説明

フローエレクトロポレーションチャンバー及び方法

【課題】自動化された、連続流動式の、自給エレクトロポレーションシステムによって特徴づけられる、赤血球内に生物学的活性物質を被包させる方法及び装置の提供。
【解決手段】血液は、供給口11からシステム5に導入され、抗凝固剤27と混合される。血液と抗凝固剤の混合物は、フィルター18を通り、血液の分離洗浄槽44へ送られる。血漿及び白血球は血漿貯蔵槽89に送られ、一方、赤血球は洗浄槽44中に保持される。分離された赤血球は、ポンプで汲み上げ、貯蔵器50からのIHP溶液と、接合部67で混合される。この混合物は冷却コイル68によって冷却され、続いて処理のためのエレクトロポレーションチャンバー72へ送られる。この方法は、特にヘモグロビンのアロステリックエフェクターを被包させる用途に適しており、それによって、赤血球の酸素に対する親和性を低下させ、組織中における赤血球からの酸素の放出を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の細胞集団内に生物学的活性物質を被包させる方法及び装置に関する。さらに具体的には、本発明は、細胞内のヘモグロビンの物理的特徴を治療に好ましいように変化させるために、エレクトロポレーション(電気穿孔法)によって赤血球内にヘモグロビンのアロステリックエフェクターを被包させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
成人の血管系内では、血液の容量は約5〜6リットルである。この容量の約半分は、赤血球、白血球及び血小板などの細胞によって占められている。赤血球は、血液の細胞性成分の大部分を構成する。血液の液体部分である血漿は、約90%が水であり、10%が種々の溶質である。これらの溶質には、血漿タンパク質、有機中間代謝物及び老廃物並びに無機化合物が含まれる。
【0003】
赤血球の主要な機能は、酸素を肺から体の組織へ輸送し、二酸化炭素を組織から肺へ除去のために輸送することである。酸素は水溶液中にわずかしか溶解しないことから、ほとんどの酸素は血漿によって輸送されない。血液によって運ばれる酸素の大部分は、赤血球のヘモグロビンによって輸送される。哺乳類の赤血球は、核、ミトコンドリアまたはあらゆる他の細胞内オルガネラを含んでおらず、赤血球自身の代謝において酸素を使用しない。赤血球は、約35重量%のヘモグロビンを含有しており、ヘモグロビンは酸素と結合しこれを輸送する。
【0004】
ヘモグロビンは、約64,500ダルトンの分子量を有するタンパク質である。ヘモグロビンは、4本のポリペプチド鎖と、鉄原子が2価の状態で結合する4つのヘム補欠分子族を含有する。ヘモグロビン分子のタンパク質部分である通常のグロビンは、2本のα鎖と2本のβ鎖から構成される。4本の鎖はそれぞれ、鎖が折りたたまれた特徴的な3次構造を有する。その4本のポリペプチド鎖は、およそ四面体に配置されて一つに組合わさり、ヘモグロビンの特徴的な4次構造を構成する。分子状酸素の一分子に可逆的に結合する能力のある一つのヘム基が、それぞれのポリペプチド鎖に結合している。ヘモグロビンが酸素と結合すると、オキシヘモグロビンが形成される。酸素が放出されるときには、オキシヘモグロビンはデオキシヘモグロビンに還元される。
【0005】
組織への酸素の輸送は、血流量、赤血球数、赤血球中のヘモグロビン濃度、ヘモグロビンの酸素親和性、及び、いくつかの種では、高及び低酸素親和性を有する赤血球内のヘモグロビンのモル比などの、しかしこれらに制限されない、いくつかの因子に依存する。さらに、ヘモグロビンの酸素親和性は4つの因子に依存する。即ち、(1)酸素分圧、(2)pH、(3)ヘモグロビン中のアロステリック効果を有する2,3−ジホスホグリセリン酸(DPG)の濃度、及び(4)二酸化炭素濃度である。肺では、100mmHgの酸素分圧で、およそ98%の循環ヘモグロビンが酸素で飽和する。これは血液の総酸素輸送能力を表す。完全に酸素が結合した場合、100mlの哺乳類全血液は、約21mlの気体の酸素を運ぶことができる。
【0006】
ヘモグロビンの酸素との結合能に対する酸素分圧及びpHの効果は、ヘモグロビンの酸素飽和曲線を調べることによって最も良く説明される。酸素飽和曲線は、ヘモグロビン分子の溶液が気相における種々の酸素分圧と平衡状態にあるときに、酸素分子によって占められるヘモグロビン分子の総酸素結合部位のパーセンテージをプロットする。
【0007】
ヘモグロビンの酸素飽和曲線はS字状である。従って、酸素の第一の分子が結合することによって、残りのヘモグロビンが他の酸素分子に結合する親和性が増加する。酸素分圧が上昇するにつれて、各ヘモグロビン分子が飽和して上限である酸素4分子を含むプラトーに近づく。
【0008】
ヘモグロビンと酸素との可逆的な結合は、次式に従って、プロトンの放出を伴う。
【0009】
【化1】

【0010】
従って、pHの上昇によって平衡が右に移動し、与えられた分圧において、ヘモグロビンはさらなる酸素と結合する。pHが低下すると結合する酸素の量が減少する。
【0011】
肺において、エアスペースの酸素分圧はおよそ90〜100mmHgであり、pHもまた通常の血液のpH(7.6以下)よりも相対的に高い。従って、肺では、ヘモグロビンは酸素でほとんど最大限に飽和される傾向がある。その圧力及びpHでは、ヘモグロビンはおよそ98%が酸素で飽和する。一方、末梢組織内部の毛細管では酸素分圧は約25〜40mmHgしかなく、pHもまた相対的に低い(約7.2〜7.3)。筋細胞は酸素を速いペースで消費し、酸素の局所濃度を低下させるので、結合した酸素のいくつかが組織へ放出されやすくなる。血液が筋肉中の毛細管を通過するにつれて、赤血球中でほとんど飽和しているヘモグロビンから血漿、ひいては筋細胞中へ酸素が放出される。ヘモグロビンは筋肉の毛細管を通過する際に、結合している酸素の約3分の1を放出し、その結果、ヘモグロビンが筋肉を離れるときには、約64%しか飽和していない。一般に、組織を離れる静脈血中のヘモグロビンは、肺と末梢組織の間の反復回路において酸素による飽和度は約65%と97%との間を反復する。従って、酸素分圧及びpHは一緒に機能し、ヘモグロビンに酸素を放出させる。
【0012】
ヘモグロビンの酸素化の程度を調整する第三の重要な因子は、アロステリックエフェクターである2,3−ジホスホグリセリン酸(DPG)である。DPGは、哺乳類の赤血球におけるヘモグロビンの通常の生理学的エフェクターである。DPGは肺の酸素分圧と関連して、赤血球中のヘモグロビンの酸素結合親和性を調整する。一般に、細胞内のDPG濃度が高くなると、ヘモグロビンの酸素に対する親和性が低くなる。
【0013】
組織への酸素の輸送が慢性的に低下すると、正常な個体では赤血球中のDPG濃度が上昇する。例えば、高度の高いところでは酸素分圧はかなり低い。これに対応して、組織中の酸素分圧は低い。正常な被験者が高度の高いところへ移動して数時間以内では、赤血球中のDPG値は上昇し、より多くのDPGが結合し、ヘモグロビンの酸素親和性が減少する。赤血球中のDPG値の上昇はまた、低酸素症の患者でも起きる。この調節によって、ヘモグロビンに結合している酸素がより迅速に組織へ放出され、肺におけるヘモグロビンの酸素化の低下を補う。ヒトが高度の高いところへ順応した後に高度の低いところへ降りると、逆の変化が起こる。
【0014】
ヘモグロビンは、血液から普通に分離された場合、かなりの量のDPGを含有する。ヘモグロビンからDPGが「取り除かれる」と、ヘモグロビンの酸素に対する親和性がより高くなる。DPGが増加すると、ヘモグロビンの酸素結合親和性は低下する。従って、DPGのような生理学的アロステリックエフェクターは、組織において、ヘモグロビンからの酸素の通常の放出に不可欠である。
【0015】
DPGが哺乳類の赤血球において通常のヘモグロビンの生理学的エフェクターである一
方、リン酸化されたイノシトールは、ある鳥類及び爬虫類の赤血球において類似の役割を果たすことが発見されている。IHPは哺乳類の赤血球膜を通過できないが、DPGの結合部位で哺乳類の赤血球のヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンのアロステリックコンホメーションを修飾することが可能であり、その効果はヘモグロビンの酸素親和性を低下させることである。例えば、DPGはイノシトール六リン酸(IHP)と置き換えることができ、IHPはDPGより一層強力にヘモグロビンの酸素親和性を低下させる。IHPはヘモグロビンとの親和性がDPGの1000倍であり[R.E.Benesch et al.,Biochemistry,Vol.16,pp.2594-2597(1977)]、pH7.4及び37℃において、ヘモグロビンのP50を96.4mmHgまで増加させる[J.Biol.Chem.,Vol.250,pp.7093-7098(1975)]。
【0016】
哺乳類の赤血球の酸素放出能は、ヘモグロビンのいくつかのアロステリックエフェクターを赤血球に導入することによって増強することが可能であり、それによって、ヘモグロビンの酸素親和性は低下し、血液の酸素の効率的使用(oxygen economy)が改善される。この現象から、肺または循環器系の機能が不十分であるために組織の酸素供給が低下している個体を治療するための、様々な医学的適用が示唆される。
【0017】
これらの修飾された赤血球を使用することによって達成される、可能性のある医学的利益のため、先行技術において種々の技術が開発され、赤血球内へのヘモグロビンのアロステリックエフェクターの被包(encapsulation)が可能になった。従って、被包操作を補助または簡素化するために多数の装置が設計された。この技術分野において知られている被包法としては、細胞の浸透圧パルス(膨張)及び再構成、制御溶解及び再封、リポソームの取り込み、及びエレクトロポレーションなどがある。エレクトロポレーションの現在の方法は、商業的使用に適したスケールでは、操作が商業的に実用的ではない。
【0018】
下記の文献では、IHPを封入したリポソームの相互作用による、ポリリン酸の赤血球への取り込みが記載されている。Gersonde, et al., "Modification of the Oxygen Affinity of Intracellular Haemoglobin by Incorporation of Polyphosphates into Intact
Red Blood Cells and Enhanced O2 Release in the Capillary System", Biblthca. Haemat., No.46, pp.81-92 (1980); Gersonde, et al., "Enhancement of the O2 Release Capacity and of the Bohr-Effect of Human Red Blood Cells after Incorporation of Inositol Hexaphosphate by Fusion with Effector-Containing Lipid Vesicles", Origins of Cooperative Binding of Hemoglobin,(1982); 及びWeiner, "Right Shifting of Hb-O2 Dissociation in Viable Red Cells by Liposomal Technique," Biology of the Cell, Vol.47,(1983)。
【0019】
さらに、Nicolauらによる米国特許第4,192,869号、4,321,259号及び4,473,563号明細書には、流体を封入した脂質ベシクルを赤血球細胞膜と融合させ、ベシクルの内容物を赤血球内に入れる方法が記載されている。この方法では、イノシトール六リン酸などのアロステリックエフェクターを赤血球内に輸送することが可能であり、赤血球内ではIHPの結合定数がより大きいことから、IHPはヘモグロビンにおける結合部位においてDPCと置き換わる。
【0020】
リポソーム技術によれば、IHPはリン酸緩衝液中に飽和するまで溶解し、脂質ベシクルの混合物を溶液中に懸濁させる。次にこの懸濁液を超音波処理または注入工程に付し、次に遠心分離する。上部の懸濁液はIHPを含有する小さな脂質ベシクルを含み、次にこのベシクルを回収する。回収した懸濁液に赤血球を加えてインキュベートし、この間にIHPを含有する脂質ベシクルは赤血球膜と融合し、ベシクルの内容物が赤血球内部に入る。次に、修飾された赤血球を洗浄し、血漿に加えて製品を完成する。
【0021】
リポソーム技術に関する欠点は、赤血球内に取り込まれるIHP濃度の再現性が低いことと、処理後に赤血球がかなり溶血することである。さらに、操作が煩雑でかつ複雑であることから、商業化は実際的ではない。
【0022】
リポソーム技術に関する欠点を解決するための試みにおいて、赤血球を溶解し再封する方法が開発された。この方法は、下記の発表中に記載されている。Nicolau, et al., "Incorporation of Allosteric Effectors of Hemoglobin in Red Blood Cells. Physiologic Effects," Biblthca. Haemat., No.51,pp.92-107,(1985)。関連する、Roparsらによる米国特許第4,752,586号及び4,652,449号明細書にもまた、RBCとリポソームの相互作用を避けて、赤血球の制御溶解及び再封による、ヒトまたは動物の赤血球内に生物学的活性を有する物質を被包させる方法が記載されている
【0023】
この技術は、浸透圧パルス技術と類似した方法で機能する連続流動式透析システムとして、最も良く特徴づけられる。具体的には、少なくとも一つの透析要素の第一のコンパートメントには、赤血球の水性懸濁液が連続的に供給され、一方、透析要素の第二のコンパートメントは、赤血球懸濁液に関して低張である水溶液を含む。この低張液は赤血球を溶解させる。赤血球の溶解産物は次に、赤血球内に取り込ませる生物学的活性物質と接触させる。赤血球の膜を再封するために、赤血球の溶解産物の浸透圧及び/またはコロイド浸透圧を上昇させ、再封された赤血球の懸濁液が回収される。
【0024】
関連する、Goodrichらによる米国特許第4,874,690号及び5,043,261号明細書には、赤血球の凍結乾燥及び再構成を包含する関連技術が開示されている。赤血球を再構成する方法の一部として、イノシトール六リン酸を含む種々のポリアニオンの添加が記載されている。開示された方法による赤血球の処理によって活性が変化しない細胞が得られる。おそらく、IHPは再構成工程の間に細胞内に取り込まれ、それによってヘモグロビンの活性が維持される。
【0025】
Francoらによる米国特許第4,478,824号及び4,931,276号明細書には、細胞を効果的に溶解し再封することによって、イノシトール六リン酸を含む有効な薬剤を哺乳類の赤血球内に導入する、第二の関連する方法及び装置が記載されている。この方法は、「浸透圧パルス技術(osmotic pulse technique)」として記載されている。浸透圧パルス技術を実施する際には、封入された赤血球の供給物が、細胞の内外に迅速に拡散する化合物を含有する溶液中に懸濁されそしてインキュベートされ、その化合物の濃度は細胞内へ拡散させるに十分であって、その結果細胞の内容物は高張になる。次に、少なくとも一種の、導入される所望の薬剤の存在下で、高張細胞を含有する溶液を本質的に等張な水性媒質で希釈することによって、トランスメンブランイオン勾配が生成され、それによって、結果として細胞の膨張および細胞外膜の透過性の上昇を伴う水の細胞内への拡散を引き起こす。この「浸透圧パルス」は、水を細胞内に拡散させ、結果として、所望の薬剤に対する外側の細胞膜の透過性を上昇させる、細胞の膨張を引き起こす。膜の透過性の上昇は、少なくとも一種の薬剤を細胞内に輸送し化合物を細胞外に拡散させるのに十分な期間のみ維持される。
