説明

フッ素置換による有機化合物の合成

【課題】本発明は、新規な機能性有機化合物合成を志向して、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上のフッ素原子を選択的に有機基で置換する方法を提供する。
【解決手段】芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物に、(I)アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を反応させて、或いは(II)有機アルミニウム化合物を反応させて、フッ素原子を該有機基で置換して、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に該有機基を有する化合物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機フッ素化合物を原料として用いた有機化合物の新規合成方法に関する。さらに詳しくは、有機フッ素化合物中の特定の炭素−フッ素結合を選択的に置換して、新たな炭素−炭素結合を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化合物中の炭素−フッ素結合は炭素−水素結合より結合エネルギーが高く、化学的に安定なことが知られている。
【0003】
しかしながら、炭素−フッ素結合を選択的に切断し、フッ素原子を足場として他の基に置換できるならば、既存法では得ることが出来ない新たな多置換有機化合物の合成が実現できる。
【0004】
ところで、ベンジル位に3級ないしは4級炭素を有する化合物は、一般に以下の逐次合成法によって製造することが知られている。
【0005】
例えば、非特許文献1〜3には、電子豊富な置換基を有するベンゼン誘導体へのフリーデルクラフツ反応を通じてポリフェニルメタンを合成する方法が記載されている。ここから、さらにベンゼン環のパラ位の修飾およびカップリング反応が可能である。しかし、目的物までに行う反応数が多いこと、およびポリフェニルメタンの全てのフェニル基の特定の箇所に置換基を導入することが困難であることにより、本質的に低収率で生成物の分離精製に手間取る方法である。
【0006】
そのため、適当に置換基を有した芳香環同士を最後に結合させるコンバージェント法が構築できれば、生成物の多様性および選択性において大きな利点を有する。しかしながらこれまでコンバージェント法によるポリフェニルメタンの合成方法は知られていない。
【0007】
ポリフェニルメタン誘導体は、有機半導体としての機能が期待されている。ジフェニルメタン類は電子写真用感光体(特許文献1〜7等)として、またテトラアリールメタン誘導体は有機ELにおける発光素子用の材料として有望視されている(特許文献8〜11等)。
【0008】
そのため、CF基等の多フッ素置換基に含まれるC−F結合を効率良く置換できる反応が開発出来れば、これら多置換メタン誘導体の簡便な合成法と成り得る。
【0009】
しかしながら、有機フッ素化合物はC−F結合エネルギーが高く不活性なため、C−F結合の置換反応例は少なく、特にトリフルオロメチル基を始めとしたペルフルオロアルキル基の結合切断例は極めて少ない。
【0010】
機能性有機材料を志向した場合には、ベンジル位のフッ素原子を置換してアルキル化またはアリール化する反応の開発が必須であるが、これに関しては、非特許文献4〜6に、強い電子供与性基であるアミノ基をベンジル位のオルト位又はパラ位に有する芳香族化合物を原料として、これにフェニルグリニヤ試薬を反応させてポリフェニル化合物を製造する方法が報告されているのみである。この反応は当該文献内に記載されているように、オルト位にアミノ基やフェニル基の存在が必須であり、該アミノ基がない場合にはこの反応は進行しない。このように、バリエーションのある化合物を製造する場合には制約があり、含フッ素芳香族化合物を原料として種々の機能性化合物を合成するためには、基質に左右され難い応用範囲の広い有効な試薬とその反応の開発が必要である。
【特許文献1】特開昭55-17105号公報
【特許文献2】特開昭55-108667号公報
【特許文献3】特開昭55-156953号公報
【特許文献4】特開昭56-4148号公報
【特許文献5】特開昭56-36656号公報
【特許文献6】特公昭45-555号公報
【特許文献7】特公昭51-10983号公報
【特許文献8】特開2000-119229号公報
【特許文献9】特開2002-83685号公報
【特許文献10】特開2003-138251号公報
【特許文献11】特開2004-59555号公報
【非特許文献1】Harry Kurreckら、 Angw.Chem.Int.Ed.1986年25巻1098頁
【非特許文献2】F.M.MengerらTetrahedron Lett. 1997年38巻1485頁
【非特許文献3】Anselm C. GriffinらJ.Mater.Chem.1993年3巻991頁
【非特許文献4】StrekowskiらJournal of Organic Chemistry 2000年 65巻 7703頁
【非特許文献5】Synthetic Communication 1997年 27巻1975頁
【非特許文献6】Journal of American Chemistry Society 2006年 128巻 1434頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、新規な機能性有機化合物合成を志向して、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上のフッ素原子を選択的に有機基で置換する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ベンジル位のsp混成炭素原子にフッ素原子(例えば1〜3個のフッ素原子)を有する化合物に、アルミニウム試薬、及び有機基(アルキル基、アリール基等)を含む有機金属試薬を反応させることにより、該ベンジル位の炭素原子上の一部又は全てのフッ素原子を該有機基に効率的に置換できることを見いだした。これは、アルミニウムのフッ素に対する高い親和性(高いルイス酸性)、及び共存する有機金属試薬の求核性に起因するものと考えられる。
【0013】
また、該化合物に、有機基(アルキル基、アリール基等)を含む有機アルミニウム試薬を反応させることにより、該ベンジル位の炭素原子上の全てのフッ素原子を該有機基に効率的に置換できることを見いだした。これは、アルミニウムのフッ素に対する高い親和性(高いルイス酸性)とアルミニウム金属に結合する有機基の求核性に起因するものと考えられる。
【0014】
かかる知見に基づきさらに研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の発明を提供する。
【0015】
項1.
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物に、アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を反応させてフッ素原子を該有機基で置換して、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に該有機基を有する化合物を製造する方法。
【0016】
項2.
前記アルミニウム化合物が、一般式(1):
Al (1)
(式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。)
で表される化合物である項1に記載の製造方法。
【0017】
項3.
前記有機金属化合物が、一般式(2):
−M (2)
(式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。)
で表される結合を有する化合物である項1又は2に記載の製造方法。
【0018】
項4.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3):
Ar−[CF(R3−n (3)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香環又は置換されていてもよいヘテロ芳香環、mは1〜4の整数、nは1〜3の整数、Rは、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−(CF−Ar’(pは0以上の整数、Ar’は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。)で示される基を示す。nが1の場合Rは同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CF(R3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である項3に記載の製造方法。
【0019】
項5.
得られる芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に有機基を有する化合物が、一般式(4):
Ar−[CR(R3’3−n (4)
(式中、R3’は同一又は異なって、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−Ar’で示される基、又は式:−(CFq−1−CR−Ar’で示される基(qは1以上の整数)を示し、Ar、R、m、n及びAr’は前記に同じ。nが1の場合R3’は同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CR(R3’3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である項4に記載の製造方法。
【0020】
項6.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3a):
Ar−CF(R3−n (3a)
(式中、Ar、R及びnは前記に同じ。)
で表される化合物である項4に記載の製造方法。
【0021】
項7.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3e):
Ar−CF−(CF−Ar’ (3e)
(式中、Ar、Ar’及びpは前記に同じ。)
で表される化合物である項6に記載の製造方法。
【0022】
項8.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3f):
Ar−CF−Ar’ (3f)
又は
Ar−CF−CF−Ar’ (3g)
(式中、Ar及びAr’は前記に同じ。)
で表される化合物である項7に記載の製造方法。
【0023】
項9.
前記Ar及びAr’が同一又は異なって、下記式:
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、Zは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アルコキシアルキル基、又は保護されていてもよい水酸基を示し、aは0〜3の整数を示す。aが2又は3の場合は、Zは同一又は異なっていてもよい。)
で表される基である項4〜8のいずれかに記載の製造方法。
【0026】
項10.
前記アルミニウム化合物が、一般式(1a):
AlX、AlR10、Al(R10X、又はAl(R10 (1a)
(式中、R10は同一又は異なってC1〜5アルキル基、Xは同一又は異なってF、Cl又はBrを示す。)
で表される化合物である項1又は2に記載の製造方法。
【0027】
項11.
前記有機金属化合物が、一般式(2a)〜(2d):
20−Li (2a)
(R20B (2b)
20−MgY (2c)
又は
(R20Zn (2d)
(式中、R20はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物である項3に記載の製造方法。
【0028】
項12.
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合したフッ素原子を、アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を用いて該有機基で置換する方法。
【0029】
項13.
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合したフッ素原子を有する化合物に、一般式(5):
Al (5)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表される有機アルミニウム化合物を反応させて、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にR基を有する化合物を製造する方法。
【0030】
項14.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3):
Ar−[CF(R3−n (3)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香環又は置換されていてもよいヘテロ芳香環、mは1〜4の整数、nは1〜3の整数、Rは、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−(CF−Ar’(pは0以上の整数、Ar’は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。)で示される基を示す。nが1の場合Rは同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CF(R3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である項13に記載の製造方法。
【0031】
項15.
得られる芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に有機基を有する化合物が、一般式(6):
Ar−[CR(R3’’3−n (6)
(式中、R3’’は同一又は異なって、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−Ar’で示される基、又は式:−(CFq−1−CR−Ar’で示される基(qは1以上の整数)を示し、Ar、R、m、n及びAr’は前記に同じ。nが1の場合R3’’は同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CR(R3’’3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である項14に記載の製造方法。
【0032】
項16.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3a):
Ar−CF(R3−n (3a)
(式中、Ar、R及びnは前記に同じ。)
で表される化合物である項14に記載の製造方法。
【0033】
項17.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3e):
Ar−CF−(CF−Ar’ (3e)
(式中、Ar、Ar’及びpは前記に同じ。)
で表される化合物である項16に記載の製造方法。
【0034】
項18.
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3f):
Ar−CF−Ar’ (3f)
又は
Ar−CF−CF−Ar’ (3g)
(式中、Ar及びAr’は前記に同じ。)
で表される化合物である項17に記載の製造方法。
【0035】
項19.
前記Ar及びAr’が同一又は異なって、下記式:
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、Zは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アルコキシアルキル基、又は保護されていてもよい水酸基を示し、aは0〜3の整数を示す。aが2又は3の場合は、Zは同一又は異なっていてもよい。)
で表される基である項14〜18のいずれかに記載の製造方法。
【0038】
項20.
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合したフッ素原子を、一般式(5):
Al (5)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表される有機アルミニウム化合物を用いて、R基で置換する方法。
【0039】
項21.
一般式(5a):
Al (5a)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表されるアルミニウム化合物の製造方法であって、一般式(7):
−Y (7)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物にアルキルリチウム試薬を反応させて、該ハロゲン原子(Y)をリチオ化し、これに一般式(8):
Al (8)
(式中、Yはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルミニウムを反応させることを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明の方法によれば、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子(1〜3個のフッ素原子)を有する化合物に、所定のアルミニウム試薬、及び有機基(例えば、アルキル基、アリール基等)を有する有機金属試薬を反応させることにより、該フッ素原子を該有機基に効率的に置換できる。また、該化合物に、所定の有機基(例えば、アルキル基、アリール基等)を有する有機アルミニウム試薬のみを反応させても、該フッ素原子を該有機基に効率的に置換できる。かかる方法を用いれば、フッ素原子を足場にして、位置選択的に有機基を導入することができる。また嵩高いアリール基等も容易に導入できる。そのため、機能性有機材料等の簡便な合成手段として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、芳香環又はヘテロ芳香環に直結するsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物に、(I)アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を反応させて、或いは、(II)有機基を含むアルミニウム化合物を反応させて、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に該有機基を有する化合物を製造する方法である。以下、詳細に説明する。
I.第1の実施態様
本発明は、芳香環又はヘテロ芳香環に直結するsp混成炭素原子上に1〜3個のフッ素原子を有する化合物に、アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を反応させて、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に1〜3個の該有機基を有する化合物を製造する方法である。換言すれば、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合した1〜3個のフッ素原子を、アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を用いて、1〜3個の有機基に置換する方法である。
【0042】
原料のフッ素原子を有する化合物は、1〜3個のフッ素原子が結合するsp混成炭素原子を1又は2以上含有していてもよい。
【0043】
アルミニウム化合物
前記アルミニウム化合物としては、例えば、一般式(1):
Al (1)
(式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。)
で表される化合物が挙げられる。
【0044】
で示されるアルキル基としては、C1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロデシル等のC1〜12のアルキル基が挙げられる。好ましくはC1〜8アルキル基であり、より好ましくはメチル、エチル、イソプロピル等のC1〜3のアルキル基である。
【0045】
で示されるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等が挙げられ、好ましくはF、Cl又はBrである。
【0046】
該アルミニウム化合物の典型例として、一般式(1a):
AlX、AlR10、Al(R10X、又はAl(R10 (1a)
(式中、R10は同一又は異なってC1〜8アルキル基、Xは同一又は異なってF、Cl又はBrを示す。)
で表される化合物が挙げられる。
【0047】
一般式(1)及び(1a)で表される化合物の好ましい具体例としては、トリメチルアルミニウム(MeAl)、トリエチルアルミニウム(EtAl)、トリプロピルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド(MeAlCl)、ジエチルアルミニウムクロライド(EtAlCl)、メチルアルミニウムジクロライド(MeAlCl)、エチルアルミニウムジクロライド(EtAlCl)、フッ化アルミニウム(AlF)、塩化アルミニウム(AlCl)、臭化アルミニウム(AlBr)等が挙げられる。より好ましくは、トリメチルアルミニウム(MeAl)である。
【0048】
上記のアルミニウム化合物は、いずれも市販されているか或いは当業者が公知の方法を用いて容易に調製することができる。
【0049】
有機金属化合物
前記有機基を含む有機金属化合物としては、種々の金属−炭素結合を有する化合物が挙げられるが、例えば、一般式(2):
−M (2)
(式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛、及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。)
で表される結合を有する化合物が挙げられる。
【0050】
で示される「置換されていてもよいアルキル基」のアルキル基としては、C1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等のC1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1〜8アルキル基である。該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0051】
で示される「置換されていてもよいアリール基」のアリール基としては、例えば、1〜4環性のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、フルオレニル基等が例示される。特にフェニル基が挙げられる。
【0052】
該アリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基等)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)等が例示される。該アリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0053】
で示される「置換されていてもよいヘテロアリール基」のヘテロアリール基としては、例えば、1〜4環性の酸素、窒素及び硫黄から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環に有するアリール基が挙げられ、具体的には、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基等が例示される。特に、2又は3−チエニル基、2又は3−フリル基、2、3又は4−ピリジル基等が挙げられる。
【0054】
該ヘテロアリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基等)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)等が例示される。該ヘテロアリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0055】
で示される「置換されていてもよいアラルキル基」のアラルキル基としては、例えば、2−フェニルエチル、ベンジル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル等のC7〜C20アラルキル基などが挙げられる。該アラルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0056】
で示される「置換されていてもよいアルケニル基」のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、1−ブテニル、イソブテニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルケニル基、好ましくはC2〜C12アルケニル基が挙げられる。該アルケニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルケニル基として、例えば、α又はβ-スチリル、2,2-ジフェニルビニル基等が挙げられる。
【0057】
で示される「置換されていてもよいアルキニル基」のアルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−オクチニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルキニル基、好ましくはC2〜C12アルキニル基が挙げられる。該アルキニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルキニル基として、例えば、2−フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0058】
Mで示される金属のうち、リチウム、マグネシウム、亜鉛、ホウ素等が好ましく、特にリチウム、マグネシウムが好ましい。
【0059】
上記一般式(2)で表される結合を有する化合物のうち好適な具体例としては、Mがリチウムの場合、一般式(2a):
20−Li (2a)
(式中、R20はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を示す。)
で表される化合物が挙げられる。R20で示されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、又はアルキニル基は、上記Rに記載されたものが挙げられる。特に、R20がC1〜C12アルキル基、フェニル基、C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0060】
Mがホウ素の場合、一般式(2b):
(R20B (2b)
(式中、R20は同一又は異なって前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0061】
Mがマグネシウムの場合、一般式(2c):
20−MgY (2c)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、R20は前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。Yで示されるハロゲン原子としては、Cl、Br又はIが挙げられ、好ましくはCl又はBrである。
【0062】
Mが亜鉛の場合、一般式(2d):
(R20Zn (2d)
(式中、R20は同一又は異なって前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0063】
Mが銅の場合、一般式(2e):
(R20CuLi、(R20CuMgY、(R20CuMgLiY、又はR20Cu・BF (2e)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、R20は同一又は異なって前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0064】
上記の有機基を含む有機金属化合物のうち、好ましくは一般式(2a)〜(2d)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(2a)又は(2c)で表される化合物である。
【0065】
上記の有機基を含む有機金属化合物は、通常単離することは困難であるため、適切な溶液中で調製される。この調整方法は、いずれも公知の方法を採用することができる。
【0066】
フッ素化合物
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結するsp混成炭素原子上にフッ素原子(1〜3個のフッ素原子)を有する化合物としては、分子内に該フッ素化されたsp混成炭素原子を部分構造に有するものであれば特に限定はなく、該部分構造を分子内に1又は2以上有する化合物も包含する。
【0067】
該化合物としては、例えば、一般式(3):
Ar−[CF(R3−n (3)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香環又は置換されていてもよいヘテロ芳香環、mは1〜4の整数、nは1〜3の整数、Rは、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−(CF−Ar’(pは0以上の整数、Ar’は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。)で示される基を示す。nが1の場合Rは同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CF(R3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0068】
Arで示される「置換されていてもよい芳香環」の芳香環としては、例えば、1〜4環性の芳香環が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が例示される。特にベンゼンが挙げられる。
【0069】
該芳香環は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基等)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe、−OAc等)等が例示される。該置換基として、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、保護されていてもよい水酸基等が好適である。該芳香環は、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0070】
Arで示される「置換されていてもよいヘテロ芳香環」のヘテロ芳香環としては、例えば、1〜4環性の酸素、窒素及び硫黄から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環に有する芳香環が挙げられ、具体的には、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基等が例示される。特に、2又は3−チエニル基、2又は3−フリル基、2、3又は4−ピリジル基等が挙げられる。
【0071】
該ヘテロ芳香環は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基等)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe−OAc等)等が例示される。該ヘテロ芳香環は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0072】
mは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2である。nは1〜3の整数であり、好ましくは2〜3である。なお、nが1の時、2つのRは同一又は異なっていてもよい。
【0073】
で示される「アルキル基」としては、C1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロデシル等のC1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1〜8アルキル基である。
【0074】
で示される「フルオロアルキル基」としては、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたC1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。好ましくは、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF2CF2CFH、-CF2CF2CF2CF2CF2CF3、-CF2CF2CF2CF2CF2CFH、-CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF3、-CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CFH等のC1〜8のフルオロアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1〜6のフルオロアルキル基である。
【0075】
で示される式:−(CF−Ar’で示される基において、pは0以上の整数、好ましくは0〜7の整数、より好ましくは0又は1である。
【0076】
Ar’で示される「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよいヘテロアリール基」は、例えば、上記Arで記載された「置換されていてもよい芳香環」及び「置換されていてもよいヘテロ芳香環」の環上の1個の水素原子を除いた1価の基を選択することができる。なお、Ar及びAr’は同一又は異なっていてもよい。
【0077】
前記一般式(3)で表される化合物のうち、好ましいものとしてm=1である、一般式(3a):
Ar−CF(R3−n (3a)
(式中、Ar、R及びnは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。具体的には、一般式(3b)〜(3d):
Ar−CF (3b)
Ar−CF−R (3c)
Ar−CF(R (3d)
(式中、Ar及びRは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0078】
前記一般式(3)で表される化合物のうち、他の好ましいものとして、一般式(3e):
Ar−CF−(CF−Ar’ (3e)
(式中、Ar、Ar’及びpは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。具体的には、一般式(3f)及び(3g):
Ar−CF−Ar’ (3f)
Ar−CF−CF−Ar’ (3g)
(式中、Ar及びAr’は前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0079】
上記一般式(3)又は一般式(3a)〜(3g)で表される化合物において、好ましいAr及びAr’としては、同一又は異なって、下記式で表される基が挙げられる。
【0080】
【化3】

