説明

ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーを含む抗菌剤および抗菌性組成物

【課題】 食経験が長く、安全性の高いブドウ果皮由来の、プロシアニジンオリゴマーを有効成分として含有する抗菌剤、抗菌性組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、ブドウ果皮由来の抽出物を有効成分として含むことを特徴とする抗菌剤、及び該抗菌剤を含有する抗菌性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーを有効成分として含むことを特徴とする抗菌剤および該抗菌剤を含有する抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境に於ける安全、安心への関心の高まりから、日常生活で抗菌作用を有する物質が多く利用されている。抗菌物質としては、日常の生活環境での使用を考慮すると、安全性の点からも、食経験や使用経験がある天然成分を利用することが望ましく、天然物、特に植物由来の抗菌性物質についてのニーズが高まっている。さらに、有害細菌に対する抗菌力が強く、安全で、かつ、入手の容易な抗菌性物質に対する要望は大変強いものがある。しかしながら、現状では、天然物由来の抗菌剤は少なく、存在したとしても抗菌力が弱く、抗菌スペクトルが狭いなど問題点が多い。
【0003】
天然物としては、多くの種類の植物に含まれるポリフェノールに、様々な機能性が報告されている。その中のカテキンに細菌、真菌、ウイルスなどの増殖や生育を阻害する性質があることが知られている。また、プロシアニジンには、抗酸化作用や血管内皮機能改善作用など有用な機能を有していることが報告されている。(特許文献1および特許文献2参照)しかしながら、ブドウ果皮由来の抽出物、特にプロシアニジンオリゴマーが、化膿細菌、食中毒関連細菌、MRSAに対して抗菌活性があることについては、今まで知られていない。
【特許文献1】特開2008−201745
【特許文献2】特開2007−008836
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、抗菌性に優れ、安全で、かつ、入手の容易な抗菌剤および該抗菌剤を含有する抗菌性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けた結果、ブドウ果皮抽出物から分画されたプロシアニジン類、特にその中のプロシアニジンオリゴマー画分に化膿細菌、食中毒関連細菌、MRSAなどに対して抗菌活性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーを有効成分として含むことを特徴とする抗菌剤。
(2)上記(1)記載の抗菌剤を含有する抗菌性組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーを有効成分として含む抗菌剤は、天然物由来で、さらに長い食経験もあるため安全性も高く、食品、化粧品等をはじめ、様々な分野で利用することができる。また、ブドウ果皮はワイン醸造の過程で大量に生じ、一部が食品加工用色素として利用されることもあるが、大半はバイオマスとして処理されているため、未利用資源の活用の観点からも意味は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明で使用するブドウ果皮としては、ピノノワール種(Pinot Noir)、メルロー種(Merlot)、カルベルネソービニヨン種(Cabernet Sauvignon)、シャルドネ種(Chardonnay)、リースリング種(Riesling)、セミヨン種(Semillon)等があげられるが、食用、ワイン製造用など摂取して安全なブドウであればどの種類の果皮を使用してもかまわない。上記記載のブドウの中から、果肉を除いた果皮を抽出原料として使用することが好ましく、上記記載の一種のみを用いてもよく、或いは2種以上を併用してもよく、特に限定するものではない。
【0009】
ブドウ果皮抽出物は、水若しくは親水性有機溶媒又はこれらの混合液を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。抽出溶媒としては、水若しくは水に0.5%硫酸、1%酢酸、5%ギ酸(特許2884499)を加えた抽出溶媒やアルコール等を抽出溶媒として用いる方法が知られている。
【0010】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、こられに各種処理を施したものが挙げられる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、滅菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0011】
また、抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等の炭素数2〜5の多価アルコールが挙げられる。
【0012】
抽出方法は、通常使用される方法であればよく、例えば、室温ないし加熱下で任意の装置を用いて抽出することができる。具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に粉砕した果皮を投入し、攪拌して可溶性成分を溶出する。その後、ろ布などを用いてろ過して抽出残渣を除き、得られた抽出液を濃縮、乾燥することにより、有効成分を含有する抽出物を得ることができる。
【0013】
抽出液の濃縮は、通法に従って行えばよく、例えば、抽出物が少量の場合はエバポレーターを、大量の場合は濃縮釜等を用いて行うことができる。抽出液の乾燥は、通法に従って行えばよく、スプレードライや凍結乾燥等により行うことができる。
【0014】
プロシアニジンオリゴマーは、上記の方法で得られたブドウ果皮抽出物から、樹脂吸着法や濃度勾配カラムクロマトを用いて分画し、再抽出後、濃縮乾燥して得ることが出来る。
【0015】
このようにして得られた、本発明の抗菌剤であるブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーは、そのままでも利用可能であるが、必要に応じて、賦形剤、成形助剤等を用い、錠剤、粉末剤等の任意の剤形とすることができる。また、本発明の抗菌剤は、抗菌力を向上させたり、抗菌スペクトルを拡大させたりする目的で、公知の抗菌性物質と共に使用することができる。
【0016】
本発明の抗菌剤は、抗菌力が強く、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い抗菌スペクトルを有する。そのため、抗菌性を要求される様々な用途に用いることができる。特に限定するものではないが、例えば、化粧品、食品、抗菌、除菌防臭剤、口腔用組成物として使用することができる。
【0017】
上記化粧品としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液等の基礎化粧料、ファンデーション等のメイクアップ化粧料、ハンドクリーム等の身体用化粧料、シャンプー、コンディショナー、育毛料等の頭皮用化粧料などが挙げられる。例えば、食品としては、ハム・ソーセージ等の水畜産加工品類、生クリーム等の乳製品類、豆腐、生麺等の加工食品類、キャンディ、チューインガム等の菓子類などが挙げられる。
【0018】
上記抗菌、除菌防臭剤としては、台所用抗菌スプレー、家庭用除菌消臭スプレー等があげられる。上記口腔用組成物としては、例えば、歯磨き剤、洗口液、トローチ等が挙げられる。
【0019】
本発明の抗菌剤の添加量は、該抗菌剤を添加する化粧品、食品等の種類および組成等によって異なる。例えば、化粧品に対して抽出物成分が、通常、約0.00001〜1重量%、好ましくは、約0.0001〜1重量%、より好ましくは、約0.0005〜0.5重%の範囲である。
例えば、本発明の抗菌剤を化粧水に加える場合、約0.2重量%が好ましく、にきび用化粧水としては0.15重量%が好ましい。それによりにきびの原因菌であるアクネ菌を殺菌することが出来る。
【0020】
以下、実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
実施例1
食品着色用添加物として市販されているブドウ果皮抽出物を原材料として、Sephadex LH-20を用いて0−100%メタノール濃度勾配カラムクロマトにて1から5までのフラクションを得た。さらに液体クロマトグラフィーを用いて、フラクション3から5をプロシアニジンと同定した。
【0022】
試験例1
プロシアニジンの各種細菌に対する抗菌活性の判定は以下の方法で行なった。50%グリセリンで可溶化したフラクション3から5のプロシアニジンを0.45μm径メンブランフィルターでろ過滅菌し、1×106cells/mlに調整した各種菌液に各フラクションのプロシアニジンを終濃度が1mg/mlになるように加えて室温にて一定時間、菌とプロシアニジンを接触させた。嫌気性細菌は嫌気ボックスの中で操作を行った。所定の時間が経過した反応液(菌液)は適宜希釈して寒天培地上に広げ、24〜72時間培養を行い、出現した集落を数えた。対照には菌液にプロシアニジンを添加しないで同様な処理を行い、一定時間後の菌数を計測した。集計結果を表1に示す。
【表1】