【0026】
浸透圧パルス技術の実施に使用され得るポリアニオンには、水溶性で、赤血球の脂質の外側の2層膜を破壊しない、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、リン酸化イノシトール、2,3−ジホスホグリセリン酸(DPG)、アデノシン三リン酸、ヘパリン、及びポリカルボン酸が含まれる。
【0027】
浸透圧パルス技術には、被包の収率が低いこと、再封が不完全であること、細胞内容物の損失、及び細胞の寿命が対応して短かくなることを含むいくつかの欠点がある。この技術は煩雑でかつ複雑であり、自動化には適さない。これらの理由から、浸透圧パルス技術
は、商業的にはほとんど成功していない。
【0028】
赤血球内に種々の生物学的活性物質を被包させるもう一つの方法は、エレクトロポレーションである。エレクトロポレーションは、Mouneimneらが記載したように、IHP赤血球を含む、種々の細胞型への異質分子の被包に用いられてきた("Stable rightward shifts of the oxyhemoglobin dissociation curve induced by encapsulation of inositol hexaphosphate in red blood cells using electroporation," FEBS, Vol.275, No. 1,2, pp.117-120 (1990))。
【0029】
エレクトロポレーションの工程は、細胞またはベシクルを含有する液体細胞懸濁液を横切る電界パルスの適用による、細胞膜またはあらゆるベシクルにおける孔の形成を包含する。このポレーション工程では、細胞は液体媒質中に懸濁され、次に電界パルスに付される。この媒質は、電解質、非電解質、または電解質と非電解質の混合物であってもよい。懸濁液に適用される電界強度及びパルスの長さ(電界が細胞懸濁液に適用される時間)は、細胞のタイプによって変化する。細胞の外膜に孔を形成するために、電界は、孔を形成するのに十分な長さの期間、細胞膜を横切って特定の電位を形成するような時間的長さ及び電圧で適用しなければならない。
【0030】
エレクトロポレーションの工程では、4つの現象が役割を果たすと思われる。第一は、絶縁破壊の現象である。絶縁破壊は、細胞膜に小さな孔または穴を形成する高電界の能力を意味する。一度孔が形成されると、細胞に生物学的活性物質を封入することができる。第二の現象は、誘電束効果(dielectric bunching effect)であり、これは均一な電界内にベシクルを配置することによって作られる相互自己引力(mutual self attraction)を意味する。第三の現象は、ベシクルの融合である。ベシクル融合は、生物学的ベシクルの膜の傾向を表し、この膜は絶縁破壊によって孔が形成されており、相互の絶縁破壊部位が接近するとベシクル同士が結合する。第四の現象は、高周波数の電界の存在下で、細胞が軸の一方向に沿って並ぶ傾向である。このように、エレクトロポレーションは、ベシクルの回転前整列(rotational prealignment)、ベシクル束(vesicle bunching)及び比誘電率、またはベシクルの、細胞ベシクルを封入する目的及び封入しない目的の使用に関する。
【0031】
エレクトロポレーションは、赤血球内へヘモグロビンのアロステリックエフェクターを取り込む目的において有効に用いられてきた。Mouneimne,Yらの論文("Stable Rightward
Shifts of Oxyhemoglobin Disassociation Constant Induced by Encapsulation of Inositol Hexaphosphate in Red Blood Cells Using Electroporation", FEBS,Vol.275, No.1,2, pages 11-120(November 1990))において、Mouneimneらは、IHPを取り込んだ、処理をした赤血球において、ヘモグロビン−酸素の解離が右にシフトされ得ることを報告した。IHPを封入した後24時間及び48時間での測定によって、赤血球の再封が永続的であることを示す安定したP50値が得られた。さらには、イノシトール六リン酸を封入した赤血球の半減期が、通常の11日間であることが示された。しかしながら、Mouneimneらが得た結果では、再注入された細胞の約20%が注入後の最初の24時間以内に失われたことが示されている。
【0032】
先行技術に開示されたエレクトロポレーション法は、大容量のサンプルの処理や、高電荷または反復的な電荷の使用には適さない。さらには、それらの方法は、連続的または「流動式(flow)」のエレクトロポレーションチャンバーでの使用には適さない。入手可能なエレクトロポレーションチャンバーは、固定使用のためだけに設計されている。即ち、バッチでのサンプルの処理である。「固定(static)」チャンバーを連続使用すると、チャンバーがオーバーヒートし、細胞溶解が増加する。さらには、既存の技術では、血液の酸素運搬能力を劇的に変化させるのに、処理された細胞の充分なパーセンテージで充分な量のIHPを取り込ませることができない。加えて、先行技術の方法は、精巧な設備を必要と
し、治療間際の患者の赤血球を封入するのには適さない。このように、この方法は多くの時間を必要とし、商業的スケールでの使用には適さない。
【0033】
必要とされるのは、細胞の完全性及び生物学的機能を保ちながら、赤血球内に生物学的活性物質を被包させる、簡単で効率的かつ迅速な方法である。生物学的に変化させた血液細胞は治療に適用される可能性があることから、無傷の赤血球内のヘモグロビンのアロステリックエフェクターを含む生物学的活性物質を被包させる、より簡単、より有効で完全な方法の必要性が考えられる。
【0034】
ヘモグロビンに結合する酸素の組織輸送を増加させる治療が有益である臨床状態は多数存在する。例えば、今日の米国における主要な死因は心血管系疾患である。うっ血性心不全、心筋梗塞、卒中(stroke)、間欠性跛行、及び鎌状赤血球貧血を含む、多様な心血管系疾患の急性症状及び病理は、組織を浸す流体中の酸素の供給が不十分であることから起こる。同様に、出血、外傷性損傷、または手術の後の急性の血液損失によって、生体器官への酸素供給が減少する。酸素がないと、心臓から遠い組織、及び心臓そのものまでもが、その正常な機能を維持するために充分なエネルギーを産生することができない。酸素剥奪の結果は、組織死及び器官不全である。
【0035】
米国民は、運動、適当な食事習慣、及びアルコール消費の節制など、心疾患を軽減するために必要とされる予防的な方法に以前から注目していたが、死亡は驚くべき割合で発生し続けている。死亡が、組織の破壊及び/または器官不全を引き起こす酸素剥奪によって起こるため、心疾患の生命にかかわる結果を軽減する一つのアプローチは、急性の負荷がかかっている間、組織の酸素供給を増やすことである。同じアプローチは、出血や、うっ血性心不全などの慢性低酸素性疾患を罹患する患者にも適している。
【0036】
酸素の組織への輸送の増加が有効であるもう一つの状態が貧血である。相当な割合の入院患者は、血液の赤血球またはヘモグロビンの量が不十分であることから、貧血や低「クリット(crit)」を経験する。このことによって組織への酸素供給が不十分となって、合併症が発症する。典型的には、医師は患者に赤血球製剤を数ユニット輸血することによって、この状態を一時的に補正することができる。
【0037】
血液の酸素供給を増強することによって、より多くの症例で異種輸血の数が削減され、自己血液の輸血も可能になる。貧血の治療または血液損失の置換に用いられる現在の方法は、ヒト全血の輸血である。米国では毎年、3〜4百万人の患者が手術または治療時に輸血を受けていると見積もられている。より時間のある状況では、ドナーの血液すなわち異種の血液の使用を完全に回避して、代わりに自己血液を使用するほうが有利である。
【0038】
自己血液の使用は、手術に先立って採血し保存され得る血液の量によって制限されることが多い。典型的には、手術患者は、手術前に充分な量の血液を採取する充分な時間がない。外科医は、血液を数ユニット入手可能にしたいと考える。血液採取にはユニット毎に数週間の間隔が必要であり、手術前2週間以内は採血できないことから、充分量の供給血液を採血することはしばしば不可能である。IHPで自己血液を処理することによって、必要とされる血液量は少なくなり、異種の血液の輸血を完全に回避することが可能となる。
【0039】
IHP処置を行った赤血球は未処置の赤血球の2〜3倍量の酸素を輸送するので、多くの場合、医師はIHP処置を行った赤血球のより少ないユニット数しか輸血を必要としないであろう。このことは、患者の異種の血液との接触を少なくし、血液提供者由来のウイルス性疾患との接触の程度を低減し、輸血に派生する免疫機能障害を最小限にする。より効率的な赤血球を注入する能力は、患者の血液容量が過剰である場合においても有利であ
る。酸素輸送が足りない、他のより重症な症状においては、患者の組織の酸素供給を迅速に改善する能力によって生命が救われている。
【0040】
組織への酸素供給を増強する方法には医療への応用の可能性があることは明らかであるが、現在は、ヘモグロビンに結合する酸素の組織輸送を増加させる臨床的に利用可能な方法はない。DPGまたはDPGの前駆体である化合物を使用した実験動物において、一過性の、6〜12時間の酸素付着の増加が報告されている。しかし、インビボではDPG合成が自然に調節されること及びその生物学的半減期が相対的に短いことから、DPG濃度及び組織PO2の上昇期間は制限され、従ってDPGの治療における有用性が制限される。
【0041】
必要とされるのは、赤血球を傷つけることなく、赤血球内にIHPなどの生物学的活性物質を被包させる、簡単で効率的かつ迅速な方法である。
【特許文献1】米国特許第4,192,869号明細書
【特許文献2】米国特許第4,321,259号明細書
【特許文献3】米国特許第4,473,563号明細書
【特許文献4】米国特許第4,752,586号明細書
【特許文献5】米国特許第4,652,449号明細書
【特許文献6】米国特許第4,874,690号明細書
【特許文献7】米国特許第5,043,261号明細書
【特許文献8】米国特許第4,478,824号明細書
【特許文献9】米国特許第4,931,276号明細書
【非特許文献1】R.E.Benesch et al.,Biochemistry,Vol.16,pp.2594-2597(1977)
【非特許文献2】J.Biol.Chem.,Vol.250,pp.7093-7098(1975)
【非特許文献3】Gersonde, et al., "Modification of the Oxygen Affinity of Intracellular Haemoglobin by Incorporation of Polyphosphates into Intact Red Blood Cells and Enhanced O2 Release in the Capillary System", Biblthca. Haemat., No.46, pp.81-92 (1980)
【非特許文献4】Gersonde, et al., "Enhancement of the O2 Release Capacity and of the Bohr-Effect of Human Red Blood Cells after Incorporation of Inositol Hexaphosphate by Fusion with Effector-Containing Lipid Vesicles", Origins of Cooperative Binding of Hemoglobin,(1982)
【非特許文献5】Weiner, "Right Shifting of Hb-O2 Dissociation in Viable Red Cells by Liposomal Technique," Biology of the Cell, Vol.47,(1983)
【非特許文献6】Nicolau, et al., "Incorporation of Allosteric Effectors of Hemoglobin in Red Blood Cells. Physiologic Effects," Biblthca. Haemat., No.51,pp.92-107,(1985)
【非特許文献7】"Stable rightward shifts of the oxyhemoglobin dissociation curve induced by encapsulation of inositol hexaphosphate in red blood cells using electroporation," FEBS, Vol.275, No. 1,2, pp.117-120 (1990))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
発明の概要
本発明は、種々の細胞集団内に生物学的活性物質を被包させる方法及び装置に関する。さらに具体的には、本発明は、赤血球内にイノシトール六リン酸などの化合物または組成物を被包させるための、自動化された自給の流動式装置の一部を形成し得る、エレクトロポレーションチャンバーを提供するものであって、それによって、ヘモグロビンの酸素に対する親和性を低下させ、赤血球による組織への酸素の輸送を増強する。被包は好ましく
はエレクトロポレーションによって達成されるが、本発明の実施においては、被包の他の方法が用いられることも可能であることが予想される。本発明の、エレクトロポレーションチャンバーを包含する方法及び装置は、種々の細胞集団内に様々な生物学的活性物質を被包させるのに同等に適している。
【0043】
本発明の装置及び方法は、細胞及び脂質ベシクル内に種々の生物学的活性物質を取り込ませるのに適している。本発明の方法、装置及びチャンバーは、製造されるかまたは天然に存在するベシクル中に化合物または生物学的活性物質を導入するために使用することができる。例えば、本発明の装置、方法、及びチャンバーは、赤血球中にIHPを導入するために使用することができる。
【0044】
本発明によれば、エレクトロポレーションによる赤血球内へのイノシトール六リン酸の被包によって、細胞の寿命、ATP値、K+値、または正常のレオロジー的能力に影響を与えることなく、酸素に対するヘモグロビンの親和性が著しく減少する。加えて、ボーア効果は、O2結合曲線が右にシフトする以外は変化しない。赤血球の酸素親和性の低下によって、赤血球が結合する酸素を解離する能力が上がり、従って組織への酸素供給が改善される。赤血球の酸素放出能の増強によって、心拍出量の低下、動静脈差の増加、及び組織の酸素供給の改善などの、著しい生理学的効果がもたらされる。
