説明

フレーム構造体

【課題】乗員の安全を十分に確保できるフレーム構造体を提供する。
【解決手段】一対のサイドフレーム20には、その長さ方向中央部22よりも高くなった前方キックアップ部24がその長さ方向前方に形成されており、長さ方向中央部22よりも高くなった後方キックアップ部26がその長さ方向後方に形成されている。一対のサイドフレーム20のうち車室50(二点鎖線50で囲まれた空間)の下に位置する部分であって、車幅方向の外側の部分には補強材60が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるフレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に用いられるフレーム構造体としては、車両の長さ方向に延びると共に車幅方向に互いに離れて配置された一対のサイドフレームと、車幅方向に延びて一対のサイドフレームを接続するクロスメンバーとを備えたものが広く使用されている。サイドフレームには、その長さ方向中央部よりも長さ方向前方及び後方が高くなったタイプのものがあり、この高くなった部分はキックアップ部と呼ばれている。
【0003】
上記したフレーム構造体には、車両のボディーを搭載させる搭載機能の他、衝突等による衝撃から乗員を保護する保護機能などもある。この保護機能を高めたフレーム構造体として、サイドフレームの長さ方向中央部とキックアップ部の境界部分であって、且つ、サイドフレームの内側の面(一対のサイドフレームが向き合った側の面)に補強材を取り付けたフレーム構造体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−180516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなフレーム構造体では、上記した境界部分の内側に補強材が位置することとなるので、座席に座った乗員の下方の中央部に補強材が位置する。従って、車両の外板から乗員までの間には補強材が無いこととなるので、外部からの衝撃等に対する乗員の保護が十分とはいえない。また、上記した補強材でサイドフレームの強度を高める場合、板厚の厚い補強材を使用しなければならないので、その分だけ車両の重量増加となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、乗員の安全を十分に確保できるフレーム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のフレーム構造体は、車両の長さ方向に延びると共に車幅方向に互いに離れて配置された一対のサイドフレームを備えたフレーム構造体において、
(1)前記一対のサイドフレームのうち車室の下に位置する部分であって、且つ、車幅方向の外側の部分に取り付けられた補強材を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の他のフレーム構造体は、車両の長さ方向に延びると共に車幅方向に互いに離れて配置された一対のサイドフレームを備えたフレーム構造体において、
(2)前記一対のサイドフレームは、その長さ方向中央部よりも高くなったキックアップ部がその長さ方向前方と後方に形成されたものであり、
(3)前記一対のサイドフレームのうち、前記前方のキックアップ部と前記長さ方向中央部との境界部分から前記後方のキックアップ部と前記長さ方向中央部との境界部分までの間の部分であって、且つ、車幅方向の外側の部分に取り付けられた補強材を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、
(4)前記補強材は、前記サイドフレームのうち前記補強材が取り付けられた部分の強度を高めるものである。
【0009】
また、
(5)前記一対のサイドフレームは、該一対のサイドフレームそれぞれのうち前記補強材が取り付けられた部分に挟まれた空間に、燃料を貯めておく燃料タンクが固定されるものであってもよい。
【0010】
さらに、
(6)前記補強材は、車両構成部品が搭載されるボディマウントブラケットを兼ねるものであってもよい。
【0011】
さらにまた、
(7)前記補強材は、その長さ方向に渡って一様な強度を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一対のサイドフレームのうち車室の下に位置する部分、即ち、車室の長さに対応する部分には、補強材が取り付けられている。しかも、この補強材は、一対のサイドフレームのうち、車幅方向の外側の部分に取り付けられている。従って、車両にその前方から衝撃が加わった場合、この衝撃によって、サイドフレームの前方部分(サイドフレームのうち補強材が取り付けられていない前側部分)は変形するが、補強材が取り付けられている部分は変形しにくい。車両後方からの衝撃についても同様である。また、補強材が取り付けられている部分(車室の長さに対応する部分)に車両の側方から衝撃が加わった場合、サイドフレームが補強材によって補強されているので、車室内にサイドフレームが大きく食い込む(入り込む)ことはなく、車室内は衝撃から補強材によって守られる。従って、車両の前方、後方、及び側方からの衝撃に起因する車室内の変形は僅かであるので、車室内の乗員の保護は十分であり乗員の安全が確保される。また、車両構成部品や部材が搭載されるボディマウントブラケットとして補強材を用いた場合は、その分、部品点数を減らせるので車両の重量増加を抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、例えば四輪駆動車などの車両のフレーム構造体に実現された。
