説明

フロントドア開閉装置

【課題】開閉に必要な車幅方向のスペースを小さくすることができるフロントドア開閉装置を提供することである。
【解決手段】フロントドア13をスライド機構により支持して全閉位置から車両前方側に向けてスライド式に開く構造とする。一方、車体12のフロントピラー12bにベース22を固定し、このベース22の上面にガイドレールとスライダとを備えた倒伏機構24を設け、この倒伏機構24を介してミラー本体23をベース22に支持させる。ガイドレールを車両11の側を凸とした湾曲形状に形成することにより、ミラー本体23をフロントドア13よりも車両前方側において車両11の側に向けて倒伏させる構造とし、ミラー本体23を倒伏させた状態でフロントドア13を開くときに当該ミラー本体23が邪魔にならないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可倒式のミラー装置を備えた車両に設けられるフロントドアを車両前方側に向けてスライド式に開くようにした開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車体の側部には運転者等の乗員の乗降用として開口部が設けられ、この開口部を開閉するために車体にはフロントドアが設けられている。フロントドアを開閉するための開閉装置としては前ヒンジ後ろ開きタイプが多く用いられているが、近年、車幅方向の開閉スペースが小さくて済むスライドドアの利便性をフロントドアにも適用すべく、フロントドアを全閉位置から車両前方側に向けてスライド式に開くようにした開閉装置が開発されている。
【0003】
一方、車両の側部には、運転者が車両側方側から後方を視認することができるように、ミラー装置(サイドミラー)が設けられる。このようなミラー装置としてはこれをフロントドアに装着するようにしたドアミラーが多く用いられる。また、ミラー装置は、通常、ミラー本体を車両後方側に向けてフロントドアガラスの車両前方側に隣接する起立位置(使用位置)から車両の側に向けて倒伏した倒伏位置にまで倒すことができる可倒式とされている。
【0004】
ところで、スライド式のフロントドアにドアミラーを装着すると、当該ドアミラーは開閉するフロントドアとともに移動するので、当該ミラーが突出する分だけフロントドアを開くために必要な車幅方向のスペースが拡大され、スライド式の利点が損なわれることになる。
【0005】
そのため、例えば特許文献1に示される車両では、ミラー装置を可倒式とし、フロントドアを車両前方側に向けて自動的に開く際には、予めミラー本体を車両側に向けて自動的に倒伏させるようにしている。
【特許文献1】実公平5−12113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるようにミラー本体を倒伏させてからフロントドアを開くようにしても、フロントドアの側部からは倒伏したミラー本体が突出し、このミラー本体の分だけ開閉に必要な車幅方向のスペースが大きくなるので、当該スペースを十分に低減することができないという問題点があった。
【0007】
これに対して、ミラー装置をフロントドアではなく車体のフロントピラー(Aピラー)に装着し、フロントドアが開閉してもミラー本体を移動させないようにした構造が考えられる。しかしながら、従来のミラー装置では、ミラー本体を根本部分を支点として車両後方側に回動させて倒伏させるようにしているので、フロントピラーに装着されたミラー本体を倒伏させると、当該ミラー本体がフロントドアの外側に被さり、フロントドアの開閉の妨げになるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、開閉に必要な車幅方向のスペースを小さくすることができるフロントドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフロントドア開閉装置は、可倒式のミラー装置を備えた車両に設けられるフロントドア開閉装置であって、フロントドアガラスを備え、車体の開口部を閉塞するフロントドアと、前記フロントドアを全閉位置と該全閉位置に対して車両前方側にある全開位置との間でスライド式に開閉させるスライド機構と、前記開口部に対して車両前方側に隣接して前記車体に固定されるベースと、前記ベースに移動自在に支持され、起立位置にあるときには車両後方側を向いて前記フロントドアガラスの車両前方側に隣接するミラー本体と、前記ベースまたは前記ミラー本体のいずれか一方に設けられ、前記車両側を凸として湾曲するガイドレールと、前記ベースまたは前記ミラー本体のいずれか他方に設けられ、前記ガイドレールに相対移動自在に装着されるスライダとを有し、前記ガイドレールに対する前記スライダの相対移動により、前記ミラー本体が、前記起立位置から全閉位置にある前記フロントドアよりも車両前方側において前記車両の側を向く倒伏位置にまで移動することを特徴とする。
