説明

フラット回路体と接続部材の接続方法およびその接続装置

【課題】 フラット回路体における導体部に対する接続部材の接続作業を、連続した一工程で短時間且つ容易に行なえるようにすると共に、電気的に確実に接続し且つ安定した接続を確保できるフラット回路体と接続部材の接続方法およびその接続装置を提供すること。
【解決手段】 対向配置されたアンビル11とクリンパ13との間にフラット回路体19を位置させると共に、フラット回路体19とクリンパ13との間の作動位置APにスペーサ15を配置する。そして、接続部材17の底板部17bをアンビル11で押圧して爪部17aの先端部をスペーサ15の収容室25に収容しながら爪部17aをフラット回路体19の所定の箇所に貫通させる。次いで、スペーサ15を待避位置EPに待避させた後、更に接続部材17の底板部17bをアンビル11で押圧してフラット回路体19を貫通した爪部17aの先端部をクリンパ13の曲げ凹部13aに押圧して爪部17aの先端部を曲げて接続部材17とフラット回路体19とを電気的に接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット回路体と接続部材の接続方法およびその接続装置に関し、より詳細には、例えば、FPC(即ち、Flexible Printed Circuit)、FFC(即ち、Flexible Flat Cable)、リボン電線、等といった可撓性を有するフラット回路体における導体部に対して接続部材を効率よく、また電気的に確実に接続し且つ安定した接続を確保できるフラット回路体と接続部材の接続方法およびその接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフラットケーブルと接続端子の接続方法は、フラットケーブルを挟んで配置されたアンビルとフラットケーブル受け金具とで接続端子を押圧することにより、接続端子のクリンプ片をフラットケーブルに突き刺し、更にクリンプ片の先端を曲成してフラットケーブルと接続端子を接続する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。図7は、特許文献1で開示されている従来のフラットケーブルと接続端子の接続方法の加工工程を示す縦断面図である。
【特許文献1】特開2003−134630号公報(第3−5頁、図4)
【0003】
図7に示されるように、特許文献1で開示されたフラットケーブル1と接続端子2の接続は、アンビル4と、フラットケーブル1の下に配置してフラットケーブル1を受けると共に表面にクリンプ片2aを受けるクリンプ片受け溝3aおよびフラットケーブル1を突き抜けたクリンプ片2aの先端部を曲成して加締めるクリンプ片曲成加締め凹部3bとが併設されたフラットケーブル受け金具3と、が用いて行なわれる。
【0004】
即ち、フラットケーブル1をフラットケーブル受け金具3の上に載せ、接続端子2をそのクリンプ片2aがクリンプ片受け溝3aに対向するように位置させて配置する。接続端子2をガイド部材5でガイドしながら接続端子2の端子板2bをアンビル4で加圧してクリンプ片2aをフラットケーブル1に貫通させる。このとき、フラットケーブル1を貫通したクリンプ片2aの先端部は、クリンプ片受け溝3a内に収容される。接続端子2の押圧は、接続端子2の端子板2bとフラットケーブル1との間に隙間Gがある状態で停止される。次いで、フラットケーブル受け金具3を矢印A方向に、次いで矢印B方向に移動させてクリンプ片曲成加締め凹部3bをクリンプ片2aに対応させて位置決めした後、フラットケーブル受け金具3を矢印C方向に移動させてアンビル4と協働してクリンプ片2aを圧縮し、フラットケーブル1を貫通したクリンプ片2aの先端部をクリンプ片曲成加締め凹部3bで円弧状に曲成して加締め、フラットケーブル1と接続端子2とを電気的に接続させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているフラットケーブル1と接続端子2の接続は、接続端子2のクリンプ片2aをフラットケーブル1に貫通させる突き刺し工程と、クリンプ片2aの先端部をクリンプ片曲成加締め凹部3bで円弧状に曲成して加締める曲成加締め工程と、がそれぞれ独立した別工程として行なわれる。