説明

フラットバルブ装置

【課題】気体構造体の気密性を確実に保持して安全性を高めつつ薄型化し、別途、他の部品を着脱することなく容易かつ短時間で排気を完了することができるフラットバルブ装置を提供する。
【解決手段】気体構造体2の開口部に取り付けられる環状外枠部材3と、この環状外枠部材3の内周に着脱自在に螺合された円形本体部材4と、この円形本体部材4内のバルブ収容空間4dに設けられるバルブ6とから構成されており、円形本体部材4には外方貫通孔4eと内方貫通孔4fが形成され、バルブ6は、密封蓋6aと付勢部材6bとから構成され、円形本体部材4は、円形凹部4bとこの円形凹部4bに回動自在に設けられた回動蓋5とを有しており、外方貫通孔4eは、円形凹部4bの中心から偏った偏心位置に形成されているとともに、回動蓋5には、気体注入孔5bが外方貫通孔4eと等しい偏心量で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水上遊具やタイヤ、アトラクションのエアーハウス等の内部に気体を密封してなる気体構造体に取り付けられて気体の注入および排出に使用されるフラットバルブ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水上遊具やタイヤなどの気体構造体には、気体を注入したり排出するためのバルブが設けられている。従来の一般的なバルブは、一方向にだけ気体の流れを許し、反対方向には流れを阻止する働きを持つ逆止弁が用いられることが多い。そして、この逆止弁を介して息を吹き込んだり、エアポンプ等の注入器具を用いて気体を注入するようになっている。また、排気する場合には、逆止弁を開放する操作を行うことにより気体構造体から気体を抜くようになっている。
【0003】
例えば、特開平8−61534号公報には、タイヤの空気抜き作業を行うための空気抜き弁が開示されている(特許文献1)。この発明は、タイヤバルブに空気抜き弁を螺着するようにしてタイヤバルブに押し込むと、このタイヤバルブが開放され、タイヤ内の空気がばねの付勢力に対抗して弁体を押し上げ、排気路を形成して空気を外に出す。そして、タイヤ内の空気が所定圧になるまで排気されると、ばねの復元力が排気圧に勝るため、弁体が引き戻されて排気路が閉じるようになっている。
【0004】
また、特開平10−213243号公報には、タイヤに取り付けてエアーを注入するためのフラットエアーバルブ装置が記載されている(特許文献2)。この発明は、タイヤバルブがホイールから突出して外観が損なわれていたり、縁石等にぶつかって破損するのを防止するために、バルブ本体をタイヤホイールの表面から陥没するように設け、フラット蓋を螺着して閉めておく。そして、タイヤにエアーを注入する場合には、フラット蓋を外し、押しピンを内蔵した連結子をバルブ本体に螺着する。その連結子に空気圧縮機のエアーノズルを連結し、押しピンによって弁開放ピンを押し込んでエアーを圧入するようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−61534号公報
【特許文献2】
特開平10−213243号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−61534号公報に記載された発明においては、空気を抜くために別途、空気抜き弁をタイヤバルブに螺着しなければならず煩わしい。また、空気を全て抜くための構造ではないため、ゴムボートやアトラクションのエアーハウスのような気体構造体を片づける際に、空気を完全に抜く作業には使用できない。さらに、従来の一般的なバルブでは、バルブの通気量が気体構造体の容量に比べて小さく、気体を注入したり排出する作業に相当な時間と労力を要している。特に、ゴムボートやエアーハウス等は、使用時に誤って空気が抜けることを避けるために、一気に排気するのではなく、むしろ内圧を利用して弁を開放し、時間をかけて徐々に空気が抜けていくような構造とされている。
【0007】
