説明

ブライン精製

ブライン溶液を、電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理に供することを含み;精製されたブラインの有機含有量が、精製されたブラインの工業プロセスにおける意義を可能にするのに十分に低い、ブラインの有機含有量を低減させるための方法および装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は下記件(本件と同日出願)に関連し、各件の開示は参照によりその全部を本明細書に組入れる:
出願番号 (代理人整理番号66324)(本件と同日出願)、名称“Total Organic Carbon TOC) Reduction in Brine Via Chlorinolysis”
出願番号 (代理人整理番号66325)(本件と同日出願)、名称“Process and Apparatus for Purification of Industrial Brine”
出願番号 (代理人整理番号66326)(本件と同日出願)、名称“Process, Adapted Microbes, Composition and Apparatus for Purification of Industrial Brine”
出願番号 (代理人整理番号66327)(本件と同日出願)、名称“Brine Purification”
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、精製されたブライン、特に、有機含有量、および更により好ましくは塩素酸塩含有量が低減されたブラインに関する。本発明はまた、改善された有機含有量、および更により好ましくは低減された塩素酸塩含有量を有するブラインを得るための方法および装置に関し、そしてブラインの無機化(mineralization)に関することができる。本発明はまた、ブラインを、低減された有機含有量を有してその中に包含するように、またその中で使用されるブラインまたはそれから得られるブラインにおいて、低減された塩素酸塩含有量を包含できるように、該ブラインを方法および装置において使用する、方法および装置の改善に関する。本発明は、種々のプロセスおよび技術,例えば水、廃水およびブラインの精製を含むプロセスにおいて有用であり、そして特に塩素/アルカリプロセス、そしてグリセリンのエピクロロヒドリンへの変換を含むプロセスにおいて有用である。よって、本発明はまた、工業プロセスによって生じるブラインの精製のための方法および装置に関する。精製されたブラインは、工業プロセス,例えばブラインの塩素ガスおよび水酸化ナトリウムまたは次亜塩素酸塩への電気的な変換のための塩素−アルカリプロセスにおいて使用できる。
【0003】
背景情報の議論
化学プロセスにおいて、入ってくるプロセス流の最大有用性を得るという要求が存在し、更に、プロセス流を再循環させるための、または1つのプロセスからの副生成物を他のプロセスにおいて(特に近接するプロセスにおいて)使用するための、能力を得るという要求が存在する。プロセス流のこのような使用は、環境的および経済的に望ましい。
【0004】
幾つかの化学プロセスは、高い有機含有量,例えば総有機炭素(TOC)および高い塩化ナトリウム含有量のブライン流を使用する。例えば、幾つかの化学プロセスは、TOC 最大約100万分の20,000部(ppm)で、塩化ナトリウム含有量 最大約23質量%をもたらす。TOCの濃度を顕著に低減できる場合、ブライン流を他のプロセス(例えば塩素/アルカリプロセスまたは他の電解プロセス)用の原料として再循環させる可能性が存在する。塩化ナトリウムの存在は、有機化合物の種々のブライン副生成物流からの除去の困難を引き起こす場合がある。これは、幾つかの除去プロセスが、分離設備内での塩化ナトリウムの有害な沈殿の原因となる場合があるからである。また、塩化物イオンの存在は、有機化合物を崩壊させるための化学的処理の間に不所望に腐食性または有毒な塩素化有機化合物の形成をもたらす場合がある。
【0005】
ブライン流はまた、種々の有機化合物を含有する場合があり、これらの幾つかは、従来の技術,例えば抽出または炭素床処理によって除去することは困難である場合がある。
【0006】
例えば、エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造において、副生成物ブライン流は、TOC最大約2500ppm、典型的には約1500ppmおよび塩化ナトリウム含有量最大約23質量%、典型的には約20質量%を有する場合がある。グリセリンからエピクロロヒドリンへのプロセスおよび関連の排出物低減および経済的な最適化を首尾よく遂行するために、ブラインの放出は、現場環境戦略において統合するのがよい。塩化ナトリウム(NaCl)のレベルは、TOC除去後に環境に直接放出するには高すぎる。NaClの濃度もまた、効果的な生物学的廃水処理を、淡水の顕著な消費および対応する廃水操作の必要能力の増大なしで行なうには高すぎる。副生成物ブライン流の主なTOC成分はグリセリンであり、ブラインのTOCに寄与する他の化合物としては、グリシドール、1,2−ジクロロヒドリン、または1,3−ジクロロヒドリン、1−クロロ−2,3−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、エピクロロヒドリン、ジグリセロール、トリグリセロール、他のオリゴマー性グリセロール、オリゴマー性グリセロールのクロロヒドリン、酢酸、ギ酸、乳酸、グリコール酸、および他の脂肪酸が挙げられる。近接または1箇所での塩素/アルカリプロセスによるこのブラインの使用のためのTOCの仕様は、10ppm以下に過ぎない場合がある。しかし、TOCの主要成分はグリセリンであり、これは従来の技術,例えば抽出または炭素床処理による処理が困難である。
【0007】
米国特許第5,486,627号(Quaderer,Jr.ら)は、連続で、塩素化副生成物の形成を抑制し、そして廃水の放出を排除または実質的に低減するエポキシドの製造方法を開示する。該方法は:(a)低塩化物の水性次亜塩素酸溶液を形成すること;(b)低塩化物の水性次亜塩素酸溶液を少なくとも1種の不飽和有機化合物と接触させて、少なくともオレフィンクロロヒドリンを含む水性有機生成物を形成すること;(c)少なくともオレフィンクロロヒドリンを水性アルカリ金属水酸化物と接触させて、少なくともエポキシドを含有する水性塩溶液生成物を形成すること;および(d)エポキシドを水性塩溶液から単離すること;を含み、ここで水は少なくともステップ(b)の生成物から回収して、低塩化物の水性次亜塩素酸(HOCl)溶液の形成において使用するためにステップ(a)中に再循環させる。このプロセスにおいて、ステップ(b)の後に内部で再循環されるのは水のみではなく、濃縮ブライン溶液がステップ(a)および(d)の両者において生じ、これは他のプロセス,例えば塩素および苛性物の電気化学的製造において有用である。塩素および苛性物は、今度は、次いで、低い塩化物の水性HOCl溶液の形成において使用するために戻して再循環させることができる。米国特許第5,486,627号によれば、塩素−アルカリ電気化学セル内に再循環させる前に、任意の不純物をブラインから除去することが一般的に好ましい。これらの不純物は、典型的には微量の有機溶媒、更にHOCl分解生成物,例えば塩素酸および塩素酸イオンを含むことが開示されている。これらの不純物を除去するための方法は、酸性化および塩素系酸化または吸収(炭素またはゼオライトの上に)を含むことができる。
【0008】
不純物をブラインから、塩素/アルカリ電気化学セルを通過させる前に除去するための方法は、米国特許第5,532,389号(Trentら)、米国特許第4,126,526号(Kwonら)、米国特許第4,240,885号(Suciuら)、および米国特許第4,415,460号(Suciuら)に開示されている。米国特許第5,532,389号(Trentら)は、塩素酸塩を塩化物ブラインから、塩素酸塩を酸と接触させて塩素酸塩を塩素に変換することにより除去することを開示する。加えて、アルキレンオキサイドを含有するブライン流中に存在する副生成物有機化合物,例えばプロピレングリコールは、任意の酸化、抽出または吸収のプロセスを通じて有利に除去されることが開示されている。
【0009】
米国特許第4,126,526号(Kwonら)は、塩素の電解製造およびオレフィンオキサイドのクロロヒドリン経由の製造(ここでクロロヒドリンは、電解セルのカソード区画からの水酸化ナトリウムおよび塩化ナトリウムの水性溶液と接触して酸化物およびブラインを生成する)のための統合されたプロセスを開示する。ブラインは、ガス状の塩素と接触して有機不純物を揮発性有機フラグメント(これは、ブラインを電解セルに再循環させる前にブラインから揮散(ストリップ)される)に酸化する。
【0010】
2つのSuciuらの特許、米国特許第4,240,885号および第4,415,460号のプロセスにおいて、水性塩溶液中の有機不純物,例えばアルカリまたはアルカリ土類塩化物溶液、特にブラインは、塩素酸イオンで酸化されて、有機物を二酸化炭素に変換する。しかし、プロセスは高温(摂氏130度(℃)を超える)の厳しい反応条件を採用し、高圧設備、低pHの5未満、最も好ましくは1未満、および塩素酸イオン(塩素化有機化合物を形成する傾向がある)を必要とする。
【0011】
有機不純物で汚染されたブラインの精製のための従来のプロセスは、生物学的処理:塩素または次亜塩素酸塩による酸化;種々の吸収可能物質,例えば活性化炭素による吸収;過酸化水素による、溶解もしくは懸濁した触媒の存在下またはUV照射条件下での酸化;ガス状酸素、空気または酸素リッチな空気による、溶解または懸濁した触媒の存在下での酸化;過酸化水素または懸濁した触媒との組合せでのオゾンによる酸化を包含する。水性系,例えば廃水の電気的処理は、例えば米国特許第5,399,247号(Careyら)、およびMartinez−Huitleら“Electrochemical Oxidation of Organic Pollutants for the Waster Treatment:Direct and Indirect Processes”,Chem.Soc.Rev.,2006,35,1324−1340(これらは参照により全部を本明細書に組入れる)に開示されるように公知である。しかし、このような電気的処理は、汚染されたブラインを処理してその中の汚染物を低減させること、または精製されたブラインをプロセス流,例えば供給および再循環のプロセス流として使用することは対象としていない。
【0012】
ブラインは、塩素原子含有化合物が無機塩基,例えば水酸化ナトリウムと反応して塩化物塩を含有する水性ブライン溶液を形成する工業プロセスによって生じる。例としては、クロロヒドリンを水酸化ナトリウムと反応させることによるエピクロロヒドリンの製造、エピクロロヒドリンをポリフェノール化合物,例えばビスフェノールAまたはビスフェノールFと反応させることによるエポキシレジンの製造が挙げられ、ここで塩基はエピクロロヒドリンの塩素原子、およびフェノール性水素原子と反応し、そして工業廃水を擦って洗い落として、塩化水素を化学物質流から、塩化水素を水酸化ナトリウムと、例えば、イソシアネートを形成するために用いられるホスゲン化プロセスの間に塩化水素を除去するのに使用される塩化水素吸収体中で反応させることによって、除去する。このようなプロセスによって生成される水性のブライン溶液は、しばしば、1種以上の有機化合物(該プロセスに関連するもの)(ブラインがこれに由来する)を含有する。
【0013】
塩化ナトリウムを主たる塩として含有する水性ブライン溶液は、塩素ガスおよび水酸化ナトリウムまたは次亜塩素酸塩(塩素−アルカリプロセスとして公知の電解プロセスによる)の製造のために有用である。塩素−アルカリプロセスによって製造される塩素ガス、次亜塩素酸塩および水酸化ナトリウムは、多くの工業プロセス(ここで塩素原子および/または強塩基が必要である)において有用である。工業プロセスによって塩素−アルカリプロセスにおいて製造される水性ブライン溶液を使用して工業化学プロセスを統合でき、これにより原料取得および副生成物廃棄のコストを低減することができることが望ましい。
【0014】
工業プロセスによって塩素−アルカリプロセスにおいて製造される水性ブライン溶液の使用に関連する問題は、このような水性ブライン溶液中の不純物,例えば有機化合物の存在が一般的に極めて低い濃度まで低減されなければならないことである。これは、塩素−アルカリプロセスの、不純物,例えば有機化合物についての許容範囲が低いため、および/または、このような塩素−アルカリプロセスから形成される高純度の生成物,例えば高純度の水酸化ナトリウムが望ましいためである。一般的に、工業的な塩素−アルカリ製造において使用される水性ブライン中の有機化合物濃度は、総有機炭素(TOC)で50ppm未満であるのがよく、そして好ましくは10ppm未満であるのがよい。
【0015】
水性ブライン溶液中の有機化合物濃度を低減させる公知の方法は、塩素化分解を行なって有機化合物をより揮発性の酸化フラグメントおよび/または二酸化炭素(これは水性ブライン溶液から揮散できる)に酸化することである。塩素化分解は、一般的に、塩素ガスまたは次亜塩素酸塩を水性ブライン溶液中に高温で導入することによって実施する。このようなプロセスは、例えば、米国特許第4,240,885号に開示されている。
【0016】
有機化合物の除去のために塩素化分解のみに依拠することの不都合は、塩素化分解前の初期有機化合物濃度が比較的高い場合に、実質量の塩素ガスまたは次亜塩素酸塩が、有機化合物濃度を許容可能なレベルまで低減するために一般的に必要であることである。その場合、精製プロセスは、塩素−アルカリプロセスによって生じる塩素ガスまたは次亜塩素酸塩のかなりの部分を消費し、これにより、塩素−アルカリプロセスによって生じる塩素ガスまたは次亜塩素酸の他の工業プロセスのための供給力が低下する。
【0017】
塩素化分解のみに依拠することの他の不都合は、特定の種類の化合物,例えば酸および酸エステルが、一般的に、酸化してこれらを酸化フラグメントに分解する(水性ブライン溶液から揮散するのに十分揮発性に)ことが、より困難であることである。このような酸素含有化合物の濃度を許容可能なレベルまで塩素化分解によって低減することは、困難かつ高価である。
【0018】
塩素化分解のみに依拠することの別の不都合は、ブライン溶液から揮散される蒸気流を処理して塩素ガス、次亜塩素酸塩および任意の塩素化炭化水素の環境中への放出を防止することが必要であることである。
【0019】
従って、有機化合物を含有する水性ブライン溶液の精製を更に改善して、ブラインを塩素−アルカリ電解に使用できるようにする機会が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要約
本発明は、高濃度の塩化ナトリウムを有する高い総有機炭素(TOC)含有量のブライン流,例えばグリセリンからのエピクロロヒドリンの製造によるブライン副生成物流を、分離設備における塩化ナトリウムの有害な沈殿なく低減する方法であって、1ステッププロセスで実施できる方法を提供する。有機化合物を崩壊させるための化学的処理の間の不所望の腐食性または有毒な塩素化有機化合物の形成が、本発明において回避される。約10ppm未満の極めて低レベルのTOCを有する再循環可能なブライン流を、顕著な廃水の放出または淡水の消費なく実現できる。
【0021】
本発明は、ブライン,特に高い有機濃度を含むブラインプロセス流の精製のための効率的な方法および装置を提供する。
【0022】
本発明は、ブラインの有機含有量を低減するための方法および装置であって、好ましくは、1ステップで、そして驚くべきことに1ステッププロセスにおいてブラインの総有機炭素含有量の約99パーセント(%)超の低減を実現できる、方法および装置を提供する。
【0023】
本発明はまた、低減された有機含有量のブラインを更に処理して、有機含有量を低減するために処理されたブライン中の塩素酸塩濃度を低減することを提供する。
【0024】
本発明はまた、ブライン溶液を、電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理に供することを含み;精製されたブラインの有機含有量が、精製されたブラインの再利用を可能にするのに十分に低い、ブラインの有機含有量を低減する方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、化学プロセスにおけるブラインの有機汚染を低減する方法であって、化学プロセスのブライン流を電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理に供することを含み;精製されたブラインの有機含有量が、同じ化学プロセスまたは異なる化学プロセスに戻して再循環させるのに十分に低い、方法を提供する。
【0026】
本発明は、電気化学的酸化によって、好ましくは精製されたブラインの後続の後処理を伴って、有機化合物で汚染されたブラインを精製して、塩素酸塩および/または次亜塩素酸塩のブライン中の濃度を低減する方法を提供する。よって、本発明の電気化学的酸化に、塩素酸塩の濃度を低減させるための更なる処理,例えば亜硫酸塩による処理が続くことができる。好ましくは、有機および塩素酸塩含有量を適切なレベルまで低減して、精製されたブラインを塩素/アルカリセル(C/Aセル),例えば塩素/アルカリ膜セル(膜電池)に供給できるようにする。
【0027】
本発明は、ブラインの有機含有量を低減する方法であって、有機含有量を含むブライン溶液を電気化学プロセスに十分な時間、十分な電流および十分な電圧で供してブラインの有機含有量を低減して低減された有機含有量のブラインを得ることを含む、方法を提供する。
【0028】
本発明はまた、化学プロセスにおけるブラインの有機汚染を低減する方法であって、化学プロセスのブライン流を電気化学的酸化に供して、低減された有機含有量のブライン流を得ることを含む、方法を提供する。
【0029】
ブラインは、塩化ナトリウム濃度を、海水から飽和、約1質量パーセント(wt%)から飽和、約5wt%から飽和、8wt%から飽和で有することができ、そして約15wt%から約22wt%、または約15wt%から約22wt%の範囲で有することができる。
【0030】
pHは、中性からアルカリのpHであることができる。
【0031】
低減された有機含有量のブラインのpHは低下(例えばpH約1〜約3、または約1.5に)させることができる。
【0032】
電気化学プロセスのpHは、約7〜約10であることができる。
【0033】
低減された有機含有量のブラインの塩素酸塩および/または次亜塩素酸塩の含有量は低下させることができる。
【0034】
塩素酸塩含有量は、アルカリ金属亜硫酸塩の添加により低下させることができ、そしてアルカリ金属亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムまたは二酸化硫黄を含むことができる。
【0035】
電気化学プロセスはチタンアノードを包含できる。
【0036】
チタンアノードは、ホウ素ドープされたダイヤモンドでコートできる。
【0037】
有機含有量を含むブライン溶液は、化学プロセスにおける流れを含む。
【0038】
低減された有機含有量のブラインは、化学プロセスにおいて再循環させることができる。
【0039】
低減された有機含有量のブラインは、異なる化学プロセスにおける供給物を含むことができる。
【0040】
プロセスは、グリセリンのエピクロロヒドリンへの変換を含むことができ、そして低減された有機含有量のブラインをグリセリンからエピクロロヒドリンへのプロセス中で再循環させることができる。
【0041】
再循環されたブラインを処理して塩素酸塩含有量を低減できる。
【0042】
化学プロセスは塩素/アルカリプロセス,例えば塩素/アルカリ膜プロセスであることができる。
【0043】
低減された含有量のブラインは、化学プロセスにおいて再循環され、異なる化学プロセスに供給され、および貯蔵されるものの少なくとも1つであることができる。
【0044】
低減された含有量のブラインを処理して塩素酸塩および次亜塩素酸塩の少なくとも1つを除去できる。
【0045】
本発明はまた、ブラインを精製する方法であって:
(1)1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、ならびに任意に、該1種以上の無機塩および該1種以上の有機化合物の中に含まれる微生物栄養物以外の1種以上の微生物栄養物、を含む水性ブライン溶液を準備すること;ならびに
(2)ステップ(1)において準備した水性ブライン溶液から有機化合物を除去して第1の精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作を行なうこと;
を含み、
水性ブライン溶液が、少なくとも約10質量パーセントの1種以上の無機塩を含有し、1種以上の無機塩の少なくとも約80質量パーセントが塩化ナトリウムであり、そして少なくとも1つの単位操作が:
(a)水性ブライン溶液と、酸素の存在下で有機化合物を酸化させる能力を有する生存微生物とを接触させること;
(b)通気された水性ブライン溶液によって満足されていない生物栄養物についての微生物要求に比例させて、生物栄養物を通気した水性ブライン溶液に任意に添加すること;ならびに
(c)微生物を水性ブライン溶液から分離して第1の精製されたブライン溶液を得ること;
を含む、方法を提供する。
【0046】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、少なくとも約15質量パーセントの無機塩を含有できる。
【0047】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、少なくとも約18質量パーセントの無機塩を含有できる。
【0048】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、総有機炭素濃度が約500ppm超であることができる。
【0049】
接触ステップ(a)は、温度約15℃〜約60℃の範囲で行なうことができる。
【0050】
水性ブライン溶液と接触した微生物は、水性ブライン溶液から、フィルターろ過、ストレーニング、遠心分離、ハイドロサイクロン分離および/または重力沈降によって分離できる。
【0051】
水性ブライン溶液と接触した微生物は、水性ブライン溶液から、水性ブライン溶液に膜(水性ブライン溶液の液体成分は浸透させることができかつ微生物は浸透させることができないのもの)を通過させることによって分離できる。
【0052】
水性ブライン溶液と接触した実質数の微生物を固体支持体上に固定でき、ステップ(1)において準備した水性ブライン溶液を、固定された微生物と接触させることができ、そして接触した水性ブライン溶液を固定された微生物から分離できる。
【0053】
固体支持体は、密度約1.5グラム毎立方センチメートル(g/cm3)超を有する粒状支持体であることができる。
【0054】
有機化合物は、複数のヘテロ原子を有する炭化水素化合物であることができる。
【0055】
有機化合物は、ヒドロキシ基、エステル基、酸基、グリシジル基、およびアミン基、これらの組合せ、ならびにこれらの塩を含む1つ以上の官能基を有する炭化水素化合物であることができる。
【0056】
1種以上の有機化合物は、(a)1種以上の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物、その1種もしくは複数種のエステル、ならびに/またはその1種もしくは複数種のモノエポキシド、ならびに/またはそのダイマー、トリマーおよび/もしくはオリゴマー、ならびに/またはそのハロゲン化および/もしくはアミノ化誘導体、(b)1〜10炭素原子を有する1種以上の有機酸、その1種もしくは複数種のエステル、その1種もしくは複数種のモノエポキシドならびに/またはその1種もしくは複数種の塩、(c)1種以上のケトール、(d)1種以上のアルキレンビスフェノール化合物、ならびに/またはその1種もしくは複数種のエポキシド、ジオールおよび/もしくはクロロヒドリン、ならびに/または(e)アニリン、メチレンジアニリン、ならびに/またはフェノールを含むことができる。
【0057】
1種以上の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物は、グリセロールを含むことができる。
【0058】
1種以上の有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸および/またはグリコール酸を含むことができ、そして1種以上のケトールは、1−ヒドロキシ−2−プロパノンを含むことができる。
【0059】
1種以上のアルキレンビスフェノール化合物は、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFを含むことができる。
【0060】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、クロロヒドリンを水酸化ナトリウムと反応させることによる1種または複数種のクロロヒドリンのエポキシ化によって生成できる。
【0061】
1種または複数種のクロロヒドリンは、グリセロールおよび/もしくはその1種もしくは複数種のエステル、ならびに/または1種もしくは複数種のモノクロロヒドリンおよび/もしくはその1種もしくは複数種のエステル、を含む液相反応混合物と、少なくとも1種の塩素化剤、任意に水の存在下、1種以上の触媒、ならびに/または1種以上の重質副生成物、を含む少なくとも1種の塩素化供給物流とを、反応容器内で塩化水素化条件下にて接触させることによって生成できる。
【0062】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、少なくとも1種のアルキレンビスフェノール化合物のエポキシ化によって生成できる。
【0063】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の1種以上の有機化合物は、アニリンおよび/またはメチレンジアニリンを含むことができ、そしてアニリンとホルムアルデヒドとの反応を触媒してメチレンジアニリンを形成するために使用される塩化水素の水酸化ナトリウム中和によって生成できる。
