説明

フリッカ除去装置

【課題】 同一のフレームまたはフィールド内においてもライン毎に各画素の露光時間内に入射される光量の総和が異なる固体撮像素子を用いたデジタルカメラにおける蛍光灯によるフリッカの除去を行う。
【解決手段】 固体撮像素子12の露光時間を1/100秒の整数倍または1/120秒の整数倍にしてフリッカの発生自体を防ぎ、1フレームのうちフリッカ成分がほぼ同一とみなせる領域毎にフリッカ補正ゲインを求めてフリッカ補正を行う。これにより、回路規模を大きくすることなく、1フレーム内でのS/Nのバラツキもなく、動きがある被写体に対してフリッカの影響のない安定した良好な画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、蛍光灯フリッカの影響を受ける撮像素子を用いたデジタルカメラにおける蛍光灯フリッカを防止するフリッカ除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】商用交流電源で点滅する一般的な蛍光灯は、電源の周波数が50Hzの場合1/100秒、60Hzの場合1/120秒の周期で明滅を繰り返す。このような入射光を撮像素子で電気信号に変換し読み出すときに、撮像管やMOS型固体撮像素子を使用した場合には、読み出す画素の位置により露光開始時刻が異なるため、同一のフレームもしくはフィールド(ここでの説明ではこれらを合わせてフレームと記する。)内においても、各画素の露光時間内に入射する光量の総和は異なることとなる。そのため、同一フレーム内においても1/100秒または1/120秒の周期で明るい部分と暗い部分が生じる。このような現象がフリッカである。
【0003】従来、上記のような同一フレーム内において発生するフリッカの影響を受けない良好な画像を得るために、1フレームをフリッカ成分がほぼ同一とみなせる領域、例えば1ラインずつに分割し、各領域毎にフリッカ補正ゲインを求めるフリッカ補正装置が提案されている。
【0004】この場合、フリッカの有無にかかわらず、常にフリッカ補正ゲインを求めて補正を行うため、特にフリッカ除去装置を必要としない。しかし、フリッカ成分がほぼ同一とみなせる領域は小さく、領域の数が多くなるため、領域毎にフリッカ補正ゲインを求める回路を設けると回路規模が大きくなる。また、1フレーム内の各所でゲインが異なるため、1フレーム内でS/Nのバラツキが発生し、画像の品位を低下させてしまう。さらに、動きがある被写体に対して不安定なため、安定化を図るための回路が必要となる。
【0005】上記した不具合のない別の提案として、撮像素子の露光時間を1/100秒の整数倍または1/120秒の整数倍にして露光開始時刻が異なっても各画素の露光時間内に入射する光量の総和を同じにし、フリッカの発生自体を防ぐものがある。この場合、1/100秒の整数倍にする、1/120秒の整数倍にするの判断は撮影者自身が行うか、あるいは、撮像素子とは別に測光素子を設け、それと光源の明滅周期を検出する手段からなるフリッカ除去装置により判断していた。
【0006】図5は、上記測光素子を設けた場合の従来例を示すものである。固体撮像素子51は駆動回路52により駆動されて被写体の光学像を電気信号に変換して出力する。信号処理回路53は、固体撮像素子51から出力された信号から輝度信号Yを生成して出力する。
【0007】一方、測光素子54は光源の照度を検出して明滅周期検出回路55に送り、明滅周期検出回路55は照度の変化から光源の明滅周期が1/100秒であるか1/120秒であるかを検出する。露光時間決定回路56は明滅周期検出回路55の出力から露光時間を1/100秒の整数倍にするか1/120秒の整数倍にするかを決め、輝度信号Yから好適な倍数を算出して、露光時間を決定し、駆動回路52に指示する。駆動回路52はこれに従い固体撮像素子51を駆動する。
【0008】このように、固体撮像素子の露光時間を自動的にフリッカの発生しない露光時間に設定すれば、同一フレーム内において発生するフリッカの影響のない良好な画像を得ることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のフリッカ除去装置を用いる場合、固体撮像素子とは別に測光素子を設ける必要があり、部品点数が増えるほか、カメラ筐体表面に測光素子用の受光部を設ける必要があることからデザイン上の制約も発生してしまっていた。