【0045】
本発明に従って調製される、修飾された赤血球は酸素放出能が改善されており、下記に示したような状況において使用することができる。
1.高度の高い所など、酸素分圧の低い条件下、
2.気腫の発症など、肺の酸素交換面が減少している場合、
3.肺炎または喘息の発症など、肺において酸素拡散に対する抵抗が増加している場合、
4.赤血球減少症または貧血の発症など、赤血球の酸素輸送能が低下している場合、または動静脈シャントを使用している場合、
5.動脈硬化、血栓塞栓症、組織の梗塞、うっ血性心不全、心機能不全または虚血などの、血液循環障害を治療するため、
6.ヘモグロビンの突然変異、ヘモグロビン鎖のN末端アミノ酸の化学的修飾、または赤血球の酵素欠損などの、ヘモグロビンの酸素親和性が高い状態を治療するため、
7.酸素供給を改善することによって、解毒過程を加速するため、
8.保存血液の酸素親和性を低下させるため、または
9.種々のガン治療の有効性を改善するため。
【0046】
本発明の方法及び装置によれば、血液中の酸素の効率的使用の改善に貢献する、修飾された赤血球を製造することが可能である。この修飾された赤血球は、赤血球膜のエレクトロポレーションによって、IHPなどのアロステリックエフェクターを取り込ませることによって得られる。
【0047】
赤血球内へのヘモグロビンのアロステリックエフェクターの被包を含む、本発明の方法による細胞内への生物学的活性物質の取り込みは、自動化された、フローエレクトロポレーション装置によって、体外で行われる。簡単に述べると、細胞懸濁液を、フローエレクトロポレーション装置の分離洗浄槽チャンバーに導入する。細胞を懸濁液から分離し、洗浄し、細胞内に導入する生物学的活性物質の溶液中に再懸濁させる。この懸濁液をエレクトロポレーションチャンバーに導入し、次にインキュベートする。エレクトロポレーション及びインキュベーションの後、細胞を洗浄し分離する。被包されていない生物学的活性物質が全て除去されていることを確認するために、不純物混入のチェックを任意に実施する。次に、細胞を保存または患者へ再導入するために調製する。
【0048】
本発明に従って、また好ましい実施態様に関して、血液を患者から採取し、採取した血液から赤血球を分離し、アロステリックエフェクターを取り込ませることによって赤血球を修飾し、そして修飾された赤血球と血漿を再構成する。この方法では、IHPで修飾された赤血球を含有する血液を調製し保存することが可能である。
【0049】
本発明の装置は、細胞内に生物学的活性物質を被包させるための改良された方法を提供し、自給式であり、従って無菌の装置、短縮された時間内に大容量の細胞を処理できる装置、不純物混入の検出、冷却及びインキュベーションエレメントが改良された装置、完全に自動化され、一度装置にサンプルを導入したら技術者の手動のコントロールを必要としない装置を包含する。
【0050】
このように、本発明の目的は、自動化された連続流動式(continuous flow)の被包装置を提供することである。
【0051】
本発明のさらなる目的は、自動化された連続流動式エレクトロポレーション装置を提供することである。
【0052】
本発明のさらなる目的は、封入された細胞またはベシクルの均一な集団を製造する連続流動式の被包装置を提供することである。
【0053】
本発明の別の目的は、封入された細胞またはベシクルの均一な集団を製造する連続流動式エレクトロポレーション装置を提供することである。
【0054】
本発明の別の目的は、細胞内に生物学的活性物質を被包させる無菌的で非発熱性の方法を提供することである。
【0055】
本発明の別の目的は、エレクトロポレーションの後の、修飾された細胞またはベシクルの溶解を最小限にするために、エレクトロポレーションに続いて細胞またはベシクルを安定的に再封する方法及び装置を提供することである。
【0056】
本発明の別の目的は、全ての外因性の被包されていない生物学的活性物質が除去された、修飾された細胞集団を製造する、流動式の被包装置を提供することである。
【0057】
本発明の別の目的は、全ての外因性の被包されていない生物学的活性物質が除去された、修飾された細胞集団を製造する、エレクトロポレーション装置を提供することである。
【0058】
本発明の別の目的は、細胞またはベシクルの集団内に、生物学的活性物質を連続的に被包させる方法及び装置を提供することである。
【0059】
本発明のさらなる目的は、上記に規定した目的、特徴及び利点を1サイクルで達成する方法及び装置を提供することである。
【0060】
本発明の別の目的は、連続流動式エレクトロポレーションチャンバーを提供することである。
【0061】
本発明の別の目的は、現在利用可能な方法よりも効率的な、細胞内に生物学的活性物質を被包させる改良された方法を提供することである。
【0062】
本発明のさらなる目的は、酸素供給の欠如または減少から生じる疾患及び/または疾病状態の治療に適している組成物を提供することである。
【0063】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、図面及び添付の請求の範囲と共に、下記の発明の好ましい実施態様の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0064】
発明の詳細な説明
本発明は、赤血球などの細胞内に、イノシトール六リン酸などのアロステリックな化合物または組成物を被包させる、自動化された自給の流動式装置を提供する。一つの実施態様において、本発明の装置は、プラズマフォレーシス(plasmaphoresis)装置の特徴とフローエレクトロポレーション装置の特徴とを組み合わせ、自動化された自給のフローエレクトロポレーション装置を構成する。本発明は、さらには、固定(static)条件よりもむしろ流動(flow)条件下でチャンバーを使用できる新規なフローエレクトロポレーションチャンバーを含む。本発明のエレクトロポレーションチャンバーを含む方法及び装置は、多様な細胞集団内に様々な生物学的活性物質を被包させるために使用できると考えられる。
【0065】
加えて、本発明は、酸素の組織への輸送の増加を要求しそれが有益である疾患の治療に特に有用な細胞を作る物理的性質を有する修飾された細胞集団を提供する。本発明の方法に従って、不純物の混入を低減し、被包後に溶解する傾向を低下させた、IHPを封入した赤血球の均一な集団を得ることができる。処理された赤血球は、血液循環において正常な寿命を示す。本発明を用いて、治療が必要な患者の赤血球は、迅速に封入されて患者の血液循環に戻すことができる。
【0066】
1993年3月23日に出願された米国特許出願番号第035,467の一部継続出願である、1994年3月23日に出願された関連する国際出願番号PCT/US94/03189は、引用により本明細書に含める。
【0067】
本発明の装置の操作方法は、装置の好ましい使用に関して、すなわち赤血球中へのヘモグロビンのアロステリックエフェクターの被包に関して、下記に述べる。イノシトール六リン酸は、本発明で使用される好ましいアロステリックエフェクターである。イノシトール五リン酸、イノシトール四リン酸、イノシトール三リン酸、イノシトール二リン酸及びジホスファチジルイノシトール二リン酸などの他の糖リン酸もまた、使用することができる。他の好適なアロステリックエフェクターとしては、ヌクレオチド三リン酸類、ヌクレオチド二リン酸類、ヌクレオチド一リン酸類、及びアルコールリン酸エステル類などのポリリン酸類が含まれる。例えば「チューリッヒ(Zurich)」ヘモグロビンなどの、ヘモグロビンのいくつかの突然変異型の場合、ポリカルボン酸類などの有機アニオン類をアロステリックエフェクターとして使用することができる。さらに、アロステリックエフェクターとして、ヘキサシアノ鉄酸塩、リン酸塩または塩化物などの無機アニオン類を使用することが可能である。
【発明の効果】
【0068】
本発明によってイノシトール六リン酸を封入した赤血球は、広範囲の疾患及び疾病状態の治療に使用することができる。本発明によって製造されたIHPを封入した赤血球は、心臓発作の患者に投与することができ、それによって、虚血性の心臓組織への酸素輸送を増加させ、同時に心拍出量を減少させる。本発明によって製造されるIHPを封入した赤血球は、「出血性」貧血、手術の合併症、卒中、糖尿病、鎌状赤血球疾患、熱傷、間欠性跛行、気腫、低体温症、末梢血管疾患、うっ血性心不全、狭心症、一過性虚血性疾患、汎発性血管内凝固症候群、成人呼吸促進症候群(ARDS)及び嚢胞性線維症などの、しかしこれらに制限されない、あらゆる虚血疾患の治療にも使用することができる。本発明の方法に従って調製される組成物の医療への適用の詳細な説明も、下記に示す。
【0069】
連続流動式被包装置
本発明の装置の操作方法について、装置の好ましい使用について、すなわちエレクトロポレーションによる赤血球内へのヘモグロビンのアロステリックエフェクターの被包について下記に述べる。他の細胞集団またはベシクル、及び他の生物学的活性物質に適応させるために、装置を改変することが可能であることが理解される。加えて、エレクトロポレーション以外の被包方法を使用するために、装置を改変することが可能である。
【0070】
簡単に述べると、本発明に従って、連続流動式被包装置に血液サンプルを導入する。赤血球が回収されるのであれば、血液は、患者から直接採血しても、前もって採血した血液であってもよい。初めに、血液を、赤血球、血漿及び白血球、及び老廃物に分離する。老廃物には、遠心分離後の上澄中に残存する希釈物及び種々の血液の溶質が含まれる。老廃物は装置内部の廃棄物貯蔵槽に蓄える。血漿及び白血球もまた、システム内部の貯蔵槽に保持し、一方赤血球は被包される物質と混合する。次に、赤血球の懸濁液をエレクトロポレーションに付す。エレクトロポレーションに続いて、細胞を再封する条件下で赤血球をインキュベートする。次に、外因性の被包されていない生物学的活性物質を除くために、赤血球を処理及び洗浄する。細胞が処理されたら、被包された物質を含有する赤血球は、血漿及び白血球と任意に再構成することができる。次に、再構成された血液は直接患者に戻してもよく、または後に使用するために保存することもできる。個々の段階として述べたが、この工程は本質的に連続的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明の第一の実施態様を図1を参照して説明する。図1は本発明の連続流動式被包装置の構造を図式的に示すものである。
【0072】
本発明に従って、多量の全血をエレクトロポレーションシステム5の供給口11に入れる。血液サンプルは、任意に、患者からエレクトロポレーションシステム5に直接採血してもよく、または血液をシステム5に導入する前に採血して貯蔵していてもよい。バルブ12を開けて、サンプルをシステム5に入れる。同時に、バルブ25を開け、ポンプ22を使用して抗凝固剤貯蔵槽27から抗凝固剤を加える。好適な抗凝固剤はヘパリンであるが、他の抗凝固剤を使用することもできる。好ましい抗凝固剤はACDである。バルブ15及び36も開けて、ポンプ40を使用する。抗凝固剤と全血の混合物は、フィルター18及び装置を通る流れをモニターする圧力評価システム19を通り、ポンプ40が使用されると始動する血液分離洗浄槽44に回収される。センサーは血液分離洗浄槽44が赤血球で一杯になるとそれを示す。血液分離洗浄槽が一杯になると、血液の供給は停止する。血液成分の分離を含む段階では、ヘモネティクスコーポレーション(Haemonetics Corporation)(米国、マサチューセッツ州、Braintree)によって製造されたプラズマフォレーシス装置などのプラズマフォレーシス装置を使用することができる。
【0073】
上記で説明したように、ポンプ40が時計回りに稼動すると、血液分離洗浄槽44が始動し、抗凝固剤と全血の懸濁液が遠心分離されて、血漿、白血球、赤血球、及び老廃物に分離される。バルブ87を開けて、血漿と白血球を血漿貯蔵槽89に入れる。
【0074】
次に、任意に、及び装置で処理される細胞集団によって、血液分離洗浄槽44内に保持される細胞を洗浄する。バルブ33、15及び36を開けて、赤血球を含有する血液分離洗浄槽44に希釈剤貯蔵槽30から生理食塩水緩衝液を加える。ポンプ40はなお稼動している。次に赤血球を洗浄し、遠心分離する。好ましい生理食塩水緩衝液は、0.9%の塩化ナトリウム溶液であるが、赤血球を希釈・洗浄するために他の生理学的に等張な緩衝液を使用することもできる。洗浄工程の間、バルブ54を開け、不要物を廃棄物貯蔵槽57に入れる。再び、不要物は廃棄物貯蔵槽57に貯蔵し、赤血球は血液洗浄分離槽44に保持する。洗浄工程は必要ならば繰り返し行う。
【0075】
様々なパルスの長さ及び電界強度を用いて実施された実験を通して、矩形パルス(square pulse)ではヒト赤血球中へのIHPの被包効率がより小さくなることがわかっている。細胞膜に大きな孔を形成しても、細胞外のIHPを赤血球中に入れるには不十分であると考えられる。このことから、孔を形成した後、細胞内にIHPを拡散させるよりも複雑な工程が示唆される。電気パルスが2つの仕事を遂行しなければならないことが提案される。第一には細胞膜に孔を作ることであり、第二にはそれらの孔を通して赤血球中にIHPを電気泳動的に能動的に移動させることである。これは、高電圧の矩形パルス(2.13kV/cm、2ms)と、その直後により低電圧の指数曲線型のパルス(exponential pulse)(1.5〜1.75kV/cm、5ms)を使用することによって達成され、赤血球中へのIHPの被包が、通常の指数曲線型のパルスを使用するプロトコルによる被包の50%まで増加する。指数曲線型のパルスそれ自体は、エレクトロポレーションのしきい値よりはるかに小さい。両方の仕事、即ち、孔の形成と電気泳動的移動は、指数曲線型のパルスの使用で最も効率的に達成することができる。もう一つの実施態様は、細胞を最初に高電圧の矩形パルスに付し、次に、IHPを赤血球中に進める傾向がある一連のより低電圧のパルスに付すことで、より効率的にIHPを細胞内へ封入する。使用に際して、本発明のエレクトロポレーションチャンバーを通って移動する細胞は、一連のパルスの連続(pulse train)に付される。パルスの連続は、80〜512パルスであり、好ましいパルス数は312パルスである。次に極性が変化し、細胞を第二のパルスの連続に適用する。第三のパルスの連続が適用されると、極性はもう一度変化する。エレクトロポレーションチャンバーの長さを移動する間に、使用されるあらゆる細胞に3〜5つのパルスの連続を適用し、それぞれのパルスの連続の間に極性が反転する。
【0076】
赤血球を分離した後、ポンプ40を反転し、ポンプ22を停止し、バルブ12、15、33、36、25、87及び54を閉め、バルブ97及び64を開ける。
【0077】
IHP貯蔵槽50からIHP溶液をポンプでくみ出し、同時に赤血球を血液分離洗浄槽44からポンプでくみ出して冷却コイル68に送る。赤血球及びIHP溶液は、装置のチューブ内の接合部67で混合され、次にポンプで冷却コイル68を通過する。本発明の好ましい実施態様において、下記に詳細を説明するように、IHP溶液と赤血球は、冷却コイル68を通過する前に、分離洗浄槽44中で混合してもよい。
【0078】