【実施例1】
【0014】
図1を参照して、本発明のフレーム構造体の一例を説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明のフレーム構造体の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示すフレーム構造体の側面図である。
【0016】
フレーム構造体10は、車両の長さ方向に延びると共に車幅方向に互いに離れて配置された一対のサイドフレーム20と、車幅方向に延びて一対のサイドフレーム20を接続する複数本のクロスメンバー30,32,34,36,38,40とを備えている。一対のサイドフレーム20は、車幅のやや内側に位置する。また、クロスメンバーの本数は、ここでは、6本の例を示したが、車両のサイズ等に応じて適宜に決められる。一対のサイドフレーム20の最先端(長さ方向の最も前方部分)には、車幅方向に延びるバンパー42が固定されている。
【0017】
一対のサイドフレーム20には、その長さ方向中央部22よりも高くなった前方キックアップ部24がその長さ方向前方に形成されており、長さ方向中央部22よりも高くなった後方キックアップ部26がその長さ方向後方に形成されている。一対のサイドフレーム20のうち車室50(二点鎖線50で囲まれた空間)の下に位置する部分であって、車幅方向の外側の部分には補強材60が取り付けられている。換言すれば、一対のサイドフレーム20のうち、前方キックアップ部24と長さ方向中央部22との境界部分から後方キックアップ部26と長さ方向中央部22との境界部分までの間の部分であって、且つ、車幅方向の外側の部分に補強材60が取り付けられている。なお、補強材60は鋼などの金属製である。また、前方キックアップ部24及び後方キックアップ部26の外側にはタイヤ70が配置される。
【0018】
上記したように一対のサイドフレーム20にはそれぞれ補強材60が取り付けられているので、サイドフレーム20のうち補強材60が取り付けられている部分(車室50の下方に相当する部分)の強度は他の部分(車室50から外れた部分)に比べて向上する(高められる)。従って、後述するように、車両の前後左右のいずれから衝撃が作用しても、補強材60が配置されているので車室50はほとんど変形しない。また、燃料を貯めておく燃料タンク80(二点鎖線80で示したもの)が、一対のサイドフレーム20それぞれのうち補強材60が取り付けられた部分に挟まれた空間に固定される場合は、車両の前後左右のいずれかから衝撃が作用しても、この衝撃から燃料タンク80を守ることができる。
【0019】
図2を参照して、補強材の取付方法を説明する。
【0020】
図2(a)は、サイドフレームに補強材を取り付ける取付方法を示す斜視図であり、(b)は、補強材が取り付けられたサイドフレームの横断面図であり、図1(a)のA―A断面に相当する。図2では、図1に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
【0021】
補強材60は、(b)に示すように横断面が略「U」字状であり、サイドフレーム20に溶接で固定するためのフランジ部62,64が形成されている。補強材60の形状は、横断面が略「U」字状に限らず、横断面が半円状、「J」字状などであってもよい。また、補強材60は、その長さ方向に渡って一様な強度を有するものであることが好ましい。
【0022】
補強材60を一対のサイドフレーム20に取り付ける際は、クロスメンバー30,32,34,36,38,40で接続された一対のサイドフレーム20に溶接やボルトで固定してもよいし、クロスメンバー30,32,34,36,38,40で接続される前の一対のサイドフレーム20それぞれに溶接やボルトで固定してもよい。
【0023】
一対のサイドフレーム20に取り付けられた補強材60は、車両構成部品が搭載されるボディマウントブラケットを兼ねている。補強材60をボディマウントブラケットとして用いるためには、補強材60の上面60aから突出するように適宜の位置にゴム材66をボルト等で固定して、このゴム材66を介して補強材60にボディーなどの車両構成部品を搭載する。このように補強材60をボディマウントブラケットとして兼用するので部品点数を少なくできる。
【0024】
図3を参照して、車両の座席に座った乗員と補強材との位置関係を説明する。
【0025】
図3は、車両の座席に座った乗員と補強材との位置関係を模式的に示す正面図である。図3では、図1及び図2に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
【0026】
座席に座った乗員90の足元には一本のサイドフレーム20が位置している。また、この乗員90の右側(図3では左側)には、ドア92やボディーの一部94が位置する。一本のサイドフレーム20の外側には補強材60が位置している。従って、車両の外面(外側に向いた面)92aから一本のサイドフレーム20の外面までの距離はL1であり、車両の外面92aから補強材60の外面までの距離はL2となる。また、サイドフレーム20とボディーの一部94の内側面との間には補強材60が配置されていることとなり、ボディーの一部94の内側面から補強材60の外面までの距離はL3となる。このため、補強材60は乗員90よりも外側に配置されていることとなる。
【0027】
座席に座った乗員90と補強材60との位置関係は上記のようになるので、図4と図5を参照して説明するように、車両に前後左右から衝撃が加わっても乗員90の安全は確保される。