【0010】
本発明のフロントドア開閉装置は、前記ガイドレールは一定の間隔を空けて対向する一対のガイド壁を備え、前記スライダは一対の前記ガイド壁の間に長手方向に並べて配置され該ガイド壁に案内される一対の回転体を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のフロントドア開閉装置は、一方の前記ガイド壁の内面に全長に亘ってギア部を設けるとともに前記回転体を前記ギア部に噛み合うピニオンとし、少なくともいずれか一方の前記ピニオンをミラー駆動用モータにより回転駆動して前記ミラー本体を前記起立位置と前記倒伏位置との間で自動的に作動させることを特徴とする。
【0012】
本発明のフロントドア開閉装置は、前記ミラー本体を前記起立位置と前記倒伏位置との間で自動的に作動させるミラー駆動用モータを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のフロントドア開閉装置は、前記フロントドアを全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉させる自動開閉装置を備え、前記自動開閉装置は前記ミラー本体が起立位置から倒伏位置へ自動的に移動した後に前記フロントドアを自動開動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガイドレールに対するスライダの相対移動によりミラー本体をフロントドアよりも車両前方側において倒伏させるようにしたので、ミラー装置を車体に装着するようにしても、倒伏したミラー本体がフロントドアに被さることなく、ミラー本体を倒伏させた状態のままフロントドアを車両前方側に向けてスライド式に開く構造とすることができる。これにより、ミラー装置をフロントドアではなく車体に装着することを可能として、フロントドアの開閉に必要な車幅方向のスペースを小さくすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、ガイドレールに一定の間隔を空けて対向する一対のガイド壁を設け、スライダに設けられる一対の回転体を一対のガイド壁の間に長手方向に並べて配置して当該ガイド壁に案内させるようにしたので、ミラー本体を起立位置と倒伏位置とに案内する構造を簡素化することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、ガイド壁の内面にギア部を設け、回転体をギア部に噛み合うピニオンとし、ピニオンをミラー駆動用モータにより回転駆動してミラー本体を起立位置と倒伏位置との間で自動的に作動させるようにしたので、ミラー本体を自動的に作動させるための構造を簡素化することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、ミラー駆動用モータによりミラー本体を起立位置と倒伏位置との間で自動的に作動させるようにしたので、ミラー本体を起立位置から倒伏させる操作や倒伏位置にあるミラー本体を起立位置に復帰させる操作を容易にすることができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、ミラー駆動用モータによりミラー本体を自動的に倒伏位置に移動させてから自動開閉装置によりフロントドアを自動的に開くようにしたので、フロントドアを確実且つ容易に開くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態であるフロントドア開閉装置を備えた車両の一部を示す斜視図であり、図2は図1に示す車両のフロントドアを開いた状態を示す斜視図である。
【0021】
図1、図2に示す車両11はミニバンタイプの乗用車であり、この車両11の車体12の側部には、乗降用の開口部12aを閉塞するためにフロントドア13が設けられている。このフロントドアはスライド機構14により開閉自在に支持されており、このスライド機構14は車体12の側部に固定されるスライドレール14aとフロントドア13の前端部に設けられるローラユニット14bとを備えている。ローラユニット14bはスライドレール14aに移動自在に装着されており、ローラユニット14bがスライドレール14aに沿って移動することにより、フロントドア13は、開口部12aを閉塞する全閉位置(図1に示す位置)と、開口部12aつまり全閉位置に対して車両前方側にある全開位置(図2に示す位置)との間でスライド式に開閉するようになっている。また、スライドレール14aの車両後方側の端部は車体12の側部から車室内側に向けて湾曲しており、ローラユニット14bが当該湾曲部分に案内されることにより、フロントドア13は全閉位置から車体12の外側に引き出されてから開かれ、また、車体12の内側に引き込まれてから閉じられるようになっている。