溶液中のIHPの好ましい濃度は、約10〜100mMであり、より好ましくは約22.5〜50mMであり、最も好ましくは35mMである。IHP溶液中の塩化カリウムの好ましい濃度は、約10〜5mMである。塩化マグネシウムの好ましい濃度は、約2〜0.5mMである。IHP溶液中のショ糖の好ましい濃度は、約67.5〜270mMである。ショ糖の代わりに他の糖類またはポリマーを使用することができることは理解されるべきである。
【0079】
本発明に使用される溶液は、抵抗を増加させる流体である。IHP溶液は抵抗率が高く、最小限の電解質を含有することが重要である。オールドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)またはマトレアケミカルカンパニー(Matrea Chemical Company)のIHPは、塩化ナトリウム及び最小限の他の電解質を全く含まないので、溶液の抵抗率を著しく下げることはない。溶液の容量ミリオスモル濃度(milliosmolarity)は、約300〜500であることが望ましい。抵抗率は、約87〜185Ω・cmであることが望ましい。伝導率は、約4〜8nS/cmであることが望ましい。実用塩分(practical salinity)は、約4〜9pptであることが望ましく、塩化ナトリウム当量は、約4.5〜9.0pptであることが望ましい。
【0080】
懸濁液のヘマトクリットは、好ましくは約30〜80であり、最も好ましくは約40で
ある。赤血球の反応から、固定セルにおいて、高電圧は800Vを越えないのが望ましいことが測定され(そのギャップは0.4cm)、これは2kv/cmに対応する。フロー(流動)セルに対しては、ギャップは0.3cmであり、セルを通過する電圧は600V(+/−300V)に制限される。種々のエレクトロポレーション流体組成物が多数試験されている。表Aは、6例のサンプルとその特性を示す。Eの溶液は、エレクトロポレーション溶液として好ましい。ポンプ40は、赤血球とIPH溶液の両方をくみ上げるために設計され、冷却コイル68に送られる最終的なヘマトクリットを前もって測定することができるように調整することができる。
【0081】
【表1】

【0082】
混合した後、赤血球−IHP懸濁液は、次にポンプで冷却コイル68に送られる。冷却は、水浴または熱電気による冷却システムを使用して行うこともできる。例えば、冷却コイル68は、冷却貯蔵槽69内の冷却浴に浸す。赤血球−IHP懸濁液が冷却コイル68を通過すると、懸濁液は、約1〜12℃、好ましくは約4℃に冷却される。赤血球を冷却することで、エレクトロポレーション工程の間、細胞膜に形成された孔の存続が確実になる。冷却コイルを使用することで、冷却エレメントと接触するサンプルの表面積が増加し、冷却速度が速まる。任意に、冷却コイルを熱電気の熱ポンプで取り囲むことができる。
【0083】
いくつかの適用では、エレクトロポレーションの前に、細胞懸濁液を加熱する必要がある。そのような場合、冷却コイル68を加熱コイルと置き換える。赤血球が耐えられる最
高温度は約37℃である。
【0084】
熱電気の熱ポンプは、特定の領域から熱エネルギーを抽出することによって働き、それによって温度を下げ、より高温の「ヒートシンク」領域への熱エネルギーを遮断する。低温の接合部では、電子がp型の半導体エレメントにおける低エネルギーレベルから、n型の半導体エレメントにおけるより高いエネルギーレベルに移動する時に、エネルギーが電子に吸収される。電源は、電子にシステムを通過させるためにエネルギーを供給する。高温の接合部では、電子が高エネルギーレベルエレメント(n型)からより低いエネルギーレベルエレメント(p型)へ移動する時に、エネルギーがヒートシンクに追い出される。
【0085】
熱電気のエレメントは、全体として固体の状態であり、可動する機械的部品がないか、蒸気サイクル装置(vapor-cycle device)のように作動する流体を必要としない。しかしながら、熱電気の熱ポンプは、フレオンによる蒸気圧縮または吸収冷蔵装置と同じ冷却機能を発揮する。熱電気の熱ポンプは、信頼性が高く、サイズ及び容量が小さく、低コストであり、軽く、他の多くの冷却装置よりも本質的に安全で、かつ正確な温度制御が可能である。
【0086】
本発明で使用される好ましい熱電気の熱ポンプは、米国ニュージャージー州トレントン(Trenton)のメルコールマテリアルズエレクトロニックプロダクツコーポレーション(MELCOR Materials Electronic Products Corp.)の製品である。熱電対は、高性能の結晶性半導体材料で作られる。半導体材料は、テルル化ビスマス、ビスマス、テルル、セレン及びアンチモンの四元アロイであり、不純物を添加して処理することによって特性を有する配向した多結晶質の半導体が得られる。電気的に直列にかつ熱的に並列に接続した対は、モジュール内に集積される。モジュールはめっきしたセラミックプレートの間に入れ、圧縮において機械的強度が高く、電気的絶縁と熱伝導が最適となる。モジュールは、熱伝達効果を高めるために並行に配置することができ、また、大きな温度差を達成するために多段階に縦続して積み重ねることもできる。電流が熱ポンプを通ると、熱電対を横切る最大定格70℃以上の温度差が生じる。
【0087】
冷却した後、赤血球−IHP懸濁液を、パルスジェネレーター75から赤血球−IHP懸濁液に電気パルスが与えられるエレクトロポレーションチャンバー72に入れ、赤血球の細胞膜に開口部を形成する。任意に、チャンバー72が赤血球で一杯になるときに、パルスジェネレーター75をオンにする自動検出装置を設置する。チャンバー72が被包されていない細胞で一杯になる度に、電気パルスが懸濁液に適用される。従来のエレクトロポレーションチャンバーを、装置の操作が固定式、即ち細胞を不連続の一回のバッチで処理するときには、使用してもよい。本発明の好ましい実施態様では、フローエレクトロポレーションチャンバーを使用する。一つの実施態様では、フローエレクトロポレーションチャンバー72は透明なポリ塩化ビニルで作成され、7mmの間隔を置いた二本の対置する電極を含む。電極間の距離は、流れの容量及び電界強度に依存して変化する。好ましくは、フローエレクトロポレーションチャンバー72は使い捨てである。エレクトロポレーションチャンバーはまた、ポリソルフォン(polysolfone)で作成してもよく、これはオートクレーブ滅菌などのいくつかの滅菌処理を行うのに好ましい。フローエレクトロポレーションチャンバーの構造及び作成の詳細な説明は下記に示す。
【0088】
赤血球−IHP懸濁液は、エレクトロポレーションチャンバー72の二つの電極の間を通過する。未処置の細胞の懸濁液がチャンバー72に入ると、1〜3KV/cmの電界が形成され、1.8mlのフローチャンバーでは1〜4ミリ秒間、好ましくは2ミリ秒間、持続する。好ましくは、IHP−赤血球懸濁液は、パルス当たり約2600〜3200V/cmの電界強度で、容量当たり3回の高圧パルスに付される。細胞膜を横切る電流のパルスによって、細胞膜に電気的誘電破壊を引き起こし、膜に孔を形成する。次にIHPは
それらの孔を通って細胞内に拡散する。
【0089】
エレクトロポレーションの後、赤血球−IHP懸濁液は、インキュベーションチャンバー78に入れ、室温で約15〜120分間、好ましくは30〜60分間インキュベートする。任意に、赤血球−IHP懸濁液は、約37℃で約5分間、そして室温で少なくとも15分間インキュベートする。インキュベーションチャンバー78は、任意に、加熱手段80で囲んでもよい。例えば、加熱手段80は、水浴または熱電気の熱ポンプであってもよい。
【0090】
任意に、インキュベーター78は、赤血球の再封及び再構成を補助する再封緩衝液を含む。再封緩衝液の好ましい組成を表Bに示す。
【0091】
【表2】

【0092】
本発明の好ましい実施態様では、再封緩衝液は使用しない。
インキュベーションの後、バルブ51を開け、ポンプ40を稼動させ、赤血球−IHP懸濁液をインキュベーションチャンバー78から血液分離洗浄槽44に戻す。過剰のIHP溶液は、遠心分離によって赤血球懸濁液から除去する。不要になったIHP溶液は、廃棄物貯蔵槽57に送る。次に、バルブ33、15及び36を開けて、多量の希釈剤を血液分離洗浄槽44に加える。本発明において使用することができる希釈剤を表Cに示す。
【0093】
【表3】

【0094】
次に赤血球−IHP懸濁液を遠心分離し、上澄はバルブ54を通して廃棄物貯蔵槽57に捨て、赤血球は血液分離洗浄槽44中に残す。希釈剤貯蔵槽30から食塩水緩衝液を上記の赤血球に加える。細胞を洗浄し、遠心分離の後、上澄を捨てる。洗浄工程は必要ならば繰り返し行う。
【0095】
任意に、分離洗浄槽44から不要物を除去する時に、廃液中の遊離のIHPを検出するために不要物を不純物混入検出器46に通し、修飾された赤血球から外因性の被包されていないIHPが除去されたことを確認する。不純物混入検出システムは、洗浄緩衝液中の光学的変化に基づくものである。修飾された赤血球を洗浄し、遠心分離した後、上澄は廃棄物貯蔵槽57に蓄える前に不純物混入検出器46に通す。もしも外因性の被包されていないIHPが洗浄緩衝液中に残っていると、廃棄される溶液は濁る。濁度はIHPのカルシウムとの反応によるものであって、カルシウムは洗浄緩衝液の成分である。不純物混入検出器46は、光学的検出システムを使用する。好ましくは、光源はLEDであり、検出器はフォトダイオードである。フォトダイオードの電圧差が洗浄溶液中のIHPの量を示す。不純物混入検出器46は任意である。
【0096】
洗浄の後、IHP−赤血球産物は任意に、貯蔵槽89に保持されていた血漿及び白血球で再構成する。処理された赤血球は、再注入バッグ内の、保存媒質または患者の自己血漿中に回収してもよい。
【0097】
得られたIHPを封入した赤血球は、患者に直接投与することができ、または、後で使用するために細胞を貯蔵することもできる。赤血球中のIHPは、通常の保存期間内では放出されない。
【0098】
本発明の好ましい実施態様の一例を図2を参照して説明する。図2は本発明の連続流動式被包装置の構造を図式的に示すものである。再び、装置の操作方法に関し、装置の好ましい使用について、すなわちエレクトロポレーションによる赤血球内へのヘモグロビンのアロステリックエフェクターの被包について述べる。
【0099】
他の細胞集団またはベシクル、及び他の生物学的活性物質に適応させるために、装置を改変することが可能であることが理解される。加えて、他の被包方法を包含するために、
装置を改変することが可能である。
【0100】
本発明に従って、全血のサンプルをエレクトロポレーションシステム10の供給口11に入れる。バルブ12を開けて、サンプルをシステム10に入れる。同時に、バルブ25を開け、ポンプ22を使用して抗凝固剤貯蔵槽27から抗凝固剤を加える。バルブ15及び36も開けて、ポンプ40を使用する。
【0101】
抗凝固剤と全血の混合物は、フィルター18及び圧力評価システム19を通り、ポンプ40が使用されると始動する血液分離洗浄槽44に回収される。センサーは血液分離洗浄槽44が赤血球で一杯になるとそれを示す。
【0102】
ポンプ40が時計回りに稼動すると、血液分離洗浄槽44が始動し、抗凝固剤と全血の懸濁液が遠心分離されて、血漿、白血球、赤血球、及び老廃物に分離される。バルブ87を開けて、血漿と白血球を血漿貯蔵槽89に入れる。
【0103】
次に、任意に、分離洗浄槽44内に保持される細胞を洗浄し、遠心分離する。
【0104】
バルブ33、35、15及び36を開けて、赤血球を含有する血液分離洗浄槽44に、希釈剤貯蔵槽30から生理食塩水緩衝液を加える。バルブ12を閉じ、ポンプ40を稼動させておく。
【0105】
洗浄工程の間、バルブ54を開け、不要物を廃棄物貯蔵槽57に入れる。再び、不要物は廃棄物貯蔵槽57に貯蔵し、赤血球は血液洗浄分離槽44に保持する。洗浄工程は必要ならば繰り返し行う。不純物混入検出システムは、洗浄工程を制御するために、分離洗浄槽44と廃棄物貯蔵槽57との間に任意に取り付けてもよい。
【0106】
赤血球を分離した後、ポンプ40を反転し、ポンプ22を停止し、バルブ12、15、33、35、36、25、87及び54を閉め、バルブ97を開ける。細胞が洗浄された場合は、ポンプ22は前もって停止し、バルブ12及び25は閉まっている。IHP溶液は、IHP貯蔵槽50からポンプでくみ出し、赤血球を含む分離洗浄槽44に送る。そこでは赤血球とIHPとを混合し懸濁液を形成する。
【0107】
溶液中のIHPの好ましい濃度は、約10〜100mMであり、より好ましくは約23〜35mMであり、最も好ましくは35mMである。好ましいIHP溶液は、下記の濃度の下記の化合物からなる。
【0108】
35mM 中和IHP(六ナトリウム塩)(マトレヤケミカルカン パニー(Matreya Chemical Company))
5mM KCl
1.0mM MgCl2
135mM ショ糖
【0109】
オールドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)のIHPは、塩化ナトリウム及び最小限の他の電解質を全く含まないので、溶液の抵抗率を有意に下げることはない。インピーダンスの高い他の溶液を本発明において使用することができ、溶液の成分は臨界的ではないことが理解されよう。溶液の浸透圧特性が赤血球などの細胞が損傷を受けないようなものであって、溶液の抵抗率が高い限りは、その溶液は本発明の使用に適している。いくつかの組成物について抵抗率を測定したが、それを図22に示す。「CBR液」は表Aに示す。
【0110】
懸濁液のヘマトクリットは、好ましくは約30〜60であり、最も好ましくは約40である。ポンプ40は、赤血球とIPH溶液の両方をくみ上げるために設計され、冷却コイル68に送られる最終的なヘマトクリットを前もって測定することができるように調整することができる。
【0111】
赤血球をIHP溶液と混合した後、ポンプ40を再度反転させ、バルブ97を閉じてバルブ64を開ける。次に、赤血球−IHP懸濁液をポンプで送り、熱電気冷却コイル68を通す。バクスターヘルスケアコーポレーション(Baxter Healthcare Corporation)製のフェンワル(登録商標)血液加温セット(Fenwal Blood Warming Set)中の血液バッグなどの、血液加温セット中の血液バッグは、冷却コイル68として使用することができる。赤血球−IHP懸濁液が冷却貯蔵槽69内の冷却コイル68を通過すると、懸濁液は、約1〜12℃、好ましくは約4℃に冷却される。流速を確実に一定にし、冷却コイル68が一杯になると起こる容量の変動を補うために、任意に、装置の冷却コイル68と冷却貯蔵槽69との間、及びエレクトロポレーションチャンバー72に、ポンプを追加してもよい。
【0112】
任意に、予備冷却工程を省き、赤血球−IHP懸濁液を混合直後にエレクトロポレーションチャンバー72に送ってもよい。このような例では、連続流動式被包装置10から、冷却コイル68と冷却貯蔵槽69が除かれる。エレクトロポレーションチャンバーの温度が細胞懸濁液を4℃に維持するのに充分冷たい場合は、エレクトロポレーションの前に冷却しなくてもよい。
【0113】
冷却した後、赤血球−IHP懸濁液をエレクトロポレーションチャンバー72に入れる。チャンバー72は約4℃の温度に維持される。赤血球−IHP懸濁液がフローエレクトロポレーションチャンバー72を通過する時に、パルスジェネレーター75から懸濁液に電気パルスが適用され、赤血球の細胞膜に開口部を形成する。
【0114】
