説明

ブレーキ制御装置およびこれを備えたブレーキシステム

【課題】通常の車両走行中のブレーキ作動時でのブレーキ異音の発生を効果的に抑制して、車両の静粛性や乗員の快適性を効果的に向上する。
【解決手段】ブレーキ液圧検出部43,44,45,46で検出したブレーキ液圧のデータ
、ブレーキパッド温度検出部47,48,49,50で検出したブレーキパッド温度のデー
タ、異音発生検出部52,53,54,55のブレーキ異音の発生の情報に基づいて異音の
発生エリアが記憶部58に記録される。異音発生条件成立判定部59が、通常走行中のブレーキ作動時のブレーキ力のデータおよびブレーキパッド温度のデータが記憶部58の異音の発生エリアになったと判定したとき、ブレーキ液圧変化信号出力部61がブレーキ液圧変化信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行中のブレーキ作動時に、ブレーキ力を制御して異音の発生を抑制するブレーキ制御装置およびこれを備えたブレーキシステムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のブレーキシステムにおいて、ブレーキ効率等のブレーキ本来の性能に影響を及ぼすことなく、クリープ現象により車両が発進する際に発生するブレーキの異音を防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のブレーキシステムでは、車両の微速発進時にブレーキ油圧が異音発生領域に達すると速やかに異音発生領域外に減圧される。これにより、ブレーキの異音の発生時間がきわめて短時間となり、異音の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−91185号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に記載されたブレーキの異音防止では、クリープ現象による車両の微速発進時におけるブレーキの異音を防止するだけであり、車両走行中のブレーキ作動時に発生する異音の発生についてはまったく考慮されていない。一方、近年においては、車両走行中における車両の静粛性やドライブ時の乗員の快適性がますます求められている。
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1に記載のブレーキシステムでは、車両走行中のブレーキ作動時での異音の発生について考慮されていないため、前述のような車両の静粛性や乗員の快適性の要望には、十分にかつ効果的に応えることはできないという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、通常の車両走行中のブレーキ作動時でのブレーキ異音の発生を効果的に抑制して、車両の静粛性や乗員の快適性を効果的に向上することのできるブレーキ制御装置およびこれを備えたブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明のブレーキ制御装置は、ブレーキ力を変化させるブレーキ力可変部と、前記ブレーキ力を検出するブレーキ力検出部と、ブレーキパッド温度を検出するブレーキパッド温度検出部と、ブレーキ作動時での異音の発生を検出する異音発生検出部と、前記ブレーキ力可変部を制御する制御部とを備え、前記制御部が、通常の車両走行中のブレーキ作動時、前記ブレーキ力検出部で検出した前記ブレーキ力のデータ、前記ブレーキパッド温度検出部で検出した前記ブレーキパッド温度のデータ、前記異音発生検出部で検出した異音の発生の情報を記録する記憶部と、ブレーキ作動時、前記ブレーキ力検出部で検出した前記ブレーキ力および前記ブレーキパッド温度検出部で検出した前記ブレーキパッド温度が、前記記憶部に記録されている前記ブレーキ力のデータ、前記ブレーキパッド温度のデータおよび前記異音の発生の情報に基づいて設定された異音の発生エリアになることで異音発生条件が成立したかを判定する異音発生条件成立判定部と、前記異音発生条件成立判定部で異音発生条件が成立したと判定されたとき、成立した前
記異音発生条件を解消するブレーキ液圧変化信号を前記ブレーキ力可変部に出力するブレーキ液圧変化信号出力部とを有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明のブレーキ制御装置は、前記記憶部が異音発生条件表を有し、前記ブレーキ力のデータ、前記ブレーキパッド温度のデータ、および前記異音の発生の情報が、前記異音発生条件表に記録されることを特徴としている。
【0009】