【0022】
このフロントドア13はドア本体13aの上部にサッシ13bが固定されたサッシドアとなっており、サッシ13bにはフロントドアガラス15が上下方向に開閉自在に装着され、乗員はこのフロントドアガラス15を介して車室内から車両側方側の外部の様子を視認することができるようになっている。
【0023】
なお、図示する場合では、フロントドア13をスライド式に開閉させるスライド機構14はスライドレール14aとローラユニット14bとを備えたものが用いられているが、これに限らず、例えば、リンク機構を用いたものなど、フロントドア13をスライド式に開閉することができるものであれば他の構造のものであってもよい。また、図示する場合では、フロントドア13はドア本体13aの上部にサッシ13bが固定されたサッシドアとされているが、これに限らず、サッシレスのハードトップドアやドア本体13aとサッシ13bとが一体に形成されたフルドアであってもよい。
【0024】
フロントドア13を全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉するために、車両11には自動開閉装置16が設けられている。この自動開閉装置16は、いわゆる自走型のケーブル式となっており、一端がスライドレール14aの車両前方側の端部に連結されるとともに他端がローラユニット14bを介してフロントドア13の内部に引き込まれる開側ケーブル17aと、一端がスライドレール14aの車両後方側の端部に連結されるとともに他端がローラユニット14bを介してフロントドア13の内部に引き込まれる閉側ケーブル17bとを備えている。また、フロントドア13の内部にはドア駆動用モータ18が配置されており、フロントドア13の内部に引き込まれた各ケーブル17a,17bは、それぞれドア駆動用モータ18に設けられる図示しない駆動ドラムに互いに逆向きに巻き付けられている。ドア駆動用モータ18にはドア制御装置19が接続されており、車室内等に設けられる図示しない開閉スイッチの操作に応じてドア制御装置19によりその作動が制御される。ドア駆動用モータ18が作動すると駆動ドラムによりケーブル17a,17bの一方が巻き取られるとともに他方が巻き戻され、これにより、フロントドア13はケーブル17a,17bに牽引されて自動的に開閉する。また、開閉スイッチの操作に応じてドア駆動用モータ18の作動方向が切り替えられ、これにより、フロントドア13は開閉両方向に作動することができる。
【0025】
なお、ドア制御装置19は図示しないCPU(中央演算処理装置)やメモリ等を備えたマイクロコンピュータとなっており、前述の開閉スイッチや車体12に搭載された図示しないバッテリ(電源)等に接続されている。
【0026】
フロントドア13には、これを全閉位置に保持するために、ドアロック装置20が設けられている。ドアロック装置20は、フロントドア13の車両後方側の端部に配置されるロック機構20aと、車体12の開口部12aの車両後方側の端部に固定されるコの字形のストライカ20bとを備えており、フロントドア13が全閉位置にまで閉じられると、ロック機構(ラッチ)20aがストライカ20bに係合して、フロントドア13を全閉位置に保持するようになっている。また、ドアロック装置20はリリーサ機能を備えており、フロントドア13が自動開閉装置16により全閉位置から自動的に開かれるときには、リリーサ機能によりロック機構20aのストライカ20bとの係合が自動的に解除されるようになっている。なお、ロック機構20aは配線によりドア制御装置19に接続されており、ドア制御装置19からの指令信号に基づいてリリーサ機能を作動させるようになっている。
【0027】
車体12のフロントピラー(Aピラー)12bの根本部分には、運転者の車両側方側からの後方確認を可能とするために、ミラー装置21が装着されている。このミラー装置21は車体12の左右両側にそれぞれ設けられるが、これらのミラー装置21は左右対称である以外は基本的に同一の構造となっているので、以下では、運転席側のミラー装置21に基づいて説明する。
【0028】
図3は図1に示すミラー装置の構造を示す斜視図であり、図4は同平面図である。
【0029】
