説明

ブラシレスモータ

【課題】改善されたIPM型ブラシレスモータを提供する。
【解決手段】ブラシレスモータが、固定子と回転子とを有する。固定子は、固定子コアと、固定子巻線とを有する。固定子コアは、固定子ヨークと、固定子ヨークから半径方向内方に延びる歯とを有する。固定子巻線は、歯上に巻かれた集中コイルにより形成される。回転子は、回転子シャフトと、回転子シャフトに固定された回転子コアと、回転子コアに形成されたスロット内に固定された磁石とを有する。各磁石は、プレート状であり、回転子の軸方向及び半径方向の両方に延び、かつ、その厚さにわたって磁気的に帯電されるので、2つの隣接する磁石の間に回転子極が形成される。固定子ヨークの半径方向厚さ(Y)対歯本体の幅(T)の比は、0.4から0.7までである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関し、特定的には、永久磁石埋込型回転子を有するブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
IPM(Internal Permanent Magnet、永久磁石埋込)型の典型的なブラシレスモータは、固定子と、固定子に回転可能に取り付けられた回転子とを含む。固定子は、固定子コアと、固定子コアの歯の周りに巻かれた固定子巻線とを含む。回転子は、回転子シャフトと、回転子シャフトの上に固定された回転子コアと、回転子コア内のスロットに挿入された永久磁石とを含む。
【0003】
永久磁石は磁気伝導性の回転子コア内に埋め込まれているので、磁気漏れは、IPMブラシレスモータにとって問題である。さらに、固定子コアは磁気飽和のリスクを有し、磁気飽和はモータの制御を困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善されたIPM型ブラシレスモータに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の一態様において、本発明は、固定子コア及び固定子巻線を含む固定子を含み、固定子コアは固定子ヨークと固定子ヨークから半径方向内方に延びる歯とを含み、固定子巻線は歯上に巻かれた集中コイルであり、固定子に回転可能に取り付けられ、回転子シャフトと、回転子シャフトに固定された回転子コアと、回転子コアに形成されたスロット内に固定された磁石とを含む、回転子が設けられ、各磁石は、プレート状であり、回転子の軸方向及び半径方向の両方に延び、かつ、その厚さにわたって磁気的に帯電され、その結果2つの隣接する磁石により回転子極が形成され、固定子ヨークの半径方向厚さ(Y)対歯本体の幅(T)の比は0.4から0.7までである、ブラシレスモータを提供する。
【0006】
巻線スロットが隣接する歯の間に形成され、巻線スロットの開口部の幅(S)は、磁石の厚さ(M)より狭いことが好ましい。
回転子コアは、回転子シャフトに固定されたリング状内部と、磁石が埋め込まれるスロットによって複数の極部分に分割される、内部の周りのリング状外部と、内部を外部に結合するリング状結合部とを含むことが好ましい。
【0007】
回転子コアは、各々が2つの隣接する磁石間に形成された複数の孔を含むことが好ましい。
各孔は、2つの隣接する磁石間の回転子コアのそれぞれの部分内に形成され、磁石間の中程の半径方向の線上に配置されることが好ましい。
結合部はそれぞれの孔と半径方向に位置合わせされることが好ましい。
【0008】
結合部の最小幅対回転子コアの外径の比は、0.1から0.15までであることが好ましい。
回転子コアの外径対固定子コアの外径の比は、0.55から0.75までであることが好ましい。
固定子ヨークの半径方向厚さ(Y)対歯本体の幅(T)の比は、0.51から0.57までであることが好ましい。
固定子は12本の歯を含み、回転子は10個の磁石を含むことが好ましい。
【0009】
固定子巻線は3つの相に分割され、各相は複数の対のコイルを含み、コイルの対の各々は、隣接する歯上に反対方向に巻かれた2つの集中コイルを含むことが好ましい。
好ましい実施形態のブラシレスモータは、固定子ヨークと、ヨークから延びる複数の歯とを有する固定子コアを含む。固定子ヨークの半径方向厚さ対歯本体の幅の比は、磁気飽和のリスクを低下させるように設計される。
【0010】
