説明

フレーム構造体の仮付け構造、及び組立方法、並びにフレーム構造

【課題】フレーム同士を溶接により接合するフレームの組立構造において、補強材や新たな設備投資なしで、手作業によるフレーム構造全体の仮付け作業を可能とし、作業時間を短縮することのできるフレームの仮付け構造、及びその組立方法を提供する。
【解決手段】断面がコの字型で側面に切込み4、5及びツメ状突起部8〜11を設けた第1のフレーム1と、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記ツメ状突起部8〜11と係合する係合孔14〜17を設けた第2のフレーム2とを、T字状に係合させて仮付けするようにした。また、その組立構造を列車空調システムフレーム構造全体に適用するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレーム構造体、特に列車の空調装置のフレーム構造及びその組立方法に関し、溶接による変形を防止するとともに、構造体組立時の複雑な位置決めを省略して、組立時間を短縮し、低コストで組立てができる構造及びその組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフレーム構造体を組み立てる場合、フレーム要素同士の継手部を何の拘束もないままに全周溶接した場合には、熱変形が発生してしまう。この溶接による熱変形を防止する方法として、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載のものが知られている。
特許文献1では、溶接の向きと手順を最適化することで変形を抑制し、特許文献2では、補強材を仮付けすることで変形を抑制している。また、特許文献3では継手部分をプロジェクション溶接で仮付けすることにより、変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−356177号公報(図1、図6)
【特許文献2】特開平10−324265号公報(図1)
【特許文献3】特開2004−344942号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、フレームの継手部分を溶接により固定しており、溶接手順を規定することでフレームの変形を軽減しているが、フレームの断面形状や、板厚、溶接条件に応じて溶接の向き及び順番を検討し直す必要がある。また、溶接時にフレーム同士を固定する準備作業が必要となるため、作業工数も多くなる。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、部材間の複雑な位置決め工程を省略して構造体の組立時間を短縮しているが、別部品である補強材としての規定部材が必要となるため、部品点数が増加する。また、本溶接とは別にスポット溶接作業が必要となるため、作業工数も増加し、コストアップが発生する。
【0006】
特許文献3に記載の技術では、相手フレーム要素に突き合されるフレーム要素の端面に極小の接合用突起部を形成しておき、その突起部をプロジェクション溶接して仮付けしているため、別部品を必要としないが、新たにプロジェクション溶接用の設備を必要とする。また、仮付け時にフレームの固定作業が発生するため、作業工程の削減には至らない。
【0007】
この発明は、上記のような各種の問題点を解決するためになされたものであり、仮付けのために別部品や新たな設備を必要とせずに、フレームの仮付けが実施できる構造及び組立方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るフレーム構造体の仮付け構造は、断面がコの字型で側面に切込み及びツメ状突起部を設けた第1のフレームと、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記ツメ状突起部と係合する係合孔を設けた第2のフレームと、をT字状に係合させて仮付けするようにしたものである。
【0009】
また、フレーム構造体の仮付け構造において、断面がコの字型で側面に縦方向のスリット状係止孔を設けた第1のフレームと、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記スリット状係止孔と係合するフックを設けた第2のフレームと、をT字状に係合させて仮付けするようにしたものである。
【0010】
また、この発明による列車空調システムのフレーム構造は、断面がコの字型の複数の横方向フレームと、断面がコの字型の複数の縦方向フレームとを溶接して列車空調システムのフレーム構造を形成するものにおいて、横方向フレームの側面に切込み及びツメ状突起部を設けるとともに、縦方向フレームの側面端部に突出部と上記ツメ状突起部に係合する係合孔を形成し、横方向フレームの切込みに縦方向フレームの側面端部をT字状に係合させて仮付けするようにしたものである。
【0011】