このミラー装置21はベース22にミラー本体23が移動自在に支持された構造となっており、ベース22は板状に形成され、図1、図2に示すように、開口部12aに対して車両前方側に隣接するように車体12のフロントピラー12bの根本部分に固定されている。一方、ミラー本体23は樹脂製のカバー(筐体)23aにミラー(鏡)23bが取り付けられた構造となっており、図1に示すように、使用位置つまり起立位置にあるときには、全閉位置にあるフロントドア13のフロントドアガラス15の車両前方側に隣接するとともにミラー23bを車両後方側に向けた姿勢となってベース22に支持されるようになっている。そして、運転者は、ミラー本体23が起立位置にあるときには、車室内からフロントドアガラス15を介してこのミラー23bに映った後方の様子を視認することができるようになっている。
【0030】
このミラー装置21には倒伏機構(格納機構)24が設けられており、例えば停車時など車室内からの後方確認が不要な場合には、ミラー本体23を使用位置である起立位置から倒伏位置(格納位置)つまりミラー23bを全閉位置にあるフロントドア13よりも車両前方側において車両11の側つまり車室内側に向けるように伏せた位置にまで移動させることができるようになっている。
【0031】
次に、倒伏機構24の構造について説明する。
【0032】
図3、図4に示すように、この倒伏機構24はベース22とミラー本体23との間に設けられており、ミラー本体23は倒伏機構24を介してベース22に取り付けられて当該ベース22に移動自在に支持されている。この倒伏機構24はガイドレール25とスライダ26とを備えており、図示する場合では、ガイドレール25はベース22に設けられ、スライダ26はミラー本体23に設けられている。
【0033】
ガイドレール25は一定の間隔を空けて対向する一対のガイド壁25a,25bを備えており、これらのガイド壁25a,25bはそれぞれベース22の車両上方側を向く上面に一体に形成されている。図4に示すように、ガイドレール25は、その車両前方側の長手方向端部(倒伏位置の側の長手方向端部)を車両11の前方に向け、車両後方側の長手方向端部(起立位置の側の長手方向端部)を車両11の幅方向の外側に向けるとともに、長手方向の中間部分を長手方向の両端部を結ぶ直線Lよりも車両11の側つまり車室内側に向けて突出させるように湾曲して形成されている。つまり、ガイドレール25は車両前方側から後方側に向けて徐々に車両11(車体12)から離れるように中間部分を車両11の側に凸として滑らかに湾曲している。ガイドレール25の内側部分つまり車体12に近い側のガイド壁25aの内面(他方のガイド壁25bと対向する面)には長手方向の全長に亘ってギア部27が形成されている。また、ベース22の各ガイド壁25a,25bに挟まれた部分にはガイドレール25に沿って延びるスリット28が形成されている。
【0034】
一方、スライダ26は回転体としての一対のピニオン31,32を備えている。一方のピニオン31は駆動軸33に固定され、他方のピニオン32は支軸34に固定されており、駆動軸33と支軸34はそれぞれ軸方向を車両上下方向に向けてブラケット35に回転自在に支持されている。ブラケット35は各ピニオン31,32がミラー23bと略平行な方向に並ぶようにミラー本体23のカバー23aの底面に固定されており、これにより、各ピニオン31,32はミラー本体23に回転自在に支持された状態となっている。各ピニオン31,32の直径はガイド壁25a,25bの間隔よりも若干小さく設定されており、各ピニオン31,32はそれぞれガイドレール25の各ガイド壁25a,25bの間に長手方向に所定の間隔を空けて並ぶようにガイドレール25に配置され、それぞれガイド壁25aに設けられたギア部27に噛み合わされている。これにより、各ピニオン31,32は各ガイド壁25a,25bの間でギア部27との噛み合いが保持され、また、回転することにより、ギア部27との噛み合いによって各ガイド壁25a,25bの間で案内されながらガイドレール25に沿って移動することができるようになっている。
【0035】
図3に示すように、ピニオン31を支持する駆動軸33はブラケット35からピニオン31とは反対側つまりカバー23aの内部に突出しており、その突出部分には従動ギア36が固定されている。また、カバー23aの内部にはミラー駆動用モータ37が設けられており、このミラー駆動用モータ37の出力軸37aに固定された駆動ギア38が従動ギア36に噛み合わされている。ミラー駆動用モータ37の給電線37bはベース22に形成されたスリット28からベース22の裏面側を介して車体12の内部に導かれており、図1に示すように、車体12の内部に配置されたミラー制御装置41に接続されている。なお、図示はしないが、このカバー23aの内部には、カバー23aに対するミラー23bの角度を調整するための公知の調整機構等も設けられている。
【0036】
