説明

フロントフォーク

【課題】 フロントフォークに関し、特に、二輪車の前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を減衰する油圧緩衝器たるフロントフォークの改良に関する。
【解決手段】 車体側チューブ1と、この車体側チューブ1内に摺動自在に挿入される車輪側チューブ2とからなるフォーク本体と、このフォーク本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパ3と、上記減衰力を調整する減衰力調整手段とを備えてなり、上記減衰力調整手段を構成するアクチュエータ4が上記フォーク本体に相対向して配置され、ハウジング5によって上記フォーク本体に固定されるフロントフォークにおいて、上記アクチュエータ4と上記ハウジング5との間に弾性部材6を介装することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、二輪車の前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を減衰する油圧緩衝器たるフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を減衰する油圧緩衝器たるフロントフォークとしては、これまでに種々の提案がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるように、車体側チューブと、車輪側チューブとからなり伸縮可能なフォーク本体と、このフォーク本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパと、このダンパにおける減衰力を調整する減衰力調整手段とを有してなる。
【0004】
上記ダンパは、内部に作動流体を収容するシリンダと、このシリンダ内にフォーク本体の伸縮に伴い出没自在に挿入されるロッドと、このロッドの先端側に設けられて上記シリンダ内を二つの圧力室に区画するピストンと、このピストンに設けられて上記二つの圧力室を連通するポートと、このポートを作動流体が通過するときに流動抵抗を与えて所定の減衰力を発生する減衰力発生手段とで構成される。
【0005】
また、上記ダンパにおける減衰力を調整する減衰力調整手段は、上記減衰力発生手段を迂回して上記二つの圧力室を連通するバイパス路と、このバイパス路内を進退するニードル弁と、モータまたはソレノイドからなり上記ニードル弁を進退させるアクチュエータと、上記調整弁と上記アクチュエータとの間に設けられ上記アクチュエータからの作用を上記ニードル弁に伝達するプッシュロッドとからなる。
【0006】
そして、上記ニードル弁が上記アクチュエータからの作用を受けてバイパス路内を進退して、このバイパス路内の開口量を変更し、これによりフロントフォークの減衰力を高低調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−14431号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の技術において、上記アクチュエータを遠隔操作して所望の減衰力を得ることが可能となる点において有用であるが、次のような改善が望まれている。
【0009】
即ち、上記従来のアクチュエータがモータまたはソレノイドからなるフロントフォークにおいては、アクチュエータに路面振動が作用して負荷がかかる。
【0010】
そこで、本発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、アクチュエータに作用する路面振動を吸収してアクチュエータにかかる負荷を軽減することが可能なフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段は、アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなるフォーク本体と、このフォーク本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパと、上記減衰力を調整する減衰力調整手段とを備え、上記減衰力調整手段を構成するアクチュエータが上記フォーク本体に相対向して配置され、ハウジングによって上記フォーク本体に固定されるフロントフォークにおいて、上記アクチュエータと上記ハウジングとの間に弾性部材を介装することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アクチュエータとハウジングとの間に弾性部材が介装されることから、アクチュエータに作用する路面振動を弾性部材が吸収してアクチュエータにかかる負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフロントフォークを示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るフロントフォークのピストン周辺部を示す拡大縦断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るフロントフォークのアクチュエータ周辺部を示す拡大縦断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るフロントフォークの弾性部材を示す拡大平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るフロントフォークのアクチュエータ周辺部を示す(a)ボルト固定前のA−A断面図、(b)ボルト固定前の縦断面図、(c)ボルト固定後のC−C断面図、(d)ボルト固定後の縦断面図である。
【図6】本実施の一実施の形態に係るフロントフォークを示す概念図である。
【図7】本実施の他の形態に係るフロントフォークを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を示すフロントフォークについて、図面を参照して説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0015】
本発明の一実施の形態を示すフロントフォークは、左右一対のフォーク部材からなり、二輪車の前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を減衰する油圧緩衝器として機能する。
【0016】
上記フォーク部材は、図1に示すように、車体側チューブ1と、この車体側チューブ1内に摺動自在に挿入される車輪側チューブ2とからなるフォーク本体と、このフォーク本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパ3と、上記減衰力を調整する減衰力調整手段とを備えてなる。
【0017】
そして、上記減衰力調整手段を構成するアクチュエータ4が上記フォーク本体に相対向して配置され、ハウジング5によって上記フォーク本体に固定される。
【0018】
特に、本発明に係るフロントフォークにおいては、上記アクチュエータ4と上記ハウジング5との間に弾性部材6が介装されてなり、当該構成を備えることにより、上記弾性部材6が路面振動を吸収してアクチュエータ4にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【0019】
以下に、本発明の一実施の形態を示すフロントフォークの各構成部品についてそれぞれ説明する。
【0020】
上記フロントフォークにおけるフォーク部材を構成するフォーク本体は、図1に示すように、車体側にブラケット(図示せず)を介して結合される車体側チューブ1をアウターチューブにし、車輪側にボトム部材21を介して結合される車輪側チューブ2をインナーチューブにする倒立型である。
【0021】
そして、上記車輪側チューブ2は、外周を車体側チューブ1内周に摺接させながら車体側チューブ1内に出没可能であるため、フォーク本体は、路面振動を受けて伸縮することが可能となる。
【0022】
上記フォーク本体内には、当該フォーク本体が伸縮する際に、その伸縮運動を減衰するダンパ3と、当該フォーク本体を常に伸張方向に附勢する懸架ばねS1が収容される。
【0023】
そして、フォーク本体は、上記フォーク本体の図中上方に位置する開口端、即ち、車体側チューブ1の開口に螺合するキャップ部材11と、図中下方に位置する開口端、即ち、車輪側チューブの開口に結合する上記ボトム部材21を備えることにより、当該フォーク本体内を密閉し、このフォーク本体と上記ダンパ3との間にリザーバ室Rを形成する。
【0024】
上記懸架ばねS1は、上端を上記キャップ部材11にスペーサ12を介して係止され、下端をオイルロックケース13に担持される。
【0025】
上記オイルロックケース13は、車体側チューブ1に固定され上記ダンパ3を構成するシリンダ7に取り付けられてなることから、上記懸架ばねS1は、スペーサ12及びキャップ部材11を介して車体側チューブ1を図中上方に、オイルロックケース13及びシリンダ7を介して車輪側チューブ2を図中下方に押圧して、上記フォーク本体を伸張方向に附勢する。
【0026】
