説明

ブテン−1ターポリマー及びその製造方法

含量が0.5〜13モル%のプロピレン誘導単位;及び、含量が1〜3モル%のエチレン誘導単位;1〜10の、プロピレン誘導単位とエチレン誘導単位の含量の比C/C;を有し、190℃/2.16kgにおいて測定して0.3〜3g/10分のメルトフローレートMIE、及びGPCによって測定して、4〜10のMw/Mn比を有し、1×10以下の分子量の部分が全面積の22%以上を占める分子量分布曲線を有する、ブテン−1ターポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、16モル%以下のエチレン及びプロピレン誘導単位を含むブテン−1ターポリマー、並びにその製造方法に関する。
本発明は、更に、本発明のブテン−1ターポリマーから得られる物品に関する。特に、本発明は、化学特性及び物理特性の特定の組合せを有することを特徴とするブテン−1ターポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ブテン−1(コ)ポリマーは当該技術において周知である。耐圧性、耐クリープ性、及び衝撃強さに関するそれらの良好な特性を考慮して、これらは主として金属管の代替において用いられる管材の製造において用いられている。それらの良好な特性にもかかわらず、ブテン−1物品、特に管材の特性は、時には一般的な機械特性に関して完全に満足できるものにはならない。
【0003】
床下暖房(UFH)は、管材の分野において特に要求の厳しい用途であり、高い可撓性及び弾性(曲げ後の低い記憶効果)と一緒に、最大の耐圧性及び耐温度性が求められる。特に、現場での設置を容易にするために可撓性及び弾性が求められている。
【0004】
したがって、物品(特に管材)が、耐圧性及び耐クリープ性並びにそれから得られる管材の優れた可撓性及び弾性を与えることを可能にする機械特性の組合せを有するように当該技術において公知のブテン−1(コ)ポリマーを改良することが望ましいであろう。
【0005】
ブテン−1(コ)ポリマーは、共触媒としてジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)と一緒にTiClベースの触媒成分の存在下で、ブテン−1を重合することによって製造することができる。幾つかの場合においては、ジエチルアルミニウムイオダイド(DEAI)もDEACとの混合物で用いられる。しかしながら、得られるポリマーは一般に満足できる機械特性を示さない。
【0006】
更に、TiClベースの触媒を用いて得られる低い収率を考慮すると、これらの触媒を用いて製造されるポリブテンは触媒残渣の高い含量(一般に300ppmより多いTi)を有し、これによりポリマーの特性が低下して脱灰工程が必要になる。
【0007】
また、ブテン−1(コ)ポリマーは、(A)MgCl上に担持されているTi化合物及び電子ドナー化合物を含む固体成分;(B)アルキルアルミニウム化合物;及び場合によっては(C)外部電子ドナー化合物;を含む立体特異性触媒の存在下でモノマーを重合することによっても得ることができる。
【0008】
このタイプのプロセスはEP−A−172961に開示されている。このプロセスにより、0〜1モル%の少量のブテン−1以外のオレフィンコモノマーを含み、135℃においてデカリン中で測定して1.5〜4の固有粘度(η)、少なくとも95%のアイソタクチシティー値、及びMw/Mnで表して6以下の分子量分布(MWD)を有する剛性のブテン−1(コ)ポリマーを製造することができる。
【0009】
WO−2004/048424においては、2つの液相反応器内での逐次重合プロセス(実施例11)を用いて得られるブテン−1(コ)ポリマーが開示されている。これは、2つの反応器内で異なる平均分子量及びしたがって場合によっては二峰性タイプのより広い分子量分布を得るために、2つの反応器での運転条件を調整することができることを開示する。
【0010】
WO−1999/045043においては、高い結晶化度及び幅広い分子量分布を有するブテン−1ポリマーが記載されている。ポリマーは、異なる条件下の2つの反応器内における6以上のMWDが得られる立体特異性MgCl担持触媒の存在下での逐次重合によって得られる。MWDが非常に幅広い(それぞれ10.3及び8)この特許出願の実施例1及び2においては、破断点強さは良好(37.8及び38MPa)であるが、曲げ弾性率は過度に高かった(570及び430MPa)。
【0011】
WO−2003/099883においては、中/狭のMWD(6より低いMw/Mn)を有することを特徴とするブテン−1(コ)ポリマーは、好適な機械特性及び長時間耐圧性を示すが、曲げ弾性率は未だ非常に高いことが記載されている。
