説明

ブラシレスモータ

【課題】駆動ユニットを効率良く冷却できるようにして、駆動ユニットの作動の安定化を図ることのできるブラシレスモータを提供する。
【解決手段】コイル10の通電を制御する駆動ユニット15をブラケット12に組み付ける。ブラケット12の前面側にステータ11を設置し、ステータ11の外周側に有底円筒状のロータ14を回転可能に取り付ける。ロータ14の底壁部31に送風突起53と排出口52を設け、ロータ14の回転時に、送風突起53と排出口52との協働によってロータ14の内部の空気を排出する。ロータ14の内部には、ブラケット12とロータ14の間の隙間通路51を通して空気を取り入れる。取り入れられた空気は、ブラケット12の前面の放熱フィン50を冷却した後にステータ11のコイル10の周囲を通過して排出口52から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のラジエータ冷却ファン等に用いられるブラシレスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のラジエータ冷却ファンに用いられるモータとして、アウタロータ型のブラシレスモータが用いられることがある。
このモータは、ブラケットに、励磁用の複数のコイルを巻回したステータが取り付けられ、そのステータの外周側に、内周面に複数のマグネットを取り付けた有底円筒状のロータが回転可能に配置され、各コイルにタイミングをずらして電流を流すことによってロータを回転させるようになっている。
【0003】
また、この種のブレシレスモータとして、ロータの内部に外気を送り込み、ロータ内部の加熱を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このブラシレスモータは、有底円筒状のロータの底壁部に、外気取入れ口と、その外気取入れ口に隣接する送風突起とが設けられ、ロータの回転時に、送風突起が外気取入れ口を通してロータ内に空気を送り込むようになっている。外気取入れ口を通してロータ内に流入した空気は、ロータ内のステータコイル等の発熱部を冷却し、その後にブラケットとロータの間の隙間を通して外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−210727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、この種のブラシレスモータでは、ステータコイルに対する通電を制御する駆動ユニットをブラケットに一体に組み付けることが検討されている。
この場合、上記の冷却構造を持つブラシレスモータにおいては、ロータの前面側(底壁部)の外気取入れ口から流入した空気がステータコイルで熱交換を行った後にブラケットの前面に当たることになるため、ブラケットに組み付けられる駆動ユニットを効率良く冷却することができない。特に、駆動ユニットはステータコイル等の他のモータ部品に比較して耐熱温度の低い部品を含むため、駆動ユニットの温度上昇によって同ユニットの作動が不安定になることが懸念される。
【0006】
そこでこの発明は、駆動ユニットを効率良く冷却できるようにして、駆動ユニットの作動の安定化を図ることのできるブラシレスモータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るブラシレスモータでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、コイルが巻回されるステータと、前面側に前記ステータが固定設置されるブラケットと、前記ブラケットの前面側に回転自在に取り付けられ、前記ステータに対向するマグネットが周壁部に取り付けられた有底円筒状のロータと、前記ブラケットに一体に組み付けられ、前記コイルに対する通電を制御する駆動ユニットと、を備え、前記ステータの前方側に配置される前記ロータの底壁部に、前記ロータと一体に回転して当該ロータの内側に空気の流れを生じさせる送風突起が設けられているブラシレスモータにおいて、前記送風突起が、前記ロータの底壁部の内面側と外面側の少なくともいずれか一方に突設されるとともに、前記ロータの底壁部のうちの前記送風突起のロータ回転方向で隣接する部位に、前記ロータの回転時に、前記送風突起との協働によって当該ロータの内部から空気を排出する排出口が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、駆動ユニットによってコイルの通電が制御され、それによってロータが回転すると、送風突起と排出口との協働によってロータ内の空気が排出口から外部に吸い出され、ロータ内にはブラケット側からステータのコイル部分を通ってロータの底壁部方向に向かう空気の流れが生じる。ブラケットの前面はコイルによって暖められていない空気によって冷却され、駆動ユニットはブラケットを通して冷却されることになる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るブラシレスモータにおいて、前記送風突起は、前記ロータの底壁部の内面側に突設され、前記排出口は、前記底壁部上の前記送風突起のロータ回転方向の前方側に隣接して配置されていることを特徴とするものである。