従って、接続のための設備が大型化するばかりでなく、接続作業に長時間を要し、作業が効率的でない問題点があった。尚、突き刺し工程と曲成加締め工程を別工程とするのは、突き刺し工程と曲成加締め工程を同時に行おうとすると、クリンプ片2aの突き刺し工程においてフラットケーブル1をフラットケーブル受け金具3で十分に保持することができず、フラットケーブル1に対するクリンプ片2aの貫通が不完全となったり、突き刺し位置がズレる場合があり、電気的接続が十分に確保できなくなる虞があるからである。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラット回路体における導体部に対する接続部材の接続作業を短時間で容易に行なえるようにすると共に、電気的に確実に接続し且つ安定した接続を確保できるフラット回路体と接続部材の接続方法およびその接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係るフラット回路体と接続部材の接続方法は、導体部が設けられたフラット回路体と、底板部および前記底板部から立設された爪部を有する接続部材と、を備え、前記爪部を前記フラット回路体の所定の箇所に、その厚さ方向に貫通させた後、前記爪部の先端部を曲げて前記フラット回路体と前記接続部材とを電気的に接続させるフラット回路体と接続部材の接続方法であって、
前記接続部材の前記底板部を押圧するアンビルを前記フラット回路体の一方の面側に配置するステップと、
前記爪部を前記フラット回路体の前記一方の面に向け、前記接続部材を前記フラット回路体の所定の箇所に位置させるステップと、
前記爪部を押圧して曲げるための曲げ凹部が形成されたクリンパを、その曲げ凹部を前記爪部に対応させて前記フラット回路体の他方の面側に配置するステップと、
前記フラット回路体を貫通した前記爪部の前記先端部を収容可能な収容室が設けられたスペーサを、前記フラット回路体と前記クリンパとの間の作動位置に配置するステップと、
前記接続部材の前記底板部を前記アンビルで押圧し、前記爪部の前記先端部を前記スペーサの前記収容室に収容しながら前記爪部を前記フラット回路体の所定の箇所に貫通させるステップと、
前記スペーサを前記フラット回路体および前記クリンパから離間した待避位置に待避させるステップと、
前記接続部材の前記底板部を前記アンビルで更に押圧して前記フラット回路体を貫通した前記爪部の前記先端部を前記クリンパの前記曲げ凹部に押圧して前記爪部の前記先端部を曲げるステップと、
を有することを特徴としている。
【0008】
上記のフラット回路体と接続部材の接続方法によれば、対向配置されたアンビルとクリンパとの間にフラット回路体を位置させると共に、フラット回路体とクリンパとの間にスペーサを配置し、更に、その爪部をフラット回路体の一方の面に向けて接続部材をフラット回路体の所定の箇所に配置する。このとき、アンビルと接続部材の底板部、接続部材の爪部とスペーサの収容室およびクリンパの曲げ凹部とが対向して配置される。そして、接続部材の底板部をアンビルで押圧して爪部の先端部をスペーサの収容室に収容しながら爪部をフラット回路体の所定の箇所に貫通させた後、スペーサをフラット回路体およびクリンパから離間した待避位置に待避させ、更に接続部材の底板部をアンビルで押圧してフラット回路体を貫通した爪部の先端部をクリンパの曲げ凹部に押圧して爪部の先端部を曲げて接続部材とフラット回路体とを電気的に接続させる。
これにより、フラット回路体と接続部材との接続作業、具体的には、フラット回路体に対する接続部材の爪部の貫通作業および爪部の曲げ作業を連続した一工程で行なうことができるので、短時間で効率よくフラット回路体と接続部材との接続作業を行なうことができる。
また、フラット回路体に対する接続部材の爪部の貫通は、フラット回路体がスペーサによって保持された状態で行なわれるので確実に所定の位置に貫通させることができ、導体部が高密度に設けられたフラット回路体であっても、所定の導体部に爪部を確実に貫通させることができ、信頼性の高い接続が可能となる。