ミラー制御装置41は図示しないCPUやメモリ等を備えたマイクロコンピュータとなっており、車室内に設けられた図示しないミラー操作スイッチや車体12に搭載された図示しないバッテリ(電源)等に接続されるとともに、図示しない配線によりローラユニット14bを介してドア制御装置19に接続されている。
【0037】
運転者によりミラー操作スイッチが操作されると、その操作に応じてミラー駆動用モータ37がミラー制御装置41により作動制御され、出力軸37aが正逆両方向に回転するように作動する。ミラー駆動用モータ37が作動すると、駆動ギア38と従動ギア36とを介して出力軸37aの回転が減速して駆動軸33に伝達され、ピニオン31がミラー駆動用モータ37に回転駆動される。そして、ピニオン31が回転することにより、スライダ26つまりミラー本体23がガイドレール25に沿って自動的に移動する。また、ミラー操作スイッチの操作に応じてミラー駆動用モータ37の作動方向がミラー制御装置41によって切り替えられることにより、ミラー本体23の移動方向が切り替えられる。
【0038】
図5(a)〜(c)はそれぞれミラー本体が起立位置から倒伏位置にまで移動する様子を示す平面図であり、図6(a)〜(c)は同側面図である。次に、図5、図6に基づいて、このミラー装置21の倒伏動作について説明する。
【0039】
車両11の走行時など、ミラー装置21による運転者の後方確認が必要なときには、図5(a)、図6(a)に示すように、ミラー本体23は起立位置とされる。ミラー本体23が起立位置にあるときには、図5(a)に示すように、スライダ26はガイドレール25の車両後方側の長手方向端部(起立位置側のストローク端)にあり、ミラー本体23はミラー23bを車両11の後方側に向けた状態となってフロントドアガラス15の車両前方側の端部に隣接して配置される。これにより、運転者はフロントドアガラス15を介してミラー23bに映った後方の様子を確認することができる。
【0040】
ミラー本体23が起立位置にあるときに、図示しないミラー操作スイッチが倒伏側に操作されると、起立位置にあるミラー本体23はミラー駆動用モータ37により駆動されて自動的に倒伏位置にまで移動する。つまり、運転者等によりミラー操作スイッチが倒伏側に操作されると、ミラー駆動用モータ37が作動し、ギア部27に噛み合うピニオン31がミラー駆動用モータ37により所定の方向に回転駆動され、スライダ26がガイドレール25の車両後方側の長手方向端部から車両前方側の長手方向端部(倒伏位置側のストローク端)に向けて移動する。このとき、図5(b)、図6(b)に示すように、スライダ26に設けられる一対のピニオン31,32は長手方向に並んで配置され、これを案内するガイドレール25は車両11の側を凸として湾曲しているので、スライダ26がガイドレール25に沿って移動するに従い、ミラー本体23はミラー23bを車両11つまり車室内側に向ける方向に回動しながら車両前方側に移動する。そして、図5(c)、図6(c)に示すように、スライダ26がガイドレール25の車両前方側の長手方向端部にまで達し、つまりミラー本体23が倒伏位置に達すると、各ピニオン31,32がガイドレール25に沿って車両前後方向に並ぶ状態となり、これにより、ミラー本体23はミラー23bを車両11の側に向けて倒伏した状態となる。
【0041】
なお、スライダ26がガイドレール25に沿って移動したときには、ミラー駆動用モータ37の給電線37bもスライダ26の移動に合わせてスリット28に沿って移動し、スライダ26の作動を妨げることがないようにされている。
【0042】
ここで、倒伏位置にまで達したミラー本体23は、ガイドレール25に沿って起立位置に対して車両前方側に移動しているので、図5(c)、図6(c)に示すように、全閉位置にあるフロントドア13つまり車体12の開口部よりもさらに車両前方側にあるフロントピラー12bの根本部分に被さるように車両11の側に伏せられることになる。つまり、倒伏位置にあるミラー本体23は全閉位置にあるフロントドア13の外側に被さることなく、フロントドア13よりも車両前方側にずれた位置において車両11の側を向いて倒伏する。
【0043】
これにより、フロントドア13が全閉位置に閉じられた状態のときにミラー本体23を倒伏位置にまで倒しても、フロントドア13の移動経路上にミラー本体23が被さることがなく、フロントドア13を全閉位置から開くことができる。また、ミラー本体23を倒伏位置にまで倒しても、車室内からのフロントドアガラス15を介しての車両11の側方の視界がミラー本体23により遮られることがないので、ミラー本体23を倒伏させた状態で車両11から降車する場合であっても、フロントドアガラス15を介しての車両11の側方の視界を確保することができる。