また、この発明によるフレーム構造体の組立方法は、断面がコの字型で側面に切込み及びツメ状突起部を設けた第1のフレームの上方から断面がコの字型で側面端部が突出し、上記ツメ状突起部と係合する係合孔を設けた第2のフレームを、第1のフレームのツメ状突起部に第2フレームの側面端部に形成した係合孔が合致するようにT字状に係合させて仮付けするようにしたものである。
【0012】
また、この発明によるフレーム構造体の組立方法は、断面がコの字型で側面に縦方向のスリット状係止孔を設けた第1のフレームの側面から断面がコの字型で側面端部が突出し、上記スリット状係止孔と係合するフックを設けた第2のフレームを挿入して、第1のフレームのスリット状係止孔に第2フレームの側面端部が係合するようにT字状に係合させて仮付けするようにしたものである。
【0013】
また、この発明による列車空調システムのフレーム構造体の組立方法は、断面がコの字型の複数の横方向フレームと、断面がコの字型の複数の縦方向フレームとを溶接して列車空調システムのフレームを形成するものにおいて、側面に切込み及びツメ状突起部を設けた横方向フレームの上方から、側面端部に突出部と上記ツメ状突起部に係合する係合孔を形成した縦方向フレームを、横方向フレームの切込みに縦方向フレームの側面端部をT字状に係合させて仮付けするようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、フレーム同士を溶接するのに先立って仮付けする構造において、板金で構成されるフレームのバネ性などの特性を利用して仮付けが出来るので、別部品や新たな設備を必要とせず、手作業で仮付けが可能となり、部品点数の増加や作業工程の増加なしに仮付けが達成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1のフレーム構造(仮付け前)を示す斜視図。
【図2】この発明の実施の形態1のフレーム構造(仮付け前)を示す正面図。
【図3】この発明の実施の形態1のフレーム構造(仮付け後)を示す斜視図。
【図4】この発明を適用する列車空調システムのフレーム構造を示す斜視図。
【図5】この発明の実施の形態2のフレーム構造(仮付け前)を示す斜視図。
【図6】この発明の実施の形態2のフレーム構造(仮付け後)を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるフレーム継手を示す斜視図で、仮付け前の構造を示す。継手は、板金からなり断面コの字型の第1フレーム1と断面コの字型の第2フレーム2により構成される。第1フレーム1の手前側面3の2箇所にはフレームの長手方向と直交する縦方向の切込み4、5が形成されている。この切込み4、5はさらに一部の突出片6、7を残して上方へ続いている。そして、これら各突出片6、7の外側には図2に示すように、下方に行くにつれて突出量が大きくなる4個のツメ状突起8、9、10、11を設けている。また、第2フレーム2の左の側面12には2つの係合孔14、15が設けられており、右側面13には2つの係合孔16、17が設けられている。また、第2フレームの左右の側面12、13の第1フレーム1と係合する端部下方には切欠部18が形成されており、左右側面12、13の端部が突出する形になっている。
【0017】
第1フレーム1と第2フレーム2の仮付けは、次の手順で行う。第1フレーム1の上方から切込み4、5めがけて図2の矢印の方向に第2フレーム2の側面12、13の端部の突出部19、20を挿入する。なお、第2フレーム2の側面12、13の隙間寸法Aは第1フレーム1の側面に形成されたツメ状突起6、8(又は7、9)の先端同士の距離Bよりも小さく設定しているので、上方から第2フレーム2の端面の突出部19、20を第1フレーム1の切込み4、5に挿入する時、ツメ状突起8、9を有する突出片6、及びツメ状突起10、11を有する突出片7はそれぞれ内側方向に弾性変形する。突出片6、7が弾性変形状態で第2フレーム2の端面突出部19、20が挿入されて行き、第1フレーム1のツメ状突起8、9、10、11が第2フレーム2の係合孔14、15、16、17に嵌り込むと突出片6、7の弾性変形は解除される。
すなわち、この発明によるフレーム構造体の仮付けは、板金で構成されるフレームのバネ性により仮付けが出来る構造を有するものである。
【0018】
第1フレーム1のツメ状突起8、9、10、11が第2フレーム2の係合孔14、15、16、17に嵌り込んだ状態が突出片6、7のバネ性により保持され、第1フレーム1と第2フレーム2の仮付けが保持される。この仮付け構造によれば、手作業で第1フレーム1と第2フレーム2の仮付けと溶接時の位置決めが可能となる。
図3は本実施形態によるフレーム継手を示す斜視図で、仮付け後の構造を示す。仮付け後の状態で第1フレーム1と第2フレーム2の接触部21a、21bをMIG溶接等のアーク溶接にて本固定する。この構造によれば、溶接なしでフレームの仮組みが可能となる。したがって、溶接時のバイスによる固定や位置決め作業が無くなり、作業時間を削減することができる。
【0019】
実施の形態2.