一方、特開平10−213243号公報に記載された発明においては、外見上はバルブ本体が外部に突出しておらずフラットな状態に見えるが、タイヤの内部に陥没させているに過ぎない。また、内蔵される弁は従来の弁構造であるため、コイルばねやゴムパッキン等、変形したり、劣化し易い部品が多く使用されており、頻繁に部品を交換しなければならない。また、上記発明は外観に関する改良であり、排気を簡単かつ迅速に行うことまで考慮されていない。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、気体構造体の気密性を確実に保持して安全性を高めつつバルブ装置の薄型化が可能であり、また別途、他の部品を着脱することなく、容易かつ短時間で排気を完了することができるフラットバルブ装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るフラットバルブ装置の特徴は、内部に気体を密封して構成される気体構造体における気体注入および排出用の開口部に取り付けられる環状の環状外枠部材と、この環状外枠部材の内周に取り付けられる薄型円形状の円形本体部材と、この円形本体部材の内部に設けられるバルブとから構成されており、前記環状外枠部材は、その内周面に前記円形本体部材を着脱自在に取り付けるための着脱用めねじ部が形成されており、前記円形本体部材は、その外周面に前記着脱用めねじ部と螺合する着脱用おねじ部が形成されているとともに、その内部には前記バルブを収容するためのバルブ収容空間が形成されており、さらに、このバルブ収容空間から前記気体構造体の外方向に貫通する外方貫通孔と、前記気体構造体の内方向に貫通する内方貫通孔とが形成されており、前記バルブは、前記外方貫通孔内に嵌入して気密にする密封蓋と、この密封蓋を前記外方貫通孔側に付勢する付勢部材とから構成されている点にある。
【0010】
また、全体を薄型にするために、本発明の付勢部材は、湾曲平板状の弾性部材により形成され、その湾曲凸状部を外方貫通孔側に突出させるようにしてバルブ収容空間の内面に固定されており、前記湾曲凸状部の凸面に密封蓋が取り付けられて前記外方貫通孔内に嵌入されていることが好ましい。
【0011】
さらに、バルブの気密性や操作性を高めるために、本発明の外方貫通孔は、外方向に孔径が減少するテーパー部を備えているとともに、密封蓋はそのテーパー部と同一勾配の円錐台形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、気体漏れの防止や誤操作を防ぐために、本発明の円形本体部材は、外方貫通孔が貫通されている外方向側の表面に形成された円形凹部と、この円形凹部に回動自在に設けられた回動蓋とを有しており、前記円形凹部の内周面には、回動用めねじ部が形成され、前記回動蓋の外周面には、前記回動用めねじ部と螺合する回動用おねじ部が形成されており、前記外方貫通孔は、前記円形凹部の中心から偏った偏心位置に形成されているとともに、前記回動蓋には、気体を注入するための気体注入孔が、前記外方貫通孔と等しい偏心量で形成されていることが望ましい。
【0013】
さらに、仮にバルブから気体が漏れたとしても急激に気体漏れが進行するのを防止するために、気体注入孔は、回動蓋を円形凹部の底面に当接させた状態において、外方貫通孔と位置がずれて連通しない位置となるように形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の円形凹部は、その深さが回動蓋の高さより大きく形成されており、その円形凹部の内周面には、前記回動蓋の離脱を防止するための蓋離脱防止部が前記回動蓋上に突出されていてもよい。
【0015】
さらに、気体注入孔の位置合わせを簡単にするために、回動蓋を回動用めねじ部に沿って回転させて蓋離脱防止部に当接させたとき、気体注入孔が外方貫通孔上に一致して連通するように位置決めされていることが好ましい。
【0016】
また、円形本体部材には、気体構造体の内部に脱落するのを防止するために外方向側の縁部をフランジ状に延出させた気密用フランジ部が形成されており、前記環状外枠部材には、前記気密用フランジ部を受けるために外方向側の内周縁部を凹状にしたフランジ収容部が形成されていてもよい。
【0017】
さらに、排気の際に円形本体部材が吹き飛ばないようにするため、予備的な排気を行うための予備排気用溝が、前記円形本体部材の外周面における厚さ方向の略中間位置から気体構造体内に連通するように形成されているか、あるいは、前記環状外枠部材の内周面における厚さ方向の略中間位置から気体構造体外に連通するように形成されていることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るフラットバルブ装置の実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のフラットバルブ装置1を示す全体斜視図であり、図2はそのA−A線における側方断面図である。本実施形態のフラットバルブ装置1は、数センチ径程度のボタン大に形成されており、主として、気体構造体2における気体の注入および排出のための開口部に取り付けられる環状の環状外枠部材3と、この環状外枠部材3の内周に着脱自在に取り付けられる薄型円形状の円形本体部材4と、この円形本体部材4に回動自在に取り付けられる回動蓋5と、円形本体部材4の内部に備えられて気体の出入りを調節するバルブ6とから構成されている。