更に、本発明のブレーキ制御装置は、車両減速度を検出する減速度検出部を備え、前記ブレーキ力可変部、前記ブレーキ力検出部、前記ブレーキパッド温度検出部、および前記異音発生検出部が、それぞれ左前輪、右前輪、左後輪、および右後輪毎に配設されており、前記制御部が、前記左前輪、前記右前輪、前記左後輪、および前記右後輪のうち、前記異音発生条件が成立したと判定された車輪のブレーキ力が前記ブレーキ力可変部により変化されたとき、前記左前輪、前記右前輪、前記左後輪、および前記右後輪のうち、前記異音発生条件が成立していない残りの車輪のブレーキ力を、前記減速度検出部で検出された前記車両減速度が、前記変化された車輪のブレーキ力が変化されない場合に生じる車両減速度となるブレーキ力にするように前記ブレーキ力可変部を制御することを特徴としている。
【0010】
更に、本発明のブレーキ制御装置は、前記制御部が、前記左前輪、前記右前輪、前記左後輪、および前記右後輪のうち、前記異音発生条件が成立したと判定された車輪のブレーキ力を減少または増大するとともに、前記異音発生条件が成立しないと判定された車輪のブレーキ力を増大または減少することを特徴としている。
【0011】
一方、本発明のブレーキシステムは、ブレーキ作動を行うブレーキ操作部材と、前記ブレーキ操作部材の操作によりブレーキ力を発生するブレーキ力発生部と、前記ブレーキ力発生部により発生されたブレーキ力で車輪にブレーキをかけるブレーキパッドと、前記ブレーキ力によるブレーキ作動を制御するブレーキ制御装置とを少なくとも備えるブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ制御装置が前述のブレーキ制御装置のいずれか1つであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明に係るブレーキ制御装置およびブレーキシステムによれば、ブレーキ作動中にブレーキ力およびパッド温度が検出されるとともに、ブレーキ異音(ブレーキの鳴き)の発生が検出される。また、ブレーキ異音の発生が検出されたとき、このブレーキ異音発生時のブレーキ力およびパッド温度のデータが記憶部に記録されるとともに異音発生エリアが設定される。そして、ブレーキ作動中に検出したブレーキ力およびパッド温度が記憶部に設定された異音発生エリア内に位置することで異音発生条件が成立したと判断されたときには、異音発生条件が成立したと判断された車輪のブレーキ力が異音発生エリア外に位置するように急減少または急増大されて、異音発生条件の成立が解消されるようにしている。これにより、ブレーキ異音の発生を効果的に抑制することができるとともに、仮にブレーキ異音が発生してもきわめて短時間にブレーキ異音を消滅することができる。したがって、車両走行中の車両の静粛性をより一層向上することが可能になるとともに、ブレーキ異音による乗員の違和感を防止してドライビングの快適性を向上することができる。
【0013】
また、異音発生条件が成立した車輪のブレーキ力を減少または増大により変化させることに伴い、異音発生条件が成立していない車輪のブレーキ力を、増大または減少により逆に変化させている。これにより、異音発生条件が成立した車輪のブレーキ力を減少または増大により変化させても、異音発生条件が成立した車輪のブレーキ力を変化させない場合の車両減速度と同じかまたはほぼ同じになるように、つまり全体の車両減速度が変化しな
いように制御して、全体のブレーキをバランスさせることができる。
このようにして、本発明のブレーキ制御装置よれば、ブレーキ力の増減制御により、全体の車両減速度を変化させることなく、ブレーキ作動時の異音の発生を効果的に抑制可能となる。
【0014】
更に、このようにブレーキ液圧の増減制御によりブレーキ作動時の異音の発生が抑制可能となることで、ブレーキ作動時の異音対策を不要にできるので、コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るブレーキ制御装置の実施の形態の一例を備えるブレーキシステムを模式的に示す図である。
【図2】本発明に係るブレーキ制御装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【図3】図2に示す例のブレーキ制御装置の異音発生条件表の一例を示し、(a)は左前輪についての異音発生条件を示す図、(b)は右前輪についての異音発生条件を示す図である。
【図4】図2に示す例のブレーキ制御装置の異音発生条件表の一例を示し、(a)は左後輪についての異音発生条件を示す図、(b)は右後輪についての異音発生条件を示す図である。
【図5】本発明のブレーキ液圧の増減制御を行わない場合のブレーキの異音発生の問題を説明する図である。
【図6】前後輪のブレーキ液圧の増減制御の一例について説明する図である。
【図7】前後輪のブレーキ液圧の増減制御の他の例について説明する図である。
