説明

フラットケーブル用コネクタ

【課題】 フラットケーブルの端末が嵌合部の外側へ飛び出すのを防止することの可能なフラットケーブル用コネクタを提供する。また、他の課題は、嵌合部への異物の進入を防止できるフラットケーブル用コネクタを提供する。
【解決手段】 嵌合部21の開口付近を飛び出し規制部材35が覆うことで、FPC10の端末が嵌合部21の外側に飛び出すのを規制できる。また、嵌合部21内への異物の進入を防ぐことができる。また、両ハウジング20,40を嵌合するときには、飛び出し規制部材35が雌ハウジング40に押圧されて退避位置に退避することで雄ハウジング40との干渉が回避される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、FPC等のフラットケーブルの端末を接続するコネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、FPC(フレキシブルプリント基板)等のフラットケーブルは、絶縁性のベースフィルム上に導電路を形成して、さらにその上面を保護用のフィルムで覆った構成となっており、柔軟性を有している。このようなフラットケーブルの端末を接続するためのコネクタとしては、例えば実開昭53−146982号公報に開示されたものがある。このようなコネクタの構成を図7及び図8を参照して簡単に説明すると、雄ハウジング1には、相手側の雌ハウジング2を嵌合可能な嵌合部3が凹設されている。また、雄ハウジング1の表面にはフラットケーブル4が固着されており、その端末部分が嵌合部3の内側に差し込まれている。一方、雌ハウジング2は、弾性接触片5Aを有する雌側端子金具5を備えており、両ハウジング1,2を嵌合したときには、図8に示すように、フラットケーブル4が嵌合部3の内壁の一つである支持壁6に押し付けられるとともに、弾性接触片5Aがフラットケーブル4の導電路に接触して導通が取られるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の構造では、両ハウジング1,2を嵌合する前には、フラットケーブル4の端末は固定されていない自由端となっているため、自由に変形して、嵌合部3の外側へ飛び出てしまうことがある。そのような場合、フラットケーブル4の端末が外部の異物と接触して短絡したり、あるいは両ハウジング1,2を不用意に嵌合しようとするとフラットケーブル4がうまく支持壁6に沿わず接続不良を生じるなどの虞があった。また、上記構造では、嵌合部3の内側に他の部品等の異物が進入したときに、その異物がフラットケーブル4の端末に隠れて外部から視認できないため、両ハウジング1,2の嵌合作業の妨げになるという問題があった。
【0004】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、フラットケーブルの端末が嵌合部の外側へ飛び出すのを防止することの可能なフラットケーブル用コネクタを提供するところにある。また、他の目的は、嵌合部への異物の進入を防止できるフラットケーブル用コネクタを提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するための請求項1の発明に係るフラットケーブル用コネクタは、絶縁性シート上に導電路が配された柔軟性を有するフラットケーブルの端末が接続されるものであって、ハウジングには、相手側ハウジングと嵌合可能な嵌合部が備えられ、前記フラットケーブルの端末を前記嵌合部内に嵌合方向に沿って設けられた支持壁に沿わせて、前記両ハウジングの嵌合時に前記導電路を前記相手側ハウジングの有する端子と接続させるようにしたコネクタにおいて、前記ハウジングには、前記フラットケーブルの自由端が前記嵌合部の外側へ飛び出すのを規制する規制位置と、前記両ハウジングを嵌合したときに相手側ハウジングとの干渉を避ける退避位置との間で変位可能な飛び出し規制手段が設けられているところに特徴を有する。
【0006】請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記飛び出し規制手段は、前記規制位置において前記嵌合部の開口付近を覆蓋可能な板状部材によって構成されているところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用および効果】請求項1の発明によれば、飛び出し規制手段によってフラットケーブルの端末が嵌合部の外側に飛び出すのを規制できる。従って、嵌合前にFPC10の端末が外部の異物に接触して短絡したり、あるいは嵌合時に相手側の端子との接続不良を生じたりすることが防止できる。また、両ハウジングを嵌合するときには、飛び出し規制手段が退避位置に退避することで相手側ハウジングとの干渉が回避される。
【0008】請求項2の発明によれば、飛び出し規制手段は、規制位置において嵌合部の開口付近を覆蓋するため、嵌合部内への異物の進入を防ぐことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態について図1から図6を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、図1に示すように、FPC(フレキシブルプリント基板、本発明の「フラットケーブル」に相当)10の端末が接続される雄ハウジング20(本発明の「ハウジング」に相当)と、FPC10の飛び出し規制部材35(本発明の「飛び出し規制手段」に相当)とを備えて構成されている。雄ハウジング20は雌ハウジング40(本発明の「相手側ハウジング」に相当)と互いに嵌合可能とされており、以下の説明においては、雄ハウジング20と雌ハウジング40とについて互いに嵌合する側を前方とする。
