説明

フードロック装置

【課題】ポウルとセカンダリーレバーとを兼用することにより、部品点数が少なくて済み、嵩張らないフードロック装置を提供すること。
【解決手段】フード1側にストライカ3を設け、車体2側に、回動に伴ってストライカ3と係脱し、ストライカ3と係合した時、フード1を全閉状態でロックするラッチ5、及び、回動に伴ってストライカ3と係脱し、ストライカ3と係合した時、フード1を僅かに開いた状態でロックするセカンダリーレバー6を設置し、セカンダリーレバー6に、ストライカ3と係合したラッチ5がストライカ開放方向へ回動するのを規制するラッチ押え部15を一体に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジンフードを閉鎖状態で車体にロックするのに好適なフードロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下に開閉する車両用エンジンフードを閉鎖状態で車体へロックするには、フード側に設けたストライカを車体側に設けたラッチに係合している。
例えば、特許文献1に記載のフードロック構造では、車体に固定したベースに、フードを閉じるときにストライカが進入するための溝を形成すると共に、溝を挟んだ一側に、フードが全閉状態にある時、即ち、ストライカが溝の奥に進入した時、溝を横切ってストライカと係合するラッチを回動可能に設置してある。ラッチはストライカを解放する方向に付勢されている。
【0003】
また、ベースの溝を挟んだ他側には、ラッチが溝を横切っているときに係合して、ラッチがストライカを解放する方向へ戻るのを抑制するポウルと、溝の入り口付近にあるストライカと係合して、フードを僅かに開いた状態でロックするセカンダリーレバーとがそれぞれ回動可能に設置されている。
なお、ポウルはラッチと係合する方向へ付勢され、セカンダリーレバーは溝を横切る方向へ付勢されており、ポウル及びセカンダリーレバーを付勢力に抗して回動させることにより、フードを開けることができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−149950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のフードロック装置は、ポウルとセカンダリーレバーとが別体で互いに重なり合うよう設置されているので、部品数が多くて組立に手間がかかり、装置の設置スペースが厚くなるという欠点がある。
本発明が解決しようとする課題は、ポウルとセカンダリーレバーとを兼用することにより、部品点数が少なくて済み、嵩張らないフードロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、開閉可能なフードを車体に閉鎖状態でロックするフードロック装置に関し、フード側にストライカを設け、車体側に、回動に伴って前記ストライカと係脱し、該ストライカと係合した時、前記フードを全閉状態でロックするラッチ、及び、回動に伴って前記ストライカと係脱し、該ストライカと係合した時、前記フードを僅かに開いた状態でロックするセカンダリーレバーを設置し、該セカンダリーレバーに、前記ラッチと着脱可能に係合し、係合時に前記ラッチがストライカ開放方向へ回動するのを規制するラッチ押え部を一体に設けてある。
【0007】
車体側に、前記ラッチ及びセカンダリーレバーを同一平面内において、前記ストライカの進路を挟んだ両側に並べて設置し、前記セカンダリーレバーの一端に前記ストライカと係合するフック部を設け、前記セカンダリーレバーの前記ラッチと対向する側辺に前記ラッチ押え部を形成しても良い。
この時、前記ラッチをストライカ開放方向へ付勢し、前記セカンダリーレバーを前記フック部が前記ストライカの進路を横切る方向へ付勢すると良い。
前記ラッチに、該ラッチがストライカ開放位置にある時、前記セカンダリーレバーに当接して、前記ラッチ押え部が前記ストライカの進路に進入するのを規制するセカンダリーレバー押圧部を形成するのが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ストライカと係合してフードを僅かに開いた状態でロックするセカンダリーレバーに、フード全閉状態においてラッチと係合して、開放方向への回動を規制するラッチ押え部を設けたので、閉鎖位置にあるラッチが開放位置へ回転するのを抑えるポウルを別途設ける必要が無く、この結果、部品点数が少なくて済むばかりか、厚みも薄くなり、組立工数が削減されて製造に要する手間も軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のフードロック装置は、図1及び図2に示すように、上下に開閉可能な自動車用のフード1を閉鎖状態で車体2へロックするものであって、フード1に取り付けられたストライカ3と、車体2に固定されたベース4と、ベース4にそれぞれ回動可能に、且つ、同一平面内に並べて設置されたラッチ5及びセカンダリーレバー6とを備える。