赤血球−IHP懸濁液は、エレクトロポレーションチャンバー72の二つの電極の間を通過する。図3〜10はエレクトロポレーションチャンバーを説明するものである。本発明の好ましい実施態様において、未処理の細胞の懸濁液がチャンバー72に入ると、IHP−赤血球懸濁液は、パルス当たり約2600〜3200V/cmの電界強度で、容量当たり、約3回の高圧パルスまたはパルスの連続に付される。IHPの血液への導入について、一回のパルスの代わりに、短いパルスの連続によって、より効率的にIHPを赤血球に移送することが確認されている。最適なパルス数は、パルスの一連続あたり約10〜512パルスであり、好ましくは312パルスである。パルス間、またはパルスの連続と連続の間に、電界の極性が変化することも有利である。図28には、代表的なパルスの二つの連続を示す。
【0115】
細胞膜を横切るように形成される電荷によって、細胞膜に誘電破壊を引き起こし、膜に孔を形成する。次にIHPはそれらの孔を通って細胞内に拡散する。加えて、下記の仮説に拘束されるものではないが、IHPが電界中の細胞内に実際に強制的に導入されると考えられる。
【0116】
エレクトロポレーションの間、1〜3KV/cmの電界が形成され、1〜4ミリ秒間持続する。好ましいパルスの長さは3〜4ミリ秒であり、最も好ましくは2ミリ秒間である。パルスの長さまたはパルスの連続の長さは、l/eと定義する。流速約10.6ml/分では、好ましいパルス数は、好ましいパルス速度0.29Hzで3〜5である。電界強度は、電極間の電圧と定義する。電極間の距離はセンチメートルで測定する。好ましい電気的パラメーターは、下記の通りである。
【0117】
パルスの長さまたはパルスの連続の長さ=1.5〜2.5ms
電界強度=2.7〜3KV/cm
【0118】
エレクトロポレーションチャンバーは、エレクトロポレーションチャンバーを通過する細胞溶液の抵抗率がモニターされるという意味で、任意に、センサーであってもよい。細胞溶液の抵抗率が変化するに従って、最適なエレクトロポレーション効率を維持するために、細胞のパルス適用を調節するフィードバック回路がある。例えば、IHP溶液中で血液をエレクトロポレーション処理する場合、異なる血液サンプルは異なる抵抗率を有する可能性がある。血液の抵抗率をモニターすることによって、抵抗率測定に基づいて最適なパルス強度及びパルスのタイミングを適用することができる。加えて、万が一泡がエレクトロポレーションチャンバーに導入されると、抵抗率が変化するのでフィードバック回路は泡の存在を感知し、泡がチャンバーから出るまでパルス適用を停止する。
【0119】
エレクトロポレーションの後、赤血球−IHP懸濁液をインキュベーションチャンバー78に入れ、室温で約10〜120分間、好ましくは30分間インキュベートする。任意に、赤血球−IHP懸濁液は、約37℃で約5分間、そして室温で少なくとも15分間、インキュベートする。インキュベーションチャンバー78は、加熱手段80で囲んでもよい。本発明を実施する際には、あらゆる加熱手段80を使用することができる。好ましい加熱手段80は、水浴または熱電気の熱ポンプである。
【0120】
任意に、インキュベーター78は、赤血球の再封及び再構成を補助する再封緩衝液を含む。本発明の好ましい実施態様では、再封緩衝液は使用しない。
【0121】
インキュベーションの後、バルブ51を開け、ポンプ40を稼動させて、赤血球−IHP懸濁液を血液分離洗浄槽44に戻す。過剰のIHP溶液は、遠心分離によって赤血球懸濁液から除去する。不要になったIHP溶液は、廃棄物貯蔵槽57に送る。次に、バルブ33、37、15及び36を開けて、貯蔵槽31から多量の後洗浄液を血液分離洗浄槽44に加える。本発明の好ましい実施態様では、後洗浄液は、塩化カルシウム2.0mM及び塩化マグネシウム2.0mMを含有する9%の塩化ナトリウム溶液からなる。いずれの生理的食塩水を使用してもよい。
【0122】
後洗浄液を添加した後、次に赤血球−IHP懸濁液を遠心分離し、上澄はバルブ54を通して廃棄物貯蔵槽57に捨て、赤血球は血液分離洗浄槽44中に残す。洗浄工程は、包被されていないIHPが全て除去されるまで、繰り返し行う。
【0123】
任意に、分離洗浄槽44から不要物を除去する時に、廃液中の遊離のIHPを検出するために不要物を不純物混入検出器46に通し、修飾された赤血球から外因性の被包されていないIHPが除去されたことを確認する。不純物混入検出器46は任意である。
【0124】
洗浄の後、IHPを含有する赤血球は、貯蔵槽89に保持される血漿及び白血球で再構成してもよい。ポンプ40を稼動させ、バルブ87、36及び92を開ける。修飾された赤血球、及び血漿及び白血球を、貯蔵槽96にポンプで送る。
【0125】
再構成した、修飾された血液から、凝固物または他の不純物を全て除去するために、貯蔵槽96とバルブ92との間にフィルターを取り付けてもよい。
【0126】
本発明の方法に従って得られたIHPを封入した赤血球は、患者に直接投与することができ、または、後で使用するために細胞を貯蔵することもできる。赤血球中のIHPは、通常の保存期間内では放出されない。
【0127】
本発明の連続流動式被包装置は、他の被包方法を利用するために一部改変してもよいこ
とが予想される。
【0128】
さらには、連続流動式被包装置は、多種多様の細胞集団を処理するために改変してもよいことが予想される。さらには、この装置を、合成ベシクル中に生物学的活性物質を被包するのに使用してもよい。
【0129】
また、本発明の連続流動式被包装置は、幅広い生物学的活性物質を被包するために使用してもよいことが予想される。
【0130】
フローエレクトロポレーションチャンバー
エレクトロポレーションの間、IHPの挿入速度は細胞に適用される電圧に直線的に依存する。一般的には、電圧が高くなるに従ってより多くのIHPが被包されるが、細胞溶解も増加し、細胞生存率が減少する。エレクトロポレーションシステムの効率は、エレクトロポレーション後の細胞生存率によって評価することができる。細胞生存率がわずかである場合は効率が非常に低いことを示す。電気パルスの振幅及び期間は、細胞膜の電気的誘電破壊に関与し、電界に並行したポールキャップ(pole cap)中に孔を形成する。このように、エレクトロポレーションシステムを設計する際に考慮するべきファクターには、電界強度、パルスの長さ及びパルス数が含まれる。
【0131】
完全なエレクトロポレーションのターゲットは、球状であるので、その配向性は適用される電界の効率に影響を与えない。ターゲットが球状であれば、しきい値を超える電界強度の一回のパルスによって、ターゲットを100%エレクトロポレーション(電気穿孔)することができる。赤血球は円盤状をしている。その形状及びエレクトロポレーションチャンバーにおける配向性のために、一回のパルスでは、細胞の約40%しかエレクトロポレーションされない。残る60%をエレクトロポレーションするために、電界強度を上げることができる。このことによって、電界に対して適切な配向性にある赤血球に対する負荷が上昇し、細胞の生存率が低下する。
【0132】
細胞溶解及び細胞死の発生率を低下させながら被包の効率を上げるために、短期間の多数のパルスを利用するフローエレクトロポレーションチャンバーが開発された。定常流及び定常電界電圧を用いた、多数のパルスによって、最大量のIHPが、2時間から24時間までの全溶解を最少にして、挿入されることが確認された。多数パルスシステムによって、電界強度を上げることなく、細胞生存率が増加する。多数パルスシステムを使用する場合は、シングルパルスシステムを使用する場合よりも、細胞の配向性が臨界的ではない。より低い電界強度は、赤血球に対してはるかに穏やかである。多数パルスシステムは、シングルパルスシステム程、チャンバーを通る赤血球の流速とエレクトロポレーションパルスとの時間的調節、及び細胞の配向性が決定的ではないことから、多数パルスシステムで各細胞をエレクトロポレーションすることは、はるかに容易である。また、フロー多数パルスエレクトロポレーションシステムは、シングルパルス法と比較すると、赤血球の短期及び長期生存率も上昇する。
【0133】
図11及び13は、固定または流動の条件下で、ある範囲の酸素圧にわたって、IHPを被包した赤血球の酸素化%に対する、即ち、IHPを被包した赤血球のP50値に対する(IHP溶液の二種類の濃度を比較した)、及びエレクトロポレーションを受けた赤血球の生存率に対する、様々な電界強度の効果を示すものである。読みとりは全てエレクトロポレーションの24時間後に行った。これらの結果から、相対的に低い電界強度の多数のパルスによって、最適な被包結果が得られることが示される。
【0134】
冷却したエレクトロポレーションチャンバーは、エレクトロポレーション工程の間、赤血球を一定温度に保つのに好ましく、それによって、赤血球の生存率が向上する。これは
、エレクトロポレーション工程の間、電気パルスによって生成された過剰な熱を除去することによって達成される。過剰な熱は、電極を冷却するか、またはフローエレクトロポレーションチャンバー全体を冷却することによって除去することができる。本発明の一つの実施態様では、電極自体を冷却する。
【0135】
エレクトロポレーション工程の間、エレクトロポレーションチャンバーの供給口に血液をポンプで送り、赤血球がチャンバーを通過する時に、赤血球に一連の電気パルスを適用する。赤血球は、チャンバーの他方の末端から出る。チャンバーは、セラミック、テフロン(Teflon)(登録商標)、プレキシグラス(Plexiglas)、ガラス、プラスチック、シリコン、ゴムまたは他の合成材料を含むがこれらに制限されない、あらゆるタイプの絶縁材料で作成することができる。好ましくは、チャンバーはガラスまたはポリスルホンからなる。チャンバーの組成が何であっても、チャンバーの内側表面は、チャンバーを通過する液体の乱流を低減するために、なめらかであるべきである。チャンバーのハウジングは、非伝導性で、かつ生物学的に不活性であるべきである。商業的使用においては、チャンバーが使い捨てであることが有利である。
【0136】
本発明の好ましい実施態様の一例では、エレクトロポレーション装置の一部である電極は、黄銅、ステンレススチール、金めっきしたステンレススチール、金めっきしたガラス、金めっきしたプラスチック、または金属含有プラスチックを含むがこれらに制限されない、電気または熱伝導性の、中空で標準的なあらゆる材料から作成することができる。好ましくは、電極の表面は金めっきされている方がよい。金めっきによって、電極での酸化及びヘモグロビン及び他の細胞粒子の蓄積が減少する。電極の表面はなめらかであるべきである。
【0137】
電極は中空でもよく、その結果液体またはガスによって冷却され、または、中空でなくともよく、その場合は熱電気または他のあらゆるタイプの伝導性冷却が用いられる。また、電極を冷却するほかに、エレクトロポレーションチャンバー自体を冷却することもできる。
【0138】
好ましくは、フローエレクトロポレーションチャンバーは使い捨てである。本発明のエレクトロポレーションチャンバーの実施態様三例について、下記で詳細に説明する。
【0139】
実施態様の一例では、フローエレクトロポレーションチャンバーは透明なポリ塩化ビニルで作成され、約7mmの間隔で対置する二本の電極を含む。エレクトロポレーションチャンバーは、米国カリフォルニア州サンディエゴのBTXエレクトロニックカンパニー(BTX Electronic Company)製のチャンバーを一部改造したものである。しかしながら、このエレクトロポレーションチャンバーを連続的に使用すると、チャンバーがオーバーヒートして、装置によって処理される細胞の生存率が時間とともに低下する。装置を連続的流動法で使用したときに生じるオーバーヒートの問題を除くために、連続流動式(連続的フロー)エレクトロポレーションチャンバーを設計した。連続的フローエレクトロポレーションチャンバーの構造について、下記で詳細に説明する。
【0140】
図3〜8は、本発明の実施態様の一例である連続的フローエレクトロポレーションチャンバー72を示す。図3に見られるように、フローエレクトロポレーションチャンバー72はハウジング100を含み、このフローエレクトロポレーションチャンバー72のハウジング100には、その対面に二本の電極102がはめこまれている。ハウジング100は、末端の一方に供給口チャネル104を、他方に排出口チャネル106を含む。この供給口チャネル104及び排出口チャネル106は、それぞれコネクター108及び109を含み、好ましくはコネクターは雄型のルアー(Luer)製品である。コネクター108及び109は中空で、エレクトロポレーションチャンバー72の内部への、供給口チャネル1
04及び排出口チャネル106を形成する。
【0141】
図4及び5に見られるように、内部チャンバー110は、ハウジング100の長さのほとんどにわたって延び、二本の電極102を収容する大きさに作られる。内部チャンバー110は、電極102の内部末端を受けるために斜めに切った面111を含む。このように、内部チャンバー110は、電極102の内部表面とハウジング100の内部表面で形成される。内部チャンバー110は、供給口チャネル104及び排出口チャネル106に接続している。
【0142】
図7及び8に見られるように、図3〜6のエレクトロポレーションチャンバー72の電極102は、平らで、長く伸びた、中空のシェルからなる。電極102は末端に、冷却供給口112及び冷却排出口114を含む。上記したように、電極102の背面、すなわち図7の左側の面は、ハウジング100の斜めに切った面111と直に接して合わさっている。
【0143】
エレクトロポレーションチャンバー72は、エレクトロポレーションに付される細胞懸濁液が、供給口104を通ってエレクトロポレーションチャンバー72に入り、広がって、内部チャンバー110を満たすように設計されている。赤血球懸濁液が内部チャンバー110を通って流れる時に、パルスまたは電荷が内部チャンバー110の幅にわたって適用される。
【0144】
エレクトロポロレーション工程の間比較的一定の温度を維持するために、冷却液または冷却ガスを、ポンプで冷却供給口112に送り、冷却排出口114から排出させ、その結果、電極102は約4℃に維持される。
【0145】
図9及び10は、第二の実施態様であるフローエレクトロポレーションチャンバー172を示す。図9及び10に見られるように、フローエレクトロポレーションチャンバー172は、実質的に長方形の中空のハウジング200を含む。二本の電極202は、互いに真っ直ぐ向き合って、ハウジング200の壁に直に接触するように、ハウジング200の内部に挿入される。さらに、フローエレクトロポレーションチャンバー172は、ハウジング200の一端に供給口チャネル204、及び他端に排出口チャネル206を含む。この供給口チャネル204及び排出口チャネル206は、コネクター208及び209を含み、コネクター208及び209は、細胞懸濁液すなわちIHP−赤血球懸濁液をエレクトロポロレーションチャンバー172へ供給する細胞懸濁液供給装置へ、チューブ216によって接続している。コネクター208及び209、並びに供給口チャネル204及び排出口チャネル206は、細胞懸濁液をハウジング200の内へまたは外へ送る。
【0146】
図10に見られるように、供給口チャネル204の一端及び排出口チャネル206の一端は、ハウジング200の内部に延びて、内部チャンバー210を形成する。このように、内部チャンバー210は、電極202の内側表面、ハウジング200の内側表面、及び供給口チャネル204及び排出口チャネル206の内側表面で形成される。