【図8】ブレーキ液圧の増減制御のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかるブレーキシステムの実施の形態の一例を模式的に示す図、図2は本発明に係るブレーキ制御装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、この例のブレーキシステム1はX配管の2系統のブレーキシステムである。このブレーキシステム1は、ブレーキペダル2、ブレーキ倍力装置3、マスタシリンダ4、第1系統のブレーキ液通路5、ブレーキ液通路5の第1分岐通路5a、ブレーキ液通路5の第2分岐通路5b、第1分岐通路5aに接続された左前輪用ブレーキシリンダ6、第2分岐通路5bに接続された右後輪用ブレーキシリンダ7、第2系統のブレーキ液通路8、ブレーキ液通路8の第1分岐通路8a、ブレーキ液通路8の第2分岐通路8b、第1分岐通路8aに接続された右前輪用ブレーキシリンダ9、第2分岐通路8bに接続された左後輪用ブレーキシリンダ10、および各ブレーキ液通路5,8に配設されたブレ
ーキ制御装置11を備えている。
【0017】
ブレーキ制御装置11は、第1分岐通路5aに設けられた常開の電磁開閉弁からなる第1系統の第1増圧弁12、第2分岐通路5bに設けられた常開の電磁開閉弁からなる第1系統の第2増圧弁13、第1増圧弁12をバイパスして左前輪用ブレーキシリンダ6からマスタシリンダ4に向かうブレーキ液の流れのみを許容する第1系統の第1逆止弁14、第2増圧弁13をバイパスして右後輪用ブレーキシリンダ7からマスタシリンダ4に向かうブレーキ液の流れのみを許容する第1系統の第2逆止弁15、第1増圧弁12と左前輪用ブレーキシリンダ6との間の第1分岐通路5aから分岐された第1系統の第1分岐減圧通路16a、第2増圧弁13と右後輪用ブレーキシリンダ7との間の第2分岐通路5bから分岐された第1系統の第2分岐減圧通路16b、第1および第2分岐減圧通路16a,
16bが合流した第1系統の合流減圧通路16、第1分岐減圧通路16aに設けられた常
閉の電磁開閉弁からなる第1系統の第1減圧弁17、第2分岐減圧通路16bに設けられた常閉の電磁開閉弁からなる第1系統の第2減圧弁18、合流減圧通路16に接続される第1系統の低圧アキュムレータ19、低圧アキュムレータ19とブレーキ液通路5とを接続する第1系統の増圧通路20、増圧通路20に配設されたピストンポンプからなる第1系統のポンプ21、ブレーキ液通路5と増圧通路20との合流点よりマスタシリンダ4側のブレーキ液通路5に配設された常開の電磁開閉弁からなる第1系統の第1開閉弁22、第1開閉弁22をバイパスしてマスタシリンダ4から各ブレーキシリンダ6,7に向かう
ブレーキ液の流れのみを許容する第1系統の第3逆止弁23、ポンプ21の吸込口側の増圧通路20と第1開閉弁22よりマスタシリンダ4側のブレーキ液通路5とを接続する第1系統のブレーキ液供給通路24、およびブレーキ液供給通路24に配設された常閉の電磁開閉弁からなる第1系統の第2開閉弁25を有している。
【0018】
また、ブレーキ制御装置11は、第1分岐通路8aに設けられた常開の電磁開閉弁からなる第2系統の第1増圧弁26、第2分岐通路8bに設けられた常開の電磁開閉弁からなる第2系統の第2増圧弁27、第1増圧弁26をバイパスして右前輪用ブレーキシリンダ9からマスタシリンダ4に向かうブレーキ液の流れのみを許容する第2系統の第1逆止弁28、第2増圧弁27をバイパスして左後輪用ブレーキシリンダ10からマスタシリンダ4に向かうブレーキ液の流れのみを許容する第2系統の第2逆止弁29、第1増圧弁26と右前輪用ブレーキシリンダ9との間の第1分岐通路8aから分岐された第2系統の第1分岐減圧通路30a、第2増圧弁27と左後輪用ブレーキシリンダ10との間の第2分岐通路8bから分岐された第2系統の第2分岐減圧通路30b、第1および第2分岐減圧通路30a,30bが合流した第2系統の合流減圧通路30、第1分岐減圧通路30aに設
けられた常閉の電磁開閉弁からなる第2系統の第1減圧弁31、第2分岐減圧通路30bに設けられた常閉の電磁開閉弁からなる第2系統の第2減圧弁32、合流減圧通路30に接続される第2系統の低圧アキュムレータ33、低圧アキュムレータ33とブレーキ液通路8とを接続する第2系統の増圧通路34、増圧通路34に配設されたピストンポンプからなる第2系統のポンプ35、ブレーキ液通路8と増圧通路34との合流点よりマスタシリンダ4側のブレーキ液通路8に配設された常開の電磁開閉弁からなる第2系統の第1開閉弁36、第1開閉弁36をバイパスしてマスタシリンダ4から各ブレーキシリンダ9,
10に向かうブレーキ液の流れのみを許容する第2系統の第3逆止弁37、ポンプ35の吸込口側の増圧通路34と第1開閉弁36よりマスタシリンダ4側のブレーキ液通路8とを接続する第2系統のブレーキ液供給通路38、およびブレーキ液供給通路38に配設された常閉の電磁開閉弁からなる第2系統の第2開閉弁39を有している。
【0019】
更に、ブレーキ制御装置11は、偏心回転して両ポンプ21,35を駆動するピストン
駆動部材40、ピストン駆動部材40を回転する電動モータ(M)41、および各電磁開閉弁12,13,17,18,22,25,26,27,31,32,36,39と電動モータ41