【0010】はじめにFPC10について説明すると、FPC10は絶縁性のベースフィルム上に、複数条の導電路11を並列に配してなり、その上面を保護フィルムで覆うことで、柔軟性を有する帯状に形成されている(図1及び図3参照)。FPC10の端末では、所定範囲にわたって保護フィルムが剥ぎ取られて、導電路11が外部に露出している。
【0011】次に雌ハウジング40について図1を参照して簡単に説明する。雌ハウジング40は合成樹脂材によって形成されており、その上部には上下に撓み変形可能なロックアーム41が設けられている。雌ハウジング40には、幅方向(図1の紙面に直交する方向)に複数個のキャビティ42が並んで形成され、それぞれのキャビティ42には電線Wの端末に接続された雌側端子金具43(本発明の「端子」に相当)が収容されている。雌側端子金具43の前部には、上下方向に撓み変形可能な弾性接触片43Aが設けられており、キャビティ42下部の開放よりこの弾性接触片43Aの一部が下側へ張り出している。さらに、雌ハウジング40の下部には、張り出した弾性接触片43Aの周囲を覆うように、前方に開放するフード状をなす端子保護部44が設けられている。
【0012】次に、雄ハウジング20について図2から図4を参照して説明する。雄ハウジング20は合成樹脂材によって形成されており、その前部には幅方向に広い筒状をなす嵌合部21が設けられて、ここに雌ハウジング40が嵌合されるようになっている。嵌合部21の上部中央には、ロックアーム41の進入可能なアーム収容凹部22が設けられ、両ハウジング20,40を嵌合したときには、このアーム収容凹部22の上面に突設されたロック爪22Aがアーム収容凹部22に進入したロックアーム41と係合することで両ハウジング20,40が離間不能にロックされるようになっている。
【0013】また、嵌合部21の奥壁23には、後述する飛び出し規制部材35を収容可能な部材収容部23Aが設けられており、さらにその下部からは、幅方向に広い板状をなすFPC支持壁24が嵌合方向に沿って突設されている。FPC支持壁24には、スリット状のFPC挿通孔26が嵌合方向に貫通するように設けられており、ここにはFPC10の端末が後方から前方へ挿通される。FPC挿通孔26から前方に引き出されたFPC10の端末は後方上側へ折り返され、両ハウジング20,40を嵌合したときには、FPC10がFPC支持壁24の上面に沿った状態で、雌側端子金具43の弾性接触片43AがFPC10の導電路11に弾性的に接触して導通接続されるようになっている。
【0014】また、嵌合部21の後方には、図4に示すように、雄ハウジング20にFPC10を取り付けるための取付基部27と蓋部28とが設けられている。蓋部28は、薄肉状のヒンジ部28Aを介して取付基部27に対して開閉操作可能に設けられている。蓋部28を閉じたときには取付基部27と蓋部28との対向面の間に、前記のFPC挿通孔26と連なって断面クランク形状をなす取付溝部29が形成され、ここにFPC10を挟み付けるように通すことでFPC10が雄ハウジング20に対して位置決めされた状態で接続される。また、蓋部28の両側部からは一対のアーム部31が突設され、蓋部28を閉じたときにこのアーム部31が取付基部27の両側面に設けられた係止突起32と係合することで蓋部28が閉じ状態でロックされるようになっている。
【0015】一方、飛び出し規制部材35は、合成樹脂製の板状部材からなり、その外形は嵌合方向と直交する向きにて嵌合部21の内側に概ね緊密に嵌め込み可能な長方形状をなしている。また、飛び出し規制部材35には、FPC支持壁24に対応する位置に貫通孔36が設けられており、ここにFPC支持壁24を前後方向に挿通可能とされている。さて、嵌合部21の左右側壁の内側には、前後に一対ずつの位置決め突起33A,33Bが設けられている。これらの位置決め突起33A,33Bは、断面山形状をなしており、ともに飛び出し規制部材35の両側面に設けられた係止凹部37に係合可能とされている。飛び出し規制部材35は、雄ハウジング20に対して2つの位置が設定されており、位置決め突起33Aと係合する位置は規制位置とされ、このとき飛び出し規制部材35は、嵌合部21の開口21A付近に位置してFPC10の自由端が嵌合部21の外側へ飛び出すのを規制する。また、飛び出し規制部材35が位置決め突起33Bと係合する位置は退避位置とされ、このとき飛び出し規制部材35は部材収容部23A内に収容され雌ハウジング40との干渉が回避される。
【0016】次に、本実施形態のコネクタの組付手順について説明する。雄ハウジング20にFPC10を接続するには、まず蓋部28を開放しておき、FPC10の端末をFPC挿通孔26へ後側から挿通させ、FPC支持壁24の前方へ所定量引き出す。そして、蓋部28を閉じて取付基部27との間にFPC10を挟むことで、FPC10が雄ハウジング20に対して位置決めされた状態で接続される。
【0017】続いて、FPC挿通孔26より引き出されたFPC10の端末を後方上側に折り返した後、飛び出し規制部材35を嵌合部21へ嵌め込む。そして、飛び出し規制部材35を押し込んで、位置決め突起33Aと係合凹部37とが係合する規制位置とする。以上にて、コネクタの組付けが完了する。このとき、飛び出し規制部材35により嵌合部21の開口21A付近が覆われた状態となり、FPC10の自由端が嵌合部21の外側へ飛び出すことが規制されている。
