説明

フルオロポリマー分散体の精製

本発明は、フルオロポリマーの分散体を精製するための方法に関し、前記方法には以下の工程が含まれる:(i)15重量%以上の固形分含量(SC)を有する、少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]の水性分散体(D)を提供する工程;(ii)前記水性分散体(D)に少なくとも1種の非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]を添加する工程;(iii)前記固形分含量(SC)を10重量%未満に調節して、希釈された水性分散体(dD)を得る工程;(iv)前記希釈された水性分散体(dD)を少なくとも1種の吸着性物質と接触させて、固形分の全重量を基準にして1ppm未満のフッ素化界面活性剤(FS)の含量を有する、ポリマー(F)の水性分散体を得る工程。本発明の目的はさらに、1ppm未満のフッ素化界面活性剤を含む水性フルオロポリマーの分散体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーの水性分散体を精製するための改良された方法、および水性フルオロポリマーの分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフルオロエチレンの分散体は、たとえば、剥離性、良好な耐候性、および難燃性などの面でユニークなコーティング特性があるために、コーティング産業において広く用途を見出している。それらは主として、台所用品、化学装置およびガラス織物をコーティングするために使用されている。そのような用途の多くにおいて、それらの分散体は、比較的に高い固形分含量、たとえば70〜75重量%までで適用される。それらの濃縮された分散体は主として、コロイド化学的方法を用いて、非イオン性乳化剤たとえば、アルキルアリールポリエトキシアルコールおよびアルキルポリエトキシアルコールによって安定化されている。
【0003】
フルオロポリマーを調製するためには、原理的には2種の異なった重合プロセスが存在するが、すなわち、その一つはポリマー顆粒を得るための懸濁重合であり、もう一つは水性コロイド性分散体を得るためのエマルション重合として知られる(ディスパーション重合とも呼ばれる)プロセスである。本発明は、エマルション重合から得られる分散体に主として適用することが可能な精製プロセスに関する。
【0004】
そのようなフルオロポリマーの分散体、特にテトラフルオロエチレン(TFE)ポリマー(ホモポリマーおよびコポリマー)の製造には、一般的にエマルション重合工程が含まれる。
【0005】
それらエマルション重合のいずれにおいても、水性媒体の中のフルオロポリマーの分散体を安定化させるためには、界面活性剤または乳化剤が必要であり、前記界面活性剤は一般的に、連鎖移動による重合を妨げることがないように選択される。それらの界面活性剤は、非テロゲン性乳化剤と呼ばれている((特許文献1)参照)。アンモニウムおよび/またはアルカリ金属塩の形態のペルフルオロオクタン酸(PFOA)が主として使用されているが、特に好ましいのは、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFOA)である。この界面活性剤の含量は一般的に、フルオロポリマーを基準にして、0.02〜1重量%の範囲内である。
【0006】
その他のフッ素化界面活性剤を使用することも可能である。たとえば、(特許文献2)(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1998年2月4日)には、TFEをエマルション重合させるのに、CH含有フルオロカルボン酸の塩を使用することが記載されている。(特許文献3)(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1997年3月6日)には、TFE重合のために、2−ペルフルオロヘキシルエタンスルホン酸またはその塩を使用することが記載されている。
【0007】
フルオロポリマーのエマルション重合において有用な、その他の(ペル)フルオロオキシアルキレン系界面活性剤は、以下の特許出願に記載されている:(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)。
【0008】
(特許文献10)(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1951年7月10日)には、その他のフッ素化界面活性剤の記載もあるが、それらは、揮発性が低いために広く使用されることは無かった。それらの化学物質は、高い加工温度では最終製品の変色を起こす可能性がある。
【0009】
重合で得られるフルオロポリマーの水性エマルションは一般的に、約15〜40重量%の固形分含量を有しているが、それを工業的に使用する場合には、前記分散体を約40〜75重量%にまで濃縮する必要がある。濃縮プロセスの第一の例は、まずデカンテーションもしくは相分離プロセス(クラウディングプロセスとも呼ばれる)であって、これについては、たとえば(特許文献11)(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1962年6月5日)、(特許文献12)(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1972年11月28日)、(特許文献13)(チオコール・ケミカル・コーポレーション(THIOKOL CHEMICAL CORP)、1967年1月31日)に記載があるが(これらの開示を参照により本明細書に援用する)、前記相分離プロセスには一般的に、非イオン性界面活性剤を水性フルオロポリマーエマルションに添加する工程、およびその混合物をその非イオン性界面活性剤の曇り点よりも高い温度にまで加熱し、それによって、水相とフルオロポリマー相とに分離を行わせる工程が含まれる。また別な濃縮プロセスの例は、限外濾過プロセスまたは透析プロセスであって、それらについては、たとえば(特許文献14)(ヘキスト・AG(HOECHST AG)、1983年1月18日)、(特許文献15)(ダイキン工業(株)(DAIKIN IND LTD)、2000年10月24日)に記載がある(これらの開示を参照により本明細書に援用する)。
【0010】
それにも関わらず、濃度を上げるための上述の方法においては、フッ素化界面活性剤の大部分が、そのフルオロポリマーの分散体の中に残存する。
【0011】
したがって、その後でそれらの分散体を使用する際に、作業者が、フッ素化界面活性剤、特にPFOAとの接触に暴露される可能性がある。
【0012】
たとえばコーティングやガラス繊維の含浸において、フルオロポリマーの分散体を適用するときに、前記フッ素化界面活性剤が周囲環境に拡がる可能性があることも知られている。フッ素化界面活性剤は、特に洗浄排水中から周囲環境に放出される可能性があり、あるいは、フルオロポリマーがその加工時に処理される乾燥工程または焼結工程の際に周囲環境に放出される可能性もある。後者の放出は、乳化剤としてPFOA(またはその誘導体)を含むコーティングを製造する場合に、さらに顕著となるが、それはPFOAの揮発性が高いからである。
【0013】
しかしながら、最近になって、前記フッ素化界面活性剤のいくつかのものが、環境に対して有害であると分類されたが、それらの生きている動物における(たとえば、ヒトにおける)滞留時間が長いことが実証された。ペルフルオロオクタン酸(PFOA)および対応する誘導体が、汚染物質として詳しく検討されたが、米国環境保護庁(US Environmental Protect Agency、EPA)サイエンスアドバイサリーボード(Science Advisory Board)は、2005年6月に、「PFOAが発がん性物質である可能性があり、この汚染物質の動物およびヒトに対する影響を最終的に評価するための毒性学的検討を継続中である」との予備的知見を発表した。
【0014】
2006年1月25日に、EPAがフルオロポリマーおよびテロマーの製造業者に対して、PFOAおよび関連の化学物質についての世界的な監視プログラムに参加すること、ならびに、特にPFOA、分解してPFOAとなりうる前駆体化学物質、および関連するより高級な同族化学物質の、設備からのすべての媒体への放出、ならびにPFOA、分解してPFOAとなりうる前駆体化学物質、および関連するより高級な同族化学物質の製品含量レベルの両方について、2000年を基準として計算して2010年までに、95%の削減を達成するように取り組むこと、ならびに、その後5年以内、すなわち2015年までに、PFOA、PFOA前駆体、および関連するより高級な同族化学物質の放出および製品を全廃するための作業に取り組むことを要請した。
【0015】
したがって、PFOAの放出を実質的に削減させる、したがって、それらの目的の達成を可能とする好適なPFOA回収プロセスを開発することに関して、環境的な強い圧力が存在している。
【0016】
さらに、界面活性剤たとえばフルオロカルボン酸およびそれらの塩(たとえば、(特許文献2)(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1998年2月4日)に記載されているようなCH含有フルオロカルボン酸)は、一般的には、通常採用される350〜450℃の焼結温度で脱炭酸反応によって分解して、二酸化炭素とフッ素化炭化水素になるが、それらは大きな地球温暖化効果(「温室効果」)を有している。
【0017】
したがって、フルオロポリマーの分散体の中間業者(transformer)および最終使用者から製造業者に対して、フッ素化界面活性剤、特にペルフルオロオクタン酸およびその誘導体を実質的に含まない、前記フルオロポリマーの分散体の提供を望む強い要望が存在する。
【0018】
過去において、相分離およびイオン交換処理を含めて、フッ素化界面活性剤からフルオロポリマーの分散体を精製するための溶液がいくつか提案された。
【0019】
したがって、(特許文献16)(旭硝子(ASAHI GLASS CO LTD))、2004年12月22日)には、アニオン性ペルフルオロカルボキシレート界面活性剤(APFC)から精製された水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物を製造するための方法が開示されているが、前記方法には、非イオン性界面活性剤および水を水性PTFEエマルションに添加する工程、得られたPTFE水性分散体を相分離および沈降によって濃縮する工程、ならびに大量の前記APFCを含む上澄み液から、小量のAPFCを含む高度に濃縮された水性PTFE分散体を分離する工程、が含まれる。
【0020】
(特許文献17)(ダイキン工業(DAIKIN IND LTD)、2005年9月14日)には、フッ素含有界面活性剤から、その分散性を低下させることなく、15〜35質量%のフルオロポリマーを含む水性フルオロポリマーエマルションを精製するための方法が開示されているが、前記方法には、相分離による濃縮、電気的濃縮および/またはイオン交換濃縮を含めた特殊な濃縮方法によって水性フルオロポリマーエマルションを精製することが含まれる。
【0021】
(特許文献18)(ダイキン工業(DAIKIN IND LTD)、2005年1月13日)には、処理される物質からフッ素含有界面活性剤を除去するための方法が開示されているが、それは、前記物質を標準条件下ではガスである、たとえば超臨界二酸化炭素のような物質[A]と接触させて、それによってフッ素含有界面活性剤を除去することを特徴としている。
【0022】
イオン交換処理を含む精製方法が、それらの分散体におけるフッ素化界面活性剤の最終的な濃度が低いために、一般的には好ましい。
【0023】
(特許文献19)(3M・イノベーティブ・プロパティーズ(3M INNOVATIVE PROPERTIES)、2004年12月21日)には、フルオロポリマーの分散体からフッ素含有乳化剤を除去するための方法が開示されているが、前記方法には、非イオン性乳化剤をフルオロポリマーの分散体に添加する工程、および前記安定化された分散体を塩基性のアニオン交換体と接触させる工程が含まれる。フッ素化界面活性剤の除去は、15〜30重量%の固形分含量を有する重合からの粗製分散体を用いるか、あるいは、固形分含量70重量%までの予め濃縮された分散体を用いるかのいずれかで実施される。
【0024】
(特許文献20)(3M・イノベーティブ・プロパティーズ(3M INNOVATIVE PROPERTIES)、2004年4月13日)には、塩を含まないフルオロポリマー、いわゆる超クリーンなフルオロポリマーを調製するための方法が開示されているが、前記方法には、特に、フルオロポリマー格子をイオン交換工程にかけることが含まれるが、そこでは、10〜40重量%の固形分含量を有する重合からの粗製分散体に、カチオンおよびアニオン交換体処理を実施するが、前記分散体を非イオン性乳化剤と組み合わせて、固形分含量を約20重量%未満にまで低下させる。
【0025】
(特許文献21)(3M・イノベーティブ・プロパティーズ(3M INNOVATIVE PROPERTIES)、2004年11月30日)には、水性フルオロポリマーの分散体の中のフッ素化乳化剤を減少させるための方法が開示されているが、それには、10〜70重量%の間のフルオロポリマーを含む前記水性フルオロポリマーの分散体とアニオン交換樹脂とを、その水性フルオロポリマーの分散体を有効量のアニオン交換樹脂と撹拌することにより接触させる工程、およびアニオン交換樹脂をその水性フルオロポリマーの分散体から分離する工程が含まれる。
【0026】
(特許文献22)(3M・イノベーティブ・プロパティーズ(3M INNOVATIVE PROPERTIES)、2005年5月25日)には、少量のフッ素化界面活性剤を有する溶融加工不能なポリテトラフルオロエチレンの水性分散体を製造するための方法が開示されているが、その方法には、特に、PTFEポリマー中にイオン性末端基もしくはその前駆体を導入することが可能なフリーラジカルの存在下にテトラフルオロエチレン(TFE)をエマルション重合させて10〜35重量%の間の固形分含量を有する分散体を生成させる工程、およびたとえばその分散体をアニオン交換体と接触させることによって、そのようにして得られた水性分散体中のフッ素化界面活性剤の量を減少させる工程が含まれる。
【0027】
(特許文献23)(ソルベー・ソレクシス・S.P.A.(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)、2005年10月12日)には、20〜75重量%の固形分含量を有するフルオロポリマーの分散体からフッ素化アニオン性界面活性剤を実質的に除去するための方法が開示されているが、前記方法には、特に、水に可溶性であって、使用条件下では分散体の中で沈殿を与えないような塩を添加する工程、およびその分散体を塩基性アニオン性交換体と接触させる工程が含まれる。
【特許文献1】U.S.Pat.No.2,559,752
【特許文献2】EP822175A
【特許文献3】国際公開第97/08214号パンフレット
【特許文献4】US2007015864
【特許文献5】US2007015865
【特許文献6】US2007015866
【特許文献7】US2006015937
【特許文献8】US2007025902
【特許文献9】US2007027251
【特許文献10】US2559752
【特許文献11】US3037953B
【特許文献12】US3704272B
【特許文献13】US3301807B
【特許文献14】US4369266B
【特許文献15】US6136893B
【特許文献16】EP1489104A
【特許文献17】EP1574527A
【特許文献18】国際公開第2005/003190A号パンフレット
【特許文献19】US6833403B
【特許文献20】US6720360B
【特許文献21】US6825250B
【特許文献22】EP1533325A
【特許文献23】EP1584632A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
それにも関わらず、先行技術の方法のイオン交換処理にはいくつかの欠点が依然と存在し、たとえば、前記フッ素化界面活性剤のフルオロポリマー粒子に対する親和性が強いために、フッ素化界面活性剤の除去効率に限度がある。さらに、イオン交換樹脂が閉塞したり目詰まりしたりする危険性が避けられず、そのような現象のために、望ましくないプラントのシャットダウンが起きる。さらに、イオン交換ベッドを通過させて水性分散体を循環させるためにはかなり大きい機械的なエネルギーが必要であり、そのために高い剪断条件が発生し、調節不能で、望ましくない凝固現象が生じる。最後に、前記イオン交換処理の際に凝集の形成も避けられず、そのために、精製された分散体には凝集が含まれている可能性があるが、それらは、収率のロスとエネルギー消費を伴う除去を行わないと、最終的な成形品(フィルム、コーティング)の中に、望ましくない欠陥を生じるかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、フルオロポリマーの分散体を精製するための方法に関し、前記方法には以下の工程が含まれる:
(i)15重量%以上の固形分含量(SC)を有する、少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]の水性分散体(D)を提供する工程;
(ii)前記水性分散体(D)に少なくとも1種の非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]を添加する工程;
(iii)前記固形分含量(SC)を10重量%未満に調節して、希釈された水性分散体(dD)を得る工程;
(iv)前記希釈された水性分散体(dD)を少なくとも1種の吸着性物質と接触させて、固形分の全重量を基準にして1ppm未満のフッ素化界面活性剤(FS)の含量を有する、ポリマー(F)の水性分散体を得る工程。
【0030】
本発明の方法は、固形分の全重量を基準にして、有利には0.8ppm以下、好ましくは0.75ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下のフッ素化界面活性剤(FS)を含む、ポリマー(F)の水性分散体を提供する。
【0031】
概説すると、ポリマー(F)の水性分散体のフッ素化界面活性剤含量がppmの何分の一かで低下するということであっても、実際のところ、環境的な圧力が極端に高いことから極めて価値が高く、市場では高く評価されることであろう。一例として、本発明の方法によって得られるフルオロポリマーの分散体には、0.1ppmもの低い残存PFOA含量を有することができるが、そのような分散体は、2.5ppmの含量を有する分散体に比較すれば、1/250も少ないPFOAしか環境中に放出しないであろう。
【0032】
希釈された分散体、すなわち10重量%未満の固形分含量を有する分散体の上で吸着性物質処理を実施することによって、フッ素化界面活性剤の除去を、改良された効率で有利に行うことができる。本出願人の見出したところでは、水性分散体を工程(iv)より前に希釈すると、より大量のフッ素化界面活性剤(FS)が吸着プロセスで使用することができる(これによって本発明の範囲が限定される訳ではない)。一般的に理解されることであるが、水性分散体(D)の中に存在するフッ素化界面活性剤(FS)が二つの画分に分離され、第一の画分がポリマー(F)粒子の表面上に吸着され、第二の画分が水に溶解されるが、それら二つの画分の間の平衡は、特に、固形分含量(SC)に依存する。これもまた一般的に理解されることであるが、水に溶解されたフッ素化界面活性剤(FS)の前者の画分は、後者の画分よりは、吸着性物質、特にイオン交換樹脂のイオン交換サイトに対してより強い親和性を有している。したがって、水性分散体(D)を希釈することによって、大量のフッ素化界面活性剤(FS)が、有利には、溶液中で利用可能となり、それによって、吸着プロセス、特にイオン交換プロセスの効率が向上して、最終的な精製された分散体中でのフッ素化界面活性剤濃度をより低くすることが可能となる。
【0033】
それに加えて、吸着性物質処理より前に水性分散体を希釈することによって、特にベッド様のレイアウトで使用した場合には、凝固したフルオロポリマーの粒子による、吸着性物質、特にイオン交換樹脂が目詰まりまたは閉塞する危険性を低下させることができる。
【0034】
さらに、吸着性物質処理より前に水性分散体を希釈することによって、分散体の安定性を向上させることが可能である、すなわち、凝固現象を調節できないという理由により凝集が生成される危険性を下げることができる。それらの凝集が存在することは、一般的には、極めて望ましくないと考えられるが、その理由は、その分散体を最終的にコーティングに適用した場合に、凝固された粒子の凝集が欠陥(たとえば亀裂または穴(hole))を招く可能性があるからである。
【0035】
最後に、その希釈された分散体の粘度を下げることが可能であり、それによって、プロセスの中で、わずかな圧力損失で、前記分散体を循環させることが可能である。一般的に理解されることであるが、固体粒子を含む液体の粘度は、特に、前記固体粒子の濃度、およびその粒子の周りの二重電気層(double electric layer)の厚み、あるいは言い換えれば、前記粒子の「イオン」直径に依存する。溶液中にイオンが存在する場合、この層の厚みには典型的には限度があるが、(たとえば、イオン交換プロセスの後で起きるように)イオン濃度が著しく低くなったときには、粒子のイオン直径は一般的にはかなり大きくなり、そうなるとその液体の粘度が高い値となる可能性があり、それによって前記液体を扱ったり循環させたりするエネルギー消費量が高くなる。したがって、低い固形分濃度で作業する場合には、粒子のイオン直径が大きくなったとしても、その液体の粘度は一般的に受容可能な値に留まる。このことは、吸着性物質のベッド、特にイオン交換樹脂ベッドを通過させて前記分散体を循環させる場合には特に役立つが、そこでは、予め希釈された分散体の圧力を下げると一般的に、吸着性物質への機械的な応力が低下し、寿命を延ばすことができる。
【0036】
本明細書において使用する場合、「ポリマー」という用語には、10〜10の分子量を有するオリゴマーおよびポリマーが包含され、またその用語には、採用されたモノマーの数に依存して、ホモポリマーおよびコポリマーが包含される。
【0037】
「少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]」という用語は、その水性分散体が1種または2種以上のポリマー(F)を含んでいてもよいことを意味していると理解されたい。
【0038】
水性分散体(D)が1種のみのポリマー(F)を含んでいるのが好ましい。
【0039】
以下においては、「フルオロポリマー(F)」および「ポリマー(F)」という表現は、本発明の目的においては、複数、単数の両方を表していると理解されたい。
【0040】
本発明の目的のためには、「フルオロポリマー」および「ポリマー(F)」という表現は、繰り返し単位(R)を含む、各種のポリマーを表わすが、前記繰り返し単位(R)の25重量%を超えるものは、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以後フッ素化モノマー)から誘導される。
【0041】
フルオロポリマーには、フッ素化モノマーから誘導される繰り返し単位を、好ましくは30重量%を超えて、より好ましくは40重量%を超えて含む。
【0042】
フッ素化モノマーには、1個または複数の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)がさらに含まれていてもよい。そのフッ素化モノマーが水素原子を含まない場合には、それはペル(ハロ)フルオロモノマーと呼ばれる。そのフッ素化モノマーが少なくとも1種の水素原子を含む場合には、それは水素含有フッ素化モノマーと呼ばれる。
【0043】
フッ素化モノマーの例としては、まずは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0044】
場合によっては、そのフルオロポリマーが、一つの第一のモノマー(前記モノマーは上述のようなフッ素化モノマーである)と、少なくとも1種の他のモノマー[以下、コモノマー(CM)]から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0045】
以下においては、「コモノマー(CM)」という用語は、1種のコモノマーと、2種以上のコモノマーの両方を包含していることを意図しているものとする。
【0046】
そのコモノマー(CM)は、特に、水素化されている(すなわち、フッ素原子を含まない)[以後、コモノマー(HCM)]またはフッ素化されている(すなわち、少なくとも1個のフッ素原子を含む)[以後、コモノマー(FCM)]のいずれかである。
【0047】
好適な水素化コモノマー(HCM)の非限定的な例としては、まず、エチレン、プロピレン、ビニルモノマーたとえば酢酸ビニル、アクリルモノマーたとえばメタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、およびアクリル酸ヒドロキシエチル、さらにはスチレンモノマーたとえばスチレンおよびp−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0048】
さらに、好適なフッ素化コモノマー(FCM)の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
− C〜Cフルオロ−および/またはペルフルオロオレフィン、たとえばヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレン;
− C〜C水素化モノフルオロオレフィンたとえば、フッ化ビニル;
− 1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、およびトリフルオロエチレン;
− 式CH=CH−Rf0に従うペルフルオロアルキルエチレン[式中、Rf0はC〜Cペルフルオロアルキルである];
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cフルオロオレフィンたとえば、クロロトリフルオロエチレン;
− 式CF=CFORf1に従うフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1は、C〜Cフルオロ−またはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];
− 式CF=CFOXに従うフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、1個または複数のエーテル基を有する、C〜C12オキシアルキル、またはC〜C12(ペル)フルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである];
− 式CF=CFOCFORf2に従うフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル[式中、Rf2は、C〜Cフルオロ−もしくはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−C、または1個もしくは複数のエーテル基を有するC〜C(ペル)フルオロオキシアルキル、たとえば−C−O−CFである];
− 次式のフルオロジオキソール:
【0049】
【化1】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、場合によっては1個もしくは複数の酸素原子を含む、C〜Cフルオロ−もしくはペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]。
【0050】
本発明の第一の実施態様においては、そのポリマー(F)が水素含有フルオロポリマーである。
【0051】
「水素含有フルオロポリマー」という用語は、少なくとも1種の水素含有モノマーから誘導される繰り返し単位を含む、先に定義されたようなフルオロポリマーを意味している。前記水素含有モノマーは、フッ素化モノマーと同一のモノマーであってもよく、あるいは別なモノマーとすることもできる。
【0052】
したがって、この定義に包含されるのは、特に、ペル(ハロ)フルオロモノマー(たとえば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテルなど)の1種または複数と、水素化コモノマー(たとえば、エチレン、プロピレン、ビニルエーテル、アクリルモノマーなど)の1種または複数とのコポリマー、および/または水素含有フッ素化モノマー(たとえばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなど)のホモポリマー、ならびにフッ素化および/または水素化コモノマーとのそれらのコポリマーである。
【0053】
水素含有フルオロポリマーは、以下のものから選択するのが好ましい:
(F−1)TFEおよび/またはCTFEのエチレン、プロピレンまたはイソブチレン(好ましくはエチレン)とのコポリマーであって、ペル(ハロ)フルオロモノマー/水素化コモノマーのモル比が(30:70)から(70:30)までであり、場合によってはTFEおよび/またはCTFEと水素化コモノマーの合計した量を基準にして、0.1〜30モル%の量で1種または複数のコモノマーを含むもの(たとえば、U.S.Pat.No.3,624,250およびU.S.Pat.No.4,513,129参照);
(F−2)フッ化ビニリデン(VdF)ポリマーであって、場合によっては、少量の、一般的には0.1〜15モル%の間の、1種または複数のフッ素化されたコモノマーを含み(たとえば、U.S.Pat.No.4,524,194およびU.S.Pat.No.4,739,024参照)、場合によってはさらに、1種または複数の水素化コモノマーを含むもの;ならびに
それらの混合物。
【0054】
本発明の第二の好ましい実施態様においては、そのポリマー(F)がペル(ハロ)フルオロポリマーである。
【0055】
本発明の目的のためには、「ペル(ハロ)フルオロポリマー」という用語は、実質的に水素原子を含まないフルオロポリマーを指すものとする。
【0056】
「実質的に水素原子を含まない」という用語は、そのペル(ハロ)フルオロポリマーが、少なくとも1個のフッ素原子を含み水素原子を含まないエチレン性不飽和モノマー[ペル(ハロ)フルオロモノマー)(PFM)]から誘導される繰り返し単位から基本的になっている、ということを意味するものと理解されたい。
【0057】
ペル(ハロ)フルオロポリマーには、1個または複数の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)を含む繰り返し単位が含まれていてもよい。
【0058】
ペル(ハロ)フルオロポリマーは、ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)のホモポリマーであってもよく、あるいは、以下のものから選択される2種以上のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい:
− C〜Cペルフルオロオレフィン、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP);
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cペル(ハロ)フルオロオレフィンたとえば、クロロトリフルオロエチレン;
− 一般式CF=CFORf3に従うペル(ハロ)フルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf3は、C〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば−CF、−C、−Cである];
− 一般式CF=CFOX01に従うペル(ハロ)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、X01は1個または複数のエーテル基を有するC〜C12ペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基である];
− 一般式CF=CFOCFORf4に従うペル(ハロ)フルオロ−メトキシ−アルキルビニルエーテル[式中、Rf4はC〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば−CF、−C、−Cまたは、1個または複数のエーテル基を有するC〜Cペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、たとえば−C−O−CFである];
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【0059】
【化2】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである];好ましくは上に挙げた式に従うペル(ハロ)フルオロジオキソールで、Rf3とRf4がフッ素原子であり、そしてRf5とRf6がペルフルオロメチル基(−CF)であるもの[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]か、または、上に挙げた式に従うペル(ハロ)フルオロジオキソールで、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子であり、そしてRf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)であるもの[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]。
【0060】
そのペル(ハロ)フルオロポリマーが溶融加工不能であるのが好ましい。
【0061】
本発明の目的のためには、「溶融加工不能な(non melt-processable)」という用語は、そのペル(ハロ)フルオロポリマーが、溶融押出、射出またはキャスティングの手段によっては、加工できない(すなわち、成形物品たとえば、フィルム、繊維、チューブ、ワイヤコーティングなどに加工できない)ということを意味している。このためには一般的には、加工温度における溶融粘度が、10ポワズを超える、好ましくは10〜1013ポワズ、最も好ましくは10〜1012ポワズの範囲であることを必要とする。
【0062】
ペル(ハロ)フルオロポリマーの溶融粘度は、アジョルディ・G.(AJROLDI,G.)ら、「サム・レオロジカル・プロパティーズ・オブ・モルテン・ポリテトラフルオロエチレン(Some Rheological Properties of molten Polytetrafluoroethylene)、ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(J.Appl.Polym.Sci.)、1970年、第14巻、79〜88頁 ISSN 0021−8995に記載の方法に従って、360℃での引張クリープ試験により測定することができるが、この方法は、(溶融粘度が1010を超える)高粘度化合物の場合に特に適している。
【0063】
別な方法として、ペル(ハロ)フルオロポリマーの溶融粘度は、ASTM D−1238−52Tに従って測定することも可能であるが、その場合は、耐蝕性合金でできたシリンダー、オリフィスおよびピストンチップを用い、融点よりも高い温度に維持した内径9.5mmのシリンダーに5.0gのサンプルを仕込み、仕込み5分後にそのサンプルを、5kgの荷重(ピストンプラス重り)の下で、直径2.10mm、長さ8.00mmのスクエアエッジタイプオリフィスを通して押出す。観測された押出し速度(グラム/分)から、ポワズの単位で溶融粘度を計算する。
【0064】
ペル(ハロ)フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー、またはTFEと少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)とのコポリマーから選択するのが有利である。
【0065】
好適なペル(ハロ)フルオロポリマーは、TFEホモポリマー、および以下のものからなる群から選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマー、から選択される:
− 式CF=CFORf1’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1’は、C〜Cペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];および/または
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【0066】
【化3】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]。
【0067】
より好適なペル(ハロ)フルオロポリマーは、TFEホモポリマー、および以下のものからなる群から選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマー、から選択される:
− 式CF=CFORf7’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf7’は、−CF、−C、−Cから選択される基である];および/または
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【0068】
【化4】