【0010】そこで、この発明は、回路規模を大きくすることなく、1フレーム内でのS/Nのバラツキもなく、動きがある被写体に対して不安定にならずにフリッカの影響のない良好な画像を得ることができるフリッカ除去装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、この発明のフリッカ除去装置では、同一のフレームまたはフィールド内においてもライン毎に各画素の露光時間内に入射される光量の総和が異なる固体撮像素子と、前記固体撮像素子より出力される映像信号の中から輝度信号成分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段より得られるライン毎の輝度成分を積分し、ライン毎の平均値を求め、複数のフレームまたはフィールドの同一の前記ラインとの平均値を比較し、比較結果に基づきフリッカを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき前記固体撮像素子の露光時間を制御する制御手段とを具備してなることを特徴とする。
【0012】この手段によれば、固体撮像素子の露光時間を、1/100秒の整数倍または1/120秒の整数倍にしてフリッカの発生自体を防ぐ。これにより、回路規模を大きくすることなく、1フレーム内でのS/Nのバラツキもなく、動きがある被写体に対してフリッカの影響のない安定した良好な画像を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態について説明するためのシステム図である。図1において、駆動回路11により駆動される固体撮像素子12は、被写体の光学像を電気信号に変換して出力する。その出力が供給される信号処理回路13では、固体撮像素子12より得られる出力信号の中から輝度信号Yを生成してフリッカ検出回路14の輝度平均算出部141に供給する。輝度平均算出部141では、1ラインの輝度信号を積分して1ライン内の輝度信号の平均値を算出する。
【0014】輝度平均算出ライン選択信号発生部142には、垂直同期信号a、水平同期信号b、1/200秒が何ライン分の期間に相当するかを示す1/200秒設定信号c、1/240秒が何ライン分の期間に相当するかを示す1/240秒設定信号d、光源周波数設定信号eをそれぞれ供給する。
【0015】ここで光源周波数設定信号eが50Hz蛍光灯のフリッカを検出するよう指示した場合には、1/200秒間隔で輝度平均を算出するラインを選択するよう輝度平均算出ライン選択信号fを出力し、光源周波数設定信号eが60Hz蛍光灯のフリッカを検出するよう指示した場合は、1/240秒間隔で輝度平均を算出するラインを選択するよう輝度平均算出ライン選択信号fを出力する。
【0016】この例では5つの水平ラインを選択しているが、5ラインでなくてもかまわない。輝度平均算出ライン選択信号fと輝度平均算出部141の出力および選択部143と輝度平均記憶部1441〜1445により、露光開始時刻が光源の明滅周期の1/2ずつ異なる5つのライン毎の輝度平均値を得る。露光開始時刻は輝度平均記憶部1441のものが最も早く、以降、輝度平均記憶部1442,1443,1444,1445の順になっているとする。この例では5つのラインで輝度平均算出部141を共用したが、各ラインに輝度平均算出部141を設けてもよい。
【0017】次に、各ラインの輝度平均値はそれぞれ前フレームからの変化検出部1451〜1455にそれぞれ入力し、そこで現フレームと前フレームの輝度平均値を比較して増加/減少/変化なしを判定する。このとき、ある一定レベル以上変化がないと増加/減少したとしない回路を設けて、検出結果を安定させるようにしてもよい。
【0018】前フレームからの変化検出部1451〜1455の出力は、比較判定部146に入力し、比較判定部146はフリッカを検出し、ここからフリッカ検出信号gを出力する。
【0019】比較判定部146では、ある任意の複数フレームにわたり、前フレームからの変化検出部1451,1453,1455の出力同士、前フレームからの変化検出部1452,1454の出力同士が同じで、かつ、前フレームからの変化検出部1451,1453,1455の出力と前フレームからの変化検出部1452,1454の出力が逆の変化を示したとき、フリッカが存在すると判定する。
【0020】フリッカ検出信号gは、露光時間決定回路15に供給し、50Hz蛍光灯フリッカの存在を示す信号を送ってきた場合には、露光時間を1/100秒の整数倍にし、60Hzフリッカの存在を示す信号を送ってきた場合には、1/120秒の整数倍にする。そして、それぞれの場合に輝度信号Yから好適な倍数を算出して、露光時間を決定し、駆動回路11に指示する。この指示に従い、駆動回路11は固体撮像素子12を駆動する。