を制御する電子制御部(ECU;図2に図示)56を有している。
【0020】
更に、図1および図2に示すように、ブレーキ制御装置11は、マスタシリンダ4の液圧を検出する第1ブレーキ液圧検出部42、左前輪用ブレーキシリンダ6の液圧を検出する第2ブレーキ液圧検出部43、右後輪用ブレーキシリンダ7の液圧を検出する第3ブレーキ液圧検出部44、右前輪用ブレーキシリンダ9の液圧を検出する第4ブレーキ液圧検出部45、左後輪用ブレーキシリンダ10の液圧を検出する第5ブレーキ液圧検出部46、左前輪用ブレーキパッドの温度検出する第1ブレーキパッド温度検出部47、右後輪用ブレーキパッドの温度検出する第2ブレーキパッド温度検出部48、右前輪用ブレーキパッドの温度検出する第3ブレーキパッド温度検出部49、左後輪用ブレーキパッドの温度検出する第4ブレーキパッド温度検出部50、車両減速度を検出するGセンサ等の減速度検出部51、左前輪用ブレーキ異音発生を検出するマイクロフォン等の第1ブレーキ異音発生検出部52、右後輪用ブレーキ異音発生を検出するマイクロフォン等の第2ブレーキ
異音発生検出部53、右前輪用ブレーキ異音発生を検出するマイクロフォン等の第3ブレーキ異音発生検出部54、および左後輪用ブレーキ異音発生を検出するマイクロフォン等の第4ブレーキ異音発生検出部55を備えている。
【0021】
その場合、この例のブレーキ制御装置11は液圧を利用したブレーキシステム1に適用されているので、本発明のブレーキ制御装置におけるブレーキ力としてブレーキ液圧が採用される。
【0022】
そして、ブレーキシステム1は、ブレーキ非作動時は、各電磁開閉弁12,13,17,
18,22,25,26,27,31,32,36,39は図1に示す非作動位置に設定されているとともに、電動モータ41が駆動されず、各ポンプ21,35は非作動となっている。
この状態で、各車輪に通常ブレーキをかけるために、ブレーキペダル2が踏み込まれると、ブレーキ倍力装置3が作動してブレーキペダル2の踏力を所定のサーボ比で倍力して出力する。このブレーキ倍力装置3の出力によりマスタシリンダ4が作動してその圧力室にブレーキ液圧が発生される。このブレーキ液圧が各ブレーキシリンダ6,7,9,10にそ
れぞれ導入されて、各ブレーキシリンダ6,7,9,10がブレーキ力を発生することで各
車輪がそれぞれブレーキをかけられる。ブレーキペダル2が解放されると、ブレーキ倍力装置3が非作動となりマスタシリンダ4のブレーキ液圧が消滅する。したがって各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ力が消滅して各車輪のブレーキが解除される。
【0023】
また、この例のブレーキ制御装置11では、ECU56により各電磁開閉弁12,13,17,18,22,25,26,27,31,32,36,39および電動モータ41が独立して
制御されることで、各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ液圧がそれぞれ独立し
て増減制御可能とされている。すなわち、各電磁開閉弁12,13,17,18,22,25,26,27,31,32,36,39および電動モータ41は、ブレーキ液圧を変化させるブ
レーキ液圧可変部(本発明のブレーキ力可変部に相当)を構成している。
【0024】
例えば、左前輪用ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧について説明する。ブレーキ作動時、左前輪用ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧を減圧するには、ECU56により第1減圧弁17が開位置に切り換えられる。すると、左前輪用ブレーキシリンダ6のブレーキ液が第1分岐減圧通路16a、第1減圧弁17、および合流減圧通路16を通して低圧アキュムレータ19へ排出される。これにより、左前輪用ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が減圧される。このとき、第1系統の第2減圧弁18と第2系統の第1および第2減圧弁31,32が閉位置に保持されることで、他のブレーキシリンダ7,9,10のブレーキ
液圧は、マスタシリンダ4のブレーキ液圧に保持される。
【0025】
また、ブレーキ作動時、左前輪用ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧を増圧するには、ECUにより第2増圧弁13、および第1開閉弁22,36が閉位置に切り換えられると