これにより、ロータが回転すると、送風突起の回転方向前方側の空気が送風突起によって圧縮され、回転方向後方側の空気が膨張することになる。この結果、ロータの底壁部の内面側で、送風突起の回転方向後方側から前方側に空気が流れ込み、その空気が排出口を通してロータの外部に排出されるようになる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係るブラシレスモータにおいて、前記送風突起は、前記ロータの底壁部の外面側に突設され、前記排出口は、前記底壁部上の前記送風突起のロータ回転方向の後方側に隣接して配置されていることを特徴とするものである。
これにより、ロータが回転すると、送風突起の回転方向前方側の空気が送風突起によって圧縮され、回転方向後方側の空気が膨張することになる。この結果、ロータの底壁部の外面側で、送風突起の回転方向後方側から前方側に向かう空気の流れが生じ、このとき、送風突起の回転方向後方側に位置される排出口を通してロータの内部の空気が吸い出されるようになる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係るブラシレスモータにおいて、前記送風突起と排出口とは、前記ロータの底壁部を部分的に切り起こすことによって形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に係るブラシレスモータにおいて、前記ブラケットの前面には放熱フィンが設けられ、当該放熱フィンの径方向外側には、前記ブラケットと前記ロータの間の隙間通路が連通していることを特徴とするものである。
これにより、ロータが回転すると、ブラケットとロータの間の隙間通路を通してブラケットの前面側の放熱フィンに外部の空気が流れ込む。このとき、放熱フィンは外部から流れ込んだ空気によって冷却され、放熱フィンを冷却した空気はコイルを通ってロータの排出口から外部に排出される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ロータの回転時に、ロータの底壁部上の送風突起と排出口との協働によって、ブラケット側からステータのコイル部分を通って排出口に向かう空気の流れができるため、ステータのコイルで暖められていない空気により、ブラケットを通して駆動ユニットを効率良く冷却することができる。したがって、この発明によれば、駆動ユニットの温度上昇を抑制して、駆動ユニットの作動を常時安定化させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、送風突起がロータの底壁部の内面側に突設され、排出口がロータの底壁部のロータ回転方向の前方側に隣接して配置されているため、ステータに近接するロータの内側の空気を送風突起によって掻き動かし、ロータの内部に効率良く空気の流れを作り出すことができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、送風突起がロータの底壁部の外面側に突設され、排出口がロータの底壁部のロータ回転方向の後方側に隣接して配置されているため、送風突起との干渉を避けるためのスペースをロータの内部に確保する必要がなく、ロータ内部の部品配置の自由度が高まるという利点がある。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、ロータの底壁部を部分的に切り起こすことによって送風突起と排出口が形成されているため、ロータに送風突起と排出口とを容易に設けることができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、ロータの回転時に、ブラケットとロータの間の隙間通路を通してブラケットの前面側の放熱フィンに外部の空気が流れ込む構造とされているため、ブラケットと、それに組み付けられる駆動ユニットとをより効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態のブラシレスモータを用いたラジエータ冷却ファンの縦断面図である。
【図2】この発明の一実施形態のブラケットの斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態のロータの部分断面斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態のブラシレスモータを用いたラジエータ冷却ファンの縦断面図である。
【図5】この発明の別の実施形態のロータの斜視図である。
【図6】この発明のさらに別の実施形態のロータの部分断面斜視図である。
【図7】この発明のさらに別の実施形態のロータの図6のA−A断面に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は、車両用電動ファン1(以下、「電動ファン1」と呼ぶ。)を鉛直方向に沿って切った断面図である。なお、図中矢印Fは、車両の前方側を指している。以下の説明においては、矢印Fの指す方向を「前」、矢印Fの指す方向と逆の方向を「後」と呼ぶものとする。
この電動ファン1は、車両のラジエータ冷却用として用いられ、図示しないラジエータの前方側に設置される。この電動ファン1は、駆動部であるアウタロータ型のブラシレスモータ2と、ブラシレスモータ2によって回転駆動されるファン本体3とを備えている。
【0019】