【0023】
フラクション4すなわちブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーを6時間から12時間作用させることで、Klebsiella pneumoniaeを除いたすべての菌で生存数がゼロになり、明らかな殺菌作用が認められた(表1)。従って、ブドウ果皮由来のアントシアニン系色素の細菌増殖抑制・殺菌活性の中心はプロシアニジンオリゴマーであることがわかった。データとして示さないが、試験に用いたグラム陽性球菌のすべては0.5mg/mlの濃度で明らかに増殖が抑制された。
【0024】
考 察
試験例1から明らかなように、ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーは、各種細菌に対する抗菌剤の原料として有効である。プロシアニジンオリゴマーの抗菌スペクトルを見ると、う蝕関連連鎖球菌をはじめ、溶血性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿球菌に対しても効果的であり、さらに、化学療法薬がほぼ無効であるMRSAに対しても抗菌作用を有していることがわかった。このことは、耐性ブドウ球菌やMRSA感染症に対する経口治療薬としての可能性も期待される。また、病原性大腸菌O157:H7やサルモネラ菌などの食中毒関連細菌に対しても抗菌作用を発揮することが明らかになった。ブドウ果皮由来色素はワイン醸造の過程で大量に生じるバイオマスに由来するもので、その大半が廃棄されているのが現状であり、わずかにその一部が食品着色用の材料に加工されるに止まっている。ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーは優れた抗菌作用を有していることを発見した。未利用資源を活用することで、自然にも体にも優しい抗菌剤、抗菌性組成物の提供が可能となった。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ果皮由来のプロシアニジンオリゴマーを有効成分として含有することを特徴とする抗菌剤。
【請求項2】
請求項1記載の抗菌剤を含有する抗菌性組成物。
【請求項3】
請求項1記載の抗菌剤を含有する香粧料。



【公開番号】特開2010−208970(P2010−208970A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55129(P2009−55129)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(505457433)株式会社オフィス・ケイ (6)
【Fターム(参考)】