説明

フレキシブルな通気性ポリマーフィルムおよびその製造方法

自然界からその全ての構造的および材料的な構造によりガス交換および浄化プロセスを可能にする異なった機能を有する機能性の膜は公知である。しかし公知の技術的な膜およびフィルムは機能性または柔軟性が欠ける。本発明は、その表面範囲において漏斗形に拡張した孔の範囲でナノスケールの粒子系により改質されており、かつ特に包装の目的のために適切な、安価でフレキシブルな、通気性のポリマーフィルムを提供する。変性は少なくとも、化学的に不活性な、無機ナノ粒子からなるバインダーフィルムと、短波光の照射下で光触媒活性な、親水性の非毒性金属酸化物のナノ粒子からなるライニングフィルムとからなる、抗菌性作用および自浄作用を有する複合層構造からなる。その際、その作用は孔の漏斗形の拡張部の開口角の選択により調節可能である。機能の拡張のために異なった層の添加が可能である。製造はたとえば漏斗形の毛管孔を有するポリマーフィルムの、周囲条件において実施可能な、コロイド状のナノ粒子の、特にセラミックをベースとする分散液によるゾル・ゲル系中での安価な表面処理により高エネルギーのイオン照射および片面もしくは両面のエッチングにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムを通過するガス交換を可能にする毛管孔からなる、立体的に配列された構造を有するフレキシブルな通気性のポリマーフィルムおよびこのようなポリマーフィルムを製造する方法に関する。
【0002】
このようなポリマーフィルムは機能的な多孔質の膜である。全ての生まれる生命のために自然はこのような機能的な膜を多数発達させた。これには卵の殻の有機/無機複合系も挙げられる。その構造は、生命に必要なガス交換プロセス(CO/O−交換)および生まれる生命(微生物)のための危険防御が卵の殻の全ての構造的な構成により保証されるように構成されている。この効率的な生物学的特性は、以下に記載されるように、機能的な膜を技術的に開発するためのモデルとみなされている。ダチョウの卵の殻の超構造をバイオニックなモデルシステムとして、および表面活性な薬剤を選択するためのその適性を生態類似的に評価することから出発して、卵の殻とは大きく異なりフレキシブルであり、このことによって著しく広い適用分野が生じ、かつ破壊の危険性が著しく低いポリマーフィルムを開発すべきである。その際、ダチョウの卵は、CaCOタイプのマイクロ粒子および立体的に配列された構造が関与して最適化された複合層に基づいて高い安定性により優れている。通気性の膜としてガス交換プロセスを適切に制御することができる能力が判明し、かつ微生物の侵入に対する抗菌性の保護としての作用(防汚特性)を有する。さらにダチョウの卵は高い反射特性を有する。
【0003】
このような通気性のバイオニックな膜のための適用に方向付けられた展望は第一に、あらゆる種類の包装材につながる。快適さ、ロジスティクスおよび環境保護に対する高い要求は高品質の包装材を必要とする。包装材は製品を保護し、かつ輸送可能にするのみであるだけでは不十分である。包装材はさらに、環境に優しく製造することができ、合理的に再利用可能であり、かつその製品寿命の終わりにあたっては安全に廃棄処理することができなくてはならない。これらの生態学的および経済的な要求を全て満足する材料はさらに、特に軽量で、安定しており、壊れにくく、透明であり、かつさらに趣味が中立的(geschmacksneutral)であるべきである。しかし包装材料は目下、これらの前記の全ての基準およびそれ以上のものが一体化されていることはほとんどない。将来の包装は、「製品」包装ではなく、その環境経済的な周辺条件を含む「システム」包装を全体として最適化する場合に、基準を設定することができる。このことは、日用的な需要の使用品、投資財などを「包装」するためと同様に、最も大きな適用分野としての、傷みやすく、かつ寿命の短い包装された食料品および植物に該当する。このような通気性のバイオニック膜のためのその他の適用分野として、たとえば次のものが挙げられる:医薬および製薬分野での包装、生態親和性、抗菌性および通気性のインプラント、建築および設計分野での「被覆(Verkleidung)」のための通気性フィルム、フレキシブルな外被、気体輸送を制御するためのセンサが組み込まれたフィルム、自己診断システムを有する活性な膜、作用物質のためのデポーとしての分子スケールもしくはナノスケールのインテリジェントなカプセル化、車両および交通技術における適用のためのフレキシブルな部材もしくは外被、新規のロボット世代の機能的な部材としての活性な外被(細胞外被(Zellhuellen))、環境工学の分野での活性な外被(膜)、フィルター技術における活性な外被、危険保護、マスク(Mundfilter)およびテキスタイルおよび服飾技術。
【0004】
構想される新規のタイプの材料にとって重要なことは、その通気性以外に抗菌作用(殺菌)および自浄性に関する機能である。これらの両方の機能を合わせるための比較的新しい、公知の方法は、「光触媒反応」である。この場合、光により励起可能な材料、通常は半導体、を長波の紫外線で照射する。このことにより反応性のOHラジカルが生じ、該ラジカルが微生物を死滅させ、かつ汚れまたは分解ガスまたは液体を中和することができる。光活性は親水性の原因にもなる。小さい液滴を用いた表面張力の測定に基づいて、紫外光は接触角を低減することを証明することができた。このことは照射されたフィルム表面上の有機物質の光触媒反応による分解を証明している。この方法の利点は、触媒を再使用することができ、かつ化学反応のために必要とされる紫外線が人工光からも太陽光からも取り出すことができることである。光触媒作用のある材料(ドープされた、もしくは微不均一性材料)を長波に対して感受性であるように変性する際に、照射のためにブルーライトを使用することができる。総じて300nm〜600nmの波長範囲の短波光の照射は、記載された光触媒効果を引き起こすために適切である。
【0005】
従来技術から一般に、膜を阻害剤、抗生物質または塩により含浸すること、たとえば食料品の鮮度保持を延長するための通気性フィルムまたは食品のための抗菌性包装が公知である。しかしこれらの膜の場合、同時に制御されたガス交換は保証することができない。US6,114,024から、固体の均質な液体バリアとしてのモノリスな通気性ポリマーフィルムが公知であるが、しかしこれは吸着、吸収、拡散または脱着による気体の輸送が可能である。使用されるポリマーは高度に吸湿性であり、このことによって該ポリマーは水を吸収する傾向がある。飽和した状態で該ポリマーは酸素およびその他の気体に対して有利には飽和していない環境への水蒸気の透過を可能にする。US6,187,696B1から、繊維状の支持体を有する層状複合材料が公知であり、該複合材料上には蒸気透過性であるが、しかし液体を遮断するフィルムが積層されている。しかしこの場合、層状複合材料は有利には微細孔を有していない。US6,228,480B1から、食料品の水分を制御する包装のために、光触媒材料により被覆されたフレキシブルな構造が公知であり、この場合、支持体と光触媒層との間に付着の改善および支持体と光触媒材料の触媒活性の保護のために樹脂層が配置されている。特にこの米国特許文献からは、二酸化チタンはn−伝導性の半導体材料として殺菌性および抗菌性を有する良好な光触媒材料であり、これはUV照射下で種々の化学反応を活性化することができ、特に食料品からの腐敗ガスとしてのエチレンガスを分解することができることが公知である。さらに、酸化チタンが粉末の形で、または溶液中の懸濁液として関与する場合に、高い触媒活性が得られることが公知である。この場合、その活性は支持体が支持体と反応体との接触面積を高めるために、その表面上に多孔質の構造を有する場合にさらに向上することができる。しかし触媒活性を向上するために、光触媒作用のある材料がフレキシブルな支持体を貫通していることはUS特許文献からは読み取ることができない。
【0006】