【0012】
EP−1219645においては、6×10以上の分子量の部分がGPC曲線及び水平軸で囲まれた面積として定義される全面積の20%以上を占めるGPC分布曲線を有することを特徴とする大きなMWD(6以上のMw/Mn)を有する、20モル%以下のブテン以外のα−オレフィンを含むブテン−1(コ)ポリマーが記載されている。EP−1219645における(コ)ポリマーは、異なるMFR値を有する樹脂を混合することによって得られ、これによって管材用の剛性及び耐圧性の組成物の成形性が改良される。
【0013】
EP−1308466においては、20モル%以下のブテン以外のα−オレフィンを含むブテン−1(コ)ポリマーが記載されており、これは、ブテンコポリマーがコポリマーの特性に有害でない少量の第3のα−オレフィンを含むターポリマーであってよいことを開示している。EP−1215239においては、ポリブテン−1−(コ)ポリマーとプロピレン(コ)ポリマーをブレンドすることによってポリ−1−ブテン組成物を得ており、これによって耐クリープ性及び可撓性を損なうことなく硬化時間の短縮及びより良好な加工性を得ている。
【0014】
EP−0302297においては、5〜60%のX線結晶化度及び110℃の最大溶融温度を有するブテン−1のターポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】EP−A−172961
【特許文献2】WO−2004/048424
【特許文献3】WO−1999/045043
【特許文献4】WO−2003/099883
【特許文献5】EP−1219645
【特許文献6】EP−1308466
【特許文献7】EP−1215239
【特許文献8】EP−0302297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のブテンポリマーは全て管材の製造のために好適であるが、特に上記に記載のように耐圧性及び耐温度性と組みあわせて可撓性及び弾性が求められる床下暖房(UFH)用途のための改良された特性を与えるブテン−1ポリマーに対する必要性が未だ感じられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明の目的は、
含量が0.5〜13モル%、好ましくは0.7〜12.9モル%、より好ましくは2.6〜5.2モル%のプロピレン誘導単位;及び
含量が0.5〜3モル%、好ましくは1乃至2モル%未満のエチレン誘導単位;
1〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4のプロピレン及びエチレン誘導単位のモル含量の比C/C
を有し、190℃/2.16kgにおいて測定して0.3〜3g/10分のメルトフローレート(MIE)、及びGPCによって測定して4〜10、好ましくは5〜9のMw/Mn比を有し、1×10以下の分子量の部分が全面積の22%以上を占める分子量分布(MWD)曲線を更に有するブテン−1ターポリマーを提供することである。上記の全面積は、ポリマーの実質的に完全な溶出から得られるGPC曲線によって囲まれた面積として定義することができる。これは通常、溶出の開始点から溶出の終了点まで引かれた基線を用いてGPC曲線を積分することによって計算される。通常利用できる積分ソフトウエアをこの目的のために用いることができる。したがって、得られる面積はGPC曲線と基線によって囲まれた面積である。1×10以下の分子量の部分は、1×10より低いかかる面積の部分によって表され、これは1×10以下の溶出ポリマーの分子量に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
二峰性タイプのMWD曲線を有するブテン−1ターポリマーが好ましい。
特に異なる平均分子量(即ち異なるメルトフローレート範囲)の2種類のポリマー成分:
(1)0.5〜13モル%、好ましくは0.7〜12.9モル%、より好ましくは2.6〜5.2モル%のプロピレン誘導単位の含量;
0.5〜3モル%、好ましくは1乃至2モル%未満のエチレン誘導単位の含量;
190℃/21.6kgにおいて測定して10〜45g/10分、好ましくは15〜45g/10分のメルトフローレート(MIF);
を有するブテン−1のコポリマーから構成される第1の成分40〜60重量%;並びに
(2)190℃/2.16kgにおいて測定して0.5〜20g/10分、好ましくは4.5〜18g/10分のメルトフローレート(MIE)を有するブテン−1のコポリマーから構成され、