[式中、Rf3とRf4はフッ素原子であり、Rf5とRf6はペルフルオロメチル基(−CF)である[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]か、または、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子であり、Rf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)である[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]]。
【0069】
ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)はTFEコポリマーの中に、TFEとペル(ハロ)フルオロモノマー(FM)の合計モル数を基準にして、有利には少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1モル%で存在させる。
【0070】
ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)はTFEコポリマーの中に、TFEとペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)の合計モル数を基準にして、有利には多くとも3モル%、好ましくは多くとも1モル%で存在させる。
【0071】
0.01〜3モル%のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)を含むTFEコポリマーを用いると、良好な結果が得られた。
【0072】
TFEホモポリマー、およびそのフッ素化コモノマーが先に挙げたような1種または2種以上のペルフルオロアルキルビニルエーテルであるTFEコポリマーを用いると、良好な結果が得られ;そのフッ素化コモノマーが、(式CF=CFOCFの)ペルフルオロメチルビニルエーテル、(式CF=CFOCの)ペルフルオロエチルビニルエーテル、(式CF=CFOCの)ペルフルオロプロピルビニルエーテル、およびそれらの混合物から選択されたTFEコポリマーを用いると、特に良好な結果が得られた。
【0073】
TFEホモポリマー、ならびにフッ素化コモノマーが、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテルとペルフルオロプロピルビニルエーテルとの混合物、ペルフルオロエチルビニルエーテルとペルフルオロプロピルビニルエーテルとの混合物、またはペルフルオロプロピルビニルエーテルであるようなTFEコポリマーを用いると、最善の結果が得られた。
【0074】
その水性分散体(D)には、少なくとも1種のフッ素化界面活性剤(FS)が含まれる。
【0075】
「少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]」という用語は、その水性分散体が1種または2種以上の界面活性剤(FS)(すなわち、界面活性剤(FS)の混合物)を含んでいてよい、ということを意味していると理解されたい。
【0076】
水性分散体(D)が1種のみの界面活性剤(FS)を含んでいるのが好ましい。
【0077】
以下においては、「界面活性剤(FS)」および「フッ素化界面活性剤」という表現は、本発明の目的においては、複数、単数の両方を表していると理解されたい。
【0078】
水性分散体(D)に次式のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]を含んでいるのが有利である:
f§(X(M
[式中、Rf§は、C〜C16(ペル)フルオロアルキル鎖または(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、Xは、−COO、−POまたは−SOであり、Mは、H、NH、アルカリ金属イオンから選択され、jは1または2とすることができる]。
【0079】
非限定的な界面活性剤(FS)の例としては、ペルフルオロカルボン酸アンモニウムおよび/またはペルフルオロカルボン酸ナトリウム、および/または1個または複数のカルボキシル末端基を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレンを挙げることができる。
【0080】
フッ素化界面活性剤のその他の例は、以下の特許に記載されている(ペル)フルオロオキシアルキレン系界面活性剤である;US2007015864、US2007015865、US2007015866、US2006015937、US2007025902、US2007027251。
【0081】
フッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]を以下のものから選択するのがより好ましい:
− CF(CFn1COOM’[式中、nは、4〜10、好ましくは5〜7の整数、より好ましくは6に等しく、M’は、H、NH、Na、Li、またはK、好ましくはNHである];
− T(CO)n0(CFXO)m0CFCOOM”[式中、Tは、Cl、または式C2k+1Oのペルフルオロアルコキシド基(ここで、kは1〜3の整数であり、F原子の一つは、場合によっては、Cl原子によって置換されていてもよい);nは、1〜6の範囲の整数であり;mは、0〜6の範囲の整数であり;M”は、H、NH、Na、Li、またはKを表し;XはFまたはCFを表す];
− F−(CF−CFn2−CH−CH−ROM”’[式中、RはPまたはS、好ましくはSであり;M’”は、H、NH、Na、Li、またはK、好ましくはHを表し;nは、2〜5の範囲の整数、好ましくはn=3である];
− A−R−B二官能フッ素化界面活性剤[式中、AおよびBは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、−(O)CFX−COOMであって;MはH、NH、Na、Li、またはKを表すが、好ましくはMがNHを表し;X=FまたはCFであり;pは、0または1に等しい整数であり;Rは、直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキル鎖、または(ペル)フルオロポリエーテル鎖であって;A−R−Bの数平均分子量が、300〜1,800の範囲である];
− ならびに、それらの混合物。
【0082】
さらにより好ましくは、そのフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]は、式CF(CFn1COOM’[式中、nは、4〜10、好ましくは5〜7の範囲の整数、より好ましくは6に等しく;M’はH、NH、Na、Li、またはK、好ましくはNHを表している]に従うものから選択される。
【0083】
最も好ましくは、そのフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]は、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)および、それに対応するアルカリ金属またはアンモニウム塩の中から選択される。
【0084】
「水性分散体」という用語は、ポリマー(F)粒子が水性媒体(すなわち、水を含む液状媒体であるが、好ましくは水が主成分であるもの、より好ましくは基本的に水からなるもの)の中に安定して分散されていて、そのために、その分散体を使用するときまでそれらの粒子の沈降が起きないということを意味している。
【0085】
ポリマー(F)の粒子は一般的に、コロイド化学的方法によってアニオン的に安定化されている。そのアニオン的な安定化は、典型的には、界面活性剤(FS)のアニオン性末端基によって得られる。
【0086】
本発明の目的のためには、「粒子」という用語は、幾何学的な観点からは、明瞭に三次元の容積および形状を有する物体を指しているが、ここで、前記のいずれかの次元が、残る二つの次元の1000%を超えることがない三次元を特徴としている。粒子は、一般的には等寸法ではない、すなわち一つの次元が他の次元よりも長く、各種の形状たとえば、球状、棒状、玉石状などが含まれる。
【0087】
その水性分散体(D)は、一般的には、分散(またはエマルション、マイクロエマルションを含む)重合(すなわち、クルード重合ラテックス)として公知の方法によって直接得られる。
【0088】
別な方法として、当業者に公知の各種の手段によって水性分散体を調製することも可能である。それらの分散体は通常、サイズリダクション装置、たとえば高圧ホモジナイザー、コロイドミル、高速ポンプ、振動アジテーター、または超音波機器によって調製される。それらの分散体は、高圧ホモジナイザーまたはコロイドミルによって調製するのが好ましく、高圧ホモジナイザーによるのが特に好ましい。
【0089】
本発明の精製プロセスは、一般的には、重合からの水性分散体を用いて実施される。ポリマー(F)の水性分散体(D)は、有利には、エマルション重合工程を含む各種のプロセスによって得られる。
【0090】
したがって、その水性分散体(D)は、一般的には、先に述べたような少なくとも1種のフッ素化モノマーをエマルション重合させて得られる。
【0091】
ポリマー(F)を得るためのエマルション(マイクロエマルションを含む)重合の際に、フルオロポリマーの一次粒子の凝固を防止するために、穏やかに撹拌するのが有利である。
【0092】
ポリマー(F)の重合工程は、上述のようなフッ素化界面活性剤(FS)を、一般的には、フルオロポリマー(F)一次粒子の分散体を安定化させるのに十分な量で、存在させて実施するのが有利である。
【0093】
水性分散体(D)中に含まれるフッ素化界面活性剤(FS)は、一般的には、重合に使用される界面活性剤である。
【0094】
エマルション重合の際に、共安定剤を界面活性剤(FS)と組み合わせて使用すると有利である。48℃〜62℃の範囲の軟化点を有するパラフィンが、共安定剤として好ましい。
【0095】
フッ素化モノマーのエマルション重合工程を含む方法の詳細な説明は、特に、US4016345(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1977年5月4日)、US4725644(デュポン・ドゥ・ヌムール(DU PONT DE NEMOURS)、1988年2月16日、およびEP11744488A(アウジモント・S.P.A.(AUSIMONT S.P.A.)、2002年1月23日)において入手可能である。
【0096】
エマルション重合は、一般的には、フッ素化界面活性剤(FS)と不溶性の塩を生成することが公知の、選択された多価カチオンの含量が低い水を含む水性媒体の中で実施され、エマルション重合の水性媒体には、以下の含量を有する水が含まれているのが好ましい:
Al含量:有利には0.25mg/L以下;好ましくは0.10mg/L以下;より好ましくは0.05mg/L以下;
Ca含量:有利には0.50mg/L以下;好ましくは0.20mg/L以下;より好ましくは0.10mg/L以下;
Mg含量:有利には0.50mg/L以下;好ましくは0.20mg/L以下;より好ましくは0.10mg/L以下;
Fe含量:有利には0.25mg/L以下;好ましくは0.10mg/L以下;より好ましくは0.05mg/L以下。
【0097】
前記元素の含量の測定は、特に、ISO/DIS 11885法に従った、高周波誘導結合プラズマ光学的発光分光分析によって実施することができる。
【0098】
水溶性重合開始剤は、過硫酸塩、過マンガン酸塩、および水溶性有機過酸化物たとえば、二コハク酸ペルオキシドから選択するのが有利である。
【0099】
水溶性重合開始剤は、場合によっては、還元剤と組み合わせて使用することもできる。その一例は、(NHFe(SO・6HO(モール塩)である。
【0100】
水性分散体(D)、特にエマルション重合から粗格子(crude lattice)として得られるものは、15重量%以上、好ましくは18重量%以上、より好ましくは20重量%以上の固形分含量を有している。
【0101】
前記水性分散体(D)は、有利には多くとも40重量%、好ましくは多くとも38重量%、より好ましくは多くとも35重量%の固形分含量を有している。
【0102】
一般的には、本発明の方法においては、15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%の範囲の固形分含量を有する水性分散体(D)が扱われる。
【0103】
水性分散体(D)の固形分含量は、当業者に周知の標準的な方法に従って測定することができる。一例として、水性分散体(D)の固形分含量は、水性分散体(D)の一部(約20グラム)を開口のガラス容器の中に量り込み、前記の充填したガラス容器を温度105℃のオーブン中に1時間入れておき、その固形残分を秤量することによって、測定することが可能であって、固形分含量は次式に従って求める:
【0104】
【数1】