ところがJ.C.HulteenおよびC.R.Martinによる刊行物”Template Synthesis of Nanoparticles in Nanoporous Membranes”(J.H.Feudler等の著書:”Nanoparticles and Nanostructured Films”、第10章、第235〜262頁、1998年)はこのことに取り組んでおり、これは第10.3.4章、”Sol−Gel−Deposition”(第242頁)、第10.8.2章、”Photocatalysis”(第258/259頁)から読みとることができる。その中には同様に、二酸化チタンの光触媒作用による殺菌作用を利用した二酸化チタンの使用が開示されており、このことは特に十分一般的に公知である。さらに二酸化チタンは多孔質の構造(”テンプレート”)中に埋め込まれる。しかし公知のテンプレートは、硬質のAlのセラミック膜であり、その細孔中に二酸化チタンが埋め込まれる。このようなセラミック膜は壊れやすく、従って包装材料として適切ではない。二酸化チタンはゾル・ゲル法により細孔中に充填され、かつ引き続き高温で焼成し、かつセラミックへと変換される。細孔を完全に充填することにより焼成後に硬質セラミックからなる小さな中実の小さい棒状物(”フィブリル”;一般に長さ数10μm、直径約1μm)が生じる。引き続きAl膜を溶解し、かつセラミック棒状物をエポキシ樹脂上に接着する。このことにより公知の配列は唯一の機能として、光触媒活性を有する。中実の二酸化チタンに対する相違は、多くのセラミック棒状物の本質的により大きな表面積に見られ、これは反応速度の上昇をもたらす。しかしフィルム状の構造における制御されたガス交換はこの公知の配置により保証することができない。
【0007】
従って本発明の課題は、最も近い従来技術として最後に挙げた刊行物および自然界からのダチョウの卵のモデルから出発して、光触媒反応を最適に実施する多孔質材料およびゾル・ゲル法に基づいた製造方法を提供することであり、この場合、微生物の制御および中和は、同時にガス交換を維持しながら確実に保証される。さらにポリマーフィルムは水密であるべきであり、かつ多種多様な適用性が、使用される材料および方法工程に関して安価な製造と同時に達成されるべきである。
【0008】
前記の課題のための本発明による解決方法は次の構成を考慮に入れる:
ポリマーフィルムを通過するガス交換を可能にする、ポリマーフィルムの少なくとも1表面における漏斗形の拡張部を有する選択可能な毛管直径の毛管孔および、少なくとも毛管孔の漏斗形の拡張部の範囲に施与された、化学的に不活性な無機ナノ粒子からなる、ポリマーフィルムを保護する少なくとも1つの透明なバインダーフィルムと、該バインダーフィルム上に付着する、短波光の照射下で光触媒活性な親水性の非毒性の、抗菌性で、かつ自浄作用があり、その際、その作用は毛管孔の漏斗形の拡張部の開口角の選択により調節可能である、少なくとも1の金属酸化物のナノ粒子からなるライニングフィルムとからなる複合層構造からなる、立体的に配列された構造を有するフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。本発明によるポリマーフィルムの有利な実施態様は従属請求項から読みとることができる。このようなポリマーフィルムを製造するための有利な方法およびその実施態様は相応する方法クレームから読みとることができる。全ての請求項はその内容において、本発明と関連させて以下の一般的および具体的な記載の部に詳細に説明される。
【0009】
本発明により、ダチョウの卵の殻の超構造の生態類似的な評価および表面活性な薬剤の選択に関するその適性から出発してナノスケールの粒子系により改質した機能性セラミックの多孔質膜の機能においてフレキシブルなポリマーフィルムを提供することができる。呼吸活動を可能にし、かつ潜在的な呼吸する包装品をバクテリアによる被害から、ひいては早すぎる老化および早すぎる腐敗から保護する、物理化学的な特性を有する、工業的に適用可能な包装フィルムが製造される。包装される「生きている」食品、たとえば果物を本発明によるバイオニックな膜の包装によって一段と長期間、新鮮に維持し、かつ乾燥から、もしくは芳香の損失から保護することができる。改質されたポリマーフィルム自体は問題なく再利用することができるか、または廃棄処理することができる。このために、わずか数μmの直径を有する、その漏斗形に拡張された孔が予め、たとえば大きなフィルムロールから高エネルギーの重イオン照射および引き続きエッチング(一方の表面のみに漏斗形の拡張部を達成するための片側エッチング(シングルコーン(Einfachkonus))、両方の表面に漏斗形の拡張部を達成するための両面エッチング(ダブルコーン(Doppelkonus))により製造された、本発明による多孔質のポリマーフィルムに、ナノテクノロジーを用いて実施される、特に漏斗形に終わる孔の、特にライニングの形での機能的な形状を付与する。しかしダチョウの卵に対してライニングは面積の大きい硬質な形状ではなく、ナノメートル範囲(5nm〜100nm)の極めて小さい粒子の形で、孔体積の内側にも外側にも十分に均質に分布し、このことによってポリマーフィルムの柔軟性は損なわれない。この場合、付着の改善および支持体フィルムの保護のためのバインダー層上に、要求される特性を有するライニング層が施与されている複合層構造が特に有利であることが判明した。孔の十分な均一性および最終生成物の化学的な安定性は、複数の品質特性のうちの2つである。従って本発明により殺菌性および通気性のフィルムの形で、環境に優しく、かつ安価な包装代替品としてのバイオニックな包装を提供することができる。この場合、本発明によるポリマーフィルムは、生態類似の構造での機能性ナノ粒子のライニングを有する人工的な卵の殻の膜であり、かつほぼ任意の適用形での、光触媒作用のある、通気性で平滑かつ均質な光沢のある包装の原型の構造的な外観である。
【0010】
要求される品質特性を実現するための基準は、支持体、バインダーフィルムおよびライニングフィルムもしくはナノ粒子の間の界面における相互作用である。ダチョウの卵の殻の界面現象および内側の構造の知識により、多孔質の膜の粒径および特殊な表面特性に依存して、開発すべきバイオニックな原型(フィルム形の有孔膜)の最適化の目的をもって成分の適切な選択が可能になる。従って卵の殻と類似して本発明によるポリマーフィルムの場合、以下において「機能性ライニング」ともよばれる、抗菌性および自浄性のライニングを有する十分に定義されて製造された孔は、呼吸機能としての多孔質フィルムを通過する効果的なガス交換を、無機表面の抗菌作用と同時に保証する。このことによりたとえば本発明によるフィルムにより包装された食料品の寿命は添加剤を添加することなく、明らかに延長することができる。しかし膜機能を有する本発明によるポリマーフィルムは、卵の殻と大きく異なりフレキシブルであり、ひいては丈夫で多方面で適用可能である。機能性ライニングは光触媒作用のある材料により生じ、該材料は短波光の照射、通常はUV光の照射下で、光触媒活性で親水性の非毒性なナノ粒子の形の金属酸化物である。通常、これらの基準はセラミック材料、たとえば酸化亜鉛または三価の酸化鉄が満足する。ここで最もよく知られているのは食料品工業において非毒性であると認められている二酸化チタンである。光活性は必要とされる親水性の特性の原因と見なされている。光活性は、アナターゼの微結晶の二酸化チタンに対して現れる半導体効果であるが、しかしまたルチルおよびその他の微結晶形ならびにこれらの混合形も光活性を示す。Eg=3.2eVのアナターゼ変態のバンドギャップおよび約VVB=3.1eV(pH0)の原子価バンドの高い酸化電位により、ほぼ全ての有機分子をUV照射(波長<390nm)下で酸化することが可能になる。二酸化チタンは化学的に極めて安定しており、かつ著しい強酸中でのみ可溶性である。これに対して塩基中では溶解安定性である。従って二酸化チタンからなる触媒および担体材料はその特定の適用において妨げとなるイオンを放出しない。二酸化チタンは従来のpH範囲での担体物質として最適であるが、しかし特に強アルカリ性媒体中での使用にとっても適切である(A.Biedermannの刊行物”Leicht zu reinigende und selbstreinigende glatte Oberflaeche”を参照のこと。インターネットでhttp://home.t-online.de/home/titam/rein.htmで呼び出し可能。2002年12月9日の状況)。
【0011】