【0020】
ここで、本実施形態のフラットバルブ装置1における各構成部について、より詳細に説明する。なお、本実施形態の説明において、気体構造体2の外部に向かう方向を外方向とし、内部に向かう方向を内方向とする。
【0021】
まず、図1および図2に示すように、環状外枠部材3は、内側を真円状に開口したリング状に形成されている。その外周面は気体構造体2に気体を充填排気するための開口部に熱圧着や接着剤等により固着されている。また、環状外枠部材3の内周面には、円形本体部材4を着脱自在に保持するための着脱用めねじ部3aが形成されている。さらに、外方向側の内周縁部には、後述する円形本体部材4のフランジ部4iを収容するフランジ収容部3bが形成されている。本実施形態では、環状外枠部材3を硬質プラスチック材料により形成しているが、劣化し難い材料であればアルミニウム等の他の材料を用いても良い。また、環状外枠部材3は、空気注入時に、圧着部の一部分にのみ応力が集中するのを防止するため、円形状に形成しているが、ある程度応力集中を抑制できる形状であれば、多角形状であってもよい。
【0022】
つぎに、円形本体部材4は、環状外枠部材3と同様、劣化しにくく強度に優れている硬質プラスチック材料により薄型円形状に形成されている。この円形本体部材4の外周面には、環状外枠部材3の着脱用めねじ部3aと螺合する着脱用おねじ部4aが形成されている。一方、円形本体部材4の外方向側の表面には、回動蓋5の直径と略同一の直径を有する円形凹部4bが同心円状に形成されている。そして、この円形凹部4bの内周面には回動蓋5を回動自在に保持するための回動用めねじ部4cが形成されている。
【0023】
また、図2に示すように、円形本体部材4の内部には、平面略円形状のバルブ収容空間4dが形成されている。このバルブ収容空間4dは、前述した円形凹部4bの下方に位置している。バルブ収容空間4dには、気体構造体2の外方向に貫通する外方貫通孔4eと、気体構造体2の内方向に貫通する内方貫通孔4fとが形成されている。外方貫通孔4eは、円形凹部4bの底面を貫通しており、その位置は円形凹部4bの中心ではなく、中心から偏った偏心位置に形成されている。また、図2に示すように、外方貫通孔4eは、外方向側の略半分をその内径が一定の直線部4e1に形成されており、内方向側の略半分を外方向に内径が所定の勾配で減少するようにテーパー状のテーパー部4e2に形成されている。このテーパー部4e2には、後述するバルブ6の密封蓋6aが嵌入されて密閉される。
【0024】
つぎに、バルブ6について説明する。バルブ6は、バルブ収容空間4d内に設けられており、密封蓋6aと付勢部材6bとから構成されている。密封蓋6aは、外方貫通孔4eのテーパー部4e2と同一勾配の円錐台形状に形成されている。このような上面を小さくした円錐台形状に形成されているため、外方貫通孔4eに誘導されやすく、蓋を閉める再現性が高い。また密封蓋6aは、ゴム材料でもよいが、劣化防止するためにアルミニウム等の金属材料や硬質プラスチック等の他の材料により精密加工してもよい。
【0025】
一方、付勢部材6bは、湾曲平板状の弾性部材により形成され、その湾曲凸状部を外方貫通孔4e側に突出させるようにしてバルブ収容空間4dの底面に固定されている。そして、前記湾曲凸状部の凸面に密封蓋6aが取り付けられており、この密封蓋6aを外方貫通孔4eのテーパー部4e2に嵌入するように付勢することで、外方貫通孔4eとの気密状態が保持される。
【0026】
また、図2および図3に示すように、円形本体部材4の外周面には、厚さ方向の適当な位置から気体構造体2の内部側まで予備排気用溝4gが形成されている。この予備排気用溝4gは、排気のために円形本体部材4を弛めて環状外枠部材3から取り外す際に、初期段階で徐々に空気を抜くための通気孔を形成するものである。
【0027】
さらに、円形本体部材4の円形凹部4bは、回動蓋5を完全に収容するために、その凹部の深さを回動蓋5の高さよりも大きく形成されている。そして、円形凹部4bの上縁部から中心方向に円形状に蓋離脱防止部4hが形成されており、回動蓋5上に突出されている。これにより、回動蓋5が円形本体部材4から離脱するのを防ぐようになっている。さらに、円形本体部材4の外周面における上縁部には、フランジ状にフランジ部4iが延出されており、円形本体部材4が環状外枠部材3の内側に入り込み過ぎないようになっている。また、本実施形態では、このフランジ部4iとフランジ収容部3bとの間にゴム製のパッキン8を介在させている。このパッキン8は、図2や図9に示すように、環状外枠部材3のフランジ収容部3bに形成した凹状溝に嵌入されている。円形本体部材4のフランジ部4iは、パッキン8の凹状溝に合わせて凸状部が形成されており、前記円形本体部材4を締め込んだ際に一層気密性が保持される。