【0081】
(式中、Zは、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、エステル基、アルコキシアルキル基、又は保護されていてもよい水酸基を示し、aは0〜3の整数を示す。aが2又は3の場合は、Zは同一又は異なっていてもよい。)
Zで示される上記置換基は、上記したArで示される「置換されていてもよい芳香環」の該芳香環上の置換基、又はAr’で示される「置換されていてもよいアリール基」の該アリール基上の置換基が挙げられる。aは0〜3の整数であり、好ましくは0、1又は2である。
【0082】
上記一般式(3)で表される化合物のうち、同一炭素上に同一又は異なった3種のアリール基(例えば、フェニル基)等を導入できるという観点から、下記式で表される基が好適である。
【0083】
【化4】

【0084】
(式中、Z及びaは前記に同じ。)
前記一般式(3)で表される化合物のうち、他の好ましいものとしてm=2である、一般式(3h):
(R3−nCF−Ar−CF(R3−n (3h)
(式中、Ar、R及びnは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。具体的には、一般式(3i)〜(3k):
CF−Ar−CF (3i)
−CF−Ar−CF−R (3j)
(RCF−Ar−CF(R (3k)
(式中、Ar、Ar’及びRは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0085】
特に、Arとしては、下記式で表される2価の基が好適である。
【0086】
【化5】