本発明によるポリマーフィルムの経済的な観点への手短な展望がその重要性を強調する。2000年にはドイツにおいて約1.8百万トンのプラスチック製包装フィルムが製造された。生分解性の材料からなる比較可能な製品は専門家の見積もりによれば全ヨーロッパにおいて10000トンであるにすぎない。これらの工業用包装に関して、特定の適用に応じて高い技術的な要求が満足されなくてはならない。これらは特に引裂抵抗性であり、フレキシブルで保香性があるものでなくてはならず、何らかにおいて類似の化合物を包装品、多くの場合は食料品、へ侵入させてはならず、かつ特に包装フィルムの特定の特性により包装された食料品の寿命の延長は極めて高い経済的な価値を有する。しかしこれまではプラスチックの包装フィルムのためにも、生分解性の包装フィルムのためにも、特定の適用、たとえば花または新鮮な、呼吸する食料品、たとえばリンゴの包装に関して、包装品の寿命を延長する、水密で、かつ同時にO、COおよび水蒸気に対して通気性の包装フィルム構造を経済的な目的で製造することには成功していない。このような工業用フィルムは、たとえば生態類似のモデルが求められ、かつ本発明により初めて実現されるような機能的に類似の特性を有する。開発された包装技術により、最初の実用的な開始において工業用のポリマーフィルムを問題なく穿孔し、かつセラミックのナノ粒子により被覆することができ、これにより通気性で、かつ種々の機能的特性(抗菌性、自浄性、水密性など)が得られる。食料品の延長された鮮度保持、乾燥に対する、および香りの損失に対する一段と長い保護は、ダチョウの卵のモデルによる機能が最適化されたバイオニックな包装フィルムを提供すべき、重要な経済的な目的の基準である。包装化学的に、新鮮な包装された食料品の場合には次のことが生じる:成熟する製品、たとえば果物、野菜および花は、エチレンガス、つまりそれ自体さらなる成熟を刺激する気体状の植物生成物を放出する。成熟が条件づけられる製品を長時間貯蔵するためには、エチレンガスの形成をできる限り効果的に包装空間から除去することが重要である。本発明によるポリマーフィルム中に含有されている光触媒作用のある粒子材料はエチレンガスを分解するので、食料品は防止剤を添加しなくても比較的長時間、輸送し、かつ貯蔵することができる。
【0012】
本発明による被覆されたポリマーフィルムにより包装することができる、傷みやすい物の香りを保持し、かつ寿命を延長する目的のためには、ポリマーフィルムのさらなる改質もまた役立ち、この改質により該ポリマーフィルムは物品および空間の活性な包装材料へとさらに形成される。改質とはたとえばポリマーフィルムへ組み込まれた、成熟過程に関連する発生する気体を測定するためのセンサ、たとえばボタン型の酸素センサである。この場合、確認された測定値は定性的にたとえば組み込まれたインジケータにより表示することができる。これは可能な色の変化を有する領域であってもよい。さらにマイクロカプセル化された酸素貯蔵デポーをポリマーフィルム中へ組み込むことができる。これはたとえば酸素を放出するナノ粒子であってもよい。貯蔵デポーは、ポリマーフィルムの膜構造の無機能の場合に鮮度保持レザバーとしても役立つので、鮮度保持時間を著しく延長することができる。最後に、存在するセンサおよび貯蔵デポーと共に制御系中で相互作用するアクチュエーターをポリマーフィルムに組み込むこともできる。アクチュエーターは通常、たとえば膨潤性のナノ粒子の形の、必要に応じて孔を閉鎖するバルブである。しかしまたアクチュエーターは、ポリマーフィルム中へ埋め込まれ、かつ化学的な調整指令(chemische Stellbefehle)を受ける膨潤および収縮可能な管であってもよい。
【0013】
記載された片面もしくは両面で実施可能な、本発明によるフレキシブルな、十分に定義された多孔質のポリマーフィルムの表面改質により、多様な適用可能性のための機能性膜への道が判明した。両面の表面改質の場合、その使用の際に改質された表面に関して特定のフィルム配向に注意する必要のない、両面で使用されるポリマーフィルムが得られる。製造は方法クレームに記載されている、使用されるポリマーフィルムの1方もしくは両方の表面のためのプロセス(Ablauf)により実施することができる。この場合、複合層構造もしくは混合構造中の化学的に不活性なナノ粒子の施与は、制御された被覆速度で片面もしくは両面のゾル・ゲル法により行う。水性の粒子ゾルを層の形成のために使用する場合、粒子が縮合(ゲル化)する。というのも、水の蒸発の際に粒子の濃度が著しく上昇するからである。次いで乾燥の間に、ほぼ均一な粒子の分布を有する透明なフィルムが生じ、該フィルムの柔軟性は強度の低下と共に上昇する。あるいはコロイド状の粒子溶液をポリマーフィルム上に施与することもでき、その際、安定性の高濃度の粒子分散液をフィルムの均一な被覆のために使用する。請求される本発明による製造法およびその有利な実施態様に関するその他の詳細は具体的な記載の部から読みとることができる。
【0014】
本発明の実施態様を、特に使用可能な異なった材料および層構造に関して、以下に詳細な記載の部において個々の実施例に基づいて詳細に説明する。この場合、さらなる説明のために、ポリマーフィルム上の異なったパラメータの層構造のREM撮影を図面に記載し、その記載および意味を直接関連させて説明する。
【0015】
イオン照射による多孔質ポリマーフィルムの製造
毛管孔を有する一般に公知のフィルターフィルムの実際の適用は多種多様である。該フィルムはしばしば、非透過性のフィルムを分解フラグメント(Spaltfragmenten)により照射し、かつ材料中のフラグメントトラック(Fragmentbahnen)のダメージ痕跡(Schadspuren)をその後、アルカリ性エッチングすることにより毛管の開口部にすることによって製造される。分解フラグメントの代わりに加速装置からの重イオンも使用することができる。出願人の研究所(Hahn−Meitner−Institut、HMI)では、適切なフィルムを製造するために、種々のプラスチック中にプラズマチューブが、異なった量のみであるとしても、形成されるという事実を利用する。高エネルギーのイオンが飛散してポリマーフィルムを通過し、イオンの軌跡に沿って極めて短い時間でプラズマチューブが形成される。高分子の物質の化学的な結合が中断され、自由な化学結合が生じ、架橋および新規の分子がポリマー中に形成される。このプロセスは極めて多様であり、かつ複雑である。イオンが飛散して通過した後、プラズマチューブは破壊され、かつ変化した化学構造の範囲が残留し、これは「核痕跡(Kernspuren)」とよばれる。
【0016】
これらの核痕跡は、プラスチックをエッチングすると目視可能にすることができる。というのも、核痕跡の範囲でのエッチング速度は通常、照射されていない材料に関するよりも数オーダー高いからである(Krイオンに関しては約103)。従ってポリエチレンテレフタレートPETまたはポリイミドPIのようなポリマーでは、照射された範囲はフィルムから溶け出す。毛管孔(痕跡)が形成され、その直径(数百nm〜2μm)は、エッチングプロセスの時間およびその数により、および照射の際の弾丸イオン(Projektilionen)の数により与えられる。ポリマーエッチング速度に対する痕跡エッチング速度の比を変更することにより(重イオンの種類の選択/エッチング工程の選択)、異なった開口角を有する漏斗形の痕跡を製造することができる。その際、エッチングは一方(片側の漏斗)またはそれぞれの孔端部において漏斗形を有する孔を生じるために両方に(ダブルコーン)行うことができる。その場合、漏斗形の範囲では比較的高い濃度で粒子の堆積が行われる。というのも、湾曲した面の場合、ポテンシャルエネルギーが、生じる表面の差により低下するからである。従って、ナノ粒子の光触媒作用が必要とされる場所で、つまり孔の入口において、高濃度の堆積によって最良の光触媒効果が達成される。さらに漏斗形は、毛管の内部への短波光の広範な接近も可能にし、かつこうしてライニング層の殺菌および自浄作用を確実に保証するために有利であることが判明した。両面の漏斗形の拡張部を有する(ダブルコーン)透明なポリマーフィルムの場合、短波光はまたフィルムを通過し、かつこうして両方の漏斗形の範囲にあたるので、ライニングフィルムの大きな触媒活性が達成される。これに対して反射性の銀層をポリマーフィルムの片側に蒸着させる場合、この側上の漏斗部のみが照射される。光は反射し、かつフィルムを通過しない。この場合、片側が改質されたポリマーフィルムを使用することができるが、しかしその使用方向に注意しなくてはならず、このことは両面で改質されたフィルムの場合には不要である。