【0028】
なお、円形本体部材4の外方向側の表面(図2の上面)には、その中心から対称位置に一対の回動用係合溝4jが形成されている。この回動用係合溝4jは、図2に示すように、その断面が円形本体部材4の中心方向に向かって斜め下方に形成されており、所定の回動用治具(図示せず)を使って係合されて回転されるようになっている。また、図1および図2に示すように、円形本体部材4と環状外枠部材3とは、気体構造体2の内側で連結ワイヤ7によって連結されている。連結ワイヤ7の連結部分は円形本体部材4が回転されても絡まないように回動自在に取り付けられている。
【0029】
つぎに、回動蓋5は、硬質プラスチック材料により薄型円形状に形成され、円形凹部4bに嵌入される。回動蓋5の外周面には、円形凹部4bに形成された回動用めねじ部4cと螺合する回動用おねじ部5aが形成されている。また、回動蓋5には、中心から偏った偏心位置に厚さ方向に貫通する気体注入孔5bが形成されている。この気体注入孔5bの偏心量は、前述した外方貫通孔4eの偏心量と等しくなるように位置決めされている。
【0030】
また、気体注入孔5bは、回動蓋5が円形凹部4bの底面に当接した状態では、外方貫通孔4eに重ならず、連通しない位置に形成されている。これにより、底面に達した回動蓋5は外方貫通孔4eの蓋として機能し、気密性が高くなる。一方、回動蓋5を回転させて蓋離脱防止部4hに当接させた場合、気体注入孔5bが外方貫通孔4eに重なり、連通するように位置決めされている。これにより、蓋離脱防止部4hは、空気を注入する際の注入位置を決める基準としても機能する。なお、回動蓋5の外方向側の表面(図2の上面)には、円形本体部材4と同様、一対の回動用係合溝5cが形成されている。
【0031】
つぎに、本実施形態におけるフラットバルブ装置1の気体の注入時および排気時の作用について説明する。
【0032】
まず、気体構造体2にフラットバルブ装置1を介して気体を注入する場合について説明する。この場合、偏心位置にある気体注入孔5bを外方貫通孔4eに位置合わせするために、円形本体部材4に螺着された回動蓋5を所定の回転角度だけ回転させる。つまり、図4に示すように、上方から見ると、気体注入孔5bが外方貫通孔4eに重なる位置にまで回転させ、両者を直線状に連通させる。回転蓋5を回転する場合、図示しない爪状の回動用治具を回動用係合溝5cに係合すればよい。また、本実施形態では、回動蓋5を蓋離脱防止部4hに当接するまで外方向に回転移動させれば、気体注入孔5bを外方貫通孔4eに正確に位置合わせできる。
【0033】
気体注入孔5bを外方貫通孔4eと連通させた後、図5に示すように、その連通した孔5b,4eに気体注入装置9を挿入し高圧で気体を送気する。この高圧気体により、密封蓋6aを付勢部材6bの付勢力に対抗して内方向に押動し、テーパー部4e2との間に隙間が生じる(図6参照)。その隙間から気体が浸入し、バルブ収容空間4dを通って内方貫通孔4fから気体構造体2内に注入される。
【0034】
そして、気体構造体2に気体が充填されると、気体注入装置9の送気を停止する。これにより、密封蓋6aは、付勢部材6bの付勢力によって再びテーパー部4e2内に嵌入され、気密状態がを保持される。この状態で気体注入装置9を抜いても気体は漏出しない。
【0035】
気体注入装置9を引き抜いた後、再び、回動用治具を回動用係合溝5cに係合させて回動蓋5を回転させ、図2に示すように、円形凹部4bの底面に当接するまで移動させる。これにより、図7に示すように、気体注入孔5bは外方貫通孔4eと連通しない位置に移動するとともに、外方貫通孔4eの開口部は回動蓋5によって密閉されるので、気体構造体2の気密状態をより一層高められる。なお、図8に示すように、円形凹部4bの底面と回動蓋5との間にリング状のゴム製のパッキン10を設けることにより、さらに気密性を高めてもよい。あるいは、めねじ部やおねじ部にゴムを取り付けるようにしてもよい。
【0036】
つぎに、本フラットバルブ装置1により気体構造体2の排気を行う場合について説明する。この場合、円形本体部材4を環状外枠部材3から離脱して急速に排気する。まず、円形本体部材4の回動用係合溝4jに図示しない回動用治具を係合させて外方向に移動するように回転させる。このとき、誤って内方向に移動するように回転しても、フランジ部4iが環状外枠部材3のフランジ収容部3bに当接して、それ以上内側に落ち込むのを防止する。