ブラシレスモータ2は、励磁用の複数のコイル10が巻回されたステータ11と、ステータ11が固定設置されるブラケット12と、ブラケット12に回転自在に支持される回転軸13と、この回転軸13に一体回転可能に結合されたロータ14と、ロータ14の回転をフィードバックしてコイル10の通電を制御する駆動ユニット15と、を備えている。
【0020】
ブラケット12は、全体が鉄材やアルミニウム材によって略円盤状に形成され、その外周縁部に締結部である複数の固定アーム12aが延設されている。固定アーム12aは、ファン本体3の周囲を取り囲んで送風を案内するファンシュラウド16に締結固定され、ファンシュラウド16は、ラジエータの前方側に固定設置されるようになっている。
また、ブラケット12の前面側の中央には円筒状のボス部12bが突設されており、そのボス部12bには、外周側でステータ11を固定する略円筒状のステータ固定パイプ17が取り付けられている。
【0021】
ステータ固定パイプ17は、一端側がボス部12b内に圧入固定され、他端側がボス部12bの前端部から前方に突出している。ステータ固定パイプ17のボス部12bから前方に突出した領域の外周面には、ステータ11のステータコア18が嵌合固定されている。ステータコア18には、放射方向に突出する複数のティース18aが設けられ、その各ティース18aに絶縁部材であるインシュレータ19を介して前記コイル10が巻回されている。
【0022】
図2は、ブラケット12を示す斜視図である。
同図にも示すように、ブラケット12の前面側の外周縁には、略円筒状の水浸入規制壁25がボス部12bと同軸に形成されている。また、ブラケット12の前面には、水浸入規制壁25よりも小径の2つの円筒壁26,27がボス部12bと同軸に形成されている。円筒壁26,27は、水浸入規制壁25と同様に、ブラケット12の上部外周側から、電気接点や駆動ユニット15の配置されている中心側に流入しようとする水滴をこれらの外周面に沿わせて下方に滴下させる。
ブラケット12の前面のうちの、内側の円筒壁27とボス部12bの間の領域には、放射方向に延出する複数の放熱フィン50が設けられている。ブラケット12の後面側の中心寄り部分には、発熱電子部品を含む上記の駆動ユニット15が取り付けられている。ブラケット12の前面側に形成されている放熱フィン50は主に駆動ユニット15で発される熱を周囲に放熱する
【0023】
回転軸13は、車体前後方向に沿うように略水平に延出し、一対の軸受20A,20Bを介してブラケット12のボス部12bとステータ固定パイプ17とに回転自在に支持されている。回転軸13の後端部は軸受20Aから後方側に突出し、その突出端に回転検出用のセンサリング21が取り付けられている。このセンサリング21を用いて検出された回転軸13の回転は、ロータ14の回転情報として駆動ユニット15に出力される。一方、回転軸13の前端部は軸受20Bから前方側に突出し、その突出部分にロータ14とファン本体3とが取り付けられるようになっている。
具体的には、回転軸13の前部側の突出領域には、軸受20Bに隣接してロータ支持部22が拡径して形成されるとともに、そのロータ支持部22に隣接してロータ支持部22よりも小径のファン固定部23が形成されている。そして、回転軸13のファン固定部23よりも先端側にはファン固定部23よりも小径の雄ねじ部24が形成されている。
【0024】
ロータ14は、有底円筒状のロータヨーク28の周壁部29の内面に複数のマグネット30…が円周方向に沿って取り付けられている。また、ロータヨーク28の底壁部31の中央には、周壁部29と同側に突出するボス部32が形成され、そのボス部32が回転軸13のロータ支持部22の外周に圧入固定されている。なお、ロータ14は、周壁部29に設置されたマグネット30がステータ11の外周面に対峙し、底壁部31がステータ11の前面側を覆うように回転軸13に組み付けられている。
【0025】
また、ロータヨーク28の周壁部29の開口側(後端側)の縁部には径方向外側に屈曲した補強フランジ33が突設されている。この補強フランジ33を含むロータヨーク28の開口側の縁部は、ロータ14が回転軸13と軸受20A,20Bを介してブラケット12に組み付けられた状態において、ブラケット12の水浸入規制壁25と円筒壁26の間のスペースに配置され、水浸入規制壁25と円筒壁26に対して軸方向で所定量オーバーラップするようになっている。これにより、ブラケット12側の水浸入規制壁25と円筒壁26は、ロータヨーク28の開口側の縁部とともに、水滴の浸入を規制するラビリンス状の通路を形成することになるが、この通路は、外部の空気をロータ14の内部に導入するための、ブラケット12とロータ14の間の隙間通路51の一部を構成している。前述したブラケット12の放熱フィン50は、その径方向外側領域において隙間通路51に連通している。
【0026】