【0064】
塩化水素の水酸化ナトリウム中和によって生成する水性ブライン溶液を、共沸蒸留に供して、ステップ(1)において水性ブライン溶液を準備する前に水性ブライン溶液中に存在するアニリンおよび/またはメチレンジアニリンの少なくとも50質量パーセントを除去することができる。
【0065】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、第1の再溶解操作の前に、アニリンおよび/またはメチレンジアニリンを除去するための揮散操作に供されていないことができる。
【0066】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の総有機化合物濃度(TOC)は、少なくとも約200ppmであることができる。
【0067】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の無機塩の約5質量パーセント未満が、炭酸ナトリウムおよび/または硫酸ナトリウムであることができる。
【0068】
第1の精製された水性ブライン溶液のTOC濃度の、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液のTOC濃度に対する質量比は、約1未満:20であることができる。
【0069】
(c)において分離された第1の精製された水性ブライン溶液は、残存有機化合物を含むことができ、そして第1の精製された水性ブライン溶液中の残存有機化合物濃度を1つ以上の後続の単位操作において更に低減させて第2の精製された水性ブライン溶液を得ることができる。
【0070】
1つ以上の後続の単位操作は塩素化分解を含むことができる。
【0071】
1つ以上の後続の単位操作は、第1の精製された水性ブライン溶液を活性化炭素と接触させることを含むことができる。
【0072】
1つ以上の後続の単位操作は、フェントン酸化を含むことができる。
【0073】
1つ以上の後続の単位操作は、電気酸化を含むことができる。
【0074】
精製された水性ブライン溶液の総有機炭素濃度は、約10ppm未満であることができる。
【0075】
精製された水性ブライン溶液を電解して塩素ガスおよび水酸化ナトリウムを形成できる。
【0076】
水性ブライン溶液中の微生物の滞留時間は、約10時間〜約100時間の範囲であることができる。
【0077】
1種以上の有機化合物の、微生物に対する質量比は、約0.1〜約1.5の範囲であることができる。
【0078】
ステップ(c)において生成する第1の精製されたブラインのTOC濃度は、約80ppm未満であることができる。
【0079】
微生物は、バクテリアを含むことができる。
【0080】
バクテリアは、ビブリオ(Vibrio)属および/またはハロモナス(Halomonas)属に属することができる。
【0081】
バクテリアは、Vibrio alginolyticus、Halomonas salinaおよび/またはHalomonas campaniensisの種を含むことができる。
【0082】
本発明はまた、酸素、ならびにブライン溶液(1種以上の有機化合物、微生物の成長のために必要なものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、および少なくとも17質量パーセントの塩化ナトリウム、を含むもの)の存在下で成長するように適合された微生物を提供する。
【0083】
本発明はまた、1種以上の有機化合物、酸素の存在下で水性組成物中に浸漬された生存微生物の集団、微生物の成長のために必要なものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、および少なくとも17質量パーセントの塩化ナトリウム、を含む水性組成物を提供する。
【0084】
本発明はまた、少なくとも約15質量パーセントの1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、酸素の存在下で水性組成物中に浸漬された生存微生物の集団、および微生物の成長のために必要なものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、を含む通気した水性組成物であって、1種以上の無機塩が少なくとも約80質量パーセントの水酸化ナトリウムを含む、水性組成物を提供する。
【0085】
本発明はまた、平均粒子サイズが約1〜約200μmの範囲、および粒子密度が約1.5g/cm3超であり、微生物および細胞外ポリマー物質を含むバイオフィルムでコートされている粒子を含む、組成物を提供する。
【0086】
本発明はまた、塩化ナトリウムを含む水性ブライン組成物中で炭化水素化合物を酸化させる能力を有する、耐塩性の生存微生物を得る方法であって:
(1)生存微生物、1種以上の炭化水素化合物、酸素、塩化ナトリウムを含む浸透圧的に許容可能な濃度の2種以上の無機塩、ならびに任意に、生存微生物の呼吸、成長および/または繁殖のために必要とされるものとしての生存微生物のための1種以上の栄養物、を含む水性組成物を準備すること、ならびに
(2)少なくとも幾らかかの微生物が生存できかつ塩化ナトリウム濃度の変化に適応できる速度で、水性組成物の塩化ナトリウム濃度を増大させること、
を含み、ステップ(2)が、水性組成物中の塩化ナトリウムの他の無機塩に対する質量比を増大させることを含む、方法を提供する。
【0087】
塩化ナトリウム濃度は、ステップ(2)に従って、少なくとも約10質量パーセント増大でき、そして(2)に従って塩化ナトリウム濃度を増大させた後の水性組成物の塩化ナトリウム濃度は、少なくとも約17質量パーセントである。
【0088】
本発明はまた、耐塩性の生存微生物を収容する少なくとも1つのバイオリアクター容器を含む、ブライン精製用のバイオリアクターであって、耐塩性の生存微生物が、酸素、ならびにブライン溶液(1種以上の有機化合物、微生物の成長のために必要なものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、および少なくとも約17質量パーセントの塩化ナトリウム、および/または耐塩性の生存微生物を得るための上記プロセスによって得ることができる微生物、を含むもの)の存在下で成長するように適合された微生物である、バイオリアクターを提供する。
【0089】
本発明はまた、1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、任意に1種以上の微生物栄養物、ならびに、平均粒子サイズが約1〜約200μmの範囲、および粒子密度が約1.5g/cm3超であり、微生物および細胞外ポリマー物質を含むバイオフィルムでコートされている粒子、を含む水性ブライン溶液を含む組成物を収容するバイオリアクター容器を含む、ブライン精製用のバイオリアクターを提供する。
【0090】
本発明はまた、ブラインを精製する方法であって:
(1)1種以上の無機塩および1種以上の有機化合物を含む水性ブライン溶液を準備すること;ならびに
(2)有機化合物をブライン溶液から除去して精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作を行なうこと;
を含み;
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の1種以上の無機塩の少なくとも約80質量パーセントが、塩化ナトリウムであり、そして少なくとも1つの単位操作が、第1の再溶解操作を含み、該第1の再溶解操作が:
(a)水性ブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第1の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を第1の母液から分離すること;
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて第1の精製されたブライン溶液を得ること;ならびに
(d)第1の母液からの第1の母液パージ流を結晶化させて、ステップ(a)に戻って供給される再循環塩流を生成し、このステップ(c)からの母液パージ流が、低減された体積の有機含有パージを有すること;
を含む、方法を提供する。
【0091】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、少なくとも約10質量パーセントの1種または複数種の無機塩を含むことができる。
【0092】
少なくとも1つの単位操作は、第2の再溶解操作を更に含むことができ、該第2の再溶解操作は:
(a)第1の精製されたブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第2の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を第2の母液から分離すること;
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、第1の精製されたブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて、総有機炭素(TOC)濃度が第1の精製されたブライン溶液のTOC濃度よりも低い第2の精製されたブライン溶液を得ること;および
(d)第1の母液からの第1の母液パージ流と第2の母液からの第2の母液パージ流との組合せを結晶化させて、ステップ(a)に戻って供給される再循環塩流を生成し、このステップ(c)からの母液パージ流が、低減された体積の有機含有パージを有すること;
を含む。
【0093】
第1の再溶解操作は、第1の再溶解操作のステップ(b)とステップ(c)との間の洗浄操作を更に含むことができ、ここで、再溶解操作のステップ(b)において得られる結晶化した塩化ナトリウムを、少なくとも約15質量パーセントの塩化ナトリウムを含有し、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中のTOC濃度よりも実質的に低いTOC濃度を有する第1の水性洗浄溶液で洗浄する。
【0094】
第1の水性洗浄溶液は、第2の精製されたブライン溶液を含むことができる。
【0095】
第2の再溶解操作は、第2の再溶解操作のステップ(b)とステップ(c)との間の洗浄操作を更に含むことができ、ここで、再溶解操作のステップ(b)において得られる結晶化した塩化ナトリウムを、少なくとも約15質量パーセントの塩化ナトリウムを含有し、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中のTOC濃度よりも実質的に低いTOC濃度を有する第2の水性洗浄溶液で洗浄する。
【0096】
該方法は、第1の再溶解操作のステップ(b)および/または任意の第2の再溶解操作(濃縮操作において)において分離された母液を処理することを含むことができ:
(a)第1の母液および/または第2の母液の中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第3の母液を形成すること、
(b)塩化ナトリウム結晶を第3の母液から分離すること、ならびに
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて第3の精製されたブライン溶液を得ること、
を含む。
【0097】
濃縮操作は、濃縮操作におけるステップ(b)とステップ(c)との間の洗浄操作(ここで、濃縮操作のステップ(b)において得た結晶化した塩化ナトリウムを、少なくとも約15質量パーセントの塩化ナトリウムを含有し、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中の総有機炭素(TOC)濃度よりも実質的に低いTOC濃度を有する第3の水性洗浄溶液で洗浄する)を更に含むことができる。
【0098】
該方法は、第2の再溶解ステップを含むことができ、そして第3の水性洗浄溶液は、第2の精製されたブライン溶液を含むことができる。
【0099】
第3の精製されたブライン溶液は、第3のブライン溶液と供給された水性ブライン溶液とを組合せて、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液を形成することによって、第1の再溶解操作に再循環させることができる。
【0100】
結晶化ステップ(a)は、強制循環蒸発結晶化により実施できる。
【0101】
強制循環蒸発結晶化の間に蒸発した水は、少なくとも1つの再溶解ステップ(c)の水性溶液の少なくとも一部として使用できる。
【0102】
強制循環蒸発結晶化の間に蒸発した水は、機械的蒸気再圧縮によって回収できる。
【0103】
第1の再溶解ステップにおいて得られる第1の精製されたブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比は、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比の約10分の1未満であることができる。
【0104】
第2の再溶解ステップにおいて得られる第2の精製されたブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比は、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比の約100分の1未満であることができる。
【0105】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、アニリン、メチレンジアニリンおよび/またはフェノールを含むことができ、そしてアニリンとホルムアルデヒドとの反応を触媒してメチレンジアニリン(MDA)を形成するために使用される塩化水素の水酸化ナトリウム中和によって生成される。
【0106】
塩化水素の水酸化ナトリウム中和によって生成される水性ブライン溶液を共沸蒸留に供して、ステップ(1)において水性ブライン溶液を準備する前に水性ブライン溶液中に存在するアニリンおよび/またはメチレンジアニリンの少なくとも約50質量パーセントを除去することができる。
【0107】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液は、第1の再溶解操作の前に、アニリンおよび/またはメチレンジアニリンを除去するための揮散操作に供されていないことができる。
【0108】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の総有機炭素濃度(TOC)は、少なくとも約200ppmであることができる。
【0109】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の無機塩の約5質量パーセント未満が、炭酸アニオンおよび/または硫酸アニオンを有する塩であることができる。
【0110】
ステップ(2)において得られる精製されたブライン溶液の総有機炭素濃度は、約10ppm未満であることができる。
【0111】
精製されたブラインは、電解セルのアノード側の中に、(a)水酸化ナトリウムおよび(b)塩素ガスまたは次亜塩素酸塩、を塩素−アルカリプロセスによって形成するためのブライン出発物質の少なくとも一部として導入することができる。
【0112】
該方法は連続プロセスであることができる。
【0113】
本発明はまた、ブラインを精製するための装置であって:
(1a)第1の強制循環蒸発結晶化器;
(1b)第2の強制循環蒸発結晶化器;
(2a)固体を液体から分離するための第1の分離装置;
(2b)固体を液体から分離するための第2の分離装置;
(3a)第1の希釈容器;および
(3b)第2の希釈容器;
を含み、第1の強制循環蒸発結晶化器が第1の分離装置に、水性液体および結晶を含むスラリー流を第1の強制循環蒸発結晶化器から第1の分離装置に導くために接続されており;
第1の分離装置が第1の希釈容器に、結晶を第1の分離装置から第1の希釈容器に導くために接続されており;
第1の希釈装置が水性液体の供給源に、第1の分離装置から受入れた結晶を再溶解させるために接続されており;
第1の希釈装置が第2の強制循環蒸発結晶化器に、再溶解した結晶を含むブラインを第1の希釈容器から第2の強制循環蒸発結晶化器に導くために接続されており;
第2の強制循環蒸発結晶化器が第2の分離容器に、水性液体および結晶を含むスラリー流を第2の強制循環蒸発結晶化器から第2の分離装置に導くために接続されており;
第2の分離装置が第2の希釈容器に、結晶を第2の分離装置から第2の希釈装置に導くために接続されており;
第2の希釈容器が水性液体の供給源に、第2の分離装置から受入れた結晶を再溶解させるために接続されており;そして
第2の希釈容器が第1の分離装置に、第1の分離装置で分離された結晶を洗浄するために再溶解した結晶を含むブラインを第2の希釈容器から第1の分離装置に導くために接続されている、装置を提供する。
【0114】
該装置は:
(1c)第3の強制循環蒸発結晶化器;
(2c)第3の分離装置;および
(3c)第3の希釈容器;
を更に含むことができ、ここで、第1の分離装置および/または第2の分離装置が第3の強制循環蒸発結晶化器に、分離された水性液体を第1の分離装置および/または第2の分離装置から第3の強制循環蒸発結晶化器に導くために接続されており;
第3の強制循環蒸発結晶化器が第3の分離装置に、結晶を水性液体から分離するために水性液体および結晶を含むスラリー流を第3の強制循環蒸発結晶化器から第3の分離装置に導くために接続されており;そして
第3の分離装置が第3の希釈装置に、結晶を第3の分離装置から第3の希釈装置に導くための第1の強制循環蒸発結晶化器のために接続されており;
第3の希釈装置が水性液体の供給源に、第3の分離装置から受入れた結晶を再溶解させるために接続されており;そして
第3の希釈容器が第1の強制循環蒸発結晶化器に、再溶解した結晶を含むブラインを第3の希釈容器から第1の強制循環蒸発結晶化器に導くために接続されている。
【0115】
第1の分離装置は第1の強制循環蒸発結晶化器に、分離された水性液体の少なくとも幾らかかを第1の分離装置から第1の強制循環蒸発結晶化器に導くために接続されていることができる。
【0116】
第2の分離装置は第2の強制循環蒸発結晶化器に、分離された水性液体の少なくとも幾らかかを第2の分離装置から第2の強制循環蒸発結晶化器に導くために接続されていることができる。
【0117】
第3の分離装置は第3の強制循環蒸発結晶化器に、分離された水性液体の少なくとも幾らかかを第3の分離装置から第3の強制循環蒸発結晶化器に導くために接続されていることができる。
【0118】
該装置は、第1の機械的蒸気再圧縮装置および第1の熱交換器を、第1の強制循環蒸発結晶化器との熱交換連結で更に含むことができ、ここで、第1の機械的蒸気再圧縮装置は第1の強制循環蒸発結晶化器に、水性蒸気を第1の強制循環蒸発結晶化器から第1の機械的蒸気再圧縮装置に導くために接続されており、第1の機械的蒸気再圧縮装置は第1の熱交換器に、水性蒸気を凝縮して水性液体を形成するために圧縮された水性蒸気を第1の機械的蒸気再圧縮装置から第1の熱交換器に導くために接続されており、そして第1の熱交換器は第1の希釈容器に、凝縮された水性液体を第1の熱交換器から第1の希釈容器に導くために接続されている。
【0119】
該装置は、第2の機械的蒸気再圧縮装置および第2の熱交換器を、第2の強制循環蒸発結晶化器との熱交換連結で更に含むことができ、ここで、第2の機械的蒸気再圧縮装置は第2の強制循環蒸発結晶化器に、水性蒸気を第2の強制循環蒸発結晶化器から第2の機械的蒸気再圧縮装置に導くために接続されており、第2の機械的蒸気再圧縮装置は第2の熱交換器に、水性蒸気を凝縮して水性液体を形成するために圧縮された水性蒸気を第2の機械的蒸気再圧縮装置から第2の熱交換器に導くために接続されており、そして第2の熱交換器は第2の希釈容器に、凝縮された水性液体を第2の熱交換器から第2の希釈容器に導くために接続されている。
【0120】
該装置は、第3の機械的蒸気再圧縮装置および第3の熱交換器を、第3の強制循環蒸発結晶化器との熱交換連結で更に含むことができ、ここで、第3の機械的蒸気再圧縮装置は第3の強制循環蒸発結晶化器に、水性蒸気を第2の強制循環蒸発結晶化器から第2の機械的蒸気再圧縮装置に導くために接続されており、第2の機械的蒸気再圧縮装置は第2の熱交換器に、水性蒸気を凝縮して水性液体を形成するために圧縮された水性蒸気を第2の機械的蒸気再圧縮装置から第2の熱交換器に導くために接続されており、そして第2の熱交換器は第3の希釈容器に、凝縮された水性液体を第3の熱交換器から第3の希釈容器に導くために接続されている。
【0121】
液体またはスラリーのための少なくとも1つの接続は、圧力を液体またはスラリーに特定の誘導方向で適用するための少なくとも1つのポンプを含むことができる。
【0122】
各分離装置は、遠心分離および/またはハイドロサイクロンであることができる。
【0123】
本発明はまた、塩素原子含有化合物を水酸化ナトリウムと反応させて水性ブライン溶液を形成するのに好適な化学反応器装置およびブライン精製装置を含む、精製されたブラインを製造するための化学プロセス装置を対象とし、ここで、化学反応器装置はブライン精製装置に、水性ブライン溶液を化学反応器装置からブライン精製装置に導くために接続されており、そして化学反応器装置は水性水酸化ナトリウム溶液の供給源に、水性水酸化ナトリウム溶液を化学反応器装置に導くために接続されている。
【0124】
化学反応器装置は、クロロヒドリンをエピクロロヒドリンに変換するのに好適であることができる。
【0125】
化学プロセス装置は、1種または複数種のクロロヒドリンを形成するのに好適な塩化水素化装置を更に含むことができ、そして塩化水素化装置は化学反応器装置に、1種または複数種のクロロヒドリンを含む流れを、1種または複数種のクロロヒドリンを形成するための装置から化学反応器装置に導くために接続されている。
【0126】
化学反応器装置は、1種または複数種のエポキシレジンを形成するために好適な装置であることができる。
【0127】
化学反応器装置は、メチレンジアニリンを形成するのに好適な装置であることができる。
【0128】
本発明はまた、塩素原子含有化合物を水酸化ナトリウム反応させて水性ブライン溶液を形成するのに好適な化学反応装置および本発明に係るブライン精製装置を含む、精製されたブラインを製造するための化学プロセス装置を提供し、ここで、化学反応装置はブライン精製装置に、水性ブライン溶液を化学反応装置からブライン精製装置に導くために接続されており、そして化学反応装置は水性水酸化ナトリウム溶液の供給源に、水性水酸化ナトリウム溶液を化学反応装置に導くために接続されている。
【0129】
高TOC含有量である約200ppm〜約20,000ppm、好ましくは約500ppm〜約10,000ppmを有するブライン副生成物流のTOC含有量は、複数の段階において比較的穏やかな温度および反応条件で低減されて、塩素酸塩および塩素化有機化合物の形成が回避される一方、総有機炭素含有量が約10ppm未満の再循環可能なブライン流が実現される。低レベルのTOCを、実質量の除去困難な有機化合物,例えばグリセリンを含有するブライン再循環流であっても得ることができる。ブライン副生成物流の塩化ナトリウム含有量は、約15質量%〜約23質量%(ブライン副生成物流の質量基準)であることができる。本発明の方法は、グリセリン含有量少なくとも約50質量%、一般的に少なくとも約70質量%(総有機炭素含有量の質量基準)を有する場合があるグリセリンからのエピクロロヒドリンの製造において生成されるブライン副生成物流のTOC含有量を実質的に低減させるために採用できる。
【0130】
本発明の態様において、第1の段階の処理において、高い総有機炭素含有量を有するブライン副生成物流は、塩素化分解に、温度約125℃未満であるが一般的には約60℃超で、例えば約85℃〜約110℃で、好ましくは約90℃〜約100℃で、供することができ、TOC含有量が約100ppm未満である塩素化分解生成物流を得ることができる。塩素化分解生成物流は、第2の段階の処理において活性化炭素で処理して、再循環可能なブライン流を約10ppm未満の含有量で得ることができる。
【0131】
ブライン副生成物流の総有機炭素(TOC)の塩素化分解は、ブライン副生成物流を次亜塩素酸塩で処理することによって、または直接漂白することによって、またはブライン副生成物流を塩素ガスCl2、および水酸化ナトリウム(これらは塩素化分解のための次亜塩素酸ナトリウムをin situで形成する)で処理することによって、実現できる。
【0132】
塩素化分解のために、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素に対するモル比は、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約0.5〜約5倍であることができる。好ましい態様において、塩素化分解は、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比よりも過剰で実施できる。好ましいストイキオメトリー的な過剰は、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約1.1〜約2倍であることができる。
【0133】
塩素化分解は、pH約3.5〜約11.8で、pH制御剤またはpH調整剤の添加を伴いまたは伴わずに実施できる。採用できるpH制御剤の例は、HClおよびNaClまたは他の無機の酸および塩基である。雰囲気圧力または若干高い圧力(沸騰を防止するのに十分な)を塩素化分解のために採用できる。塩素化分解のための滞留時間または反応時間は、少なくとも約10分、例えば約30分〜約60分であることができる。
【0134】
本発明の好ましい態様において、塩素化分解生成物流のpHは、pH約2〜約3に調整して、塩素化分解生成物流中の有機酸を、活性化炭素での処理のためにプロトン化することができ、そして活性化炭素は、活性化炭素を塩酸で洗浄することによって得られる酸性化された活性化炭素である。
【0135】
本発明の他の態様において、ブライン副生成物流、ブライン再循環流、または塩素化分解生成物流は、(1)過酸化水素および鉄(II)触媒による2段階でのフェントン酸化、(2)活性化炭素処理、続いて過酸化水素および鉄(II)触媒によるフェントン酸化、または(3)過酸化水素および鉄(II)触媒によるフェントン酸化、続いて活性化炭素処理、に供して、TOC含有量が約10ppm未満である再循環可能なブライン流を得ることができる。