【0044】
なお、倒伏位置にあるミラー本体23を起立位置にまで移動させるには、図示しないミラー操作スイッチが起立側に操作させることで行われる。つまり、運転者等によりミラー操作スイッチが起立側に操作されると、電動モータ37が作動し、ギア部27に噛み合うピニオン31が電動モータ37により上記とは反対の方向に回転駆動され、スライダ26がガイドレール25の車両前方側の長手方向端部から車両後方側の長手方向端部(起立位置側のストローク端)に向けて移動する。なお、スライダ26がガイドレール25の長手方向各ストローク端に達したか否かはモータのロック電流監視、モータの回転検出、リミットスイッチ等で検出することができる。
【0045】
図7(a)〜(d)はそれぞれフロントドアを全閉位置から全開位置へ自動的に開くときのフロントドアとミラー装置の制御手順を示す説明図である。
【0046】
このフロントドア開閉装置では、フロントドア13を全閉位置から全開位置にまで自動開閉装置16により自動的に開くときには、予めミラー本体23を起立位置から倒伏位置にまで自動的に倒してからフロントドア13を自動開動作させるようになっている。以下に、図7に基づいてその制御手順について説明する。
【0047】
図7(a)に示すように、フロントドア13が全閉位置にあり、ミラー本体23が起立位置にあるときに、図示しない開閉スイッチが開側に操作されると、まず、ドア制御装置19からの指令によりドアロック装置20のリリーサ機能が作動し、ロック機構(ラッチ)20aのストライカ20bとの係合が解除される。
【0048】
ロック機構20aのストライカ20bとの係合が解除されると、その旨の信号がドア制御装置19を介して、または直接にミラー制御装置41に入力される。当該信号としては、ロック機構20aのラッチがハーフラッチ位置となったことを検出するハーフラッチスイッチ(不図示)や当該ラッチをハーフラッチ位置やフルラッチ位置に保持するラチェットが解除されたことを検出するラチェットスイッチ(不図示)等の信号が用いられる。
【0049】
ロック機構20aのストライカ20bとの係合が解除された旨の信号がミラー制御装置41に入力されると、これをトリガーとしてミラー駆動用モータ37が作動し、ミラー本体23は起立位置から倒伏位置に向けて自動的に移動し、図7(b)に示すように、倒伏位置に達する。ミラー本体23が倒伏位置にまで達すると、ミラー駆動用モータ37の作動が停止し、その旨の信号がドア制御装置19に入力される。
【0050】
ミラー本体23が倒伏位置にまで達したことを入力信号により認識すると、ドア制御装置19はこれをトリガーとしてドア駆動用モータ18を作動させ、フロントドア13を全閉位置から全開位置に向けて自動開動作させる。
【0051】
ここで、前述のように、倒伏位置にまで倒されたミラー本体23は全閉位置にあるフロントドア13よりも車両前方側において倒伏した状態となるので、図7(c)に示すように、全閉位置から車体12の外側に向けて引き出されるフロントドア13の移動経路上にミラー本体23が被さることがなく、つまり、ミラー本体23が邪魔になることなく、フロントドア13を全閉位置から全開位置に向けて開くことができる。
【0052】
車体12の外側に引き出されたフロントドア13は、倒伏した状態のミラー本体23の外側を車体12の側部に沿って車両前方側に向けて自動的に移動する。そして、図7(d)に示すように、フロントドア13が全開位置にまで達すると、ドア駆動用モータ18の作動が停止され、当該ドア13の自動開動作が終了する。
【0053】
なお、フロントドア13を全開位置から全閉位置にまで自動開閉装置16により自動的に閉じるには、図7(d)に示すように、フロントドア13が全開位置にあり、ミラー本体23が倒伏位置にあるときに、図示しない開閉スイッチが閉側に操作させることで行われる。つまり、運転者等により開閉スイッチが閉側に操作されると、まず、ドア制御装置19はドア駆動用モータ18を作動させ、フロントドア13を全開位置から全閉位置に向けて自動閉動作させる。
【0054】
フロントドア13が全閉位置付近に達したことがハーフラッチスイッチ等の信号により検出されるとドア駆動用モータ18の作動が停止され、次いで、ドアロック装置20のクローザ機構が作動し、ロック機構(ラッチ)20aとストライカ20bとが自動的に係合される。
【0055】
ロック機構20aとストライカ20bとが係合すると、その旨の信号がドア制御装置19を介してミラー制御装置41に入力され、この信号をトリガーとしてミラー駆動用モータ37が作動し、ミラー本体23は倒伏位置から起立位置に向けて自動的に移動し、図7(a)に示す起立位置に達し、当該ドア13の自動閉動作が終了する。
【0056】
