説明

ブラシ研磨装置及びブラシ研磨方法

【課題】研磨ブラシの磨耗状態を正確に把握してドレッシング実施時期を設定することができ、研磨ブラシの磨耗による加工精度の低下を防止して、金属リングに対する高精度な研磨を施すことが可能となるブラシ研磨装置及びブラシ研磨方法を提供する。
【解決手段】リング回転手段により金属リングWを回転させ、研磨機構3により研磨ブラシ2を金属リングWの回転軌道を横切るように移動させる。研磨ブラシ2を構成している素線2aの先端部の磨耗形状を撮像手段20で撮像し、撮像された素線2aの先端部の磨耗形状に基づいて、判定手段23が研磨ブラシ2のドレッシング実施時期を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定外径寸法の棒状の研磨材入り素線を複数本束ねて形成した研磨ブラシによって金属リングを研磨するブラシ研磨装置及びブラシ研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機に採用される動力伝達用のベルトにおいては、環状に積層配列された複数のエレメントを複数の金属リングを積層してなる積層リングにより結束したものが用いられている。この種の積層リングを構成する金属リングは、円筒状の金属ドラムを所定幅毎に輪切りにすることによって形成される。そして、円筒状のドラムから切断された金属リングは側端縁が極めて鋭利な状態であるため、金属リングの側端縁を研磨して側端縁(コバ部)を高精度な湾曲形状に仕上げることが必要となる。
【0003】
従来、研磨材入りの素線を束ねて形成した研磨ブラシを用いて、金属リングの側端縁に研磨加工を施す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来の技術においては、金属リングをその周方向に回転させつつ金属リングの一方の側端縁に研磨ブラシを当接させ、研磨ブラシを金属リングの回転軌道を横切るように移動させて該金属リングの側端縁を研磨する。このとき、研磨ブラシの金属リングへの切込み量(金属リングに当接させる研磨ブラシの長さ)を加減することにより、金属リングの側端縁の形状を所望の湾曲形状に研磨することができる。なお、金属リングの両側端縁を研磨する場合、金属リングの一方の側端縁を研磨した後、同じように金属リングの他方の側端縁を研磨すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−21994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の研磨ブラシは、一般に砥粒等の研磨材入りの多数の樹脂製線材を束ねることによって形成されているが、金属リングの回転軌道を横切る際に、研磨ブラシが常に同じ方向から金属リングに当接して当接方向に沿ってなびくように曲がった状態で研磨が行われるため、長期にわたって金属リングの研磨加工に使用した場合には研磨ブラシに磨耗が生じる。
【0006】
研磨ブラシが磨耗すると、十分な研磨量が得られなくなって金属リングの側端縁の湾曲形状が不均一となる。このため、磨耗した研磨ブラシの毛先を整えるドレッシングが行われる。磨耗した研磨ブラシのドレッシングは、一般に所定回数の加工サイクル毎に行われるが、タッチセンサや非接触の位置センサ等を用いて測定した研磨ブラシの毛足寸法が予め設定された長さまで短くなった時点でドレッシングを実施することが行われている。
【0007】
しかし、研磨ブラシによる研磨を続けていると、研磨ブラシの毛足寸法が短くなっていないにもかかわらず、研磨した金属リングの側端縁が均一な湾曲形状にならない場合がある。このため、タッチセンサや非接触の位置センサ等により研磨ブラシの毛足寸法が短くなったことが検出されたときには、ドレッシングを実施する時期として既に遅い場合があり、適正なドレッシング実施時期を設定することができない。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、研磨ブラシの磨耗状態を正確に把握してドレッシング実施時期を設定することができ、研磨ブラシの磨耗による加工精度の低下を防止して、金属リングに対する高精度な研磨を施すことが可能となるブラシ研磨装置及びブラシ研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、無端帯状の金属リングをその一方の端縁を露出させて円形状に保持し、該金属リングをその円周方向に回転させるリング回転手段と、所定外径寸法の棒状の研磨材入り素線を複数本束ねて形成した研磨ブラシを、前記リング回転手段によって回転される金属リングの回転軌道を横切るように移動させると共に該金属リングの一方の端縁に当接させて該金属リングを研磨する研磨機構とを備えるブラシ研磨装置において、前記研磨ブラシを構成している素線の先端部の磨耗形状を撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された素線の先端部の磨耗形状に基づいて研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