【0105】
ポリマー(F)粒子は、有利には500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは350nm未満で、かつ有利には1nmを超える、好ましくは10nmを超える、より好ましくは20nmを超える、平均一次粒径を有している。
【0106】
ポリマー(F)粒子の平均一次粒径は、ISO 13321標準に従い、チュー・B.(CHU,B.)「レーザー・ライト・スキャッタリング(Laser light scattering)」(アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)、1974年)に記載の方法による、光子相関分光光度法(PCS)(動的レーザー光散乱(DLLS)法とも呼ばれている方法)によって測定することができる。
【0107】
PCSが、平均流体力学的直径の概略値を与えることは、当業者には周知である。本発明の目的のためには、「平均サイズ」という用語は、流体力学的直径の測定に関連した、その最も広い意味合いを有しているものとする。したがって、この用語は、ポリマー(F)コアの形状またはモルホロジー(玉石状、棒状、球状など)に限定されることなく適用されるであろう。
【0108】
ISO 13321標準の目的に従えば、一次粒子の「平均粒径」という用語は、ISO 13321の付属書Cの式(C10)によって測定されるような、調和強度平均(harmonic intensity-averaged)粒子直径XPCSを表しているということも理解されたい。
【0109】
一例として、平均一次粒径は、相関器ブルックヘブン(Brookhaven)モデル2030ATおよび波長514.5nmのArレーザー光源を備えたスペクトラ−フィジックス(Spectra−Physics)レーザー光散乱測定器、ならびにPCSソフトウェア(モールバーン(Malvern)バージョン1.34)を使用して、測定することができる。一次平均粒径は、エマルションまたはマイクロエマルション重合から得られ、二重蒸留(bidistilled)水を用いて適切に希釈され、0.2μmのミリポア(Millipore)フィルターで濾過されたラテックス試験片について測定するのが好ましい。
【0110】
誤解のないように言えば、本発明の文脈においては、「一次粒子」という用語は、より小さな粒子の凝集においては分析することができないポリマー(F)の粒子を指しているが、一次粒子は、一般的には、ポリマー(F)を製造する際に水中のラテックスまたは分散体として得られる。エマルション重合またはディスパーション重合で得られるポリマー(F)の一次粒子は、特に、ポリマー(F)ラテックスの濃縮および/または凝固、およびそれに続く乾燥および均質化のような、ポリマー(F)製造の回収工程およびコンディショニング工程において、凝集(すなわち、一次粒子の集積物)に転化させることができる。
【0111】
本発明の方法の工程(ii)においては、少なくとも1種の非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]を、ポリマー(F)の水性分散体粒子に添加する。
【0112】
「少なくとも1種の非イオン性非フッ素化界面活性剤」および「[界面活性剤(NS)]」という用語は、1種または2種以上の界面活性剤(NS)がその水性分散体に添加されているものと理解されたい。
【0113】
本発明に適した非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]は、当業者には公知である。適切な界面活性剤(NS)の例は、特に「ノニオニック・サーファクタンツ(Nonionic Surfactants)」(シック・M.J.(SCHICK,M.J.)編、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、1967年)、76〜85頁および103〜141頁に見出すことができる。
【0114】
以下においては、「非イオン性非フッ素化界面活性剤」および「界面活性剤(NS)」という表現は、本発明の目的においては、複数、単数の両方を表していると理解されたい。
【0115】
本出願人の見出したところでは、界面活性剤(NS)は、一般的には、吸着性物質、とくにイオン交換樹脂によって捕捉されることはなく、そのため最終的に精製された分散体の中においても見出すことが可能であり、従って、一般的には、最終製品配合物の中にも入る(これによって本発明の範囲が限定される訳ではない)。
【0116】
この観点から、本発明の界面活性剤(NS)は、芳香族基を含まないものから選択するのが好ましい。芳香族残基を含む非イオン性非フッ素化界面活性剤は、一般的には、フルオロポリマーの焼き付けの際に、熱分解を受けて有害な有機芳香族化合物(たとえば、ベンゼン、トルエンまたはキシレン)に変化することは周知である。したがって、芳香族残基含有界面活性剤を含まない分散体は、環境により優しい製品として評価される。
【0117】
界面活性剤(NS)は、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドから誘導される繰り返し単位を含む脂肪アルコールポリエーテルから選択するのが有利である。
【0118】
本発明の非イオン性非フッ素化界面活性剤は、有利には以下の式(I)に従ったものである:
【0119】
【化5】

[式中、Rは、C〜C18アルキル基であり、pおよびnは、互いに同じであっても異なっていてもよく、ゼロであるかまたは6〜18の範囲であるが、ただし、pとnの内の少なくとも一つはゼロではない]。基Rは、二級のC〜C18アルキル基、三級のC〜C18アルキル基、またはそれらの混合物から、すなわち、以下の(a)および/または(b)に従う基から選択するのが好ましい:
【0120】
【化6】

[式中、Ra、Ra、Rb、Rb、Rbは、出現するごとに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、少なくとも1個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基である]。Rが二級のC〜C18アルキル基である、すなわち、上記の式(a)に従うものであれば、さらにより好ましい。
【0121】
界面活性剤(NS)は以下の式(II)に従うものであれば好ましい:
【0122】
【化7】

[式中、R゜は、C〜C15アルキル基であり、qは、7〜12の範囲である]。基R゜が、二級のC〜C15アルキル基、三級のC〜C15アルキル基、またはそれらの混合物から、すなわち、以下の構造(a)および/または(b)から選択された基から選択されるのが好ましい:
【0123】
【化8】

[式中、Ra、Ra、Rb、Rb、Rbは、出現するごとに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、少なくとも1個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基である]。R゜が二級のC〜C15アルキル基である、すなわち、上記の式(a)に従うものであれば、さらにより好ましい。
【0124】
界面活性剤(NS)が以下の式(III)に従うものであれば、さらにより好ましい:
【0125】
【化9】

[式中、qは、先に定義されたものと同じ意味合いを有し、R゜およびR゜は、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立してC〜C12アルキル基、好ましくは分岐状のものである]。上記の式(III)に従う界面活性剤(NS)は、特に、二級の脂肪アルコールから誘導され;二級アルキル基を含む式(III)の界面活性剤は、本発明の目的のためには特に有用であるが、その理由は、所定のエチレンオキシド含量では、それらがポリマー(F)分散体の剪断安定性を有利に向上させるからである。
【0126】
界面活性剤(NS)は以下の式(IV)に従うものであれば最も好ましい:
【0127】
【化10】