ここで、本発明の好ましい実施形態を、単なる例として、添付の図面の図を参照しながら説明する。図中、1つより多い図に現れる同一の構造、要素、又は部分は、一般的に、これらが現れる全ての図において同じ参照番号で表記される。図に示される構成部品及び特徴の寸法は、一般的に、説明の便宜及び明確さのために選択されており、必ずしも縮尺通りに描かれていない。図を以下に列挙する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるブラシレスモータの等角図である。
【図2】端部キャップが取り除かれた状態の、図1のブラシレスモータの部分平面図である。
【図3】カバープレートが取り除かれた状態の、図1のブラシレスモータの平面図である。
【図4】図1のブラシレスモータの固定子コア及び固定子巻線の部分平面図である。
【図5】図1のブラシレスモータの固定子巻線の概略的な巻線図である。
【図6】図1のブラシレスモータの磁場分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるブラシレスモータを示す。このモータは、巻線型固定子と、IPM型の永久磁石回転子20とを含む。固定子は、モータのためのハウジングを形成する2つの端部キャップ15、16を含む。図2は、上部端部キャップが取り除かれ、回転子のカバープレートが省略された状態のモータを含む。固定子は、端部キャップにより保持される固定子コア10と、固定子コア10の歯12の周りに巻かれる固定子巻線14とを含む。回転子20は、端部キャップに固定された軸受により回転可能に支持される。
【0013】
図3は、回転子コアの構造を示すためにカバープレートが省略された状態の回転子20の平面図である。回転子20は、回転子シャフト21と、回転子シャフト21に固定された回転子コア22と、回転子コア22内に埋め込まれた永久磁石35と、回転子シャフト21に固定され、かつ、回転子コア22のそれぞれの端部に配置された2つのカバープレート(図示せず)とを含む。カバープレートは、回転子コアの軸方向端部を覆い、回転子のバランスをとるのにも使用される。磁石35は、プレート状であり、回転子コア22内のスロット29に軸方向に挿入される。各磁石35の半径方向中心線は、回転子シャフト21又はモータ軸線を通る。
【0014】
図3に示されるように、各磁石35は、その厚さにわたって磁気的に帯電している。例えば、表面35aはN極性であり、表面35bはS極性である。隣接する磁石35の隣接する表面は、回転子極30が間に形成されるように同じ極性を有する。好ましい実施形態において、回転子は、周方向に分布された10個の磁石35を有し、10個の回転子極30を形成する。
【0015】
回転子コア22は、リング状内部23と、リング状外部27と、内部23と外部27との間に結合された結合部26とを含む。ラミネーションごとに、内部23、結合部26及び外部27は、1つの一体構造として一体形成される。内部23は、回転子シャフト21に固定される。外部27は、周方向に延びるフィンガ31間の半径方向外端部が開いている半径方向に延びるスロット29によって分割される。磁石35は、スロット29に軸方向に挿入され、フィンガ31は、磁石がスロットから半径方向に逃れるのを防止する。内部23は、外縁部に形成され、かつ、周方向に離間配置された10個の突出部24を含む。突出部24は、スロット29内に延びてそれぞれの磁石35に接触するか又はこれを圧迫する。突出部24は、磁石がスロット内で半径方向内方に移動するのを防止し、突出部が磁石により弾性的に変形された場合、突出部24は、磁石を圧迫してフィンガと接触するようにし、それによりスロット内での磁石の半径位置が固定される。外部27は、10個の孔28を有し、その各々が対応する2つの隣接する磁石35の間に形成される。孔28は、回転子コア22の重量を減少させる。孔28は結合部26と協働し、磁気飽和領域を生成することで内部23への磁気漏れを減少させることによって、モータ性能を改善させる。
【0016】