研磨ブラシは、樹脂に砥粒等の研磨材を混入させた多数の棒状の素線を束ねることによって形成されているが、金属リングの回転軌道を横切る際に、研磨ブラシが常に同じ方向から金属リングに当接して当接方向に沿ってなびくように曲がった状態で研磨が行われるため、長期に亘って金属リングの研磨加工に使用した場合には研磨ブラシを構成している素線の1本1本の夫々に偏磨耗が生じる。そして、このときの各素線の先端部の磨耗形状は、研磨ブラシの磨耗の進行度合いに対応した形状となる。
【0011】
本発明によれば、前記撮像手段により撮像した素線の磨耗形状に基づいて前記判定手段が研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定するので、研磨ブラシの磨耗の進行度合いを正確に把握することができる。そして、研磨ブラシの磨耗が金属リングに対する加工形状に影響が出始める直前に、ドレッシング実施時期を設定することことができ、この時期にドレッシングを行うことにより、研磨ブラシの磨耗による加工精度の低下を防止することができる。
【0012】
また、本発明のブラシ研磨装置において、前記判定手段は、前記撮像手段により撮像された素線の先端部の磨耗形状から該素線の先端の幅寸法と磨耗により該素線に形成される傾斜面の傾斜角度とを測定し、該測定結果に基づいて研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定することを特徴とする。
【0013】
本発明者は、各種試験を行うことにより、素線の磨耗形状のうち、素線の先端の幅寸法の変化と、磨耗により形成される傾斜面の傾斜角度の変化とが、金属リングに対する加工精度の低下に大きく関係していることを知見した。この知見に基づき、本発明においては、前記判定手段による判定に前記幅寸法と前記傾斜角度とを用いる。これにより、研磨ブラシの磨耗の進行度合いを正確に把握することができ、研磨ブラシのドレッシング実施時期を適正に判定することができる。
【0014】
また、本発明のブラシ研磨装置において、前記判定手段の判定結果によりドレッシング実施時期とされた研磨ブラシの毛先を整えるドレッシング手段を備えることが好ましい。これによれば、前記判定手段によりドレッシング実施時期となった研磨ブラシに対して即座にドレッシング作業が行え、磨耗の進行を確実に抑えることができる。
【0015】
また、本発明は、無端帯状の金属リングをその一方の端縁を露出させて円形状に保持し、該金属リングをその円周方向に回転させるリング回転工程と、所定外径寸法の棒状の研磨材入り素線を複数本束ねて形成した研磨ブラシを、前記リング回転工程で回転している金属リングの回転軌道を横切るように移動させると共に該金属リングの一方の端縁に当接させて該金属リングを研磨する研磨工程とを備えるブラシ研磨方法において、前記研磨工程の後に、前記研磨ブラシを構成している素線の先端部の磨耗形状を撮像手段により撮像する撮像工程と、該撮像手段により撮像された素線の先端部の磨耗形状に基づいて研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定する判定工程と、該判定工程の判定結果によりドレッシング実施時期とされた研磨ブラシの毛先を整える ドレッシング工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のブラシ研磨方法によれば、前記リング回転工程により回転される金属リングに対して前記研磨工程が行われ、金属リングが研磨される。次いで、前記撮像工程により研磨ブラシを構成している素線の先端部の磨耗形状の画像が得られる。この画像は、研磨ブラシの磨耗の進行度合いに対応した形状を示しているので、続く判定工程においては、研磨ブラシの磨耗の進行度合いを正確に把握することができ、研磨ブラシのドレッシング実施時期が適正に判定される。そして、判定工程によりドレッシング実施時期と判定された研磨ブラシは、続くドレッシング工程によりドレッシングされて毛先が整られる。これにより、研磨ブラシの磨耗状態に応じて研磨ブラシを確実にドレッシングすることができ、前記研磨工程においては、研磨ブラシの磨耗による加工精度の低下を防止して、金属リングに対する高精度な研磨を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の概略構成を示す説明図。