【0017】
図1は多孔質の構造に関して、照射し、かつ引き続きエッチングした漏斗形の微細孔の記載を有するポリエチレンテレフタレートフィルムの表面のREMによる上層の撮影を示している。該ポリマーフィルムは1cmあたり約3千万の孔を有する。孔の直径は500nmである。
【0018】
フィルムの照射のために、反応器からの分解生成物または重イオン加速装置のイオンを利用することができ、その際、加速装置における照射はいくつかの決定的な利点を有する:分解フラグメントによるフィルムの、反応器における固有の活性化が回避され、比較的高い加速放射線の強度によって高い孔密度が達成され、イオンの同一の大きさおよびエネルギーである定義された入射により定義された孔の大きさが達成され、かつ一段と高いイオンエネルギーにより、さらに厚いフィルムを使用することも可能である。このためにISL−HMI Berlinの重イオン加速装置において、300MeV36Ar14+線を3×10cm−2で、ならびに250MeV78Kr12+線を1×10cm−2で金属マスクにより、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリイミドPIおよび穀物デンプンからなる3つの異なったポリマーフィルム(以下を参照のこと)上へ衝突させる。このことにより該ポリマーフィルムがエッチングされた。エッチング剤とは、イオン痕跡のエッチングのために有利であることが久しく証明されている物質であり、つまりPETおよび穀物デンプンのためには、5モル/l NaOHを450℃で、およびPIのためには、濃縮されたNaOCl溶液を50℃でpH値8〜10である。NaOHまたはNaOClを用いたポリマーフィルムのエッチングは、孔を生じるために必要不可欠であり、その際、表面的な結合が破壊される。OHの攻撃がモノマーを結合する(−O−)−基を切断し、かつ(OH−)−末端基により交換されることは公知である。
【0019】
選択された分析法
REM試験はHMI中で実施される。REM試験は、固定された種の多孔質フィルムの表面の、定性的な、かつ定義された条件下で定量的な検出を可能にする。40kVまでの加速電圧を有し、直径250mmの最大試験体寸法、200000倍の最大の理論解像度および50000倍を上回る最大の実際解像度を有する、通例の三レンズの実施態様でのコンピューター制御された走査型電子顕微鏡(Oxford440)を使用することができる。固体の作用相(多孔質のポリマーフィルム)と、無機バインダー成分(ナノ粒子)との相互作用において表面の変化のREM分析は、フィルム表面上の被覆の結合および形態に関して述べている。試験すべきフィルム試験体は、REM分析のために数nmの直径を有する強く収束した電子線によりラスター状に走査される。表面範囲で放出される二次電子の数および反射する光線電子の数は表面の形状により影響を与えられ、かつトポグラフィーのコントラストを生じる。存在する原子の平均的な原子番号は材料のコントラストを生じる。それぞれの像点のグレー値(Grauwert)は相応する走査点において生じる電子の数により補正される。傾斜面は垂直な照射の場合には水平な照射よりも明るく見える。表面の段は明るく現れる。孔およびスリットは暗く見える。主として軽い元素を有する試験体の箇所は、重い元素を有する箇所よりも暗く見える。例:TiO/SiO被覆において、TiO相はSiO相よりも暗く見える。
【0020】
選択されたポリマー系
一般に、ほぼ全ての公知のポリマー系は本発明のための支持体フィルムとして適切であると説明することができる。これには無機ポリマーフィルム、たとえばシリコンゴムまたはポリシリコン、および有機ポリマーフィルム、たとえばポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、ポリイミドPI、ポリカーボネートPCまたはポリアミドPAが属する。混合物からなるか、またはブロックポリマーもしくはコポリマーを含有する複合材料もまた使用することができる。さらに再生可能な原料、たとえば穀物もしくはジャガイモのデンプンからもフィルムを製造することができ、これは生分解性の包装として生態学的な重要性を有する。ある材料は、全ての有機成分が生物学的な活動により分解される場合に、生分解性であるとよばれる。通常のプラスチック(PEまたはPP)に再生可能な原料を単に充填剤として添加したフィルムは、前記の意味で生分解性であるとよぶことはできない。包装分野のための生分解性のフィルムはこの場合、比較的有利な価格で主として天然のデンプンから製造される(特にトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン)。その他の生分解性フィルムはセルロース、糖または乳酸を含有する。しかし生分解性フィルムは目下、PEフィルムよりも4〜5倍高価であり、従って安価な包装フィルムのためにはあまり重要視されていない。
【0021】
石油から得られるポリエチレンテレフタレートPETは久しい以前からプラスチックのなかで公知であり、というのも、基本材料はすでに1941年からポリエステルとしてUSAで開発され、かつそれ以来高価なプラスチック繊維としてテキスタイル工業において使用されてきた。今日のPETは、重ねて改善された材料特性を有する改良されたポリエステルである。極度に負荷可能なプラスチックとしてPETは包装、容器、フィルム、繊維およびその他の多数のもののために適切である。PET包装はわずかな原料需要量により優れている。PETの高い強度は、壁が極めて薄い容器およびフィルムを製造することを可能にする。絶え間ない開発によって、PET包装はますます軽量になる。PETからなる生成物は最も厳しい衛生的な要求を満足し、かつ化粧品および食料品の分野で、および特に医薬におけるその使用は極めて周知であるので、PETフィルムは特にポリマーフィルムとして本発明にとって適切である。
【0022】
ポリイミドPIは通常、高い耐熱性を有する、特に芳香族の分子を有する、溶融することができない、着色された(しばしば琥珀色の)高性能ポリマーである。PIは優れた高温特性および放射線に対する優れた安定性を有する。これらは固有に難燃性であり、かつ燃焼の際にわずかな煙を発生するにすぎない。これはわずかな範囲で変形するにすぎず、摩耗安定性が極めて良好である。しかしPIは極めて高価である。その吸水能は中程度に特徴的であり、加水分解の傾向があり、かつアルカリおよび濃縮された酸により攻撃される。この、それにもかかわらず優れた特性により、PIは高価な物品のための本発明のための代替的なポリマーフィルムとして使用することができる。同じことがポリマーフィルムとしてのポリアミドPAにも該当する。
【0023】
選択された複合層構造
本発明によるポリマーフィルムは種々の原型において試験された。構成された複合層系は、500nm以下の全厚さを有する二酸化チタンと二酸化ケイ素とからなる交互層の構造からなる。層厚さの分布はREM分析により測定される。二酸化ケイ素はバインダーの役割を果たす。これは光触媒活性な物質と孔表面との結合に役立つが、しかし同時に改質されていないポリマーフィルムも活性物質の有害な影響から保護する。
【0024】
選択されるナノスケールの種
光触媒活性で親水性の非毒性な金属酸化物のナノ粒子のためにTiO粉末(P25、Degussa社)を使用する。この場合、二酸化チタンはアナターゼおよびルチルの結晶形で、もしくはP25(アナターゼおよびルチルの混合物、Degussa−Huels AG社)として存在する。化学的に不活性な、無機ナノ粒子を製造するためにSiO分散液(Levasil、Bayer社)を選択した。SO−Levasil生成物は、沈澱に対して優れた安定性を有する非晶質の二酸化ケイ素粒子の水性のコロイド分散液である。二酸化ケイ素は相互に架橋していない球形の個別的な粒子の形で存在する。Levasilタイプの顕著な製品特徴はコロイド溶解した二酸化ケイ素の、固体の水不溶性二酸化ケイ素への不可逆的な移行において生じる。以下のLevasil−タイプはフィルムの処理のために適切である:Levasil 100/45%、粒径30nm、pH10、濃度45%;Levasil 200/30%、粒径15nm、pH9.0、濃度30%。