[式中、mは7〜12の範囲である]。上記の式(IV)に従う界面活性剤(NS)は、特に、2,6,8−トリメチル−4−ノナノールから誘導される。
【0128】
界面活性剤(NS)は、EN 1890標準(方法A:1重量%水溶液)に従って測定して、有利には50℃以上、好ましくは55℃以上、さらにより好ましくは60℃以上、最も好ましくは65℃以上の曇り点を有している。50℃以上の曇り点を有する非イオン性非フッ素化界面活性剤を使用すると、有利なことには、室温よりも高い温度で本発明の精製プロセスを実施することが可能となる。すなわち、30〜60℃の温度(吸着性物質の上、特にイオン交換樹脂の上へのフッ素化界面活性剤の吸着の動力学が好ましくなる温度)で、分散体の凝固が起きる危険性もなく、水性分散体と吸着性物質とを接触させることが可能となる。
【0129】
本発明の方法において極めて良好な結果を与えた界面活性剤(NS)は、テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN−X100界面活性剤(ダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals)から市販)であって、これは、14.1のHLB、65℃の曇り点を有し、上記の式(IV)に従ってmが約10.1に等しいものである。
【0130】
誤解のないように言えば、HLBは親水−親油平衡(HLB)であって、それは水溶性試験法を用いて測定することができる(「ザ・HLB・システム(The HLB System)」、ICI・アメリカズ・インコーポレーテッド(ICI Americas Inc.)、1992年)。
【0131】
界面活性剤(NS)は、本発明のプロセスの間、水性分散体(D)を安定化させるのに有効な量で添加する。
【0132】
界面活性剤(NS)の実際の使用量は、当業者ならば、採用する界面活性剤(NS)の性質と水性分散体(D)の性質および濃度とから、容易に求めることができる。
【0133】
一般的には、界面活性剤(NS)を、ポリマー(F)の有利には1〜20%、好ましくは1.5〜15%、より好ましくは2〜10重量%の量で添加する。
【0134】
工程(ii)は、一般的には、穏やかな撹拌下に実施して、有利に、水性分散体(D)物質全体の中に界面活性剤(NS)を均質に分布させる。
【0135】
この場合において、界面活性剤(NS)の添加は、典型的には、撹拌容器の中で実施するが、前記容器は、一般的には、水性分散体(D)を導入するための手段、界面活性剤(NS)を導入するための手段、得られた混合物を抜き出すための手段、および撹拌のための手段を備えている。
【0136】
その撹拌容器は、一般的には、円筒状の形状を有しており、丸底を有していて、典型的にはそこに抜き出し手段が位置する。
【0137】
本発明の一実施態様においては、工程(ii)および/または(iii)の際に、水性分散体(D)に有機溶媒(S)をさらに添加する。
【0138】
本出願人の考えるところでは、有機溶媒(S)を添加することによって、吸着効率を改良することが可能となり、それが粒子表面から水相へのフッ素化界面活性剤(FS)の抽出に有利に働き、その結果前記フッ素化界面活性剤(FS)を吸着性物質処理、特にイオン交換プロセスが利用できるようになる(これによって本発明の範囲が限定される訳ではない)。
【0139】
「有機溶媒」という用語には、フッ素化界面活性剤(FS)を溶解することが可能な極性有機溶媒、またはその溶解パラメーターδが5〜20の範囲に入る、水と混和性のあるその他の有機液体が包含される。
【0140】
極性有機溶媒の例を非限定的に挙げれば、N−メチルピロリドン(NMP);N,N−ジメチルホルムアミド(DMF);N,N−ジメチルアセトアミド(DMA);ジメチルスルホキシド(DMSO);スルホラン;アルコール、グリコール、ポリオールまたは対応するエーテル;ならびにそれらの組合せなどがある。
【0141】
溶解パラメーターについての説明は、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)、第2版、(1963年)、889〜896頁に見出すことができる。本発明の目的のためには、本発明の方法において有用な有機液体は、全溶解パラメーターδの、以下の成分パラメーターを有するものと定義される:
− 分散体成分、δ:7.0〜10.0
− 極性成分、δ:2.0〜11.0
− 水素結合成分、δ:7.0〜14.0
ここで下記の式1は、それぞれの成分の全溶解パラメーターに対する関係を示している:
δ2=δ2+δ2+δ2 (式1)
【0142】
有機溶媒は、アルコール、グリコール、ポリオール、対応するエーテル、およびそれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0143】
それらの溶媒は、一般的にはそれらが最終的に精製された分散体の性質に実質的に影響しないという点からも、有利である。
【0144】
本発明の方法の工程(iii)においては、水性分散体(D)の固形分含量(SC)を10重量%未満となるように調節して、希釈された水性分散体(dD)を作る。
【0145】
水の添加、有機溶媒(S)の添加、界面活性剤(NS)の添加、またはその他好適な流体の添加を用いて、水性分散体(D)の固形分含量を10重量%未満に調節することができる。
【0146】
希釈された水性分散体を得るためには、一般的には、水を水性分散体(D)に添加する。
【0147】
工程(iii)においては、フッ素化界面活性剤(FS)と不溶性の塩を生成することが公知の、選択された多価カチオンの含量が低い水が一般的に使用されるが、以下の含量を有する水が好ましい:
Al含量:有利には0.25mg/L以下;好ましくは0.10mg/L以下;より好ましくは0.05mg/L以下;
Ca含量:有利には0.50mg/L以下;好ましくは0.20mg/L以下;より好ましくは0.10mg/L以下;
Mg含量:有利には0.50mg/L以下;好ましくは0.20mg/L以下;より好ましくは0.10mg/L以下;
Fe含量:有利には0.25mg/L以下;好ましくは0.10mg/L以下;より好ましくは0.05mg/L以下。
【0148】
前記元素の含量の測定は、特に、ISO/DIS 11885法に従った、高周波誘導結合プラズマ光学的発光分光分析によって実施することができる。
【0149】
工程(ii)と(iii)の順序は厳密なものではない、すなわち、これらの工程を同時に実施することも可能であり、あるいは、順に実施することも可能であるが、その場合工程(ii)と工程(iii)のいずれを最初に実施してもよい。
【0150】
10重量%未満の最終的な固形分含量を達成するために必要な水の一部を界面活性剤(NS)と共に、たとえばこの界面活性剤(NS)のための希釈剤として添加し、必要な水の残りの分を別な工程で添加することも可能であるということも理解されるであろう。
【0151】
水の少なくとも一部を、その水性分散体に、撹拌下にか、またはインライン添加すなわち水性分散体(D)の流れに水を導入すること(一般的には、導管の中では乱流であるために、混合効果の面で有利である)によるかのいずれかで添加することが可能である。
【0152】
「インライン」で水を添加するということが好ましい解決法であるが、その理由は、そうすることによって貯蔵タンクの容量を減らすことが可能となるからである。
【0153】
インライン添加は、一般的には、適切な量の水を、水性分散体(D)が流れている配管または導管の中に導入することによって実施される。
【0154】
希釈された水性分散体(dD)の固形分含量は、水性分散体(D)の固形分含量のところで説明したのと同じ方法により測定することができる。
【0155】
水性分散体の固形分含量(SC)を、10重量%未満、好ましくは9.75重量%以下、より好ましくは9.5重量%以下に調節する。
【0156】
水性分散体の固形分含量(SC)が10重量%以下に下がらない場合には、相当する水性分散体の液体粘度が、特にフッ素化界面活性剤を除去したときに、圧力低下が受容不能となり、イオン交換樹脂の凝固現象および目詰まりが起きる可能性がある。
【0157】
希釈された分散体の固形分含量(SC)の下限には、特には制限はないが、それにも関わらず、本方法の経済性のためには、水性分散体の固形分含量(SC)を、1重量%を超える、好ましくは3重量%を超える、より好ましくは5重量%を超えるように調節するのが有利であろうということは理解されよう。
【0158】
本発明の方法の工程(iv)においては、希釈された水性分散体(dD)を少なくとも1種の吸着性物質と接触させて、フッ素化界面活性剤(FS)の含量が、固形分の全重量を基準にして1ppmであるようなポリマー(F)の水性分散体を得る。
【0159】
その希釈された水性分散体は、25℃で、有利には少なくとも125μS/cm、好ましくは少なくとも150μS/cm、より好ましくは少なくとも175μS/cm、かつ有利には多くとも300μS/cm、好ましくは多くとも275μS/cm、より好ましくは多くとも250μS/cmの電気伝導度を有する。
【0160】
希釈された水性分散体の電気伝導度を微調整することが、典型的には、分散体の安定性およびその粘度の両方に影響を与える。
【0161】
電気伝導度は、ISO 7888標準に従って25℃で測定できる。
【0162】
「少なくとも1種の吸着性物質」という用語は、希釈された水性分散体(dD)を1種または2種以上の吸着性物質と接触させることが可能であることを意味していると理解されたい。
【0163】
以下においては、「吸着性物質」という表現は、本発明の目的においては、複数、単数の両方を表していると理解されたい。
【0164】
「吸着性物質」という用語は、水希釈された分散体(dD)からフッ素化界面活性剤(FS)を除去する物質を意味しており、物理的な吸収もしくは吸着または化学吸着もしくはイオン交換またはその他の機構のいずれによるかは問わない。
【0165】
吸着性物質の非限定的な例としては、特に、活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、およびイオン交換樹脂などが挙げられる。
【0166】
吸着性物質が少なくとも1種のイオン交換樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0167】
「少なくとも1種のイオン交換樹脂」という用語は、水希釈された分散体(dD)を、1種または2種以上のイオン交換樹脂と接触させることが可能であることを意味していると理解されたい。
【0168】
以下においては、「イオン交換樹脂」という表現は、本発明の目的においては、複数、単数の両方を表していると理解されたい。
【0169】
吸着性物質がイオン交換樹脂から選択されるのがより好ましい。
【0170】
「イオン交換樹脂」という用語は、固形の不溶性マトリックス(または支持体構造)であって、通常は小さいサイズ(たとえば、0.5〜5mm)のビーズの形態をしており、一般的には有機ポリマー基材から成形されていて、その表面上には、イオン交換と呼ばれるプロセスにおいて、イオンを容易に捕捉および放出(すなわち、交換)する活性サイト(イオン交換サイト)があるものを指している。
【0171】
イオン交換は、一般的には、このイオン交換プロセスにおいては、構造的な変化を伴うことなく進行する。
【0172】
イオン交換樹脂は、天然または合成の物質であってよく、それらは、それら自体のイオンを、接触された液体の中に存在するイオンと交換することができる。
【0173】
したがって、工程(iv)の間に、希釈された水性分散体とイオン交換樹脂との間で、イオンが有利に交換される。したがって、たとえばフッ素化界面活性剤(FS)のアニオンが、水希釈された分散体からイオン交換樹脂へと有利に移動させられる。それと同時に、イオン交換樹脂に最初に結合されていたアニオンが、水希釈された分散体へと有利に移動させられる。
【0174】
イオン交換樹脂は通常、合成ビーズからなる。それぞれのビーズが、その表面上およびそのマトリックス自体の中にイオン交換サイトを有するポリマーマトリックスである。
【0175】
イオン交換樹脂のポリマーマトリックスが、スチレンから誘導される繰り返し単位を含むか(いわゆるポリスチレンマトリックス)、または(メタ)アクリルエステルから誘導される繰り返し単位を含む(いわゆるアクリルマトリックス)を含んでいるのが好ましい。必要とされる交換サイトは、重合後に導入することもでき、あるいは置換されたモノマーを使用することもできる。そのポリマーマトリックスが架橋されたマトリックスであるのが好ましい。その架橋は通常、重合の際に少量のジビニルベンゼンを添加することによって達成される。非架橋ポリマーが使用されることはほとんど無いが、その理由は、それらが、結合されたイオンによって寸法変化する傾向があるからである。そのポリマーマトリックスが、架橋されたポリスチレンマトリックスであれば、より好ましい。
【0176】
多くの各種のタイプのイオン交換樹脂が存在し、それらは、1種または複数の異なったタイプのイオンを選択的に好むように加工されている。
【0177】
アニオンは、他のアニオンとのみ交換可能であり、カチオンは他のカチオンとのみ交換可能である。したがって、使用されるイオン交換樹脂は、溶液から除去するべきフッ素化界面活性剤(FS)のタイプに特異的である。フッ素化界面活性剤(FS)が、イオン交換とは異なった機構によってイオン交換樹脂の上に吸着されることも可能であるということも理解されたい。
【0178】
アニオン交換樹脂は、それに結合されたアニオンを用いて正に荷電したイオン交換サイトを有し、そしてカチオン交換樹脂は、それに結合されたカチオンを用いて負に荷電したイオン交換サイトを有している。イオン交換樹脂は通常、その交換サイトに対する親和性が低い付着イオンを用いて作られる。イオンを含む液体がそのイオン交換樹脂と接触すると、その交換サイトに対して最も親和性が高いイオンが、一般的には、その最も親和性が低いイオンと置き換わる。したがって、そのイオン交換樹脂が、交換されることが必要なものよりも低い親和性を有するイオンを含んでいるということが重要である。アニオン交換樹脂では、多くの場合塩化物(Cl)またはヒドロキシル(OH)イオンが使用されるが、その理由は、それらが交換サイトに対する親和性が低いからである。
【0179】
本発明のイオン交換樹脂が、先に定義されたような少なくとも1種のアニオン交換樹脂を含んでいるのが好ましい。一般的には、フッ素化界面活性剤(FS)は、アニオン性フッ素化化学種の金属塩または四級アンモニウム塩であるので、アニオン交換樹脂が通常、その金属イオン封鎖作用および除去には、より適していると考えられる。
【0180】
正に荷電したイオン交換サイトの非限定的な例は、以下に示すものである:
【0181】
【化11】

[式中、Rは、出現するごとに同じであっても異なっていてもよいが、独立してC〜C12炭化水素基または水素原子であり、Eは、出現するごとに同じであっても異なっていてもよいが、独立して少なくとも1個の炭素原子を含む2価の炭化水素基である]。
【0182】
アニオン交換樹脂の正に荷電したイオン交換サイトが、以下のものから選択されるのが好ましい:
【0183】
【化12】

【0184】
正に荷電したイオン交換サイトに結合されるアニオンの選択は厳密なものではないが、ただし、フッ素化界面活性剤(FS)のアニオンに比較して前記サイトへの親和性が、典型的には低いという必要がある。
【0185】
有用なイオン交換体を選択する上で役に立つ観察は、アニオン交換体の対イオンに相当する酸のpKa値が、フッ素化界面活性剤(FS)に相当する酸のpKa値よりも高くなければならないということである。そのアニオン交換体は、有利には少なくとも3のpKa値を有する酸に相当する対イオンを有している。
【0186】
そのアニオン性イオン交換樹脂は、その正に荷電したイオン交換サイトの上に結合された、以下のものから選択されるアニオンを有しているのが好ましい:
(HFのpKaは3.17);OH(HOのpKaは15.75);CH(CHOHのpKaは15.5);(CHCHO((CHCHOHのpKaは16.5);(CHCO((CHCOHのpKaは17)。
【0187】
そのアニオン交換体は、好ましくは少なくとも5、さらにより好ましくは少なくとも7のpKa値を有する酸に相当する対イオンを有している。
【0188】
最も好ましい対イオンはOHである。
【0189】
希釈された水性分散体がアニオン交換樹脂と一旦接触すると、その樹脂ビーズが、一般的にはそれらの正に荷電したイオン交換サイトに吸着または結合され、フッ素化界面活性剤(FS)の望ましくないアニオン、およびビーズに付着していた元からのイオンが、精製された水性分散体の中に見出されるようになる。
【0190】
一般的には、そのアニオン交換は、基本的には塩基性の環境で実施される。希釈された水性分散体は、一般的には、pH値を調節することなく本方法の工程(iv)にかけられるが、塩基、たとえばアンモニア水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を添加することによってpH値を上げて、その分散体のコロイド安定性を向上させてもよい。7〜9の範囲のpH値が有利である。
【0191】
そのアニオン交換樹脂が、その正に荷電したイオン交換サイトに結合されたOHアニオンを含んでいるのなら、前記OHアニオンは、一般的には、最終的に精製された水性分散体の中にも存在する。したがって、その精製された分散体は、かなりpHが高くなっている可能性がある。最終的なコーティング組成配合ではそのpHが中性または弱塩基性のいずれかである必要があるので、pH調節が必要となる可能性がある。
【0192】
負に荷電したイオン交換サイトの非限定的な例は、以下に示すものである:
【0193】
【化13】