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明に係るフラット回路体と接続部材の接続装置は、底板部および前記底板部から立設された爪部を有する接続部材の前記爪部を、導体部が設けられたフラット回路体の所定の箇所にその厚さ方向に貫通させ、更に前記フラット回路体を貫通した前記爪部の先端部を曲げて前記フラット回路体と前記接続部材とを電気的に接続させるフラット回路体と接続部材の接続装置であって、
前記フラット回路体の一方の面に離接可能に配置され、前記接続部材の前記底板部を押圧するアンビルと、
前記アンビルに対向して前記フラット回路体の他方の面に離接可能に配置され、前記爪部を押圧して曲げるための曲げ凹部が形成されたクリンパと、
前記フラット回路体を貫通する前記爪部の前記先端部を収容可能な収容室が設けられ、前記フラット回路体と前記クリンパとの間の作動位置と、前記フラット回路体と前記クリンパとから離間した待避位置とに移動可能とされたスペーサと、
を備え、
前記アンビルを前記接続部材の前記底板部に対向させて配置し、且つ前記曲げ凹部と前記接続部材の前記爪部とを対向させて前記クリンパを前記アンビルに対向させて配置すると共に、前記収容室と前記接続部材の前記爪部とを対向させて前記スペーサを前記フラット回路体と前記クリンパとの間の作動位置に配置した後、前記底板部を前記アンビルで押圧して前記爪部の前記先端部を前記スペーサの前記収容室に収容しながら前記爪部を前記スペーサにより支持された前記フラット回路体に貫通させ、前記スペーサを前記フラット回路体と前記クリンパとから離間した待避位置に待避させ、更に前記アンビルにより前記底板部を押圧して前記爪部の前記先端部を前記クリンパの前記曲げ凹部に押圧して曲げて前記接続部材と前記フラット回路体とを電気的に接続させることを特徴としている。
【0010】
上記の構成のフラット回路体と接続部材の接続装置は、接続部材の底板部を押圧するアンビルと、接続部材の爪部を押圧して曲げるための曲げ凹部が形成されアンビルに対向して配置されたクリンパと、フラット回路体を貫通する爪部の先端部を収容可能な収容室が設けられフラット回路体とクリンパとの間の作動位置と、フラット回路体とクリンパとから離間した待避位置とに移動可能とされたスペーサと、を備える。
そして、スペーサをフラット回路体とクリンパとの間の作動位置に配置した後、接続部材の底板部をアンビルで押圧して爪部の先端部をスペーサの収容室に収容しながらスペーサにより支持されたフラット回路体に爪部を貫通させた後、スペーサをフラット回路体とクリンパとから離間した待避位置に待避させ、更にアンビルにより底板部を押圧して爪部の先端部をクリンパの曲げ凹部に押圧して曲げて接続部材とフラット回路体とを電気的に接続させる。
従って、従来のフラット回路体と接続部材の接続装置のように、収容室および曲げ凹部をクリンパに離間させて形成しておき、フラット回路体に対する爪部の突き刺し工程および爪部先端部の曲げ工程ごとにクリンパを移動させて収容室または曲げ凹部を接続部材の爪部に対向配置させる必要がなく、連続した一工程で突き刺し工程および曲げ工程を効率よく行なうことができる。これによって、フラット回路体と接続部材の接続装置の簡素化が図られ、接続装置の小型化が可能となる。また、アンビルとクリンパの相対位置は常に一定位置に固定さているので、接続部材の爪部とクリンパの曲げ凹部との相対位置が安定し、常に一定状態での曲げ加工が可能となり、接続部材とフラット回路体とを確実に電気的に接続することができる。
【0011】
尚、本発明に係るフラット回路体と接続部材の接続装置においては、前記スペーサの収容室が、一方の側面が外部に開放され、前記スペーサを前記フラット回路体の面に沿って移動させることにより前記スペーサを前記作動位置から前記待避位置に移動させて前記収容室内に収容された前記爪部の前記先端部を前記収容室から離脱可能な収容溝であることが望ましい。
【0012】
この構成のフラット回路体と接続部材の接続装置によれば、スペーサの収容室は、スペーサをフラット回路体の面に沿って移動させることにより収容室内に収容された爪部の先端部を収容室から離脱可能なように一方の側面が外部に開放された収容溝としたので、単にスペーサをスライド移動させるだけで作動位置から待避位置へ(或いは、待避位置から作動位置へ)移動させることができる。