【0087】
(式中、Z及びaは前記に同じ。)
なお、上記一般式(3)で表される化合物は、市販されているか或いは公知の方法に準じて当業者が容易に製造することができる。例えば、一般式(3e)で表される化合物は、J.Am.Chem.Soc.,(1960), 82, 543、J.Am.Chem.Soc.,(1960), 82, 543、J.Org.Chem., (2000),65,4830、J.Org.Chem., (1991),56,4695、Synlett, (1991), 909等に準じて製造することができる。また、一般式(3a)で表される化合物は、J.Fluorine Chem., (1994),69,225、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.,(1998),921、Bull.Chem.Soc.Jpn.,(1992),65,2141、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.,(1994),1339、J.Org.Chem., (1999),64,7048、Synlett, (1991), 909、J.Am.Chem.Soc.,(1960), 82, 543等に準じて製造することができる。
【0088】
製造方法
本発明の製造方法では、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上のフッ素原子を有する化合物(以下、原料フッ素化合物とも言う。例えば、一般式(3)で表される化合物)に、アルミニウム化合物(例えば、一般式(1)で表される化合物)、及び有機基を含む有機金属化合物(例えば、一般式(2)で表される結合を有する化合物)を、適切な溶媒中で反応させて行う。
【0089】
本反応で用いられる反応溶媒としては非プロトン溶媒が用いられる。例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、DME、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの中ではジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等などの低極性の溶媒が好ましく、さらにはジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素などの塩素系溶媒が最も好ましく用いられる。
【0090】
特に、Rが置換されていてもよいアルキル基(特にメチル基等)の場合には、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒や、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒が、反応の効率性の点から好適である。また、Rが置換されていてもよいアリール基(特にフェニル基、トルイル基等)又は置換されていてもよいヘテロアリール基(特にフリル基、チエニル基等)の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が、反応の効率性の点から好適である。
【0091】
アルミニウム化合物の使用量は、原料のフッ素化合物1モルに対し、通常0.1〜20モル、好ましくは1〜10モル、さらに好ましくは2〜5モルの範囲である。有機基を含む有機金属化合物の使用量は、原料フッ素化合物1モルに対し、通常0.1〜40モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは2〜10モルの範囲である。
【0092】
反応における原料フッ素化合物の濃度は、通常0.01〜10モル/L程度、好ましくは0.1〜5モル/L程度である。
【0093】
反応は、原料フッ素化合物に、アルミニウム化合物及び有機基を含む有機金属化合物を反応させるのであれば特に限定はない。好ましくは、一旦有機基を含む有機金属化合物とアルミニウム化合物とを混合した試薬に、フッ素化合物の溶液を加える方法が用いられる。これ以外にも、フッ素化合物の溶液にアルミニウム化合物を加え、さらに該有機金属化合物を加える方法、フッ素化合物の溶液に、該有機金属化合物とアルミニウム化合物とを混合した試薬を加える方法等も好ましく用いられる。
【0094】
反応は、無水条件下、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0095】
反応温度は用いられるルイス酸として機能するアルミニウムの活性、及び有機金属化合物の活性等に応じて適宜選択することができる。通常は、例えば−78℃から200℃程度、好ましくは−30℃から100℃の範囲であり、室温から用いる溶媒の沸点程度が用いられる。
【0096】
本発明の反応は、上記の反応温度で数分間から数日で終了する。反応の進行は種々の分析方法で評価でき、GLC、HPLC、TLC、NMR、IRなどの分析手段が有効である。
【0097】
反応終了後は、通常の精製工程を経て、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に有機基を有する化合物が得られる。該化合物の精製工程は公知の方法を採用でき、例えば、反応液に必要に応じて有機溶媒を加えて抽出し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の方法で精製できる。
【0098】
上記の製法により、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に1〜3個の有機基を有する化合物が得られる。具体的には、原料のsp混成炭素原子上のフッ素原子が、有機金属化合物の有機基で置換された化合物が得られる。典型例として、一般式(3)で表される化合物に、一般式(2)で表される結合を有する有機金属化合物を反応させた場合には、一般式(4):
Ar−[CR(R3’3−n (4)
(式中、R3’は同一又は異なって、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−Ar’で示される基、又は式:−(CFq−1−CR−Ar’(qは1以上の整数)で示される基を示し、Ar、R、m、n及びAr’は前記に同じ。nが1の場合R3’は同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CR(R3’3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物が製造される。
【0099】
3’におけるH、アルキル基及びフルオロアルキル基は、原料化合物におけるRと同一である。R3’が式:−Ar’で示される基の場合は、原料化合物のRが式:−(CF−Ar’(pは0)である場合に対応する。また、R3’が式:−(CFq−1−CR−Ar’(qは1以上の整数)で示される基の場合は、原料化合物のRが式:−(CF−Ar’(pは1以上の整数)である場合に対応する。
【0100】
本発明の製造方法によれば、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素上のフッ素原子を、収率よく有機金属化合物(試薬)に由来する有機基に変換することができる。また、複数のフッ素原子を有する化合物を用いれば、sp混成炭素上のフッ素原子の一部又は全てを有機基で置換した化合物を容易に得ることができる。
【0101】
なお、sp混成炭素上に2又は3個のフッ素原子を有する化合物(例えば、一般式(3)で示される化合物であり、n=2又は3の化合物)に、一般式(2)で表される結合を有する有機金属化合物を反応させた場合、反応の条件により、1又は2個のフッ素原子が基Rで置換され、かつ、残りのフッ素原子が一般式(1)で表されるアルミニウム化合物の基Rで置換された化合物が得られる場合もある。また、1又は2個のフッ素原子が基Rで置換され、かつ、残りのフッ素原子が水素原子で置換された化合物が得られる場合もある。
【0102】
具体的には、これらの生成物として、一般式(4a):
Ar−[CRn―1(R又はH)(R3’3−n (4a)
(式中、nは2又は3の整数を示し、Ar、R、R、R3’及mは前記に同じ。)
で表される化合物が製造される。
【0103】
また、一般式(3)で表される化合物(RがF以外のハロゲン原子であり、nは1又は2の場合)に、一般式(2)で表される結合を有する有機金属化合物と一般式(1)で表される化合物とを反応させた場合には、Rで示されるF以外のハロゲン原子もRで置換された、一般式(4b):
Ar−[CR (4b)
(式中、Ar、R及びmは前記に同じ。)
で表される化合物が得られる場合もある。
【0104】
本発明の方法では、原料のフッ素化合物の構造に制約を受けることなく反応が進行するため、バリエーションのある置換化合物を製造することができる。さらに、本方法を用いれば、従来の方法に比べてより簡便に3級炭素または4級炭素を有する化合物を製造することができる。そのため、有機半導体、電子写真用感光体、有機EL材料等の機能性有機材料に用いる多様な原料化合物を簡便に合成することができる。
II.第2の実施態様
本発明は、芳香環又はヘテロ芳香環に直結するsp混成炭素原子上に1〜3個のフッ素原子を有する化合物に、有機アルミニウム化合物を反応させて、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に1〜3個の該有機基を有する化合物を製造する方法である。換言すれば、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合した1〜3個のフッ素原子を、有機アルミニウム化合物を用いて、1〜3個の有機基に置換する方法である。
【0105】
有機アルミニウム化合物
前記有機アルミニウム化合物としては、一般式(5):
Al (5)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表される化合物が挙げられる。
【0106】
Rで示される「置換されていてもよいアルキル基」のアルキル基としては、C1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等のC1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1〜8アルキル基である。該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0107】
Rで示される「置換されていてもよいアリール基」のアリール基としては、例えば、1〜4環性のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、フルオレニル基等が例示される。
【0108】
該アリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基等)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)等が例示される。該アリール基は、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0109】
Rで示される「置換されていてもよいヘテロアリール基」のヘテロアリール基としては、例えば、1〜4環性の酸素、窒素及び硫黄から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環に有するアリール基が挙げられ、具体的には、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基等が例示される。
【0110】
該ヘテロアリール基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、C1〜20アルキル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基等のC2〜20アルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、C1〜20アルコキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)、アルケニルオキシ基(例えば、C2〜20アルケニルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、C1〜20アルキルチオ基等)、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、エステル基(例えば−COO-tert-Bu等)、保護されていてもよい水酸基(例えば、−OH、−O-Sitert-BuMe等)等が例示される。該ヘテロアリール基は、これらなる群より選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
【0111】
Rで示される「置換されていてもよいアラルキル基」のアラルキル基としては、例えば、2−フェニルエチル、ベンジル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル等のC7〜C20アラルキル基などが挙げられる。該アラルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。
【0112】
Rで示される「置換されていてもよいアルケニル基」のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、1−ブテニル、イソブテニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルケニル基、好ましくはC2〜C12アルケニル基が挙げられる。該アルケニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルケニル基として、例えば、α又はβスチリル、2,2-ジフェニルビニル等が挙げられる。
【0113】
Rで示される「置換されていてもよいアルキニル基」のアルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−オクチニルなどの直鎖又は分枝を有するC2〜C20アルキニル基、好ましくはC2〜C12アルキニル基が挙げられる。該アルキニル基は置換されていてもよく、該置換基としては本発明の方法に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。置換されたアルキニル基として、例えば、2−フェニルエチニル基などが挙げられる。
【0114】
該有機アルミニウム化合物の典型例としては、例えば、トリメチルアルミニウム(MeAl)、トリエチルアルミニウム(EtAl)、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジイソブチルメチルアルミニウム、ジイソブチルフェニルアルミニウム、1−オクチニルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム(PhAl)、トリトルイルアルミニウム(TolAl)、トリ(2−フリル)アルミニウム、トリ(3−フリル)アルミニウム、トリ(2−チエニル)アルミニウム、トリ(3−チエニル)アルミニウム、2−フェニルビニルジエチルアルミニウム、2,2-ジフェニルビニルジエチルアルミニウム、2−フェニルエチニルジイソブチルアルミニウム等が挙げられる。
【0115】
上記のアルミニウム化合物は、いずれも市販されているか或いは当業者が公知の方法を用いて容易に調製することができる。
【0116】
具体例として、一般式(5)で表される有機アルミニウム化合物において、Rが置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアルキニル基の場合は、次のようにして調製することができる。例えば、一般式(5a):
Al (5a)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表されるアルミニウム化合物は、炭化水素系溶媒(例えばヘキサン等)あるいは芳香族系溶媒(例えばベンゼン、トルエン等)などの非極性溶媒中、低温下(-100℃〜室温程度、特に-100℃〜0℃)、一般式(7):
−Y (7)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物にアルキルリチウム試薬:R’Li(例えば、nBuLi、t−BuLi等)を反応させて、該ハロゲン原子(Y)をリチオ化(R−Li)し、これに一般式(8):
Al (8)
(式中、Yはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルミニウムを反応させて製造することができる。
【0117】
で示される上記の基は、上記の一般式(5)で表される化合物のRで示される置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアルキニル基の中から選択することができる。Yで示されるハロゲン原子として、特にBr又はIが挙げられる。Yで示されるハロゲン原子としては、特にCl、Br又はIが挙げられる。