【0136】
本発明は、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量を低減する方法であって:
(a)高い総有機炭素含有量を有するブライン副生成物流を、塩素化分解に、温度約125℃未満で供して、塩素化分解生成物流を得ること、および
(b)塩素化分解生成物流を活性化炭素で処理して再循環可能なブライン流を得ること
を含む方法を提供する。
【0137】
塩素化分解は、ブライン副生成物流を次亜塩素酸ナトリウムで処理することを含むことができる。
【0138】
ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素に対するモル比は、次亜塩素酸ナトリウムのストイキオメトリー的な過剰であることができる。
【0139】
塩素化分解は、ブライン副生成物流を塩素ガスおよび水酸化ナトリウムで処理して、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量との反応のための次亜塩素酸ナトリウムを得ることを含むことができる。
【0140】
ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素に対するモル比は、次亜塩素酸ナトリウムのストイキオメトリー的な過剰であることができる。
【0141】
塩素化分解はpH約3.5〜約11.8で実施できる。
【0142】
ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素に対するモル比は、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約0.5〜約5倍であることができる。
【0143】
塩素化分解を温度約85℃〜約110℃で実施して塩素化分解生成物流を得ることができる。
【0144】
ブライン副生成物流の総有機炭素含有量は、グリセリンを少なくとも約50質量%(総有機炭素含有量の質量基準)の量で含むことができる。
【0145】
ブライン副生成物流は、エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造において生成できる。
【0146】
塩素化分解に供されるブライン副生成物流の総有機炭素含有量は、少なくとも約500質量ppmであることができ、塩素化分解は、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量を約100質量ppm未満に低減させ、そして塩素化分解生成物流を活性化炭素で処理することは、塩素化分解生成物流の総有機炭素含有量を、約10質量ppm未満に更に低減させて、再循環可能なブライン流を得ることができる。
【0147】
塩素化分解生成物流のpHは、活性化炭素での処理のために、pH約2〜約3に調整できる。
【0148】
再循環可能なブライン流は、塩素−アルカリプロセスに再循環できる。
【0149】
塩素化分解は、ほぼ雰囲気圧力、滞留時間約30分〜約60分、および温度約90℃〜約100℃で実施できる。
【0150】
ブライン副生成物流の塩化ナトリウム含有量は、約15質量%〜約23質量%(ブライン副生成物流の質量基準)であることができる。
【0151】
塩素化分解生成物流のpHは、pH約2〜約3に調整して、塩素化分解生成物流中の有機酸を、活性化炭素での補助処理のためにプロトン化することができ、そして補助活性化炭素は、活性化炭素を塩酸で洗浄することによって得られる酸性化された活性化炭素であることができる。
【0152】
本発明はまた、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量を低減させる方法であって:
(a)グリセリンからのエピクロロヒドリンの製造において生成したブライン副生成物流を、該ブライン副生成物流を塩素ガスおよび水酸化ナトリウムとpH約3.5〜約11.8および温度約125℃未満で混合することにより塩素化分解に供し;該ブライン副生成物流が、総有機炭素含有量少なくとも約500質量ppmおよび塩化ナトリウム含有量約15質量%〜約23質量%を、ブライン副生成物流の質量基準で有し;該塩素化分解が、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量を、得られる塩素化分解生成物流の質量基準で約100質量ppm未満に低減させること;
(b)塩素化分解生成物流のpHをpH約2〜約3に調整すること;
(c)塩素化分解生成物流を酸性化された活性化炭素で処理して再循環可能なブライン流を得て、塩素化分解生成物流の活性化炭素での処理が、塩素化分解生成物流の総有機炭素含有量を約10質量ppm未満に更に低減させること;
を含む方法を提供する。
【0153】
塩素化分解において使用される塩素ガスの量および水酸化ナトリウムの量は、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約0.5〜約5倍であることを与えることができる。
【0154】
塩素化分解は、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比よりも過剰で実施できる。
【0155】
塩素化分解は、ほぼ雰囲気圧力、滞留時間約30分〜約60分、温度約90℃〜約100℃、およびブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比 約1.1〜約2で実施できる。
【0156】
本発明の他の特徴および利点は、以下の発明の説明において記載し、そして、該説明からある程度明らかとなり、または発明の実施により知得できる。本発明は、記載される説明および特許請求の範囲で特に示された組成、生成物および方法によって実現および達成されよう。
【0157】
本発明の全ての側面において、ブラインを塩素−アルカリプラントにおいて任意に使用して水酸化ナトリウム溶液(例えば、おそらく、ブライン自体を製造するために使用される水酸化ナトリウムの供給源が挙げられる)を生成できる。
【0158】
本発明を、後続の詳細な説明において、本発明の例示的な態様の非限定の例により図面を参照して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】図1は、本発明の一態様のブロックフロー図を示し、電気化学的に進行する酸化および任意の塩素酸塩除去を、グリセリンのエピクロロヒドリンへの変換プロセスについて説明し、処理されたブラインはC/Aセルに再循環される。
【図2】図2は、電気化学的に進行する酸化のためのセルの態様を示す。
【図3】図3は、本発明の1段階蒸発結晶化プロセスの態様を示すプロセスブロックフロー図である。
【図4】図4は、本発明の2段階蒸発結晶化プロセスの態様を示すプロセスブロックフロー図である。
【図5】図5は、本発明の別の態様に係る、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量を低減させる方法を概略的に示す。
【図6】図6は、本発明に係る、種々の条件での次亜塩素酸ナトリウムでの塩素化分解による、種々のブライン流中のグリセリンの概念的な崩壊の裏付けを示すグラフである。
【図7A】図7Aは、核磁気共鳴(NMR)によって観測される、酸性pH、ゼロ分に相当する時間での、塩素化分解によるブライン流中のグリセリンの崩壊を示す。
【図7B】図7Bは、NMRによって観測される、酸性pH、20分に相当する時間での、塩素化分解によるブライン流中のグリセリンの崩壊を示す。
【図8A】図8Aは、NMRによって観測される、塩基性pH、ゼロ分に相当する時間での、塩素化分解によるブライン流中のグリセリンの崩壊を示す。
【図8B】図8Bは、NMRによって観測される、塩基性pH、60分に相当する時間での、塩素化分解によるブライン流中のグリセリンの崩壊を示す。
【発明を実施するための形態】
【0160】
本発明の詳細な説明
本明細書は、例によりそして本発明の態様の例示の議論のみの目的で示し、そして本発明の原理および概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される記載と考えられるものを与えるために与える。この点において、本発明の構成の詳細を、本発明の基本的な理解のための必要を超えて更に詳細に示すための試みは何らせず、図面を伴う記載は当業者が本発明の幾つかの形態をどのように実施できるかを明らかにする。
【0161】
特記がない限り、化合物または成分の言及は、化合物または成分自体、更に他の化合物または成分との組合せ,例えば化合物の混合物、を包含する。
【0162】
本明細書で用いる単数形“a,”“an,”および“the”は、文脈が他の明確な定めをしていない限り複数の言及を包含する。
【0163】
特記がない限り、全ての数は、含有成分の量、反応条件ならびに明細書および特許請求の範囲において使用される記載を表現し、全ての場合で、用語「約」で修飾されることを理解すべきである。従って、逆の言及がない限り、以下の明細書および特許請求の範囲に数値パラメータは、本発明によって得ることが求められる所望の特性に応じて変動できる近似である。最低でも、そして、特許請求の範囲の範囲と均等の原則の適用を制限する意図と考えるべきではなく、各数値パラメータは有効数字(そして通常丸める慣例である)の数の観点で解釈すべきである。
【0164】
加えて、この明細書の中の数値範囲の記述は、その範囲内の全ての数値および範囲の開示と考える。例えば、範囲が約1〜約50であれば、例えば1,7,34,46.1,23.7,または範囲内の任意の他の値もしくは範囲を包含すると認められる。
【0165】
本発明は、ブラインを精製するために採用でき、概略的には、精製されたブラインの使用とは独立である。
【0166】
本発明は、少なくとも1つの処理方法を用い、ブラインを精製してその有機炭素含有量を少なくとも低減させることができる。少なくとも1つの処理方法は、複数の処理方法の組合せ,例えば2つ以上の処理方法、3つ以上の処理方法、4つ以上の処理方法等の組合せを含むことができる。よって、本明細書に開示する処理方法のいずれも、個別に、更に任意の組合せで使用して、精製されたブラインの任意の用途のためにブラインを精製できる。例えば、生物学的処理、化学電気的処理、塩素化分解、および結晶化,例えば本明細書に開示されるもの、を個別に使用し、または任意の組合せで使用して、精製されたブラインを提供できる。
【0167】
定義
本明細書で用いる用語「微生物」(microbe)は、好気呼吸および有機物分解の能力を有する微生物(microorganism)を意味する。
【0168】
省略形「ATCC」は、「American Type Culture Collection」を意味する。ATCCは、ブタペスト条約により国際的に認められた生物寄託機関である。
【0169】
本明細書で微生物の言及において用いる用語「固定」は、微生物の総数のうち実質数,好ましくは主要数を、実質的に固体の支持体上に接着または吸着させることを意味する。微生物固定の例としては、多孔質支持体中,例えばフィルター媒体中での捕捉、および微生物の固体支持体へのバイオフィルムによる接着が挙げられる。
【0170】
本明細書で用いる用語「バイオフィルム」は、実質的に固体の支持体に接着した、細胞外ポリマー物質(EPS)のマトリクス中の微生物の凝集体を意味する。EPSは、微生物によって形成でき、ならびに/または、微生物によって形成されるものではない天然および/もしくは人工のポリマーから与えられるか補われることができるものである。EPSが微生物によって形成される場合、EPSは、1種または複数種のエキソポリサッカライドを含むことができる。1種または複数種のエキソポリサッカライドは、バイオフィルムの固体支持体への接着において顕著な役割をする。微生物EPSの生成は、一般的に、熱的細胞エネルギーの供給源の濃度が細胞活性に必要な最低濃度まで低下したときに増大する。
【0171】
用語「BOD」は、「5日の生物学的酸素要求」を意味する。
【0172】
用語「COD」は、「化学的酸素要求」を意味する。
【0173】
本明細書で用いる用語「栄養物」は、生存微生物,例えば水性ブライン溶液中の有機化合物分解の能力を有する微生物によって必要とされる窒素、リン、および/または微量元素を与える物質を意味する。例としては、イースト抽出物、尿素(N)、リン酸(P)、Fe、Mn、Se等が挙げられる。栄養物は、水性ブライン溶液の有機化合物および/もしくは無機塩成分中に含有されることができ、ならびに/または、水性ブライン溶液に追加成分として添加できる。栄養物は、好ましくは、平均約5質量部の窒素および約1質量部のリン(BOD100質量部当たり)を与えるのに十分な濃度で存在する。
【0174】
本明細書で用いる表現「総有機炭素」(以後「TOC」と略す)は、与えられる組成物の有機化合物の濃度を意味し、該組成物中に存在する有機化合物分子中に存在する炭素原子の総質量で表される。言い換えると、TOCは、有機分子中の炭素以外の原子の、有機分子の総質量に対する寄与を、質量パーセントまたは100万分の質量部(ppm)の単位での有機化合物の濃度算出時に排除する。TOCはまた、有機化合物中に存在しない炭素原子,例えば二酸化炭素中に存在する炭素原子、を排除する。
【0175】
本明細書で用いる用語「多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物」(以後「MAHC」と略す)は、2つの別個の隣接炭素原子に共有結合する少なくとも2つのヒドロキシル基を含有し、エーテル結合性基を含有しない化合物を意味する。これらは、各々がOH基を有する少なくとも2つのsp3混成炭素を含有する。MAHCとしては、炭化水素(高次の近接(contiguous)または隣接(vicinal)の繰返し単位を包含する)を含有する任意の隣接−ジオール(例えば1,2−ジオール)またはトリオール(例えば1,2,3−トリオール)が挙げられる。MAHCの定義はまた、例えば1種以上の1,3−、1,4−、1,5−および1,6−ジオール官能基を同様に包含する。例えばジェミナルジオールはこの分類のMAHCから排除される。
【0176】
MAHCは、少なくとも約2個、好ましくは少なくとも約3個、約60個以下、好ましくは約20個以下、より好ましくは約10個以下、更により好ましくは約4個以下、および更により好ましくは約3個以下の炭素原子を含有し、脂肪族炭化水素に加え、芳香族部分またはヘテロ原子(例えば、ハライド、硫黄、リン、窒素、酸素、ケイ素、およびホウ素のヘテロ原子;ならびにこれらの混合物等が挙げられる)を含有できる。MAHCはまた、ポリマー(例えばポリビニルアルコール)であってもよい。
【0177】
用語「グリセリン(glycerin)」「グリセロール」および「グリセリン(glycerine)」ならびにこれらのエステルは、1,2,3−トリヒドロキシプロパンおよびそのエステルの化合物についての同義語として使用できる。
【0178】
本明細書で用いる用語「クロロヒドリン」は、2つの別個の隣接脂肪族炭素原子に共有結合している少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つの塩素原子を含有し、エーテル結合性基を有さない化合物を意味する。クロロヒドリンは、MAHCの1つ以上のヒドロキシル基を、共有結合した塩素原子で塩化水素化によって置換することにより得ることができる。クロロヒドリンは、少なくとも2個、および好ましくは少なくとも3個、約60個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下、更により好ましくは4個以下、および更により好ましくは3個以下の炭素原子を含有し、そして、脂肪族炭化水素に加え、芳香族部分またはヘテロ原子(例えば、ハライド、硫黄、リン、窒素、酸素、ケイ素、およびホウ素のヘテロ原子;ならびにこれらの混合物等が挙げられる)を含有できる。少なくとも2つのヒドロキシル基を含有するクロロヒドリンはMAHCでもある。
【0179】
用語「エポキシド」は、炭素−炭素結合上に少なくとも1つの酸素橋を含有する化合物を意味する。一般的に、炭素−炭素結合の炭素原子は、近接し、そして化合物は炭素原子および酸素原子以外の原子,例えば水素およびハロゲン等を包含できる。好ましいエポキシドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、グリシドールおよびエピクロロヒドリン、またはこれらの誘導体である。
【0180】
用語「TAFFYプロセス」は、固体エポキシレジンポリマーを製造するための一般的な工業プロセスを意味し、ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンを水酸化ナトリウムの存在下で反応させる。
【0181】
用語「LER」は、液体エポキシレジンの略であり、より低分子量のエポキシレジン,例えばそのオリゴマー(ビスフェノールA、エピクロロヒドリンおよび水酸化ナトリウムと、塩化ナトリウムとの反応から、反応副生成物として形成されるもの)を意味する。
【0182】
本明細書で用いる用語「ヘテロ原子」は、元素周期表の炭素原子または水素原子以外の原子を意味する。
【0183】
本明細書で用いる表現「液相」は、気相と固相との間の連続中間相を意味し、これは少量の気体および/または固体の1つまたは複数の不連続相を任意に含んでもよい。液相は、1つ以上の非混和性の液相を含んでもよく、そして1種以上の溶解した固体,例えば1種以上の酸、塩基または塩を含有してもよい。
【0184】
本明細書で用いる表現「蒸気相」は、連続の気相を意味し、これは任意に少量の液体および/または固体の1つまたは複数の不連続相(例えばエアロゾル)を含んでもよい。蒸気相は、単一種の気体または混合物,例えば2種以上の気体の混合物、2種以上の液体の不連続相、および/または2種以上の固体の不連続相であることができる。
【0185】
本明細書で用いる用語「通気」は、言及する液相物質または組成物が、分子酸素を、単独または1種以上の他のガスと混合、溶解および/または分散(物質または組成物の中で)されて含有することを意味する。酸素は、物質または組成物に、純粋ガスとして、他のガス(例えば窒素)と混合されたガス(例えば空気または酸素ガスに富む空気)として、または化学的分解によって(例えば過酸化水素の導入を経て)、導入できる。酸素の導入は、例えば、酸素含有ガスの、言及する液相物質または組成物中への注入、液体表面界面での撹拌により、および/または酸素透過膜によって、実施できる。
【0186】
工業界で一般的に認められている標準試験方法を、本発明において議論するパラメータ(例えばBOD、TOC等)について用いる。
【0187】
水性ブライン溶液
本発明に従って処理される水性ブライン溶液は、1種以上の無機塩および1種以上の有機化合物を含む。
【0188】
1種以上の無機塩は、少なくとも約80質量パーセント、少なくとも約90質量パーセント、少なくとも約95質量パーセント、更に少なくとも約99質量パーセント、およびまた少なくとも約99.9質量パーセント、の塩化ナトリウムを含むことができる。
【0189】
水性ブライン溶液は、少なくとも約10質量パーセント、少なくとも約14質量パーセント、少なくとも約17質量パーセント、飽和以下、より好ましくは約23質量パーセント以下、の1種または複数種の無機塩を含むことができる。
【0190】
態様において、水性ブライン溶液は、少なくとも約10質量パーセント、少なくとも約14質量パーセント、少なくとも約17質量パーセント、飽和以下、より好ましくは約23質量パーセント以下、の塩化ナトリウムを含むことができる。
【0191】
ブラインは、塩溶液,例えば塩化カリウムおよび/または塩化ナトリウムの塩溶液を含むことができ、そして最も一般的には、塩化ナトリウムの塩溶液を含む。ブラインは、任意のブライン溶液を含むことができ、そして塩濃度が、海水中の塩の濃度と同程度に低く、そして溶液中の塩の飽和と同程度に高く、そして更に飽和を超える濃度で存在できる、ブライン溶液を含むことができる。ブラインは、通常、塩濃度(例えば塩化ナトリウムの濃度)約22wt%以下を含む。例えば、ブラインは、塩化ナトリウムを濃度約1wt%から飽和まで、約5wt%から飽和まで、約8wt%から飽和まで、例えば約8wt%〜約12wt%、または約15wt%〜約22wt%の範囲、で含む塩溶液であることができる。
【0192】
水性ブライン溶液は、約100ppm未満、約10ppm未満、および約1ppm未満、の、元素周期表のI族に属する元素(すなわち1種または複数種のアルカリ金属)以外のカチオンを含む各無機塩を含有できる。このようなカチオンの例としては、元素周期表のII族に属する元素,例えばCa,Mg,Sr,およびBa、遷移元素,例えばCr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,およびMo、他の元素,例えばAlおよびSi,ならびにNH4+が挙げられる。水性ブライン溶液中の、元素周期表のI族に属する元素以外のカチオンを含有する無機塩の総量は、約100ppm未満、約10ppm未満、および約1ppm未満であることができる。
【0193】
水性ブライン溶液は、好ましくは、約100ppm未満、約10ppm未満、および約1ppm未満の、Cl-以外のアニオンを含む各無機塩を含有できる。このようなアニオンの例としては、CO3-,SO42-,NO3-,およびClO42-が挙げられる。Cl-以外のアニオンを含む水性ブライン溶液中の無機塩の総量は、好ましくは約100ppm未満、より好ましくは約10ppm未満、更により好ましくは約5ppm未満、および更により好ましくは約1ppm未満である。
【0194】
1種以上の有機化合物は、任意の公知の有機化合物から選択できる。有機化合物は、好ましくは、揮発性酸化フラグメントおよび/または二酸化炭素の形成(生物学的酸化によって)に従うことができる部分を含有する化合物である。有機化合物は、1つ以上,例えば複数の炭素原子、1つ以上,例えば複数の水素原子、および任意に1つ以上,例えば複数のヘテロ原子を含む炭化水素化合物であることができる。1種または複数種のへテロ原子は、O,N,およびハロゲン,例えばClから選択できる。
【0195】
有機化合物は、1つ以上の官能基を有する炭化水素化合物であることができる。官能基としては、ヒドロキシ基、エステル基、酸基、グリシジル基、およびアミン基、その組合せ、ならびに塩形成性官能基の塩,例えば酸およびアミンの基の塩が挙げられる。
【0196】
有機化合物の数平均分子量、MWnは、少なくとも約40グラム毎モル(g/モル)であることができ、より好ましくは少なくとも約60グラム毎モル(g/モル)、好ましくは約500グラム毎モル(g/モル)以下、より好ましくは約300グラム毎モル(g/モル)以下であることができる。
【0197】
有機化合物の例としては、(a)1種以上の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物、そのエステル、ならびに/またはそのモノエポキシド、ならびに/またはそのダイマー、トリマーおよび/もしくはオリゴマー、ならびに/またはそのハロゲン化および/もしくはアミノ化誘導体、(b)好ましくは1〜約10炭素原子を有する1種以上の有機酸、そのエステル、そのモノエポキシドならびに/またはその塩、(c)1種以上のケトール,例えば1−ヒドロキシ−2−プロパノン、(d)1種以上のアルキレンビスフェノール化合物、ならびに/またはその1種もしくは複数種のエポキシド、ジオールおよび/もしくはクロロヒドリン、ならびに/または(e)アニリン、トルエン、メチレンジアニリン、ならびに/またはフェノール、が挙げられる。
【0198】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;3−クロロ−1,2−プロパンジオール;2−クロロ−1,3−プロパンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;シクロヘキサンジオール;1,2−ブタンジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,2,3−プロパントリオール(「グリセリン("glycerin", "glycerine")」または「グリセロール」としても公知、そして本明細書において互換的に用いる);およびこれらの混合物を挙げることができる。本発明に従って処理される流出物中のMAHCとしては、例えば1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;および1,2,3−プロパントリオール;を挙げることができ、1,2,3−プロパントリオールが最も好ましい。
【0199】
MAHCのエステルの例としては、エチレングリコールモノアセテート、プロパンジオールモノアセテート、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジアセテートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0200】
MAHCのモノエポキシドの例としては、グリシドール、ジクロロプロピルグリシジルエーテルおよびエピクロロヒドリン、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0201】
有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸およびグリコール酸、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0202】
アルキレンビスフェノール化合物の例としては、ビスフェノールAおよびビスフェノールF、更にこれらの化合物の誘導体(おそらくエポキシド基も含有するもの)が挙げられる。
【0203】
有機化合物は、総有機炭素(TOC)濃度約100ppm超、約500ppm超、約1,000ppm超、および更に約5,000ppm超で存在できる。
【0204】
特定の有機化合物の量を、下記表1に与える(水性ブライン溶液中のそれぞれの有機化合物の総質量基準)。
【0205】
【表1】