【0028】
図4を参照して、図1に示すフレーム構造体を備えた車両に前方から衝撃が加えられたときのフレーム構造体の変形について説明する。
【0029】
図4は、図1に示すフレーム構造体を備えた車両に前方から衝撃が加えられたときに変形したフレーム構造体を示す平面図である。
【0030】
車両の前方からF1の衝撃力がフレーム構造体10に作用した場合、一対のサイドフレーム20の長さ方向中央部22は補強材60で補強されているのでほとんど変形せず、前方キックアップ部24が変形する。この場合、バンパー42等も変形するが、図4では、その変形は示されていない。
【0031】
このように前方キックアップ部24が変形して変形部分24aが形成され、長さ方向中央部22は変形しないので、長さ方向中央部22の上に形成された車室50はほとんど変形しない。従って、乗員の安全が確保される。なお、車両の後方からF1の衝撃力がフレーム構造体10に作用した場合は、後方キックアップ部26が上記と同様に変形して乗員の安全が確保される。
【0032】
図5を参照して、図1に示すフレーム構造体を備えた車両に側方から衝撃が加えられたときのフレーム構造体の変形について説明する。
【0033】
図5は、図1に示すフレーム構造体を備えた車両に側方から衝撃が加えられたときに変形したフレーム構造体を示す平面図である。
【0034】
車両の側方からF2の衝撃力がフレーム構造体10に作用してサイドフレーム20の長さ方向中央部22に直接に衝撃が作用した場合、この長さ方向中央部22は補強材60で補強されているので僅かしか変形せず、また、クロスメンバー30,32,34,36,38,40も僅かしか変形しない。
【0035】
このようにサイドフレーム20の長さ方向中央部22もクロスメンバー30,32,34,36,38,40も僅かしか変形しないので、長さ方向中央部22の上に形成された車室50はほとんど変形しない。従って、乗員の安全が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)は、本発明のフレーム構造体の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示すフレーム構造体の側面図である。
【図2】(a)は、サイドフレームに補強材を取り付ける取付方法を示す斜視図であり、(b)は、補強材が取り付けられたサイドフレームの横断面図であり、図1(a)のA―A断面に相当する。
【図3】座席に座った乗員と補強材との位置関係を模式的に示す正面図である。
【図4】図1に示すフレーム構造体を備えた車両に前方から衝撃が加えられたときに変形したフレーム構造体を示す平面図である。
【図5】図1に示すフレーム構造体を備えた車両に側方から衝撃が加えられたときに変形したフレーム構造体を示す平面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 フレーム構造体
20 一対のサイドフレーム
22 長さ方向中央部
24 前方キックアップ部
26 後方キックアップ部
50 車室
80 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の長さ方向に延びると共に車幅方向に互いに離れて配置された一対のサイドフレームを備えたフレーム構造体において、
前記一対のサイドフレームのうち車室の下に位置する部分であって、且つ、車幅方向の外側の部分に取り付けられた補強材を備えたことを特徴とするフレーム構造体。
【請求項2】
車両の長さ方向に延びると共に車幅方向に互いに離れて配置された一対のサイドフレームを備えたフレーム構造体において、
前記一対のサイドフレームは、その長さ方向中央部よりも高くなったキックアップ部がその長さ方向前方と後方に形成されたものであり、
前記一対のサイドフレームのうち、前記前方のキックアップ部と前記長さ方向中央部との境界部分から前記後方のキックアップ部と前記長さ方向中央部との境界部分までの間の部分であって、且つ、車幅方向の外側の部分に取り付けられた補強材を備えたことを特徴とするフレーム構造体。
【請求項3】
前記補強材は、前記サイドフレームのうち前記補強材が取り付けられた部分の強度を高めるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレーム構造体。
【請求項4】
前記一対のサイドフレームは、該一対のサイドフレームそれぞれのうち前記補強材が取り付けられた部分に挟まれた空間に、燃料を貯めておく燃料タンクが固定されるものであることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のフレーム構造体。
【請求項5】
前記補強材は、車両構成部品が搭載されるボディマウントブラケットを兼ねるものであることを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれか一項に記載のフレーム構造体。
【請求項6】
前記補強材は、その長さ方向に渡って一様な強度を有するものであることを特徴とする請求項1から5までのうちのいずれか一項に記載のフレーム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−149895(P2008−149895A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339977(P2006−339977)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】