(a)0.5〜13モル%、好ましくは0.7〜12.9モル%、より好ましくは2.6〜5.2モル%のプロピレン誘導単位の含量を有するブテン−1とプロピレンとのコポリマー;及び
(b)0.5〜13モル%、好ましくは0.7〜12.9モル%、より好ましくは2.6〜5.2モル%のプロピレン誘導単位の含量;及び
0.5〜3モル%、好ましくは1乃至2モル%未満のエチレン誘導単位の含量;
を有するブテン−1とプロピレン及びエチレンとのコポリマー;
からなる群から選択される第2の成分60〜40重量%;
から構成されるブテン−1ターポリマーが好ましい。
【0019】
成分(1)は、実質的に、コモノマーとして限定量のブテン−1、プロピレン、及びエチレンを共重合することによって得られるブテン−1のより高い平均分子量のターポリマーである。
【0020】
成分(2)は、実質的に、コモノマーとして限定量のブテン−1とプロピレンを共重合するか又はブテン−1、プロピレン、及びエチレンを共重合することによって得られるブテン−1のより低い平均分子量のターポリマー又はコポリマーである。
【0021】
上記の定義から、ターポリマーという用語は、ここでは3つのタイプのモノマー(即ち、ブテン−1、プロピレン、及びエチレン)から誘導される単位を含むポリマー又はポリマー組成物を定義するように用いることが明らかである。本発明によるターポリマーは、好ましくは、2成分で共重合したコモノマーに関して同一か又は異なる組成(組成二峰性)を有する異なる分子量(分子量二峰性)の2つの成分を含む。したがって、本発明のターポリマーは、単一の重合工程で得られる単一のポリマーであっても、或いはそれぞれの成分がブテンコポリマー又はターポリマーであり、それぞれの成分が84モル%以上のブテン−1誘導単位の含量を有する複数のポリマー成分のブレンドであってもよい。
【0022】
本発明のブテン−1ターポリマーは、好ましくは、
5重量%より大きく、好ましくは5.5〜7.5重量%の室温(25℃)におけるキシレン中の溶解度;
190℃/2.16kgにおいて測定して0.4〜1.5、特に0.5〜1.2g/10分の範囲のメルトフローレート(MIE);
好ましくは110℃より高い溶融温度(Tm1);
次式:
アイソタクチシティー=(A1/(A1+A2))×100
(ここで、
A1は35.35〜34.90ppmの間の全面積であり;
A2は34.90〜34.50ppmの間の面積であり;
化学シフトの基準はブテン単位側鎖メチレン(mmmm)=27.73である)
にしたがうブテン−1メチン領域を用いて、公知の方法にしたがって600MHz分光光度計で採取した13C−NMRスペクトルから誘導することのできるブテンアイソタクチックトリアドに関して測定して93%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上のアイソタクチシティー;
を有する。
【0023】
本発明のターポリマーは、上記に定義のポリマー成分(1)及び(2)をブレンドするか、又は1段階以上の反応器内で行う重合プロセスにおいてコモノマーを直接重合することによって得ることができる。一般に2以上の反応器内で行う逐次重合プロセスが好ましい。
【0024】
ブレンドするコポリマーを得るか又は最終ターポリマーを直接得るためのモノマーの重合は、(A)MgCl上に担持されているTi化合物及び内部電子ドナー化合物を含む固体成分;(B)アルキルアルミニウム化合物;及び場合によっては(C)外部電子ドナー化合物;を含む立体特異性触媒の存在下で行う。
【0025】
担体としては、好ましくは活性形態の二塩化マグネシウムを用いる。活性形態の二塩化マグネシウムはチーグラー・ナッタ触媒用の担体として特に適していることが、特許文献から広く知られている。特に、米国特許4,298,718及び米国特許4,495,338は、チーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を最初に記載したものである。これらの特許から、オレフィン重合用の触媒の成分において担体又は共担体として用いられる活性形態の二ハロゲン化マグネシウムは、非活性ハロゲン化物のスペクトルにおいて見られる最も強い回折線が、強度低下して、その最大強度がより強い線のものよりも低い角度に向かって転置しているハロによって置き換えられているX線スペクトルを有することを特徴とすることが知られている。
【0026】
本発明の触媒成分において用いられる好ましいチタン化合物は、TiCl及びTiClであり;更には、式:Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの間の数である)のTi−ハロアルコラートを用いることもできる。
【0027】
内部電子ドナー化合物は、好ましくはエステル、より好ましくはモノカルボン酸、例えば安息香酸、又はポリカルボン酸、例えばフタル酸若しくはコハク酸のアルキル、シクロアルキル、又はアリールエステルから選択され、ここで、該アルキル、シクロアルキル、又はアリール基は、1〜18個の炭素原子を有する。かかる電子ドナー化合物の例は、ジイソブチルフタレート、ジエチルフタレート、及びジヘキシルフタレートである。一般に、内部電子ドナー化合物は、MgClに対して0.01〜1、好ましくは0.05〜0.5のモル比で用いる。
【0028】
固体触媒成分の製造は、幾つかの方法にしたがって行うことができる。
これらの方法の1つによれば、無水状態の二塩化マグネシウム及び内部電子ドナー化合物を、二塩化マグネシウムの活性化が起こる条件下で一緒に粉砕する。かくして得られる生成物を、80〜135℃の間の温度において、過剰のTiClで1回以上処理することができる。この処理に続いて、塩化物イオンが消失するまで炭化水素溶媒で洗浄する。更なる方法によれば、無水状態の塩化マグネシウム、チタン化合物、及び内部電子ドナー化合物を共粉砕することによって得られる生成物を、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のようなハロゲン化炭化水素で処理する。この処理は、40℃乃至ハロゲン化炭化水素の沸点の温度において1〜4時間行う。次に、得られる生成物を一般にヘキサンのような不活性炭化水素溶媒で洗浄する。
【0029】
他の方法によれば、二塩化マグネシウムを周知の方法にしたがって予め活性化し、次に約80〜135℃の温度において、溶液中に内部電子ドナー化合物を含む過剰のTiClで処理する。TiClによる処理を繰り返し、未反応のTiClを除去するために固体をヘキサンで洗浄する。
【0030】
更なる方法は、マグネシウムのアルコラート又はクロロアルコラート(特に米国特許4,220,554にしたがって製造されるクロロアルコラート)と、溶液中に内部電子ドナー化合物を含む過剰のTiClとを、約80〜120℃の温度で反応させることを含む。
【0031】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式:Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの間の数である)のチタン化合物、好ましくはTiClを、式:MgCl・pROH(式中、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の数であり、Rは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加体から誘導される塩化マグネシウムと反応させることによって製造することができる。この付加体は、好適には、付加体と非混和性の不活性炭化水素の存在下において、付加体の融点(100〜130℃)において撹拌条件下で操作して、アルコールと塩化マグネシウムとを混合することによって、球状形態で製造することができる。次に、エマルジョンを速やかに急冷し、それによって球状粒子の形態で付加体の固化を起こさせる。この手順によって製造される球状付加体の例は、米国特許4,399,054及び米国特許4,469,648に記載されている。かくして得られる付加体は、Ti化合物と直接反応させることができ、或いは、アルコールのモル数が一般に3よりも低く、好ましくは0.1〜2.5の間である付加体を得るために、予め熱制御脱アルコール化(80〜130℃)にかけることができる。Ti化合物との反応は、付加体(脱アルコール化されたもの又はそのまま)を冷TiCl(一般に0℃)中に懸濁し;混合物を80〜130℃に加熱し、この温度に0.5〜2時間保持することによって行うことができる。TiClによる処理は1回以上行うことができる。内部電子ドナー化合物は、TiClによる処理中に加えることができる。電子ドナー化合物による処理は1回以上繰り返すことができる。
【0032】
球状形態の触媒成分の製造は、例えば、ヨーロッパ特許出願EP−A−395083、EP−A−553805、EP−A−553806、EPA−601525、及びWO−98/44001に記載されている。
【0033】
上記の方法にしたがって得られる固体触媒成分は、一般に20〜500m/g、好ましくは50〜400m/gの表面積(BET法による)、及び0.2cm/gより高く、好ましくは0.2〜0.6cm/gの全多孔度(BET法による)を示す。10,000Å以下の半径を有する孔による多孔度(Hg法)は、一般に0.3〜1.5cm/g、好ましくは0.45〜1cm/gの範囲である。