【0021】このようにして、固体撮像素子12とは別に測光素子を設けなくともフリッカの検出が可能となり、検出結果に基づいてフリッカの発生を防止することができる。
【0022】図2に、この実施の形態における輝度平均算出ラインの選択例を示す。これはフレームレートが30フレーム/秒のとき、50Hz蛍光灯によるフリッカを検出する場合である。
【0023】この例では信号処理して得られた輝度信号を積分していたが、例えば、色フィルタ配列が原色ベイヤ配列である固体撮像素子12の出力をそのまま積分して輝度平均値を算出することも可能である。この場合、固体撮像素子12の出力がRGRG・・・・となるラインと隣接したGBGB・・・・となるラインの2ラインの出力を1つの積分器で積分し、得られたR+2G+B信号の平均値を輝度平均値とする。図2で示すライン1、2、3、4、5も、それぞれ2ライン1組でライン1、2、3、4、5となる。
【0024】図3は、この発明の第2の実施の形態について説明するためのシステム図である。図1の実施の形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0025】すなわち、駆動回路11により駆動されて固体撮像素子12は、被写体の光学像を電気信号に変換して出力し、その出力から信号処理回路13は輝度信号Yを生成して出力する。
【0026】50Hz蛍光灯フリッカ検出回路14aは、露光開始時刻が1/200秒ずつ異なる複数のラインの輝度平均値の変化から50Hz蛍光灯によるフリッカを検出し、60Hz蛍光灯フリッカ検出回路14bは露光開始時刻が1/240秒ずつ異なる複数のラインの輝度平均値の変化から60Hz蛍光灯によるフリッカを検出する。
【0027】露光時間決定回路15は、50Hz蛍光灯フリッカ検出回路14aがフリッカの存在を示すフリッカ検出信号g1を送ってきた場合には、露光時間を1/100秒の整数倍にし、60Hz蛍光灯フリッカ検出回路14bがフリッカの存在を示すフリッカ検出信号g2を送ってきた場合には、1/120秒の整数倍にする。そして、それぞれの場合に輝度信号Yから好適な倍数を算出して、露光時間を決定し、駆動回路11に指示する。駆動回路11はこれに従い固体撮像素子12を駆動する。
【0028】この実施の形態では、蛍光灯フリッカが存在しない場合には、通常どおり固体撮像素子12の露光時間を自由に設定でき、蛍光灯フリッカが存在した場合にだけ、固体撮像素子12の露光時間を自動的にフリッカの発生しない露光時間に設定して同一フレーム内において発生するフリッカの影響のない良好な画像を得ることができる。
【0029】図4は、この発明の第3の実施の形態について説明するためのシステム図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0030】駆動回路11により駆動される固体撮像素子12では、被写体の光学像を電気信号に変換して出力し、その出力を信号処理回路13に供給する。信号処理回路13では、供給された信号の中から輝度信号Yを生成して出力する。露光時間決定回路15は固体撮像素子12の露光時間を1/100秒の整数倍か1/120秒の整数倍とし、輝度信号Yから好適な倍数を算出して、露光時間を決定する。また、現在、1/100秒の整数倍としているか1/120秒の整数倍としているかを示す光源の明滅周期hを、50Hz/60Hz蛍光灯フリッカ検出回路14cに送る。
【0031】50Hz/60Hz蛍光灯フリッカ検出回路14cは、露光時間決定回路15が露光時間を1/100秒の整数倍としているときには、50Hz蛍光灯下においてフリッカが発生しないため、60Hz蛍光灯によるフリッカだけを検出すればよい。逆に、露光時間決定回路15が露光時間を1/120秒の整数倍としているときには、60Hz蛍光灯下においてフリッカが発生しないため、50Hz蛍光灯によるフリッカだけを検出すればよい。そのため、50Hz/60Hz蛍光灯フリッカ検出回路14cは、露光時間決定回路15が露光時間を1/100秒の整数倍としているときには、露光開始時刻が1/240秒ずつ異なる複数のラインの輝度平均値の変化から60Hz蛍光灯によるフリッカを検出し、もしフリッカが存在する場合には、フリッカ検出信号gにより露光時間決定回路15に露光時間を1/120秒の整数倍にするよう指示する。また、露光時間を1/120秒の整数倍としているときには、露光開始時刻が1/200秒ずつ異なる複数のラインの輝度平均値の変化から50Hz蛍光灯によるフリッカを検出し、もしフリッカが存在する場合には、フリッカ検出信号gにより露光時間決定回路15に露光時間を1/100秒の整数倍にするよう指示する。