【0194】
負に荷電したイオン交換サイトに結相されるカチオンの選択は厳密なものではないが、ただし、希釈された水性分散体中に含まれるカチオンに比較して、前記サイトへの親和性が、典型的には低いという必要がある。たとえば、カチオン交換樹脂は通常、交換サイトに結合されたナトリウム(Na)または水素(H)イオンを有している。それらのイオンはいずれも、そのサイトに対する親和性は低い。そのカチオン交換樹脂と接触するほとんどすべてのカチオンは、より大きな親和性を有しているので、その交換サイトで水素またはナトリウムイオンと交換する。
【0195】
カチオン交換樹脂は、その負に荷電したイオン交換サイトの上に、水素(H)イオンが結合されているのが好ましい。
【0196】
そのカチオン交換樹脂が、その負に荷電したイオン交換サイトに結合されたHカチオンを含んでいるのなら、前記Hカチオンは、一般的には、最終的に精製された水性分散体の中にも存在する。
【0197】
従って、その希釈された水性分散体(dD)を、水素(H)カチオンを有するカチオン交換樹脂と接触させることによって、精製された分散体のpHを低下させることができる。
【0198】
水性分散体をアニオン交換樹脂と最初に接触させたときには、そのpHが一般的には上がるが、前記分散体をカチオン交換樹脂とさらに接触させると、そのpHは、典型的には低下させられて、6〜9の範囲のpHを有する精製された分散体が得られる。
【0199】
イオン交換樹脂は、一般的には可逆性がある、すなわちそれらを再生させることが可能である。フッ素化界面活性剤(FS)からの望ましくないアニオンを除去し、高濃度で元のイオンを含む溶液を通過させることによって、それらのイオンによって置き換えることができる。イオン交換樹脂の中を、そのような高濃度の溶液を通過させると、その樹脂は、典型的には、前記元のイオンに対する選択性が向上するが、これは、一般的には、圧倒的な数のイオンがその樹脂ビーズに衝突するからである。極めて多くの衝突が起きると、望ましくないアリオンが除去され、置き換えられることとなるであろう。
【0200】
イオン交換樹脂は、樹脂のイオン交換容量と呼ばれる、イオンを交換するための別な性能を有している。これは、イオン交換樹脂が放出することが可能なイオンの量を表す数値であるが、それが捕捉することが可能なイオンの量と同じである。この交換容量は、無名数(全交換容量)として表すことができる。全交換容量は、溶液をイオン交換樹脂と接触させ、前記イオン交換樹脂がそれ以上のイオンを交換できなくなるまでの時間から測定される。
【0201】
希釈された分散体(dD)からフッ素化界面活性剤(FS)と不溶性の塩を形成する、選択された多価カチオン、特にCa++、Mg++、Al+++、Fe++、Fe+++などを除去した後で、前記分散体をアニオン交換樹脂と接触させるようにするのも有利である。たとえば、いくつかのカチオンは、重合補助剤/添加剤の中に含まれているために、希釈された水性分散体の中に存在していてもよいが、その一例としては、レドックスラジカル開始剤の成分としてモール塩を添加すると、分散体の中に、鉄カチオンが無視できない濃度で最終的に生成する。
【0202】
これらおよびその他の問題を回避するために、本発明の好ましい実施態様においては、工程(iv)において、希釈された水性分散体(dD)を少なくとも1種のアニオン交換樹脂および少なくとも1種のカチオン交換樹脂と接触させる。
【0203】
希釈された水性分散体(dD)をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の両方に接触させる順序は厳密なものではなく、すなわち、以下のようにする:
− 希釈された水性分散体(dD)を、最初にアニオン交換樹脂と接触させてから、カチオン交換樹脂と接触させることができる;および/または
− 希釈された水性分散体(dD)を、最初にカチオン交換樹脂と接触させてから、アニオン交換樹脂と接触させることができる;および/または
− 希釈された水性分散体(dD)を、カチオン性交換樹脂およびアニオン性交換樹脂と同時に接触させることができる。
【0204】
本発明の第一の好ましい実施態様においては、希釈された水性分散体(dD)を、最初にカチオン交換樹脂と接触させ、次いでアニオン交換樹脂と接触させる。この実施態様は、その希釈された水性分散体が、フッ素化界面活性剤(FS)と共に不溶性の塩を一般的に形成する多価カチオンを含んでいる場合に特に好適である。これは、そのポリマー(F)が、金属塩、たとえば(たとえばモール塩からの)鉄塩の存在下でのエマルション重合により得られたような場合にあてはまる。
【0205】
希釈された水性分散体(dD)をカチオン交換樹脂と最初に接触させることによって、前記多価カチオンを除去することができるが、この方法においては、イオン交換に利用できるフッ素化界面活性剤(FS)の量が、有利なことには増加するので、最終的には、フッ素化界面活性剤の効率を高くすることが可能となる。
【0206】
本発明の第一の好ましい実施態様においては、その希釈された分散体が、アニオン交換樹脂と接触させるより前に、以下の含量を有しているのが好ましい:
Al含量:有利には0.25mg/L以下;好ましくは0.10mg/L以下;より好ましくは0.05mg/L以下;
Ca含量:有利には0.50mg/L以下;好ましくは0.20mg/L以下;より好ましくは0.10mg/L以下;
Mg含量:有利には0.50mg/L以下;好ましくは0.20mg/L以下;より好ましくは0.10mg/L以下;
Fe含量:有利には0.25mg/L以下;好ましくは0.10mg/L以下;より好ましくは0.05mg/L以下。
【0207】
前記元素の含量の測定は、特に、ISO/DIS 11885法に従った、高周波誘導結合プラズマ光学的発光分光分析によって実施することができる。
【0208】
この第一の実施態様に従う方法は、好ましくは以下の工程を含む:(a)希釈された水性分散体(dD)をカチオン交換樹脂と接触させる工程、(b)次いで、それをアニオン交換樹脂と接触させる工程、および上述の工程(a)および/または(b)の少なくとも一つを繰り返す工程。
【0209】
この第一の実施態様に従う方法には、上述のように、工程(a)に続けて工程(b)という二つのセットが含まれている、すなわち、その希釈された分散体が、カチオン性イオン交換樹脂/アニオン性イオン交換樹脂/カチオン性イオン交換樹脂/アニオン性イオン交換樹脂の順で、イオン交換処理されるのがさらにより好ましい。
【0210】
本発明の第二の実施態様においては、その水希釈された分散体(dD)を最初にアニオン交換樹脂と接触させ、次いでカチオン交換樹脂と接触させる。
【0211】
希釈された水性分散体(dD)を、アニオン交換樹脂と接触させた後にカチオン交換樹脂と接触させることによって、その分散体の最終的なpHを細かく調節することが可能である。
【0212】
この第二の実施態様に従う方法は、好ましくは以下の工程を含む:(a’)希釈された水性分散体(dD)をアニオン交換樹脂と接触させる工程、(b’)次いで、それをカチオン交換樹脂と接触させる工程、および上述の工程(a’)および/または(b’)の少なくとも一つを繰り返す工程。
【0213】
この第二の実施態様に従う方法には、上述のように、工程(a’)に続けて工程(b’)という二つのセットが含まれている、すなわち、その希釈された分散体が、アニオン性イオン交換樹脂/カチオン性イオン交換樹脂/アニオン性イオン交換樹脂/カチオン性イオン交換樹脂の順で、イオン交換処理されるのがさらにより好ましい。
【0214】
希釈された水性分散体(dD)と吸着性物質との間の接触時間または滞留時間(言い換えれば、イオン交換の容積に関連して、単位時間の間にイオン交換樹脂の中を通過する分散体(dD)の量)は、当該技術分野で一般的な実施態様に従えば、当業者によって選択されるであろう。
【0215】
工程(iv)が断続的に実施されるのならば、その接触時間は、有利には少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間であり、かつ、有利には多くとも10時間、好ましくは多くとも8時間である。
【0216】
工程(iv)が連続的に実施されるのならば、その滞留時間は、有利には少なくとも0.1時間、好ましくは少なくとも0.2時間であり、かつ、有利には多くとも10時間、好ましくは多くとも8時間である。
【0217】
工程(iv)の温度に関しては、一般的には、一定に保つ必要があるが、その理由は、温度変化が、典型的には、吸着性物質の吸着動力学および性能に影響するからであり、たとえば、イオン交換樹脂の細孔のサイズは、温度変化によって変化する可能性があるということは周知である。
【0218】
工程(iv)を、有利には低くても20℃、好ましくは低くても25℃、より好ましくは低くても30℃の温度で実施するのが、一般的には好ましい。
【0219】
温度の上限には特に制限はないが、ただし、希釈された水性分散体(dD)と吸着性物質が、その温度でも有利に、安定な状態に留まっていなければならない。したがって、工程(iv)を、一般的には、有利には高くても50℃、好ましくは高くても45℃、より好ましくは高くても40℃の温度で実施するということが理解されよう。
【0220】
工程(iv)は、特に、希釈された水性分散体(dD)をイオン交換樹脂のベッドに接触させることによって実施することができる。標準的な装置、たとえば塔またはカラムを使用することができる。この場合、工程(iv)は、有利には、水希釈された分散体(dD)の流れを、イオン交換樹脂のベッドを通過させることにより、連続的に運転する。流速には厳密な条件は必要なく、標準的な流速を使用することができる。その流れは、上向きでも下向きでもよい。
【0221】
イオン交換樹脂は、1層または2層以上のベッドの中に配してよい。前記ベッドは、一般的には、適切なカラムまたは塔の中に、垂直に配置される。一般的には、適切なポンプによって、希釈された水性分散体(dD)がイオン交換樹脂を通過するように流す。希釈された分散体に低い剪断条件を与えるようなポンプが好ましい。適切なフィルター、ネットまたはその他の保持手段を用いて、カラムの中にイオン交換樹脂を保持し、精製された希釈された分散体をそれから効率的に分離できるようにする。
【0222】
あるいは、工程(iv)を、容器の中で水性分散体をイオン交換樹脂と共に穏やかに撹拌することによって実施することも可能である。そのプロセスは、バッチプロセスとして運転しても、あるいは連続プロセスとして運転してもよい。意外にも、本出願人が見出したところでは、容器の中で穏やかに撹拌することによって工程(iv)を実施すると、イオン交換樹脂が、有利には、単一の顆粒のレベルでフルオロポリマーの分散体の中に極めて良好に分散され、凝集してフルオロポリマー粒子を閉じ込めるようなこともない。これは、高い固形分含量のフルオロポリマーの分散体を処理するための先行技術の方法とは対照的であって、先行技術では、処理の最初のところでイオン交換樹脂が浮遊し、次いで凝集を形成して、フルオロポリマー粒子を閉じ込めてしまう。
【0223】
この処理の最後では、水性分散体を、一般的には、濾過によって単離するが、その他の分離方法(デカンテーション、沈降など)を使用することもできる。
【0224】
精製された、フルオロポリマーの水性分散体は、一般的には、さらなる濃縮工程にかけて、貯蔵および輸送のため、ならびにコーティングとして適用するために必要とされる上述の高固形分含量を達成する。
【0225】
本発明の方法には、一般的には、精製された水性分散体を濃縮することを含む工程(v)をさらに含む。
【0226】
したがって、工程(iv)に続けて、その精製された分散体を濃縮して、固形分含量を、多くとも75重量%にまで上昇させる。
【0227】
その濃縮された、精製された分散体は、特に、当業者に公知の方法のいずれか一つを用いて得ることができる。
【0228】
一例として、濃縮された、精製された分散体は、特に、非イオン性界面活性剤を添加し、上述の非イオン性界面活性剤の曇り点よりも高い温度に加熱し、上澄み水相をポリマー(F)リッチな相から分離させること(いわゆるクラウディングプロセス)によって得ることができる。
【0229】
別な方法としては、濃縮された、精製された分散体は、当業者に周知の限外濾過法によって得ることも可能である。
【0230】
本発明の好ましい実施態様においては、その方法には、限外濾過法によるさらなる濃縮工程が含まれるが、この実施態様においては、その精製された分散体を、選択的半透膜を通して濾過するが、それによって、濃縮された分散体を液相(廃水)の画分から分離させることが可能となる。
【0231】
希釈された分散体は、タンジェンシャルフィルター(tangential filter)装置の中で濾過するのが好ましい。一般的には、タンジェンシャルフィルター装置は、外側ジャケット(一般的には、金属製またはプラスチック製ジャケット)の中に含まれた半透膜チューブからなり、前記チューブと前記ジャケットは適切な手段によって相互に結合され、そして前記タンジェンシャルフィルターには、膜のチューブ/外側ジャケットの円筒状の隙間から廃水を抜き出すための適切な手段が備わっている。
【0232】
本発明の方法のために、その方法に支障が生じるようなことはまったく観察されなかった。さらに、本発明によるそのような分散体についての、最終ユーザーの加工性または使用上の性質には、何の変化も無い。
【0233】
図1に、本発明の方法の第一の実施態様を示す。
【0234】
フルオロポリマー水性分散体(1)および非イオン性界面活性剤(2)を、撹拌タンク(3)に加えるが、そこで、水性分散体(D)と非イオン性界面活性剤の均質な混合物を得て、貯蔵することができる。適切なポンプ手段(5)によって、導管(6)を通して水性分散体を流すことを可能とするが、ここで、水(7)の流れを、適切な計測手段(図示せず)および注入手段(図示せず)によって計量する。導管(8)の中に得られた希釈された水性分散体が、アニオン交換樹脂を含む第一のカラム(9)の中を通過し、導管(10)を通して抜き出され、さらなるこれまたアニオン交換樹脂を含むカラム(9’)に向かう。抜き出し手段および導管(10’)によって分散体を送って、カチオン交換樹脂を含むカラム(11)を通す。抜き出された精製された分散体を導管(12)を通して、貯蔵タンク(13)に送る。適切なポンプ手段(16)が、前記精製された分散体を限外濾過ユニット(17)に送り、そこで、半透膜が廃水(18)を濃縮された分散体(19)から分離する。濃縮された分散体は貯蔵タンク(13)にリサイクルされ、最終的な固形分濃度に達するまで、限外濾過ユニット(17)に再循環される。目標の固形分濃度が得られたら、排出バルブ(14)を開けて、その濃縮された精製水性分散体(15)を回収して、配合したり、および/またはさらなる加工を加えたりする。半透膜を透過した、少量の非イオン性界面活性剤(NS)を含む、廃水(18)を、さらなる処理にかけてから最終的に廃棄してもよいが、たとえば逆浸透(RO)濃縮プロセスなど当業者に周知の方法を用いて、それから、特に、非イオン性界面活性剤を回収することもできる。
【0235】
図2に、本発明の方法の第二の好ましい実施態様を示す。
【0236】
フルオロポリマー水性分散体(21)およびテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN−X100(非イオン性界面活性剤)(22)を、撹拌タンク(23)に加えるが、そこで、水性分散体(D)と非イオン性界面活性剤の均質な混合物を得て、貯蔵することができる。適切なポンプ手段(25)が、導管(26)を通して水性分散体を流すことを可能とし、ここで、Al含量0.05mg/L未満、Ca含量0.1mg/L未満、Mg含量0.1mg/L未満、Fe含量0.05mg/L未満で含む水の流れ(27)を、適切な計測手段(図示せず)および注入手段(図示せず)によって計量する。導管(28)の中に得られる希釈された分散体を、多価カチオン含量をさらに低下させるためのカチオン交換樹脂を含む、第一のカラム(29)に通し、導管(30)から抜き出してアニオン交換樹脂を含むカラム(31’)へ送る。抜き出し手段と導管(30’)によって、分散体をさらにアニオン交換樹脂を含むカラム(31’)を通過させる。抜き出された精製された分散体を導管(32)を通して、貯蔵タンク(33)に送る。適切なポンプ手段(36)が、前記精製された分散体を限外濾過ユニット(37)に送り、そこで、半透膜が廃水(38)を濃縮された分散体(39)から分離する。濃縮された分散体は貯蔵タンク(33)にリサイクルされ、最終的な固形分濃度に達するまで、限外濾過ユニット(37)に再循環される。目標の固形分濃度が得られたら、排出バルブ(34)を開けて、その濃縮された精製水性分散体(35)を回収して、配合したり、および/またはさらなる加工を加えたりする。先に述べたように、半透膜を透過した、少量の非イオン性界面活性剤(NS)を含む廃水(38)を、さらなる処理にかけてから最終的に廃棄してもよいが、たとえば逆浸透(RO)濃縮プロセスなど当業者に周知の方法を用いて、それから、特に、非イオン性界面活性剤を回収することもできる。
【0237】
本発明のさらなる目的は、以下のものを含む水性ポリマー(F)分散体である:
− 少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)];
− 少なくとも1種の非イオン性界面活性剤[界面活性剤(NS)];
− 固形分の全重量を基準にして1ppm未満の量の少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]。
【0238】
本発明の方法は、上述のような分散体を得るのに特に適してはいるが、それにも関わらず、前記分散体は各種適切な方法により得ることができる。
【0239】
ポリマー(F)、界面活性剤(NS)および界面活性剤(FS)の特徴は、先に挙げたものと同じである。
【0240】
本発明のポリマー(F)の水性分散体には、固形分の全重量を基準にして、好ましくは0.8ppm以下、より好ましくは0.75ppm以下、最も好ましくは0.5ppm以下のフッ素化界面活性剤(FS)が含まれる。
【0241】
本発明の分散体には、以下のものが以下の量で含まれているのが有利である:
Al含量:0.25mg/L以下
Ca含量:0.5mg/L以下
Mg含量:0.5mg/L以下
Fe含量:0.25mg/L以下。
【0242】
本発明の分散体には、以下のものが以下の量で含まれているのが好ましい:
Al含量:0.10mg/L以下
Ca含量:0.2mg/L以下
Mg含量:0.2mg/L以下
Fe含量:0.10mg/L以下。
【0243】
本発明の分散体には、以下のものが以下の量で含まれているのがより好ましい:
Al含量:0.05mg/L以下
Ca含量:0.1mg/L以下
Mg含量:0.1mg/L以下
Fe含量:0.05mg/L以下。
【0244】
前記元素の含量の測定は、特に、ISO/DIS 11885法に従った、高周波誘導結合プラズマ光学的発光分光分析によって実施することができる。
【0245】
本発明の水性ポリマー(F)分散体は、25℃で、有利には少なくとも225μS/cm、好ましくは少なくとも250μS/cm、より好ましくは少なくとも275μS/cm、かつ、有利には多くとも450μS/cm、好ましくは多くとも425μS/cm、より好ましくは多くとも400μS/cmの電気伝導度を有している。
【0246】
前記水性分散体の電気伝導度を微調整することが、一般的には、分散体の安定性に強い影響を与え、また、その粘度はこのパラメーターによって強い影響を受ける。
【0247】
電気伝導度は、ISO 7888標準に従って25℃で測定できる。
【0248】
本発明の水性ポリマー(F)分散体または上述の方法によって得られる水性ポリマー(F)分散体は、たとえば、その他の水性樹脂分散体たとえば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミドアミド樹脂、イミド樹脂など;顔料、界面活性剤、無機充填剤、およびその他の添加剤たとえば、消泡剤、増量剤などを添加することによって、目標とする特定の用途に関連して、適切に配合することができる。
【0249】
本発明の水性ポリマー(F)分散体または上述の方法によって得られる水性ポリマー(F)分散体は、金属表面およびセラミック表面の上へのコーティング用途のため、織物の含浸に、ならびにキャストフィルムを得るために、有利に使用することができる。
【0250】
ここで、以下の実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明するが、その目的は単に説明のためだけであって、本発明の範囲を限定するつもりはない。
【0251】
分析方法
実施例において記載されるパーセントは、特に断りのない限り、重量基準である。
【0252】
ラテックス中の平均粒子直径の測定
平均直径は、光子相関分光光度法(PCS)に基づいて、相関器ブルックヘブン(Brookhaven)モデル2030ATおよび波長514.5nmのArレーザー光源を備えたスペクトラ−フィジックス(Spectra−Physics)レーザー光散乱測定器を使用して測定した。ラテックスサンプルは水を用いて希釈し、0.2μmミリポア(Millipore)フィルターで濾過した。
【0253】
ポリマー(F)粒子の平均一次粒径は、チュー・B.(CHU,B.)「レーザー・ライト・スキャッタリング(Laser light scattering)」(アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)、1974年)に記載の方法により、ISO 13321標準に従って、測定した。
【0254】
ISO 13321標準に従って、一次粒子の平均粒径を、ISO 13321の付属書Cの式(C.10)によって、調和強度平均粒子直径XPCSとして測定した。
【0255】
ポリマー(F)分散体の固形分含量の測定
水性分散体の固形分含量は、水性分散体の一部(約20グラム)を開口のガラス容器の中に量り込み、前記の充填したガラス容器を温度105℃のオーブン中に1時間入れておき、その固形残分を秤量することによって測定したが、その固形分含量は次式に従って求めた:
【0256】
【数2】