【0018】次に、雄ハウジング20と雌ハウジング40とを組み付ける。雌ハウジング40を嵌合部21内へ嵌め込んでいくと、飛び出し規制部材35に雌ハウジング40の前端が突き当たり、係合凹部37が位置決め突起33Aより外れて、飛び出し規制部材35が雌ハウジング40に押圧されて嵌合部21の奥側へと移動する。そして、貫通孔36にFPC支持壁24が嵌まり込むとともに、FPC10の端末が貫通孔36の孔縁部分によってFPC支持壁24に押さえ付けられる(図5参照)。
【0019】両ハウジング20,40の嵌合がさらに進むと、FPC支持壁24が端子保護部44の内側へ進入し、弾性接触片43Aが上方に撓み変形されてFPC10の導電路11に弾性的に接触する。両ハウジング20,40が正規に嵌合されると、図6に示すように、ロックアーム41がロック爪22Aに係合して両ハウジング20,40が離間不能にロックされる。このとき、飛び出し規制部材35は位置決め突起33Bが係合凹部37に係合する退避位置に移動し、部材収容部23A内に収容される。
【0020】以上のように、本実施形態によれば、飛び出し規制部材35によってFPC10の端末が嵌合部21の外側に飛び出すのを規制できる。従って、嵌合前にFPC10の端末が外部の異物に接触して短絡したり、あるいは嵌合時に雌側との接続不良を生じたりすることが防止できる。また、両ハウジング20,40を嵌合するときには、飛び出し規制部材35が退避位置に退避することで雄ハウジング40との干渉が回避される。
【0021】さらに、飛び出し規制部材35は、規制位置において嵌合部21の開口付近を覆蓋するため、嵌合部21内への異物の進入を防ぐことができる。従って、嵌合作業等を円滑に行うことが可能となる。
【0022】本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、飛び出し規制部材35は規制位置にて嵌合部21の開口付近の大部分を覆うが、本発明によれば、飛び出し規制手段はフラットケーブルの自由端が嵌合部21の外側に飛び出すのを規制できれるものであれば、開口を覆わなくても良い。
(2)上記実施形態では、飛び出し規制部材35は、雄ハウジング20とは別部材であるが、本発明によれば、飛び出し規制手段はハウジングと一体に設けても良い。例えば、嵌合部の開口縁部からヒンジ等を介して板状の飛び出し規制手段を設け、規制位置では開口側に突出してフラットケーブルの飛び出しを規制し、退避位置では、嵌合部の壁面に沿うようにヒンジ部を折り曲げて退避させるようにしても良い。
【0023】(3)上記実施形態では、飛び出し規制部材35は、雌雄両ハウジング20,40の嵌合に伴って雌ハウジング40によって押圧されることで規制位置から退避位置へと移動するが、本発明によれば、飛び出し規制手段の規制位置から退避位置への移動は、嵌合動作とは別の操作によって行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のコネクタの嵌合前の状態を示す側断面図
【図2】ハウジングと飛び出し規制部材の組付け前の状態を示す側断面図
【図3】飛び出し規制部材を規制位置に組み付けた状態におけるコネクタの正面図
【図4】コネクタの側面図
【図5】雌雄ハウジングの嵌合途中を示す側断面図
【図6】雌雄ハウジングの嵌合後の状態を示す側断面図
【図7】従来のコネクタの嵌合前の状態を示す側断面図
【図8】従来のコネクタの嵌合後の状態を示す側断面図
【符号の説明】
10…FPC(フラットケーブル)
11…導電路
20…雄ハウジング(ハウジング)
21…嵌合部
24…支持壁
35…飛び出し規制部材(飛び出し規制手段)
40…雌ハウジング(相手側ハウジング)
43…雌側端子金具(端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁性シート上に導電路が配された柔軟性を有するフラットケーブルの端末が接続されるものであって、ハウジングには、相手側ハウジングと嵌合可能な嵌合部が備えられ、前記フラットケーブルの端末を前記嵌合部内に嵌合方向に沿って設けられた支持壁に沿わせて、前記両ハウジングの嵌合時に前記導電路を前記相手側ハウジングの有する端子と接続させるようにしたコネクタにおいて、前記ハウジングには、前記フラットケーブルの自由端が前記嵌合部の外側へ飛び出すのを規制する規制位置と、前記両ハウジングを嵌合したときに相手側ハウジングとの干渉を避ける退避位置との間で変位可能な飛び出し規制手段が設けられていることを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。
【請求項2】 前記飛び出し規制手段は、前記規制位置において前記嵌合部の開口付近を覆蓋可能な板状部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−270280(P2002−270280A)
【公開日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−70700(P2001−70700)
【出願日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】