【0118】
フッ素化合物
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結するsp混成炭素原子上に1〜3個のフッ素原子を有する化合物としては、上記「I.第1の実施態様」で示した化合物が挙げられる。つまり、一般式(3):
Ar−[CF(R3−n (3)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香環又は置換されていてもよいヘテロ芳香環、mは1〜4の整数、nは1〜3の整数、Rは、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−(CF−Ar’(pは0以上の整数、Ar’は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。)で示される基を示す。nが1の場合Rは同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CF(R3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0119】
製造方法
本発明の製造方法では、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上のフッ素原子を有する化合物(以下、原料フッ素化合物とも言う。例えば、一般式(3)で表される化合物)に、有機アルミニウム化合物(例えば、一般式(5)で表される化合物)を、適切な溶媒中で反応させて行う。
【0120】
本反応で用いられる反応溶媒としては非プロトン溶媒が用いられる。例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF、DME、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの中ではジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の低極性の溶媒が好ましく、さらにはジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四塩化炭素などの塩素系溶媒が最も好ましく用いられる。
【0121】
特に、Rが置換されていてもよいアルキル基(特にメチル基等)の場合には、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒や、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒が、反応の効率性の点から好適である。また、Rが置換されていてもよいアリール基(特にフェニル基、トルイル基等)又は置換されていてもよいヘテロアリール基(特にフリル基、チエニル基等)の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が、反応の効率性の点から好適である。
【0122】
有機アルミニウム化合物の使用量は、原料のフッ素化合物1モルに対し、通常0.1〜20モル、好ましくは1〜10モル、さらに好ましくは2〜5モルの範囲である。
【0123】
反応における原料フッ素化合物の濃度は、通常0.01〜10モル/L程度、好ましくは0.1〜5モル/L程度である。
【0124】
反応は、原料のフッ素化合物に、有機アルミニウム化合物を反応させるのであれば特に限定はないが、好ましくは、上記溶媒中に溶解した原料のフッ素化合物を含む溶液に、有機アルミニウム化合物を加えて反応させることが好ましい。
【0125】
反応は、無水条件下、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0126】
反応温度は通常は、例えば−78℃から200℃程度、好ましくは0℃から100℃の範囲であり、室温から用いる溶媒の沸点程度が用いられる。
【0127】
本発明の反応は、上記の反応温度で数分間から数日で終了する。反応の進行は種々の分析方法で評価でき、GLC、HPLC、TLC、NMR、IRなどの分析手段が有効である。
【0128】
反応終了後は、通常の精製工程を経て、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に有機基を有する化合物が得られる。該化合物の精製工程は公知の方法を採用でき、例えば、反応液に必要に応じて疎水性有機溶媒を加えて抽出し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の方法で精製できる。
【0129】
上記の製法により、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に1〜3個のフッ素原子を有する化合物が得られる。具体的には、原料のsp混成炭素原子上のフッ素原子が、有機金属化合物の有機基で置換された化合物が得られる。典型例として、一般式(3)で表される化合物に、一般式(5)で表される有機アルミニウム化合物を反応させた場合には、一般式(6):
Ar−[CR(R3’’3−n (6)
(式中、R3’’は同一又は異なって、H、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−Ar’で示される基、又は式:−(CFq−1−CR−Ar’(qは1以上の整数)で示される基を示し、Ar、m、n及びAr’は前記に同じ。nが1の場合R3’’は同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CR(R3’’3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物が製造される。
【0130】
3’’におけるH、アルキル基及びフルオロアルキル基は、原料化合物におけるRと同一である。R3’’が式:−Ar’で示される基の場合は、原料化合物のRが式:−(CF−Ar’(pは0の場合)である場合に対応する。また、R3’’が式:−(CFq−1−CR−Ar’(qは1以上の整数)で示される基の場合は、原料化合物のRが式:−(CF−Ar’(pは1以上の整数)である場合に対応する。
【0131】
本発明の製造方法によれば、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素上のフッ素原子を、収率よく有機アルミニウム化合物(試薬)に由来する有機基に変換することができる。また、複数のフッ素原子を有する化合物を用いれば、sp混成炭素上のフッ素原子の一部又は全てを有機基で置換した化合物を容易に得ることができる。
【0132】
なお、sp混成炭素上に2又は3個のフッ素原子を有する化合物(例えば、一般式(3)で示される化合物であり、n=2又は3の化合物)に、一般式(5)で表されるアルミニウム化合物を反応させた場合、反応の条件により、1又は2個のフッ素原子が基Rで置換され、かつ、残りのフッ素原子が一般式(5)で表されるアルミニウム化合物の調製に用いられるアルキルリチウム試薬のアルキル基:R’で置換された化合物が得られる場合もある。また、1又は2個のフッ素原子が基Rで置換され、かつ、残りのフッ素原子が水素原子で置換された化合物が得られる場合もある。
【0133】
具体的には、これらの生成物として、一般式(6a):
Ar−[CRn―1(R’又はH)(R3’’3−n (6a)
(式中、nは2又は3を示し、Ar、R、R’、R3’’及びmは前記に同じ。)
で表される化合物が製造される。
【0134】
また、一般式(3)で表される化合物(RがF以外のハロゲン原子であり、nは1又は2の場合)に、一般式(2)で表される結合を有する有機金属化合物と一般式(1)で表される化合物とを反応させた場合には、Rで示されるF以外のハロゲン原子もRで置換された、一般式(6b):
Ar−[CR (6b)
(式中、Ar、R及びmは前記に同じ。)
で表される化合物が得られる場合もある。
【0135】
本発明の方法では、原料のフッ素化合物の構造に制約を受けることなく反応が進行するため、バリエーションのある置換化合物を製造することができる。さらに、本方法を用いれば、従来の方法に比べてより簡便に4級の有機基メチル基を製造することができる。そのため、有機半導体、電子写真用感光体、有機EL材料等の機能性有機材料に用いる多様な原料化合物を簡便に合成することができる。
【実施例】
【0136】
以下に実施例を示し、本発明の特徴を明確にする。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
I.第1の実施態様
実施例I−1
不活性ガス(窒素)雰囲気下に、1,2-ジクロロエタン(1mL)中にフェニルリチウム1mmolを加え、さらにトリメチルアルミニウム1mmolを加えた。この溶液に、室温で4−イソブチル−ジフルオロメチルベンゼン0.2mmolを加えた。この反応溶液を室温で1時間撹拌した後、希塩酸でクエンチし、GLC(デカンを内部標準として使用、以下同じ)とGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てフェニル基で置換された生成物(4−ジフェニルメチルイソブチルベンゼン、6%収率)とメチル基1つとフェニル基1つで置換された生成物(4−フェニルメチルイソブチルベンゼン、45%収率)が得られた。
4−フェニルメチルイソブチルベンゼン:
MS m/z 248(M+), 233 (M-CH3), 205 (M-C3H7), 191 (M-C4H9), 171 (M-C6H5).
4−ジフェニルメチルイソブチルベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ0.89 (d, J=6.9Hz, 6H), 1.84 (q-t, J=6.9, 7.2Hz, 1H), 2.43 (d, J=7.2Hz, 2H), 5.52 (s, 1H), 6.98 - 7.10 (m, 4H), 7.10 - 7.15 (m, 4H), 7.15 - 7.30 (m, 6H).
13C-NMR(CDCl3):δ 22.41, 30.19, 45.01, 56.47, 126.19, 128.24, 129.01, 129.09, 129.43, 139.63, 141.04, 144.16.
MS m/z 300(M+), 257 (M-C3H7), 243 (M-C4H9), 223 (M-C6H5).
実施例I−2
4−イソブチル−ジフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中に、トリメチルアルミニウム1mmolとブチルリチウム1mmolから調整した試薬を加えたしたこと以外は、実施例I−1と同様にして実施した。原料のC-F結合が全てブチル基で置換された生成物(5-(4-イソブチルフェニル)-ノナン、9%収率)とメチル基1つとブチル基1つで置換された生成物(2-(4-イソブチルフェニル)-ヘキサン、36%収率)が得られた。
5-(4-イソブチルフェニル)-ノナン:
MS m/z 260 (M+), 245 (M- CH3), 217 (M-C3H7), 203 (M-C4H9).
2-(4-イソブチルフェニル)-ヘキサン:
MS m/z 300(M+), 257 (M-CH3), 243 (M-C3H7), 223 (M-C4H9).
実施例I−3
4−イソブチル−ジフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中に、トリメチルアルミニウム0.4mmolとフェニルリチウム1mmolから調整した試薬を加えたこと以外は、実施例I−1と同様にして実施した。4−ジフェニルメチルイソブチルベンゼン(15%収率)と4−フェニルメチルイソブチルベンゼン(25%収率)が得られた。
【0137】
実施例I−4
ジフルオロジフェニルメタン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中に、トリメチルアルミニウム0.4mmolとフェニルリチウム1mmolから調整した試薬を加えたこと以外は、実施例I−1と同様にして実施した。原料のC-F結合が全てフェニル基で置換された生成物(テトラフェニルメタン、25%収率)とメチル基1つとフェニル基1つで置換された生成物(2,2,2-トリフェニルエタン、20%収率)が得られた。
テトラフェニルメタン:
MS m/z 320 (M+), 243 (M-C6H5), 165 (M-H-C6H5-C6H5).
2,2,2-トリフェニルエタン:
MS m/z 258 (M+), 243 (M-CH3), 181 (M-C6H5).
実施例I−5
4−イソブチル−ジフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にジエチル亜鉛1mmolを加え、さらにこれにトリメチルアルミニウム1mmolを加えた。反応液を室温で1時間撹拌した後、希塩酸でクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てエチル基で置換された生成物((4-イソブチルフェニル)-3-ペンタン、44%収率)、メチル基1つとエチル基1つで置換された生成物((4-イソブチルフェニル)-2-ブタン、36%収率)、およびエチル基が1つと水素1つで置換された生成物((4-イソブチルフェニル)プロパン、6%収率)得られた。
(4-イソブチルフェニル)-3-ペンタン:
MS m/z 204 (M+), 175 (M-C2H5), 161 (M-C3H7), 147 (M-C2H5-C2H5).
(4-イソブチルフェニル)-2-ブタン:
MS m/z 190 (M+), 161 (M-C2H5), 147 (M-C3H7).
(4-イソブチルフェニル)プロパン:
MS m/z 176 (M+), 147 (M-C2H5), 133 (M-C3H7).
実施例I−6
4−メチルベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリエチルホウ素1mmolを加え、さらにこれにトリメチルアルミニウム1mmolを加えた。反応液を室温で1時間撹拌した後、希塩酸でクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てエチル基で置換された生成物(3-トリル-3-エチル-3-ペンタン、14%収率)とメチル基1つとエチル基1つで置換された生成物(3-トリル-3-メチル-3-ペンタン、49%収率)が得られた。
3-トリル-3-エチル-3-ペンタン:
MS m/z 190 (M+), 175 (M-CH3), 161 (M-C2H5).
3-トリル-3-メチル-3-ペンタン:
MS m/z 176 (M+), 151 (M- CH3), 137 (M-C2H5).
II.第2の実施態様
実施例II−1
不活性ガス(窒素)雰囲気下に、ベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,1,2,2-テトラクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、室温で150時間撹拌した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換されたt−ブチルベンゼンが得られた(転化率93%、収率67%)。
1H-NMR(CDCl3):δ1.33 (s, 9H), 7.10 - 7.25 (m, 1H), 7.25 - 7.35 (m, 2H), 7.36 - 7.45 (m, 2H).
13C-NMR(CDCl3):δ 31.34, 34.57, 125.24, 125.40, 128.04.
実施例II−2
ベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、室温で150時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。目的物のt−ブチルベンゼンが転化率100%、収率87%で得られた。
【0138】
実施例II−3
ベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、50℃で19時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。目的物のt−ブチルベンゼンが転化率100%、収率87%で得られた。
【0139】
実施例II−4
ベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリエチルアルミニウム1mmolを加え、50℃で24時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てエチル基で置換されたα,α-ジエチルプロピルベンゼン(収率33%)と、エチル基が2つ導入された生成物((1-エチルプロピル)ベンゼン、22%収率)が得られた。
α,α-ジエチルプロピルベンゼン:
MS m/z 176(M+), 161(M-CH3), 147(M-C2H5), 77 (-C6H5).
(1-エチルプロピル)ベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ0.77 (t, J=7.5Hz, 6H), 1.61 (t-d, J=7.5, 5.6Hz, 4H), 2.29 (q, J=5.6Hz, 1H), 6.98 - 7.42 (m, 5H).
MS m/z 148(M+), 133 (M-CH3), 119 (M-C2H5), 91 (C6H5-CH2-), 77 (-C6H5).
実施例II−5
3−トリフルオロメチルフェノール0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメルアルミニウム2mmolを加え、50℃で50時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(3-(t-ブチル)フェノール、44%収率)が得られた。
3-(t-ブチル)フェノール:
1H-NMR(CDCl3):δ1.28(s, 9H), 5.23 (s, 1H), 6.60 - 7.14 (m, 4H).
MS m/z 150(M+), 135 (M-CH3).
実施例II−6
3−トリフルオロメチルフェニルアセテート0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム2mmolを加え、50℃で50時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(3-(t-ブチル)フェニルアセテート、49%収率)が得られた。
3-(t-ブチル)フェニルアセテート:
1H-NMR(CDCl3):δ1.30(s, 9H), 2.27 (s, 3H), 5.23 (s, 1H), 6.80 - 7.50 (m, 4H).
MS m/z 192(M+), 150 (M-COCH3), 135 (M-COCH3-CH3).
実施例II−7
3−ビニルトリフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、50℃で24時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(3-(t-ブチル)スチレン、16%収率)が得られた。
3-(t-ブチル)スチレン:
IR neat 2964, 1630 cm-1.
MS m/z 160 (M+), 145 (M-CH3), 117 (M-CH3-C2H3-H).
実施例II−8
2−フルオロトリフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム0.8 mmolを加え、50℃で48時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のトリフルオロメチル基のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(2-フルオロ-t-ブチルベンゼン、66%収率)が得られた。
2-フルオロ-t-ブチルベンゼン:
MS m/z 152 (M+), 137 (M-CH3), 133 (M-F).
実施例II−9
4−クロロトリフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム0.8 mmolを加え、50℃で48時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(4-クロロ-t-ブチルベンゼン、53%収率)が得られた。
4-クロロ-t-ブチルベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ1.30 (s, 9H), 7.25 (d, J=8.6Hz, 2H), 7.31 (d, J=8.6Hz, 2H).
13C-NMR(CDCl3):δ 31.27, 34.45, 126.75, 128.05, 131.10, 149.58.
実施例II−10
4−ブロモトリフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム0.8 mmolを加え、50℃で48時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(4-ブロモ-t-ブチルベンゼン、88%収率)が得られた。
4-ブロモ-t-ブチルベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ1.28 (s, 9H), 7.25 (d, J=8.6Hz, 2H), 7.40 (d, J=8.6Hz, 2H).
13C-NMR(CDCl3):δ 31.20, 34.51, 119.19, 127.19, 131.02, 150.11.
実施例II−11
4−ヨードトリフルオロメチルベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム0.8 mmolを加え、50℃で48時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(4-ヨード-t-ブチルベンゼン、83%収率)が得られた。
4-ヨード-t-ブチルベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ1.30 (s, 9H), 7.14 (d, J=8.6Hz, 2H), 7.61 (d, J=8.6Hz, 2H).
13C-NMR(CDCl3):δ 31.13, 34.56, 90.61, 127.56, 137.03, 150.82.
実施例II−12
1,4−ビス(クロロジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム1.6 mmolを加え、80℃で15分間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合およびC-Cl結合が全てメチル基で置換された生成物(1,4−ビス(t-ブチル)ベンゼン、33%収率)が得られた。
1,4−ビス(t-ブチル)ベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ1.31 (s, 18H), 7.32 (s, 4H).
MS m/z 190 (M+), 175(M-CH3), 160(M-CH3-CH3), 145(M-CH3-CH3-CH3), 57 (C4H9).
実施例II−13
1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム1.6 mmolを加え、室温で24時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(1,4−ビス(i-プロピル)ベンゼン、転化率76%、収率52%)が得られた。
1,4−ビス(i-プロピル)ベンゼン:
1H-NMR(CDCl3):δ1.31 (s, 18H), 7.32 (s, 4H).
MS m/z 162(M+), 147(M-CH3), 132(M-CH3-CH3), 119(M-C3H7).
実施例II−14
1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム2.4 mmolを加え、室温で30分間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された生成物(転化率100%、収率93%)が得られた。
【0140】
実施例II−15
1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリエチルアルミニウム1 mmolを加え、室温で30分間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCとGC-MSで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てエチル基で置換された生成物(転化率100%、収率61%)が得られた。
【0141】
実施例II−16
4−ノナフルオロブチルアニソール0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリメチルアルミニウム0.8 mmolを加え、室温で24時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。原料のノナフルオロブチル基のベンジル位のC-F結合だけがメチル基で置換された生成物(2-(4-メトキシフェニル)-2-ヘプタフルオロプロピルプロパン、93%収率)が得られた。
2-(4-メトキシフェニル)-2-ヘプタフルオロプロピルプロパン:
1H-NMR(CDCl3):δ1.61 (t, J=1.2Hz, 6H), 3.81 (s, 3H), 6.88 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.40 (d, J=8.0Hz, 2H).
MS m/z 318(M+), 303(M-CH3), 299(M-F), 169(C3F7), 149(M-C3F7).
実施例II−17
4−メチルベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にトリオクチルアルミニウム0.8 mmolを加え、50℃で48時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。原料のC-F結合が全てオクチル基で置換された生成物(9-トリル-9-オクチル-9-ヘプタデカン、35%収率)とオクチル基が2つと水素1つで置換された生成物(9-トリル-9-ヘプタデカン、36%収率)が得られた。
9-トリル-9-オクチル-9-ヘプタデカン:
MS m/z 442 (M+), 427 (M-CH3), 413 (M-C2H5), 91 (C7H7).
9-トリル-9-ヘプタデカン:
MS m/z 330 (M+), 315 (M-CH3), 301 (M-C2H5), 91 (C7H7).
実施例II−18
4−メチルベンゾトリフルオリド0.2mmolの1,2-ジクロロエタン1mL中にジエチル−1−オクチニルアルミニウム0.8 mmolを加え、50℃で48時間撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。原料のC-F結合が全てエチル基で置換された生成物(29%収率)と1−オクチニル基1つ、エチル基1つ、水素1つで置換された生成物(5%収率)が得られた。
【0142】
実施例II−19
トリフェニルアルミニウムヘキサン溶液の調整と4-イソブチルジフルオロメチルベンゼンの脱フッ素フェニル化反応
窒素雰囲気下で二径フラスコ中に入れたn-BuLi(1Mヘキサン溶液)3mL(3mmol)中に、−78℃でヨードベンゼン(612mg, 3mmol)を滴下した。この溶液を、室温で1時間攪拌した。ここで得られたフェニルリチウム溶液を−78℃に冷却し、窒素気流下で臭化アルミニウム267mg(1mmol)を加えて攪拌した。さらにこの溶液に塩化メチレン3mLを加え−78℃で24時間攪拌した。
【0143】
ここで得られたトリフェニルアルミニウム溶液に、攪拌下に室温で、4-イソブチルジフルオロメチルベンゼン(37mg、0.2mmol)を加えた。この反応液をこの温度で1時間攪拌後、1N塩酸でクエンチし、エーテル抽出した。反応液のGLC分析(デカンを内部標準として使用、以下同じ)より、4−ジフェニルメチルイソブチルベンゼンが61%収率、4−フェニルメチルイソブチルベンゼンが5%収率で得られたことが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0144】
実施例II−20
トリフェニルアルミニウムヘキサン溶液の調整と4-イソブチルジフルオロメチルベンゼンの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−19と同様にして、n-BuLi(1Mヘキサン溶液)3mL(3mmol)とヨードベンゼン(612mg, 3mmol)から得られたフェニルリチウム溶液を−78℃に冷却し、窒素気流下で塩化アルミニウム133mg(1mmol)を加えて攪拌した。さらにこの溶液に塩化メチレン3mLを加え−78℃で24時間攪拌した。
【0145】
ここで得られたトリフェニルアルミニウム溶液に、攪拌下に室温で、4-イソブチルジフルオロメチルベンゼン(37mg、0.2mmol)加えた。この反応液を1時間攪拌後、同様に後処理を行った。反応液のGLC分析から、4−ジフェニルメチルイソブチルベンゼンが55%収率、4−フェニルメチルイソブチルベンゼンが8%収率で得られたことが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0146】
実施例II−21
4-メトキシベンゾトリフロリドの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−19と同様にして、調整したトリフェニルアルミニウムのヘキサン溶液(2mmol)に、攪拌下に室温で、4-メトキシベンゾトリフロリド(35mg、0.2mmol)を加えた。この反応液を50℃で1時間攪拌後に同様にクエンチした。反応液のGLC分析から、4−メトキシフェニルジフェニルメタンが23%収率、4−メトキシフェニルトリフェニルメタンが1%収率で得られたことが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
4−メトキシフェニルジフェニルメタン:
MS m/z 274 (M+), 273 (M-H), 197 (M-C6H5).
4−メトキシフェニルトリフェニルメタン:
MS m/z 350 (M+), 273 (M-C6H5).
実施例II−22
4-メチルベンゾトリフロリドの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−19と同様にして、調整したトリフェニルアルミニウムのヘキサン溶液(1mmol)に、攪拌下に室温で、4-メチルベンゾトリフロリド(32mg、0.2mmol)を加えた。この反応液を室温下で1時間攪拌後に同様にクエンチした。反応液のGLC分析から、4−メチルフェニルジフェニルメタンが18%収率、4−メチルフェニルトリフェニルメタンが2%収率で得られたことが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
4−メチルフェニルジフェニルメタン:
MS m/z 258 (M+), 257 (M-H), 181 (M-C6H5).
4−メチルフェニルトリフェニルメタン:
MS m/z 334 (M+), 257 (M-C6H5).
実施例II−23
トリブチルアルミニウムの調整と4-メトキシベンゾトリフロリドの脱フッ素ブチル化反応
実施例II−19と同様の方法で、臭化アルミニウムとn-ブチルリチウムからトリブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1mmol)を調整した。この溶液に、攪拌下に室温で、4-メトキシベンゾトリフロリド(35mg、0.2mmol)を加えた。この反応液を室温下で1時間攪拌後に同様にクエンチした。反応液のGLC分析から、4−メトキシフェニルペンタンが8%収率、5-(4−メトキシフェニル)ノナンが55%収率、5-ブチル-5-(4−メトキシフェニル)ノナンが10%収率で得られたことが判った。なおここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
4−メトキシフェニルペンタン:
MS m/z 178 (M+), 163 (M-CH3), 107 (C7H7O).
5-(4−メトキシフェニル)ノナン:
MS m/z 248 (M+), 233 (M-CH3), 107 (C7H7O).
5-ブチル-5-(4−メトキシフェニル)ノナン:
MS m/z 318 (M+), 303 (M-CH3), 107 (C7H7O).
実施例II−24
トリス(フェニルエチニル)アルミニウムの調整と4-イソブチルジフルオロメチルベンゼンの脱フッ素フェニルエチニル化反応
実施例II−19と同様にして、エチニルベンゼン(3mmol)とn-ブチルリチウム(3mmol)から調整したフェニルエチニルリチウム溶液に、臭化アルミニウムを加えて室温で30分間攪拌して、トリス(フェニルエチニル)アルミニウム(1mmol)のヘキサン溶液を調整した。
【0147】
この溶液に4-イソブチルジフルオロメチルベンゼン(37mg、0.2mmol)を加えて、室温で1時間攪拌した。反応液を同様に後処理し、生成物のGLC分析から、4-イソブチルフェニル(フェニルエチニル)メタンが9%収率で得られたことが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0148】
【化6】