【0025】
選択された付加的な機能層
複合層系の利点は、層周期または付加的な層によるその問題のない拡張である。たとえば堆積した、たとえば金もしくは銀からなる貴金属は抗菌性である。これらは化学的に活性であり、かつ滅菌のために貢献する。あるいはまた、その他の機能的な特性を有する鉄族からの金属、たとえば鉄、コバルトまたはニッケルもまた適切である。ニッケルはたとえば殺藻剤であり、かつ暗闇でも光の入射なしで活性である。元素の混合物もまた可能である。天然の着色剤のゾル・ゲル添加剤は耐洗濯性の高い着色を生じる。さらに全ての層または部分的な縞範囲のみを構成することができる。しかしこの場合、付加的に堆積した物質は比較的わずかな濃度で生じるのみである。その特性によって銀はバインダー層として使用することもできる。従ってライニング被覆の前駆物質として、SiOに代わって金属の銀もまた試験された。化学的な沈澱はナノスケールの銀粒子を生じ、これはエッチングにより処理されていないフィルム支持体を光触媒TiO活性に対して保護する。粒子の縮小下でのAgNO、NaOH、グルコースまたはNHOHによる化学的な沈澱は、銀粒子からなる連続したナノスケールの層を生じる。しかしこのような層を使用する際に、改質されたポリマーフィルムはその透明性を失い、かつ金属的な光沢を増す。しかしTiO/SiOによる透明な層の形成が現れるかどうか、または前駆物質としてAg層が析出するかどうかとは無関係に、本発明にとって重要な、フィルムの多孔質の特性は維持される。
【0026】
さらに光触媒活性な、親水性の非毒性金属酸化物のナノ粒子は自体、その加工前に改質することもできる。このために付加的な、たとえばカリウムハイドロキシアパタイトからなるか、あるいはまたカリウムアパタイトのみからなる、低濃度の物質の膨潤層により該粒子を被覆することができる。その際、付加的な物質は特に生きている物質を結合するために、およびその破壊のために役立つ。これに対して添加物質としての銀は死滅させるのみであり、破壊しない。
【0027】
選択された層系
ゾル・ゲル法により製造された、ポリマーフィルム上に施与された交互層の構造のための物質は、大気圧で加水分解し、かつSi、Al、TiおよびZrの群からの少なくとも1つの元素を、場合により生態親和性のバインダーであるアミノシラン(N−2−アミノエチル)−3−アミノ−プロピルトリメトキシシラン)と組み合わせた、反応媒体中で可溶性の化合物を縮合し、引き続き熱処理(60℃、1時間)することにより製造された。以下では常にTi/Siの組合せを使用する。というのも、これらの成分はその作用において詳細に公知だからである。あるいはまたその他の化合物、たとえば酸化亜鉛(炎症を防止する包帯のための医薬から公知)または酸化セリウムを使用することもできる。コロイド溶液(pH3.5)としてのTiOを用いたフィルムの被覆の際に、一次物質、つまりSiOが反応に関与する。TiOの沈澱は主として、SiOがすでに支持体表面(フィルム)上に存在する場合に行われる。従ってこの方法は、TiOの光触媒活性に対する優れたフィルム保護品質を提供することができる。二酸化ケイ素から、これはアルカリと良好に反応してケイ酸塩を形成することが公知である。従ってアルカリ性で安定しているSiO−Levasilの分散液が選択される。
【0028】
その際、分析により、均質で、かつ安定性の多孔質フィルム被覆を可能にする方法条件を確認することができた。従ってこの方法は意図した目的のために標準化されている:全ての多孔質フィルムはセラミック分散液により「浸漬被覆」法(工程I)により処理された。被覆は標準圧力で空気中および室温(22℃)で行う。毎時200nmの析出速度の場合、個々の被覆に関して5nm/分〜10nm/分の被覆速度を採択した。十分な長さの時間(反応時間1時間)後、粒子の結合および過剰のSiOの間に平衡が調整され、その際、被覆速度は、SiOの補給が表面における拡散により行うことができ、かつ従って孔の周囲での被覆が可能であるように小さく維持する。この相中で単分散SiOナノ粒子は閉じた200nmの層としてフィルムの表面に結合する。室温でのフィルム上でのSiO分散液との反応は、熱処理(60℃で1時間、ゾル・ゲル法)および蒸留水による複数回の洗浄により中断された。浸漬被覆法Iの時間が長いと、大きな粒子(凝集体)が形成される。しかしこのような粒子の形成は被覆にとって有害である。というのも、これは濁った、付着性のない堆積を生じるからである。
【0029】
次いでTiO−ライニング被覆の次の工程として、すでにSiOにより処理したポリマーフィルムの試料を第二の反応帯域へ導入する(浸漬被覆II)。この反応は完全にSiOに類似して実施される(浸漬被覆II)。安定化されたSiO含有のLevasil溶液(200S/30%タイプ、pH3.8、TiO 20g/100ml Levasil)中に溶解しているTiO粉末を使用した被覆の場合、静電的な相互作用ならびにすでに存在するSiO層との相互作用が行われる。
【0030】
アミノシランを使用した、カチオン性に帯電したTiOナノ粒子の使用は、公知の基準値により実施される。このことにより、TiOナノ粒子の、アミノアルキルシラン、たとえばアミノシラン(N−2−アミノエチル)−3−アミノ−プロピルトリメトキシシラン(AHAPS)をベースとする膨潤層による制御された改質により共有結合によって被覆することができる。このことにより、50nm〜100nmの範囲の流体力学的な直径を有する、得られる粒子の表面の帯電(ζ電位)をpH5.4でマイナスの値から+33mVまで高めることができた。ケイ素およびチタンは有機基と結合しにくく、かつこうして、その中で多くの化合物が重要な安定性を有するシランまたはハイブリッドの二酸化チタン−シランの全クラスが生じるという公知の事実が、この方法の基礎を形成する。この方法は種々の中間工程を経由する。アミノシラン改質されたTiO層の施与は、TiO/SiOによる透明な層形成の際の方法に完全に類似していた。
【0031】
選択されたゾル・ゲル法
付加的な、および決定的なゾル・ゲル法は特に炉の温度および制御された温度勾配に依存する。すでに30℃で顕著なゲル化が観察される。この状況はTiO/SiO系の著しい水および温度に対する感受性と関連する。しかし炉の温度が低いと、分散液は縮合しない。これに対して温度が高いと、温度に敏感なポリマーフィルムの破壊が行われる。その限りでゾル・ゲル移行は空気中および標準圧力で、中程度の炉の温度および支持体の温度で実施された。60℃の温度からフィルムは処理後に安定した特性を示し、その一方で100℃で処理したフィルムはわずかな安定性(亀裂)に甘んじる。従って60℃で約1時間のゾル・ゲル法はすでにフィルム被覆のための適切な方法である。熱処理の後でなお全ての試験体を蒸留水で、縮合した堆積物が完全に溶解するまで数回洗浄する必要がある。前記の方法工程は複合層系を拡大するために相応して周期的に繰り返すことができる。
【0032】
試験の結果
ナノスケールの多孔質層
バインダーとしての良好に付着するナノスケールの薬剤の、固体の作用相(多孔質のフィルム)の活性表面上での使用は、ゾル・ゲル法による析出の意味での成分の相互作用を促進する。TiO/SiO層の試験は同時に上昇する親水性において層厚さに依存して多孔質のフィルムの表面張力の低下を生じる。光触媒作用のある、通気性で平滑かつ均一な光沢のある表面の外観が得られる。
【0033】
Levasil−二酸化ケイ素は、コロイド状で生じ、かつ熱処理によりゲルを形成する傾向がある。保護層として使用すべき薄いSiO層は、実質的に閉鎖した、単分散の層である。凝集体はSiO被覆の場合、観察されない。二酸化ケイ素の化学的挙動のこのイメージは、二次的なTiO被覆と関連してバインダーおよび保護剤としてのSiOの使用がフィルム被覆のための適切な方法であることを示す。図2は、TiO/SiOのナノ粒子のLevasil(200/30%、pH:9.0、粒径:10nm〜20nm)により被覆されている、Ar照射したポリイミド(PI)−フィルムの概要を示すためのREMの撮影を示している。孔径3μmを有する孔が1cmあたり約3千万存在する。白色のリングは著しく被覆された帯域に相応する。
【0034】