上記ダンパ3は、図2に示すように、上記キャップ部材11に固定されるロッド8と、このロッド8が出没自在に挿入されて内部に作動流体を収容する上記シリンダ7と、上記ロッド8の先端側に設けられて上記シリンダ7内を二つの圧力室R1、R2に区画するピストン9と、このピストン9に設けられて上記二つの圧力室R1、R2を連通するポートP1、P2と、このポートP1、P2を作動流体が通過するときに流動抵抗を与えて所定の減衰力を発生する減衰力発生手段とで構成される。
【0027】
そして、上記ロッド8は、軸心部を貫通する透孔8aを備え、基端部は車体側チューブ1の図1中上端を封止するキャップ部材11に結合され、先端部に上記ピストン9を保持するための先端部材80が結合される。
【0028】
また、このロッド8の図1中上方には、上記オイルロックケース13と対向するオイルロックピース14が設けられ、このオイルロックピース14がフォーク本体の最収縮時に上記オイルロックケース13内に嵌入してオイルロック現象を発現させ、クッション効果を発揮する。
【0029】
上記ロッド8が出没するシリンダ7は、ボトム部材21を介して車輪側チューブ2に下端が固定され、上記ロッド8の摺動を可能にしながら上端を閉塞する封止部材Fと、下端に設けられて上記ロッド8の出没に伴い過不足する作動流体をリザーバ室Rから補う開閉自在のボトムバルブ(図示せず)とを備えてなり、以下に説明するピストン9によって二つの圧力室、即ち、ロッド側室R1と反ロッド側室R2とに区画される。
【0030】
上記ピストン9は、図2に示すように、環状に形成されて先端部材80外周に保持されると共に、外周を上記シリンダ7内周に摺接させてなり、上記ロッド8の移動に伴い上記シリンダ7内を図中上下に移動する。
【0031】
そして、このピストン9は、軸方向に貫通して上記二つの圧力室を連通するポートを有し、このポートは、フォーク本体の伸張時に作動流体が通過する伸側ポートP1と、フォーク本体の収縮時に作動流体が通過する圧側ポートP2とからなる。
【0032】
上記各ポートP1、P2には、このポートP1、P2を作動流体が通過するときに流動抵抗を与えて所定の減衰力を発生する減衰力発生手段が備えられ、本実施の形態においては、この減衰力発生手段としてリーフバルブを採用した。
【0033】
上記リーフバルブは、上記伸側ポートP1の下流側、即ち、反ロッド側室R2側に設けられ、上記ピストン9の座面に離着座する伸側リーフバルブV1と、上記圧側ポートP2の下流側、即ち、ロッド側室R1側に設けられ、上記ピストン9の座面に離着座する圧側リーフバルブV2とからなる。
【0034】
そして、上記伸側ポートP1は、上記伸側リーフバルブV1を備えることにより、フォーク本体の伸張時にのみ二つの圧力室R1、R2を連通して作動流体をロッド側室R1から反ロッド側室R2に流出させ、一方、上記圧側ポートP2は、上記圧側リーフバルブV2を備えることにより、フォーク本体の収縮時にのみ二つの圧力室R1、R2を連通して作動流体を反ロッド側室R2からロッド側室R1に流出させる。
【0035】
つまり、各リーフバルブV1、V2は、作動流体が各ポートP1、P2を通過する際一方方向への流れのみを許可するチェック弁として機能すると共に、作動流体が当該各リーフバルブV1、V2を押し開いて通過する際に流動抵抗を発生し、所定の減衰力を発生することが可能となる。
【0036】
尚、減衰力発生手段の構成は上記の限りではなく、例えば、板バネやオリフィス等、他の方法によって減衰力を発生させるとしてもよい。
【0037】
上記リーフバルブV1、V2により発生する減衰力を調整する減衰力調整手段は、上記リーフバルブV1、V2を迂回して上記二つの圧力室を連通するバイパス路Bと、このバイパス路B内に進退してその開口量を変化させる調整弁40と、この調整弁40を進退させるアクチュエータ4と、上記調整弁40と上記アクチュエータ4との間に設けられ上記アクチュエータ4からの作用を上記調整弁40に伝達するプッシュロッド41とからなる。
【0038】
上記バイパス路Bは、背面側の溝80a内に上記ロッド8の先端部外周を螺合すると共に正面側の凸部80b外周に上記ピストン9を保持する先端部材80に具現化され、当該先端部材80を径方向に貫通してロッド側室R1側に開口する横孔B1と、この横孔B1と交差すると共に先端部材80を軸方向に貫通して反ロッド側室R2側に開口する縦孔B2とからなる。
【0039】
上記縦孔B2におけるロッド側室R1側の開口は、上記ロッド8の透孔8aと連通するが、この透孔8aは、内部に設けられる以下に述べる調整弁40のシール部材40cによって封止されるため、作動流体は、上記リーフバルブV1、V2を迂回しながら上記バイパス路Bを介して二つの圧力室R1、R2を移動することが可能となる。