【0147】
図9及び10に見られるように、フローエレクトロポレーションチャンバー172の電極202は、平らで、長く伸びた、中空のシェルからなる。電極202は末端に、冷却供給口212及び冷却排出口214を含み、冷却供給口212及び冷却排出口214を通って、ガスまたは液体がポンプで送られて電極202を通り、エレクトロポレーションの間、一定の温度を維持する。電極202は、ケーブル220によってパルスジェネレーターと接続している。
【0148】
上記したチャンバーを使用して、図9及び10のエレクトロポレーションチャンバー1
72は、エレクトロポレーションに付される懸濁液が、液体供給口204を通ってエレクトロポレーションチャンバー172に入り、広がって、内部チャンバー210を満たすように設計されている。赤血球懸濁液が内部チャンバー210を通って流れる時に、パルスまたは電荷が電極202の間の内部チャンバー210の幅にわたって適用される。エレクトロポレーション工程の間比較的一定の温度を維持するために、冷却液または冷却ガスをポンプで送り、コネクター208及び209を通る電極202の冷却供給口212に送り、冷却排出口214から排出させ、その結果、電極202は約4℃に維持される。また、供給口チャネル204、排出口チャネル206、並びにコネクター208及び209は、別々の構成部分としてよりもむしろ、一体の完全に統合されたガラス製部品として製造することができる。
【0149】
エレクトロポレーションチャンバー172は、機械引き板ガラス(drawn glass)または高度に磨いた他のあらゆる材料から作成できることが予想される。エレクトロポレーションチャンバー172の内側表面は、表面の乱流の発生を低減するためにできる限りなめらかであることが好ましい。機械引き板ガラスの構成部分は、表面の仕上がりがほぼ理想的である。さらには、機械引き板ガラスの構成部分は安定で、血液成分に不活性である。また、比較的安価で、使い捨てのエレクトロポレーションチャンバーとして望ましい。
【0150】
電極もまた、コロイド金で電気めっきした、機械引き板ガラスで構成してもよい。また、電極の表面は、高度に磨かれ、伝導性が高く、しかし生物学的に不活性であるべきである。金の電気めっきは耐久性があり、高価ではない。流体の結合は、通常入手できる部品を用いて行うことができる。
【0151】
フローエレクトロポレーションチャンバーは、全体の流動式被包装置の一部として、または、単一の装置として作成することができる。次にフローエレクトロポレーション装置は、特定の細胞集団を被包するため、商業的に入手可能なプラズマフォレーシス機械に接続してもよい。例えば、フローエレクトロポレーションチャンバーは、電子的または中継的な(translational)ハードウェアまたはソフトウェアによって、商業的に入手可能なプラズマフォレーシス装置に接続してもよい。任意に、パーソナルコンピュータプログラムによって操作されるピンチバルブ配列及びコントローラーもまた、フローエレクトロポレーション装置を制御するために使用することができる。同様に、電源から、フローエレクトロポレーションチャンバーまたは流動式被包装置を稼動するのに必要な電力レベルを確立することができる。
【0152】
連続的フローエレクトロポレーションチャンバーの第三の実施態様を、図14〜20を参照して説明する。初めに図14〜16を参照するが、支持部材300は、可撓性シリコーンラバーからなる。支持部材300は本質的にダイヤモンド型をしており、上部末端301と下部末端302を含む。支持部材300の主要部分は、支持部材300の上に形成された格子状の「ワッフル」パターンを有し、より厚いリブ部分303及びリブ303の中間の薄い部分304からなる。支持部材300のへりに沿って、多数のつまみ305があり、それぞれはつまみ305を通して形成された穴306を有する。
【0153】
チャネル308は、支持構造の上部末端301と下部末端302との間に延び、支持構造300の主軸に沿っている。チャネル308は、底部314によって接続する対置するチャネル壁310、312からなる。支持部材300の上部末端301において、チャネル308は円形のくぼみ318に開口する。穴320を円形のくぼみ318の中央に形成する。排出口の開口322を円形のくぼみ318の上部末端に形成する。同様に、チャネル308の下部末端は、支持部材300の下部末端302に形成された円形のくぼみ324に開口する。穴326をくぼみ324の中央の支持構造を通して形成し、供給口の開口328を円形のくぼみ324の下部末端に形成する。
【0154】
伝導性の金属テープまたは薄片からなる一対の連続バンド電極330A、330Bは、支持構造300上に位置する。電極330A、330Bはそれぞれ、チャネル308内に配置され、実質的にチャネル308の全体の長さも延びる部分を有する。おそらく図16において最も良く示されるように、チャネル308の側壁310、312に形成される対置する凹部332は、電極330A、330Bを収容する。チャネル308の上部及び下部末端に隣接して、連続バンド電極330A、330Bはそれぞれ、チャネル壁308内に形成された、ぴったりしたスリットを通ってチャネル308を出る。次に、連続バンド電極330A、330Bは外へ曲がり、実質的に支持部材300の外縁と平行に、そしてそこから内側に間隔をおいて延びる。下記の目的のために、支持構造300の正中線に沿って、及びその外側の縁に隣接して、連続バンド電極330A、330Bのそれぞれに、たるみ部分334が形成される。
【0155】
チャネル308のそれぞれの側に、及びそれに隣接して、大体長方形の穴340が多数形成される。下記により詳しく説明するように、穴340は、冷却する目的で、任意にペルティア(Peltier)の熱電気エレメントを適合させるために配置される。チャネル308のそれぞれの側に、その上部及び下部末端に隣接して、円形の穴342が、図示されるように、連続バンド電極330A、330Bをぴんと張るためのキャプスタンを収容するように適合させて形成される。支持構造300の正中線に沿って、及びその外側の縁に隣接して、下記により詳しく説明するように、電極330A、330Bに荷電するために通る電気的接触子を収容するように適合させた、一対の穴344が形成される。
【0156】
今度は図17を参照するが、支持部材300は、透明なポリカーボネートのフレーム350上にのせる。フレーム350は、平らな正面壁352を有する。内側面壁354は、平らな正面壁352の横の端から後方へ延びる。後方の開口チャネル356は、二枚の内側面壁354の間に形成される。内側面壁354の後方の端から、一対の背面壁358が外側に延びる。一対の外側面壁360は、背面壁358の外側の端から前方に延びる。前方の開口チャネル362は、外側面壁360と内側面壁354との間に形成される。それぞれの前方の開口チャネル362内に除去できるように設置される棒363は、チャネル内に液体貯蔵バッグをつるすのに便利な手段である。
【0157】
支持構造300は、ポリカーボネートのフレーム350の正面壁352の背表面に配置される。支持構造300はフレーム350に粘着して結合し、フレーム350の正面壁352は支持構造300の前面に形成されたチャネル308の開口した上部末端に封をする。チャネル308はこのように取り囲まれて、液体の通路すなわち「フローセル」364を画定する。加えて、支持構造300とフレーム350の関連する部分は、エレクトロポレーションチャンバー366を画定する。
【0158】
図17を参照すると、支持カラム370は、おおよそ長方形の横断向を有する。支持カラム370の正面371には、支持構造300の形状及び奥行に適合するくぼみ372が形成される。くぼみ372のそれぞれの側部に接し間隔をおいて、またくぼみ372の主軸に沿って、多数のテルル化ビスマスのペルティエ(Peltier)熱電気エレメント374がくぼみに固定され、くぼみ372の底部から前方に出っ張る。ペルティエ熱電気エレメント374は、支持カラム370の内側に設置されるヒートシンク375と熱的に連絡している。支持カラム370の隣接部分に配置される電気ファン376は、カラムを通る空気の流れを作り、ヒートシンク375から熱を除去する。
【0159】
くぼみ372の上部及び下部末端に隣接し、中心線の両側へ間隔をおいて、キャプスタン377がある。くぼみ372の外側の縁に隣接し、くぼみの主軸に沿って位置する、一対の電極接触子378がある。くぼみ372の周囲のちょうど内側に、8個のロケーター
ピン379が配置され、ロケーターピン379の2個はダイヤ型のくぼみの4面の壁のそれぞれに沿って位置する。くぼみ372の上部及び下部末端には、くぼみの主軸上に、一対の中空で、多孔性の、重合体のシリンダー380が配置される。シリンダー380は、好ましくは、気体は通過できるが液体は通過できないサイズの孔を有する、不活性な発泡ポリエチレン(ポレックス(Porex)など)で形成される。以下により詳しく説明するように、これらの気体透過性で液体非透過性のシリンダーは、そこを流れる液体から泡を除去する手段として機能する。
【0160】
ポリカーボネートのフレーム350の容積は、支持カラム370がフレームの後方の開口チャネル356内にぴったり収容されるようなものである。フレーム350が支持カラム370上に位置するので、フレーム350の正面壁352の背表面に配置される支持構造300は、支持カラム370の正面371に形成されるくぼみ372内に適合する。シェルフ381は、くぼみ372の直下の支持カラム370の正面371上に配置され、ポリカーボネートのフレーム350の下部の縁を支持する。
【0161】
このように支持カラム370に配置されるフレーム350を用いて、くぼみ372及び支持カラム370に関連する種々のエレメントは協力的に、図19に示されるように支持構造300を固定する。特に、熱電気の冷却エレメント374は、支持構造300の穴340を通って突き出て、チャネル308の壁と接触する。キャプスタン377は、支持構造300の上部及び下部末端の穴342を通って延びる。電極接触子378は、支持構造300の穴344を通って突き出る。ロケーターピン379は、支持部材300のつまみ305における対応する穴306内におさまる。そして、気体透過性で液体非透過性のシリンダー380は、支持構造300の上部及び下部末端301、302で、くぼみ318、324内の穴320、326を通って延びる。
【0162】
今度は図20を参照するが、電極330A、330Bをそれぞれ支持する少なくとも一つのキャプスタン377は、引っ張り手段382などによってぴんと張られ、連続バンド電極をぴんと張った状態に維持する。図20にも見られるように、それぞれの電極接触子378には、その正面に溝383が形成され、この溝に、関連する連続バンド電極330Aまたは330Bのたるみ部分334は、この溝を通る。それぞれの電極接触子378と嵌合して駆動するモーター384は、電極接触子を回転させるように操作することができ、それによって、接触子部分に電極330Aまたは330Bを巻き付け、たるんだ部分がぴんと張られる。この巻き付け操作は、電極接触子378と関連する電極330Aまたは330Bとの間の接触面を増やすために、付加的に機能し、それによって電極の電気的連結を増強する。
【0163】
フローセル364の上部及び下部末端の(図20では上部のみ示す)、気体透過性で液体非透過性のシリンダー380は、継ぎ手388及びチューブ390によって真空源と流体の連絡がある。また図20で示される、ヒートシンク375は、熱電気冷却エレメント374によって集められた熱を除去する。
【0164】
フローセル364の内外への適切な流路に沿う流体の流れは、支持カラム350に配置される蠕動ポンプ手段392及びソレノイドで稼動されるピンチバルブ394によって制御される。ポンプ手段392及びピンチバルブ394は、それらに操作できるように接続されるコンピュータ手段(図示せず)の適切なアルゴリズムの制御下で機能する。
冷却されたプレート396は、支持カラム370の側面に配置される。フレーム350のチャネル362内に保持される冷却バッグ398は、このプレート396と密着して、エレクトロポレーションに続いて処理される液体を冷却する。
【0165】
周囲環境及び処理される生物学的物質に依存して、バッグ398の内容物を周囲の温度
以上の予め決められた温度に維持するために、プレート396を任意に加熱してもよい。
【0166】
図21は、自給のエレクトロポレーション装置400を示す。装置400は、ハウジング及び支持構造としてはたらくカート402を備える。エレクトロポレーションチャンバー366を有する支持カラム370はカートに配置され、そこから上に延びる。カート402は車台構造404を有し、車台構造は、カート402の位置の移動を容易にするための車輪406を有する。車台構造404には、電源蓄電器408が配置される。電源ヒートシンク410は、電源蓄電器408と熱的に連絡し、電源蓄電器によって産生される熱を除去する。
【0167】
回路基盤計算手段412もまた車台構造404内に配置される。回路基盤計算手段412は、回路基盤計算手段に隣接した車台構造404内に配置された電源回路基盤414によって、電力が供給される。電源回路基盤414と熱的に連絡している電源ヒートシンク416は、電源回路基盤によって産生される熱を除去する。車台構造404の正面パネル420の下部末端に配置される冷却ファン418は、車台構造を通って空気を吸い込み、ヒートシンク装置410、416から熱を除去する。
【0168】
回路基盤計算手段412と動作的に関連するシステム状態表示装置422は、カート402の正面パネル420に配置される。回路基盤計算手段412の様々なパラメータを設定する制御スイッチ424は、カート402の正面パネル420の、システム状態表示装置422の下に配置される。
【0169】
カート402の頂部パネル428内には、遠心分離槽430が配置される。車台構造404内部に配置される遠心分離駆動モーター432は、遠心分離槽430とかみ合って稼動する。遠心分離槽430は、ロータリーコネクター434を含み、ロータリーコネクターを通って血液が遠心分離槽へ供給される。
【0170】
第三の実施態様であるエレクトロポレーションチャンバー366を含む自給のエレクトロポレーション装置400における、生物学的粒子の処理について、図21を参照して説明する。血液供給バッグ450は、フレーム350のチャネル362の一つの内部の棒363につり下げられる。チューブ452は、血液を遠心分離槽430に送り、そこで、血液はロータリーコネクター434を通って遠心分離槽に導入される。血液を遠心分離して、血漿、白血球、及び老廃物から赤血球を分離する。次に、赤血球を被包される物質と混合する。混合物は、チューブ454を通って送られ、セル364の下部末端で供給口の開口328に導入する。混合物は、電極330A、330Bの間のフローセル364を通って、上向きに流す。電極は、第二の実施態様に関して上述したように、パルスで荷電する。電気分解で発生する混合物中の気体は、セルの上部及び下部末端の、気体透過性で液体非透過性のシリンダー380によって除去する。処理された混合物は、セルの上部末端の、排出口の開口324を出て、排出口チューブ456は、処理された混合物を、フレーム350の別のチャンバー362の内部の棒363につるされ、冷却されたプレート396に接触している冷却バッグ460に送る。次に、液体は、冷却バッグ460の隣の、棒363につるした処理後の冷却及び貯蔵バッグ462に運ばれる。