【0206】
水性ブライン溶液は、水酸化ナトリウムを含む塩基が、分子当たり少なくとも1つの塩素原子を有する化合物と反応して、少なくとも約80質量パーセント、より好ましくは少なくとも約90質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約95質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約99質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約99.9質量パーセント、および更に一層より好ましくは少なくとも約99.99質量パーセントの塩化ナトリウムを含む1種以上の無機塩を形成するプロセスの生成物であることができる。
【0207】
水性ブライン溶液は、1種または複数種のクロロヒドリンのエポキシ化によって、クロロヒドリンと水酸化ナトリウムとを反応させることにより、生成できる。クロロヒドリンは、多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物および/またはその1種もしくは複数種のエステルを含む反応混合物と、少なくとも1種の塩素化剤を含む少なくとも1種の塩素化供給物流とを、任意に水および1種以上の触媒の存在下で、反応容器内で塩化水素化条件下で接触させることによって、生成できる。
【0208】
多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物は、好ましくはグリセロールを含む。多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物の少なくとも約50質量パーセントまたは少なくとも約70質量パーセントがグリセロールであることができる。グリセロールは、油脂化学またはバイオディーゼルの製造から供給できる。このようなプロセスは、例えば、第WO2006/020234号、第WO2005/05147号、第WO2006/100318号、第EP−A−1687248号、および第EP−A−1762556号に開示されている。上記文献の各々の関連の開示は参照により本明細書に組入れる。
【0209】
上記脱塩化水素プロセスから供給されるブラインは、一般的に、1種以上の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物、そのエステル、ならびに/またはそのモノエポキシド、ならびに/またはそのダイマー、トリマーおよび/もしくはオリゴマー、ならびに/またはそのハロゲン化および/もしくはアミノ化誘導体を含む。水性ブライン溶液中に存在できる、このような化合物の量を、上記表1中に示す。
【0210】
水性ブライン溶液はまた、少なくとも1種のポリフェノール化合物を、水酸化ナトリウムを含む水性塩基の存在下でエポキシ化することによって生成できる。好ましい態様において、ポリフェノール化合物は、ビスフェノールAを含み、そしてブラインは、好ましくは、より高分子量の固体エポキシレジンを形成するためのTAFFYプロセスから供給される。別の好ましい態様において、ポリフェノール化合物は、ビスフェノールAを含み、そしてブラインは、好ましくは、より低分子量の液体エポキシレジンを形成するためのプロセスから供給される。別の態様において、ポリフェノール化合物はビスフェノールFおよび/または1種以上のレゾール(ジフェノールとアルデヒド,例えばホルムアルデヒドとの反応生成物として得ることができるもの)であり、そしてブラインは、液体エポキシノボラック(LEN)を形成するためのプロセスから供給される。エポキシ化は、少なくとも1種のポリフェノールとエピクロロヒドリンとを、水酸化ナトリウムを含む水性塩基の存在下で反応させることによって実施できる。エピクロロヒドリンは、エピクロロヒドリンを形成するためのプロセスから、例えば本明細書に記載されるように供給できる。
【0211】
上記エポキシ化プロセスから供給されるブラインは、一般的に、1種以上のポリフェノール化合物および/または1種以上のポリフェノール化合物のグリシジルエーテルを含む。水性ブライン溶液中に存在できる、ポリフェノール化合物およびエポキシ化ポリフェノール化合物の量を、上記表1中に示す。
【0212】
水性ブライン溶液はまた、塩素化剤および1種以上の有機化合物を含む蒸気相流出物を、水酸化ナトリウムを含む水性塩基と接触させる(塩素化剤を蒸気相流出物から除去するために)ことによって生成できる。好ましい態様において、蒸気相流出物の供給源は化学反応器である。塩素化剤は、好ましくは塩化水素である。反応混合物は、好ましくは液相反応混合物である。接触は、気−液接触装置を用いて実施できる。
【0213】
水性ブライン溶液は、アニリンとホルムアルデヒドとの反応を触媒するために使用される塩化水素を中和してメチレンジアニリン(MDA)(これは(ポリ)イソシアネートの製造に有用である)を形成することによって生成できる。アニリン、トルエンおよび他の好適な溶媒はまた、MDAおよび他の望ましい生成物の抽出に使用できる。塩化水素の除去は、先の段落に記載するプロセスによって実施できる。中和ステップから供給されるブラインは、一般的に、アニリン、トルエン(溶媒として用いる場合)、メチレンジアニリンおよび/またはフェノールを含む。
【0214】
アニリン、トルエンおよび/またはメチレンジアニリンを含有する水性ブライン溶液を、揮散または共沸蒸留に供して、水性ブライン溶液の準備の前に水性ブライン溶液中に存在するアニリン、トルエンおよび/またはメチレンジアニリンを除去することができる。少なくとも約50質量パーセント、より好ましくは少なくとも約80質量パーセント、および最も好ましくは少なくとも約90質量パーセントのアニリン、トルエンおよび/またはメチレンジアニリンを、水性ブライン溶液を本発明の方法における精製ステップに与える前に水性ブライン溶液から除去できる。本発明の方法における精製ステップに与える水性ブライン溶液は、本発明に係る第1の再溶解操作の前にアニリン、トルエンおよび/またはメチレンジアニリンを除去するために揮散単位操作に好ましくは供されていない溶液である。
【0215】
水性ブライン溶液中に存在できるアニリン、メチレンジアニリンおよび他の化学物質の量を表1中に上記する。
【0216】
本発明は、低減された有機含有量を有するブラインを与えるための十分なブライン無機化を実現するために採用(例えば1ステップで)できる、単純な方法を提供する。よって、本発明は、プロセス供給物および/または再循環流として使用されることになる、有機含有量が低減されたブラインの使用を許容するためのブラインの処理のために、提供される。例えば、上記のように、種々のプロセスから得られるブラインは、高濃度の有機化合物を含有できる。例えば、グリセリンのエピクロロヒドリンへの変換のプロセスからのブラインの回収(塩素/アルカリプロセスにおいて使用するため)(例えば塩素/アルカリカチオン交換膜を使用して)において、ブラインは、高濃度の有機物,例えばグリセリンを含有できない。グリセリンからエピクロロヒドリン(GTE)プロセスへの加水分解装置底部流は、一般的な塩(塩化ナトリウム)を、濃度約16質量%超で含有する。流れは、塩素/アルカリプロセス,例えば塩素/アルカリ膜プロセス(膜C/A)に再循環させる価値を有する。本発明は、このようなプロセス流を、単純で効率的な技術(汚染されたブラインを有機汚染,本質的にはグリセリン(濃度が通常約0.10質量%(1000ppm)超)から、そして低〜微量の濃度で存在する場合がある他の有機汚染物から、解放するためのものである)を与えることによって効率的に使用するために提供する。
【0217】
本発明は、精製されたブラインに関し、特に、低減された有機含有量,および更により好ましくは低減された塩素酸塩含有量を有するブラインに関する。本発明はまた、低減された有機含有量、および更により好ましくは低減された塩素酸塩含有量を有するブラインを得るための方法および装置に関し、そしてブラインの無機化に関することができる。本発明はまた、方法および装置の改善(その中で使用されるブラインまたはそれから得られるブラインにおいて、低減された有機含有量、そして好ましくは低減された塩素酸塩含有量を包含できるように、ブラインを該方法および装置において使用する)に関する。本発明は、種々の方法および技術,例えば水、廃水およびブラインの精製を含むプロセスにおいて有用であり、そして、塩素/アルカリプロセス、およびグリセリンからエピクロロヒドリンへの変換を含むプロセスにおいて特に有用である。
【0218】
電気化学的酸化
本発明は、ブライン(通常、塩化ナトリウム濃度が約5wt%以上)中の有機汚染を、電気化学的酸化、および好ましくは後続の後処理によって低減する方法を提供する。電気化学的酸化は、電気回路の一部である電極を備える容器内で行なう。電極は、種々の物質で構成でき、そしてプロセスは、物質を添加してプロセス効率を改善することによって実施できる。処理容器内の電流およびテンション、更に保持時間の条件、および汚染除去すべきブラインの温度およびpHは、汚染除去を実現するために調整できる。更に一層、本発明は、電気化学プロセスにおいて処理されたブラインの任意の後処理(所望の場合、塩素酸塩含有量を適切に低いレベルまで低減するように)の手順を提供する。
【0219】
電気化学的に進行する酸化による有機汚染の低減(未処理(有機汚染された)ブラインが電気化学的酸化によって処理されている)は、処理されたブライン中の塩素酸塩および/または次亜塩素酸塩の濃度の増大を招来できる。所望の場合、塩素酸塩および/または次亜塩素酸は、処理されたブラインから除去できる(特に、これらの存在がプロセス条件に干渉し、および/またはプロセス環境に有害である性質の場合)。よって、還元剤,例えば1種以上のアルカリ金属亜硫酸塩,例えば亜硫酸ナトリウムを、処理されたブラインに添加して、塩素酸塩および次亜塩素酸塩の濃度を低減できる。処理されたブラインのpHは、pH約1〜約3,例えば約1.5に低下させて、次亜塩素酸塩を塩素に変換でき、そして塩素を揮散(例えばスチーム、または空気、または窒素で)できる。加えて、これらの技術の組合せを用いて、還元剤の使用およびpH低下の組合された利点を得ることができる。例えば、塩素酸塩の除去は、ブラインが隔膜または膜塩素/アルカリプロセス(ここで塩素酸塩は干渉剤である)において使用される場合に必要である。更に、酸処理は、ブラインが酸性であるべきプロセスにおいて有用である。
【0220】
本発明の方法は、他の方法とは、本発明の方法が有機汚染を1ステップの電気化学プロセスで低減でき、任意に1ステップ化学プロセス(塩素酸塩および/または次亜塩素酸塩を軽減するための)と組合される点で異なる。
【0221】
本発明の方法は、他の代替の方法とは、本発明の方法が有機汚染を1ステップのプロセスで許容可能に低いレベルまで低減でき、例えば、この様式で精製されたブラインは、種々のプロセスにおいて直接使用(例えば、塩素/アルカリプロセスにおける供給物として)できる点で異なる。本発明によって提供される方法は、電気エネルギーが経済コスト的に競合する場合に特に好適である。本発明は、高度な自動化および低レベルの監視を可能にする。よって、本発明は種々の利点,例えば単純性、耐性および潜在的な低コストを与える。
【0222】
本発明は、ブライン副生成物流の総有機炭素(TOC)含有量を低減してブライン流,例えば再循環可能なブライン流(総有機炭素含有量約10ppm未満を有するもの)を生成することを可能にする。本発明に従って処理できるブライン再循環流は、上記で議論するように種々の塩化ナトリウム含有量を有することができ、そして塩化ナトリウム約15質量%〜約23質量%(ブライン副生成物流の質量基準)、高TOC含有量約200ppm〜約20,000ppm、または約500ppm〜約10,000ppm、または約500ppm〜約5,000ppm、およびpH約7〜約14、または約8〜約13、または約10〜約12.5を含むことができる。
【0223】
本発明において得られる、精製されたまたは再循環可能なブライン流(TOC約10ppm未満および塩化ナトリウム含有量約15質量%〜約23質量%(再循環可能なブライン流の質量基準)を含有するもの)は、種々の1箇所、局所的、または遠隔のプロセスにおいて使用できる。このようなプロセスの例は、塩素/アルカリプロセス、電気化学プロセス(例えば塩素および苛性物の製造、エポキシドの製造、塩素−アルカリ膜プロセス、等のためのもの)である。
【0224】
本発明に従って処理されるブライン副生成物流は、任意の流れであることができ、ここで、水、塩化ナトリウム、およびTOCが、廃、再循環、または副生成物流の中に存在する。ブライン流(本発明のTOC低減プロセスをこれに適用できる)の例は、ブライン供給物流、またはプロセスにおいて生成するブライン流,例えば再循環または副生成物ブライン流(エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造において得られるもの)、液体エポキシレジン(LER)または他のエポキシレジンブライン/塩再循環流、他のクロロヒドリンブライン再循環流、イソシアネートブライン再循環流、海水、水精製流からの不合格流,例えば逆浸透ユニットからの不合格流、化学プロセスからの廃ブライン流、塩素/アルカリプロセス用の供給物ブライン流、および特に塩素/アルカリプロセスにおける供給物流(有機物質の影響を受けやすいもの)である。低レベルのTOCは、実質量の除去困難な有機化合物(例えばグリセリン)を含有するブライン再循環流でも得ることができる。
【0225】
例えば、本発明の方法は、エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造において生成するブライン副生成物流の処理に顕著に適用できる。グリセリンからエピクロロヒドリン(GTE)のプロセスからのブライン副生成物流は、本発明に従って処理でき、平均TOC含有量少なくとも約200ppm、一般的に少なくとも約500ppm、例えば約1000ppm〜約2500ppmを有することができ、そして約1500ppmであることができる。本発明のTOC低減に供されるGTEブライン副生成物流のグリセリン含有量は、少なくとも約50質量%、一般的に少なくとも約70質量%(総有機炭素含有量の質量基準)、および塩化ナトリウム含有量約15質量%〜約23質量%(ブライン副生成物流の質量基準)であることができる。GTE副生成物流中のTOCに寄与する他の有機化合物としては、グリシドール、アセトール、ビスエーテル、ジクロロプロピルグリシジルエーテル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール、1−クロロ−2,3−プロパンジオール、または2−クロロ−1,3−プロパンジオール、エピクロロヒドリン、ジグリセロール、トリグリセロール、他のオリゴマー性グリセロール、オリゴマー性グリセロールのクロロヒドリン、酢酸、ギ酸、乳酸、グリコール酸、および他の脂肪酸が挙げられる。
【0226】
電気化学的酸化において用いる電極を種々の物質で構成して、ブラインの有機含有量の低減を可能にすることができる。好ましくは、ホウ素ドープされたダイヤモンドでコートしたチタンアノードを用いてアノード酸化を実現する。Ti−ダイヤモンド−Bアノードを用い、優れた結果が本発明で可能である。これは特に、O2およびCl2を生じさせる(水および塩化ナトリウムの電解)ための高いオーバーポテンシャルに起因する。このような電極はAdamant−CH,Magneto−NL,Condias−D[DIACHEM(登録商標)]より市販で入手可能である。この様式で、ブラインの有機炭素含有量を低くし、一方顕著量のO2およびCl2を生じさせないことができ、そして有機含有量を低くするために選択的である。
【0227】
何らの理論にも拘束されることを望まないが、OH基は、並外れて高い酸化電位、約2.7V(有機化合物の酸化に使用できる)を有する電気化学的酸化において生じる。
【0228】
本発明に従った有機物質の酸化は、グリセリンのエピクロロヒドリンへの変換において特に有用であり、ここで有機物質(例えばグリセリン)を無機化(および従って低減)(例えば二酸化炭素を形成)できる。本発明は、化学プロセスにおいて有用なブラインの処理において特に有用である。有機物の二酸化炭素への高効率の酸化が、不利な副反応なしで存在するからである。低TOC含有量を実現できる一方、除去困難な有機物(例えばグリセリン)を低減させる場合でも不利な副反応を得ることがない。
【0229】
何らの理論にも拘束されることを望まないが、本発明に係る化学電気的酸化は、電子を1つの物質から除去して別の物質(より低い自由エネルギーを有するもの)を形成することによる酸化を含む手順である。電気酸化は、化学的酸化(反応剤の生成および精製、次いで反応剤の使用を含む)よりも単純である。本発明において、反応剤は「in situ」で生じ、または酸化は直接電極表面上である。
【0230】
図1に示すように、本発明の方法の1つの態様(概略的に数10によって示す)を示す。プロセス10は、グリセリンからエピクロロヒドリン(GTE)へのプロセス11におけるプロセス水再循環を与えるために特に有用である。示すように、図1において、11でのGTEプロセスからの汚染されたプロセス水16は、任意の熱交換器12を経て送って、汚染されたプロセス水16をより高温または低温にすることができる。熱交換器12からの汚染されたプロセス水17は、電気化学的に進行する酸化セル13に進み、その態様(図2に示す)で、汚染されたプロセス水17の有機含有量は低減される。電気化学的に進行する酸化セル13から、低減された有機含有量の水18が、二酸化炭素除去のためのpHの任意の調整、および/または塩素酸塩を除去する処理(例えば、亜硫酸ナトリウムの添加による)のための装置14に進む。低減された有機含有量/低減された塩素酸塩の水19は、次いで、C/Aセル15に、プロセスにおいて使用すべき再循環プロセス水として進む。C/Aセル15からのブライン流20は、GTEプロセス11への供給物流として使用できる。
【0231】
図2は、本発明に係る、例示的な電気化学的に進行する酸化のセル(概略的に数30によって示す)を示す。電気化学反応器30は、処理すべきブライン溶液50を収容するハウジング31を含む。電気化学セル30はまた、アノード32およびカソード33(例えば、限定されるものではないが、ホウ素ドープされたダイヤモンドでコートされたチタン)を備える。循環ポンプ34は、電気化学反応器30のブライン内容物50の撹拌を与える。電気回路を通る電流の調整は、電源35で実現する。電気化学反応器内の温度の調整は、熱交換器36(これは電気化学反応器30に対してどの場所にも位置できる)を用いて得ることができる。図2において、熱交換器36は、例えば、電気化学セル30への供給物流のライン37と38との間にあることができる。加熱された流れ38は、例えばGTEプロセスからの水、NaCl、および有機物を含むことができる。処理されたブライン生成物流39は、例えば、水およびNaClを含むことができ、C/Aプロセスに送ることができる。二酸化炭素ガス流および水素ガス流は、電気化学反応器からそれぞれ流れ40および41経由で出ることができる。
【0232】
電気化学反応器30の温度は、例えば、ほぼ室温または高温,例えば約20℃以上、約30℃以上、約40℃以上であることができ、そして、温度約20℃〜70℃の範囲を含むことができる。電気化学反応器の内容物のpHの調整は、供給物または反応器バルク内容物50のpHの調整により実現できる。例えば、pHは、中性からアルカリ性であることができ、限定されない範囲は、約7〜約10である。また、反応器30の内容物50の水理滞留時間は調整できる。
【0233】
滞留時間、電位および温度を調整して、有機含有量の所望の低減を得ることができる。電気化学的酸化は、一定電圧モードまたは一定電流モードで操作できる。
【0234】
任意に、上記で議論したように、亜硫酸ナトリウムをブラインに十分量で添加して、塩素酸塩および/または次亜塩素酸塩を所望レベル(例えば濃度約500ミリグラム毎リットル(mg/L)〜約50,000mg/L)まで低減できる。電気化学的に処理されたブラインの任意の後処理は、塩素酸塩(しばしば電気化学的酸化において共生成する)の軽減を実現する。
【0235】
また、上記で議論したように、酸性化、および揮散(例えばスチーム、または空気、または窒素により)によって次亜塩素酸塩を軽減するために、電気化学的に処理されたブラインの任意の後処理が存在できる。
【0236】
任意の後処理は、高温に含まれる種々の温度で実施でき、そして好ましくは約40℃超で実施する。
【0237】
任意に、塩素酸塩の低減を有利にするのは、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)の添加、続いて沈殿したアルカリ土類金属硫酸塩の除去による硫酸塩の除去である。
【0238】
生物学的処理
微生物:
本発明は、高い塩化ナトリウム濃度を有する水性ブライン溶液の存在下で上記有機化合物の1種以上を生分解する能力を有する微生物、ならびにこのような微生物を単離および適応させる方法を含む。
【0239】
本発明に係る塩化ナトリウムを含む水性ブライン組成物中の炭化水素化合物を生物学的に酸化する能力を有する耐塩性の生存微生物を得る方法は:
(1)生存微生物、1種以上の炭化水素化合物、酸素、塩化ナトリウムを含む浸透圧的に許容可能な濃度の2種以上の無機塩、ならびに、任意に、生存微生物の呼吸、成長および/または繁殖のために必要とされるものとしての生存微生物のための1種以上の栄養物を含む水性組成物を準備すること;
(2)ステップ(1)において準備した水性組成物中に、炭化水素化合物、酸素、塩化ナトリウムを含む2種以上の無機塩、ならびに、任意に、水および/または、生存微生物の呼吸、成長および/または繁殖のために必要とされるものとしての生存微生物のための1種以上の栄養物、を含む1種以上の物質を導入すること;ならびに
(3)少なくとも幾らかかの微生物が生存できかつ塩化ナトリウム濃度の変化に適応できる速度で水性組成物の塩化ナトリウム濃度を増大させること;
を含み、ステップ(3)が、水性組成物中の塩化ナトリウムの1種または複数種の無機塩の総量に対する質量パーセントを増大させることを含む、方法を提供する。
【0240】
塩化ナトリウム質量パーセント(水性組成物中の1種または複数種の無機塩の総量基準)は、好ましくは、少なくとも約1質量パーセント、より好ましくは少なくとも5質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約10質量パーセント、および更に一層より好ましくは少なくとも約15質量パーセント、増大する。
【0241】
微生物を選択および/または適応させる方法は、好ましくは、温度少なくとも約15℃、より好ましくは少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約40℃、好ましくは約60℃以下、より好ましくは約50℃以下、および更により好ましくは約46℃以下で実施する。
【0242】
ステップ(a)において接触させる水性ブライン溶液は、好ましくは、pH少なくとも約6.5、より好ましくは少なくとも約7、好ましくは約8.5以下、より好ましくは約8以下に、調整および/または維持する。
【0243】
ブラインは、好ましくはブライン流であり、ブラインと微生物との接触の間に、生存微生物に対して相対的な流速を有する。接触は、好ましくは、バイオリアクター容器(少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口をブライン流のために有する)内で実施する。ブライン流の流速は、容器内での水理滞留時間が好ましくは約100時間未満、より好ましくは約24時間未満、更により好ましくは約12時間未満、および好ましくは約6時間超、およびより好ましくは約10時間超であるようにする。
【0244】
酸素は、生存微生物に種々の手段によって与えることができる。例としては、水性ブライン溶液の通気(例えば、酸素含有ガス,例えば空気の水性ブライン溶液中への注入によって、または、微生物含有ブライン溶液の酸素含有ガス(例えば空気)への曝露(例えばブライン溶液を酸素含有ガス経由でスプレーすること、もしくはブライン溶液を酸素含有ガスと気−液接触装置によって接触させることによる)によって);微生物を固体支持体上に固定し、繰返して、固定された微生物を水性ブライン溶液中の浸漬から酸素含有雰囲気(例えば空気)中に搬送および固定された微生物を水性ブライン溶液中に再浸漬すること;ならびに/または、微生物を酸素透過膜上に固定し、固定された微生物を有する酸素透過膜の表面を処理すべき水性ブライン溶液に曝露して、酸素透過膜の反対側表面を酸素含有ガス(例えば空気)に曝露すること;が挙げられる。酸素は、生存微生物における好気微生物呼吸を維持するのに少なくとも十分な速度で与える。
【0245】
塩化ナトリウム濃度は、好ましくは、約10パーセント以下、より好ましくは約6パーセント以下、および更により好ましくは約1パーセント以下(4水理滞留時間当たり)の速度で増大させる。塩化ナトリウム濃度は、好ましくは、少なくとも約0.4パーセント(4水理滞留時間当たり)の速度で増大させる。
【0246】
塩化ナトリウム濃度は、好ましくは、上記方法のステップ(3)に従って、水性組成物の塩化ナトリウム濃度が少なくとも約15質量パーセント、より好ましくは少なくとも約17質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約19質量パーセント、および更に一層より好ましくは少なくとも約20質量パーセントになるまで増大させる。上記方法のステップ(1)において準備される水性組成物は、好ましくは、塩化ナトリウム濃度が、約10質量パーセント未満、より好ましくは約6質量パーセント未満、および更により好ましくは約4質量パーセント未満であり、そして好ましくは、塩化ナトリウム濃度は少なくとも約1質量パーセント、好ましくは少なくとも約2質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約3質量パーセントである。
【0247】
生存微生物は、好ましくは、有機化合物分解の能力を有する多様な微生物の集団である。このような集団の例は、排水処理プラントにおける活性スラッジ(汚泥)からの微生物であり、特に、半塩水(汽水)である廃水または塩分を含む廃水の処理に用いる微生物である。このような集団の別の例は、高度に塩性の水の天然物から(例えば死海から、またはグレートソルトレーク(ユタ州、U.S.A.)から)単離される微生物である。
【0248】
好ましい態様において、生存微生物は、バクテリアを含む。特に好ましい態様において、微生物は、ビブリオ(Vibrio)属および/またはハロモナス(Halomonas)属に属するバクテリアを含む。特に、微生物は、Vibrio alginolyticus、Halomonas salinaおよび/またはHalomonas campaniensisの種に属するバクテリアを含む。このような微生物は、微生物集団において天然に存在でき、または、このような微生物の培地から得られもしくはイノキュレートできる。
【0249】
上記方法に従って適応させる微生物の幾らかまたは全ては、培養し、および/または、生物寄託機関(例えばATCC)によって維持された寄託物から得ることができる。特に、Vibrio alginolyticusはATCC No.17749で得ることができ、そしてHalomonas salinaはATCC No.49509で得ることができる。Halomonas campaniensisは、南イタリアのCampania地方近くの鉱物貯留地から単離され、Romanoら,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.55:2236(2005)で特定され、そしてATCC No.BAA−966およびDSM No.15293にて登録されている(その全部を参照により本明細書に組入れる)。
【0250】
本発明の別の側面は、酸素、ならびにブライン溶液(1種以上の有機化合物、微生物の成長に必要とされるものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、ならびに、少なくとも約17質量パーセント、好ましくは少なくとも約18質量パーセント、より好ましくは少なくとも約20質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約22質量パーセントの塩化ナトリウム、を含むもの)の存在下で成長するように適応させた微生物である。適応させた微生物は、上記方法に従って適応させた上記微生物、ならびに/または、培養されおよび/もしくは生物寄託機関から得られる微生物、の1種以上の微生物を含むことができる。
【0251】
本発明の別の側面は、1種以上の有機化合物、酸素の存在下で水性組成物中に浸漬された生存微生物の集団、微生物の成長のために必要とされるものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、ならびに少なくとも約17質量パーセント、好ましくは少なくとも約18質量パーセント、より好ましくは少なくとも約20質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約22質量パーセントの塩化ナトリウム、を含む水性組成物である。生存微生物は、上記方法に従って適応させた上記微生物、ならびに/または、培養されおよび/もしくは生物寄託機関から得られる微生物、の1種以上を含むことができる。
【0252】
本発明の別の側面は、少なくとも約15質量パーセント、好ましくは少なくとも1約8質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約20質量パーセント、および更に一層より好ましくは少なくとも約22質量パーセントの1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、酸素の存在下で水性組成物中に浸漬された生存微生物の集団、ならびに、微生物の成長に必要とされるものとしての該1種以上の有機化合物以外の1種以上の栄養物、を含む水性組成物であり、ここで1種以上の無機塩は、少なくとも約80質量パーセントの水酸化ナトリウムを含む。生存微生物は、上記方法に従って適応させた上記微生物、ならびに/または、培養されおよび/もしくは生物寄託機関から得られる微生物、の1種以上を含むことができる。
【0253】
本発明の別の側面は、好ましい平均粒子サイズが少なくとも約1μm、より好ましくは少なくとも約10μm、更に好ましくは少なくとも約60μm、および更に一層より好ましくは少なくとも約100μmで、約300μm以下、より好ましくは約200μm以下であり、ならびに/または、好ましい密度が約1.5g/cm3超、より好ましくは少なくとも約2g/cm3、更により好ましくは少なくとも約2.4g/cm3である、粒子の表面に接着した微生物でコートされている粒子を含む組成物である。粒子は、好ましくは実質的に凝集しておらず、そしてより好ましくは凝集していない。微生物は、好ましくは、粒子の表面に、微生物および細胞外ポリマー物質を含むバイオフィルムによって接着している。微生物は、上記方法に従って適応させた上記微生物、ならびに/または、培養されおよび/もしくは生物寄託機関から得られる微生物、の1種以上を含むことができる。
【0254】
本発明は、濃縮された工業生産の水性ブライン溶液を、生化学的酸化を経る有機化合物の生分解によって精製する方法を提供する。該方法は、揮発性の酸化生成物,例えば二酸化炭素(これは水性ブライン溶液から放出される)を生成する。該方法により回収された精製水性ブライン溶液は、更なる単位操作に供することができ、および/または、電解して、塩素ガスおよび/および水酸化ナトリウムまたは次亜塩素酸塩を、周知の塩素−アルカリプロセスによって形成できる。
【0255】
ブラインを精製する方法は:
(1)1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、ならびに任意に、該1種以上の無機塩および該1種以上の有機化合物の中に含まれる微生物栄養物以外の1種以上の微生物栄養物、を含む水性ブライン溶液を準備すること;ならびに
(2)ステップ(1)において準備した水性ブライン溶液から有機化合物を除去して第1の精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作を行なうこと;