従って、爪先端部の曲げ工程において、クリンパをアンビルから一旦離間させた後、クリンパを水平移動させ、再びクリンパをアンビルに接近させる従来の接続装置と比較して、クリンパの単純な動作によって突き刺し工程から曲げ工程に直ちに移行して爪先端部を曲げることができ、短時間で効率よく接続作業を行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフラット回路体と接続部材の接続方法およびその接続装置によれば、対向配置されたアンビルとクリンパとの間にフラット回路体を位置させると共に、フラット回路体とクリンパとの間の作動位置にスペーサを配置する。そして、その爪部をフラット回路体の一方の面に向けて接続部材をフラット回路体の所定の箇所に配置し、接続部材の底板部をアンビルで押圧して爪部の先端部をスペーサの収容室に収容しながら爪部をフラット回路体の所定の箇所に貫通させ、次いで、スペーサを待避位置に待避させた後、更に接続部材の底板部をアンビルで押圧してフラット回路体を貫通した爪部の先端部をクリンパの曲げ凹部に押圧して爪部の先端部を曲げて接続部材とフラット回路体とを電気的に接続させようにしたので、フラット回路体における導体部に対する接続部材の接続作業を連続した一工程で、短時間且つ容易に行なうことができる。また、電気的に確実且つ安定して接続することができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態であるフラット回路体と接続部材の接続装置の要部斜視図、図2は図1におけるフラット回路体に接続部材の爪部が貫通した状態を示す縦断面図、図3は接続部材の要部斜視図、図4はフラット回路体の部分破断斜視図である。また、図5はフラット回路体に接続部材が接続される手順を示し、(a)は接続装置にフラット回路体および接続部材がセットされた状態を示す縦断面図、(b)はフラット回路体に接続部材の爪部が貫通した状態を示す縦断面図、(c)はスペーサを待避位置に待避させた状態を示す縦断面図、(d)は爪部の先端部がクリンパの曲げ凹部に押圧されて曲げられた状態を示す縦断面図である。図6は他の形態のスペーサの要部斜視図である。
【0017】
図1および図2に示されるように、フラット回路体と接続部材の接続装置(以下、単に接続装置とも言う)100は、アンビル11と、クリンパ13と、スペーサ15と、を備え、接続部材17の爪部17aを導体部19aが設けられたフラット回路体19の所定の箇所に貫通させた後、爪部17aの先端部を円弧状に曲げてフラット回路体19と接続部材17とを電気的に接続させる。
【0018】
アンビル11は、該アンビル11を挟持する一対のカイド部21に案内されて摺動自在とされ、フラット回路体19の一方の面19bに離接可能(図1において矢印DおよびE方向)に配置されている。一対のカイド部21の間隔幅W1は、後述する接続部材17の幅W2より僅かに大きく設定されており、接続部材17が一対のカイド部21の側壁およびアンビル11の上面により画成された断面略コの字形の空間23内に収容可能となっている。
【0019】
クリンパ13は、断面略円弧状の2つの円弧溝の側部同士が連結されて略m字形に形成された曲げ凹部13aを備え、アンビル11に対向して配置されている。曲げ凹部13aは、アンビル11により接続部材17が押圧されたとき、接続部材17の爪部17aを押圧して円弧状に曲げる曲げ型として機能する。尚、クリンパ13は、アンビル11に接近または離間する方向に移動可能としてもよく、或いは、クリンパ13は固定してアンビル11のみをクリンパ13に接近または離間する方向に移動可能としてもよい。
【0020】
スペーサ15は、先端部にコの字形縁部で画成された2つの矩形溝である収容室25が形成された板状部材であり、2つの収容室25(即ち、矩形溝)の間隔はクリンパ13の曲げ凹部13aの2つの円弧溝と同じ間隔となっている。スペーサ15の厚さtは、接続部材17の爪部17aをフラット回路体19に貫通させたときフラット回路体19から突出する爪部17aの長さと略同じ厚さとなっており、フラット回路体19から突出した爪部17aを収容室25に収容するようになっている。また、スペーサ15は、図示しない駆動機構によってスペーサ15の長手方向(矢印FまたはG方向)に移動可能である。スペーサ15は、その作動時にフラット回路体19とクリンパ13との間の作動位置APに配置され、図1および図2においてクリンパ13の下面13bに接触している。また、スペーサ15は、その非作動時にフラット回路体19およびクリンパ13から離間した待避位置EPに移動可能とされている。