【0034】
アルキル−Al化合物(B)は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。また、トリアルキルアルミニウムと、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、又はアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEtCl及びAlEtClとの混合物を用いることもできる。
【0035】
外部ドナー(C)は、好ましくは、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、場合によってはヘテロ原子を有する、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)のケイ素化合物の中から選択される。ケイ素化合物の特に好ましい群は、aが0であり、cが3であり、bが1であり、Rが、場合によってはヘテロ原子を有する分岐アルキル又はシクロアルキル基であり、Rがメチルであるものである。かかる好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、及びテキシルトリメトキシシランである。テキシルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0036】
電子ドナー化合物(C)は、0.1〜500、好ましくは1〜300、より好ましくは3〜100の有機アルミニウム化合物と該電子ドナー化合物(c)との間のモル比を与える量で用いる。
【0037】
触媒を重合工程のために特に好適にするために、かかる触媒を予備重合工程において予備重合することができる。かかる予備重合は、液体(スラリー又は溶液)中、又は気相中で、一般に100℃より低く、好ましくは20〜70℃の温度において行うことができる。予備重合工程は、少量のモノマーを用いて、固体触媒成分1gあたり0.5〜2000g、好ましくは固体触媒成分1gあたり5〜500、より好ましくは10〜100gの量のポリマーを得るのに必要な時間行う。
【0038】
重合プロセスは、公知の技術、例えば希釈剤として液体不活性炭化水素を用いるスラリー重合、或いは反応媒体として例えば液体ブテン−1を用いる溶液重合にしたがって行うことができる。更に、重合プロセスを、1以上の流動床又は機械撹拌床反応器内で操作して気相中で行うこともできる。反応媒体として液体ブテン−1中で行う重合が非常に好ましい。
【0039】
重合は、一般に20〜120℃、好ましくは40〜90℃の温度において行う。重合は、分子量調整剤の濃度、コモノマー濃度、温度、圧力等のような反応条件について、同一か又は異なる反応条件下で操作することができる1以上の反応器内で行うことができる。異なる条件下の1つより多い反応器内で操作することにより、2つの反応器内で異なる平均分子量を有し、したがって幅広い分子量分布を有する二峰性タイプのブテン−1コポリマーを製造することができる。更に、異なる条件下の1つより多い反応器内で操作することは、最終ポリマーの特性を適切に調整するように種々の重合工程を適切に調節することができるという有利性を有する。異なる分子量を有するポリマーを機械的にブレンドするプロセスと比較して、多段階又は逐次重合プロセスが好ましく、2つの成分の分子パラメーターにおける大きな相違にもかかわらず良好な均一性を有するポリマーが製造されるという有利性を有する。
【0040】
慣例として、当業者は、発明の要旨から逸脱することなく、更に、特定の特性を与えることができる、ポリマー成分、添加剤(例えば、安定剤、酸化防止剤、腐食防止剤、成核剤、加工助剤等)、並びに有機充填剤及び無機充填剤の両方を加えることができる。
【0041】
本発明を限定することなく本発明をより良好に示すために以下の実施例を与える。
【実施例】
【0042】
特性分析:
コモノマー含量:
以下の方法にしたがってIR分光法によって測定した。
【0043】
0〜12重量%のエチレンの範囲の変性ポリブテン中のエチレンの重量%(%Cwt)の測定:
ポリマーのプレスフィルムのスペクトルを吸光度対波数(cm−1)で記録した。次の測定値を用いてC含量を算出した:
(a)フィルム厚さの分光標準化のために用いる4482〜3950cm−1の間の結合吸収バンドの面積(At);