一方、ファン本体3は、有底円筒状のファンボス34と、ファンボス34の外周面から径方向外側に突出する複数の送風ブレード35と、を備えている。このファンボス34と送風ブレード35は樹脂によって一体に形成されている。ファンボス34の底壁の中央には、開口36が形成されるとともに、その開口36を閉塞するように別体の金属プレート37が後面側からビス41によって取り付けられている。この金属プレート37は、ファン本体3を回転軸13に直接固定するための軸固定部を構成するものであり、その中央部には、回転軸13のファン固定部23が嵌入される嵌合孔38が形成されている。ファン本体3は、金属プレート37が座金39とともに回転軸13のファン固定部23に嵌合され、金属プレート37から突出した回転軸13の雄ねじ部24にナット40を締め込むことによって回転軸13に一体に結合されている。また、金属プレート37とともにファン固定部23に嵌合された座金39は、回転軸13上のファン固定部23よりも大径のロータ支軸部22の近傍部に当接し、それにより、ロータ14の底壁部31と金属プレート37の間に軸方向に離間するスペースSが確保されている。
【0027】
ところで、ロータ14のロータヨーク28の底壁部31には、ロータ14の内部から空気を排出するための複数の排出口52…が形成されている。
図3は、ロータヨーク28の底壁部31をロータ14の内側から見た図である。なお、同図では、周壁部29の内周側に取り付けられているマグネット30は図示都合上省略されている。
同図に示すように、排出口52…は、ロータヨーク28の底壁部31の外周縁部に円周方向に沿って等間隔に設けられ、各排出口52は、略方形状に形成されている。また、底壁部31上の各排出口52のロータ回転方向(図3で矢印Rで示す方向)の後方側で隣接する部位には、略方形状の送風突起53がロータ14の内側に向かって突設されている。したがって、排出口52は、ロータ14の底壁部31上の各送風突起53のロータ回転方向の前方側に隣接して配置されている。
【0028】
各送風突起53は、底壁部31の各排出口52部分をロータ14の内側方向に略直角に切り起こすことによって形成され、切り起こした部分の面方向が、底壁部31のなす円の放射方向に沿うようになっている。送風突起53…は、ロータ14と一体に回転することにより、ロータ14の内側に空気の流れを生じさせる。
送風突起53…は、図3示すように、ロータ14と一体に回転することによって前面側が圧縮領域a(正圧領域)となり、逆に後面側が膨張領域b(負圧領域)となる。このため、底壁部31の内側(後面側)には膨張領域bから圧縮領域aに向かう空気の流れが生じ、圧縮領域aに流れ込んだ空気は排出口52を通してロータ14の外部に排出されることになる。そして、この排出口52に排出される空気の流れが契機となり、ロータ14の内部には底壁部31方向に向かう空気の流れが発生する。
【0029】
以上の構成において、ブラシレスモータ2のコイル10に通電が行われると、ステータ11とロータ14の間に回転力が発生し、ファン本体3がロータ14と一体となって回転してラジエータに冷却風を供給するようになる。このとき、ロータ14が回転すると、ロータ14の底壁部31の送風突起53と排出口52の協働により、ロータ14の内部の空気が排出口52を通して外部に排出される。
【0030】
図4は、ロータ14の回転時に、ブラシレスモータ2の内側に生じる空気の流れを矢印示した図である。
同図に示すように、送風突起53と排出口52との協働によってロータ14の内部の空気が外側に吸い出されると、ブラケット12の前面側からロータ14の底壁部31に向かう空気の流れが発生し、このとき、ブラケット12とロータ14の間の隙間通路51からロータ14の内部に外部の空気が取り入れられるようになる。これにより、隙間通路51を通して外部から流入した空気は、図4中の白抜きの矢印で示すように、最初にブラケット12の前面に沿って流れ、放熱フィン50との間で熱交換を行う。これにより、駆動ユニット15が放熱フィン50を通して冷却される。
そして、こうして放熱フィン50を冷却した空気はステータ11の周域を流れ、主に、コイル10との間で熱交換を行い、図4中のドットを入れた矢印で示すように、ロータ14の底壁部31の排出口52を通してロータ14の前方側に排出される。これにより、コイル10やその周域の部材が空気によって冷却される。
【0031】
この電動ファン1で採用するブラシレスモータ2においては、ロータ14の底壁部31に設けられた送風突起53と排出口52との協働によってロータ14の内部の空気が前方側に吸い出され、ロータ14の内部にブラケット12側からロータ14の底壁部31方向に向かう空気の流れが作り出されるため、コイル10と熱交換を行う前の充分に温度の低い空気によってブラケット12の放熱フィン50とそれに接する駆動ユニット15とを効率良く冷却することができる。
したがって、このブラシレスモータ2では、駆動ユニット15の温度上昇を速やかに抑制して、駆動ユニット15の作動が熱によって不安定になるのを未然に防止することができる。
【0032】
また、この実施形態のブラシレスモータ2は、送風突起53がロータ14の底壁部31の内面側に突設され、排出口52がロータ14の底壁部31のロータ回転方向の前方側に隣接して配置されているため、ステータ11の周囲の空気を送風突起53によって掻き動かし、ロータ14の内部に効率良く空気の流れを作り出すことができる。
【0033】
また、この実施形態の場合、ロータ14の底壁部31を部分的に切り起こすことによって送風突起53と排出口52とが同時に形成されているため、ロータ14に送風突起53と排出口52とを容易に設けることができるとともに、ロータ14の底壁部31に別体の送風突起を付設する場合に比較して装置の軽量化を図ることができる。
【0034】