【0257】
濃縮された分散体中のポリマーおよび非イオン性界面活性剤含量の測定
約1gの濃縮された分散体をアルミニウム容器の中に秤量し、オーブン中105℃で1時間かけて乾燥させた。秤量した後で、その容器をオーブン中に400℃で10分間おいた(焼結工程)。最終的な重量に基づいて、濃縮された分散体中のポリマー含量を次式によって得た:
【0258】
【数3】

【0259】
濃縮された分散体中の非イオン性界面活性剤含量は、次式に従って求めた:
【0260】
【数4】

【0261】
水中多価カチオン濃度の測定
元素含量として表わした、多価カチオン濃度の測定は、特に、ISO/DIS 11885試験法に従った高周波誘導結合プラズマ光学的発光分光分析によって実施することができる。
【0262】
フッ素化界面活性剤(FS)の測定
フッ素化界面活性剤(FS)含量は、前記界面活性剤(FS)をそれに対応するメチルエステルに転化させ、ガスクロマトグラフ法(GC)によってその濃度を測定することにより測定した。
【0263】
分散体中のフッ素化界面活性剤の残存濃度を測定するために使用した方法は、以下において、より詳しく説明する。
【0264】
必要な量のポリマー(F)分散体を、パイレックス(登録商標)バイアルの中に精秤し、数滴のアンモニア水溶液(30重量%)を加えて、pHを約11とする。次いでその分散体を、オーブン中、80℃で3時間かけて乾燥させる。
【0265】
次いで、1重量%の硫酸を含むメタノールのアリコートをその混合物に添加し、そのバイアルを活栓でシールし、オーブン中70℃で16時間保つ。
【0266】
室温で、A113のアリコートをその混合物に添加する。ポリマー(F)をデカントさせてから、その透明な溶液を精秤して(well-defined amount)、さらなるバイアルに移し;次いで脱イオン水を添加して、フッ素化物相(下相)を分離して、もう一度脱イオン水を用いて洗浄する。
【0267】
前記フッ素化物相をGCで分析するが、それに使用するのは、スペルコ(Supelco)(商標)−1石英ガラスキャピラリーカラムと、サーモ・フィニンガム(Thermo Finningam)製のエレクトロンキャプチャーディテクター(ECD)とを備えたガスクロマトグラフである。
【0268】
フッ素化界面活性剤(FS)含量の測定は、標準配合分散体から得た適切な較正曲線から得る。
【0269】
イオン交換樹脂を用いた分散体の処理:バッチ手順
処理するべき分散体の必要量を容器に移し、具体的な実施例で示した量の選択された非イオン性界面活性剤を用いて安定化させた。次いでその分散体を、それぞれの実施例に示した温度で2枚羽根の機械式撹拌機を用いて穏やかに撹拌した。
【0270】
分散体の中で樹脂のビーズ状アグリゲートが生成するのを避けるために、選択された非イオン性界面活性剤の1%溶液を用いて、使用するイオン交換樹脂を予備処理した。
【0271】
過剰の界面活性剤溶液を注意深く除去してから、その樹脂を使用した。分散体の重量を基準にして、アニオン性交換樹脂の場合には5%、カチオン性樹脂の場合には3%の量で、樹脂を撹拌状態の分散体に添加した。樹脂を水性分散体の中に均質に分散させてから、実施例のところに示した接触時間の間、その系を撹拌させておいた。
【0272】
水性分散体を樹脂から濾過し、残存しているアニオン性フッ素化界面活性剤(FS)の含量を測定した。
【0273】
異なったイオン交換体を分散体と接触させた順序は、それぞれの実施例に詳述し、後の表1にまとめてある。
【0274】
キャストフィルム析出プロセス
濃縮された分散体が含まれている浴の中にポリイミドフィルム支持体を完全に浸漬させ、1.2m/分に等しい速度で引き上げた。2本の押さえ棒を用いて、その支持体から過剰な分散体を除去した。次いで、そのコーティングされたフィルムを120℃で乾燥させ、竪型塔の中350℃で約30秒間で焼結させた。コーティングとそれに続く焼結のプロセスを5回繰り返して、約50μmのポリマーフィルム厚みを得た。その分散体の湿潤特性は、そのプロセスの際にたとえば斑点(fish-eye)のような欠陥が無いかどうかを調べることにより評価した。次いでそのコーティングされたフィルムを、固体支持体から機械的に剥離させて、特性を調べた。欠陥(たとえば亀裂(crack)および/または塊状物)の存在は、10×10の倍率の光学顕微鏡を用いて評価し、また白色度は、別な実施例から得られた他のフィルムと比較することで定性的に求めた。
【0275】
pH測定
その測定は、標準pHメーターを使用し、温度25℃で実施した。
【0276】
電気伝導度
その測定は、ISO 7888標準に従い、クリソン(Crison)mod.525電導度計を用いて温度25℃で実施した。
【0277】
ブルックフィールド粘度
粘度(単位:センチポワズ(1cps=1mPa・s))は、600mLの開口ガラス容器の中に500mLのサンプルを入れ、プローブ1(2〜400センチポワズ−cP)を備えたブルックフィールド粘度計RVTを使用し、35℃で測定した。
【0278】
濃縮された分散体のポリマー(F)含量に対して計算した、分散体の中に存在する凝塊測定
500gの濃縮された分散体を、重量既知の、10μmメッシュの不織布ナイロンネットを通して濾過した。濾過終了時に、そのネットに500mLの水を通過させて、ネットから過剰の分散体を除去した。任意の残渣(optional residue)を含むネットを、オーブン中105℃で1時間かけて乾燥させてから秤量した。凝塊の量を、ネットの初期重量に対する重量差から求めた。その差分を、500gの前記分散体の中に含まれていたポリマー(F)の量で割り、それに100をかけると、ポリマー(F)中の凝塊の量が求められた。この方法の感度限界は、ポリマーの重量を基準にして、0.005%である。
【0279】
ポリマー(F)フィルムをガラス支持体上に析出させることによる、マイクロアグリゲートの測定
10mLの試験にかける濃縮された分散体を、注意深くクリーニングした光学顕微鏡検査ガラスの上に繰り返して注いでから、それを90度傾けて放置して、マイクロアグリゲートの存在を発現する膜を得た。次いで、その膜をカール・ツアイス(Carl Zeiss)製の光学顕微鏡アキシオスコップ(Axioskop)を用い、倍率2.5×10で、90度の偏光源を用いて評価すると、マイクロアグリゲートは、フィルム表面上の光の点として検出された。視覚的な評価を、コーティングされた検査ガラス表面の、異なった三つの標準化された表面について実施し、最終的なデータはその三つのカウントの平均値として報告した。
【実施例】
【0280】
重合実験
<実施例1>
機械式撹拌機を備えた、440リットルの真空オートクレーブ中に、98gのペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFOA)を、347g/リットルの濃度の水溶液の形で移し、正確に脱気した脱イオン水275リットルを加えたが、その導電率は0.4μS/cmであり、その組成は次の通りであった:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。
【0281】
オートクレーブには、4kgの軟化点52〜54℃のパラフィンを予め加えておいた。
【0282】
撹拌しながら、TFEを用いてオートクレーブを加圧して、圧力20バールまで上げ、温度を上げて68℃とした。次いでそのオートクレーブに、3.56gの(NH(APS)と17.74gの二コハク酸ペルオキシド(DSAP)とを含む溶液4.50リットルを加えた。
【0283】
圧力が0.5バール低下したら、コンプレッサーを使用してTFEを溶液に添加して、オートクレーブの中を20バール一定の圧力に維持した。その間に、オートクレーブ内の温度を0.5℃/分の速度で昇温させて78℃にまで上げた。その反応の間に、APFOの濃縮水溶液(347g/リットル)450gを、オートクレーブの中にフィードした。
【0284】
140kgのTFEを反応させるのに必要な時間に相当する、90分後に、フィードを中断し、オートクレーブからガスを抜き、放冷した。そのようにして得られたラテックスの固形分含量は約30%(w/w)であった。
【0285】
先に詳述した光子相関分光光度法(PCS)によって測定した平均一次粒子直径は240nmであった。固形分の全重量を基準にしたPFOA含量は3950ppmであった。
【0286】
<実施例2>
3180gのAPFOAを秤量し、正確に脱気した脱イオン水265リットルに加えたが、その導電率は0.4μS/cm、その組成は次の通りであり:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L、そしてそれに続けて、機械式撹拌機を備え、予め真空としておいた440リットルのオートクレーブにフィードした。PFOA溶液を添加する前に、そのオートクレーブには、4kgの軟化点52〜54℃のパラフィンと、202gのヘキサフルオロプロペン(HFP)を加えておいた。
【0287】
撹拌しながら、TFEを用いてそのオートクレーブ中の圧力を20バールまで上げ、温度を75℃にまで上げた。次いでそのオートクレーブに、22mgのAPSを含む溶液4500mLを加えた。
【0288】
容器の中の圧力が0.5バール低下したら直ぐに、コンプレッサーを用いてTFEをオートクレーブにフィードし、約20バールの一定圧力を維持した。
【0289】
その間に、オートクレーブ内の温度を0.2℃/分の速度で昇温させて85℃にまで上げた。
【0290】
50.2kgのTFEを反応させるのに必要な時間に相当する、70分間後に、フィードを停止し、反応器からガスを抜き、放冷した。そのようにして得られたラテックスの固形分含量は約15%(w/w)であった。
【0291】
ポリマー中のHFPの重量%は約0.4%である。PCSによって測定した平均一次粒子直径は78nmであった。固形分の全重量を基準にしたPFOAの含量は66150ppmであった。
【0292】
<実施例1ビス(マイクロエマルション重合)>
プラスチックドラムの中に、以下のものを導入した:
・ 式ClC(CO)CFCOOH[式中、nは1〜3であり、酸滴定による分子量は479に相当する]を有するペルフルオロポリエーテル界面活性剤のアンモニウム塩35部;
・ 式:RO(CO)n’(CFXO)m’R’[式中、n’およびm’は平均分子量700が得られるような整数である]を有するペルフルオロポリエーテル15部、および
・ 水50部。
【0293】
そうして得られたマイクロエマルションは、完全に透明であることが見出された。機械式撹拌機を備え真空にした2000リットルのオートクレーブの中に、44.0キログラムの上述のマイクロエマルション(これは、3.7mL/Lのペルフルオロポリエーテル界面活性剤に相当する)を、1380リットルの正確に脱気した脱イオン水(その導電率は0.4μS/cm、その組成は次の通りである:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L)、ならびに2kgの軟化点52〜54℃のパラフィンと混合した。
【0294】
その反応器の中に、4200グラムのペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)をさらに、100ミリバールのエタンと共に導入した。撹拌しながら、TFEを用いてオートクレーブを加圧して、圧力20バールまで上げ、温度を上げて75℃とした。次いで、5リットルの(NH(APS)溶液(75.0グラムのAPSに相当する)を、そのオートクレーブにフィードした。反応器の内部の圧力が0.5バール低下するごとに、コンプレッサーによってTFEをフィードして、反応器の中を20バールの一定圧力に維持した。反応器温度の設定値は、90℃とした。約400kgのTFEが反応するのに相当する70分後に、TFEのフィードを停止し、反応器の排気を行い、冷却した。そのようにして得られたラテックスは、ポリマーの全重量を基準にして、22.7%(w/w)の固形分含量と、0.7%(w/w)のPPVE含量とを有していた。
【0295】
先に詳述した光子相関分光光度法(PCS)によって測定した平均一次粒子直径は52nmであった。固形分の全重量を基準にした、フッ素化界面活性剤の含量は37000ppmであった。
【0296】
イオン交換精製および濃縮試験
<実施例4>
10.56リットルの実施例1で得られた分散体を、40リットルのドラムに入れ、29.44リットルの水に溶解させた667gのテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xの溶液を用いて希釈したが、その水は導電率0.4μS/cmであり、以下の組成を有していた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。
【0297】
得られた分散体は、9.5%(w/w)のPTFE含量と、分散体上を基準にして1.5%の非イオン性界面活性剤含量を有し、そのpHは3.5に等しかった。
【0298】
形のカチオン交換樹脂ダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いてその分散体を処理し、次いで、上述の手順に3時間かけ、その処理の最後に、濾過によって樹脂を分離した。
【0299】
次いで、その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて処理し、次いで、上述の手順に6時間かけ、次いで濾過によって樹脂を分離した。イオン交換処理はすべて、32℃で実施した。上に詳しく述べた処理手順を分散体について繰り返したが、それには、後者を再度カチオン交換樹脂と、そして次いでアニオン交換樹脂と接触させた。
【0300】
PFOAの含量は、上述のようにして測定した。測定値は、固形分の重量を基準にして0.4ppmであった。
【0301】
その分散体のイオン強度は、分散体の重量を基準にして200ppmの硝酸アンモニウムを添加することによって調節する。
【0302】
分散体に対して実施した処理のすべての条件設定は、表1に見ることができる。
【0303】
その分散体を、40リットルのタンクの中に仕込み、遠心ポンプを用いて、ラテックスを加圧下に半透膜を通過させて循環させ、水を除去することによって水性分散体を濃縮させた。
【0304】
4時間後に、その濃縮された分散体をプロセスタンクから回収した。そのラテックスは、62.3%(w/w)のPTFE含量、およびポリマー重量を基準にして3.3%の非イオン性界面活性剤含量を有し、その導電率が350μS/cmであった。
【0305】
その濃縮された分散体を水中に溶解させたテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xと配合したが、その水は0.4μS/cmの導電率と、以下の組成とを有しており:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L、それによって、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)を有する分散体が得られた。
【0306】
凝塊の存在は検出できなかった。
【0307】
35℃で測定した粘度は18cpsであった。マイクロアグリゲートは存在しなかった。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さず、無色であった。
【0308】
キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥も検出されなかった。
【0309】
すべての試験と測定は先に述べた手順に従って実施され、そのすべてのデータを表2および3に報告する。
【0310】
<実施例5>
21.6リットルの実施例2で得られた分散体を、40リットルのドラムに入れ、18.4リットルの水に溶解させた667gのテルジトール(TERGITOL)(登録商標)TMN100Xの溶液を用いて希釈したが、その水は導電率0.4μS/cmであり、以下の組成を有していた:
Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。
【0311】
そうして得られた分散体は、9.0%(w/w)の固形分含量と、分散体を基準にして1.5%の非イオン性界面活性剤含量を有していた。
【0312】
まず、その分散体を、H形のカチオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いて3時間処理し、次いでそのイオン交換樹脂を濾過除去した。次いで、その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて6時間処理し、次いでそのイオン交換樹脂を濾過除去した。上に詳しく述べた処理手順を分散体について繰り返したが、それには、後者を再度カチオン交換樹脂と、そして次いでアニオン交換樹脂と接触させた。
【0313】
イオン交換処理はすべて、35℃で実施した。上述の方法に従って測定したPFOAの含量は、固形分の全重量を基準にして0.5ppmであることが見出された。
【0314】
その分散体のイオン強度は、分散体の重量を基準にして400ppmの硝酸アンモニウムを添加することによって調節した。
【0315】
分散体に対して実施した処理のすべての条件設定は、表1に見ることができる。
【0316】
その分散体を、40リットルのタンクの中に仕込み、遠心ポンプを用いて、ラテックスを加圧下に半透膜を通過させて循環させ、水を除去することによって水性分散体を濃縮させた。
【0317】
4時間後に、その濃縮された分散体をプロセスタンクから回収した。そのラテックスは、50.8%(w/w)のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして10.4%の非イオン性界面活性剤含量とを有し、その導電率は700μS/cmであった。
【0318】
その濃縮された分散体を、実施例4から得られた分散体と混合すると、10/90の比率(w/w)の実施例2/実施例1からなる最終的な分散体が得られた。そうして得られた混合物を、0.4μS/cmの導電率を有する水の中に溶解させたテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xと配合すると、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)を有する分散体が得られた。
【0319】
凝塊の存在は検出できなかった。35℃で測定した粘度は20cpsであった。マイクロアグリゲートは存在しなかった。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さず、無色であった。キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥も検出されなかった。
【0320】
すべての試験と測定は本明細書で先に述べた手順に従って実施されたが、そのすべてのデータを表2および3に報告する。
【0321】
<実施例6>
10.56リットルの実施例1で得られた分散体を、40リットルのドラムに入れ、21.44リットルの水に溶解させた667gのテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xの溶液を用いて希釈したが、その水は導電率0.4μS/cmであり、以下の組成を有していた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。
【0322】
さらに、8リットルのイソプロピルアルコールをその分散体に添加した。
【0323】
そうして得られた分散体は、9.5%(w/w)の固形分含量と、分散体の重量を基準にして、1.5%の非イオン性界面活性剤含量を有していた。
【0324】
その分散体を、H形のカチオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いて3時間処理し、その処理の最後に、そのイオン交換樹脂を濾過除去した。
【0325】
次いで、その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて6時間処理し、次いでその樹脂を濾過除去した。イオン交換処理はすべて、30℃で実施した。上に詳しく述べた処理手順を分散体について繰り返したが、それには、後者を再度カチオン交換樹脂と、そして次いでアニオン交換樹脂と接触させた。
【0326】
上述の方法に従って測定したPFOAの含量は、固形分の全重量を基準にして0.2ppmであることが見出された。
【0327】
次いで、その分散体のイオン強度を、分散体の重量を基準にして500ppmの硫酸アンモニウムを添加することによって調節した。
【0328】
分散体に対して実施した処理のすべての条件設定は、表1に見ることができる。
【0329】
その分散体を、40リットルのタンクの中に仕込み、遠心ポンプを用いて、ラテックスを加圧下に半透膜を通過させて循環させ、水を除去することによって水性分散体を濃縮させた。4時間後に、その濃縮された分散体をプロセスタンクから回収した。その分散体は、62.4%(w/w)のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして2.9%の非イオン性界面活性剤含量とを有していた。
【0330】