【0021】
図3に示されるように、接続部材17は、一枚の導電体を有する適宜な金属板をプレス成形することにより全体が一体に形成されている。接続部材17は、底板部17bと、底板部17bの幅方向における両側縁から底板部17bの厚み方向と略平行に立設された複数の爪部17aを有している。各爪部17aは、テーパ(先細)に形成されている。底板部17bの幅方向に形成された一対の爪部17aの間隔は、スペーサ15に形成された2つの収容室25(即ち、矩形溝)の間隔、およびクリンパ13の曲げ凹部13aである2つの円弧溝の間隔と同じ間隔となっている。
【0022】
図4に示されるように、フラット回路体19は、例えば、FPC、FFC、リボン電線、等の可撓性を有するフラット回路体であり、導体部19aを有しており、導体部19aが絶縁部19dにより覆われて外部から絶縁されている。導体部19aは、フラット回路体19が用いられる用途に応じて種々の形態の回路パターンとすることができる。
【0023】
接続部材17をフラット回路体19に接続する際には、先ず、図5(a)に示されるように、スペーサ15をクリンパ13の下面13b、即ち、曲げ凹部13aが形成されている側の面に接触させて作動位置APに配置する。このとき、スペーサ15の2つの収容室25(即ち、矩形溝)の位置と、クリンパ13の曲げ凹部13aである2つの円弧溝の位置と、は一致している。そして、接続部材17を一対のカイド部21の側壁およびアンビル11の上面により画成された断面略コの字形の空間23内に収容しながら接続部材17の爪部17aをアンビル11方向に向けてセットし、フラット回路体19をスペーサ15と接続部材17の間に挿入する。具体的には、接続部材17がフラット回路体19の所定の箇所、換言すれば、接続部材17により接続させる箇所の下方に位置するようにフラット回路体19を位置決めする。即ち、フラット回路体19と接続部材17を電気的に接続させる場合は、接続部材17の爪部17aをフラット回路体19の導体部19aに対応させて位置させる。
【0024】
次いで、図5(b)に示されるように、アンビル11を矢印D方向に上昇させて接続部材17の底板部17bを押圧し、接続部材17の爪部17aをフラット回路体19の所定の箇所に突き刺して貫通させる。このとき、フラット回路体19は、スペーサ15と広い面積で接触して支持されているので殆ど変形することはなく、爪部17aが確実に所定の部位に突き刺さり、貫通する。また、フラット回路体19を貫通してフラット回路体19(面19c)から突出した接続部材17の爪部17aの先端部は、スペーサ15の収容室25内に収容されて爪部17aの先端部がクリンパ13の曲げ凹部13aに当接することはない。
【0025】
そして、図5(c)に示されるように、スペーサ15をフラット回路体19およびクリンパ13から離間した待避位置EPに待避させた後、再びアンビル11を矢印D方向に上昇させて接続部材17の底板部17bを押圧する。これにより、接続部材17の爪部17aは、その先端部がクリンパ13の曲げ凹部13aに押圧されて円弧状に曲げられて加締められる(図5(d)参照)。このようにして、フラット回路体19の導体部19aと接続部材17の爪部17aが確実に加圧接触して電気的に接続される。
【0026】
本実施形態のフラット回路体と接続部材の接続装置100によれば、接続部材17の底板部17bを押圧するアンビル11と、接続部材17の爪部17aを押圧して曲げるための曲げ凹部13aが形成されアンビル11に対向して配置されたクリンパ13と、フラット回路体19を貫通した爪部17aの先端部を収容可能な収容室25が設けられフラット回路体19とクリンパ13との間の作動位置APと、フラット回路体19とクリンパ13とから離間した待避位置EPとに移動可能とされたスペーサ15と、を備える。
【0027】