【0171】
ポンプ速度(以下、流速)、バルブ操作、遠心分離操作、ペルティエ熱電気エレメントの操作、及び電極のパルス荷電は、全て回路基盤計算手段412によって制御する。理想的には、遠心分離槽430の処理速度は、フローセル364の流速に合わせる。しかしながら、ずれを全て適応させるために、任意に貯蔵槽を遠心分離槽430とフローセル364の間に設置してもよい。このようにして、遠心分離槽430が、フローセル364の血液処理速度よりも速く、血液を処理する場合には、フローセルが「追いつく」まで、貯蔵槽は過剰な混合物を全て保持する。同様に、遠心分離槽430が、フローセル364の血
液処理速度よりも、血液処理が遅い場合には、初めに回路基盤計算手段412が混合物を貯蔵槽412に蓄積する。次に、遠心分離槽430が充分な量の血液を処理すると、混合物が貯蔵槽からフローセル364に送られる。貯蔵槽内の混合物の容量が使い果たされるまでには、遠心分離槽は、所望の量の血液の処理が完了している。
【0172】
上述したエレクトロポレーション装備400の任意の特徴は、フローセル364に沿ったある地点の冷却エレメント374が、フローセル364に沿った他の地点の他の冷却エレメント374よりも冷却程度を大きく、あるいは小さくすることができるように、一連のペルティエ熱電気冷却エレメント374が個々に制御可能であることである。生物学的粒子はフローセル364に沿って移動するに従って加熱されるので、供給口末端に隣接するところよりも、フローセル364の排出末端により近い方をより冷却する必要があるかもしれない。種々の熱電気冷却エレメント374を個々に制御することで、これらの変動を適合させられる。
【0173】
種々の熱電気冷却エレメント374は、フローセルに沿った様々の地点に熱センサーを設置し、センサーで検出された温度を回路基盤計算手段412にインプットし、そしてセンサーで検出された温度に対応して種々の熱電気冷却エレメントを制御することによって、制御することができる。または、種々の熱電気冷却エレメント374は、生物学的粒子について前もって測定した、フローセルに沿った「平均の」温度分散に従って、制御することができる。当業者は、種々の熱電気冷却エレメント374を制御する他の方法を思いつくであろう。
【0174】
当業者によって評価されることであるが、エレクトロポレーションセルの再使用が好ましくない理由がいくつかある。第一に、感染性の成分が他の患者に伝達される可能性がある。さらに、電極表面の電気的性能が、電極表面を横切る高電圧のために低下し、それによってアーク電位が上昇する可能性がある。これらの、及び他の問題を防ぐために、この三番目に開示された実施態様の特徴は、セルが再使用されないことを確実にする手段を提供するものである。処理の最後に、フレーム350が支持カラム370から除かれる前に、電極接触子378とかみ合って稼動するモーター384は、自動的に稼動して過回転し、電極の引張強度を超えて電極330A、330Bを引っ張り、電極を破断する。このように電極330A、330Bが破断されることによって、セルの再使用は不可能である。
【0175】
エレクトロポレーション装置に関連して知られているリスクは、電気分解によって意図しない気体が産生されることである。そのような望まない気体の発生による過剰の圧力によって、爆発的現象(explosive expression)が起こることが知られている。この可能性を最小限にするため、本発明では、ソフトシリコンラバーによる三側面で画定したフローセル364を使用する。一時的に圧力が過剰になった場合、支持構造300の弾性がフローセル364の膨張に適応し、それによって爆発の可能性を低くする。加えて、フローセル364は、支持カラム370とポリカーボネートのフレーム350の間にしっかりとはさまれ、あらゆる爆発的現象の可能性に対して、さらに保護する。
【0176】
この発明について、開示した実施態様に関して特に詳細に説明したが、多様な変更及び改変は添付の請求の範囲に記載される発明の趣旨及び範囲内でなされ得ることが理解される。
【0177】
細胞洗浄装置
図24は、濾過透析、好ましくは向流濾過透析を利用する細胞洗浄装置500のカッタウェイ模式図である。完全な装置は頂部及び側面を有し、装置の内部の構成部分を完全に包含する。本発明のもう一つの要旨は、IHP溶液、及び、通常の生理食塩水などの、しかしこれに制限されない、赤血球と適合する溶液である代替品を除去する多孔性の膜を通
した向流透析を利用する細胞洗浄装置である。図24に示されるように、細胞洗浄装置500は、エレクトロポレーションされた細胞を含む第一の貯蔵槽505からなる。IHPの存在下でエレクトロポレーションされた細胞の場合、これらの細胞は、エレクトロポレーションチャンバー72を通過し、過剰のIHPを含有する溶液中に存在する。次に、エレクトロポレーションされた細胞は、ポンプ510によってチューブ515を通って矢印の方向に送られる。細胞懸濁液は、細胞洗浄装置のハウジング523内に位置するチューブ入口520から細胞洗浄装置500に導入される。装置500の内部の細胞の流路は、細胞懸濁液が通過する入り組んだ経路(labyrinth)を形作る隆起部525を有する細胞プレート526によって画定される。
【0178】
好ましい入り組んだ経路を図25に示すが、図25は、入り組んだ経路を形作るプレート上の隆起部を有する細胞プレート526の側面図を示す。セルプレート526は、隆起部525によって形作られる入り組んだ通路に沿って細胞を押し入れるに充分な強さで、半透膜575の第一の側面577に押しつけられる。
【0179】
隆起部525によって形作られる入り組んだ経路は、細胞懸濁液が半透膜575と接触している限り、いずれの形状であってもよいことが理解される。従って細胞懸濁液は、細胞洗浄装置500を通過する間、半透膜575と接触している。
【0180】
半透膜575は、溶液及び溶液のあらゆる成分が膜を通過でき、溶液中の細胞は通過できない大きさの孔を有する。半透膜は、細胞懸濁液中の細胞と適合するいずれの物質であってもよい。本発明の細胞洗浄装置に使用することができる半透膜は、ポリプロピレン(トラベノールラボラトリーズ(Travenol Laboratories))、二酢酸セルロース(旭メディカル)、ポリビニルアルコール(クラレ)、ポリメチルメタクリレート(東レ)、及びポリ塩化ビニル(コーブラボラトリーズ(Cobe Laboratories))を含むが、これらに限定されるものではない。赤血球に対しては、半透膜の孔は、直径1ミクロン以下でなければならいが、よりずっと小さくてもよい。細胞懸濁液が出口チューブ530で装置500を出るまで、細胞は隆起部525によって形作られる入り組んだ経路に沿って移動する。IHPを有する細胞懸濁液に関しては、細胞懸濁液は次にポンプで貯蔵槽500に戻され、洗浄液中のIHP値が許容される値に落ちるまで、装置500中を再循環する。
【0181】
半透膜575のもう一方の側面には、細胞プレート526上の隆起部と全く一致した隆起部555を有する、同一の生理食塩水プレート536がある。生理食塩水プレートは、半透膜575の第二の側面に押しつけられ、それによって、隆起部525によって形作られる入り組んだ経路と左右対称の入り組んだ経路を形作る。例えば生理食塩水など、細胞との生体適合性のある洗浄液は、生体適合性のある液体を含む貯蔵槽540から、チューブ567を通り、細胞洗浄装置500の洗浄液出口550へ、ポンプ565によって送られる。
【0182】
洗浄液は、洗浄される細胞と生体適合性のあるいずれの溶液であってもよいことが理解される。このような洗浄液には、等張生理食塩水、高張生理食塩水、低張生理食塩水、クレブズ−リンゲル重炭酸塩緩衝液、アールの平衡塩類、ハンクスの平衡塩類、BES、BES−トリス、HEPES、MOPS、TES、及びトリシンが含まれるが、これらに限定されるものではない。細胞培養の培地は、洗浄液として使用することができ、199培地、ダルベッコの改変イーグル培地、CMRL−1066、最少必須培地(MEM)、及びPRMI−1640が含まれるが、これらに限定されるものではない。加えて、ここで定義される再封溶液は、洗浄液として使用することができる。さらに、上記の溶液のあらゆる混合物を洗浄液として使用することができる。
【0183】
生体適合性のある溶液は、出口560から細胞洗浄装置500を出るまで、隆起部55
5によって形作られる入り組んだ経路に従って、ポンプ565によって装置を通過する。生体適合性のある溶液は次に、配水管570を通って廃棄される。生体適合性のある溶液が細胞を含有する溶液と反対方向にポンプで送られる場合に、装置500の効率が最も良いことは、重要である。しかしながら、生体適合性のある溶液を、細胞を含有する溶液と同じ方向にポンプで送ることができることは、本発明において予想される。
【0184】
一例として、エレクトロポレーションされた細胞から得たIHPを含有する細胞懸濁液を使用する場合、両溶液を細胞洗浄装置500にポンプで送るに従って、IHPを含有する細胞懸濁溶液は半透膜575を通って拡散し、同時に、生体適合性のある溶液は半透膜575を通って反対方向に拡散する。この拡散が継続するに従って、細胞懸濁溶液は徐々に希釈され、IHP値が許容される値になるまで、生体適合性のある溶液で置換される。
【0185】
細胞洗浄装置500は、任意に、細胞プレート526の外側及び洗浄液プレート536の外側に熱電気エレメント580を取り付けることができる。熱電気エレメント580は、プレート526及び536の一方または両方に取り付けることができることが理解される。熱電気エレメント580は、洗浄サイクルの間、溶液を冷却するため、または加温するために使用することができる。このように、細胞洗浄装置がそれに取り付けられる熱電気エレメントと共に使用される場合には、細胞はインキュベーターとしてはたらく細胞洗浄装置中で加温されると再封されることから、インキュベーター78は必要とされないことが理解される。生体適合性のある洗浄液は、再封緩衝液となり得る。温度は水浴などの他の方法によって制御することができることが理解される。
【0186】
細胞洗浄装置500の形状は、円形容器の内側部分が細胞懸濁液を含み、半透膜575によって円形容器の外側部分と分離されている円形容器を含む、いかなる形状であってよい。円形容器500は、細胞を含有する溶液を半透膜575に通過させ、それによって混入している不純物を除去する一助として、ゆっくりと回転させることができる。
【0187】
細胞洗浄装置は、装置で洗浄される細胞と生体適合性のあるあらゆる物質から構成されることができる。細胞プレート526及び洗浄プレート536は、弾性のシリコーンラバーで製造することができる。
【0188】
エレクトロポレーションした細胞を洗浄するための遠心分離の代替として使用できる、細胞洗浄装置のもう一つの実施態様を、図26に示す。細胞洗浄装置の第二の実施態様である細胞洗浄装置600において、細胞洗浄装置の中心的な特徴は、シリコーンラバーなどのエラストマー材料から作られるエラストマーセル605である。次に図27に関して、エラストマーセル605は、エラストマーセル605の中心部に半透膜610を有する成型部品である。半透膜610の両側には、入り組んだ経路を形成し、エラストマーセルの長さ全体にわたる水平の刻み目615がある。
【0189】
図26に示されるように、エラストマーセル605は、洗浄液を導入するための供給口625と、洗浄液を除去するための排出口630と、エレクトロポレーション液と共に細胞を導入する供給口635と、エレクトロポレーション液と共に細胞を除去する排出口640とを有する。このように、洗浄液はエラストマーセル605内の半透膜610の片側に導入され、入り組んだ経路を通って循環し、排出口640から出る。エレクトロポレーションした細胞を含有するエレクトロポレーション液は、半透膜610の反対側に導入され、入り組んだ経路を通って循環し、排出口640から出る。
【0190】
半透膜610は両側を完全に分離し、両側の間の全ての連絡手段は半透膜610を通過することが理解される。半透膜は、溶液は膜610を通過するが、半透膜610を通過する細胞のような粒子は通過しない孔を有する。半透膜は、細胞懸濁液中の細胞と生体適合
性のある、いかなる物質であってもよい。本発明の細胞洗浄装置に使用することができる半透膜は、ポリプロピレン(トラベノールラボラトリーズ(Travenol Laboratories))、二酢酸セルロース(旭メディカル)、ポリビニルアルコール(クラレ)、ポリメチルメタクリレート(東レ)、及びポリ塩化ビニル(コーブラボラトリーズ(Cobe Laboratories))を含むが、これらに限定されるものではない。赤血球に対しては、半透膜の孔は、直径1ミクロン以下でなければならないが、よりずっと小さくてもよい。
【0191】
エラストマーセルはフレーム655の中に配置することができ、また、側部660が側部665に対向してエラストマーセル605を保持し、それによってエラストマーセルを側部660と側部665との間にしっかり固定するように、側部660はちょうつがい665及び666上で回転することができる。側部660は、エラストマーセル610を加熱または冷却することができる、熱電気エレメントである。側部665は、ベルト675上を動き、続いて、ローラーがベルト675の周りを動くに従ってエラストマーセルを締め付けることができ、続いて、側部665の高さに垂直に動く弾性の棒677に対して圧力をかけるローラー670を有する、脈動機構である。
【0192】
操作において、エラストマーセルは、フレーム655の中に配置され、側部660(熱電気エレメント)はエラストマーセル605上に接触する。勿論、側部660は熱電気エレメントのないプレートであってもよい。第一の側面615上で、供給口は、洗浄液貯蔵槽(図示せず)に取り付けられる洗浄液チューブに取り付けられる。排出口630は、排出管(図示せず)に接続する。エラストマーセルの反対側では、供給口635が細胞及びエレクトロポレーション液を含む貯蔵槽(図示せず)に接続する。排出口640は、細胞及びエレクトロポレーション液を細胞貯蔵槽に戻すチューブに接続する。
【0193】
操作において、蠕動アクティベーター670は、洗浄液側を柔らかくポンプで押し、それによって溶液を供給口から排出口へ進める。任意に、細胞洗浄装置500で示した方法と同様に、二つの溶液を外部ポンプによって二つの入り組んだ経路を通過させることができる。蠕動アクティベーターはエラストマーセルを押しているので、大量移動作用(mass transfer action)によってより多くの液体が半透膜650を通って移動する。この作用は、エレクトロポレーション液が洗浄液で実質的に置換されるまで継続する。
【0194】
IHP処理した赤血球の適用
本発明は、赤血球の酸素運搬能力を高める新規な方法を提供する。本発明の方法に従って、IHPは安定な方法でヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンの酸素放出能力をシフトさせる。IHP−ヘモグロビンを有する赤血球は、ヘモグロビンのみに比べ、一分子当たりより多くの酸素を放出することができ、従って循環する血液の各ユニット当たり、組織へ拡散する酸素がより多く得られるようになる。通常の環境下では、IHPには毒性があり、薬剤として使用することはできない。しかしながら、この新規な方法でIHPをヘモグロビンに結びつけるとIHPの毒性が中和される。重篤な慢性の血液損失がなければ、本発明の方法に従って調製される組成物を用いた治療によって、有益な効果を約90日間持続させることも可能であろう。