【図2】金属リングに対する研磨ブラシの動作を模式的に示す説明的平面図。
【図3】研磨ブラシを構成する素線の先端部の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のブラシ研磨装置1は、図1に示すように、複数の研磨ブラシ2を備える研磨機構3と、研磨ブラシ2により研磨加工を施す金属リングWを保持するテーブル4と、研磨加工に伴い磨耗した研磨ブラシ2の毛先を整えるドレッシング手段5と、研磨加工動作及びドレッシング時の動作を制御する制御手段6とを備えている。
【0019】
研磨機構3は、図1に示すように、複数の研磨ブラシ2を円周上に配列して保持する円盤状のブラシヘッド7を備えている。ブラシヘッド7は、昇降フレーム8に回転自在に支持されている。昇降フレーム8は、機台9上に起立する支柱10の縦レール11に沿って昇降自在に設けられ、図示しない昇降駆動装置により昇降される。
【0020】
また、ブラシヘッド7は、その中心部に連結された回転軸12を備える図示しないモータ等の回転駆動手段により回転駆動される。ブラシヘッド7の回転により、研磨ブラシ2は円周軌道に沿って移動する(図2参照)。
【0021】
ブラシヘッド7の下方には、研磨ブラシ2の毛足方向先端側(下端側)における後述の各素線2a間の離反拡開を防止すると共に、研磨ブラシ2の先端の撓みを規制する規制板13が設けられている。規制板13は図示しない駆動手段により上下方向に移動され、研磨ブラシ2の先端のトリム長(規制板13の下方への突出寸法)が調節できるようになっている。
【0022】
支柱10は、機台9上の横レール14に沿って水平方向に移動自在に設けられている。支柱10は、図示しない数値制御移動用駆動装置により、ブラシヘッド7をテーブル4上に対向するの作業位置Aとテーブル4上から待避させる待避位置Bとに移動させる。
【0023】
また、作業位置Aと待避位置Bとの間のブラシヘッド7の通過位置には、前記ドレッシング手段5が配設されている。ドレッシング手段5は、支持台15と、支持台15上の所定の高さ位置に設けられたドレッシング部材16とで構成されている。ドレッシング部材16は、金属製母材の外表面に砥粒を電着することにより形成されたものである。ドレッシング部材16に研磨ブラシ2の先端部を摺接させることにより、研磨ブラシ2の毛先のドレッシングが行えるようになっている。
【0024】
研磨ブラシ2は、図3(a)に示すように、複数の素線2aを束ねたものであり、各素線2aは、研磨材入りの樹脂を材料として所定の外径を有する細長い丸棒状に形成されている。複数の素線2aは結束具17により基端部(上端部)がカシメられて結束されており、この結束具17を介してブラシヘッド7に保持されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、結束具17に隣接して素線2aを結束する熱収縮性合成樹脂製の結束帯18が設けられており、これによって研磨ブラシ2の腰(撓み量)が適度に調節されている。また、図示を省略したが、研磨ブラシ2はブラシヘッド7に自転可能に保持されており、図示しないブラシ自転用の駆動手段が加工の1サイクル毎に研磨ブラシ2を所定角度(例えば120°)自転させるようになっている。
【0026】
図2に示すように、テーブル4には、円形状に配設された複数のリング保持手段19(リング回転手段)が設けられている。各リング保持手段19は、図示しないクランプ手段により金属リングWをその一方の端縁を露出させて円形状に保持する。また、リング保持手段19は、テーブル4の内部に設けられた図示しないモータにより回転駆動され、これによって金属リングWをその周方向に回転させる。
【0027】
ブラシヘッド7に保持された各研磨ブラシ2は、作業位置Aに移動した後、ブラシヘッド7の回転により、各リング保持手段19に保持されて回転する各金属リングWの回転軌道を横切るように移動し、この際に各金属リングWの側端縁に当接して各金属リングWに研磨加工を施す。
【0028】
金属リングWは、円筒状の金属ドラムを所定幅毎に輪切りにすることによって無端帯状に形成されたものである。円筒状のドラムから切断された直後の金属リングWは側端縁が極めて鋭利な状態となる。この金属リングWの側端縁に研磨ブラシ2を当接させて研磨加工を施すことで、金属リングWの側端縁が所定の湾曲形状に加工される。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、テーブル4上には、CCDカメラ等の撮像手段20が設けられている。撮像手段20は各金属リングWを研磨して移動する研磨ブラシ2の先端部を視野に捕らえており、当該研磨ブラシ2を構成する素線2aの先端部を撮像する。撮像手段20による素線2aの先端部の画像データは制御手段6に入力される。