【0040】
また、上記調整弁40により、上記透孔8aから作動流体がダンパ3外に漏れ出すことがない。
【0041】
上記調整弁40は、上記ロッド8の透孔8a内に上記シール部材40cを介して軸方向に移動自在に挿入される基部40aと、この基部40aの正面側に設けられ略円錐状に形成されると共に上記縦孔B2に対向するニードル40bとを備えてなるニードル弁である。
【0042】
そして、上記調整弁40のニードル40aにおける基端側の径は、横孔B1から反ロッド側室R2側に位置する縦孔B2の径よりも大径に形成されてなる。
【0043】
従って、上記縦孔B2内へ進入する上記ニードル40aの進入量によって縦孔B2との隙間量、即ち、バイパス路Bの開口量を変化させ、上記リーフバルブV1、V2を通過する作動流体の流量を変更してフロントフォークの減衰力を高低調整することが可能となる。
【0044】
尚、上記調整弁40の形状は上記の限りではなく、例えば、ニードル弁に替えてポペット弁とする等、バイパス路Bの開口量に応じて生じる減衰力の所望の変化を得るため、任意の形状を採用することが可能である。
【0045】
また、フロントフォークの減衰力の高低調整手段として、上記以外の手段を採用しても良く、図示しないが、圧側リーフバルブV2のロッド側室R1側にばねを介して弁座を当接し、この弁座にプッシュロッド41の先端を押し当てて、上記プッシュロッド41を図中上下方向に移動して、圧側リーフバルブV2にかかる荷重を変更することにより、減衰力を調整するとしてもよい。
【0046】
上記調整弁40を進退させるアクチュエータ4は、車体側チューブ1の上端を封止するキャップ部材11に相対向して配置され、ハウジング5によって固定される。
【0047】
上記アクチュエータ4は、図3に示すように、電気的に駆動されるモータまたはソレノイドからなり、側面から径方向に突出するコネクタ(図示せず)と、正面から軸方向に突出し通電時に回転するシャフト4aと、背面から軸方向に突出する四角柱状の突起4bとを備えてなる。
【0048】
そして、上記シャフト4aの外周に螺子山(符示せず)を設け、当該シャフト4a外周にプランジャ42が図中上下方向に移動可能に螺合されている。
【0049】
当該プランジャ42は、上記キャップ部材11の軸心部を貫通しロッド体8の透孔8aと連通する中空部11a内に軸方向に移動自在に設けられ、上記シャフト4aの外周に螺合するプランジャ本体(符示せず)と、このプランジャ本体から径方向に突出するフランジ42aと、このフランジ42aの軸方向に沿って形成される切欠(図示せず)と、上記プランジャ本体からフォーク本体側に突出してプッシュロッド41の基端に当接する凸部42bとからなる。
【0050】
そして、プランジャ42は、キャップ部材11の中空部11aに軸方向に起立するピン11bに上記切欠を係合することによりキャップ部材11に周り止めされ、上記アクチュエータ4のシャフト4aの回転に伴い上記中空部11a内を図中上下方向に移動する。
【0051】
従って、上記プランジャ42は、アクチュエータ4の通電時におけるシャフト4aの回転に伴い上記中空部内11aを上下して、プッシュロッド41を介して調整弁40を進退させることが可能となる。
【0052】
尚、上記アクチュエータ4をモータまたはソレノイドとすることにより、電気的に減衰力調整を行うことが可能となり、減衰力の微調整や設定が容易に可能となるがこの限りではない。
【0053】
例えば、図示しないが、上記アクチュエータ4を手動で駆動するアジャスタ等の構成を採用するなど、適宜構成を選択することが可能である。
【0054】
また、上記アクチュエータ4において、コネクタを介して通電することにより、減衰力調整時にのみコネクタを接続して通電すれば良く、リード線の末端にコネクタを有する場合と比較してリード線が美観を損ねることがない。
【0055】
また、常に接続状態として、例えば、図示しないが、ECU(エンジンコントロールユニット)等の制御手段が二輪車の速度等に応じてアクチュエータ4を駆動するとしても良い。
【0056】
上記アクチュエータ4からの作用を上記調整弁40に伝達するプッシュロッド41は、ロッド8の透孔8a内にプランジャ42と調整弁40とに挟まれて設けられ、上記調整弁40を図中上方に附勢する附勢ばねS2(図2)でアクチュエータ4側に押し当てられている。
【0057】
従って、プッシュロッド41は、アクチュエータ4からの作用を調整弁40に伝達して、調整弁40を任意の位置に留めることが可能となる。
【0058】