を含み、水性ブライン溶液が、少なくとも約10質量パーセント、より好ましくは少なくとも約15質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約18質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約20質量パーセント、および更に一層より好ましくは少なくとも約22質量パーセントで、飽和以下、および好ましくは約22質量パーセント以下、の1種以上の無機塩を含有し;1種以上の無機塩の少なくとも約80質量パーセント、より好ましくは少なくとも約90質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約95質量パーセント、更により好ましくは約98質量パーセント、更に一層より好ましくは少なくとも99質量パーセント、が塩化ナトリウムであり;1種以上の有機化合物が有機化合物を含み;そして少なくとも1つの単位操作が:
(a)水性ブライン溶液と、酸素の存在下で有機化合物を酸化させる能力を有する生存微生物とを接触させること;
(b)水性ブライン溶液によって満足されていない生物栄養物についての微生物要求に比例させて、生物栄養物を水性ブライン溶液に任意に添加すること;および
(c)微生物を水性ブライン溶液から分離して第1の精製されたブライン溶液を得ること;
を含む。
【0256】
生存微生物は、好ましくは、上記の先の段落において記載した微生物から選択される微生物の1種以上の種である。
【0257】
接触ステップ(a)は、好ましくは、好ましくは温度少なくとも約15℃、より好ましくは少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約40℃、好ましくは約60℃以下、より好ましくは約50℃以下、および更により好ましくは約46℃以下で実施する。
【0258】
ステップ(a)において接触させる水性ブライン溶液は、好ましくは、pH少なくとも約6.5、より好ましくは少なくとも約7、好ましくは約8.5以下、およびより好ましくは約8以下に、調整および/または維持する。
【0259】
ブラインは、好ましくはブライン流であり、接触(a)の間に、生存微生物に対して相対的な流速を有する。接触(a)は、好ましくは、バイオリアクター容器(少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口をブライン流のために有する)内で実施する。ブライン流の流速は、容器内での水理滞留時間が好ましくは約100時間未満、より好ましくは約24時間未満、更により好ましくは約12時間未満、および好ましくは約6時間超、およびより好ましくは約10時間超であるようにする。
【0260】
容器は、実際には、1つより多い物理的容器であることができる。これは2つ以上の直列の容器、2つ以上の並列の容器、または2つの何らかの組合せ(処理すべきブラインの必要な流速を与えるため)であることができる。
【0261】
酸素は、種々の手段によって生存微生物に与えることができる。例としては、水性ブライン溶液の通気(例えば、酸素含有ガス,例えば空気の水性ブライン溶液中への注入によって、または、微生物含有ブライン溶液の酸素含有ガス(例えば空気)への曝露(例えばブライン溶液を酸素含有ガス経由でスプレーすること、もしくはブライン溶液を酸素含有ガスと気−液接触装置によって接触させることによる)によって);微生物を固体支持体上に固定し、繰返して、固定された微生物を水性ブライン溶液中の浸漬から酸素含有雰囲気(例えば空気)中に搬送および固定された微生物を水性ブライン溶液中に再浸漬すること;ならびに/または、微生物を酸素透過膜上に固定し、固定された微生物を有する酸素透過膜の表面を処理すべき水性ブライン溶液に曝露して、酸素透過膜の反対側表面を酸素含有ガス(例えば空気)に曝露すること;が挙げられる。酸素は、生存微生物における好気微生物呼吸を維持するのに少なくとも十分な速度で与える。
【0262】
微生物をバイオリアクター内に分散させる場合、これらは水性ブライン溶液からフィルターろ過、ストレーニング、遠心分離、ハイドロサイクロン分離および/または重力沈降によって分離できる。これらの分離方法の各々は、好ましくは、微生物を実質的に固体の粒子(好ましい平均粒子サイズ少なくとも約1μm、より好ましくは少なくとも約20μm、より好ましくは少なくとも約60μm、および更により好ましくは少なくとも約100μm、および好ましくは約300μm以下、より好ましくは約180μm以下、および更により好ましくは約150μm以下、ならびに/または、粒子密度少なくとも約1.5g/cm3、より好ましくは少なくとも約2g/cm3、更により好ましくは少なくとも約2.4g/cm3を有するもの)上に固定することによって容易にする。実質的に固体の粒子は、好ましくは粒子サイズ分布が、約4以下、より好ましくは約3以下、更により好ましくは約2以下、および更により好ましくは約1.5以下である。粒子は、好ましくは粗い表面を有し、表面への微生物の接着を容易にする。粒子はまた、好ましくは実質的に疎水性の表面を同じ理由で有する。
【0263】
好適な粒子の例はマイクロサンド,例えばACTISANDTM、石英砂(公称平均粒子サイズ約150μm、および粒子密度(比重)約2.65g/cm3、Veolia Water Solutions&Technologies of Saint Maurice−Cedex,Franceから入手可能)である。
【0264】
微生物は、粒子の表面に、これらをこれらの表面に接着させることによって固定する。バイオフィルムを形成する能力を有する微生物は、穏やかな撹拌下、および、微生物BOD低減/消費を支持する一方で、バイオフィルムが粒子上に成長してバイオフィルムを微生物とともに移植するのに十分な時間EPS生成を促進するのに好適な条件下で、生存微生物と粒子とを接触させることによって、粒子に接着できる。安定な接着体バイオフィルムを粒子上に形成する能力を有さない微生物は、天然および/または合成の接着性ポリマーを微生物と粒子との混合物に添加して微生物を粒子に接着させることによって、粒子の表面上に固定できる。好適な天然ポリマーの例はアルブミンである。好適な人工ポリマーの例は、ポリアクリルアミド,例えばLT22Sカチオン性ポリアクリルアミド(Ciba Specialty Chemicals,Basal,Switzerlandから入手可能)である。
【0265】
微生物を、好ましい平均粒子サイズの粒子上に固定することは、フィルターろ過および/またはストレーニングによる分離を容易にする。フィルター媒体は、微生物自体をフィルターろ過で除去するのに他に必要なサイズよりも大きい平均孔径を有することができ、これによって、フィルターろ過のために必要な圧力、およびフィルター媒体が微粒子で詰まる速度を低減するからである。
【0266】
微生物を、好ましい密度の粒子上に固定することは、粒子にバラストを与えて、遠心分離、ハイドロサイクロン分離および/または重力沈降による分離を加速させる。
【0267】
微生物はまた、水性ブライン溶液をデバイス(水性ブライン溶液の流れを可能にする一方で、微生物を、水性ブライン溶液の流れに対して比較的動かないように維持するもの)と接触させることによって、処理された水性ブライン溶液から分離できる。デバイスは、例えば、水性ブライン溶液をフィルター媒体経由で通過させるのに十分な孔サイズを有するフィルター媒体上に固定された微生物(例えば、フィルター媒体上に微生物を含むバイオフィルムを形成することにより)であることができる。デバイスはまた、ブライン溶液と接触している表面(例えば、管のバンクまたは波形表面、例えばバイオフィルムによって、表面に接着した微生物を有するもの)であることができる。デバイスは、多孔質表面(任意に活性化炭素を含有できる)を有し、バイオリアクターの分野で公知であるポリマー支持体を含むことができる。
【0268】
粒子またはフィルター媒体の上の微生物の固定は、処理すべき水性ブライン溶液の塩濃度への微生物の適応の前または後に実施できる。固定がバイオフィルム形成による場合、迅速なバイオフィルム形成を容易にして微生物に保護環境を与えるために、適応前のバイオフィルムの形成が望ましい。微生物がより高い塩濃度に適応するからである。
【0269】
微生物集団は、高濃度の塩化ナトリウムを含有するブライン溶液に適応する能力を有する微生物の選択のための適者生存法によって微生物を選択する間に縮小される傾向があり、固定は、好ましくは、塩化ナトリウム濃度を0.5質量パーセント毎に上昇させて、ブライン溶液が接触する微生物の微生物種多様性を比較的安定に保持した後に、実施する。
【0270】
微生物は、水性ブライン溶液に膜(水性ブライン溶液の液体成分は透過でき、微生物は透過できないもの)を通過させることによって水性ブライン溶液から分離できる。好適なバイオリアクターは、メンブレンバイオリアクター(MBR)として公知である。この目的に好適な膜(ウルトラ−およびナノろ過膜として公知)は、種々の供給元から市販で入手可能である(例えばDow Water Solutions(The Dow Chemical Company,Midland,Michigan,U.S.A.)、商標FILMTEC(登録商標)にて、およびBerghof(Eningen,Germany)、商標HYPERMTM AEにて)。膜は、好ましくは、ナノろ過範囲の孔サイズを有し、そして好ましくは、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)を基にするポリマーで形成される。膜は、好ましくは、防汚コーティング(例えば、両親媒性グラフトコポリマー ポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリオキシエチレンメタクリレート(PVDF−g−POEM))を有する。
【0271】
このような更なる単位操作から回収される精製されたブラインを使用して、塩素ガスおよび水酸化ナトリウムまたは次亜塩素酸塩を、従来の塩素−アルカリプロセスで形成でき、および/または、結晶化によるブライン精製から回収された結晶塩を洗浄するための水性ブライン洗浄溶液として、再循環させることができる。
【0272】
各プロセスステップは、バッチ式、半バッチ式または連続式で実施できる。各プロセスステップは、好ましくは連続式で実施する。本発明に係る、初期水性ブライン溶液供給源の準備から精製ブライン溶液の生成までの全てのプロセスは、好ましくは連続式で実施する。
【0273】
本発明の生物学的処理プロセスからの処理されたブラインの任意の所望の流出物品質を実現するために、更なる精製ステップを用いてもよい。これらの更なる精製ステップは、フィルターろ過、吸着および他の一般的に使用される物理化学的単位操作を包含できる。
【0274】
本発明に係る方法および装置は、好ましくは、少なくとも約90質量パーセント、より好ましくは少なくとも約95質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約98質量パーセントの量の塩化ナトリウム(本発明の方法において与えられる水性ブライン溶液の供給源の単位体積当たり)を得るために操作できる。水性ブライン溶液は、好ましくは、本発明に従って処理して、塩化ナトリウム純度少なくとも約80パーセント、より好ましくは少なくとも約95パーセント、および更により好ましくは少なくとも約99パーセントを与える。
【0275】
好ましい態様において、本発明の方法に従って処理される水性ブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比は、好ましくは、水性ブライン溶液の供給源中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比の約10分の1未満、より好ましくは約100分の1未満、更により好ましくは約1000分の1未満である。
【0276】
上記方法は、本発明に係る装置を用いて実施できる。上記方法は、好ましくは、バイオリアクターを、本発明に係るブライン精製のために包含する。
【0277】
一態様において、バイオリアクターは、耐塩性の生存微生物を収容する少なくとも1つのバイオリアクター容器を含み、耐塩性の生存微生物は、上記の本発明に係る微生物である。
【0278】
別の態様において、バイオリアクターは、1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、任意に1種以上の微生物栄養物、および実質的に凝集していない粒子(先の項で説明した粒子の表面に接着している微生物でコートされているもの)を含む水性ブライン溶液を含む組成物を収容するバイオリアクター容器を含む。
【0279】
本発明の別の側面は、精製ブラインを製造するための化学プロセス装置であり、塩素原子含有化合物を水酸化ナトリウムと反応させて水性ブライン溶液を形成するのに好適な化学反応装置、および本発明に係るブライン精製装置を含み、該化学反応装置は、ブライン精製装置および/またはプロセスに、水性ブライン溶液を化学反応装置からブライン精製装置に導くために接続されており、そして化学反応装置は、水性水酸化ナトリウム溶液の供給源に、水性水酸化ナトリウム溶液を化学反応装置に導くために接続されている。化学反応装置は、エピクロロヒドリン、1種または複数種のエポキシレジン、またはメチレンジアニリンを形成するために好適な装置であることができる。
【0280】
化学反応装置が、1種または複数種のクロロヒドリンを水酸化ナトリウムと反応させることによって(すなわち脱塩化水素化によって)エピクロロヒドリンを形成するために好適である場合、化学プロセス装置は、クロロヒドリンを形成するために好適な塩化水素化装置を更に含むことができる。塩化水素化装置は、次いで、好ましくは化学反応器装置に、1種または複数種のクロロヒドリンを含む流れを、1種または複数種のクロロヒドリンを形成するための装置から化学反応器装置に導くために、接続されている。
【0281】
結晶化処理
上記のように、本発明は、ブラインを精製するための方法であって:
(1)1種以上の無機塩および1種以上の有機化合物を含む水性ブライン溶液を準備すること;ならびに
(2)有機化合物をブライン溶液から除去して精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作を行なうこと;
を含み;
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の1種以上の無機塩の少なくとも約80質量パーセントが、塩化ナトリウムであり、そして少なくとも1つの単位操作が、第1の再溶解操作を含み、該第1の再溶解操作が:
(a)水性ブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第1の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を第1の母液から分離すること;ならびに
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて第1の精製されたブライン溶液を得ること;
を含む、方法を提供できる。
【0282】
本発明に係るブライン精製方法は、好ましくは、第1の再溶解操作の下流の更なるブライン精製ステップを含む。
【0283】
好ましい態様において、少なくとも1つの単位操作は、第2の再溶解操作を更に含み、該第2の再溶解操作は:
(a)第1の精製されたブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第2の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を第2の母液から分離すること;および
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、第1の精製されたブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて、総有機炭素(TOC)濃度が第1の精製されたブライン溶液のTOC濃度よりも低い第2の精製されたブライン溶液を得ること;
を含む。
【0284】
本発明の方法は、好ましくは、第1の再溶解操作によって処理された水性ブライン溶液を更に処理するための第2の溶解操作を含む。
【0285】
更に好ましい態様において、該方法は、第1の再溶解操作のステップ(b)および/または任意の第2の再溶解操作(濃縮操作において)において分離された母液を処理することを含み:
(a)第1の母液および/または第2の母液の中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第3の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を第3の母液から分離すること、および
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて第3の精製されたブライン溶液を得ること、
を含む。
【0286】
第3の精製されたブライン溶液は、好ましくは、第3のブライン溶液と供給された水性ブライン溶液とを組合せてステップ(1)において準備される水性ブライン溶液を形成することによって、第1の再溶解操作に再循環させる。
【0287】
第3の溶解操作は、好ましくは、第1の再溶解操作および第2の再溶解操作からの母液を処理する。
【0288】
第3の再溶解操作によって生成する第3の母液の量は、好ましくは、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の量の約10質量パーセント以下、より好ましくは約5質量パーセント以下である。
【0289】
該プロセスからパージされた母液は、更なる単位操作に供することができる。更なる単位操作は、残存母液中の有機化合物の濃度を低減するための操作,例えば、残存母液中に存在する有機化合物を変換および/または除去するための操作を含むことができる。
【0290】
好ましい態様において、残存母液を生物学的酸化プロセスによって処理して、母液中の有機化合物をより揮発性の酸化フラグメント(これは母液から分離できる)に変換できる。
【0291】
別の好ましい態様において、残存母液を塩素化分解に供して、母液中の有機化合物をより揮発性の酸化フラグメント(これは母液から分離できる)に酸化できる。
【0292】
更に別の好ましい態様において、残存母液を炭素吸着または抽出(異なる溶媒中に)に供して有機化合物を母液から除去できる。
【0293】
前記の変換および/または除去の操作の2つ以上を、互いにまたは他の公知の単位操作と、並列または順次に、組合せて、母液中の有機化合物の濃度を更に低減させてもよい。
【0294】
このような更なる単位操作から回収された、精製されたブラインを用いて、塩素ガスおよび/もしくは次亜塩素酸塩および水酸化ナトリウムを従来の塩素−アルカリプロセスによって形成でき、ならびに/または本発明に係る方法に上記したような水性ブライン洗浄溶液として再循環させることができる。
【0295】
各再溶解操作のステップ(b)において分離された塩化ナトリウム結晶は、好ましくは、少なくとも約15質量パーセント、より好ましくは少なくとも約17質量パーセント、更により好ましくは少なくとも約20質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約23質量パーセントの塩化ナトリウムを含有し、総有機炭素(TOC)濃度がステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中のTOC濃度よりも実質的に低い水性ブライン洗浄溶液で洗浄する。好ましい態様において、水性ブライン洗浄溶液のTOC濃度の、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液のTOC濃度に対する質量比は、好ましくは約1:10、より好ましくは約1:100、および更により好ましくは約1:1000である。水性ブライン洗浄溶液のTOC濃度は、好ましくは、約50ppm未満、およびより好ましくは約10ppm未満である。水性ブライン洗浄溶液は、好ましくは、本発明の方法によって製造される精製された水性ブライン溶液の一部である。該方法の各単位操作において使用される水性ブライン洗浄溶液の量は、該方法によって製造される総精製水性ブライン溶液の、好ましくは約15質量パーセント未満、より好ましくは約10質量パーセント未満、および更により好ましくは約5質量パーセント未満である。ブライン精製方法において使用される水性ブライン洗浄溶液の総量は、該方法によって製造される総精製水性ブライン溶液の、好ましくは約50質量パーセント未満、より好ましくは約30質量パーセント未満、更により好ましくは約15質量パーセント未満である。
【0296】
ステップ(b)において分離された塩化ナトリウム結晶を水性ブライン洗浄溶液で洗浄することは、好ましくは、分離ステップ(b)と同時に実施する。洗浄は、好ましくは、ステップ(b)の間に連続して実施する。
【0297】
洗浄された本発明の塩化ナトリウム結晶は、これらを更に加工して他の商業的または工業的な用途のための塩を形成できるような低い量の有機化合物を含有する。好ましい態様において、分離ステップ(b)は、上流の結晶化操作からの塩化ナトリウム結晶および水性ブライン溶液のスラリーを遠心分離することにより、ならびに/または、上流の結晶化操作からの塩化ナトリウムおよび水性ブライン溶液のスラリーをハイドロサイクロンにおいて処理することにより、実施する。
【0298】
好ましい態様において、水性ブライン洗浄溶液を遠心分離および/またはハイドロサイクロン装置(分離操作の間に分離操作を行なうために用いるもの)の中に導入する。
【0299】
結晶化操作は、好ましくは、強制循環蒸発結晶化によって実施する。強制循環蒸発結晶化を実施するための装置は工業界で周知である。
【0300】
好ましい態様において、強制循環蒸発結晶化の間に蒸発した水は、1つ以上の再溶解操作における再溶解ステップ(c)の水性溶液の少なくとも一部として使用する。強制循環蒸発結晶化の間に蒸発する水は、好ましくは機械的蒸気再圧縮(MVR)によって回収する。
【0301】
各プロセスステップは、バッチ式、半バッチ式または連続式で実施できる。各プロセスステップは、好ましくは連続式で実施する。本発明に係る、ステップ(1)における水性ブライン溶液の準備から、精製されたブライン溶液の生成までの全てのプロセスは、好ましくは連続式で実施する。
【0302】
本発明に係る方法および装置は、好ましくは、少なくとも約90質量パーセント、より好ましくは少なくとも約95質量パーセント、および更により好ましくは少なくとも約98質量パーセントの量の塩化ナトリウム(ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の単位体積当たり)を得るために実施できる。水性ブライン溶液は、好ましくは、本発明に従って処理して、塩化ナトリウム純度少なくとも約80パーセント、より好ましくは少なくとも約95パーセント、および更により好ましくは少なくとも約99パーセントを与える。
【0303】
好ましい態様において、第1の再溶解ステップにおいて得られる第1の精製されたブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比は、好ましくは、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比の約10分の1未満、より好ましくは約100分の1未満、および更により好ましくは約1000分の1未満である。
【0304】
上記方法は、本発明に係る装置を用いて実施できる。ここで、該装置をより詳細に、図3を参照して1段階蒸発結晶化プロセスについて、および図4を参照して2段階蒸発結晶化プロセスについて、説明する。図3および図4は、使用できる例示的な装置およびそれぞれの供給物流の主要な特徴を示す概略図である。
【0305】
図3に示すように、1段階蒸発結晶化プロセス(概略的に数100によって示す)は、第1の強制循環蒸発結晶化器110、第1の分離装置120、第1の希釈容器130、第2の強制循環蒸発結晶化器140、第2の分離装置150、および第2の希釈装置160を含んで示す。図3は、供給物ブライン111を示し、そして再循環流125(組合せ流供給物112を形成する)を第1の強制循環蒸発結晶化器110内に導入し、ここで水を供給物ブラインから蒸発させてオーバーヘッド水性流113を形成し、一方供給物ブラインは、供給物ブラインが無機塩で過飽和になってブラインおよび無機塩結晶のスラリーが結晶化器110内で形成されるまで、撹拌に供する。
【0306】
スラリーは、第1の分離装置120に、第1の処理されたブライン流114経由で、固体を液体から分離するために導く。第1の分離装置120は、無機塩結晶を水性液体ブライン溶液から分離して第1の濃縮無機塩流121(装置120から出る無機塩結晶に富む)および第1の母液流122を形成し、これは、スラリー121の残りが、好ましくは、装置120から出る無機塩結晶を実質的に含まないことを表す。装置120は、好ましくは遠心分離器もしくはハイドロサイクロン;または当業者に周知の他の分離装置である。装置120は、好ましくは連続分離を行なう。
【0307】
第1の母液流122の一部は、好ましくは、第1の強制循環蒸発結晶化器110に第1の再循環流123として再循環させ、無機塩結晶を第1の結晶化器110および第1のスラリー流114の中で懸濁させるための追加の水を与えて、結晶を第1の分離装置120に移送する。
【0308】
第1の分離装置120によって単離した無機塩結晶は、好ましくは第1のブライン洗浄流135(無機塩濃度が飽和に近いかまたは同等であり、そして有機化合物濃度が第1の母液122の有機化合物濃度よりも実質的に低い)で洗浄する。第1のブライン洗浄135は、第1の分離装置120によって単離した無機塩結晶の表面上の残存有機化合物を除去し、残存有機化合物を第1の母液122に伝える。第1のブライン洗浄135は、好ましくは、最終的に処理されたブライン132の部分133である。第1の母液122の別の部分124については以下に説明する。
【0309】
第1の分離装置120から出る第1の濃縮無機塩流121の無機塩結晶は、第1の希釈容器130(無機塩結晶を第1の濃縮無機塩流121中に溶解させて、処理されたブライン溶液132を形成するために、水源131に接続されている)に導く。水源131は、好ましくは、淡水供給物であり、任意に精製されて微量汚染物が除去されているか、または精製されたプロセス水流である。
【0310】
第1の水性流113は、比較的低い無機塩濃度および比較的低い有機化合物濃度を有する。第1の希釈溶液130は、撹拌タンクまたは単に管路;または当業者に周知の他の容器であることができる。第1の水性流113は、好ましくは、第1の強制循環蒸発結晶化器110によって凝縮された水である。水性流113は、好ましくは、機械的蒸気再圧縮MVRによって生成して、蒸気流の温度を増大させ、そして圧縮蒸気流を第1の結晶化器110で熱交換して、第1の結晶化器に熱を与え、同時に、蒸気流を液化する。この手法において、第1の結晶化器110、MVR(図示せず)および熱交換器(図示せず)の組合せは、多重効用蒸発器として機能する。液化された蒸気流中の過剰の熱は、追加の蒸発熱を下流の蒸発結晶化器に与える。
【0311】
第1の母液122の部分124および再循環流153(組合せ供給物流126を形成する)は、好ましくは、第2の強制循環蒸発結晶化器140に供給し、ここで水を母液から蒸発させてオーバーヘッド水性流142を形成し、一方母液は、母液が無機塩で過飽和になって、濃縮された母液および無機塩結晶のスラリーが結晶化器140内で形成されるまで、撹拌に供する。
【0312】
第2の結晶化器140からのスラリーは、第2の分離装置150に、第2の処理された母液流142経由で、固体を液体から分離するために導く。第2の分離装置150は、無機塩結晶を濃縮母液から分離して第2の濃縮無機塩流151(装置150から出る無機塩結晶に富む)および第2の母液流152を形成し、これは、スラリー142の残りが、好ましくは、装置150から出る無機塩結晶を実質的に含まないことを表す。装置150は、好ましくは遠心分離器もしくはハイドロサイクロン;または当業者に周知の他の分離装置である。装置150は、好ましくは連続分離を行なう。
【0313】
第2の母液流152の部分153は、好ましくは、第2の強制循環蒸発結晶化器140に第2の再循環流153として再循環させ、無機塩結晶を第3の結晶化器140および第2のスラリー流143の中で懸濁させるための追加の水を与えて、結晶を第2の分離装置150に移送する。第2の母液流152の別の部分154は、好ましくはプロセスの外にパージする。
【0314】
第2の分離装置150によって単離され、装置150内に存在する無機塩結晶は、好ましくは第2のブライン洗浄流136(無機塩濃度が飽和に近いかまたは同等であり、そして有機化合物濃度が第2の母液152の有機化合物濃度よりも実質的に低い)で洗浄する。第2のブライン洗浄流136は、第2の分離装置150によって単離した無機塩結晶の表面上の残存有機化合物を除去し、残存有機化合物を第2の母液152に伝える。第2のブライン洗浄流136は、好ましくは、最終的に処理されたブライン132の部分133である。
【0315】
第2の分離装置150から出る第2の濃縮無機塩流151の無機塩結晶は、第2の希釈容器160内の水中に再溶解させて、第2の処理されたブライン流161を、容器160内で流れ151を第1の水性流113(比較的低い無機塩濃度および比較的低い有機化合物濃度を有する)の部分115と組合せることによって、形成する。第1の水性流113の第2の部分116は、プロセスからパージされる。第2の処理されたブライン流161は、再循環流123と組合されて流れ125を形成し、これは流れ111と組み合されて第1の強制循環蒸発結晶化器110への供給物流112を形成する。第2の希釈容器160は、例えば、撹拌タンクまたは単に管路;または当業者に周知の他の容器であることができる。
【0316】
第2の水性流141は、第2の結晶化器140によって凝縮された水である。水性流141は、好ましくは、蒸気流の機械的蒸気再圧縮MVRによって生成して、蒸気流の温度を増大させ、そして圧縮蒸気流を第2の結晶化器140で熱交換して、第2の結晶化器140に熱を与え、そして同時に、蒸気流を液化する。この手法において、第2の結晶化器140、MVRおよび熱交換器の組合せは、多重効用蒸発器として機能する。液化された蒸気流中の過剰の熱は、追加の蒸発熱を下流の蒸発結晶化器に与える。第2の水性流141は、好ましくは、流れ154との第1の組合せで流れ155を形成することによってプロセスからパージする。流れ155を流れ116と組合せてパージ流156を形成する。
【0317】
第2および第1の結晶化器140,110は、好ましくは、直列に接続された多重効用蒸発器として作用する。
【0318】
本発明の方法において、それぞれの流れの流動を形成する能力を有する装置,例えば液体流用のポンプおよび/または蒸気流用のMVRは、各流れにおいて与えられ、ここでは所望の流動方向および流速を得るためのエネルギーが必要である。このようなポンプおよびMVRは工業界において周知でかつ容易に入手可能である。
【0319】
第1および第2の結晶化器110および140を加熱するためのエネルギーおよび資本投資を低減するために、図3に示す第1の結晶化器110は、好ましくは、第2の結晶化器140の操作圧力よりも低い圧力で操作する。これは、第2の結晶化器140に入る母液流124の間の圧力差を作り、第2の処理されたブライン流161の第1の結晶化器110内への流れを制限することにより達成できる。第2および第1の結晶化器140,110を、引き続きより低圧で、第2の結晶化器140圧力>第1の結晶化器110圧力、の順で操作することにより、第2の結晶化器140内に導入される蒸発熱を用いて、第1の結晶化器110内の水を蒸発させることができる。これは、引き続きそれぞれ第2および第1の結晶化器において水を蒸発させるのに必要なより低い温度に起因(これは第2および第1の結晶化器の中のそれぞれのより低い蒸気圧に起因する)する。熱エネルギー利用は最適化され、そして第2および第1の結晶化器のための高価な加熱要素の必要性は最小化または排除される。
【0320】
処理されたブライン132溶液の部分133は、好ましくは、第1および第2の分離装置120および150に、第1および第2のブライン洗浄流135および136として用いるために導く。
【0321】
処理されたブライン溶液132の残部134は、更なる精製、または必要であれば更なる加工のために、回収する。このような更なる加工は、第2の処理されたブライン溶液を、電解セルに、塩素ガスまたは次亜塩素酸塩および水酸化ナトリウムへの従来の塩素−アルカリプロセスによる変換のために、導くことを含むことができる。水酸化ナトリウムおよび/または塩素もしくは次亜塩素酸塩は、他の工業化学プロセス,例えば、本発明に係るブライン精製プロセスの上流のプロセスにおいて使用できる。
【0322】
図3に示すプロセスのための好ましい流れ組成を下記表3に与える。
【0323】
【表2】