前記の仮付け構造を列車空調システムのフレームに適用した構造を特徴とする。この発明を適用した列車空調システムの筐体構造を図4に示す。フレームは横方向のフレーム22〜25と、縦方向のフレーム26〜33で構成されている。横方向のフレーム22〜25は側板48、49とも接合される。
なお、実施の形態1に示した仮付け方法は、フレーム前方、及び中間の継手部、すなわち横方向フレーム23、24、25と縦方向フレーム26〜33の継手部34〜47に適用する。
フレーム組立の最後となる後方の継手部、すなわち最後方の横フレーム22と縦フレーム26、27との継手部50、51は組立の誤差を調整するために継手構造は他の部分と異ならせる必要がある。
【0020】
図5はこの発明の実施の形態2による組立誤差を吸収するフレーム仮付け構造を示す斜視図である。横方向のフレーム(第1フレーム)52の一方側側面53には縦方向のスリット状の係止孔54、55が設けられている。一方、縦方向のフレーム(第2フレーム)56の側面57、58の端部はフック60aを有する突出部59、60が設けられている。また、フック60aの手前側は巾広の切欠溝60bが形成されている。なお、図5では手前側の側面58に形成したフック60a、切欠溝60bのみ図示しているが、奥側の側面57にも同様にフック、切欠溝が形成されている。
【0021】
仮付けにあたっては、横方向フレーム52の係止孔54、55に縦方向フレーム56の突出部59、60を挿入する。縦方向フレーム56は突出部59、60挿入後も巾広の切欠溝60aのために前後方向に移動可能であり、その前段階で組み立てられたフレームの誤差を吸収するための調整が可能となる。誤差調整後、クリップ61、62を突出部59、60の上面に取付けることで、縦方向フレーム56を横方向フレーム52に固定し、前後方向の動きを抑制する。クリップ61、62を取付けることで筐体のフレーム全体の仮付けが完了する。
図6に本実施形態による仮付けフレーム継手構造の組付け後の形状を示す。仮付け後、先に示した継手接触部21a、21bと誤差調整部の接触箇所63a、63bをMIG溶接等のアーク溶接にて本固定が完了する。
【0022】
実施の形態3.
前記の実施の形態2の仮付けフレーム構造では、横方向フレーム52の係止孔54、55に縦方向フレーム56の突出部59、60を挿入した後、位置を調整し、クリップ61、62にて固定していたが、横方向フレーム22〜25の組立位置を決めることのできる治具を使用すれば、組立誤差の調整のための部品、クリップ61、62を削減することが可能となる。そのため部品点数を削減できるため、仮付け構造をさらに簡素化でき、仮付けの作業性も向上する。
【符号の説明】
【0023】
1 第1フレーム、 2 第2フレーム、 3 第1フレーム側面、 4、5 切込み、 6、7 突出片、 8〜11 ツメ状突起、 12、13 第2フレーム側面、 14〜17 係合孔、 18 切欠部、 19、20 突出部、 21a、21b 接触部、 22〜25 横方向のフレーム、26〜33 縦方向のフレーム、 34〜47 継手部、48、49 側板、 50、51 継手部、 52 第1フレーム、 53 第1フレーム側面、 54、55 係止孔、 56 第2フレーム、 57、58 第2フレーム側面、 59、60 突出部、 60a フック、 60b 巾広切欠溝、 61、62 クリップ、 63a、63b 接触箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面がコの字型で側面に切込み及びツメ状突起部を設けた第1のフレームと、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記ツメ状突起部と係合する係合孔を設けた第2のフレームと、をT字状に係合させて仮付けするフレーム構造体の仮付け構造。
【請求項2】
第1フレームの一方の側面2箇所に縦方向の切込みを設け、これらの切込みにより左右2つの突出片を形成し、この突出片にツメ状突起部を形成して、第2フレームの係合孔と係合するようにしたことを特徴とする請求項1記載のフレーム構造体の仮付け構造。
【請求項3】
第1フレームの左右の突出片にツメ状突起部を各々2つずつ設けるとともに、第2フレームの端部に4つの係合孔を形成したことを特徴とする請求項2記載のフレーム構造体の仮付け構造。
【請求項4】