尚、上記プッシュロッド41の構成は上記の限りではなく、上記プランジャ42と一体的に設けられるとしても良い。
【0059】
また、図3に示すところでは、上記プッシュロッド41を中空部材としたがこの限りではなく、上記アクチュエータ4からの作用を調整弁40に伝達し得る限りにおいて、適宜構成を選択することが可能である。
【0060】
上記アクチュエータ4をキャップ部材11に固定するハウジング5は、アクチュエータ4を覆うハウジング本体5aと、このハウジング本体5aの開口端から外方に向けて張り出すフランジ部5bと、上記ハウジング本体5aの側面に開穿されてアクチュエータ4のコネクタを露出させる開孔5cとからなる。
【0061】
そして、上記アクチュエータ4を上記キャップ部材11上にシール部材11cを介して配置し、上記アクチュエータ4の反フォーク本体側たる背面側に弾性部材6を介してハウジング5を被せ、上記弾性部材6を圧縮変形させながらフランジ部5bをキャップ部材11にボルト固定することにより、上記アクチュエータ4は、キャップ部材11に固定される。
【0062】
上記シール部材11cは、キャップ部材11とアクチュエータ4との間から雨水等がフォーク本体内に浸入することを防止するが、例えば、当該シール部材11cに替えて弾性部材を設けるとしても良く、当該実施の形態においては後に詳細に述べる。
【0063】
上記アクチュエータ4の背面側に配置される弾性部材6は、図4に示すように、円形に形成されて、中央にアクチュエータ4の突起4bを挿通する孔60を有するゴム素材からなり、上記アクチュエータ4と上記ハウジング5との間に介装されたとき、上記アクチュエータ4の突起4aの高さを超える厚みを有する。
【0064】
そして、上記孔60は、上記アクチュエータ4の突起4bよりも大径に形成されて略矩形の矩形孔60aと、この矩形孔60aの四つの角部から略円形に膨らむ四つの円孔60bとからなる。
【0065】
これにより、上記ハウジング5をキャップ部材11にボルト固定したとき、弾性部材6がアクチュエータ4とハウジング5との間に挟まれて潰れ、図5(c)に示すように、上記孔60の面積が狭まり、上記矩形孔60aを形成する各壁61と上記アクチュエータ4の突起4b側面とが密着して、アクチュエータ4の回り止めを確実に行うことが可能となる。
【0066】
また、上記弾性部材6が上記アクチュエータ4の背面側に設けられることにより、図6に模式的に示すように、アクチュエータ4の正面側からプッシュロッド41やプランジャ42等を介して入力される路面振動(図6中矢印)を弾性部材6で効果的に吸収することが可能となる。
【0067】
更に、路面振動入力時には、上記弾性部材6にかかる荷重、及び表面積が増して摩擦力が高まることから、上記アクチュエータ4をより効果的に回り止めすることが可能となる。
【0068】
特に、本実施の形態のようにアクチュエータ4をモータまたはソレノイドとした場合には、弾性部材6がアクチュエータ4に作用する路面振動を吸収するため、アクチュエータ4への負荷を軽減して、アクチュエータ4の点検、交換頻度を減らすことが可能となり、二輪車の維持費を抑えることが可能となる。
【0069】
尚、上記弾性部材6がゴム素材で形成されることにより、アクチュエータ4に作用する路面振動を吸収すると共に、圧縮されて摩擦力が増してアクチュエータ4を回り止めすることも可能となるが、ゴム素材以外で弾性部材6を形成してもよい。
【0070】
例えば、図示しないが、上記弾性部材6をコイルバネ、スポンジ、発砲ウレタン等としてもアクチュエータ4に作用する路面振動を吸収する効果を得ることが可能である。
【0071】
この場合においては、上記アクチュエータ4を回り止めする措置を講ずる必要がある。
【0072】
また、上記弾性部材6の孔60の形状も適宜選択することが可能であり、例えば、図示しないが、上記孔60に円孔60bを設けずに矩形孔としても良い。
【0073】
しかし、上記矩形孔とした場合には、矩形孔の角部を形成することが困難であり、更に、上記角部から弾性部材が裂ける虞がある。
【0074】
そこで、上記円孔60bを設けることで上記不具合を防ぐことが可能となり、例えば、先ず四つの円孔60bを形成し、次いで矩形孔60aの角部を上記円孔60bに重ねながら本実施の形態に示す孔60を容易に形成することが可能である。
【0075】
更には、アクチュエータ4を効果的に回り止めするという要望を鑑みれば、上記孔60の形状は、弾性部材6が介装されたとき上記孔60の壁61で上記アクチュエータ4の突起4bを少なくとも三方向から支持することが好ましい。
【0076】