【0324】
表3の注:(1)ブライン;(2)パージ;(3)処理された供給源
【0325】
図3に係るブライン精製プロセスの間の各結晶化器ブライン流供給物のための好ましい操作条件を下記表4に纏める。
【0326】
【表3】

【0327】
表4の注:(1)ブライン;(2)温度;(3)圧力
【0328】
図3に係るブライン精製プロセスの間の蒸発結晶化器の各々における好ましい条件を下記表5に纏める。
【0329】
【表4】

【0330】
表5の注:(1)第1の結晶化器;(2)第2の結晶化器
【0331】
第2の結晶化器140内の圧力は、好ましくは少なくとも約5kPa、より好ましくは少なくとも約10kPa、更により好ましくは少なくとも約20kPa、および更により好ましくは少なくとも約30kPaで第1の結晶化器110内の圧力よりも大きい圧力、である。
【0332】
図4に示すように、2段階蒸発結晶化プロセス(概略的に数200によって示す)は、第1の強制循環蒸発結晶化器210、第1の分離装置220、第2の強制循環蒸発結晶化器230、第2の分離装置240、第1の希釈容器250、第3の強制循環蒸発結晶化器260、第3の分離装置270、および第3の希釈容器280を含んで示す。図4は、供給物ブライン211を示し、そして再循環流224(組合せ流212を形成する)を第1の強制循環蒸発結晶化器210内に導入し、ここで水を供給物ブラインから蒸発させて第1のオーバーヘッド水性流213を形成し、一方供給物ブラインは、供給物ブラインが無機塩で過飽和になってブラインおよび無機塩結晶のスラリーが結晶化器210内で形成されるまで、撹拌に供する。
【0333】
スラリーは、第1の分離装置220に、第1の処理されたブライン流214経由で、固体を液体から分離するために導く。第1の分離装置220は、無機塩結晶を水性液体ブライン溶液から分離して第1の濃縮無機塩流225(装置220から出る無機塩結晶に富む)および第1の母液流221を形成し、これは、スラリー214の残りが、好ましくは、装置220から出る無機塩結晶を実質的に含まないことを表す。装置220は、好ましくは遠心分離器もしくはハイドロサイクロン;または当業者に周知の他の分離装置である。装置220は、好ましくは連続分離を行なう。
【0334】
第1の母液流221の部分222は、好ましくは、第1の強制循環蒸発結晶化器210に第1の再循環流222として再循環させ、無機塩結晶を第1の結晶化器210および第1のスラリー流212の中で懸濁させるための追加の水を与えて、結晶を第1の分離装置220に移送する。第1の母液流221の別の部分223については以下に説明する。
【0335】
第1の分離装置220によって単離され、装置220内に存在する無機塩結晶は、好ましくは第1のブライン洗浄流255(無機塩濃度が飽和に近いかまたは同等であり、そして有機化合物濃度が第1の母液221の有機化合物濃度よりも実質的に低い)で洗浄する。第1のブライン洗浄255は、第1の分離装置220によって単離した無機塩結晶の表面上の残存有機化合物を除去し、残存有機化合物を第1の母液221に伝える。第1のブライン洗浄255は、好ましくは、以下に説明する最終的に処理されたブライン252の部分253である。
【0336】
第1の分離装置220から出る第1の濃縮無機塩流225の無機塩結晶は、第1の希釈容器(図示せず)内の水中に再溶解させて、第1の処理されたブライン流226を、流れ225を第1の水性流213(比較的低い無機塩濃度および比較的低い有機化合物濃度を有する)と組合せることによって、形成する。第1の希釈容器は、撹拌タンクまたは単に管路;または当業者に周知の他の容器であることができる。第1の水性流213は、好ましくは、第1の強制循環蒸発結晶化器210によって凝縮された水である。水性流213は、好ましくは、機械的蒸気再圧縮(MVR)によって生成して、蒸気流の温度を増大させ、そして圧縮蒸気流を第1の結晶化器210で熱交換して、第1の結晶化器に熱を与え、そして同時に、蒸気流を液化する。この手法で、第1の結晶化器210、MVR(図示せず)および熱交換器(図示せず)の組合せは、多重効用蒸発器として機能する。液化された蒸気流中の過剰の熱は、追加の蒸発熱を下流の蒸発結晶化器に与える。
【0337】
第1の処理されたブライン流226および再循環流242(組合せ流227を形成する)は第2の強制循環蒸発結晶化器230に供給し、ここで水を再び第1の処理されたブライン流227(オーバーヘッド流231を形成する)から蒸発させ、一方第1の処理されたブラインは、第1の処理されたブラインが無機塩で過飽和になってブラインおよび無機塩結晶のスラリーが結晶化器230内で形成されるまで、撹拌に供する。
【0338】
スラリーは、第2の分離装置240に、第2の処理されたブライン流232経由で、固体を液体から分離するために導く。第2の分離装置240は、無機塩結晶を水性液体ブライン溶液から分離して第2の濃縮無機塩流244(装置240から出る無機塩結晶に富む)および第2の母液流241を形成し、これは、スラリー232の残りが、好ましくは、装置240から出る無機塩結晶を実質的に含まないことを表す。第2の分離装置240は、繰り返すが好ましくは遠心分離器もしくはハイドロサイクロン;または当業者に周知の他の分離装置である。第2の分離装置240は、好ましくは連続分離を行なう。
【0339】
第2の母液流241の部分242は、好ましくは、第2の強制循環蒸発結晶化器230に第2の再循環流242として再循環させ、無機塩結晶を第2の結晶化器230および第2のスラリー流232の中で懸濁させるための追加の水を与えて、結晶を第2の分離装置240に移送する。第2の母液流241の別の部分243については以下に説明する。
【0340】
第2の分離装置240によって単離され、装置240内に存在する無機塩結晶は、好ましくは第2のブライン洗浄流256(無機塩濃度が飽和に近いかまたは同等であり、そして有機化合物濃度が第2の母液241の有機化合物濃度よりも実質的に低い)で洗浄する。第2のブライン洗浄256は、第2の分離装置240によって単離した無機塩結晶の表面上の残存有機化合物を除去し、残存有機化合物を第2の母液241に伝える。第2のブライン洗浄256は、好ましくは、以下に説明する最終的に処理されたブライン252の部分253である。
【0341】
第1の母液221の部分223および/または第2の母液241の部分243は、好ましくは、第3の強制循環蒸発結晶化器260に供給し、ここで水を母液から蒸発させてオーバーヘッド流261を形成し、一方母液は、母液が無機塩で過飽和になって、濃縮された母液および無機塩結晶のスラリーが結晶化器260内で形成されるまで、撹拌に供する。部分223および部分243は、これらを第3の結晶化器260内に導入する前に1つの母液流245に組合せることができる。流れ245を再循環流273と組合せて、図4に示す組合せ流供給物246を形成できる。
【0342】
第3の結晶化器260からのスラリーは、第3の分離装置270に、第3の処理された母液流262経由で、固体を液体から分離するために導く。第3の分離装置270は、無機塩結晶を濃縮された母液から分離して第3の濃縮された無機塩流272(装置270から出る無機塩結晶に富む)および第3の母液流271を形成し、これは、スラリー262の残りが、好ましくは、装置270から出る無機塩結晶を実質的に含まないことを表す。装置270は、好ましくは遠心分離器もしくはハイドロサイクロン;または当業者に周知の他の分離装置である。装置270は、好ましくは連続分離を行なう。
【0343】
第3の母液流271の部分273は、好ましくは、第3の強制循環蒸発結晶化器270に第3の再循環流273として再循環させ、無機塩結晶を第3の結晶化器260および第3のスラリー流262の中で懸濁させるための追加の水を与えて、結晶を第3の分離装置270に移送する。第3の母液271の残部274は、プロセスの外にパージすることができる。
【0344】
第3の分離装置270によって単離される無機塩結晶は、好ましくは第3のブライン洗浄流257(無機塩濃度が飽和に近いかまたは同等であり、そして有機化合物濃度が第3の母液271の有機化合物濃度よりも実質的に低い)で洗浄する。第3のブライン洗浄流257は、第3の分離装置270によって単離した無機塩結晶の表面上の残存有機化合物を除去し、そして残存有機化合物を第3の母液271に伝える。第3のブライン洗浄流257は、好ましくは、最終的に処理されたブライン252の部分253である。
【0345】
第3の分離装置270から出る第3の濃縮された無機塩流272の無機塩結晶は、第3の希釈容器280内の水中に再溶解させて、第3の処理されたブライン流281を、容器280内で、流れ272を第3の水性流261(比較的低い無機塩濃度および比較的低い有機化合物濃度を有する)と組合せることによって、形成する。第3の希釈容器280は、例えば、撹拌タンクまたは単に管路;または当業者に周知の他の容器であることができる。第3の水性流261は、好ましくは、第3の結晶化器260によって凝縮された水である。水性流261は、好ましくは、蒸気流の機械的蒸気再圧縮MVRによって生成して、蒸気流の温度を増大させ、そして圧縮蒸気流を第3の結晶化器260で熱交換して、第3の結晶化器260に熱を与え、そして同時に、蒸気流を液化する。この手法において、第3の結晶化器260、MVR(図示せず)および熱交換器(図示せず)の組合せは、多重効用蒸発器として機能する。液化された蒸気流中の過剰の熱は、追加の蒸発熱を下流の蒸発結晶化器に与える。
【0346】
第3および第1の結晶化器260,210は、それぞれ、好ましくは、直列に接続された多重効用蒸発器として作用する。
【0347】
本発明の方法において、それぞれの流れの流動を形成する能力を有する装置,例えば液体流用のポンプおよび/または蒸気流用のMVRは、各流れにおいて与えられ、ここでは所望の流動方向および流速を得るためのエネルギーが必要である。このようなポンプおよびMVRは工業界において周知でかつ容易に入手可能である。
【0348】
第1および第2の結晶化器210,230をそれぞれ加熱するためのエネルギーおよび資本投資を低減するために、図4に示す第1の結晶化器210は、好ましくは、第3の結晶化器260の操作圧力よりも低い圧力で操作し、そして第2の結晶化器230は、好ましくは、第1の結晶化器210の操作圧力よりも低い圧力で操作する。これは、流れ246において第3の結晶化器260に入る母液流245と、第2の処理されたブライン流262との間の圧力差(最小流速を維持するのに必要であるよりも大きい)を作り、第3の処理されたブライン流281の第1の結晶化器210内への流れを制限し、そして第1の処理されたブライン流226の第2の結晶化器230内への流れ(流れ227において)を制限することにより達成できる。第3、第1および第2の結晶化器260,210,230を、それぞれ、引き続きより低圧で、第3の結晶化器260圧力>第1の結晶化器210圧力>第2の結晶化器230圧力、の順で操作することにより、第3の結晶化器260内に導入される蒸発熱を用いて、第1の結晶化器210内および第2の結晶化器230内の水を蒸発させることができる。これは、引き続きそれぞれ第1および第2の結晶化器において水を蒸発させるのに必要なより低い温度に起因(これは第1および第2の結晶化器のそれぞれのより低い蒸気圧に起因する)する。熱エネルギー利用は最適化され、そして第1および第2の結晶化器のための高価な加熱要素の必要性は最小化または排除される。
【0349】
第2の濃縮された無機塩流244は、第2の希釈容器250(無機塩結晶を第2の濃縮された無機塩流244中に溶解させて、第2の処理されたブライン溶液252を形成するために、水源251に接続されている)に導く。水源251は、好ましくは、淡水供給物であり、任意に精製されて微量汚染物が除去されているか、または精製されたプロセス水流である。
【0350】
第2の処理されたブライン溶液252の部分253は、好ましくは、第1、第2および第3の分離装置220,240および270のそれぞれに、第1、第2、および第3の洗浄流255,256および257のそれぞれとして用いるために導く。
【0351】
第2の処理されたブライン溶液252の残部254は、更なる精製、または必要であれば更なる加工のために、回収する。このような更なる加工は、第2の処理されたブライン溶液252を、電解セルに、塩素ガスまたは次亜塩素酸塩および水酸化ナトリウムへの従来の塩素−アルカリプロセスによる変換のために、導くことを含むことができる。水酸化ナトリウムおよび/または塩素もしくは次亜塩素酸塩は、他の工業化学プロセス,例えば、本発明に係るブライン精製方法の上流のプロセスにおいて使用できる。
【0352】
図4に示すプロセスのための好ましい流れ組成を下記表6に与える。
【0353】
【表5】

【0354】
表6の注:(1)ブライン;(2)パージ;(3)処理された供給源
【0355】
図4に係るブライン精製プロセスの間の各結晶化器ブライン流供給物のための好ましい操作条件を下記表7に纏める。
【0356】
【表6】

【0357】
表7の注:(1)ブライン;(2)温度;(3)圧力
【0358】
図4に係るブライン精製プロセスの間の蒸発結晶化器の各々における好ましい条件を下記表8に纏める。
【0359】
【表7】