すでに存在するSiOの多孔質フィルムを付加的なプラスに帯電したTiOナノ粒子により被覆する際に、光触媒による被覆の良好な耐久性が保証される。というのも、不完全な、もしくは不規則な層は後から修復することができないからである。この原因は、すでに数ダースの原子層のサイズオーダーでの数nmの層厚さにおいて粒子の堆積の見かけの分布の理由から、被覆されていない範囲も生じるからである。図3はAr照射したポリイミド(PI)フィルムのREM撮影を示しており、これは一次SiOナノ粒子−Levasil溶液により前被覆されており(200/30%、pH9.0、粒径:10nm〜20nm、反応時間30分)かつLevasil中に溶解したTiO粉末(200S/30% SiOコロイド分散液、pH:3.8、粒径10〜20nm、反応時間30分)により後被覆した。フィルムは2.0μmの孔径で1cmあたり約3千万の孔を有する。表面にはリーン帯域の周囲に著しく被覆された開口部(白色のリング)を認識することができ、これは物質の移行(輸送工程)と化学反応との複合作用を示している。
【0035】
数百nmの層厚さが最適であると思われる。図4は、一次SiOナノ粒子−Levasil溶液(200/30%、pH:9.0、粒径:10nm〜20nm、反応時間:60分)で前被覆し、かつLevasil中に溶解したTiO粉末(200S/30% SiOコロイド分散液、pH:3.8、粒径10nm〜20nm、反応時間60分)により後被覆した、Kr照射したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのREM撮影を示している。該フィルムは3.0μmの孔径を有する孔を1cmあたり約2千万有する。より厚い層はより長い反応時間(>>1時間)を必要とする。通常、約200nmの層厚さが観察される。電子顕微鏡による分析により、孔の開口部において典型的な層形成、粒径分布および層厚さを分析することができた。その際、孔の縮小は毛管の、均一な粒子の配置により確認することができ、これはフィルムの全ての表面層厚さと結びついている。このような分析において約200nm〜300nmの層厚さが観察された。層厚さの直接的な測定は適切に製造された横断面においてのみ実施することができる。この測定は種々の副次的な影響を考慮することを必要とし、かつその適用性は機械的なフィルム特性に著しく依存する。
【0036】
安定化された、高濃度のTiO/SiO分散液の使用は、フィルムの均一な被覆を容易にする。より大きな粒子の形成(凝集体)による被覆材料の縮小は実質的に被覆の停止を生じる。その限りで、多数の小さい粒子が、合計して小さい質量を形成するのみであるとしても、極めて大きな表面積を有する場合に有利である。図5はAr照射したポリイミド(PI)フィルム(一次SiOナノ粒子−Levasil溶液(200/30%、pH:9.0、粒径:10nm〜20nm)により被覆し、かつLevasil200S/30% SiOコロイド分散液中に溶解したTiO粉末、pH:3.8、粒径10nm〜20nmにより後被覆)の高分解能のREM撮影を示している。該フィルムは2.0μmの孔径を有する孔を1cmあたり約2千万有する)。多孔質のPIフィルムはゾル・ゲル法により完全にナノ粒子(TiO/SiO)により被覆された。このポリマーフィルムの場合、厚さ約200nmの最適なTiO/SiO層形成(被覆速度約5nm/分)を、ゾル・ゲル法(60℃、60分、熱処理)により実施した。良好な光学的品質およびREM品質を有する均一な被覆が形成される(亀裂がなく、親水性で安定している)。孔の内側の構造(毛管の壁)は同様に均一であり、かつ凝集体を形成することなく被覆された。この方法によって、安定したバインダーおよびライニング層を製造することもできる。
【0037】
フィルム中の被覆された孔の形状および分布
被覆後のフィルムの多孔度を具体的に証明するために次の例を示す。図6は、一次SiOナノ粒子−Levasil溶液(200/30%、pH:9.0、粒径:10nm〜20nm)で前被覆し、かつLevasil中に溶解したTiO粉末(200S/30% SiOコロイド分散液、pH:3.8、粒径10nm〜20nm)で後被覆した、Ar照射したポリイミド(PI)フィルムの高分解能REM撮影を示す。該フィルムは2.0μmの内側の孔径を有する孔を1cmあたり約2千万有する。撮影は漏斗形の範囲における、ナノ粒子により被覆されている直径約3μmの3つの孔を示している。小さい粒子はSiO(<<20nm)を示唆しており、これに対して大きい粒子はTiO(>>30nm)を示唆している。従ってTiOおよびSiO粒子は孔体積の外側においても内側においても明らかに認識可能である。組み込まれた構成要素は明らかに、孔の内壁とナノ粒子との間の毛管反応が行われることを示唆している。孔の開口部の、NaOHによりエッチングされた周端部と、固定された粒子の数との関係が明らかである。まさにこの領域が、TiO粒子に関して、円筒形の面よりも低下したその電位に基づいて、平滑な表面よりも良好な付着性を提供する。その粒径に基づいて明らかに下回るSiO層が認識される。浸漬被覆法の時間が長い場合、該フィルムは孔開口部に近接した帯域上に完全な、閉鎖されたTiO層を示す。
【0038】
図7は、Kr照射したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(一次SiOナノ粒子−Levasil溶液(200/30%、pH:9.0、粒径:10nm〜20nm、反応時間:60分)により被覆し、かつLevasil200S/30% SiOコロイド分散液中に溶解したTiO粉末、pH:3.8、粒径10nm〜20nmにより後被覆)における孔開口部(直径約2μm)のREM撮影を示す。該撮影は、ナノ粒子に対して著しい親和性を示す、被覆した毛管の開口部を示す。これに対して毛管開口部の周囲の領域はむしろわずかなTiO富化を示唆している。焦点深度を最大にすることによってこの場合、毛管の中の21.6μmの深さまで見ることが可能であった。全てのフィルム厚さは30μmである。従って図面はナノ粒子の孔への強い親和性を示している(粒子の構造)。その際、上記の条件で異なった層形成メカニズムが一緒に作用する。
【0039】
孔の形態学
通常、エッチングされた孔はフィルム表面に漏斗形の拡張部範囲を有する円筒形の形状を有する。このことによりTiOの光活性のために必要な光(昼光または人工光)は、比較的大きな毛管深さまで侵入することができる。図8は、Kr照射されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(一次SiOナノ粒子−Levasil溶液(200/30%、pH:9.0、粒径:10nm〜20nmにより前被覆し、かつLevasil200S/30% SiOコロイド分散液中に溶解したTiO粉末、pH:3.8、粒径10nm〜20nmにより後被覆)の、拡大されたREM撮影を示す。この撮影は漏斗形の構造を有する毛管(表面から最も細長い箇所まで約21.6μmの間隔で外周端で直径約6.5μmおよび内部の空間における直径2.5μm)を示す。この形態は、毛管構造の壁への、閉鎖され、かつ均一な粒子の構造を示す。従って図8は請求されたポリマーフィルムの機能的な作用にとって重要である、円錐形の開口部を示す。TiOにより被覆された内壁は単独で、その構造に基づいてすでに高い反射能を有することがわかる。孔壁の内側の異なった角度の屈折率の違いに基づいてこの場合、有害な有機材料の分解は極めて効果的に実施することができる。漏斗形に終わる孔の内径は、ばらになったバクテリアによる発生が構造的に防止されるほど狭いという事実は重要である。
【0040】
ポリマーフィルム上の銀層