【0037】
図9に示すように、円形本体部材4が、その厚さの約半分以上の長さまで外方向に回転移動されると、予備排気用溝4gが開放され、気体構造体2の外部と内部とを連通する。これにより、気体構造体2内から予備排気用溝4gを通って気体が放出される。このように徐々に空気を放出できるため、気体構造体2の内圧を徐々に低下させ、急激な減圧による蓋への負担を減らしている。
【0038】
つづいて図10に示すように、円形本体部材4が環状外枠部材3から完全に離脱されると、気体構造体2の内部に充填されていた気体は環状外枠部材3の開口部から一気に排気される。このとき、予備排気用溝4gによって予め減圧しているため、内圧によって円形本体部材4が勢いよく飛び出てしまうことがない。また、連結ワイヤ7が環状外枠部材3と円形本体部材4とを連結しているため、外された円形本体部材4が紛失してしまうのを防止する。
【0039】
以上のような本実施形態によれば、気体構造体2の気密性を確実に保持して安全性を高めつつ、薄型化することができる。しかも、別途、他の部品を着脱することなく、容易にかつ短時間で気体構造体2の排気を完了できる。
【0040】
また、付勢部材6bを湾曲平板状の弾性部材により形成し、その湾曲凸状部を外方貫通孔4e側に突出させるようにして固定するとともに、前記湾曲凸状部の凸面に密封蓋6aを取り付けるので、簡素な構成でバルブを薄型化することができる。
【0041】
さらに、外方貫通孔4eと密封蓋6aとの形状を外方向に孔径が減少する同一勾配のテーパー状に形成しているので、気体構造体2の内圧で押されて気密性が高めやすい形状である。また、空気を注入する際に密封蓋6aが外方貫通孔4eから一旦外れても、外方貫通孔4e内に案内され易く再現性が高い。
【0042】
また、回動蓋5の気体注入孔5bは、所定の回動角度範囲においてのみ外方貫通孔4eと連通するようになっており、さらに回動蓋5が円形凹部4bの底面と当接させておけば、外方貫通孔4eと連通されずに蓋を閉める状態になる。したがって、万が一バルブ6が破損しても、回動蓋5によって気体が急激に洩れず、安全性が高い。
【0043】
さらにまた、回動蓋5を回し過ぎても、蓋離脱防止部4hに当接するようになっているので、回動蓋5の離脱を防止できる。しかも回動蓋5を蓋離脱防止部4hに当接させれば気体注入孔5bが外方貫通孔4eと連通するため、気体を注入する際にその都度目視によって孔5b,4eの位置を確認する必要がなく便利である。
【0044】
また、円形本体部材4を内方向に締め過ぎても、フランジ部4iが環状外枠部材3のフランジ収容部3bに当接するので、円形本体部材4が気体構造体2内に脱落することはない。
【0045】
また、円形本体部材4および回動蓋5の上面がフラットに形成されているため、回転させるには回動用治具が必要であり、使用時に誤って空気を抜いてしまうことがないし、逆に回動用治具を使用すれば極めて簡単に回転させられることから、安全性と機能性を兼ね備えている。なお、この回動用治具の機能を空気注入装置9に兼用させてもよい。つまり、空気注入装置9に回動用係合溝5cと係合する係合部(図示せず)を形成し、これらを係合させた状態で気体注入孔5bに気体注入口が挿入できるようにすればよい。これにより、空気注入装置9によって回動蓋5を回動できることはもちろん、気体を注入後に直ちに回動蓋5を回動させて外方貫通孔4eを塞ぐことができるため、空気注入装置9を取り外した瞬間の空気漏れを防止できる。
【0046】
なお、本発明に係るフラットバルブ装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、本実施形態では、予備排気用溝4gを円形本体部材4の外周面に形成しているが、これに限らず、図11に示すように、環状外枠部材3の内周面に、その中心軸方向における中間位置近傍から外方向に連通するように形成してもよい。また、本実施形態では、フランジ収容部3bにパッキン8を固着しているが、図11に示すように、このパッキン8をフランジ部4iに固着するようにし、フランジ収容部3bにはパッキン8に合う凹状溝を形成するようにしてもよい。
【0047】