ともに、第2開閉弁25が開位置に切り換えられ、更に電動モータ41が駆動される。すると、ポンプ21が運転されて、低圧アキュムレータ19内のブレーキ液が吸い込まれるとともに、マスタシリンダ4のリザーバタンクのブレーキ液がマスタシリンダ4、ブレーキ液通路5、ブレーキ液供給通路24、第2開閉弁25、および増圧通路20を通して吸い込まれる。そして、ポンプ21から吐出されたブレーキ液は、増圧通路20、ブレーキ液通路5、第1分岐通路5a、および第1増圧弁12を通して左前輪用ブレーキシリンダ6に供給される。これにより、左前輪用ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が増圧される。このとき、第2増圧弁13が閉じているので、ポンプ21から吐出されたブレーキ液は右後輪用ブレーキシリンダ7に供給されないとともに、第2系統のポンプ35が空転するだけであり、ポンプ35からブレーキ液は右前輪用ブレーキシリンダ9および左後輪用ブレーキシリンダ10には供給されない。したがって、他のブレーキシリンダ7,9,10のブレーキ液圧はマスタシリンダ4のブレーキ液圧に保持される。他のブレーキシリンダ7
,9,10のブレーキ液圧の増減制御も同じである。このように、各ブレーキシリンダ6,
7,9,10のブレーキ液圧がそれぞれ独立して増減制御可能とされる。
【0026】
ところで、この例のブレーキ制御装置11は、ブレーキ作動時に異音の発生が抑制されるように各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ液圧をそれぞれ独立して増減制御
している。以下、このブレーキ液圧の増減制御について説明する。
【0027】
図2に示すように、ブレーキ制御装置11のECU56は、異音発生判定部57、記憶部58、異音発生条件成立判定部59、ブレーキ液圧値演算部60、およびブレーキ液圧変化信号出力部61を有している。その場合、ECU56内の記憶部58に異音発生条件表58aが設けられている。
【0028】
そして、第1ないし第5ブレーキ液圧検出部42,43,44,45,46、第1ないし第4ブレーキパッド温度検出部47,48,49,50、減速度検出部51、および第1ない
し第4ブレーキ異音発生検出部52,53,54,55の各検出信号がそれぞれECU56
に出力される。このとき、第1ないし第5ブレーキ液圧検出部42,43,44,45,46、および第1ないし第4ブレーキパッド温度検出部47,48,49,50により、ブレー
キ作動時に、ブレーキ異音が発生しないときのブレーキ液圧およびブレーキパッドの温度、ブレーキ異音が発生したときのブレーキ液圧およびブレーキパッドの温度がそれぞれ検出される。
【0029】
そして、ブレーキ異音が発生したとき、このブレーキ異音発生の情報が異音発生条件表58aに、ブレーキ液圧およびパッド温度に対応して記録される(書き込まれる)。これにより、ブレーキ異音が発生しそうなブレーキ液圧およびパッド温度の異音発生エリアが異音発生条件表58aに設定される。
【0030】
したがって、ブレーキ作動時に、検出されたブレーキ液圧およびパッド温度が異音発生条件表58a中の異音発生エリア内に位置したとき、つまり、異音発生条件表58aのデータに基づいて異音発生条件が成立したと判断されたとき、各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ液圧がそれぞれ増減されることで、ブレーキ液圧が異音発生条件表58
a中の異音発生エリアから異音を発生しない異音非発生エリア内に移行される。その場合、各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ液圧が増減制御されたとき、全体の車両
減速度が、ブレーキ液圧が増減制御されないときの車両減速度と同じまたはほぼ同じになるように(全体の車両減速度が変化しないようにまたはほとんど変化しないように)、各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ液圧がバランスされて増減制御される。
【0031】
異音発生判定部57は、第1ないし第4ブレーキ異音発生検出部52,53,54,55
からの異音信号に基づいて、ブレーキ作動時に異音の発生を判定する。また、記憶部58は、ブレーキ作動時に異音発生判定部57の判定結果に基づいて、異音が発生したと判定されたときは、第2ないし第5ブレーキ液圧検出部43,44,45,46のうち異音が発
生したブレーキ液圧検出部からの異音発生時のブレーキ液圧および第1ないし第4ブレーキパッド温度検出部43,44,45,46のうち異音が発生したパッド温度検出部からの
異音発生時のブレーキパッド温度を、例えば図3(a),(b)および図4(a),(b)に示す異音発生条件表58aに書き込む。
【0032】
これらの図3(a),(b)および図4(a),(b)に示す異音発生条件表58aの例では、ブレーキ異音は、左前輪ブレーキにおいては○で示すブレーキパッド温度が160℃であるときでブレーキ液圧が1.7MPaおよび1.8MPaであるとき、およびブレーキパッド温度が180℃であるときでブレーキ液圧が1.7MPaおよび1.8MPaであるときに発生している。また、異音は、右前輪ブレーキにおいては○で示すブレーキ液圧