そして、スペーサ15をフラット回路体19とクリンパ13との間の作動位置APに配置した後、接続部材17の底板部17bをアンビル11で押圧して爪部17aの先端部をスペーサ15の収容室25に収容しながらスペーサ15により支持されたフラット回路体19に爪部17aを貫通させた後、スペーサ15をフラット回路体19とクリンパ13とから離間した待避位置EPに待避させ、更にアンビル11により底板部17bを押圧して爪部17aの先端部をクリンパ13の曲げ凹部13aに押圧して曲げて接続部材17とフラット回路体19とを電気的に接続させる。
【0028】
従って、従来のフラット回路体と接続部材の接続装置のように、収容室および曲げ凹部をクリンパ上に離間させて形成しておき、フラット回路体に対する爪部の突き刺し工程および爪部先端部の曲げ工程ごとにクリンパを移動させて収容室および曲げ凹部を接続部材の爪部に対向配置させる必要がなく、連続した一工程で突き刺し工程および曲げ工程を効率よく行なうことができる。これによって、フラット回路体と接続部材の接続装置100の簡素化が図られ、接続装置100の小型化が可能となる。また、アンビル11とクリンパ13の相対位置は常に一定位置に固定さているので、接続部材17の爪部17aとクリンパ13の曲げ凹部13aとの相対位置が安定し、爪部の曲げ加工が常に一定状態で可能となり、接続部材17とフラット回路体19とを確実に電気的に接続することができる。
【0029】
また、上記の構成のフラット回路体と接続部材の接続装置100によれば、スペーサ15の収容室25は、スペーサ15をフラット回路体19の面19cに沿って移動させることにより収容室25内に収容された爪部17aの先端部を収容室25から離脱可能なように一方の側面が外部に開放された収容溝25としたので、単にスペーサ15をスライド移動させるだけで作動位置APから待避位置EPに移動させることができる。
【0030】
従って、爪部17aの先端部の曲げ工程において、クリンパ13をアンビル11から一旦離間させた後、クリンパ13を水平移動させて爪部17aと曲げ凹部13aの位置を一致させ、再びクリンパ13をアンビル11に接近させる従来の接続装置と比較して、スペーサ15の単純な動作によって突き刺し工程から曲げ工程に直ちに移行して爪部17aの先端部を曲げることができ、短時間で効率よく接続作業を行なうことができる。
【0031】
次に、図6を参照して変形例のスペーサ35について説明する。スペーサ35は、図1に示されるスペーサ15から両側方に形成された突起部が削除されている以外は、スペーサ15と同様であり、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態のスペーサ35は、中央突部35aの両側の空間が接続部材17の爪部17aを収容する収容室25として作用する。
【0032】
尚、他の作用や効果については、第1実施形態の上記説明から容易に類推可能であるため説明を省略する。
【0033】
上記実施形態のフラット回路体19と接続部材17の接続方法を簡潔に述べると、導体部19aが設けられたフラット回路体19と、底板部17bおよび底板部17bから立設された爪部17aを有する接続部材17と、を備え、爪部17aをフラット回路体19の所定の箇所に、その厚さ方向に貫通させた後、爪部17aの先端部を曲げてフラット回路体19と接続部材17とを電気的に接続させるフラット回路体19と接続部材17の接続方法であって、
接続部材17の底板部17bを押圧するアンビル11をフラット回路体19の一方の面19b側に配置するステップと、
爪部17aをフラット回路体19の一方の面19bに向け、接続部材17をフラット回路体19の所定の箇所に位置させるステップと、
爪部17aを押圧して曲げるための曲げ凹部13aが形成されたクリンパ13を、その曲げ凹部13aを爪部17aに対応させてフラット回路体19の他方の面19c側に配置するステップと、
フラット回路体19を貫通した爪部17aの先端部を収容可能な収容室25が設けられたスペーサ15を、フラット回路体19とクリンパ13との間の作動位置APに配置するステップと、
接続部材17の底板部17bをアンビル11で押圧し、爪部17aの先端部をスペーサ15の収容室25に収容しながら爪部17aをフラット回路体19の所定の箇所に貫通させるステップと、