(b)メチレン基(CH揺れ振動)のBEE及びBEB配列(B:1−ブテン単位;E:エチレン単位)による吸収バンドから構成されるポリマー試料のスペクトルと基準スペクトル(CPBと呼ぶ)との間のデジタル減算の減算係数(FCRC);
(c)CPBスペクトルを減算した後の残留バンドの面積(AC2,ブロック);これはメチレン基(CH揺れ振動)のEEE配列に由来する。
【0044】
分析時間:20分間。
0.5〜18重量%の範囲のプロピレンで変性したアイソタクチックポリブテン中のプロピレンの重量%(%Cwt)の測定:
T=130℃の温度において、ポリマーのプレスフィルムのスペクトルを吸光度対波数(cm−1)で記録した。次の測定値を用いてC含量を算出した:
(a)フィルム厚さの分光標準化のために用いる4482〜3950cm−1の間の結合吸収バンドの面積(At);
(b)130℃において記録したポリブテンホモポリマーの基準スペクトルの適当な分光減算の後の、約820cm−1(ピークの最大値)を中心とするプロピレン単位による規則バンドの高さ(DC)。
【0045】
分析時間:30分間。
多分散指数の測定:
この特性は、試験対象のポリマーの分子量分布に密接に関係する。特に、これは溶融状態のポリマーの耐クリープ性に反比例する。低弾性率値(500Pa)における弾性率分離と呼ばれるかかる抵抗値は、0.1rad/秒から100rad/秒に上昇する振動数で操作するRHEOMETRICS(米国)によって販売されている平行プレート流量計モデルRMS-800を用いることによって、200℃の温度において測定した。弾性率分離の値から、次式:
PI=54.6×(弾性率分離)−1.76
(式中、弾性率分離は、
弾性率分離=(G’=500Paにおける振動数)/(G”=500Paにおける振動数)
(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)
である)
を用いてPIを誘導することができる。
【0046】
メルトフローレート(MFR)の測定:
ISO−1133法にしたがって測定した。
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるMWDの測定:
1mL/分の流速で、溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)(0.1体積の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)で安定化)を用い、135℃において操作する、赤外検出器IR4 POLIMERCHAR及びTSKカラムセット(タイプGMHXL-HT)を備えたWaters 150-C ALC/GPCシステムを用いて、MWD曲線を求めた。140℃の温度において1時間連続的に撹拌することによって試料をTCB中に溶解した。
【0047】
0.45μmのテフロン(商標登録)膜を通して溶液を濾過した。濾液(濃度0.08〜1.2g/L、注入体積300μL)をGPCにかけた。ポリスチレンの単分散フラクション(Polymer Laboratoriesによって提供)を標準試料として用いた。ターポリマー中のコモノマー含量に関して秤量したPS(K=1.21×10−4dL/g;α=0.706)、及びPB(K=1.78×10−4dL/g;α=0.725)、PE(K=4.06×10−4dL/g;α=0.725)、PP(K=1.90×10−4dL/g;α=0.725)に関するMark-Houwink定数の線形結合を用いることによって、PBコポリマーに関する普遍較正を行った。
【0048】
ソフトウェアEater Empower v.1を使用してデータの収集と計算を行った。溶出開始時間から溶出終了時間までで引かれた基線(即ち、溶出ピークがポリマーに寄与する前のバックグラウンドノイズ領域から出発して、最終のバックグラウンドノイズ領域中のピーク領域後に終了する)を用いて、MWD曲線の積分を行った。全面積(100%)と10までのより高い分子量側から出発して算出した累積面積(%)との差として、10より下の面積(%)を求めた。
【0049】
引張り特性:降伏点強さ、破断点強さ、破断点伸び:
ISO−8986−2にしたがい、試験片タイプASTM−D638を用いて、Brabender内において対応するコポリマー試料を1%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)と180℃において混合することによって得られたポリマー組成物を圧縮成形(200℃、30℃/分の冷却を行う)することによって得られた厚さ1.9mmのプラークについて測定した。
【0050】