【0149】
4-イソブチルフェニルフェニルエチニルメタン:
MS m/z 248 (M+), 247 (M-H), 233 (M-CH3), 250 (M-C3H7), 191 (M-C4H9).
実施例II−25
2,2−ビフェニルアルミニウムの調整と9,9−ジフルオロフルオレンの脱フッ素ビフェニル化反応によるスピロビフルオレンの合成
2,2−ジヨードビフェニル(2mmol)とn-ブリルリチウム(6mmol)をヘキサン中で室温下に1時間攪拌して、2,2−ジリチオビフェニルを調整した。これに臭化アルミニウム(1.8mmol)を加えて、室温で30分間攪拌することで、2,2−ビフェニルアルミニウムのヘキサン溶液を調整した。
【0150】
この溶液に9,9−ジフルオロフルオレン(0.45mmol)を滴下して、室温で1時間攪拌した。反応液をこれまで同様に後処理した後、生成物をGLCで分析したところ、スピロビフルオレンが27%収率で得られていた。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0151】
【化7】

【0152】
スピロビフルオレン:
MS m/z 316 (M+).
1H-NMR(CDCl3):δ 6.72 (d, J=7.6Hz, 4H), 7.06-7.11 (m, 4H), 7.30 - 7.37 (m, 4H), 7.83 (d, J=7.6Hz, 4H).
13C-NMR(CDCl3):δ 65.92, 119.95, 124,01, 127.67, 127.78, 141.73, 148.74.
実施例II−26
2,2−ビフェニルアルミニウムとジフェニルジフルオロメタンの脱フッ素ビフェニル化反応
実施例II−25と同様にして調整した2,2−ビフェニルアルミニウム(0.4mmol)のヘキサン溶液に、ジフェニルジフルオロメタン(0.2mmol)を滴下して、室温で30分間攪拌した。後処理後、生成物のGLC分析から9,9-ジフェニルフルオレンが38%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0153】
【化8】