【0030】
即ち、撮像手段20は、図3(a)に示すように、研磨ブラシ2の素線2aの先端の形状を撮像して画像データとする。素線2aは、所定の外径を有する細長い丸棒状に形成されているので、磨耗のない新品の状態では、側面視した先端の幅寸法Tが所定の外径に対応する十分な長さを有する。素線2aは、金属リングWの研磨加工を行うことにより磨耗する。
【0031】
研磨加工時には、研磨ブラシ2が常に同じ方向から金属リングWに当接し、素線2aはこのときの当接方向に沿ってなびくように曲がった状態となる。このため、金属リングの研磨加工後の素線2aの先端は、図3(b)に示すように、金属リングWへの当接側に傾斜面2bが形成されて偏磨耗状態となる。このように磨耗が生じた素線2aの先端部を撮像した撮像手段20は、図3(b)に示す磨耗形状を画像データとして制御手段6に送る。なお、図3(c)に示す素線2aの先端形状は、ドレッシング後の形状であるため、これについては後述する。
【0032】
制御手段6は、その機能の一部として、撮像手段20からの画像データを用いて素線2aの先端の幅寸法Tを測定する第1測定部21と、磨耗により素線2aに形成される傾斜面2bの傾斜角度θを測定する第2測定部22と、研磨ブラシ2のドレッシング実施時期(ドレッシングが必要な磨耗状態となったこと)を判定する判定部23とを備えている。
【0033】
判定部23は、第1測定部21により測定された前記寸法Tと第2測定部22により測定された前記角度θとに基づいて判定処理を行う。即ち、判定部23は、第1測定部21により測定された前記寸法Tが予め設定された寸法判定値(例えば、素線2aの外径が3mmであるとき0.8mm〜1.5mmから選択された寸法)よりも小さく、且つ、第2測定部22により測定された前記角度θが予め設定された角度判定値(例えば、上記の寸法判定値における各条件に対応して30°〜50°から選択された角度)よりも大きいとき、研磨ブラシ2のドレッシング実施時期とする。なお、寸法判定値及び角度判定値は、素線2aの材質や外径等の各種条件に応じて適正な値が設定されるもであり、上記の数値に限られるものではない。
【0034】
判定部23により研磨ブラシ2のドレッシング実施時期と判定されたとき、制御手段6は、研磨加工の終了後、次に研磨する金属リングが投入される間等にドレッシングを行うよう研磨機構3を制御する。
【0035】
以上のように構成されたブラシ研磨装置1によって、金属リングWの側端縁の研磨を行うときには、先ず、金属リングWを各リング保持手段19に装着し、テーブル4上に一側端縁を露出させて円形状に保持する。次いで、各リング保持手段19が回転することによって、金属リングWが夫々の位置で回転する(リング回転工程)。
【0036】
続いて、制御手段6が支柱10の移動によりブラシヘッド7をテーブル4上の作業位置Aに移動させ、研磨ブラシ2をその先端部が金属リングWに当接するまで下降させる。この下降に先立って、制御手段6は、ブラシヘッド7を回転させる。これにより、図2に示すように、研磨ブラシ2は、各金属リングWを横切ってその一方の側端縁に当接するように移動し、ブラシヘッド7の回転に伴う研磨ブラシ2の移動と金属リングWの回転とにより、金属リングWの一方の側端縁全周にわたる研磨加工が行なわれる(研磨工程)。
【0037】
一方、テーブル4上に設けられている撮像手段20は、金属リングWの研磨加工を行って回転する研磨ブラシ2の素線2aの先端部を撮像し、このときの画像データを制御手段6に送る(撮像工程)。制御手段6は、図3(b)に示すように磨耗した素線2aの先端部の画像データから、第1測定部21及び第2測定部22により幅寸法T及び傾斜角度θを測定する。この測定結果は判定部23へ送られ、判定部23が、研磨ブラシ2がドレッシング実施時期にきているか否かを判定する(判定工程)。
【0038】
各金属リングWの側端縁の研磨加工が終了した後には、テーブル4上から各金属リングWを取り外す作業工程となるため、制御手段6は、支柱10の移動によりブラシヘッド7を待避位置Bに向って移動させる。このとき、研磨ブラシ2がドレッシング実施時期にきていることを判定部23が判定していた場合には、制御手段6は、支柱10の移動によりテーブル4上からドレッシング手段5に向ってブラシヘッド7を移動させ、ドレッシング部材16に研磨ブラシ2の先端部を当接させつつブラシヘッド7を回転させる(ドレッシング工程)。こうすることにより、図3(c)に示すように、研磨ブラシ2を構成する各素線2aの磨耗部分が削りとられ、研磨ブラシ2の毛先が整えられる。
【0039】