が1.8MPaであるときで、ブレーキパッド温度が160℃および180℃であるとき
に発生している。更に、後輪ブレーキにおいては、異音は左右後輪とも発生していない。すなわち、これらの図3(a),(b)および図4(a),(b)に示す異音発生条件表58aの例では、異音発生条件が成立するエリアは、○で示されるブレーキ液圧の範囲およびブレーキパッド温度の範囲となる。以下の各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレー
キ液圧の増減制御の説明においては、図3(a),(b)および図4(a),(b)に示す異音発生条件表58aの場合を例として説明する。
【0033】
更に、異音発生条件成立判定部59は、第2ないし第5ブレーキ液圧検出部43,44,45,46からの各ブレーキ液圧および第1ないし第4ブレーキパッド温度検出部47,48,49,50からの各ブレーキパッド温度が異音発生条件表58a中の異音発生エリアのデータと照らし合わせて異音発生条件が成立したか否かを判断する。更に、ブレーキ液圧値演算部60は、異音発生条件成立判定部59により異音発生条件が成立したと判断されたとき、異音発生条件が成立したブレーキシリンダのブレーキ液圧を増減制御する際に、第1ブレーキ液圧検出部42からのマスタシリンダ4のブレーキ液圧に基づいてブレーキ液圧の増減制御しないときの車両の減速度を演算するとともに、減速度検出部32からの減速度に基づいて、車両の減速度が演算した減速度と同じまたはほぼ同じになるように、各ブレーキシリンダ6,7,9,10の各ブレーキ液圧の増減制御すべきブレーキ液圧値を
演算する。
【0034】
更に、ブレーキ液圧変化信号出力部61は、ブレーキ液圧値演算部60で演算された各ブレーキシリンダ6,7,9,10のブレーキ液圧値に応じて、それぞれ、前述の図1に示
す各電磁開閉弁および電動モータ41に制御信号を出力する。これにより、各電磁開閉弁12,13,17,18,22,25,26,27,31,32,36,39および電動モータ41
は、各ブレーキシリンダ6,7,9,10の各ブレーキ液圧がそれぞれブレーキ液圧値演算
部60で演算されたブレーキ液圧値となるように制御される。
【0035】
次に、この例のブレーキ制御装置11による前後輪における各ブレーキシリンダのブレーキ液圧の増減制御の具体例について説明する。図5は、本発明のブレーキ液圧の増減制御を行わない場合のブレーキの異音発生の問題を説明する図であり、図6は、前後輪のブレーキ液圧の増減制御の一例について説明する図である。
【0036】
図5は図3(a)に示す例の左前輪ブレーキの異音発生に対応する図である。図5に示すように、この例のブレーキ液圧制御装置11によるブレーキ液圧の増減制御を行わない場合、例えばブレーキパッド温度が160℃でブレーキ液圧が1.7MPaになってブレ
ーキ異音が発生すると、ブレーキパッド温度が180℃を超えるまで異音が発生し続ける。すなわち、ブレーキ異音が長時間に渡って発生し続ける。
【0037】
そこで、図6に示すように、この例のブレーキ液圧制御装置11では、ブレーキ液圧の増減制御にあたって、ブレーキパッド温度が160℃でブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が1.7MPaになったとき、ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が低減される。これ
により、ブレーキパッド温度がほぼ160℃で変わらない間の短い時間でブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が1.6MPaになり、ブレーキ異音が発生しなくなる。このように
、この例のブレーキ液圧制御装置11によるブレーキ液圧の増減制御では、仮にブレーキ異音が発生してもきわめて短時間で異音が発生しないようになり、ブレーキ異音の発生が抑制される。一方、ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が低減されることで、全体の車両減速度が低減する。そこで、図6に示すようにこの例のブレーキ液圧制御装置11によるブレーキ液圧の増減制御では、他のブレーキシリンダ7,9,10のブレーキ液圧が次のように制御される。すなわち、ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が低減されても、全体の車両減速度が変化しないように、つまりブレーキ液圧の増減制御が行われない場合の一定
の車両減速度である0.2Gとなるように、他のブレーキシリンダ7,9,10のブレーキ
液圧がそれぞれ演算された前述のブレーキ液圧値となるように独立して制御される。