【0154】
MS m/z 318 (M+), 214 (M-C6H5).
1H-NMR(CDCl3):δ 7.10-7.60 (m, 16H), 7.76 (d, J=7.6Hz, 2H).
13C-NMR(CDCl3):δ 65.48, 120.13, 126.20, 126.60, 127.44, 127.69, 128.13, 128.18, 140.14, 145.93, 151.14.
実施例II−27
2,2−ビフェニルアルミニウムと4−メトキシベンゾトリフロリドの脱フッ素ビフェニル化反応
実施例II−25と同様にして調整した2,2−ビフェニルアルミニウム(2mmol)のヘキサン溶液に、4−メトキシベンゾトリフロリド(0.5mmol)を滴下して、室温で30分間攪拌した。後処理後、生成物のGLC分析から9−(4−メトキシフェニル)フルオレンが6%収率、9−(4−メトキシフェニル)−9−ブチルフルオレンが2%収率、9−(4−メトキシフェニル)−9−ビフェニルフルオレンが11%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、GC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0155】
【化9】

【0156】
9−(4−メトキシフェニル)フルオレン:
MS m/z 272 (M+), 241 (M-OCH3), 165 (M-CH3OPh).
9−(4−メトキシフェニル)−9−ブチルフルオレン:
MS m/z 328 (M+), 271 (M-C4H9).
9−(4−メトキシフェニル)−9−(2−ビフェニル)フルオレン:
MS m/z 422 (M+), 271 (M-C8H9).
実施例II−28
ジフェニルジフルオロメタンの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−19と同様にして調整したトリフェニルアルミニウム(0.8mmol)のヘキサン溶液に、ジフェニルジフルオロメタン(0.2mmol)のベンゼン溶液を滴下し、室温で1時間攪拌した。後処理後、生成物のGLC分析により、トリフェニルメタンが35%収率で、テトラフェニルメタンが12%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、標品とGLCにおける保持時間による比較、さらにはGC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0157】
【化10】

【0158】
トリフェニルメタン:
MS m/z 244 (M+), 165 (M-2H-C6H5).
テトラフェニルメタン:
MS m/z 320 (M+), 243 (M-C6H5), 165 (M-H-C6H5-C6H5).
実施例II−29
4−ノナフルオロブチルアニソールの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−19と同様にして調整したトリフェニルアルミニウム(0.8mmol)のヘキサン溶液に、4−ノナフルオロブチルアニソール(0.2mmol)を滴下し、室温で30分間攪拌した。後処理後、生成物のGLC分析により、(4−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルフェニルメタンが7%収率で、(4−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルブチルフェニルメタンが8%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、標品とGLCにおける保持時間による比較、さらにはGC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。ここで得られたブチル置換体は、トリフェニルアルミニウム調整時にブチルアルミニウムが副生したために生じたものと考えられる。
【0159】
【化11】

【0160】
(4−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルフェニルメタン:
MS m/z 366 (M+), 351 (M-CH3), 347 (M-F), 289 (M-C6H5), 197 (M-C3F7), 169 (C3F7).
(4−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルブチルフェニルメタン:
MS m/z 422 (M+), 407 (M-CH3), 403 (M-F), 345 (M-C6H5), 253 (M-C3F7), 169 (C3F7).
実施例II−30
2−ノナフルオロブチルアニソールの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−19と同様にして調整したトリフェニルアルミニウム(0.8mmol)のヘキサン溶液に、2−ノナフルオロブチルアニソール(0.2mmol)を滴下し、室温で3時間攪拌した。後処理後、生成物のGLC分析により、(2−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルブチルフェニルメタンが12%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、標品とGLCにおける保持時間による比較、さらにはGC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。ここで得られた生成物は、トリフェニルアルミニウム調整時にブチルアルミニウムが副生したためにフェニル基とブチル基両方が導入されて生じたものと考えられる。
【0161】
【化12】

【0162】
(2−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルブチルフェニルメタン:
MS m/z 422 (M+), 407 (M-CH3), 403 (M-F), 345 (M-C6H5), 253 (M-C3F7), 169 (C3F7).
実施例II−31
4−ノナフルオロブチルアニソールの脱フッ素フェニル化反応
実施例II−25と同様にして調整した2,2−ビフェニルアルミニウム(2mmol)のヘキサン溶液に、4−ノナフルオロブチルアニソール(0.2mmol)を滴下し、室温で30分間攪拌した。後処理後、生成物のGLC分析により、(4−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルブチル(2−ビフェニル)メタンが14%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、標品とGLCにおける保持時間による比較、さらにはGC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
【0163】
【化13】