そして、研磨ブラシ2のドレッシングが終了すると、制御手段6はブラシヘッド7を待避位置Bに移動させ、テーブル4上に新たに金属リングWが保持されるまで支柱10の移動を停止状態とする。この待機中においては、制御手段6はブラシヘッド7の下方に配設された規制板13を上昇させ、磨耗部分が除去されて全長が短くなった研磨ブラシ2のトリム長(規制板13の下方への突出寸法)を研磨作業前の所定の長さに調節する。そして、テーブル4に金属リングWが保持された後には、上述の工程が繰り返される。これにより、金属リングWに対する研磨ブラシ2の切込み量を所定の量に維持することができ、高精度な研磨加工を行うことができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、研磨機構3における作業位置Aと待避位置Bとの間にドレッシング手段5を設け、これにより、磨耗状態の研磨ブラシ2を迅速に効率良くドレッシングするようにした構成を示したが、ドレッシング手段5はこれに限るものではない。例えば、ドレッシング手段5を可動式とし、判定部23が研磨ブラシ2のドレッシング実施時期であることを判定したとき、待避位置Bのブラシヘッド7の下方に移動させて各研磨ブラシ2に対してドレッシングを行うようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、テーブル4上に撮像手段20を設けて、金属リングWの研磨加工を行っている移動中の研磨ブラシ2を撮像するようにしたが、撮像手段20の配設位置はテーブル4上に限るものではない。例えば、図示しないが、作業位置Aと待避位置Bとの間に撮像手段20を配設し、金属リングWに対する加工サイクル毎に研磨ブラシ2の素線2aの先端部を撮像するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
W…金属リング、1…ブラシ研磨装置、2…研磨ブラシ、2a…素線、3…研磨機構、5…ドレッシング手段、19…リング保持手段(リング回転手段)、20…撮像手段、23…判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状の金属リングをその一方の端縁を露出させて円形状に保持し、該金属リングをその円周方向に回転させるリング回転手段と、所定外径寸法の棒状の研磨材入り素線を複数本束ねて形成した研磨ブラシを、前記リング回転手段によって回転される金属リングの回転軌道を横切るように移動させると共に該金属リングの一方の端縁に当接させて該金属リングを研磨する研磨機構とを備えるブラシ研磨装置において、
前記研磨ブラシを構成している素線の先端部の磨耗形状を撮像する撮像手段と、
該撮像手段により撮像された素線の先端部の磨耗形状に基づいて研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定する判定手段とを備えることを特徴とするブラシ研磨装置。
【請求項2】
請求項1記載のブラシ研磨装置において、
前記判定手段は、前記撮像手段により撮像された素線の先端部の磨耗形状から該素線の先端の幅寸法と磨耗により該素線に形成される傾斜面の傾斜角度とを測定し、該測定結果に基づいて研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定することを特徴とするブラシ研磨装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブラシ研磨装置において、
前記判定手段の判定結果によりドレッシング実施時期とされた研磨ブラシの毛先を整えるドレッシング手段を備えることを特徴とするブラシ研磨装置。
【請求項4】
無端帯状の金属リングをその一方の端縁を露出させて円形状に保持し、該金属リングをその円周方向に回転させるリング回転工程と、所定外径寸法の棒状の研磨材入り素線を複数本束ねて形成した研磨ブラシを、前記リング回転工程で回転している金属リングの回転軌道を横切るように移動させると共に該金属リングの一方の端縁に当接させて該金属リングを研磨する研磨工程とを備えるブラシ研磨方法において、
前記研磨工程の後に、前記研磨ブラシを構成している素線の先端部の磨耗形状を撮像手段により撮像する撮像工程と、
該撮像手段により撮像された素線の先端部の磨耗形状に基づいて研磨ブラシのドレッシング実施時期を判定する判定工程と、
該判定工程の判定結果によりドレッシング実施時期とされた研磨ブラシの毛先を整える ドレッシング工程とを備えることを特徴とするブラシ研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−218081(P2012−218081A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83492(P2011−83492)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】