TiO/SiO被覆の前駆物質としての銀の析出は技術的および機能的な理由から提案される。フィルムの銀被覆のための理由は、エッチングされたイオン痕跡(孔)が、TiOの光触媒活性に対して保護されており、かつ光はより良好に毛管の内部へ到達することにある。このことは、多孔質のフィルムの表面上に、化学的な沈澱により得られる、極めて高い反射性の銀鏡が施与されることによって達成される。硝酸銀、NaOH、グルコースおよびNHOHが使用される。実際に硝酸銀により極めて均質な、かつ安定した被覆がPETフィルム上にも、PIフィルム上にも生じる。REM測定によればAg被覆は約50nm〜100nmの厚さを有する。より厚い層はより長いプロセス時間を必要とするが、保護作用は改善されない、つまり反対に、ここでは保護作用が低減する。というのは、数μmまでの比較的厚い層は著しい固有の張力を生じ、亀裂を示し、かつ破裂するからである。図9は、100nmの厚さのAgフィルムにより被覆されている、Ar照射した多孔質のポリイミドフィルムのREM撮影を示す。該撮影は閉じた均質なAg層をフィルムのPI表面上に示している。フィルム構造の孔は、被覆後に維持される(直径1.0μm)。その際、Ag被覆されたフィルムはアニオン性に帯電した粒子の固定を必要とする。付加的なSiO/アミノシラン変性されたTiO分散液によりAg被覆したフィルムを後処理する際に、TiO/SiO被覆の前駆体としてのAg層により最適な被覆および層厚さが達成されることを確認することができた。
【0041】
図10は、前駆体層として一次Ag層を有し、かつLevasil200S/30% SiOコロイド分散液中に溶解したTiO粉末(pH:3.8、粒径10nm〜20nm)により後被覆した、Kr照射したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのREM撮影を示す。PET表面上に良好に付着する銀鏡の使用は、単分散性粒子(50nm〜100nm)の安定化の意味で、同時にフィルムの多孔性を維持しながら凝集する粒子の形成に対してセラミック成分(TiO/SiO)の相互作用を促進する。多孔質のフィルム上のAg被覆の場合、さらに、フィルム表面と周囲(TiO/SiO/水/空気)との間に平滑かつ均一な抗菌性の界面が製造される。粒子の大きな表面積に基づいて接触範囲で、抗菌作用のある銀イオンの十分に高い濃度が保証される。コロイド状の銀がウイルス、真菌、バクテリアまたはその他の単細胞の病原体の近くに存在することは、その酸素−物質代謝酵素、その「化学的な肺」を不活性化する。病原体は窒息し、死滅し、かつ引き続き光触媒のTiO活性により分解される。
【0042】
REM分析からの総括的な結論
●痕跡エッチング速度対ポリマーエッチング速度の比を変更することによりポリマーフィルムを製造する際に毛管孔として種々の開口角を有する漏斗形の痕跡を製造することができる。
【0043】
●処理の間にフィルム表面上にコロイド状の分散フィルム(水を含有するTiO/SiO酸化物水和物フィルム)が存在し、これはゾル・ゲル法および熱処理により初めて安定したTiO/SiO層中へと移行する。いわゆる「ゾル・ゲル法」により、液状の混合物(ゾル)からゼリー状の網状構造(ゲル)を無機もしくは無機/有機物質から構成することができる。
【0044】
●多孔質のポリマーフィルムの品質は決定的にTiO/SiO層の特性および厚さにより決定される。達成可能なフィルム被覆は、ナノメートルのサイズオーダーの粒子を添加する場合には透明なままである。
【0045】
●TiO/SiO層の厚さおよび品質はフィルム支持体の材料により、ごくわずかな表面不純物により、温度および空気の水分に基づいた表面の老化により、および種々のフィルム支持体の界面化学(輸送プロセス)により著しく影響を受ける。
【0046】
●二酸化ケイ素もしくは二酸化ケイ素を含有するTiO層は本発明では、TiOの光触媒活性をフィルムのポリマー支持体から隔離するために分離層として、およびTiOゾルを均一にフィルム上に施与するためにTiO被覆のテンプレート(バインダー)として適用された。
【0047】
●多孔質フィルム上のナノスケールのTiO/SiO層の発生は極めて清浄な反応空間の使用を必要とする。というのも、空気中の極めて小さい目に見えないダスト粒子またはたとえば指紋およびその他の不純物が反応の意味で拒絶性の核形成表面(アーテファクト)として作用するからである。このアーテファクトは極めて迅速な層の局所的な成長または析出工程の静止状態につながる。
【0048】
●Ag被覆は分離層としても抗菌性としても作用すべきである。銀粒子は光触媒反応に対してフィルムのポリマー構造を保護すべきである。その場合、該フィルムはもはやTiO感受性ではないが、しかしフィルムの透明性は銀表面により交換される。他方では、最適化された開口角を有する漏斗形の入口範囲を有する毛管孔の表面上の薄い銀フィルムは、より深いフィルム範囲でも高い光強度を可能にする。
【0049】
●フィルムのAg被覆および照射以外に、本発明により機能性ポリマーフィルムを製造するための安価な方法が提供される。というのも、ポリマーフィルム、層材料、薬剤のためのコストおよび必要な熱処理のためのコストが比較的小さいからである。
【0050】
●石油化学的な材料のみからなるポリマーフィルム、たとえばPETはナノ粒子によって極めて良好に被覆することができることを示すことができた。これまで存在する結果によれば生分解性ポリマー、たとえば穀物デンプンはその他の物理化学的な特性を示し、このことは孔の発生およびゾル・ゲル処理もまだ最適に構成しない。実験およびその後に続く定量的および定性的な分析により初めて、ここでもまた条件は、標準化された処理につながる場合に、これらの新規の材料はセラミックのナノスケール被覆のために適切な支持体を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】照射およびエッチング後の、漏斗形の微細孔を有するポリエチレンテレフタレートフィルム表面のREM撮影を示す図
【図2】TiO/SiOのナノ粒子により被覆されている、Ar照射したポリイミド(PI)フィルムのREM撮影を示す図
【図3】Ar照射したポリイミド(PI)フィルムのREM撮影を示す図
【図4】一次SiOナノ粒子で前被覆し、かつTiO粉末により後被覆したKr照射後のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのREM撮影を示す図
【図5】Ar照射したポリイミド(PI)フィルムのREM撮影を示す図
【図6】一次SiOナノ粒子で前被覆し、かつTiO粉末で後被覆した、Ar照射後のポリイミド(PI)フィルムのREM撮影を示す図
【図7】Kr照射したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにおける孔開口部(直径約2μm)のREM撮影を示す図
【図8】ポリマーフィルムの円錐形の開口部を示す図
【図9】100nmの厚さのAgフィルムにより被覆されている、Ar照射後の多孔質ポリイミドフィルムのREM撮影示す図
【図10】一次Ag層を有し、かつTiO粉末により後被覆した、Kr照射後のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのREM撮影示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルムの少なくとも1表面において漏斗形の拡張部を有し、かつ少なくとも毛管孔の漏斗形の拡張部の範囲に施与された、化学的に不活性の無機ナノ粒子からなる、ポリマーフィルムを保護する少なくとも1つの透明なバインダーフィルムと、該バインダーフィルム上に付着する、短波光の照射下で光触媒的に活性な親水性の非毒性の、抗菌性で、かつ自浄作用があり、その際、その作用は毛管孔の漏斗形の拡張部の開口角の選択により調節可能である、少なくとも1の金属酸化物のナノ粒子からなるライニングフィルムとからなる複合層構造を有する、ポリマーフィルムを通過するガス交換を可能にする、選択可能な毛管直径の毛管孔からなる、立体的に配列された構造を有するフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項2】
ポリマーフィルムの両方の表面に毛管孔の漏斗形の拡張部を有する、請求項1記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項3】
有機的な構造、特にポリエチレンテレフタレートPET、ポリイミドPIまたはポリアミドPAからなる構造を有する、請求項1または2記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項4】
バインダーフィルムのために、ケイ酸塩粒子、貴金属粒子、特に銀粒子または鉄族の金属からなる粒子、特にニッケル粒子、または化学的に不活性の無機ナノ粒子としての粒子混合物を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項5】