【0038】
また、ブレーキ液圧の他の増減制御として、図7に示すように、ブレーキパッド温度が160℃でブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が1.7MPaになったとき、ブレーキシ
リンダ6のブレーキ液圧が増大するように制御することもできる。このブレーキ液圧の増減制御の場合には、ブレーキパッド温度がほぼ160℃で変わらない間の短い時間でブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が1.9MPaになり、ブレーキ異音が発生しなくなる。
このように、この例のブレーキ液圧の増減制御でも、仮にブレーキ異音が発生してもきわめて短時間でブレーキ異音が発生しないようになり、ブレーキ異音の発生が抑制される。一方、ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が増大されることで、全体の車両減速度が増大する。そこで、図7に示すようにこの例のブレーキ液圧の増減制御では、他のブレーキシリンダ7,9,10のブレーキ液圧が次のように制御される。すなわち、ブレーキシリンダ6のブレーキ液圧が増大されても、全体の車両減速度が変化しないように、つまりブレーキ液圧の増減制御が行われない場合の一定の車両減速度である0.2Gとなるように、他
のブレーキシリンダ7,9,10のブレーキ液圧がそれぞれ演算された前述のブレーキ液圧値となるように独立して制御される。
【0039】
次に、この例のブレーキ液圧制御装置11によるブレーキ液圧の増減制御方法の具体例について説明する。図8および図9はブレーキ液圧の増減制御のフローを示す図である。
【0040】
図8に示すように、まずステップS1においてイグニッションキースイッチがオンされる。次いで、ステップS2で車両が走行中か否かが判断される。車両が走行中であると判断されると、ステップS3でブレーキ作動があるか否かが判断される。ブレーキ作動がないと判断されると、このステップS3の処理が繰り返される。ブレーキ作動があると判断されると、ステップS4で各ブレーキ液圧が検出されるとともにステップS5で各ブレーキパッド温度が検出される。次いで、ステップS6で異音発生条件が成立したか否かが判断される。異音発生条件が成立していないと判断されると、ステップS7で異音の発生があるか否かが判断される。異音の発生がないと判断されると、ステップS8でブレーキ作動が解除したか否かが判断される。ブレーキ作動が解除していないと判断されると、ステップS7に移行し、このステップS7以降の処理が行われる。ブレーキ作動が解除したと判断されると、ステップS2に移行し、このステップS2以降の処理が行われる。
【0041】
ステップS7で異音の発生があると判断されると、ステップS9で異音発生時のブレーキ液圧が検出されるとともに、ステップS10で異音発生時のブレーキパッドの温度が検出される。そして、ステップS11で、検出された異音発生時のブレーキ液圧のデータと異音発生時のブレーキパッドの温度のデータが記録部58の異音発生条件表58aに書き込まれる。ステップS11での各データの異音発生条件表58aへの書込が終了すると、ステップS8に移行し、このステップS8以降の処理が行われる。
【0042】
ステップS6で異音発生条件が成立したと判断されると、ステップS12で異音発生条件が成立した車輪のブレーキシリンダのブレーキ液圧を急減圧(図6に示す例の場合)または急増圧(図7に示す例の場合)するとともに、ステップS13で異音発生条件が成立していない車輪のブレーキシリンダのブレーキ液圧を急増圧(図6に示す例の場合)または急減圧(図7に示す例の場合)する。次いで、ステップS14で異音発生条件が解消したか否かが判断される。異音発生条件が解消していないと判断されると、ステップS12に移行し、このステップS12以降の処理が繰り返される。
【0043】
ステップS14で異音発生条件が解消したと判断されると、ステップS15でブレーキ作動が解除したか否かが判断される。ブレーキ作動が解除していないと判断されると、ス
テップS4に移行し、このステップS4以降の処理が行われる。また、ブレーキ作動が解除したと判断されると、ステップS2に移行し、このステップS2以降の処理が行われる。更に、ステップS2で車両走行中でないと判断されると、ステップS16でイグニッションスイッチがオフであるか否かが判断される。イグニッションスイッチがオフでないと判断されると、ステップS2に移行し、このステップS2以降の処理が行われる。イグニッションスイッチがオフであると判断されると、ブレーキ液圧の増減制御が終了する。
【0044】