また、円形本体部材4および回動蓋5の外表面には、回動し易くするための回動用係合溝4j,5cを形成しているが、凸状部を形成するようにしてもよい。さらに、本実施形態では、内方貫通孔4fを1つだけ形成しているがこれに限らず、複数個設けて通気性を高めてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、気体構造体の気密性を確実に保持して安全性を高めつつ薄型化することができ、また別途、他の部品を着脱することなく容易にかつ短時間で排気を完了できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るフラットバルブ装置の実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 本実施形態における円形本体部材および回動蓋を示す斜視図である。
【図4】 本実施形態において気体を注入する状態を示す平面透視図である。
【図5】 本実施形態において気体を注入する状態を示す側面断面図である。
【図6】 本実施形態において気体を注入する状態を示す側面断面図である。
【図7】 本実施形態において気体を密封した状態を示す平面透視図である。
【図8】 本発明に係るフラットバルブ装置の他の実施形態を示す側面断面図である。
【図9】 本実施形態において予備排気用溝を通じて初期的な排気状態を示す側面断面図である。
【図10】 本実施形態において円形本体部材が外れた状態を示す側面断面図である。
【図11】 本実施形態における予備排気用溝およびパッキンの他の実施形態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1 フラットバルブ装置
2 気体構造体
3 環状外枠部材
3a 着脱用めねじ部
3b フランジ収容部
4 円形本体部材
4a 着脱用おねじ部
4b 円形凹部
4c 回動用めねじ部
4d バルブ収容空間
4e 外方貫通孔
4e1 直線部
4e2 テーパー部
4f 内方貫通孔
4g 予備排気用溝
4h 蓋離脱防止部
4i フランジ部
4j 回動用係合溝
5 回動蓋
5a 回動用おねじ部
5b 気体注入孔
5c 回動用係合溝
6 バルブ
6a 密封蓋
6b 付勢部材
7 連結ワイヤ
8 パッキン
9 気体注入装置
10 パッキン(他の実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気体を密封してなる気体構造体の気体注入および排出用の開口部に取り付けられる環状の環状外枠部材と、この環状外枠部材の内周に取り付けられる薄型円形状の円形本体部材と、この円形本体部材の内部に設けられるバルブとから構成されており、
前記環状外枠部材には、その内周面に前記円形本体部材を着脱自在に取り付けるための着脱用めねじ部が形成されており、
前記円形本体部材には、その外周面に前記着脱用めねじ部と螺合する着脱用おねじ部が形成されているとともに、その内部には前記バルブを収容するためのバルブ収容空間が形成されており、このバルブ収容空間から前記気体構造体の外方向に貫通する外方貫通孔と、前記気体構造体の内方向に貫通する内方貫通孔とが形成されており、
前記バルブは、前記外方貫通孔内に嵌入して気密にする密封蓋と、この密封蓋を前記外方貫通孔側に付勢する付勢部材とから構成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記付勢部材は、湾曲平板状の弾性部材により形成され、その湾曲凸状部を外方貫通孔側に突出させるようにしてバルブ収容空間の内面に固定されており、前記湾曲凸状部の凸面に密封蓋が取り付けられて前記外方貫通孔内に嵌入されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記外方貫通孔は外方向に孔径が減少するテーパー部を備えているとともに、前記密封蓋はそのテーパー部と同一勾配の円錐台形状に形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記円形本体部材は、外方貫通孔が貫通されている外方向側の表面に形成された円形凹部と、この円形凹部に回動自在に設けられた回動蓋とを有しており、
前記円形凹部の内周面には、回動用めねじ部が形成され、前記回動蓋の外周面には、前記回動用めねじ部と螺合する回動用おねじ部が形成されており、
前記外方貫通孔は、前記円形凹部の中心から偏った偏心位置に形成されているとともに、前記回動蓋には、気体を注入するための気体注入孔が、前記外方貫通孔と等しい偏心量で形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項5】
請求項4において、回動蓋が円形凹部の底面に当接した状態では、前記気体注入孔が、外方貫通孔と位置がずれて連通しない位置となるように形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記円形凹部は、その深さが回動蓋の高さより大きく形成されており、前記円形凹部の内周面には、前記回動蓋の離脱を防止するための蓋離脱防止部が前記回動蓋上に突出されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項7】