図3及び図6に示されるように、各々の回転子極30の内部に孔28が形成されることが好ましい。孔28は、回転子極を形成する隣接する磁石間の中程の半径方向の線上に形成されることが好ましい。つまり、孔28は、回転子極30を形成する回転子コアの各部分の周方向中心に形成される。したがって、孔28は、磁石35により回転子極内に形成された磁場を均等に分割し、案内する。各結合部26は、磁気漏れを低減させるために、それぞれの孔28と半径方向に位置合わせされることが好ましい。結合部26及び突出部24は、交互に配置される。より小さい孔25が、それぞれの結合部26、それぞれの磁石35の内端部、内部23、外部27、及び突出部24によって形成される。小さい孔25の磁気抵抗が大きいために、内部23への磁気漏れはさらに減少される。結合部26はリブ状又はストリップ状であり、半径方向に延びている。好ましい実施形態においては、結合部26の長さはその半径方向寸法により定められ、結合部26の幅はその周方向寸法により定められ、結合部26の高さはその軸方向寸法により定められる。結合部26の幅対回転子コア22の外径の比は、約0.1から0.15までである。この構成において、結合部26は、結合部26内で磁気飽和を容易に達成して磁気漏れを減少させながら、変形を防止するのに十分な強度をもつ。この構成を有する回転子は、3,000RPMから20,000RPMまでの範囲の速度を有するモータを必要とする用途にとって特に有利である。
【0017】
孔28の側壁から対応する磁石35までの最小距離は、結合部26の幅の約1.1倍から3倍までである。磁石35の半径方向長さは、可能な限り長いものであるので、磁場の大部分が磁石35を通過する。磁石35の半径方向外縁部を露出するスロット29の開放端により、磁気漏れがさらに減少される。
【0018】
図4は、固定子コア10及び固定子巻線を示すが、固定子コアの構造を示すために、固定子巻線の部分を形成する3つのコイルは省略されている。固定子コア10は、ラミネーションを軸方向に積層することによって形成される。固定子コア10は、リング状固定子ヨーク11と、固定子ヨーク11から半径方向内方に延びる複数の歯12とを含む。固定子巻線は、巻線が多数のコイルによって形成され、各コイルが単一の歯の周りに巻かれることを意味する、集中巻(concentrated winding)である。したがって、固定子巻線は、各々がそれぞれの歯12の周りに巻かれる12個のコイル14を含む。各々の歯12は、半径方向に延びる歯本体13と、歯本体の遠位端に形成された冠部分17とを含む。電場分布を最適化し、磁気漏れを減少させるために、固定子ヨーク11の半径方向厚さYは、歯本体の周方向幅Tの約40パーセントから70パーセントまでである。ヨーク厚さY対歯本体の幅Tの比は、0.51から0.57までである。好ましい実施形態においては、ヨーク厚さYは約5mmであり、歯本体の幅Tは約9mmであり、ヨーク厚さY対歯本体の幅Tの比は約0.56である。
【0019】
巻線スロットは、固定子コイル14を受けるように隣接する歯12の間に形成される。隣接する歯の冠17の間に開いている巻線スロットの幅Sは、磁石35の厚さMより狭いことが好ましい。
【0020】
図5の概略的な巻線図を参照すると、固定子巻線は、それぞれの歯12a〜12lの周りに巻かれた12個の集中コイル14を含む。12個のコイルは、3つの相、すなわちU相、V相及びW相に分割される。各相は、各対が2つの隣接する歯の周りに反対方向に巻かれた2つの集中コイル14を含む、2対のコイルを含む。この2対のコイルは、正反対に配置される。例えば、U相は、歯12a及び12b、12g及び12h上に巻かれた2対のコイルを含む。歯12a、12bの対及び歯12g、12hの対は、回転子コア22の直径方向の反対位置に配置される。歯12a上のコイルは時計回りに巻かれ、隣接する歯12b上のコイルは反時計回りに巻かれる。同様に、V相は、歯12c及び12d、12i及び12j上に巻かれた2対のコイルを含む。W相は、歯12e及び12f、12k及び12l上に巻かれた2対のコイルを含む。これらの3つの相は、星の形状で接続され、U相、V相及びW相の一端が、中間点Noにおいて互いに結合される。
【0021】
上述した実施形態において、回転子コア22の外径対固定子コアの外径の比は、約0.55から0.75までであり、好ましくは0.65である。ブラシレスモータは、水抽出器又は乾燥装置に用いるのに特に適している。
【0022】
本出願の説明及び特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」、「包含する(include)」、「含有する(contain)」及び「有する(have)」、並びにその変形は、記述された項目の存在を明記するように包括的な意味で使用されるものであり、付加的な項目の存在を排除するものではない。
【0023】
本発明は1つ又は複数の好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者は、種々の変更が可能であることを理解すべきである。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきである。