断面がコの字型で側面に縦方向のスリット状係止孔を設けた第1のフレームと、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記スリット状係止孔と係合するフックを設けた第2のフレームと、をT字状に係合させて仮付けするフレーム構造体の仮付け構造。
【請求項5】
第2のフレームの側面端部の突出部に形成したフックの手前側に巾広の切欠溝を形成したことを特徴とする請求項4記載のフレーム構造体の仮付け構造。
【請求項6】
第1のフレームのスリット状係止孔に第2のフレームの側面端部を挿入し、位置決めした後、第2のフレームの突出部上面をクリップで固定することにより仮付けを完了する請求項5記載のフレーム構造体の仮付け構造。
【請求項7】
断面がコの字型の複数の横方向フレームと、断面がコの字型の複数の縦方向フレームとを溶接して列車空調システムのフレーム構造を形成するものにおいて、横方向フレームの側面に切込み及びツメ状突起部を設けるとともに、縦方向フレームの側面端部に突出部と上記ツメ状突起部に係合する係合孔を形成し、横方向フレームの切込みに縦方向フレームの側面端部をT字状に係合させて仮付けする列車空調システムのフレーム構造。
【請求項8】
最後方の横方向フレームと縦方向フレームとの継手部分については、横方向フレーム側面に縦方向のスリット状係止孔を設けるとともに、縦方向フレームに上記スリット状係止孔と係合するフック及び該フックの手前側に巾広の切欠溝を形成し、縦方向フレームの端部の突出部を横方向フレームのスリット状係止孔に挿入して係合することにより、仮付けする請求項7記載の列車空調システムのフレーム構造。
【請求項9】
断面がコの字型で側面に切込み及びツメ状突起部を設けた第1のフレームの上方から、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記ツメ状突起部と係合する係合孔を設けた第2のフレームを、第1のフレームのツメ状突起部に第2のフレームの側面端部に形成した係合孔が合致するようにT字状に係合させて仮付けするフレーム構造体の組立方法。
【請求項10】
断面がコの字型で側面に縦方向のスリット状係止孔を設けた第1のフレームの側面から、断面がコの字型で側面端部が突出し、上記スリット状係止孔と係合するフックを設けた第2のフレームを挿入して、第1のフレームのスリット状係止孔に第2フレームの側面端部が係合するようにT字状に係合させて仮付けするフレーム構造体の組立方法。
【請求項11】
断面がコの字型の複数の横方向フレームと、断面がコの字型の複数の縦方向フレームとを溶接して列車空調システムのフレームを形成するものにおいて、側面に切込み及びツメ状突起部を設けた横方向フレームの上方から、側面端部に突出部と上記ツメ状突起部に係合する係合孔を形成した縦方向フレームを、横方向フレームの切込みに縦方向フレームの側面端部をT字状に係合させて仮付けするようにした列車空調システムのフレーム構造体の組立方法。
【請求項12】
最後方の横方向フレームと縦方向フレームとの継手部分については、側面に縦方向のスリット状係止孔を設けた横方向フレームの側面から、フックを形成した縦方向フレームの端部の突出部を、横方向フレームのスリット状係止孔に挿入して上記フックにて係合することにより、仮付けするようにしたことを特徴とする請求項11記載の列車空調システムのフレーム構造体の組立方法。
【請求項13】
縦方向フレームの側面端部の突出部に形成したフックの手前側に巾広の切欠溝を形成することにより、組立の誤差を調整するとともに、位置調整後にクリップで係止することにより、仮付けを完了するようにしたことを特徴とする請求項12記載の列車空調システムのフレーム構造体の組立方法。
【請求項14】
横方向フレームの位置決めを、位置決め治具を使用することにより実施して組立後の誤差調整を省略するようにしたことを特徴とする請求項12記載の列車空調システムのフレーム構造体の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208657(P2011−208657A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74125(P2010−74125)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】