スペーサ15をフラット回路体19およびクリンパ13から離間した待避位置EPに待避させるステップと、
接続部材17の底板部17bをアンビル11で更に押圧してフラット回路体19を貫通した爪部17aの先端部をクリンパ13の曲げ凹部13aに押圧して爪部17aの先端部を曲げるステップと、を有する方法となる。
【0034】
上記したフラット回路体19と接続部材17の接続方法によれば、対向配置されたアンビル11とクリンパ13との間にフラット回路体19を挿入し、フラット回路体19とクリンパ13との間にスペーサ15を配置し、更に、その爪部17aをフラット回路体19の一方の面19bに向けて接続部材17をフラット回路体19の所定の箇所に配置する。このとき、アンビル11と接続部材17の底板部17b、接続部材17の爪部17aとスペーサ15の収容室25およびクリンパ13の曲げ凹部13aとが対向して配置される。そして、接続部材17の底板部17bをアンビル11で押圧して爪部17aの先端部をスペーサ15の収容室25に収容しながら爪部17aをフラット回路体19の所定の箇所に貫通させた後、スペーサ15をフラット回路体19およびクリンパ13から離間した待避位置EPに待避させ、更に接続部材17の底板部17bをアンビル11で押圧してフラット回路体19を貫通した爪部17aの先端部をクリンパ13の曲げ凹部13aに押圧して爪部17aの先端部を曲げて接続部材17とフラット回路体19とを電気的に接続させる。
【0035】
これにより、フラット回路体19と接続部材17との接続作業、具体的には、フラット回路体19に対する接続部材17の爪部17aの貫通作業および爪部17aの曲げ作業を連続した一工程で行なうことができるので、短時間で効率よくフラット回路体19と接続部材17との接続作業を行なうことができる。
【0036】
また、フラット回路体19に対する接続部材17の爪部17aの貫通は、フラット回路体19がスペーサ15によって保持された状態で行なわれるので確実に所定の位置に貫通させることができ、導体部19aが高密度に設けられたフラット回路体19であっても、所定の導体部19aに爪部17aを確実に貫通させることができ、信頼性の高い接続が可能となる。
【0037】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
例えば、収容室は溝として説明したが、溝に限定されるものではなく、収容室を穴或いは長穴とすることもできる。収容室を穴或いは長穴とする場合は、フラット回路体への爪部の突き刺し、貫通時にフラット回路体がより広い面積で保持されるので、爪部の貫通作業を更に安定して行なえる利点を有する。一方、スペーサを作動位置から待避位置に移動させるには、スペーサをクリンパと共にアンビルから離間させる方向に移動させて収容室に収容された接続部材の爪部を収容室から離脱させた後、スペーサを待避位置に移動させる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態であるフラット回路体と接続部材の接続装置の要部斜視図である。
【図2】図1におけるフラット回路体に接続部材の爪部が貫通した状態を示す縦断面図である。
【図3】接続部材の要部斜視図である。
【図4】フラット回路体の部分破断斜視図である。
【図5】フラット回路体に接続部材が接続される手順を示し、(a)は接続装置にフラット回路体および接続部材がセットされた状態を示す縦断面図、(b)はフラット回路体に接続部材の爪部が貫通した状態を示す縦断面図、(c)はスペーサを待避位置に待避させた状態を示す縦断面図、そして(d)は爪部の先端部がクリンパの曲げ凹部に押圧されて曲げられた状態を示す縦断面図である。
【図6】変形例のスペーサの要部斜視図である。
【図7】従来例に係り、フラット回路体に接続部材の爪部が貫通した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
100 フラット回路体と接続部材の接続装置
11 アンビル
13 クリンパ
13a 曲げ凹部
15 スペーサ
17 接続部材
17a 爪部
17b 底板部
19 フラット回路体
19a 導体部
19b フラット回路体の一方の面
19c フラット回路体の他方の面
25 収容室(収容溝)
AP 作動位置