その濃縮された分散体を、水中に溶解させたテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xと配合して、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)とを有する分散体を得た。
【0331】
凝塊の存在は検出できなかった。35℃で測定した粘度は15cpsであった。マイクロアグリゲートは存在しなかった。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さず、無色であった。
【0332】
キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥も検出されなかった。
【0333】
すべての試験と測定は先に述べた手順に従って実施されたが、そのすべてのデータを表2および3に報告する。
【0334】
<実施例7>
実施例1に示した重合条件を生産用反応器においてスケールアップして得られた、8000リットルのPTFE分散体を、撹拌タンクの中に仕込み、テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xを用いて安定化させた。
【0335】
図2に示されたプロセスレイアウトに従って、その分散体をイオン交換樹脂と接触させ、限外濾過によって濃縮したが、それには以下の工程が含まれている:
− 安定化された分散体を、導管(26)を通してポンプ輸送し、水(0.4μS/cmの導電率、組成:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L)の流れと組み合わせて前記分散体を希釈する工程であって、その希釈された分散体は、8.5%(w/w)の固形分含量、0.65%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量、固形分の全重量を基準にして4082ppmのPFOA含量を有し、pHが3.4で、温度が32℃である工程;
− 前記希釈された分散体を、H形のカチオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を充填したカラム(29)の中を通過させ、次いでOH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を充填した2本のカラム(31および31’)を通過させる工程;
− 固形分の重量を基準にして、0.4ppmのフッ素化界面活性剤(PFOA)含量を有する、その精製された分散体を撹拌タンク(33)の中に集め、230ppmの硝酸アンモニウムを添加する工程;
− 前記精製された分散体をポンプ輸送して限外濾過ユニット(37)中に通して、その濃縮された分散体から廃水を分離する工程;
− 濃縮された分散体を貯蔵タンクの中にリサイクルし、限外濾過ユニットに再循環させて、濃縮を所望の最終的な固形分含量に到達するようにする工程。
【0336】
そうして得られた濃縮された分散体は、61.6%(w/w)の固形分含量、2%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)、固形分の重量を基準にして、0.4ppmのフッ素化界面活性剤(PFOA)含量、260マイクロS/cmの導電率、およびpH=9.9を有していた。
【0337】
その濃縮された分散体をテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xと配合して、ポリマーの重量を基準にして、60%(w/w)のPTFE含量と、5%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量とを得た。
【0338】
凝塊の存在は検出できなかった。
【0339】
35℃で測定した粘度は18cpsであった。マイクロアグリゲートは存在しなかった。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さず、無色であった。
【0340】
キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥も検出されなかった。
【0341】
すべての試験と測定は先に述べた手順に従って実施され、そのすべてのデータを表2および3に報告する。
【0342】
<比較例2>
実施例1で得られた分散体28リットルを、40リットルのドラムの中に入れてから、12Kgの水に溶解させた600gのトリトン(TRITON)(登録商標)X100の溶液を用いて希釈したが、その水は、0.4μS/cmの導電率と、以下の組成を有していた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。そうして得られた分散体は、分散体の重量を基準にして、22%の固形分含量と、分散体の重量を基準にして、1.5%の非イオン性界面活性剤の含量とを有していた。
【0343】
まず、その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて6時間処理し、その処理の最後では、イオン交換樹脂を容易に濾過除去した。次いで、その分散体を、H形のカチオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いて3時間処理し、そのイオン交換樹脂を濾過除去した。イオン交換処理はすべて、20℃で実施した。上に詳しく述べた処理手順を分散体について繰り返したが、それには、後者を再度カチオン交換樹脂と、そして次いでアニオン交換樹脂と接触させた。
【0344】
先に本明細書で述べた方法に従って測定したPFOAの含量は、固形分の重量を基準にして4.1ppmであることが見出された。
【0345】
分散体に対して実施した処理のすべての条件設定は、表1に見ることができる。
【0346】
その分散体を、先の実施例において述べたのと同じプロセスを介して濃縮させたが、そうして得られたラテックスは、63.4%(w/w)のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして、2.9%の非イオン性界面活性剤含量とを有していた。
【0347】
その濃縮された分散体を、水中に溶解させたトリトン(TRITON)(登録商標)X100と配合して、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(トリトン(TRITON)(登録商標)X100)とを有する分散体を得た。
【0348】
0.015%を占める凝塊が見出された。35℃で測定した粘度は50cpsであった。膜の光学試験で、2個のマイクロアグリゲートが検出された。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さなかったが、黄色みがかった着色が観察された。キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥が検出された。
【0349】
すべての試験と測定は本明細書で先に述べた手順に従って実施されたが、そのすべてのデータを表2および3に報告する。
【0350】
<比較例3>
実施例1からの分散体28リットルを、40リットルのドラムの中に入れてから、12Kgの水に溶解させた600gのトリトン(TRITON)(登録商標)X100の溶液を用いて希釈したが、その水は、0.4μS/cmの導電率と、以下の組成を有していた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。そうして得られた分散体は、22%の固形分含量と、分散体の重量を基準にして、1.5%の非イオン性界面活性剤の含量とを有していた。
【0351】
その分散体を、先の実施例において述べたのと同じプロセスを介して濃縮させ、3.5時間後に、濃縮された分散体をプロセスタンクから回収したが、そのPTFE含量は分散体の重量を基準にして52%であり、非イオン性界面活性剤の含量は、分散体の重量を基準にして2.8%であった。
【0352】
それに続けて、その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて処理し、その手順を6時間実施してから、その処理の最後にイオン交換樹脂を濾過除去した。上に詳しく述べた処理手順を分散体について繰り返したが、それには、後者を再度カチオン交換樹脂と、そして次いでアニオン交換樹脂と接触させた。
【0353】
そうして得られた分散体を、H形のカチオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いて処理し、その手順を3時間実施してから、その処理の最後にイオン交換樹脂を濾過除去した。イオン交換処理はすべて、21℃で実施した。
【0354】
上述の方法に従って測定したPFOAの含量は、固形分の重量を基準にして4.8ppmであることが見出された。
【0355】
分散体に対して実施した処理のすべての条件設定は、表1に見ることができる。
【0356】
その分散体を、先の実施例において述べたのと同じプロセスを介して再度濃縮させて、固形分含量を62.7%(w/w)まで、そしてポリマーの重量を基準にして3.1%の非イオン性界面活性剤含量にまで上昇させた。
【0357】
その濃縮された分散体を、水中に溶解させたトリトン(TRITON)(登録商標)X100と配合して、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(トリトン(TRITON)(登録商標)X100)とを有する分散体を得た。
【0358】
0.025%を占める凝塊が見出された。35℃で測定した粘度は48cpsであった。膜の光学試験で、4個のマイクロアグリゲートが検出された。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さなかったが、黄色みがかった着色が観察された。キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥が検出された。
【0359】
すべての試験と測定は先に述べた手順に従って実施されたが、そのすべてのデータを表2および3にまとめた。
【0360】
<比較例4>
実施例1からの分散体18リットルを、40リットルのドラムの中に入れてから、22kgの水に溶解させた600gのゲナポール(GENAPOL)(登録商標)X80の溶液を用いて希釈したが、その水は、0.4μS/cmの導電率と、以下の組成を有していた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。そうして得られた分散体は、分散体の重量を基準にして、15%の固形分含量と、分散体の重量を基準にして、1.5%の非イオン性界面活性剤の含量とを有していた。
【0361】
その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて処理し、その手順を6時間実施してから、その処理の最後にイオン交換樹脂を濾過除去した。
【0362】
そのイオン交換処理は25℃で実施した。
【0363】
上述の方法に従って測定したPFOAの含量は、固形分の全重量を基準にして2.3ppmであることが見出された。
【0364】
分散体に対して実施した処理のすべての条件設定は、表1に見ることができる。
【0365】
その分散体を、先の実施例において述べたのと同じプロセスを介して濃縮させたが、そうして得られた分散体は、61.0%(w/w)の固形分含量と、ポリマーの重量を基準にして、2.7%の非イオン性界面活性剤含量とを有していた。
【0366】
その濃縮された分散体を、水中に溶解させたゲナポール(GENAPOL)(登録商標)X80と配合して、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(ゲナポール(GENAPOL)(登録商標)X80)とを有する分散体を得た。
【0367】
ポリマーの0.02%を占める凝塊が見出された。35℃で測定した粘度は150cpsであった。膜の光学試験で、5個のマイクロアグリゲートが検出された。そのキャストフィルムは、明らかに亀裂の形跡を示し、無色であった。キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥も検出されなかった。
【0368】
すべての試験と測定は先に述べた手順に従って実施されたが、そのすべてのデータを表2および3に報告する。
【0369】
<実施例8>
実施例1において詳述されたようにして得られた分散体の5リットルを、40リットルのドラムの中にいれ、30リットルの水に溶解させた540グラムのテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xの溶液を用いて希釈させたが、その水は、0.4μS/cmの導電率と、以下の組成とを有していた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。そうして得られた分散体は、5%(w/w)のPTFE含量と、(分散体の全重量を基準にして)1.5重量%の非イオン性界面活性剤含量を有し、そのpHが3.6であることが見出された。
【0370】
形のカチオン交換樹脂ダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いてその分散体を処理し、次いで、上述の手順に3時間かけ、その処理の最後に、濾過によって樹脂を分離した。
【0371】
次いで、その分散体を、OH形のアニオン交換樹脂アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いて処理し、次いで、上述の手順に6時間かけ、次いで濾過によって樹脂を分離した。
【0372】
上に詳しく述べた処理手順を分散体について繰り返したが、それには、後者を再度カチオン交換樹脂と、そして次いでアニオン交換樹脂と接触させた。イオン交換処理はすべて、29℃で実施した。
【0373】
PFOAの含量は、上述のようにして測定した。測定値は、固形分の重量を基準にして0.1ppmであった。
【0374】
その分散体のイオン強度を、分散体の重量を基準にして200ppmの硝酸アンモニウムを添加することによって調節した。その分散体を、40リットルのタンクの中に仕込み、遠心ポンプを用いて、ラテックスを加圧下に半透膜を通過させて循環させ、水を除去することによって水性分散体をさらに濃縮させた。4時間後に、その濃縮された分散体をプロセスタンクから回収した。そのラテックスは、61.9%(w/w)のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして2.8%の非イオン性界面活性剤含量とを有していた。
【0375】
その濃縮された分散体を、水に溶解させたテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xと配合したが、その水は0.4μS/cmの導電率と、以下の組成を有しており:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Mg<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L、それによって、分散体の重量を基準にして60%のPTFE含量と、ポリマーの重量を基準にして5%の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)とを有する分散体が得られた。
【0376】
凝塊の存在は検出できなかった。
【0377】
マイクロアグリゲートは存在しなかった。そのキャストフィルムは、塊状物および/または亀裂の形跡は示さず、無色であった。キャストフィルム析出プロセスの際の、斑点欠陥も検出されなかった。
【0378】
<比較例5>
実施例1に示した重合条件を生産用反応器においてスケールアップして得られた、8000リットルのPTFE分散体を、撹拌タンクの中に仕込み、テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xを用いて安定化させた。
【0379】
その分散体を、図2に示したプロセスレイアウトに従って、イオン交換を用いて処理し、限外濾過法によって濃縮したが、ただし、その希釈を、最終的に18.4重量%の固形分含量、1.56%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量、固形分の全重量を基準にして4017ppmのPFOA含量、pH=3.4、温度22℃となるように実施した。
【0380】
実施例7に詳述した手順に従ったが、上述の分散体を、直列になっている2本のカラムの中に含まれる、OH形のアニオン交換樹脂のアンバージェット(AMBERJET)4400だけに接触させた。
【0381】
(実施例7の記載に従って実施された)さらなる濃縮の後では、得られた濃縮された分散体は、60.0%(w/w)のPTFE含量、2.6%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)、固形分の重量を基準にして3.4ppmのPFOA含量を有し、その導電率が83μS/cm、pH=10.59であった。
【0382】
<比較例6>
実施例1に示した重合条件を生産用反応器においてスケールアップして得られた、8000リットルのPTFE分散体を、撹拌タンクの中に仕込み、テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xを用いて安定化させた。
【0383】
その分散体を、図2に示したプロセスレイアウトに従って、イオン交換を用いて処理し、限外濾過法によって濃縮したが、ただし、その希釈を、処理された分散体が、28.5%(w/w)の固形分含量、1.69%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量、固形分の全重量を基準にして3549ppmのPFOA含量を有し、pH=3.5、温度23℃となるように実施した。
【0384】
(実施例7の記載に従って実施された)さらなる濃縮の後では、得られた濃縮された分散体は、63.2%(w/w)のPTFE含量、1.8%(w/w)の非イオン性界面活性剤含量(テルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100X)、固形分の重量を基準にして4.3ppmのPFOA含量を有し、その導電率が76μS/cm、pH=10.9であった。
【0385】
<実施例9>
実施例1ビスで得られた分散体の135.0リットルを、500リットルの容器に入れ、220リットルの水の中に溶解させた6.7kgのテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xを用いて希釈したが、その水の導電率は0.4μS/cmで、以下の組成を含んでいた:Al<0.05mg/L;Ca<0.1mg/L;Fe<0.05mg/L。
【0386】
得られた分散体は、9.4%(w/w)のPTFE含量と、分散体を基準にして1.6%の非イオン性界面活性剤含量を有し、そのpHは4.1に等しかった。
【0387】
その希釈された分散体を、US6,833,403にならって、直径15cm、高さ150cmのガラスカラムの中の、H形のカチオン交換樹脂のダウエックス(DOWEX)(登録商標)Mac3を用いて処理したが、前記カラムには25リットルのイオン交換樹脂を充填し、水を用いて逆洗浄した。次いで、OH形の樹脂アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4400を用いたアニオン交換処理を同様のカラムの中で実施したが、それには、25リットルのイオン交換樹脂を上から充填し、水を用いて逆洗浄した。希釈された分散体を、ペリスタポンプを用い、1時間あたり1.5ベッド容積の流速でカラムに通したが、それによって、40分の接触時間となった。分散体をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂カラムに通すことによって、上述の処理を繰り返した。すべてのイオン交換処理は25℃で実施した。
【0388】
上述の方法に従って測定したペルフルオロポリエーテル界面活性剤の残存濃度は、固形分の全重量を基準にして0.7ppmであることが見出された。
【0389】
<比較例7>
実施例1ビスの記載に従って得られたPTFE分散体の350リットルを、分散体の重量を基準にして2.9%のテルジトール(TERGITOL)(商標)TMN100Xを用いて安定化させた。
【0390】
得られた安定化された分散体は、22.1%(w/w)のPTFE含量、分散体を基準にして2.8%の非イオン性界面活性剤含量を有し、pHが3.4に等しいことが見出された。
【0391】
その安定化された分散体を、温度25℃で、カラム中のアニオン性樹脂と接触させることによって、実施例9に詳述したのと同じ処理にかけた。40リットルの分散体をポンプ輸送した後では、分散体の流量が減少して、ついには極めてわずかとなり、過圧のためにポンプが停止してしまった。そのカラムを調べると、閉塞していることが判った。そのカラムの中から取りだした分散体のサンプルは、固形分の全重量を基準にして、250ppmのペルフルオロポリエーテル界面活性剤含量を有していることが見出された。
【0392】
【表1】