ストライカ3は、金属製の丸棒をコ字形に屈曲して成り、その両端がフード1の先端部内面に固定され、下棒部3aが車体2の前後方向に沿うよう配置されている。
ベース4は、裏面が開口した箱形をなし、車体2の裏面に固定される。また、ベース4の上端中央部にはストライカ3の下棒部3aを受け入れるための縦長の溝7が形成される。
【0010】
ラッチ5は、溝7を挟んだ一側においてベース4を貫通するピン8を中心に回動可能に設置される。
図3に示すように、ラッチ5には、その外周縁から中央部に向かってストライカ係合溝9が形成され、ストライカ係合溝9の開口部の一側において、ラッチ5の外周には、三角状の突部16を介して係止凹部10が形成されている。
また、ストライカ係合溝9の開口部の他側は、外周に近づくほど突部16から遠ざかるよう傾斜したストライカ受け面17となっており、さらに、ストライカ受け面17からやや間隔をあけた位置に、突部16と逆方向に突出したセカンダリーレバー押圧部21が形成されている。
【0011】
そして、ラッチ5は、ストライカ受け面17が溝7の上端開口部を向く開放位置(図4〜図8参照)と、ストライカ係合溝9の開口部が溝7の側縁を向く閉鎖位置(図1及び図2参照)との間を回動し、ピン8に設けたバネ11により、開放方向へ向けて付勢されている。
なお、ラッチ5が開放位置にある時、係止凹部10はベース4の溝7から遠ざかり、ラッチ5が閉鎖方向へ回動すると、係止凹部10が溝7の上端開口部方向を向くようになっている。
【0012】
セカンダリーレバー6は、溝7を挟んだ他側においてベース4を貫通するピン12を中心として回動可能に設置される。
図3に示すように、セカンダリーレバー6の一端には溝7側に屈曲したフック部13が形成され、他端部には、裏面側へ突出した位置決め突起18が形成されている。なお、この位置決め突起18には、セカンダリーレバー6を回動操作するためのケーブルが結合される。
また、セカンダリーレバー6は、フック部13がフード1の開閉に伴うストライカ3の進路、即ち、溝7の上端開口部を横切って完全に閉鎖する位置(図1及び図2参照)と、溝7の上端開口部から退避する位置(図7及び図8参照)との間を回動するようになっている。さらに、セカンダリーレバー6は、ピン12に取り付けたバネ14によって、フック部13の張り出し部分の上辺がフード1の閉鎖により下降するストライカ3を受け止める位置に向かって付勢されている。
【0013】
セカンダリーレバー6の溝7と対向する側辺には、フック部13から間隔をあけてラッチ押え部15が形成されている。
ラッチ押え部15はフック部13の張り出し部分よりやや短い長さで突出しており、ラッチ押え部15のフック部13寄りの面は、先端に近づくに従ってフック部13から遠ざかるよう傾斜したテーパー面となっている。
また、セカンダリーレバー6の溝7と対向する側辺には、ラッチ押え部15から間隔をあけて、先端縁が凹状に湾曲したラッチ受け突部22が形成されている。
さらに、セカンダリーレバー6及びラッチ5の裏側には、ピン12とピン8との間に亘ってバックプレート19が架設される。バックプレート19には、セカンダリーレバー6が溝7の上端開口部から退避した位置まで回動したときに、位置決め突起18と当接してそれ以上の回動を規制する段部20が形成されている。
【0014】
フード1が閉じているときは、図1及び図2に示すように、ベース4の溝7に進入したストライカ3の下棒部3aがラッチ5のストライカ係合溝9に係合し、ラッチ5が閉鎖位置にある。
また、セカンダリーレバー6のラッチ押え部15が上方を向いた係止凹部10に係合してラッチ5を下方へ押さえ込み、ラッチ5が開放位置へ戻るのを規制している。
この時、ストライカ係合溝9の開口部は溝7の側方、又はやや下方を向き、ラッチ5が溝7を横切って閉鎖しているので、ストライカ3は溝7から脱出することができず、フード1は完全に閉鎖した状態でロックされる。
【0015】
車内からの操作によって、セカンダリーレバー6を付勢力に抗してラッチ5から遠ざかる方向へ少し回動させると、図4及び図5に示すように、ラッチ押え部15が係止凹部10から脱出して、ラッチ5がバネ11の付勢力により開放方向へ回動する。
ラッチ5が開放方向へ回動すると、セカンダリーレバー6を解放しても、ラッチ5のセカンダリーレバー押圧部21がセカンダリーレバー6のラッチ受け突部22に当接して、セカンダリーレバー6のラッチ押え部15がストライカ3の進路に進入せず、フック部13のみがストライカ3の進路を塞ぐよう、セカンダリーレバー6の復帰を規制する。