【0164】
(4−メトキシフェニル)ヘプタフルオロプロピルブチル(2−ビフェニル)メタン:
MS m/z 443 (M+), 428 (M-CH3), 424 (M-F), 274 (M-C3F7), 169 (C3F7).
実施例II−32
4-イソブチルジフルオロメチルベンゼンの脱フッ素フリル化反応
フラン(2.4mmol)とn-ブチルリチウム(2.4mmol)から調整したフリルリチウムのヘキサン溶液に、臭化アルミニウム(0.8mmol)を加えてトリフリルアルミニウムを調整した。
【0165】
これに4-イソブチルジフルオロメチルベンゼン(0.2mmol)を加えて室温で1時間攪拌した。後処理後の生成物をGLCで分析したところ、1−(4-イソブチルフェニル)−1−(2―フリル)ペンタンが3%収率、(4-イソブチルフェニル)ビス(2―フリル)メタンが10%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、標品とGLCにおける保持時間による比較、さらにはGC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
(4-イソブチルフェニル)ビス(2―フリル)メタン:
MS m/z 280 (M+), 265 (M-CH3), 237 (M-C3H7), 223 (M-C4H9), 213 (M-C4H3S).
実施例II−33
4-イソブチルジフルオロメチルベンゼンの脱フッ素チオフェン化反応
チオフェン(2.4mmol)とn-ブチルリチウム(2.4mmol)から調整したリチオチオフェンのヘキサン溶液に、臭化アルミニウム(0.8mmol)を加えてトリス(2−チオフェン)アルミニウムを調整した。これに4-イソブチルジフルオロメチルベンゼン(0.2mmol)を加えて室温で1時間攪拌した。後処理後の生成物をGLCで分析したところ、(4-イソブチルフェニル)ビス(2―チオフェン)メタンが32%収率で得られていることが判った。なお、ここで得られた生成物の構造は、標品とGLCにおける保持時間による比較、さらにはGC-MSによる分析において分子イオンピークおよびフラグメントピークから決定した。
(4-イソブチルフェニル)ビス(2―チオフェン)メタン:
MS m/z 312 (M+), 297 (M-CH3), 269 (M-C3H7), 255 (M-C4H9), 229 (M-C4H3S).
実施例II−34
4−フルオロベンゾトリフルオリド0.2mmolのn-ヘキサン:1,1,2,2-テトラクロロエタン(1:1)混合溶液1mL中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、50℃で48時間撹拌した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された4−フルオロ−t−ブチルベンゼンが得られた(収率98%)。生成物の構造は、GC-MSにおける分子イオンピークおよびフラグメントピークにより決定した。
4−フルオロ−t−ブチルベンゼン:
MS m/z 152 (M+), 137 (M-CH3), 133 (M-F).
実施例II−35
2,4,6-トリメチルベンゾトリフルオリド0.2mmolのn-ヘキサン:1,1,2,2-テトラクロロエタン(1:1)混合溶液1mL中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、室温で30分間撹拌した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCで生成物を分析した。原料のC-F結合が全てメチル基で置換された2,4,6-トリメチル−t−ブチルベンゼン(収率3%)と2,4,6-トリメチル−2−プロペニルベンゼンが得られた(収率97%)。
生成物の構造は、GC-MSにおける分子イオンピークおよびフラグメントピークにより決定した。
2,4,6-トリメチル−t−ブチルベンゼン:
MS m/z 176 (M+), 161 (M-CH3), 119 (M-C4H9).
2,4,6-トリメチル−2−プロペニルベンゼン:
MS m/z 160 (M+), 145 (M-CH3).
実施例II−36
不活性ガス(窒素)雰囲気下に、2−トリデカフルオロヘキシルベンゾフラン0.2mmolのn-ヘキサン(3mL)溶液中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、室温で24時間撹拌した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCで生成物を分析した。フラン環のα位のC-F結合2つが全てメチル基で置換された2−(2−ウンデカフルオロペンチル−2−プロピル)ベンゾフランが得られた(収率65%)。生成物の構造はGC-MSの分析により決定した。
【0166】
【化14】

【0167】
MS m/e: 428 (M+), 409 (M-F), 159 (M-C5F11), 144 (M-C5F11-CH3)
実施例II−37
不活性ガス(窒素)雰囲気下に、2−トリデカフルオロヘキシル−3−メチルチオフェン0.2mmolのn-ヘキサン(3mL)溶液中にトリメチルアルミニウム1mmolを加え、室温で24時間撹拌した。反応後、希塩酸で反応物をクエンチし、GLCで生成物を分析した。チオフェン環のα位のC-F結合2つが全てメチル基で置換された2−(2−ウンデカフルオロペンチル−2−プロピル)−3−メチルチオフェンンが得られた(収率58%)。生成物の構造はGC-MSの分析により決定した。
【0168】
【化15】

【0169】
MS m/e: 408 (M+), 389 (M-F), 139 (M-C5F11), 124 (M-C5F11-CH3)
比較例1
1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolのジクロロエタン1mL中にメチルマグネシウムブロミド1 mmolを加え、室温で撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。GLCで反応の進行を追跡したが、メチル化反応は進行せず、原料回収であった。
【0170】
比較例2
1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolのジクロロエタン1mL中にジメチル亜鉛0.8mmolを加え、室温で撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。GLCで反応の進行を追跡したが、メチル化反応は進行せず、原料回収であった。
【0171】
比較例3
1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン0.2mmolのジクロロエタン1mL中にジクロロマグネシウム1 mmolを加え、室温で撹拌したこと以外は、実施例II−1と同様にして実施した。GLCで反応の進行を追跡したが、塩素化反応は進行せず、原料回収であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物に、アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を反応させてフッ素原子を該有機基で置換して、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に該有機基を有する化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記アルミニウム化合物が、一般式(1):
Al (1)
(式中、Rは同一又は異なって、アルキル基又はハロゲン原子を示す。)
で表される化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機金属化合物が、一般式(2):
−M (2)
(式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示し、Mはリチウム、ホウ素、マグネシウム、亜鉛及び銅からなる群より選ばれる金属を示す。)
で表される結合を有する化合物である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3):
Ar−[CF(R3−n (3)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香環又は置換されていてもよいヘテロ芳香環、mは1〜4の整数、nは1〜3の整数、Rは、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−(CF−Ar’(pは0以上の整数、Ar’は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。)で示される基を示す。nが1の場合Rは同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CF(R3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
得られる芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に有機基を有する化合物が、一般式(4):
Ar−[CR(R3’3−n (4)
(式中、R3’は同一又は異なって、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−Ar’で示される基、又は式:−(CFq−1−CR−Ar’で示される基(qは1以上の整数)を示し、Ar、R、m、n及びAr’は前記に同じ。nが1の場合R3’は同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CR(R3’3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3a):
Ar−CF(R3−n (3a)
(式中、Ar、R及びnは前記に同じ。)
で表される化合物である請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3e):
Ar−CF−(CF−Ar’ (3e)
(式中、Ar、Ar’及びpは前記に同じ。)
で表される化合物である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3f):
Ar−CF−Ar’ (3f)
又は
Ar−CF−CF−Ar’ (3g)
(式中、Ar及びAr’は前記に同じ。)
で表される化合物である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記Ar及びAr’が同一又は異なって、下記式:
【化1】

(式中、Zは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アルコキシアルキル基、又は保護されていてもよい水酸基を示し、aは0〜3の整数を示す。aが2又は3の場合は、Zは同一又は異なっていてもよい。)
で表される基である請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム化合物が、一般式(1a):
AlX、AlR10、Al(R10X、又はAl(R10 (1a)
(式中、R10は同一又は異なってC1〜5アルキル基、Xは同一又は異なってF、Cl又はBrを示す。)
で表される化合物である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機金属化合物が、一般式(2a)〜(2d):
20−Li (2a)
(R20B (2b)
20−MgY (2c)
又は
(R20Zn (2d)
(式中、R20はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物である請求項3に記載の製造方法。
【請求項12】
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合したフッ素原子を、アルミニウム化合物、及び有機基を含む有機金属化合物を用いて該有機基で置換する方法。
【請求項13】
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合したフッ素原子を有する化合物に、一般式(5):
Al (5)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表される有機アルミニウム化合物を反応させて、芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にR基を有する化合物を製造する方法。
【請求項14】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3):
Ar−[CF(R3−n (3)
(式中、Arは置換されていてもよい芳香環又は置換されていてもよいヘテロ芳香環、mは1〜4の整数、nは1〜3の整数、Rは、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−(CF−Ar’(pは0以上の整数、Ar’は置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。)で示される基を示す。nが1の場合Rは同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CF(R3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
得られる芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に有機基を有する化合物が、一般式(6):
Ar−[CR(R3’’3−n (6)
(式中、R3’’は同一又は異なって、H、F以外のハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、式:−Ar’で示される基、又は式:−(CFq−1−CR−Ar’で示される基(qは1以上の整数)を示し、Ar、R、m、n及びAr’は前記に同じ。nが1の場合R3’’は同一又は異なっていてもよい。mが2〜4の整数の場合は、基:−CR(R3’’3−nはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表される化合物である請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3a):
Ar−CF(R3−n (3a)
(式中、Ar、R及びnは前記に同じ。)
で表される化合物である請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3e):
Ar−CF−(CF−Ar’ (3e)
(式中、Ar、Ar’及びpは前記に同じ。)
で表される化合物である請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上にフッ素原子を有する化合物が、一般式(3f):
Ar−CF−Ar’ (3f)
又は
Ar−CF−CF−Ar’ (3g)
(式中、Ar及びAr’は前記に同じ。)
で表される化合物である請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記Ar及びAr’が同一又は異なって、下記式:
【化2】

(式中、Zは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、アルコキシアルキル基、又は保護されていてもよい水酸基を示し、aは0〜3の整数を示す。aが2又は3の場合は、Zは同一又は異なっていてもよい。)
で表される基である請求項14〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
芳香環又はヘテロ芳香環に直結したsp混成炭素原子上に結合したフッ素原子を、一般式(5):
Al (5)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表される有機アルミニウム化合物を用いて、R基で置換する方法。
【請求項21】
一般式(5a):
Al (5a)
(式中、Rは同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。)
で表されるアルミニウム化合物の製造方法であって、一般式(7):
−Y (7)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物にアルキルリチウム試薬を反応させて、該ハロゲン原子(Y)をリチオ化し、これに一般式(8):
Al (8)
(式中、Yはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルミニウムを反応させることを特徴とする製造方法。

【公開番号】特開2009−242373(P2009−242373A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309458(P2008−309458)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】