ライニングフィルムのために、セラミックのナノ粒子、特に二酸化チタンまたは光触媒活性な親水性の非毒性の金属酸化物のナノ粒子としての粒子混合物を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項6】
バインダーフィルムおよびライニングフィルムのために、ナノ粒子の混合物を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項7】
その他の機能、特にアンカー機能を満足するための別の種類のナノ粒子を有し、その際、別のナノ粒子、特にカリウムハイドロキシアパタイトもしくは銀のナノ粒子が付加的なフィルムとして少なくとも島状に形成されて、または混合物としてその他のナノ粒子への導入されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項8】
ポリマーフィルムを着色するための非毒性の着色添加剤を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項9】
100nm〜2μmの大きさの範囲の毛管孔の毛管直径および5nm〜100nmの大きさの範囲のナノ粒子の大きさを有し、その際、毛管およびナノ粒子の直径はその大きさにおいて通気機能を維持するために相互に調整されており、かつ複合層構造の厚さは500nmを下回る範囲である、請求項1から8までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項10】
組み込まれた、ポリマーフィルムにより包囲されている物品および空間の化学的および物理的測定値を検出するセンサおよび測定値を表示するインジケータを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項11】
組み込まれた、マイクロカプセル化された酸素貯蔵デポーを有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項12】
制御系において、存在するセンサおよび貯蔵デポーと一緒に作用する、組み込まれたアクチュエーターを有する、請求項10または11記載のフレキシブルな通気性ポリマーフィルム。
【請求項13】
ポリマーフィルムの少なくとも1表面において漏斗形の拡張部を有し、かつ少なくとも毛管孔の漏斗形の拡張部の範囲に施与された、化学的に不活性の無機ナノ粒子からなる、ポリマーフィルムを保護する少なくとも1つの透明なバインダーフィルムと、該バインダーフィルム上に付着する、短波光の照射下で光触媒的に活性な親水性で非毒性の、抗菌性で自浄作用があり、その際、その作用は毛管孔の漏斗形の拡張部の開口角の選択により調節可能である、少なくとも1の金属酸化物のナノ粒子からなるライニングフィルムとからなる複合層構造を有する、ポリマーフィルムを通過するガス交換を可能にする、選択可能な毛管直径の毛管孔からなる、特に請求項1から12までのいずれか1項記載の、立体的に配列された構造を有するフレキシブルな通気性ポリマーフィルムの製造方法において、クリーンルーム条件下で周期的に繰り返すことができる方法工程:
浸漬被覆工程I:標準圧力で空気雰囲気および室温下にバインダーフィルムを形成するために、コロイド溶液中の化学的に不活性な無機ナノ粒子からなる水性分散液により、多孔質のポリマーフィルムの少なくとも1つの表面を平面状に濡らす工程
ゾル・ゲル工程I:溶液を縮合するために、ポリマーフィルムを損なわない温度範囲で形成されたバインダーフィルムを中温で熱処理する工程
洗浄工程I:結合されていないナノ粒子を除去するために蒸留水で硬化したバインダーフィルムを数回洗浄する工程
浸漬被覆工程II:標準圧力で空気雰囲気および室温下にライニングフィルムを形成するために、コロイド溶液中の光触媒活性で、親水性の非毒性な金属酸化物のナノ粒子からなる水性分散液により、多孔質のポリマーフィルムの、バインダーフィルムで被覆した表面を平面状に濡らす工程
ゾル・ゲル工程II:溶液を縮合するために、ポリマーフィルムを損なわない温度範囲で形成されたライニングフィルムを中温で熱処理する工程
洗浄工程II:結合されていないナノ粒子を除去するために蒸留水で硬化したライニングフィルムを数回洗浄する工程
を有する、フレキシブルな通気性ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項14】
使用されるポリマーフィルムの両方の表面の処理を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
化学的に不活性な無機ナノ粒子を用いたコロイド分散液中の粉末の形の光触媒活性な親水性の、非毒性の金属酸化物のナノ粒子の溶液を用いる、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
化学的に不活性な、無機ナノ粒子としてのポリエチレンテレフタレートPET、ポリイミドPIまたはポリアミドPA、二酸化ケイ素粉末と、光触媒活性な、親水性の非毒性な金属酸化物のナノ粒子としての二酸化チタン粉末とからなる多孔質のポリマーフィルムを用いる、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
特にアミノアルキルシランをベースとする膨潤層を有する十分に連続した被覆による、光触媒活性な、親水性の非毒性な金属酸化物のナノ粒子の制御された改質を有する、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ポリマーフィルム上に銀層を施与するために、浸漬工程Iに先行するか、またはこれに代わる方法工程を有する、請求項13から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ポリマーフィルム上に銀層を施与するために、組み込まれた、または先行する、または代替的な方法工程に先行する、ナノ粒子からなる別の機能層またはその一部を施与するための方法工程を有する、請求項13から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
アンカー機能を有する層を施与するための先行する方法工程を有し、その際、使用されるナノ粒子が特にカリウムハイドロキシアパタイトからなる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
複合層構造物を着色するために、組み込まれた、非毒性の着色添加剤を用いる、請求項13から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
化学的に変性された痕跡を生じ、かつ引き続き照射したポリマーフィルムのエッチングによりナノテクノロジーにより表面処理するために、分解フラグメントまたはイオンによる高エネルギーの照射によりポリマーフィルム中に毛管孔を生じるために、準備的な方法工程を有し、その際、ポリマーエッチング速度に対する痕跡のエッチング速度の比を変更することにより、異なった開口角の漏斗形の拡張部を有する毛管孔を製造することができる、請求項13から21までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−518287(P2006−518287A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500478(P2006−500478)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000091
【国際公開番号】WO2004/064478
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(591157202)ハーン−マイトネル−インスチツート ベルリン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【住所又は居所原語表記】Glienicker Str.100,D−14109 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】