さらに、この実施形態のブラシレスモータ2においては、ブラケット12の前面側に放熱フィン50が設けられ、その放熱フィン50の径方向外側に、外気を取り入れるための隙間通路51が連通しているため、ロータ14の回転時にブラケット12上の放熱フィン50に向かって外部の空気をスムーズに流入させることができる。このため、放熱フィン50と駆動ユニット15を外部から導入した空気で効率良く冷却することができる。
【0035】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、ロータ14の底壁部31の内側(後方側)に向けて送風突起53を突設させるようにしているが、図5に示すように、ロータ14の底壁部31の外側(前方側)に向けて送風突起53を設けるようにしても良い。
この場合、排出口52は底壁部31上の送風突起53のロータ回転方向Rの後方側に隣接して配置される。これにより、ロータ14の回転時に、各送風突起53の前後に後方側の膨張領域bから前方側の圧縮領域aに向かう空気の流れができ、ロータ14の内部の空気が排出口52を通して外部に吸い出されることになる。
【0036】
また、送風突起は、ロータの底壁部の内面側と外面側に両方設けることも可能である。
図6,図7は、ロータ14のロータヨーク28の底壁部31の内面側と外面側に送風突起53A,53Bを設けた実施形態を示すものである。
この実施形態のロータ14は、ロータヨーク28の底壁部31の外周縁部に、法線方向に沿う複数のスリット45…を形成し、その各スリット45のロータ回転方向Rの後方側の縁部を内面側に半円状に膨出させるとともに、各スリット45のロータ回転方向Rの前方側の縁部を外面側に半円状に膨出させている。これにより、各スリット45のロータ回転方向Rの後方側の膨出部と前方側の膨出部が、それぞれ底壁部31の内面側に突出する送風突起53Aと外面側に突出する送風突起53Bを構成し、両膨出部によって拡開されたスリット45が排出口52Aを構成するようになっている。
この場合、底壁部31の内面側に設けられる送風突起53Aは排出口52Aに対してロータ回転方向Rの後方側に配置され、底壁部31の外面側に設けられる送風突起53Bは排出口52Aに対してロータ回転方向Rの前方側に配置される。
【0037】
この実施形態のように、ロータヨーク28の底壁部31にスリット45を形成し、そのスリット45を拡開するようにスリット45の縁部を膨出変形させて送風突起53Aや53Bを形成するようにした場合には、強度面においても有利な構造を簡単な加工で製作することができる。なお、スリット45の縁部に形成する送風突起53A,53Bはいずれか一方のみであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
2…ブラシレスモータ
10…コイル
11…ステータ
12…ブラケット
13…回転軸
14…ロータ
15…駆動ユニット
50…放熱フィン
51…隙間通路
52…排出口
53…送風突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻回されるステータと、
前面側に前記ステータが固定設置されるブラケットと、
前記ブラケットの前面側に回転自在に取り付けられ、前記ステータに対向するマグネットが周壁部に取り付けられた有底円筒状のロータと、
前記ブラケットに一体に組み付けられ、前記コイルに対する通電を制御する駆動ユニットと、を備え、
前記ステータの前方側に配置される前記ロータの底壁部に、前記ロータと一体に回転して当該ロータの内側に空気の流れを生じさせる送風突起が設けられているブラシレスモータにおいて、
前記送風突起が、前記ロータの底壁部の内面側と外面側の少なくともいずれか一方に突設されるとともに、
前記ロータの底壁部のうちの前記送風突起とロータ回転方向で隣接する部位に、前記ロータの回転時に、前記送風突起との協働によって当該ロータの内部から空気を排出する排出口が設けられていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
前記送風突起は、前記ロータの底壁部の内面側に突設され、前記排出口は、前記底壁部上の前記送風突起のロータ回転方向の前方側に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記送風突起は、前記ロータの底壁部の外面側に突設され、前記排出口は、前記底壁部上の前記送風突起のロータ回転方向の後方側に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記送風突起と排出口とは、前記ロータの底壁部を部分的に切り起こすことによって形成されていることをことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
前記ブラケットの前面には放熱フィンが設けられ、当該放熱フィンの径方向外側には、前記ブラケットと前記ロータの間の隙間通路が連通していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110130(P2012−110130A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257089(P2010−257089)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】