このように、このフロントドア開閉装置では、ガイドレール25に対するスライダ26の相対移動によりミラー本体23を案内し、当該ミラー本体23をフロントドア13よりも車両前方側において倒伏させるようにしたので、ミラー装置21を車体12のフロントピラー12bに装着するようにしても、倒伏したミラー本体23が全閉位置にあるフロントドア13に被さることをなくして、ミラー本体23を倒伏させた状態のままフロントドア13を車両前方側に向けてスライド式に開く構造とすることができる。これにより、ミラー装置21を車体12に装着することを可能として、ミラー装置21をフロントドア13に装着するようにした場合に比べてフロントドア13の開閉に必要な車幅方向のスペースを小さくすることができる。
【0057】
また、このフロントドア開閉装置では、ミラー本体23を案内するガイドレール25に一定の間隔を空けて対向する一対のガイド壁25a,25bを設け、スライダ26に回転自在に支持される一対のピニオン31,32を一対のガイド壁25a,25bの間に配置して当該ガイド壁25a,25bに案内させるようにしたので、ミラー本体23を起立位置と倒伏位置とに案内するための倒伏機構24の構造を簡素化することができる。
【0058】
さらに、このフロントドア開閉装置では、ガイド壁25a,25bの内面にギア部27を設け、このギア部27にピニオン31,32を噛み合わせるとともに、一方のピニオン31をミラー駆動用モータ37により回転駆動してミラー本体23を起立位置と倒伏位置との間で自動的に作動させるようにしたので、ミラー本体23を起立位置から倒伏させる操作や倒伏位置にあるミラー本体23を起立位置に復帰させる操作を容易にすることができる。また、ミラー本体23をミラー駆動用モータ37により自動的に作動させるための構造を簡素化することができる。
【0059】
さらに、このフロントドア開閉装置では、ミラー駆動用モータ37によりミラー本体23を自動的に倒伏位置に移動させてから自動開閉装置16によりフロントドア13を自動的に開くようにしたので、フロントドア13を確実且つ容易に開くことができる。
【0060】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、フロントドア13を自動開閉装置16により自動的に開閉するようにしているが、これに限らず、フロントドア13を手動で開閉する構造としてもよい。
【0061】
また、前記実施の形態においては、ミラー装置21のベース22をフロントピラー12bの根本部分に装着するようにしているが、これに限らず、例えばフロントピラー12bの中間部分など、車体12の開口部12aに対して車両前方側に隣接する位置であれば他の部位に固定するようにしてもよい。
【0062】
さらに、前記実施の形態においては、ガイドレール25をベース22に設け、スライダ26をミラー本体23に設けるようにしているが、これに限らず、ガイドレール25をミラー本体23に設け、スライダ26をベース22に設けるようにしてもよい。
【0063】
さらに、前記実施の形態においては、ミラー装置21のガイドレール25は車両後方側の長手方向端部が車幅方向の外側を向き、車両前方側の長手方向端部が車両11の前方を向くとともに、中間部分が長手方向の両端部を結ぶ直線Lよりも車両11の側に凸となるように湾曲して形成されるが、これに限らず、中間部分が直線Lよりも車両11の側に凸となるように湾曲していればその長手方向両端部が向く方向は任意に設定することができる。
【0064】
さらに、前記実施の形態においては、ミラー装置21のガイド壁25a,25bに設けたギア部27に噛み合うピニオン31をミラー駆動用モータ37により回転駆動してミラー本体23を自動的に作動させるようにしているが、これに限らず、例えばスライダ26にケーブルを連結し、このケーブルをミラー駆動用モータ37によってガイドレール25に沿って駆動するケーブル式など、ミラー駆動用モータ37を用いた他の構造によりミラー本体23を自動的に作動させるようにしてもよい。
【0065】
さらに、前記実施の形態においては、ミラー本体23を起立位置と倒伏位置との間でミラー駆動用モータ37により自動的に作動させるようにしているが、これに限らず、ミラー駆動用モータ37を設けることなく、ミラー本体23を手動により起立位置と倒伏位置との間で作動させる構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態であるフロントドア開閉装置を備えた車両の一部を示す斜視図である。
【図2】図1に示す車両のフロントドアを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すミラー装置の構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示すミラー装置の構造を示す平面図である。
