方法でフッ素樹脂粒子用分散剤を調製した。
【0090】
(実施例7〜12及び比較例7〜12)
フッ素樹脂粒子(PTFE微粉末(平均粒子径1〜2μm)、シャムロック社製「SST−1MG」)30質量部、フッ素樹脂粒子用分散剤のMIBK溶液(共重合体30質量%)5.0質量部(共重合体として1.5質量部)及びブチルセロソルブ65.0質量部をガラス製容器に入れ、自転・公転真空ミキサー(株式会社シンキー製「ARE−250」)を用いて2000回転で2分間処理し、フッ素樹脂粒子分散液を得た。なお、フッ素樹脂粒子用分散剤がMIBK溶液でない場合は、フッ素樹脂粒子用分散剤1.5質量部とし、ブチルセロソルブ68.5質量部とした。
【0091】
(実施例13〜17及び比較例13)
フッ素樹脂粒子(PTFE微粉末(平均粒子径1〜2μm)、シャムロック社製「SST−1MG」)30質量部、フッ素樹脂粒子用分散剤(4)のMIBK溶液(共重合体30質量%)を0.5質量部、1.0質量部、2.0質量部、3.0質量部、4.0質量部(共重合体として0.15質量部、0.3質量部、0.6質量部、0.9質量部、1.2質量部)及びブチルセロソルブを各成分の合計が100質量部となるようにガラス製容器に入れ、自転・公転真空ミキサー(株式会社シンキー製「ARE−250」)を用いて2000回転で2分間処理し、フッ素樹脂粒子分散液を得た。また、フッ素樹脂粒子用分散剤(4)を配合しない例として、フッ素樹脂粒子用分散剤(4)を配合せずに、同様にしてフッ素樹脂粒子分散液を得た(比較例13)。
【0092】
[フッ素樹脂粒子用分散剤の分散安定性の評価]
上記で得られたフッ素樹脂粒子分散液の分散安定性を、目視にて観察し、下記の基準で評価した。なお、評価は、フッ素樹脂粒子用分散剤を調製した後、室温で1時間静置後と1日静置後に行った。
4:PTFEが沈降しないもの。
3:PTFEがわずかに沈降しているもの。
2:PTFEが沈降しているもの。
1:ハードケーキ(沈降して再分散できないもの)を生成しているもの。
【0093】
実施例1〜6及び比較例1〜6で合成したフッ素樹脂粒子用分散剤(1)〜(12)の単量体の組成を表1及び2に示す。また、実施例7〜17及び比較例7〜13で調製したフッ素樹脂粒子用分散剤の組成及びこの評価結果を表3〜5に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
上記の表3及び5の結果から、1分子中にパーフルオロアルキル基を2つ有する単量体と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との共重合体からなる本発明のフッ素樹脂粒子用分散剤は、フッ素樹脂粒子の分散液に用いた場合、フッ素樹脂粒子の沈降を大幅に抑制し、分散安定性に優れることが分かった。また、フッ素樹脂粒子用分散剤(4)は、わずかな配合量でも優れた分散安定性を有することが分かった。
【0100】
一方、上記の表4の結果から、1分子中にパーフルオロアルキル基を1つしか有さない単量体と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との共重合体からなる比較例1〜6のフッ素樹脂粒子用分散剤は、フッ素樹脂粒子の分散液に用いた場合、フッ素樹脂粒子の沈降を十分に抑制することができず、分散安定性が不十分であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフッ素化合物と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体との共重合体からなることを特徴とするフッ素樹脂粒子用分散剤。
【化1】

(一般式(1)中のR及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基が酸素原子を介して連結されている炭素原子数の総数が1〜20のパーフルオロアルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、A及びAは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜3のアルキレン基又は直接結合を表し、Aは、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は下記一般式(2)で表されるスルホンアミドを表す。)
【化2】

(一般式(2)中のRは、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR及びRが炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、かつA及びAがともにエチレン基である請求項1記載のフッ素樹脂粒子用分散剤。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR及びRが同一の炭素原子数4又は6のパーフルオロアルキル基であり、かつX及びXがともに酸素原子又は硫黄原子である請求項2記載のフッ素樹脂粒子用分散剤。
【請求項4】
前記一般式(1)中のR及びRが炭素原子数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、A及びAがともに直接結合であり、かつX及びXがともに前記一般式(2)で表されるスルホンアミドである請求項1記載のフッ素樹脂粒子用分散剤。
【請求項5】
前記一般式(1)中のRが炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、Aがエチレン基であり、Xが酸素原子又は硫黄原子であり、Rが炭素原子数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、Aが直接結合であり、かつXが前記一般式(2)で表されるスルホンアミドである請求項1記載のフッ素樹脂粒子用分散剤。
【請求項6】
前記一般式(1)中のAがエチレン基である請求項1〜5のいずれか1項記載のフッ素樹脂粒子用分散剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のフッ素粒子用分散剤を用いて、フッ素樹脂粒子を有機溶剤又は水中で分散させたことを特徴とするフッ素樹脂粒子分散液。
【請求項8】
請求項7記載のフッ素樹脂粒子分散液を配合したことを特徴とするフッ素樹脂塗料。

【公開番号】特開2010−90338(P2010−90338A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264131(P2008−264131)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】