【0360】
表8の注:(1)第1の結晶化器;(2)第2の結晶化器;(3)第3の結晶化器
【0361】
第1の結晶化器210内の圧力は、好ましくは少なくとも約5kPa、より好ましくは少なくとも約10kPa、および更により好ましくは少なくとも約20kPaで第2の結晶化器230内の圧力よりも大きい圧力、である。第3の結晶化器260内の圧力は、好ましくは少なくとも約5kPa、より好ましくは少なくとも約10kPa、更により好ましくは少なくとも約20kPa、および更により好ましくは少なくとも約30kPaで第1の結晶化器210内の圧力よりも大きい圧力、である。
【0362】
本発明の別の側面は、塩素原子含有化合物を水酸化ナトリウムと反応させて水性ブライン溶液を形成するのに好適な化学反応装置および本発明に係るブライン精製装置を含む、精製されたブラインを製造するための化学プロセス装置であり、そして、化学反応装置は、ブライン精製装置に、水性ブライン溶液を化学反応装置からブライン精製装置に導くために接続されており、そして化学反応装置は水性水酸化ナトリウム溶液の供給源に、水性水酸化ナトリウム溶液を化学反応装置に導くために接続されている。化学反応装置は、エピクロロヒドリン、1種もしくは複数種のエポキシレジンまたはメチレンジアニリンを形成するのに好適な装置であることができる。
【0363】
化学反応装置が、1種または複数種のクロロヒドリンを水酸化ナトリウムと反応させることによって(すなわち脱塩化水素化によって)エピクロロヒドリンを形成するために好適である場合、化学プロセス装置は、クロロヒドリンを形成するために好適な塩化水素化装置を更に含むことができる。塩化水素化装置は、次いで、好ましくは化学反応装置に、1種または複数種のクロロヒドリンを含む流れを、1種または複数種のクロロヒドリンを形成するための装置から化学反応装置に導くために、接続されている。
【0364】
塩素化分解処理
複数の段階を本発明において採用して、ブライン副生成物流の総有機炭素(TOC)含有量を低減させて再循環可能なブライン流(総有機炭素含有量が約10ppm未満のもの)を生成する。1段階ではなく複数段階を採用することにより、比較的穏やかな条件を用いて極めて低いTOC含有量に到達し、一方不所望の塩素化有機化合物または塩素酸塩の任意の顕著な生成、および塩化ナトリウムの任意の顕著な沈殿を回避することが可能になる。第1の段階は、一般的に、実質部分,例えば、ブライン副生成物流のTOC含有量の、少なくとも約60質量%、好ましくは少なくとも約75質量%、最も好ましくは少なくとも約85質量%を低減し、残りの低減は1つ以上の追加の段階で行なう。本発明に従って処理できるブライン再循環流は、塩化ナトリウム含有量約15質量%〜約23質量%(ブライン副生成物流の質量基準)、高TOC含有量約200ppm〜約20,000ppm、好ましくは約500ppm〜約10,000ppm、および最も好ましくは約500ppm〜約5,000ppm、ならびに、pH約7〜約14、好ましくは約8〜約13、および最も好ましくは約10〜約12.5を有することができる。本発明の好ましい態様において、ブライン再循環流のTOCは、約100ppm未満まで第1の段階において、そして次いで約10ppm未満まで第2または最終の段階において、低減する。
【0365】
精製された、または再循環可能なブライン流(TOCを約10ppm未満含有し、塩化ナトリウム含有量が約15質量%〜約23質量%(本発明において得られる再循環可能なブライン流の質量基準)のもの)は、種々の1箇所、局所的、または遠隔のプロセスにおいて使用できる。このようなプロセスの例は、塩素−アルカリプロセス、電気化学プロセス(例えば塩素および苛性物の製造、エポキシドの製造、塩素−アルカリ膜プロセス、等のためのもの)である。
【0366】
本発明に従って処理されるブライン副生成物流は、任意の流れであることができ、ここで、水、塩化ナトリウム、およびTOCが、廃、再循環、または副生成物流の中に存在する。ブライン流(本発明のTOC低減プロセスをこれに適用できる)の例は、再循環または副生成物ブライン流(エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造において得られるもの)、液体エポキシレジン(LER)または他のエポキシレジンブライン/塩再循環流、他のクロロヒドリンブライン再循環流、およびイソシアネートブライン再循環流である。低レベルのTOCは、実質量の除去困難な有機化合物(例えばグリセリン)を含有するブライン再循環流でも得ることができる。
【0367】
例えば、本発明の方法は、エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造において生成するブライン副生成物流の処理に顕著に適用できる。グリセリンからエピクロロヒドリン(GTE)のプロセスからのブライン副生成物流は、本発明に従って処理でき、平均総有機炭素(TOC)含有量少なくとも約200ppm、一般的に少なくとも約500ppm、例えば約1000ppm〜約2500ppmを有することができ、そして好ましくは約1500ppm以下である。本発明のTOC低減に供されるGTEブライン副生成物流のグリセリン含有量は、少なくとも約50質量%、一般的に少なくとも約70質量%(総有機炭素含有量の質量基準)、および塩化ナトリウム含有量約15質量%〜約23質量%(ブライン副生成物流の質量基準)であることができる。GTE副生成物流中のTOCに寄与する他の有機化合物としては、グリシドール、アセトール、ビスエーテル、ジクロロプロピルグリシジルエーテル、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール、1−クロロ−2,3−プロパンジオール、または2−クロロ−1,3−プロパンジオール、エピクロロヒドリン、ジグリセロール、トリグリセロール、他のオリゴマー性グリセロール、オリゴマー性グリセロールのクロロヒドリン、酢酸、ギ酸、乳酸、グリコール酸、および他の脂肪酸が挙げられる。
【0368】
本発明に従って処理できるブラインバイパス流の成分、その範囲、および量ならびにそのpHを表3に示す。
【0369】
本発明の態様に従ってTOC含有量を低減するためのブラインバイパス流の第1段階処理は塩素化分解であることができ、塩素化分解生成物流が得られ、次に、図5に示すような活性化炭素による第2段階処理ができる。塩素化分解は、塩素ガスおよび水酸化ナトリウムとの反応、または、次亜塩素酸ナトリウムとの反応であることができ、有機炭素化合物を分解、崩壊または除去する。塩素ガスおよび水酸化ナトリウムとの反応は次亜塩素酸ナトリウムをin situで生成でき、または、塩素化分解のために、次亜塩素酸ナトリウムもしくは漂白剤を、ブライン副生成物流と混合し、もしくはこれに直接添加できる。ブラインバイパス流を塩素化分解に、塩素ガスおよび水酸化ナトリウムとともに供することは、次亜塩素酸ナトリウムがin−situで式(I):
2NaOH+Cl2=NaOCl+NaCl+H2O (I)
に従って形成されるため好ましい。
【0370】
次亜塩素酸ナトリウムの直接添加によるか、または塩素ガスおよび水酸化ナトリウムの添加による次亜塩素酸ナトリウムのin situ形成による塩素化分解を、温度約125℃未満であるが一般的には約60℃超で、例えば約85℃〜約110℃で、好ましくは約90℃〜約100℃で、実施して、TOC含有量が約100ppm未満である塩素化分解生成物流を得ることができる。
【0371】
塩素化分解のために、ブライン副生成物流中の、直接添加されるかin situで生成される次亜塩素酸ナトリウムの、総有機炭素に対するモル比は、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約0.5〜約5倍であることができる。例えば、GTEブラインバイパス流中のTOCの主要成分としてのグリセリンについて、次亜塩素酸ナトリウムの、TOCのグリセリン成分に対するストイキオメトリー比は、式(II):
383+7NaOCl=3CO2+7NaCl+4H2O (II)
に示すように、約7:1である。
【0372】
好ましい態様において、塩素化分解は、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比よりも過剰で実施できる。好ましいストイキオメトリー的な過剰は、ブライン副生成物流中の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約1.1〜約2倍であることができる。
【0373】
塩素化分解を、ブライン副生成物流を塩素ガスおよび水酸化ナトリウムで処理することによって行なう態様において、塩素化分解において用いる塩素ガスの量および水酸化ナトリウムの量は、式(I)に従って次亜塩素酸ナトリウムを十分な量で生成して、ブライン副生成物流中の、生成される次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するモル比が、ブライン副生成物流の次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量に対するストイキオメトリー比の約0.5〜約5倍、好ましくは1倍超、最も好ましくは約1.1〜約2倍、となるのに十分である。
【0374】
塩素化分解は、pH約3.5〜約11.8、好ましい酸性pH約3.5〜約5.5で、および好ましいアルカリまたは塩基性pH約8.5〜約11.8で、実施できる。より低い酸性pH,例えばpH約3未満,例えば約1または約2の使用は、TOCをより低く、約10未満にできる。しかし、塩素化分解の間のこのような厳しい低いpHは、塩素化炭素化合物の有害な生成をもたらす傾向がある。塩素化分解は、pH制御剤またはpH調整剤,例えばHClおよびNaClまたは他の無機の酸および塩基の添加を伴いまたは伴わずに実施できる。pH調整剤を塩素化分解のために添加しない態様において、反応はアルカリpHのブライン副生成物流で開始し、そして反応が進行するに従いpH約3.5〜約11.8の範囲内に低下させることができる。
【0375】
塩素化分解は、雰囲気圧力または若干高い圧力(塩化ナトリウムの沈殿の原因となる場合がある水の沸騰および蒸発を防止するのに十分な圧力)で実施できる。反応温度がブライン副生成物流の沸点を超えて上昇するに従い、より高圧を採用して、流れ中に存在する水の実質的な沸騰および蒸発を防止する。塩素化分解の滞留時間または反応時間は、少なくとも約10分、例えば約30分〜約60分であることができる。
【0376】
塩素化分解反応器からの塩素化分解生成物流は、TOC含有量約100ppm未満を有することができ、そして第2段階処理において活性化炭素で処理して、TOC含有量約10ppm未満の再循環可能なブライン流を得ることができる。活性化炭素での処理は、温度約100℃未満、好ましくは約60℃未満、最も好ましくはほぼ室温で実施できる。本発明の好ましい態様において、塩素化分解生成物流のpHは、酸および/または塩基,例えば水酸化ナトリウムおよび/または塩酸を用いて、第2または後続の段階における処理のために調整できる。例えば、塩素化分解生成物流のpHを、pH約2〜約3に調整して、活性化炭素での処理のために、塩素化分解生成物流中の有機酸をプロトン化することが好ましい。用いる活性化炭素は、好ましくは、活性化炭素を塩酸で洗浄することにより得られる酸性化された活性化炭素である。
【0377】
本発明の態様において、第2段階における活性化炭素での処理の前に、塩素化分解生成物流を過酸化水素で処理できる。過酸化水素での処理を用いて、塩素化分解生成物流中に存在する任意の過剰な漂白剤または次亜塩素酸ナトリウムを排除または実質的に排除できる。
【0378】
図5において概略的に示すように、塩素化分解プロセス(概略的に数300によって示す)は、一次塩素化分解反応器310および処理容器,例えば活性化炭素床またはカラム330を含んで示す。図5に示すように、ブライン副生成物流311(例えば、グリセリンからのエピクロロヒドリン生成によるもの)(「GTEブライン」流311)は、TOC約1470ppmおよびpH約8〜約9を有し、塩素ガスの流れ312および水酸化ナトリウムの流れ313と混合して、塩素化分解反応混合物314(pH約3.5〜約9を有する)を得ることができる。反応混合物314は、一次塩素化分解反応器310に供給する。
【0379】
塩素化分解反応器310からの出口流315、または塩素化分解生成物流315は、TOC約100ppm未満を有することができる。TOCの分解によって得られる、二酸化炭素、塩化ナトリウム、および水の反応生成物は、塩素化分解生成物流315中に存在でき、二酸化炭素はガスとして除去でき、および/または弱い炭酸を形成できる。塩素化分解生成物流315は、水酸化ナトリウムの流れ316、および/または塩酸の流れ317と混合でき、pH調整された生成物流318を形成する。水酸化ナトリウムの流れ316および/または塩酸の流れ317を用いて、pHを約2に、塩素化分解生成物流の酸性化された活性化炭素での第2段階処理のために、調整または維持する。
【0380】
加えて、活性化炭素カラム330内での処理の前に、塩素化分解のpH調整された生成物流318を、代替として、必要最低限量の過酸化水素で、流れ319経由で処理して流れ320を形成できる。過酸化水素の流れ319を用いて、塩素化分解生成物流318中の任意の過剰の次亜塩素酸ナトリウムを除去できる。また、任意の揮発性化合物を、流れ320から、散布ライン321経由で散布するために除去して、流れ322を形成できる。第2段階処理のために、pH調整された生成物流322は、好ましくは、活性化炭素床またはカラム330(酸性化された活性化炭素を収容する)の中に供給する。精製された、または再循環可能なブライン生成物流331は、活性化炭素カラム330から出る。活性化炭素カラム330からの精製された、または再循環可能なブライン生成物流331は、TOC約10ppm未満を有することができる。
【0381】
本発明の他の態様において、ブライン副生成物流、ブライン再循環流、または塩素化分解生成物流のTOCを低減させるために複数段階を用いる場合、該流れを、活性化炭素処理、続いてフェントン酸化(水素および鉄(II)触媒で)に供して、TOC含有量が約10ppm未満の再循環可能なブライン流を得ることができる。
【0382】
例えば、グリセリンからエピクロロヒドリンへのプロセス(GTE)からの加水分解装置底部流は、一般的な塩(塩化ナトリウム)を、濃度約16質量%超で含有できる。流れは、塩素/アルカリ膜プロセス(膜C/A)に再循環させる価値を有する。この目的で、有機汚染,本質的にはグリセリン(濃度が通常約0.10質量%(1000ppm)超で存在する)から、そして低〜微量の濃度で存在する場合がある他の有機汚染物から、解放しなければならない。
【0383】
本発明の態様に従い、有機化合物で汚染されたブラインの精製は、有機成分の炭素吸着、および後続の後処理(ポリッシュ)(残存有機物の軽減のために、フェントン酸化プロセスで、精製されたブラインを膜C/Aセルに供給できるような適切レベルまで処理すること)によって実現できる。吸着は、固定炭素床を備える幾つかの容器内で実施して、吸着および再生が同時に可能である。供給物は、pH約3〜約7に調整できる。再生は熱水で、そして総再生が時々必要な場合には有機溶媒で、実施できる。再生物は、生物学的処理設備に送り、または蒸留により回収できる。吸着には、フェントン酸化ユニットが続くことができる。供給物のpHを3に調整した後、過酸化水素および鉄−II触媒を供給物に添加し、その後、混合物を反応器(高温および高圧で操作して、吸着による残存微量有機化合物の化学的酸化を確保する)に入れることができる。反応器から出した後、触媒を沈殿(pH変化による)によって除去できる。沈殿物は、フィルターユニットにおける幾つかの状態調節の後で除去できる。
【0384】
本発明の別の態様に従い、有機化合物で汚染されたブラインの精製は、これらの有機化合物の種々の1種または複数種の溶媒中への抽出によって実現できる。
【0385】
吸着を、微量有機物の低減のための1ステップ化学プロセスと組合せる方法は、有機物を除去するための強い酸化剤を必要とせず、従って経済的である。また、両プロセスステップは、制御容易で、高度な自動化および低レベルの監視が可能である。吸着は、レジンの容易な再生を可能にする温度スイング吸着として設計できる。フェントン段階について、過酸化物での酸化はブラインを不純にはしない。これは水および酸素に分解し、鉄触媒は容易な沈殿によって除去できるからである。特定の手法の処理(吸着)と非特定(フェントン酸化)との組合せは、供給物におけるスイングの適合、およびpHの約3への調整を、フェントン酸化が所望の反応を支持するために、可能にする。
【0386】
本発明の他の態様において、ブライン副生成物流、ブライン再循環流、または塩素化分解生成物流のTOCを低減させるために複数段階を採用する場合、該流れを、過酸化水素および鉄(II)触媒での、2段階のフェントン酸化に供することができる。
【0387】
例えば、二重または2段階のフェントン酸化において、有機化合物で汚染されたブラインの精製は、フェントン酸化プロセスを用いることにより、精製されたブラインを塩素/アルカリ膜プロセス(膜C/A)セルに供給できるような適切レベルまで実現できる。グリセリンからエピクロロヒドリンへのプロセス(GTE)への加水分解装置底部流は、一般的な塩(塩化ナトリウム)を、濃度約16質量%超で含有し、そして、有機汚染,本質的にはグリセリン(濃度が通常約0.10質量%(1000ppm)超で存在する場合がある)によるものを、2つの別個の段階でフェントン酸化に供することができる。二重フェントン酸化プロセスにおいて、ブライン副生成物供給物のpHを3に調整した後、過酸化水素および鉄−II触媒を供給物に添加し、その後混合物を第1の反応器に入れる。第1の反応器は、ブライン副生成物供給物のTOC含有量の分解の最も大きい部分を行なう。第1の反応器の出口流が第2の反応器に入る前に、追加の触媒および過酸化物を添加する。第2の反応器において、残存TOCは、約10ppm未満のレベルまで崩壊する。両反応器を、高温および高圧で操作して、GTEプラントからの有機化合物の化学的酸化を確保できる。反応器から出した後、触媒を沈殿(pH変化による)によって除去できる。沈殿物は、フィルターユニットにおける幾つかの状態調節の後で除去できる。
【0388】
本発明の2段階フェントン酸化プロセスは、強い酸化剤を用いることによってブラインを不純にはしない。触媒からの鉄はフィルターユニットにおいて容易に除去でき、そして過酸化物は水および酸素に分解するからである。フェントン酸化のためのpHの約3への調整は、所望の反応を支持し、フェントン酸化プロセスステップは制御容易で、高度な自動化および低レベルの監視が可能である。これは、低コストの反応物質を採用し、そして広範囲の操作パラメータに適用できる。
【0389】
本明細書で列挙する文献は参照により具体的に本明細書に組入れる。
【0390】
以下の例は例示の目的のみであって、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【0391】
例1
この例1において用いる設備は、ジャケット付ガラス反応器(0.32リットル有効体積)(アノードおよびカソードを取り付けたホルダー、マグネチック撹拌器、貯蔵容器からの供給物供給用の蠕動ポンプに接続された短パイプ入口片;反応器流出物を収集容器内にオーバーフローさせるための短パイプ出口片;ならびに反応器ジャケットの入口および出口のパイプ片に接続されたサーモスタットを備える)からなる。電極を、220V電源で操作する整流器の適切なポールに接続した。反応器ジャケットを、反応器内容物を一定40℃の温度で維持するように調整したクライオスタットに更に接続した。
【0392】
反応器に、原料ブライン(塩化ナトリウム含有量が18%、および有機含有量は1700mg/lの溶解した有機炭素(DOC)に対応する)(pH10に調整したもの)を充填した。供給物貯蔵容器は同じ材料を収容した。撹拌器およびクライオスタットを始動した後、供給物ポンプを、速度1.8ml/分(反応器における、水理平均滞留時間約180秒に対応)で開始した。整流器を、次いで、DC電流20Aを与えるように調整した。電流および電圧を一定間隔で観測し、後者は、電極クランプに直接接続した電圧計で観測した。反応器内容物の温度もまた観測し;流出物のpHを一定間隔でpH色ストリップMerck(TM)を用いて測定した。エネルギー取り込みは、実験の10時間の持続の間に平均で0.238kWhであった。流出物の有機汚染(DOCとして)は、6.3mg/l +/− 1mg/lであることが分かった。次亜塩素酸ナトリウムの濃度(未処理ブラインにおいては検出限界未満であった)は、6005mg/lまで増大し、塩素酸塩濃度(原料ブラインにおいては無視できる程度であった)は、平均で34g/lまで増大したことが分かった。100ml収集した流出物を、pH1.5まで、32%の水性塩酸を添加し、次いで丸底ガラスフラスコ(電気加熱ジャケット、マグネチック撹拌器、冷水供給源に接続された還流凝縮器、および滴下漏斗を備える)内に入れることによって酸性化した。15.4g亜硫酸ナトリウムの30ml蒸留水中の溶液を、滴下漏斗内に入れた。丸底フラスコの内容物を100℃に加熱した後、滴下漏斗の内容物をフラスコに一度に添加した。反応混合物を30分間同じ温度で撹拌し、加熱を停止させて、フラスコ内容物を室温まで冷やして塩素酸塩についてイオンクロマトグラフィによって電気化学検出にて分析した。塩素酸塩濃度は、100mg/gまで低下した。
【0393】
例2
0.32lのブライン(19.8%の塩化ナトリウムおよび190mg/lのDOC含有量を含む)を反応器内に入れ、そして約1000mlの同じ材料を供給物貯蔵容器内に入れた。反応は、電流を一定10Aに調整した他は上記例1で説明したのと同じ条件で実施した。エネルギー取り込みは0.145kWh、供給速度は1.3ml/分(反応器における平均水理滞留時間4時間に対応)であった。流出物を前のように収集して分析した。DOC含有量は35mg/l、塩素酸塩含有量は5850mg/l、および次亜塩素酸ナトリウム含有量は7550mg/lであった。100mlのこの材料を、先の実験でのように丸底フラスコ内に入れ、そしてpH1.5まで、32%の塩酸の添加によって酸性化した。内容物を100℃に加熱し、この温度で60分間撹拌した。サンプルを、次いで、取出して次亜塩素酸ナトリウムについてヨウ素滴定により、電位差終点検出で分析した。次亜塩素酸ナトリウム含有量は、該方法の検出限界(5mg/l)未満のレベルまで低下した。その後、pHを1.0に、32%の水性塩酸の添加によって再調整し、丸底フラスコに移し、撹拌下で100℃に加熱し、そして2.65g亜硫酸ナトリウムが5mlの蒸留水中に溶解した溶液を一度に添加した。フラスコ内容物を同じ温度で30分間撹拌し、その後、室温まで冷やし、最後に塩素酸塩について、イオンクロマトグラフィによって分析した。塩素酸塩含有量は100mg/lまで低下した。
【0394】
例3
この例3では、本発明に従って微生物を選択し、および適応させる。
【0395】
3.5g/リットルの多様な微生物集団(Vibrio alginolyticus,Halomonas salina,および/またはHalomonas campaniensisの種を含む)を、3.5wt%の塩化ナトリウムおよび500mg/リットルのグリセロールを含有する水性ブライン溶液を収容するバイオリアクター容器内に導入する。水性ブライン溶液を、0.1〜1.5kgグリセロール毎微生物kg毎日、の範囲の速度で供給して、50mg/リットルのグリセロール濃度がバイオリアクター出口で維持されるようにする。バイオリアクターにおける混合物の同等の流出を与えて、一定単位体積がバイオリアクター内で維持されるようにする。十分な栄養物を水性ブライン流に添加して、NH4−N濃度をバイオリアクター出口で10mg/リットルに、およびオルトホスフェート濃度をバイオリアクター出口で5mg/リットルに、維持する。塩化ナトリウム濃度を、速度約0.5wt%毎4水理滞留時間で上昇させ、一方、微生物の健康状態を観測し、そして栄養物濃度を調整して、NH4−N濃度をバイオリアクター出口で10mg/リットルに、およびオルトホスフェート濃度をバイオリアクター出口で5mg/リットルに、18.5wt%塩化ナトリウムを含有するブライン溶液に適応した微生物集団が得られるまで維持する。適応した微生物集団は、Vibrio alginolyticus,Halomonas salina,および/またはHalomonas campaniensisの種を含む。
【0396】
例4
この例4は、本発明に係るブライン精製方法を示す。
【0397】
17.5wt%のブラインおよび3g/リットルの懸濁した微生物の培地(例1に従って適応)を、実験室好気バイオリアクター(液体ホールドアップ体積約1.7リットルを有し、温度44℃に維持されている)内に導入する。培地をブライン流(18wt%塩化ナトリウム、濃度413ppmのTOC,およびバイオリアクターを17.5%ブラインに維持するのに十分な水を含有する)とともに供給する。入ってくるブラインの流速を約170ml/時に維持する。バイオリアクターにおける混合物の同等の流出を与えて、一定単位体積がバイオリアクター内で維持されるようにする。十分な栄養物を水性ブライン流に添加して、NH4−N濃度をバイオリアクター出口で10mg/リットルに、およびオルトホスフェート濃度をバイオリアクター出口で5mg/リットルに、維持する。
【0398】
浄化した流出物の組成は、微生物をブラインから重力分離した後で、17.5wt%NaClおよび濃度80ppmTOCである。更なる物理化学的処理を用いて流出物のTOC濃度を10ppm未満まで更に低減させてもよい。
【0399】
上記から分かるように、本発明は、極めて低いTOC濃度を有する水性ブラインの回収を得ることができ、一方、更なる処理を必要とするブラインの量を最小化できる。本発明に係る方法はまた、淡水の消費および汚染を最小化し、更なる処理を必要とする化学物質を導入せず、または、塩素ガスまたは次亜塩素酸塩の生成の正味の低減をもたらす。
【0400】
例5
この例5において、ブライン精製は、本発明に従って、半バッチ結晶化プロセスによって行なう。
【0401】
実験室スケールの蒸発結晶化器設備を、9リットルジャケット付丸底ガラスケトル(撹拌器、ガラスドラフトチューブ、熱電対によって制御される加熱マントルを備える)を用いて構成する。高温油をジャケット付容器内に循環させてプロセス温度を約95℃に維持するのを助ける。加熱マントルは、水を沸騰除去してブライン溶液を飽和点まで濃縮するのに必要な追加の熱に寄与する。
【0402】
初期充填の2.98kgの合成ブライン溶液(29.98質量パーセントのNaCl、3.11質量パーセントのグリセロール、および66.91質量パーセントの水を含有する)を、蒸発結晶化器のガラスケトル内に導入する。ブライン溶液を蒸発結晶化器内で110℃まで加熱して水を溶液から蒸発させる。水蒸気を放出し、15℃まで、水冷大気凝縮器で冷却し、別個の容器内で凝縮および収集する。
【0403】
合成ブライン供給物溶液(18.77質量パーセントのNaCl、0.51質量パーセントのグリセロール、および80.72質量パーセントの水を含有する)を、連続的に、蒸発結晶化器のガラスケトル内のブライン溶液に添加して、蒸発結晶化器内の液体レベルを、水が蒸発するように維持する。ブライン供給速度は、目盛り付き容器内の蒸発、凝縮および収集によって除去される水の測定を基にする。プロセスを厳重に監視して、ドラフトチューブの1〜2インチ上の一定レベルを維持する。
【0404】
このプロセスの間、ブライン溶液はNaClで過飽和になり、NaCl結晶が溶液中に形成され始める。プロセスは、結晶をブライン溶液中で観察可能なサイズまで成長させ続け、ブライン中で結晶のスラリーが形成されるようにすることができる。水凝縮の始まりの後約265分の実施時間が、スラリーの形成のために必要である。
【0405】
実施時間の終点で、ブライン供給を停止させ、全ての加熱を取り除き、そして容器を室温まで冷やす。撹拌器を動かし続けて塩スラリーを懸濁状態に保つ。ケトルの内容物を空にし、そして減圧ろ過して、結晶化した塩を母液から分離する。各々の分離した成分の質量を、質量収支計算のために記録し、全成分を分析する。
【0406】
質量収支計算は、上記プロセスが3.98kgの凝縮物(0.0077質量パーセントのグリセロールを含有する)を蒸発させ、5.07kgのブラインが供給され、そして4.07kgのスラリー(0.89kgのNaCl結晶および3.18kgの母液からなる)を生成することを示す。結晶は、母液から、僅かな減圧のろ過を用いて分離され、95.78質量パーセントのNaClおよび0.30質量パーセントのグリセロールを含有する。母液は、31.17質量パーセントのNaClおよび3.61質量パーセントのグリセロールを含有する。結晶は、等質量の精製ブライン(グリセロールを含有しない)で更に洗浄する。この塩洗浄プロセスは、洗浄されたNaCl結晶中のグリセロールを0.041質量パーセントまで低減させる。20質量パーセントNaClの処理されたブライン溶液に関し、グリセロール濃度は0.0082質量パーセントであり、または32ppmの総有機炭素(TOC)である。
【0407】
例6
本発明に係るこの例6において、半バッチ結晶化プロセスを例5に従い以下の例外を伴って行なう。
【0408】
塩結晶を、グリセロールを含有しない精製ブラインで洗浄して残存不純物を結晶から除去することに代え、例5において収集される未洗浄の塩結晶を、精製水で再希釈して、第2の出発ブライン溶液として、第2の半バッチ結晶化プロセスにおいて、例5で用いるものと同じ実験室蒸発結晶化器設備を用いて、再利用する。第2の出発ブライン溶液は、質量4.81kgであり、そして14.80質量パーセントのNaCl、0.038質量パーセントのグリセロール、および85.33質量パーセントの水を含有する。
【0409】
出発ブライン溶液を、蒸発結晶化器内で110℃まで加熱して水を溶液から蒸発させる。水蒸気を放出し、15℃まで、水冷大気凝縮器で冷却し、別個の容器内で凝縮および収集する。例5と対照的に、ブライン供給物は、この再結晶化プロセスの間は添加しない。
【0410】
このプロセスの間、ブライン溶液はNaClで過飽和になり、NaCl結晶が溶液中に形成され始める。プロセスは、結晶をブライン溶液中で観察可能なサイズまで成長させ続け、ブライン中で結晶のスラリーが形成されるようにすることができる。水凝縮の始まりの後約200分の実施時間が、スラリーの形成のために必要である。
【0411】
実施時間の終点で、加熱を取り除き、そして容器を室温まで冷やす。撹拌器を動かし続けて塩スラリーを懸濁状態に保つ。ケトルの内容物を空にし、そして減圧ろ過して、結晶化した塩を母液から分離する。各々の分離した成分の質量を、質量収支計算のために記録し、全成分を分析する。
【0412】
質量収支計算は、上記プロセスが3.49kgの凝縮物(0.002質量パーセントのグリセロールを含有する)を蒸発させ、1.32kgのスラリー(0.53kgのNaCl結晶および0.79kgの母液からなる)を生成することを示す。NaCl結晶は、母液から、僅かな減圧のろ過を用いて分離され、92.36質量パーセントのNaClおよび0.031質量パーセントのグリセロールを含有する。母液は、27.16質量パーセントのNaClおよび0.21質量パーセントのグリセロールを含有する。
【0413】
母液からろ過される結晶は、等質量の精製ブライン(グリセロールを含有しない)で洗浄する。この塩洗浄プロセスは、洗浄された結晶中のグリセロールを0.0056質量パーセントまで低減させる。20質量パーセントNaClの処理されたブライン溶液に関し、グリセロール濃度は0.0011質量パーセントであり、または4ppmのTOCである。
【0414】
例7
本発明に係るこの例7において、連続ブライン精製プロセスを、コンピュータモデリングソフトウエアによって、例5および6で得られるデータならびに連続加工設備のシミュレーションのためのコンピュータモデルによって作られるデータを基に、シミュレートする。
【0415】
プロセスシミュレーションは、上記図4におけるプロセスフロー図を基にする。図4で特定する各々の流れについての、コンピュータで作られたデータを、下記表9に与える。
【0416】
【表8】

【0417】
表9の注:(1)ブライン;(2)結晶化器底部;(3)母液;(4)再循環;(5)パージ;(6)固体;(7)オーバーヘッド;(8)水;(9)洗浄ブライン;(10)処理された供給源;(11)ブライン再循環
【0418】
蒸発結晶化器の各々における結晶化条件を表10に与える。
【0419】
【表9】

【0420】
第1および第2の結晶化器からの母液パージ流を組合せ、そして第3の結晶化器に供給する。第3の結晶化器は、母液濃縮器として働き、ブラインパージ流全体を低減させてNaCl収率低下を最小化する。最終ブラインパージ流を39.37%グリセロールに濃縮して、パージ速度全体を、流れ274に示すように、ブライン供給速度の1質量パーセントまで低減させることができる。
【0421】
この第3の結晶化器内で生成される塩結晶および凝縮物は組合され、そして、流れ281によって示すように第1の結晶化器に戻して再循環させるのに十分清浄である。NaCl結晶および凝縮物の再循環は、流れ254で示すNaCl回収を94%まで増大させる。
【0422】
この例7に従ったブライン精製プロセス全体についてのデータを下記表11に纏める。
【0423】
【表10】

【0424】
このプロセスは、流れ251で示すようにブライン供給物の82%という多さで第2の結晶化器によって生成した結晶を希釈するために淡水の取水を必要とするが、同様の量の凝縮物が第2の結晶化器によっても生成される(再結晶化ステップ)。この凝縮物は十分低いTOC(8ppm)を含有し(流れ231で示すように)、そしてプロセス水として再利用できる。プロセス水要求全体は、従って、最小化される。
【0425】
例8
本発明に係るこの例8において、半バッチ結晶化プロセスを、例5に従って、以下の例外を伴って行なう。
【0426】
1.例5で説明した合成ブライン溶液に代えて、実際のブライン溶液(エピクロロヒドリンプロセスから形成されるもの)を、初期充填物および供給物溶液として、実験室スケール蒸発結晶化器設備に用い;そして
2.結晶化プロセスを、母液中の総有機炭素(TOC)濃度が約5000ppmに到達した時点で停止させる。
【0427】
初期充填の2.25kgの実際物は、20.86質量パーセントのNaCl、1220ppm(0.312質量パーセントのグリセロール当量)のTOC濃度および78.83質量パーセントの水を含有する。ブライン溶液を蒸発結晶化器内で110℃に加熱して水を溶液から蒸発させる。水蒸気を放出し、15℃まで、水冷大気凝縮器で冷却し、別個の容器内で凝縮および収集する。
【0428】
同じ実際のブライン溶液を供給物溶液としても用い、連続的に、蒸発結晶化器のガラスケトル内のブライン溶液に添加して、蒸発結晶化器内の液体レベルを、水が蒸発するように維持する。ブライン供給速度は、目盛り付き容器内の蒸発によって除去され、凝縮および収集される水の測定を基にする。プロセスを厳重に監視して、ドラフトチューブの1〜2インチ上の一定レベルを維持する。
【0429】
このプロセスの間、ブライン溶液はNaClで過飽和になり、NaCl結晶が溶液中に形成され始める。プロセスは、結晶をブライン溶液中で観察可能なサイズまで成長させ続け、ブライン中で結晶のスラリーが形成されるようにすることができる。水凝縮の始まりの後約245分の実施時間が、スラリーの形成のために必要である。
【0430】
実施時間の終点で、ブライン供給を停止させ、全ての加熱を取り除き、そして容器を室温まで冷やす。撹拌器を動かし続けて塩スラリーを懸濁状態に保つ。ケトルの内容物を空にし、そして減圧ろ過して、結晶化した塩を母液から分離する。各々の分離した成分の質量を、質量収支計算のために記録し、全成分を分析する。
【0431】
質量収支計算は、上記プロセスが3.09kgの凝縮物(21ppmのTOC濃度を含む)を蒸発させ、2.56kgのブラインが供給され、そして1.72kgのスラリー(0.74kgのNaCl結晶および0.988kgの母液からなる)を生成することを示す。結晶は、母液から、僅かな減圧のろ過を用いて分離され、93.89質量パーセントのNaClおよび626ppmのTOC濃度を含む。母液は、31.57質量パーセントのNaClおよび5400ppmのTOC濃度を含む。結晶は、等質量の精製ブライン(グリセロールを含有しない)で更に洗浄する。この塩洗浄プロセスは、洗浄されたNaCl結晶中のグリセロールを35ppmのTOC濃度まで低減させる。20質量パーセントNaClの処理されたブライン溶液に関し、TOC濃度は7ppmである。
【0432】
この例は、NaCl結晶化プロセス母液中のTOC濃度が、この環境で約5400ppmに低く保たれる場合、エピクロロヒドリンプロセスによって、実際のブライン溶液の1ステップ蒸発結晶化プロセスから、TOC濃度が10ppm未満である処理されたブラインを得ることができることを示す。
【0433】
例9
上記例8は、NaCl結晶化プロセス母液中のTOC濃度が、この環境で約5400ppmに低く保たれる場合、エピクロロヒドリンプロセスによって、実際のブライン溶液の1ステップ蒸発結晶化プロセスから、TOC濃度が10ppm未満である処理されたブラインを得ることができることを示す。
【0434】
本発明に係るこの例9において、連続ブライン精製プロセスシミュレーションは、コンピュータモデリングソフトウエアによって、例8で得られるデータならびに連続加工設備のシミュレーションのためのコンピュータモデルによって作られるデータを基にした。プロセスシミュレーションは、上記図3におけるプロセスフロー図を基にする。図3で特定する各々の流れについての、コンピュータで作られたデータを、下記表12に与える。
【0435】
【表11】