【0032】このようにすれば、蛍光灯フリッカが存在しない場合にも固体撮像素子12の露光時間が1/100秒の整数倍か1/120秒の整数倍になってしまうものの、第2の実施の形態に比べてフリッカ検出回路を1つに減らすことができる。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、この発明のフリッカ除去装置によれば、測光素子を設ける必要がないばかりか、部品点数を増やさずに特定の固体撮像素子により発生するフリッカの除去を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態について説明するためのシステム図。
【図2】図1の動作について説明するための説明図。
【図3】この発明の第2の実施の形態について説明するためのシステム図。
【図4】この発明の第3の実施の形態について説明するためのシステム図。
【図5】従来のフリッカ除去装置について説明するためのシステム図。
【符号の説明】
11…駆動回路、12…固体撮像素子、13…信号処理回路、14,14a〜14c…フリッカ検出回路、141…輝度平均算出部、142…ライン選択信号発生部、143…選択部、1441〜1445…輝度平均記憶部、1451〜1455…変化検出部、146…比較判定部、15…露光時間決定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一のフレームまたはフィールド内においてもライン毎に各画素の露光時間内に入射される光量の総和が異なる固体撮像素子と、前記固体撮像素子より出力される映像信号の中から輝度信号成分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段より得られるライン毎の輝度成分を積分し、ライン毎の平均値を求め、複数のフレームまたはフィールドの同一の前記ラインの平均値を比較し、比較結果に基づきフリッカを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき前記固体撮像素子の露光時間を制御する制御手段とを具備してなることことを特徴とするフリッカ除去装置。
【請求項2】 前記検出手段は、露光開始時刻が光源の明滅周期の1/2ずつ異なる複数のライン毎に輝度を積分し、各ライン内の輝度平均値を算出する輝度平均算出手段と、前記輝度平均算出手段の出力の前フレームからの変化を検出する変化検出手段と、前記複数ライン毎の前記変化検出手段の出力同士を比較する比較手段と、前記比較手段により複数フレームに渡り露光開始時刻が光源の明滅周期の1/2だけ異なるライン同士が逆の変化をしていることを検知した場合にフリッカが存在していることを示す信号を発生する信号発生手段とから構成してなることを特徴とする請求項1に記載のフリッカ除去装置。
【請求項3】 前記検出手段は、比較した結果が所定レベル以上ある場合に、フリッカ検出信号を出力してなることを特徴とする請求項1に記載のフリッカ除去装置。
【請求項4】 前記検出手段は、50Hzの蛍光灯フリッカ検出および60Hzの蛍光灯フリッカ検出してなることを特徴とする請求項1に記載のフリッカ除去装置。
【請求項5】 前記固体撮像素子の露光時間を1/100秒の整数倍とした場合は前記光源の明滅周期を1/120秒とし、前記固体撮像素子の露光時間を1/120秒の整数倍とした場合は前記光源の明滅周期を1/100秒とする手段を備え、商用電源周波数50Hzの場合の光源によるフリッカと商用電源周波数60Hzの場合の光源によるフリッカの両方を検出できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のフリッカ除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−152604(P2002−152604A)
【公開日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−343629(P2000−343629)
【出願日】平成12年11月10日(2000.11.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】