【符号の説明】
【0024】
10:固定子コア
11:固定子ヨーク
12、12a〜12l:歯
14:コイル(固定子巻線)
15、16:端部キャップ
20:回転子
21:回転子シャフト
22:回転子コア
23:内部
24:突出部
25、28:孔
26:結合部
27:外部
29:スロット
30:回転子極
31:フィンガ
35:永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コア及び固定子巻線を含む固定子を含み、前記固定子コアは固定子ヨークと前記固定子ヨークから半径方向内方に延びる歯とを含み、前記固定子巻線は前記歯上に巻かれた集中コイルであり、
前記固定子に回転可能に取り付けられ、回転子シャフトと、前記回転子シャフトに固定された回転子コアと、前記回転子コアに形成されたスロット内に固定された磁石とを含む、回転子が設けられ、
各磁石は、プレート状であり、前記回転子の軸方向及び半径方向の両方に延び、かつ、その厚さにわたって磁気的に帯電され、2つの隣接する磁石により回転子極が形成され、
前記固定子ヨークの半径方向厚さ(Y)対前記歯本体の幅(T)の比は0.4から0.7までであることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
巻線スロットが隣接する歯の間に形成され、前記巻線スロットの開口部の幅(S)は、前記磁石の厚さ(M)より狭いことを特徴とする、請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記回転子コアは、
前記回転子シャフトに固定されたリング状内部と、
前記磁石が埋め込まれる前記スロットによって複数の極部分に分割される、前記内部の周りのリング状外部と、
前記内部を前記外部に結合するリング状結合部と、
を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記回転子コアは、各々が2つの隣接する磁石間に形成された複数の孔を含むことを特徴とする、請求項3に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
各孔は、2つの隣接する磁石間の前記回転子コアのそれぞれの部分内に形成され、前記磁石間の中程の半径方向の線上に配置されることを特徴とする、請求項4に記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
前記結合部はそれぞれの孔と半径方向に位置合わせされることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のブラシレスモータ。
【請求項7】
前記結合部の最小幅対前記回転子コアの外径の比は、0.1から0.15までであることを特徴とする、請求項3、請求項4、請求項5、又は請求項6に記載のブラシレスモータ。
【請求項8】
前記回転子コアの外径対前記固定子コアの外径の比は、0.55から0.75までであることを特徴とする、請求項1から請求項7までに記載のブラシレスモータ。
【請求項9】
前記固定子ヨークの半径方向厚さ(Y)対前記歯本体の幅(T)の比は、0.51から0.57までであることを特徴とする、請求項1から請求項8までに記載のブラシレスモータ。
【請求項10】
前記固定子は12本の歯を含み、前記回転子は10個の磁石を含むことを特徴とする、請求項1から請求項9までに記載のブラシレスモータ。
【請求項11】
前記固定子巻線は3つの相に分割され、各相は複数の対のコイルを含み、コイルの対の各々は、隣接する歯上に反対方向に巻かれた2つの集中コイルを含むことを特徴とする、請求項1から請求項10までに記載のブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39863(P2012−39863A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−185295(P2011−185295)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(502458039)ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム (90)
【Fターム(参考)】