試験前に、PBの相転移を促進させるために、厚さ1.9mmのプラークを室温において200bar(20MPa)のオートクレーブ中に10分間配置した。
曲げ弾性率:
ASTM−D790にしたがって測定した。
【0051】
融点の測定:
予めインジウム及び亜鉛の融点に対して較正したPerkin Elmer DSC-1熱量計上での示差走査熱量測定(DSC)によって、実施例のポリマーの融点(Tm)を測定した。各DSCるつぼ内の試料の重量を6.0±0.5mgに保持した。
【0052】
本発明のコポリマーに関しては、DSC溶融温度グラフにおいてポリブテンの2つの異なる結晶形態(即ち形態I及び形態II)を区別することができる。これは、これらが異なる融点を有しているからである。即ち、形態Iは常に形態IIよりも高い温度で溶融する。更に、形態IIは結晶化する間に溶融体から析出するが、より安定な形態Iは特定量の時間室温でアニールすることによって形成される。
【0053】
連続加熱モードでのデータの獲得は以下のようにして行った。
(a)秤量した試料をアルミニウム皿中に密封し、10℃/分で180℃に加熱した。試料を180℃において5分間保持して全ての微結晶を完全に溶融させ、次に10℃/分で−20℃に冷却した。−20℃において2分間静置した後、10℃/分で180℃への試料の2回目の加熱を行った。この2回目の加熱操作において、ピーク温度を形態IIの融点(TmII)としてとり、ピークの面積をその溶融エンタルピー(ΔHf)としてとった;
(b)試料を室温において異なる時間(数時間から数日間まで)アニールした;
(c)10℃/分の加熱速度で室温から180℃まで加熱走査して、形態II→形態Iの固体−固体転移の進行を測定するのに必要な温度グラフを得て、これによって形態Iの融点(TmI)を測定した。
【0054】
曲げヒステリシス:
試験片は曲げ弾性率ISO−178のために用いた4mmの圧縮成形体であり、装置も同じであった。
【0055】
相転移を促進させるために、試験片を、2000barにおいてT=23℃で油と共にオートクレーブ内で10分間熟成させた。
24時間後、曲げ弾性率ISO−178の構成を用いて分析を行った。試験片の静止位に対して10%の変形を試験片に加えた。試験片は2mm/分で変形させた。
【0056】
変形させるために加えた全エネルギー(Etotal)は、吸収されたエネルギー(Eabsorbed−塑性エネルギー)と放出されたエネルギー(Ereleased−弾性エネルギー)の和に等しい。
【0057】
ヒステリシスパラメーターは、100×(Etotal−Ereleased)/Etotalとして算出される。
ヒステリシスパラメーターの値が最も低いと、生成物はより弾性であり、10%の曲げ比へより良好に反応する。
【0058】
実施例:
固体触媒成分の製造:
窒素でパージした500mLの四つ口丸底フラスコ中に、0℃において225mLのTiClを導入した。撹拌しながら、6.8gの微細球状MgCl・2.7COH(米国特許4,399,054の実施例2の記載のようにして、しかしながら10,000に代えて3,000rpmで操作して調製した)を加えた。フラスコを40℃に加熱し、直ちに4.4ミリモルのジイソブチルフタレートを加えた。温度を100℃に上昇させ、2時間保持し、次に撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。
【0059】
200mLの新しいTiClを加え、混合物を120℃において1時間反応させ、次に上澄み液を吸い出し、得られた固体を60℃の無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄し、次に真空下で乾燥した。触媒成分は、2.8重量%のTi及び12.3重量%のフタレートを含んでいた。
【0060】
実施例1〜2:逐次共重合によるブテン−1/プロピレン/エチレンコポリマー(ターポリマー)の製造:
実施例1〜2においては、予備接触工程の後に、液体ブテン−1が液体媒体を構成する直列に接続した2つの液相撹拌反応器(R1、R2)内で逐次重合を行った。予備接触工程中に、固体触媒成分、Al−アルキル化合物であるTIBAL(即ちトリイソブチルアルミニウム)、及び外部ドナーであるテキシルトリメトキシシランを、表1に報告する条件下で予備混合した。表1に報告する条件下で操作する第1の反応器中に触媒系を注入した。
【0061】
第1の重合工程の後、第1の反応器の内容物を第2の反応器中に移し、ここで同じ表1に報告する条件下で重合を続けた。触媒を失活させ、重合物を揮発分除去工程に移すことによって重合を停止した。
【0062】