また、ラッチ5の回動に伴い、ストライカ3の下棒部3aがラッチ5のストライカ受け面17に押されて、ラッチ押え部15で邪魔されることなく溝7内を上昇し、セカンダリーレバー6のフック部13と係合する。この結果、フード1は僅かに開いた状態で保持される。
【0016】
さらに、図7及び図8に示すように、セカンダリーレバー6を付勢力に抗して大きく回動させると、ストライカ3がフック部13から外れ、ストライカ3及びフード1を開扉させることが可能となる。
なお、セカンダリーレバー6は、位置決め突起18がバックプレート19の段部20に当接した位置で停止し、強制的に回動させようとする力が消えると、バネ14の力で、ラッチ受け突部22がラッチ5のセカンダリーレバー押圧部21に当接する位置、即ち、フック部13の張り出し部分が溝7を横切る位置に復帰する。
【0017】
再びフード1を閉じるために押し下げると、フード1と共に下降したストライカ3の下棒部3aがセカンダリーレバー6のフック部13にぶつかり、セカンダリーレバー6を押し開きながら溝7に進入する。
さらに、フード1を押し下げると、ストライカ3はラッチ5のストライカ受け面17に衝突し、ラッチ5を回動させながら溝7の奥方へ進む。
セカンダリーレバー6は、ストライカ3が通過した後、バネ14の付勢力により元の位置に復帰する。
【0018】
ラッチ5は、セカンダリーレバー6のラッチ押え部15を押し退けながら閉鎖位置まで回動し、ラッチ5の係止凹部10が上方を向く。
セカンダリーレバー6は、ラッチ5の突部16がラッチ押え部15を通過した後、元の位置に復帰しようと回動し、図1及び図3に示すように、ラッチ押え部15がラッチ5の係止凹部10に係合して、ラッチ5を閉鎖位置で固定する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フード閉鎖状態におけるフードロック装置の裏面図。
【図2】フード閉鎖状態におけるフードロック装置の表面図。
【図3】フード閉鎖状態におけるラッチ及びセカンダリーレバーの裏面図。
【図4】フードが僅かに開いた状態におけるフードロック装置の裏面図。
【図5】フードが僅かに開いた状態におけるフードロック装置の表面図。
【図6】フードが僅かに開いた状態におけるラッチ及びセカンダリーレバーの裏面図。
【図7】フード開放状態におけるフードロック装置の裏面図。
【図8】フード開放状態におけるフードロック装置の表面図。
【符号の説明】
【0020】
1 フード
2 車体
3 ストライカ
3a 下棒部
4 ベース
5 ラッチ
6 セカンダリーレバー
7 溝
8 ピン
9 ストライカ係合溝
10 係止凹部
11 バネ
12 ピン
13 フック部
14 バネ
15 ラッチ押え部
16 突部
17 ストライカ受け面
18 位置決め突起
19 バックプレート
20 段部
21 セカンダリーレバー押圧部
22 ラッチ受け突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能なフードを車体に閉鎖状態でロックするフードロック装置において、フード側にストライカを設け、車体側に、回動に伴って前記ストライカと係脱し、該ストライカと係合した時、前記フードを全閉状態でロックするラッチ、及び、回動に伴って前記ストライカと係脱し、該ストライカと係合した時、前記フードを僅かに開いた状態でロックするセカンダリーレバーを設置し、該セカンダリーレバーに、前記ラッチと着脱可能に係合し、係合時に前記ラッチがストライカ開放方向へ回動するのを規制するラッチ押え部を一体に設けてあることを特徴としたフードロック装置。
【請求項2】
車体側に、前記ラッチ及びセカンダリーレバーを同一平面内において、前記ストライカの進路を挟んだ両側に並べて設置し、前記セカンダリーレバーの一端に前記ストライカと係合するフック部を設け、前記セカンダリーレバーの前記ラッチと対向する側辺に前記ラッチ押え部を形成してある請求項1に記載のフードロック装置。
【請求項3】
前記ラッチはストライカ開放方向へ付勢され、前記セカンダリーレバーは前記フック部が前記ストライカの進路を横切る方向へ付勢されている請求項2に記載のフードロック装置。
【請求項4】
前記ラッチに、該ラッチがストライカ開放位置にある時、前記セカンダリーレバーに当接して、前記ラッチ押え部が前記ストライカの進路に進入するのを規制するセカンダリーレバー押圧部を形成してある請求項1から3のいずれかに記載のフードロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65427(P2010−65427A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231708(P2008−231708)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000146434)株式会社城南製作所 (47)
【Fターム(参考)】