【0436】
表12の注:(1)ブライン;(2)結晶化器底部;(3)母液;(4)再循環;(5)パージ;(6)固体;(7)オーバーヘッド;(8)水;(9)洗浄ブライン;(10)処理された供給源;(11)ブライン再循環
【0437】
蒸発結晶化器の各々における結晶化条件を表13に与える。
【0438】
【表12】

【0439】
第1の分離装置120からの母液パージ流を第2の結晶化器140に供給する。第2の結晶化器は、母液濃縮器として働き、ブラインパージ流全体を低減させてNaCl収率低下を最小化する。最終ブラインパージ流を12.5%グリセロールに濃縮して、パージ速度全体を、流れ154に示すように、ブライン供給速度の2.5質量パーセントまで低減させることができる。
【0440】
最後のパージされたブライン流154を、第1の結晶化器からのアクセス凝縮物116および第2の結晶化器からの凝縮物と混合することによって希釈して、廃水放出仕様に合致させることができる。
【0441】
塩結晶およびこの第2の結晶化器内で生成される凝縮物は、流れ161によって示すように第1の結晶化器に戻して再循環させるのに十分清浄である。NaCl結晶および凝縮物の再循環は、流れ134で示すNaCl回収を97.5%まで増大させる。
【0442】
この例9に従ったブライン精製プロセス全体についてのデータを下記表14に纏める。
【0443】
【表13】

【0444】
このプロセスは、流れ131で示すようにブライン供給物の83%という多さで第2の結晶化器によって生成した結晶を希釈するために淡水の取水を必要とするが、同様の量の凝縮物が第2の結晶化器によっても生成される(再結晶化ステップ)。この凝縮物の殆どは十分低いTOC(8ppm)を含有し(流れ116で示すように)、そしてプロセス水として再利用できる。プロセス水要求全体は、従って、最小化される。
【0445】
上記例5〜9から分かるように、本発明は、極めて低いTOC濃度を有する水性ブラインの回収を得ることができ、一方、更なる処理を必要とするブラインの量を最小化できる。本発明に係る方法はまた、淡水の消費および汚染を最小化し、更なる処理を必要とする化学物質を導入せず、または、塩素ガスまたは次亜塩素酸塩の生成の正味の低減をもたらす。
【0446】
例5〜9の上記プロセスを用いる本発明の利点としては:
1.高いNaCl回収(ここで、ブライン供給物の90質量パーセント超を、TOCが10ppm未満である処理されたブラインとして回収できる);
2.プロセス水の再利用(ここで、プロセスで使用される淡水の殆どを、第2の結晶化器内で生成する凝縮物で置き換えることができる);そして
3.低いブラインパージ(パージがブライン供給物の1質量パーセントと低い);
が挙げられる。
【0447】
例10
エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造による(GTEブライン)ブライン副生成物流中の有機化合物の分解についての、概念的な実験室実験の小スケールの裏付けを、低いすなわち酸性のpH約3.5〜約5.5、および高いすなわちアルカリ性のpH約11.8〜約8.5の塩素化分解条件下で行なった。概念および速度論研究実験の裏付けの実証は、NMR管または反応バイアルにおいて、約1〜約2グラムのサンプルを用いて行なった。試験したサンプルは、水中に溶解した純粋グリセリン、または、総有機炭素(TOC)含有量が約1470ppmおよび出発pHが約11.8のGTEブラインであった。GTEブラインの塩化ナトリウム含有量は約23質量%であった。合成グリセリンサンプルまたはGTEブラインサンプルを過剰漂白剤とともに加熱した。これは約6.5質量%の、次亜塩素酸ナトリウムの水性溶液であり、温度は約90℃〜約100℃の範囲である。そして、グリセリン分解をNMRによって観測した。試験したサンプル、塩素化分解反応温度、およびストイキオメトリー的に過剰の次亜塩素酸ナトリウム、式(II)のストイキオメトリーの仮定は:
1.純粋グリセリン、濃度約2,500ppm、約90℃にて約4倍の次亜塩素酸ナトリウム過剰で処理、
2.純粋グリセリン、濃度約5,000ppm、約110℃にて約2倍の次亜塩素酸ナトリウム過剰で処理、
3.GTEブライン、出発TOC含有量約1470ppm、約90℃にて約3.3倍の次亜塩素酸ナトリウム過剰で処理、
4.GTEブライン、出発TOC含有量約1470ppm、約110℃にて約3.3倍の次亜塩素酸ナトリウム過剰で処理、および
5.GTEブライン、出発TOC含有量約1470ppm、約110℃にて約8.2倍の次亜塩素酸ナトリウム過剰で処理、
であった。
【0448】
図6に示すように、試験した上記5サンプルについてのグリセリン分解データは、グリセリンの主要部(これはGTEブライン中のTOCに寄与する主要な成分である)が、種々の塩素化分解条件下で崩壊したことを示す。
【0449】
例11
例10における概念の裏付けの実証の後、実験を、より大きいスケールで行ない、NMRによるグリセリン分解の観測に加え、総有機炭素(TOC)もまた、塩素化分解反応において、酸性すなわち低いpH条件下で観測した。塩素化分解に供したブライン副生成物流は、エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造による(GTEブライン)ブライン副生成物流であり、TOC含有量約1470ppm、塩化ナトリウム含有量約23質量%(GTEブラインの質量基準)、およびpH約9を有していた。GTEブラインの133gのサンプルを、約66gの市販漂白剤とフラスコ内で混合した。市販漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウム含有量が約6.5質量%であり、残部が水であった。
【0450】
GTEブラインを漂白剤で希釈する際に、GTEブラインと漂白剤との混合物の計算されるTOC含有量は、約982ppmである。計算基準で、TOCの全てはグリセリンと仮定し、GTEブラインサンプル中のグリセリンの量は約5.06mmolである。漂白剤によって供給される次亜塩素酸ナトリウムの量は、約57.5mmolの次亜塩素酸ナトリウムである。次亜塩素酸ナトリウムのグリセリンに対するモル比は、約11.36(57.5mmole/5.06mmole=11.36)である。よって、ストイキオメトリーよりも過剰の次亜塩素酸ナトリウム、または次亜塩素酸ナトリウムの、総有機炭素(全てグリセリンとして計算)に対するモル比は、ブライン副生成物流中で、ストイキオメトリー比(7:1)(ブライン副生成物流の、式(II)に従った、次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量(全てグリセリンとして計算)に対する比)の約1.62倍(11.36/7=1.62)であることができる。
【0451】
GTEブラインと漂白剤との混合物を、塩酸(HCl)と、フラスコ内で混合して、反応混合物のpHを約3.5〜約5.5に調整する。反応混合物を混合し、そしてフラスコ内で、温度約100℃にて20分間大気圧で加熱する。反応の間、反応混合物pH約3.5〜約5.5は、HClまたは水酸化ナトリウム(NaOH)を、必要に応じpH調整のために添加することによって維持する。塩素化分解で実現されるグリセリン分解は、NMRを用いて観測する。反応混合物をほぼ室温まで冷却し、そしてTOCは約55ppmと測定される。NMRスペクトルは、塩素化分解の開始時点(時間=0)を図7Aに示し、そして、塩素化分解後(時間=60分)を図7Bに示す。図7Aおよび7Bに示すように、NMRスペクトルは、塩素化分解が、極めて顕著なグリセリンの分解をもたらすことを示し、そして任意の新たな有機化合物のピークを示さない。
【0452】
冷却された反応混合物を塩酸と混合して、塩素化分解反応生成物のpHを約2に、酸性化された活性化炭素での処理のために、調整する。約15gの酸性化された活性化炭素を50mlビュレット内に入れ、そしてpH約2の塩酸で状態調整して任意の不純物を除去する。塩素化分解反応生成物を、次いで、ビュレットに添加して、流出物を、TOCについて、TOC分析計を用いて分析する。TOC分析計によって測定されるように、酸性化された活性化炭素は塩素化分解反応生成物のTOCを約55ppmから10ppm未満に低減させる。
【0453】
例12
例10における概念の裏付けの実証の後、実験を、より大きいスケールで行ない、NMRによるグリセリン分解の観測に加え、総有機炭素(TOC)もまた、塩素化分解反応において、アルカリ性すなわち高いpH条件下で観測した。塩素化分解に供したブライン副生成物流は、エピクロロヒドリンのグリセリンからの製造による(GTEブライン)ブライン副生成物流であり、TOC含有量約1470ppm、塩化ナトリウム含有量約23質量%(GTEブラインの質量基準)、およびpH約11.8を有していた。GTEブラインの133gのサンプルを、約56gの市販漂白剤とフラスコ内で混合した。市販漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウム含有量が約6.5質量%であり、残部が水であった。
【0454】
GTEブラインを漂白剤で希釈する際に、GTEブラインと漂白剤との混合物の計算されるTOC含有量は、約1040ppmである。計算基準で、TOCの全てはグリセリンと仮定し、GTEブラインサンプル中のグリセリンの量は約5.139mmolである。漂白剤によって供給される次亜塩素酸ナトリウムの量は、約48.772mmolの次亜塩素酸ナトリウムである。次亜塩素酸ナトリウムのグリセリンに対するモル比は、約9.49(48.772mmole/5.139mmole=9.49)である。よって、ストイキオメトリーよりも過剰の次亜塩素酸ナトリウム、または次亜塩素酸ナトリウムの、総有機炭素(全てグリセリンとして計算)に対するモル比は、ブライン副生成物流中で、ストイキオメトリー比(7:1)(ブライン副生成物流の、式(II)に従った、次亜塩素酸ナトリウムの総有機炭素含有量(全てグリセリンとして計算)に対する比)の約1.35倍(9.49/7=1.35)であることができる。
【0455】
GTEブラインと漂白剤との混合物は、何らのpH制御剤(例えば塩酸(HCl)または水酸化ナトリウム(NaOH))とも、反応混合物のpHの調整または維持のために混合しない。初期pHは、反応が進行するに従い低下させる。反応混合物を混合し、そしてフラスコ内で、温度約100℃にて20分間大気圧で加熱する。反応の間、反応混合物pHは、約8.8〜約8.5に低下する。塩素化分解で実現されるグリセリン分解は、NMRを用いて観測する。反応混合物をほぼ室温まで冷却し、そしてTOCは約82ppmと測定される。NMRスペクトルは、塩素化分解の開始時点(時間=0)を図8Aに示し、そして、塩素化分解後(時間=60分)を図8Bに示す。図8Aおよび8Bに示すように、NMRスペクトルは、塩素化分解が、極めて顕著なグリセリンの分解をもたらすことを示し、そして任意の新たな有機化合物のピークを示さない。
【0456】
冷却された反応混合物を塩酸と混合して、塩素化分解反応生成物のpHを約2に、酸性化された活性化炭素での処理のために、調整する。約15gの酸性化された活性化炭素を50mlビュレット内に入れ、そしてpH約2の塩酸で状態調整して任意の不純物を除去する。塩素化分解反応生成物を、次いで、ビュレットに添加して、流出物を、TOCについて、TOC分析計を用いて分析する。TOC分析計によって測定されるように、酸性化された活性化炭素は塩素化分解反応生成物のTOCを約82ppmから10ppm未満に低減させる。
【0457】
前述の例は、単に説明の目的で与えたものであり、本発明の限定とは決して解釈すべきでないことに留意すべきである。例示の態様を参照して本発明を説明してきたが、本明細書で用いた用語は限定の用語ではなく説明および例示の用語であることが理解される。現に記載されおよび補正される特許請求の範囲の範囲内での変更が、本発明の範囲および精神からその側面において逸脱することなく可能である。本明細書において、特定の手段、物質および態様を参照して本発明を説明してきたが、本発明は本明細書に開示する特定のものに限定されることを意図せず、本発明は、全ての機能的に等価の構造、方法および用途,例えば特許請求の範囲の範囲内のものに及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインの有機含有量を低減する方法であって、ブライン溶液を、電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理に供することを含み;精製されたブラインの有機含有量が、精製されたブラインの再利用を可能にするのに十分に低い、方法。
【請求項2】
化学プロセスにおけるブラインの有機汚染を低減する方法であって、化学プロセスのブライン流を電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理に供することを含み;精製されたブラインの有機含有量が、同じ化学プロセスまたは異なる化学プロセスに戻して再循環させるのに十分に低い、方法。
【請求項3】
少なくとも2つの精製処理が、有機含有量を含むブライン溶液を電気化学プロセスに十分な時間十分な電圧で供してブラインの有機含有量を低減して低減された有機含有量のブラインを得ることを含む少なくとも1つの電気化学的処理を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの精製処理が、少なくとも1つの結晶化処理を含み、該結晶化処理が:
(1)1種以上の無機塩および1種以上の有機化合物を含む水性ブライン溶液を準備すること;ならびに
(2)有機化合物をブライン溶液から除去して、精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作を行なうこと;
を含み;
手段(1)において準備される水性ブライン溶液の1種以上の無機塩の少なくとも約80質量パーセントが、塩化ナトリウムであり、そして少なくとも1つの単位操作が、第1の再溶解操作を含み、該第1の再溶解操作が:
(a)水性ブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第1の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を第1の母液から分離すること;
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて第1の精製されたブライン溶液を得ること;ならびに
(d)第1の母液からの第1の母液パージ流を結晶化させて、ステップ(a)に戻って供給される再循環塩流を生成し、このステップ(c)からの母液パージ流が、低減された体積の有機含有パージを有すること;
を含む、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの単位操作が、第2の再溶解操作を更に含み、該第2の再溶解操作が:
(a)第1の精製されたブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第2の母液を形成すること;
(b)塩化ナトリウム結晶を該第2の母液から分離すること;
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、第1の精製されたブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて、第1の精製されたブライン溶液のTOC濃度よりも低い総有機炭素(TOC)濃度を有する第2の精製されたブライン溶液を得ること;および
(d)第1の母液からの第1の母液パージ流と第2の母液からの第2の母液パージ流との組合せを結晶化させて、ステップ(a)に戻って供給される再循環塩流を生成し、このステップ(c)からの該母液パージ流が、低減された体積の有機含有パージを有すること;
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの精製処理が、少なくとも1つの生物学的処理を含み、該生物学的処理が:
(1)1種以上の無機塩、1種以上の有機化合物、ならびに任意に、該1種以上の無機塩および該1種以上の有機化合物の中に含まれる微生物栄養物以外の1種以上の微生物栄養物、を含む水性ブライン溶液を準備すること;ならびに
(2)ステップ(1)において準備した水性ブライン溶液から有機化合物を除去して第1の精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作を行なうこと;
を含み、
水性ブライン溶液が、少なくとも10質量パーセントの1種以上の無機塩を含有し、1種以上の無機塩の少なくとも80質量パーセントが塩化ナトリウムであり、そして少なくとも1つの単位操作が:
(a)水性ブライン溶液と、酸素の存在下で有機化合物を酸化させることが可能な生存微生物とを接触させること;
(b)水性ブライン溶液によって満足されていない生物栄養物についての微生物要求に比例させて、生物栄養物を水性ブライン溶液に任意に添加すること;
(c)微生物を水性ブライン溶液から分離して第1の精製されたブライン溶液を得ること;
を含む、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
微生物が、バクテリアを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バクテリアが、ビブリオ(Vibrio)属および/またはハロモナス(Halomonas)属に属する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バクテリアが、Vibrio alginolyticus、Halomonas salinaおよび/またはHalomonas campaniensisの種を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの精製処理が、少なくとも1つの塩素化分解処理を含む、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの塩素化分解処理が:
(a)高い総有機炭素含有量を有するブライン副生成物流を塩素化分解に温度約125℃未満で供して塩素化分解生成物流を得ること;および
(b)塩素化分解生成物流を活性化炭素で処理して再循環可能なブライン流を得ること;
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの塩素化分解処理が:
(a)グリセリンからのエピクロロヒドリンの製造において生成したブライン副生成物流を、該ブライン副生成物流を塩素ガスおよび水酸化ナトリウムとpH約3.5〜約11.8および温度約125℃未満で混合することにより塩素化分解に供し;該ブライン副生成物流が、総有機炭素含有量少なくとも約500質量ppmおよび塩化ナトリウム含有量約15質量%〜約23質量%を、ブライン副生成物流の質量基準で有し;該塩素化分解が、ブライン副生成物流の総有機炭素含有量を、得られる塩素化分解生成物流の質量基準で約100質量ppm未満に低減させること;
(b)塩素化分解生成物流のpHをpH約2〜約3に調整すること;
(c)塩素化分解生成物流を酸性化された活性化炭素で処理して再循環可能なブライン流を得て、塩素化分解生成物流の活性化炭素での処理が、塩素化分解生成物流の総有機炭素含有量を約10質量ppm未満に更に低減させること;
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
化学プロセスが、エピクロロヒドリンを形成するためのプロセスであり、そして異なる化学プロセスが、塩素−アルカリプロセスである、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
化学プロセスが、ポリフェノール化合物をエピクロロヒドリンと反応させてエポキシレジンを形成するためのプロセスであり、そして異なる化学プロセスが、塩素−アルカリプロセスである、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
化学プロセスが、液体エポキシレジンまたは固体エポキシレジンをビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから形成するためのプロセスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
化学プロセスが、液体エポキシノボラックレジンを、ビスフェノールFまたはビスフェノールFオリゴマー、およびエピクロロヒドリンから形成するためのプロセスである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
化学プロセスが、メチレンジアニリンまたはポリメチレンジアニリンのオリゴマーを、フェノールおよびホルムアルデヒドから、塩酸の存在下で形成するためのプロセスである、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
化学プロセスが、エピクロロヒドリンをグリセリンから形成するためのプロセスである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
第2の再溶解ステップにおいて得られる第2の精製されたブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比が、ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液中に存在する有機化合物の量の塩化ナトリウムの量に対する質量比の約100分の1未満である、請求項3〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
1種以上の有機化合物が、(a)1種以上の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物、その1種もしくは複数種のエステル、ならびに/またはそのモノエポキシド、ならびに/またはそのダイマー、トリマーおよび/もしくはオリゴマー、ならびに/またはそのハロゲン化および/もしくはアミノ化誘導体、(b)1〜10炭素原子を有する1種以上の有機酸、その1種もしくは複数種のエステル、その1種もしくは複数種のモノエポキシドならびに/またはその1種もしくは複数種の塩、(c)1種以上のアルキレンビスフェノール化合物、ならびに/またはその1種もしくは複数種のエポキシド、ジオールおよび/もしくはクロロヒドリン、ならびに/または(d)アニリン、メチレンジアニリン、ならびに/またはフェノールを含む、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
1種以上の多ヒドロキシル化脂肪族炭化水素化合物が、グリセロールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1種以上の有機酸が、ギ酸、酢酸、乳酸および/またはグリコール酸を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
1種以上のアルキレンビスフェノール化合物が、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液を、クロロヒドリンを水酸化ナトリウムと反応させることによる1種または複数種のクロロヒドリンのエポキシ化によって生成する、請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
グリセロールおよび/もしくはその1種もしくは複数種のエステル、ならびに/または1種もしくは複数種のモノクロロヒドリンおよび/もしくはその1種もしくは複数種のエステル、を含む液相反応混合物と、少なくとも1種の塩素化剤、任意に水の存在下、1種以上の触媒、ならびに/または1種以上の重質副生成物、を含む少なくとも1種の塩素化供給物流とを、反応容器内で塩化水素化条件下にて接触させることによって、1種または複数種のクロロヒドリンを生成する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液を、少なくとも1種のアルキレンビスフェノール化合物のエポキシ化によって生成する、請求項20、23または24に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液が、アニリン、メチレンジアニリンおよび/またはフェノールを含み、そしてアニリンとホルムアルデヒドとの反応を触媒してメチレンジアニリン(MDA)を形成するために使用される塩化水素の水酸化ナトリウム中和によって生成される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
塩化水素の水酸化ナトリウム中和によって生成される水性ブライン溶液を共沸蒸留に供して、ステップ(1)において水性ブライン溶液を準備する前に水性ブライン溶液中に存在するアニリンおよび/またはメチレンジアニリンの少なくとも50質量パーセントを除去する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液が、第1の再溶解操作の前に、アニリンおよび/またはメチレンジアニリンを除去するための揮散操作に供されていない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の総有機炭素濃度(TOC)が、少なくとも200ppmである、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の無機塩の5質量パーセント未満が、炭酸アニオンおよび/または硫酸アニオンを有する塩である、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ステップ(2)において得られる精製されたブライン溶液の総有機炭素濃度が約10ppm未満である、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
精製されたブラインを、電解セルのアノード側の中に、(a)水酸化ナトリウムおよび(b)塩素ガスまたは次亜塩素酸塩、を塩素−アルカリプロセスによって形成するためのブライン出発物質の少なくとも一部として導入する、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
連続プロセスである、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
ブラインの有機含有量を低減するための装置であって、ブライン溶液を、電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理手段に供するための手段を含み;
精製されたブラインの有機含有量が、精製されたブラインの再利用を可能にするのに十分に低い、装置。
【請求項36】
化学プロセスにおけるブラインの有機汚染を低減するための装置であって、化学プロセスのブライン流を電気化学的処理、塩素化分解または他の化学的酸化処理、炭素吸着、抽出、生物学的処理および結晶化処理から選択される少なくとも2つの精製処理手段に供するための手段を含み;精製されたブラインの有機含有量が、同じ化学プロセスまたは異なる化学プロセスに戻して再循環させるのに十分に低い、装置。
【請求項37】
少なくとも2つの精製処理手段が、有機含有量を含むブライン溶液を電気化学プロセスに十分な時間十分な電圧で供してブラインの有機含有量を低減して低減された有機含有量のブラインを得るための手段を含む少なくとも1つの電気化学的処理を含む、請求項35または36に記載の装置。
【請求項38】
少なくとも2つの精製処理手段が、少なくとも1つの結晶化処理手段を含み、該結晶化処理手段が:
(1)1種以上の無機塩および1種以上の有機化合物を含む水性ブライン溶液を準備するための手段;ならびに
(2)有機化合物をブライン溶液から除去して精製されたブライン溶液を得るための少なくとも1つの単位操作;
を含み;
ステップ(1)において準備される水性ブライン溶液の1種以上の無機塩の少なくとも約80質量パーセントが、塩化ナトリウムであり、そして少なくとも1つの単位操作が、第1の再溶解操作を含み、該第1の再溶解操作が:
(a)水性ブライン溶液中の塩化ナトリウムを結晶化させて塩化ナトリウム結晶および第1の母液を形成するための手段;
(b)塩化ナトリウム結晶を該第1の母液から分離するための手段;
(c)分離された塩化ナトリウム結晶を、手段(1)において準備される水性ブライン溶液中の有機化合物濃度よりも実質的に低い有機化合物濃度を有する水性溶液中で再溶解させて第1の精製されたブライン溶液を得るための手段;ならびに
(d)第1の母液からの第1の母液パージ流を結晶化させて、手段(a)に戻って供給される再循環塩流を生成し、この手段(c)からの該母液パージ流が、低減された体積の有機含有パージを有するための手段;
を含む、前掲の請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項39】
化学的酸化処理が:(1)過酸化水素および鉄(II)触媒による2段階でのフェントン酸化;(2)活性化炭素処理、続いて過酸化水素および鉄(II)触媒によるフェントン酸化;または(3)過酸化水素および鉄(II)触媒によるフェントン酸化、続いて活性化炭素処理、をして再循環可能なブライン流を得ること;を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項40】
再循環可能なブライン流が、TOC含有量約10ppm未満を含有する、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2010−537799(P2010−537799A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521962(P2010−521962)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/073444
【国際公開番号】WO2009/026208
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】