プロセスの詳細な説明は、国際特許出願WO−04/000895において見られる。
得られたターポリマーに関して行った特性分析の結果を表1bに報告する。
比較例1(1C):ブテン−1/エチレンコポリマー:
同じ表1に報告する条件下で、実施例1及び2と同様に重合を行った。
【0063】
コポリマーの特性を表2に報告する。
比較例2(2C):ブテン−1ホモポリマー:
BasellによってPB0110Mの商品名で製造されており、0.4g/10分のメルトフローレート値(190℃及び2.16kgにおいて測定したMIE)、0.914kg/dmの密度を有する商業グレードのブテン−1ホモポリマー。比較の目的でこのポリマーの特性を測定し、表2に報告した。
【0064】
実施例及び比較例から、単純に大きな分子量分布(比較例2c)によるものではなく、コモノマーとしてエチレン及びプロピレンの両方を存在させないと得ることができない(比較例1c)、目標の特性に対するコモノマー(即ち、エチレン及びプロピレン)並びにその量の役割が明らかである。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
含量が0.5〜13モル%のプロピレン誘導単位;及び
含量が0.5〜3モル%のエチレン誘導単位;
1〜10の、エチレン誘導単位のモル含量に対するプロピレン誘導単位のモル含量の比C/C
を有し、190℃/2.16kgにおいて測定して0.3〜3g/10分のメルトフローレートMIE、及びGPCによって測定して、4〜10のMw/Mn比を有し、1×10以下の分子量の部分が全面積の22%以上を占める分子量分布曲線を更に有する、ブテン−1ターポリマー。
【請求項2】
(1)含量が0.5〜13モル%のプロピレン誘導単位、
含量が0.5〜3モル%のエチレン誘導単位、
190℃/21.6kgにおいて測定して10〜45g/10分のメルトフローレートMIF、
を有するブテン−1のコポリマー40〜60重量%;並びに
(2)190℃/2.16kgにおいて測定して0.5〜10g/10分のメルトフローレートMIEを有し、
(a)含量が0.5〜13モル%のプロピレン誘導単位有するブテン−1とプロピレンとのコポリマー、及び(b)含量が0.5〜13モル%のプロピレン誘導単位、含量が0.5〜3モル%のエチレン誘導単位、を有するブテン−1とプロピレン及びエチレンとのコポリマー、からなる群から選択される、
ブテン−1のコポリマー60〜40重量%;
を含む、請求項1に記載のブテン−1ターポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブテン−1ターポリマーから得られる製造物品。
【請求項4】
パイプの形態の、請求項3に記載の製造物品。
【請求項5】
ブテン−1とエチレン及び/又はプロピレンとを、(A)MgCl上に担持されているTi化合物及び内部電子ドナー化合物を含む固体触媒成分;(B)アルキルアルミニウム化合物;及び(C)式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり;cは1〜3の整数であり;(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、場合によってはヘテロ原子を含む、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)の外部電子ドナー化合物;を含む立体特異性触媒の存在下で共重合することを含む、請求項1又は2に記載のブテン−1ターポリマーの製造方法。
【請求項6】
外部電子ドナー化合物がテキシルトリメトキシシランである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体ブテン−1中で行う、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
共重合を異なる反応条件下で運転される少なくとも2つの反応器内で行う、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2010−525121(P2010−525121A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504616(P2010−504616)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054392
【国際公開番号】WO2008/132035
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】