請求項6において、前記回動蓋を回動用めねじ部に沿って回転させて蓋離脱防止部に当接させたとき、気体注入孔が外方貫通孔上に一致して連通するように位置決めされていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかにおいて、前記円形本体部材には、気体構造体の内部に脱落するのを防止するために外方向側の縁部をフランジ状に延出させた気密用フランジ部が形成されており、前記環状外枠部材には、前記気密用フランジ部を受けるために外方向側の内周縁部を凹状にしたフランジ収容部が形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかにおいて、円形本体部材を環状外枠部材から離脱させて完全排気を実行する前に、予備的な排気を行うための予備排気用溝が前記円形本体部材の外周面における厚さ方向の略中間位置から気体構造体内に連通するように形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかにおいて、円形本体部材を環状外枠部材から離脱させて完全排気を実行する前に、予備的な排気を行うための予備排気用溝が前記環状外枠部材の内周面における厚さ方向の略中間位置から気体構造体外に連通するように形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気体を密封してなる気体構造体の気体注入および排出用の開口部に取り付けられる環状の環状外枠部材と、この環状外枠部材の内周に取り付けられる円形状の円形本体部材と、この円形本体部材の内部に設けられるバルブとから構成されており、
前記環状外枠部材には、その内周面に前記円形本体部材を着脱自在に取り付けるための着脱用めねじ部が形成されており、
前記円形本体部材には、その外周面に前記着脱用めねじ部と螺合する着脱用おねじ部が形成されているとともに、その内部には前記バルブを収容するためのバルブ収容空間が形成されており、このバルブ収容空間から前記気体構造体の外方向に貫通する外方貫通孔と、前記気体構造体の内方向に貫通する内方貫通孔とが形成されており、
前記バルブは、前記外方貫通孔内に嵌入して気密にする密封蓋と、この密封蓋を前記外方貫通孔側に付勢する付勢部材とから構成されており、
前記円形本体部材は、外方貫通孔が貫通されている外方向側の表面に形成された円形凹部と、この円形凹部に回動自在に設けられた回動蓋とを有しており、前記円形凹部の内周面には、回動用めねじ部が形成され、前記回動蓋の外周面には、前記回動用めねじ部と螺合する回動用おねじ部が形成されており、前記外方貫通孔は、前記円形凹部の中心から偏った偏心位置に形成されているとともに、前記回動蓋には、気体を注入するための気体注入孔が、前記外方貫通孔と等しい偏心量で形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項2】
請求項において、回動蓋が円形凹部の底面に当接した状態では、前記気体注入孔が、外方貫通孔と位置がずれて連通しない位置となるように形成されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項3】
請求項または請求項において、前記円形凹部は、その深さが回動蓋の高さより大きく形成されており、前記円形凹部の内周面には、前記回動蓋の離脱を防止するための蓋離脱防止部が前記回動蓋上に突出されていることを特徴とするフラットバルブ装置。
【請求項4】
請求項において、前記回動蓋を回動用めねじ部に沿って回転させて蓋離脱防止部に当接させたとき、気体注入孔が外方貫通孔上に一致して連通するように位置決めされていることを特徴とするフラットバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−242198(P2006−242198A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−168506(P2003−168506)
【出願日】平成15年6月12日(2003.6.12)
【特許番号】特許第3504945号(P3504945)
【特許公報発行日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【出願人】(501118060)
【Fターム(参考)】