また、上記弾性部材6を複数のパーツに分けて上記アクチュエータ4の突起4bを支持するとしてもよく、適宜形状を変更することが可能である。
【0077】
また、上記アクチュエータ4に上記突起4bを有することにより、上記弾性部材6と共同して当該アクチュエータ4の回り止めをすることが可能となるが、上記突起4b形状は適宜選択可能であることは勿論、必ずしも上記突起4bを設ける必要はない。
【0078】
この場合においては、上記弾性部材6または他の構成により、アクチュエータ4の回り止めをすればよい。
【0079】
また、図5に示すように、ハウジング5は五箇所をボルト固定されてなることから、上記アクチュエータ4をキャップ部材11に押し付けて確実に回り止めすることが可能となる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0081】
例えば、図7に模式的に示すように、アクチュエータ4を上下の弾性部材6a、6bで挟みながらハウジング5とフォーク本体との間に配置するとしても良く、この場合においては、上記アクチュエータ4に作用する路面振動(図7中矢印)をより確実に吸収することが可能となる。
【0082】
具体的には、上記実施の形態におけるアクチュエータ4とキャップ部材11との間に介装されるシール部材11cを弾性部材6bに変更することにより、図7の構成を具現化することが可能である。
【0083】
この場合においては、当該弾性部材6bがシール部材としての機能を兼ねることから、上記効果を得ながら部品点数を抑えることが可能となる。
【0084】
また、上記実施の形態において、倒立型のフロントフォークを採用したがこの限りではなく、正立型のフロントウォークとしても良いことは勿論である。


【符号の説明】
【0085】
B バイパス路
P1 伸側ポート
P2 圧側ポート
S1 懸架ばね
S2、S3 附勢ばね
R リザーバ室
R1 ロッド側室(圧力室)
R2 反ロッド側室(圧力室)
V1 伸側リーフバルブ
V2 圧側リーフバルブ
1 車体側チューブ
2 車輪側チューブ
3 ダンパ
4 アクチュエータ
5 ハウジング
6 弾性部材
7 シリンダ
8 ロッド
9 ピストン
11 キャップ部材
12 スペーサ
13 オイルロックケース
14 オイルロックピース
21 ボトム部材
40 調整弁
41 プッシュロッド
42 プランジャ
60 孔
80 先端部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなるフォーク本体と、このフォーク本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパと、上記減衰力を調整する減衰力調整手段とを備え、
上記減衰力調整手段を構成するアクチュエータが上記フォーク本体に相対向して配置され、ハウジングによって上記フォーク本体に固定されるフロントフォークにおいて、
上記アクチュエータと上記ハウジングとの間に弾性部材を介装することを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
上記アクチュエータが反フォーク本体側面に軸方向に突出する突起を有し、上記弾性部材が中央に上記突起を挿通する孔を有するゴム素材からなり、上記弾性部材の厚みは、上記突起の高さを超える厚みに形成されることを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
上記弾性部材は、上記アクチュエータと上記ハウジングとの間に介装されたとき圧縮されて潰れ、上記孔を形成する壁と上記突起の側面とを当接させて上記アクチュエータを回り止めすることを特徴とする請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
上記弾性部材が上記アクチュエータと上記ハウジングとの間に介装されたとき、上記突起は、上記孔を形成する壁により少なくとも三方向から支持されることを特徴とする請求項3に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
上記アクチュエータが電気的に駆動されるソレノイドまたはモータであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117492(P2011−117492A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273532(P2009−273532)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】