【図5】(a)〜(c)はそれぞれミラー本体が起立位置から倒伏位置にまで移動する様子を示す平面図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれミラー本体が起立位置から倒伏位置にまで移動する様子を示す側面図である。
【図7】(a)〜(d)はそれぞれフロントドアを全閉位置から全開位置へ自動的に開くときのフロントドアとミラー装置との制御手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
11 車両
12 車体
12a 開口部
12b フロントピラー
13 フロントドア
13a ドア本体
13b サッシ
14 スライド機構
14a スライドレール
14b ローラユニット
15 フロントドアガラス
16 自動開閉装置
17a 開側ケーブル
17b 閉側ケーブル
18 ドア駆動用モータ
19 ドア制御装置
20 ドアロック装置
20a ロック機構
20b ストライカ
21 ミラー装置
22 ベース
23 ミラー本体
23a カバー
23b ミラー
24 倒伏機構
25 ガイドレール
25a,25b ガイド壁
26 スライダ
27 ギア部
28 スリット
31,32 ピニオン(回転体)
33 駆動軸
34 支軸
35 ブラケット
36 従動ギア
37 ミラー駆動用モータ
37a 出力軸
37b 給電線
38 駆動ギア
41 ミラー制御装置
L 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可倒式のミラー装置を備えた車両に設けられるフロントドア開閉装置であって、
フロントドアガラスを備え、車体の開口部を閉塞するフロントドアと、
前記フロントドアを全閉位置と該全閉位置に対して車両前方側にある全開位置との間でスライド式に開閉させるスライド機構と、
前記開口部に対して車両前方側に隣接して前記車体に固定されるベースと、
前記ベースに移動自在に支持され、起立位置にあるときには車両後方側を向いて前記フロントドアガラスの車両前方側に隣接するミラー本体と、
前記ベースまたは前記ミラー本体のいずれか一方に設けられ、前記車両側を凸として湾曲するガイドレールと、
前記ベースまたは前記ミラー本体のいずれか他方に設けられ、前記ガイドレールに相対移動自在に装着されるスライダとを有し、
前記ガイドレールに対する前記スライダの相対移動により、前記ミラー本体が、前記起立位置から全閉位置にある前記フロントドアよりも車両前方側において前記車両の側を向く倒伏位置にまで移動することを特徴とするフロントドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載のフロントドア開閉装置において、前記ガイドレールは一定の間隔を空けて対向する一対のガイド壁を備え、前記スライダは一対の前記ガイド壁の間に長手方向に並べて配置され該ガイド壁に案内される一対の回転体を備えることを特徴とするフロントドア開閉装置。
【請求項3】
請求項2記載のフロントドア開閉装置において、一方の前記ガイド壁の内面に全長に亘ってギア部を設けるとともに前記回転体を前記ギア部に噛み合うピニオンとし、少なくともいずれか一方の前記ピニオンをミラー駆動用モータにより回転駆動して前記ミラー本体を前記起立位置と前記倒伏位置との間で自動的に作動させることを特徴とするフロントドア開閉装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のフロントドア開閉装置において、前記ミラー本体を前記起立位置と前記倒伏位置との間で自動的に作動させるミラー駆動用モータを備えることを特徴とするフロントドア開閉装置。
【請求項5】
請求項4記載のフロントドア開閉装置において、前記フロントドアを全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉させる自動開閉装置を備え、前記自動開閉装置は前記ミラー本体が起立位置から倒伏位置へ自動的に移動した後に前記フロントドアを自動開動作させることを特徴とするフロントドア開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−18233(P2010−18233A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182726(P2008−182726)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】