EP 待避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部が設けられたフラット回路体と、底板部および前記底板部から立設された爪部を有する接続部材と、を備え、前記爪部を前記フラット回路体の所定の箇所に、その厚さ方向に貫通させた後、前記爪部の先端部を曲げて前記フラット回路体と前記接続部材とを電気的に接続させるフラット回路体と接続部材の接続方法であって、
前記接続部材の前記底板部を押圧するアンビルを前記フラット回路体の一方の面側に配置するステップと、
前記爪部を前記フラット回路体の前記一方の面に向け、前記接続部材を前記フラット回路体の所定の箇所に位置させるステップと、
前記爪部を押圧して曲げるための曲げ凹部が形成されたクリンパを、その曲げ凹部を前記爪部に対応させて前記フラット回路体の他方の面側に配置するステップと、
前記フラット回路体を貫通した前記爪部の前記先端部を収容可能な収容室が設けられたスペーサを、前記フラット回路体と前記クリンパとの間の作動位置に配置するステップと、
前記接続部材の前記底板部を前記アンビルで押圧し、前記爪部の前記先端部を前記スペーサの前記収容室に収容しながら前記爪部を前記フラット回路体の所定の箇所に貫通させるステップと、
前記スペーサを前記フラット回路体および前記クリンパから離間した待避位置に待避させるステップと、
前記接続部材の前記底板部を前記アンビルで更に押圧して前記フラット回路体を貫通した前記爪部の前記先端部を前記クリンパの前記曲げ凹部に押圧して前記爪部の前記先端部を曲げるステップと、
を有することを特徴とするフラット回路体と接続部材の接続方法。
【請求項2】
底板部および前記底板部から立設された爪部を有する接続部材の前記爪部を、導体部が設けられたフラット回路体の所定の箇所にその厚さ方向に貫通させ、更に前記フラット回路体を貫通した前記爪部の先端部を曲げて前記フラット回路体と前記接続部材とを電気的に接続させるフラット回路体と接続部材の接続装置であって、
前記フラット回路体の一方の面に離接可能に配置され、前記接続部材の前記底板部を押圧するアンビルと、
前記アンビルに対向して前記フラット回路体の他方の面に離接可能に配置され、前記爪部を押圧して曲げるための曲げ凹部が形成されたクリンパと、
前記フラット回路体を貫通する前記爪部の前記先端部を収容可能な収容室が設けられ、前記フラット回路体と前記クリンパとの間の作動位置と、前記フラット回路体と前記クリンパとから離間した待避位置とに移動可能とされたスペーサと、
を備え、
前記アンビルを前記接続部材の前記底板部に対向させて配置し、且つ前記曲げ凹部と前記接続部材の前記爪部とを対向させて前記クリンパを前記アンビルに対向させて配置すると共に、前記収容室と前記接続部材の前記爪部とを対向させて前記スペーサを前記フラット回路体と前記クリンパとの間の作動位置に配置した後、前記底板部を前記アンビルで押圧して前記爪部の前記先端部を前記スペーサの前記収容室に収容しながら前記爪部を前記スペーサにより支持された前記フラット回路体に貫通させ、前記スペーサを前記フラット回路体と前記クリンパとから離間した待避位置に待避させ、更に前記アンビルにより前記底板部を押圧して前記爪部の前記先端部を前記クリンパの前記曲げ凹部に押圧して曲げて前記接続部材と前記フラット回路体とを電気的に接続させることを特徴とするフラット回路体と接続部材の接続装置。
【請求項3】
前記スペーサの収容室は、一方の側面が外部に開放され、前記スペーサを前記フラット回路体の面に沿って移動させることにより前記スペーサを前記作動位置から前記待避位置に移動させて前記収容室内に収容された前記爪部の前記先端部を前記収容室から離脱可能な収容溝であることを特徴とする請求項2に記載のフラット回路体と接続部材の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−107874(P2006−107874A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291452(P2004−291452)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】