【0393】
【表2】

【0394】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0395】
【図1】本発明の方法の第一の実施態様を示す。
【図2】本発明の方法の第二の好ましい実施態様を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー分散体の精製方法であって、前記方法が:
(i)15重量%以上の固形分含量(SC)を有する、少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]の水性分散体(D)を提供する工程;
(ii)前記水性分散体(D)に少なくとも1種の非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]を添加する工程;
(iii)前記固形分含量(SC)を10重量%未満に調節して、希釈された水性分散体(dD)を得る工程;
(iv)前記希釈された水性分散体(dD)を少なくとも1種の吸着性物質と接触させて、固形分の全重量を基準にして1ppm未満のフッ素化界面活性剤(FS)の含量を有する、ポリマー(F)の水性分散体を得る工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記ポリマー(F)がペル(ハロ)フルオロポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペル(ハロ)フルオロポリマーが、ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)のホモポリマーであるか、または2種以上のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであって、前記ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)が、
− C〜Cペルフルオロオレフィン、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP);
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cペル(ハロ)フルオロオレフィン、たとえばクロロトリフルオロエチレン;
− 一般式CF=CFORf3に従うペル(ハロ)フルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf3は、C〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば−CF、−C、−Cである];
− 一般式CF=CFOX01に従うペル(ハロ)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、X01は1個または複数のエーテル基を有するC〜C12ペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基である];
− 一般式CF=CFOCFORf4に従うペル(ハロ)フルオロ−メトキシ−アルキルビニルエーテル[式中、Rf4はC〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば−CF、−C、−Cまたは、1個または複数のエーテル基を有するC〜Cペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、たとえば−C−O−CFである];
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【化1】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである];好ましくは上に挙げた式に従うペル(ハロ)フルオロジオキソールで、Rf3とRf4がフッ素原子であり、そしてRf5とRf6がペルフルオロメチル基(−CF)であるもの[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]か、または、上に挙げた式に従うペル(ハロ)フルオロジオキソールで、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子であり、そしてRf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)であるもの[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]、
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペル(ハロ)フルオロポリマーが、TFEホモポリマー、および、
− 式CF=CFORf7’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf7’は、−CF、−C、−Cから選択される基である];および/または
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【化2】

[式中、Rf3とRf4はフッ素原子であり、Rf5とRf6はペルフルオロメチル基(−CF)である[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]か、または、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子であり、Rf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)である[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]]、からなる群から選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマー;
から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水性分散体(D)が、式
f§(X(M
[式中、Rf§は、C〜C16(ペル)フルオロアルキル鎖または(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、Xは、−COO、−POまたは−SOであり、Mは、H、NH、アルカリ金属イオンから選択され、jは1または2とすることができる]のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]を含んでいる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]が、
− CF(CFn1COOM’[式中、nは、4〜10、好ましくは5〜7の整数、より好ましくは6に等しく、M’は、H、NH、Na、Li、またはK、好ましくはNHである];
− T(CO)n0(CFXO)m0CFCOOM”[式中、Tは、Cl、または式C2k+1Oのペルフルオロアルコキシド基(ここで、kは1〜3の整数であり、F原子の一つは、場合によっては、Cl原子によって置換されていてもよい);nは、1〜6の範囲の整数であり;mは、0〜6の範囲の整数であり;M”は、H、NH、Na、Li、またはKを表し;XはFまたはCFを表す];
− F−(CF−CFn2−CH−CH−ROM”’[式中、RはPまたはS、好ましくはSであり;M’”は、H、NH、Na、Li、またはK、好ましくはHを表し;nは、2〜5の範囲の整数、好ましくはn=3である];
− A−R−B二官能フッ素化界面活性剤[式中、AおよびBは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、−(O)CFX−COOMであって;MはH、NH、Na、Li、またはKを表すが、好ましくはMがNHを表し;X=FまたはCFであり;pは、0または1に等しい整数であり;Rは、直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキル鎖、または(ペル)フルオロポリエーテル鎖であって;A−R−Bの数平均分子量が、300〜1,800の範囲である];
− ならびに、それらの混合物、
から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非イオン性非フッ素化界面活性剤(NS)が、次式(I)
【化3】

[式中、Rは、C〜C18アルキル基であり、pおよびnは、互いに同じであっても異なっていてもよく、ゼロであるかまたは6〜18の範囲であるが、ただし、pとnの少なくとも一つはゼロではない]に従う、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤(NS)が、次式(IV)
【化4】

[式中、mは7〜12の範囲である]
に従う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(iv)において、前記希釈された水性分散体(dD)が、少なくとも1種のアニオン交換樹脂および少なくとも1種のカチオン交換樹脂と接触させられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
− 少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)];
− 少なくとも1種の非イオン性界面活性剤[界面活性剤(NS)];
− 固形分の全重量を基準にして1ppm未満の量の少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]、
を含む、水性ポリマー(F)分散体。
【請求項11】
固形分の全重量を基準にして、0.8ppm以下、より好ましくは0.75ppm以下、最も好ましくは0.5ppm以下のフッ素化界面活性剤(FS)を含む、請求項10に記載の水性分散体。
【請求項12】
前記分散体が、
Al含量:0.25mg/L以下
Ca含量:0.5mg/L以下
Mg含量:0.5mg/L以下
Fe含量:0.25mg/L以下、
を含む、請求項10または11に記載の水性分散体。
【請求項13】
25℃で、少なくとも225μS/cm、好ましくは少なくとも250μS/cm、より好ましくは少なくとも275μS/cm、かつ、多くとも450μS/cm、好ましくは多くとも425μS/cm、より好ましくは多くとも400μS/cmの電気伝導度を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項14】
金属表面もしくはセラミック表面の上へのコーティング用途のため、織物の含浸における、またはキャストフィルムを得るための、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得られるか、または請求項10から13のいずれか一項に記載の、水性ポリマー(F)の使用。

【公表番号】特表2009−533509(P2009−533509A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504709(P2009−504709)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053427
【国際公開番号】WO2007/116037
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】