【0195】
IHP処理した赤血球のもう一つの利点は、貯蔵してもボーア効果が損なわれないことである。従来の方法で貯蔵された普通の赤血球では、その最大酸素輸送能力が約24時間回復しない。この原因は、普通の赤血球中のDPGが、貯蔵する間にヘモグロビン分子から離散し、注入後、体内で置換されなければならないからである。対照的に、本発明によって処理された赤血球は、貯蔵する間最大酸素運搬能力が保持され、従ってヒトまたは動物に注入された直後から最大量の酸素を組織に運ぶことができる。
【0196】
IHP処理した赤血球(RBC)の使用は、多くの急性及び慢性疾患の治療を包含して
非常に広範囲に及び、そのような疾患には、入院患者、心血管系手術、慢性貧血、大手術後の貧血、冠血管梗塞及び関連する問題、慢性肺疾患、心血管系患者、封入した赤血球注入の増強としての自己注入(出血、外傷性傷害、または手術)、うっ血性心不全、心筋梗塞(心臓発作)、卒中、末梢血管性疾患、間欠性跛行、循環系ショック、出血性ショック、貧血と慢性低酸素症、呼吸性アルカリ血症、代謝性アルカローシス、鎌状赤血球貧血、肺炎による肺容量低下、手術、肺炎、外傷、胸部穿刺、壊そ、嫌気性菌感染、糖尿病等の血管疾患、高圧チャンバーを用いた治療の代替または補助、手術中の赤血球回収、心不全、慢性適応症に派生する無酸素症、組織移植、一酸化炭素、酸化窒素、及びシアン化物中毒が含まれ、しかしそれらに限定されるものではない。
【0197】
上記の疾病状態を一つ以上罹患するヒトまたは動物は、本発明に従って調製したIHP処理血液を約0.5〜6ユニット(1ユニット=500ml)注入することによって治療される。いくつかの場合には、患者の本来の血液全てをIHP処理血液で、実質的に完全に置換することもできる。ヒトまたは動物に投与されるIHP処理赤血球の容量は治療する適応症に依存する。加えて、IHP処理赤血球の容量は赤血球懸濁液中のIHP処理赤血球の濃度にも依存する。患者に投与されるIHP赤血球の量は、臨界的ではなく、幅広く変えることができ、なお有効であることが理解される。
【0198】
IHP封入処理をした赤血球(RBC)は、ユニットあたり2〜3倍の酸素を組織に輸送することができる以外は、通常の赤血球と同様である。従って医師は、通常の赤血球2ユニットよりむしろ、IHP封入処理した赤血球1ユニットを投与することを選択するであろう。IHP封入処理した赤血球は、IHPを細胞中に被包する処理工程を除いて、現在の血液処理方法と同様に血液処理センターで調製されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0199】
この発明については、開示した実施態様に関して特に詳細に説明したが、多様な変更及び変形は添付の請求の範囲に記載される発明の趣旨及び範囲内で有効であることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】連続流動式被包装置の第一の実施態様の概略図である。
【図2】連続流動式被包装置の第二の実施態様の概略図である。
【図3】電極を有するフローエレクトロポレーションチャンバーの第一の実施態様の上面図である。
【図4】電極を除いたフローエレクトロポレーションチャンバーの第一の実施態様の上面図である。
【図5】フローエレクトロポレーションチャンバーの第一の実施態様の側面図である。
【図6】フローエレクトロポレーションチャンバーの第一の実施態様の端面図である。
【図7】フローエレクトロポレーションチャンバーの第一の実施態様と共に使用される電極の側面図である。
【図8】図7の電極の正面図である。
【図9】フローエレクトロポレーションチャンバーの第二の実施態様の分解斜視図である。
【図10】チャンバーを組み立てた、図9のフローエレクトロポレーションチャンバーの第二の実施態様の斜視図である。
【図11】固定または流動の条件下で、IHPを被包した赤血球の酸素化%に対する種々の電界強度の効果を比較したグラフである。
【図12】固定または流動の条件下で、IHPを被包した赤血球のP50値に対する、種々の電界強度の効果を比較した表である。
【図13】固定または流動の条件下で、種々の電界強度における、エレクトロポレーションに付された赤血球の生存率を比較した表である。
【図14】本発明の第三の実施態様による、エレクトロポレーションチャンバーの支持部材の正面立面図である。
【図15】図14の支持部材の、線15−15に沿って切った断面図である。
【図16】図15の円16で示された部分の拡大図である。
【図17】第三の実施態様によるエレクトロポレーションチャンバー及びチャンバーが取り付けられる支持カラムの分解斜視図である。
【図18】支持カラムに取り付けられた図17のエレクトロポレーションチャンバーを示す斜視図である。
【図19】支持カラムに取り付けられた第三の実施態様によるエレクトロポレーションチャンバーの正面立面図である。
【図20】図19のエレクトロポレーションチャンバー及び支持カラムの、カッタウェイ(cutaway)斜視図である。
【図21】図14〜20のエレクトロポレーションチャンバーを備える自給のエレクトロポレーション装置の模式図である。
【図22】数種のIHP溶液の抵抗を示すグラフである。
【図23】連続流動式被包装置の第三の実施態様の概略図である。
【図24】細胞洗浄装置のカッタウェイ図である。
【図25】入り組んだ経路を形作る隆起部を有する細胞プレート526及び細胞懸濁液の再循環を示すチューブの側面図である。
【図26】細胞洗浄装置の第二の実施態様のカッタウェイ図である。
【図27】エラストマーのチャンバーの、カッタウェイ側面図である。
【図28】代表的なエレクトロポレーションの電圧を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路を形作る壁と、
電極をパルス電気エネルギー源と電気的に連絡して配置する手段を含み、それによって、前記流体流路に沿って移動する生物学的粒子がパルス電界に付される、前記流体流路の対置する面に沿って配置される電極と
を備える、生物学的粒子の穿孔装置であって、
前記装置は、弾性的に変形可能である、前記流体流路を形作る前記壁の少なくとも一つ、及び、実質的に剛性である、前記流体流路を形作る前記壁の少なくとももう一つを特徴とし、
それによって、前記流体流路内の一時的な圧力の増加が、前記壁の前記弾性材料により、少なくとも部分的に吸収される、生物学的粒子の穿孔装置。
【請求項2】
変形可能な弾性材料からなる、前記流体流路を形作る前記壁の少なくとも一つが、変形可能な弾性材料からなる二つの前記壁からなる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極が連続バンド電極を備えてなる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
支持部材に取り外しできるように取り付けられる生物学的粒子の穿孔装置であって、
流体流路を形作る壁と、
電極をパルス電気エネルギー源と電気的に連絡して配置する手段を含み、それによって、前記流体流路に沿って移動する生物学的粒子がパルス電界に付される、前記流体流路の対置する面に沿って配置される電極と、
支持部材に取り付けられたときに前記電極と接続され、前記装置が前記支持部材から取り外される前に前記電極を破壊する手段とを備え、
それによって前記装置が再使用され得ない、生物学的粒子の穿孔装置。
【請求項5】
前記電極をエネルギー源と電気的に連絡して配置する前記手段がスピンドルからなり、前記電極は関係するスピンドルの表面の少なくとも一部に巻き付けられ、
前記電極を破壊する前記手段が、前記電極をその張力の限界を超えて延ばすよ
うに前記スピンドルを回転させる手段からなり、それによって前記電極を破断させ、電気的に作動不可能にする、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
流体流路を形作る壁と、
電極をパルス電気エネルギー源と電気的に連絡して配置する手段を含み、それによって、前記流体流路に沿って移動する生物学的粒子がパルス電界に付される、前記流体流路の対置する面に沿って配置される電極と、
前記流体流路に沿って前記生物学的粒子を移動させるポンプ手段と、
前記ポンプが前記流体流路に沿って前記生物学的粒子を移動させる速度に応答して、前記高圧電気エネルギーのパルスの間隔を制御する制御手段とを備え、
それによって前記流体流路に沿って移動する前記生物学的粒子が、前記電極間でパルスに付される間、所定の数のパルスに付される、
生物学的粒子の穿孔装置。
【請求項7】
a.流体流路を形作る壁、及び、前記流体流路の対置する面に沿って配置される電極からなり、前記電極は電気エネルギー源と電気的に連絡して前記電極を配置する手段を含む、生物学的粒子の穿孔のための装置に、溶液中の生物学的粒子を供給し、
b.生物学的粒子をエネルギーの最初の電気パルスに付し、
c.生物学的粒子を、エネルギーの最初の電気パルスよりも低電圧の一連の電気パルスからなる、より低電圧の電気パルスの連続に付すこと
を含む、生物学的粒子のエレクトロポレーション方法。
【請求項8】
最初の電気パルスが、約1,000〜3,200V/cmであり、より低電圧の電気パルスの連続が、それぞれ約1,000〜1,750V/cmの電気パルスの約10〜512個の連続からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
最初の電気パルスが、約2ミリ秒間の約2,130kV/cmであり、よ
り低電圧の電気パルスの連続が、それぞれ約5ミリ秒間の約1,000〜1,750V/cmの電気パルスの約312個の連続である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
さらに生物学的粒子を、反対の極性及びエネルギーの最初の電気パルスよりも低い電圧を有する電気パルスの第二の連続に付すことからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
生物学的粒子を、反対の極性をそれぞれ連続して有するパルスの連続に3〜5回付す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶液が生物学的粒子内に被包される生物学的活性物質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
溶液が約87Ω.cm〜185Ω.cmの抵抗率を有するイノシトール六リン酸溶液からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶液が約300mM〜500mMのミリオスモラリティー(milliosmolarity)のイノシトール六リン酸、約4〜8nS/cmの伝導率、及び約4〜9pptの実用塩分を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶液が約10mM〜100mMの濃度のイノシトール六リン酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
溶液が約22.5mM〜50mMの濃度のイノシトール六リン酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
溶液が約35mMの濃度のイノシトール六リン酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
溶液が約10mM〜1mMの濃度のKCl、約2mM〜0.5mMの濃度のMgCl2、及び約67.5〜270mMの濃度のショ糖を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
さらに生物学的粒子をインキュベーションチャンバーに送る、後の工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
インキュベーションチャンバーが、約150mMの塩化ナトリウム、8mMの塩化カリウム、6mMのリン酸ナトリウム、2mMの硫酸マグネシウム、10mMのグルコース、1mMのアデニン、及び1mMのイノシンを含む再封緩衝液を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに生物学的粒子を細胞洗浄装置に送る、後の工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
細胞洗浄装置が、約0.9%の塩化ナトリウム、2mMの塩化マグネシウム、2mMの塩化カルシウム、2mMの硫酸マグネシウム、及び10mMのグルコースを含む洗浄希釈剤を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
a.外側面、及び生物学的粒子が通る通路の入口及び出口を有する生物学的粒子の入り組んだ経路をその上に形作る隆起部を有する内側面からなる生物学的粒子プレートと、
b.外側面、及び洗浄液が通る通路の入口及び出口を有する、生物学的粒子の入り組んだ経路に対応する、洗浄液の入り組んだ経路をその上に形作る隆起部を有する内側面からなる洗浄液プレートと、
c.生物学的粒子と同じ大きさのまたはそれより大きい粒子の通過を防ぐ、生物学的粒子の入り組んだ経路と洗浄液の入り組んだ経路との間に配置される半透膜と
を備える、生物学的粒子の洗浄装置。
【請求項24】
生物学的粒子の入口が、洗浄液の入り組んだ経路の出口に対応する生物学的粒子の入り組んだ経路の末端に位置し、生物学的粒子の出口が、洗浄液の入り組んだ経路の入口に対応する生物学的粒子の入り組んだ経路の末端に位置する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
さらに、生物学的粒子の温度を調節するための、生物学的粒子プレートの外側面に隣接した熱伝導エレメントを含む、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
さらに、洗浄液の温度を調節するための、洗浄液プレートの外側面に隣
接した熱伝導エレメントを含む、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
生物学的粒子プレート及び洗浄液プレートがそれらの間に配置される半透膜を有する円の中に形成され、その結果、生物学的粒子の入り組んだ経路及び対応する洗浄液の入り組んだ経路が円の外周を横断する、請求項26記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2007−7430(P2007−7430A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202504(P2006−202504)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【分割の表示】特願平8−527748の分割
【原出願日】平成8年3月11日(1996.3.11)
【出願人】(505343778)マックスサイト インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】