この例のブレーキ制御装置11によれば、ブレーキ作動中にブレーキ液圧およびパッド温度が検出されるとともに、ブレーキ異音の発生が検出される。また、ブレーキ異音の発生が検出されたとき、このブレーキ異音発生時のブレーキ液圧およびパッド温度のデータが記録部58の異音発生条件表58aに書き込まれるとともに、異音発生条件表58a内に異音発生エリアが設定される。そして、ブレーキ作動中に検出したブレーキ液圧およびパッド温度が異音発生条件表58aに設定された異音発生エリア内に位置することで異音発生条件が成立したと判断されたときには、異音発生条件が成立したと判断された車輪のブレーキ液圧が異音発生エリア外に位置するように急減圧または急増圧されて、異音発生条件の成立が解消される。これにより、ブレーキ異音の発生を効果的に抑制することができるとともに、仮にブレーキ異音が発生してもきわめて短時間にブレーキ異音を消滅することができる。したがって、車両走行中の車両の静粛性をより一層向上することが可能になるとともに、ブレーキ異音による乗員の違和感を防止してドライビングの快適性を向上することができる。
【0045】
また、異音発生条件が成立したと判断された車輪のブレーキ液圧が急減圧または急増圧されることに伴い、車両減速度がそのときのペダル踏力に対応する車両減速度より増大または減少する。そこで、異音発生条件が成立していないと判断された車輪のブレーキ液圧が急増圧または急減圧される。これにより、異音発生条件が成立したと判断された車輪のブレーキ液圧を急減圧または急増圧しても、異音発生条件が成立したと判断された車輪のブレーキ液圧を急減圧または急増圧しない場合の車両減速度と同じかまたはほぼ同じになるように、つまり全体の車両減速度が変化しないように制御することができる。
このようにして、この例のブレーキ液圧の制御装置11によれば、ブレーキ液圧の増減制御により、全体の車両減速度を変化させることなく、ブレーキ作動時の異音の発生を効果的に抑制可能となる。
【0046】
また、このようにブレーキ液圧の増減制御によりブレーキ作動時の異音の発生が抑制可能となることで、ブレーキ作動時の異音対策を不要にできるので、コストを低減することが可能となる。
【0047】
なお、本発明のブレーキ制御装置は図1に示すブレーキ制御装置11に限定されることはなく、各ブレーキシリンダのブレーキ液圧が独立あるいは部分的に独立して増減制御可能であれば、どのようなブレーキ制御装置を用いることができる。例えば、このブレーキ制御装置11には、アンチロックブレーキ制御装置(ABS)、トラクションコントロールシステム(TRC)、車両安定制御装置(ESC)等の従来公知のブレーキ制御装置を用いることもできる。
【0048】
また、前述の例では、ブレーキシステム1はブレーキ倍力装置3とマスタシリンダ4とを組み合わせたブレーキシステムとされているが、本発明は圧縮されたエアーによりブレーキを作動させるエアーブレーキシステムやポンプあるいはアキュムレータからの液圧で直接ブレーキを作動させる液圧ブレーキシステム、電気力や電磁力によるブレーキシステム等を始め、本発明のブレーキ制御装置11が設置可能であれば、他のどのような形式のブレーキシステムにも適用することができる。その場合、電気力や電磁力によるブレーキシステムでは、ブレーキ液圧に代えてブレーキ力が検出される。
【0049】
更に、前述の例では、X配管の2系統のブレーキシステムとしているが、1系統が左右前輪ブレーキとし、他の一系統が左右後輪ブレーキとしたブレーキシステム等の他のブレーキ系統にも適用することが可能である。更に、前述の例では、異音発生条件表58aを各車輪毎に4つ設けるものとしているが、異音発生条件表58aは、例えば左右前輪用と左右後輪用の2つ設けることもできる。要は、本発明は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るブレーキ制御装置およびこれを備えたブレーキシステムは、車両走行中のブレーキ作動時に、ブレーキ液圧を制御して異音の発生を抑制するブレーキ制御装置およびこれを備えたブレーキシステムに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…ブレーキシステム、2…ブレーキペダル、3…ブレーキ倍力装置、4…マスタシリンダ、5,8…ブレーキ液通路、5a,8a…第1分岐通路、5b,8b…第2分岐通路、6
…左前輪用ブレーキシリンダ、7…右後輪用ブレーキシリンダ、9…右前輪用ブレーキシリンダ、10…左後輪用ブレーキシリンダ、11…ブレーキ制御装置、12,26…第1
増圧弁、13,27…第2増圧弁、14,28…第1逆止弁、15,29…第2逆止弁、1
6,30…合流減圧通路、16a,30a…第1分岐減圧通路、16b,30b…第2分岐
減圧通路、17,31…第1減圧弁、18,32…第2減圧弁、19,33…低圧アキュム
レータ、20,34…増圧通路、21,35…ポンプ、22,36…第1開閉弁、23,37…第3逆止弁、24,38…ブレーキ液供給通路、25,39…第2開閉弁、40…ピストン駆動部材、41…電動モータ(M)、42…第1ブレーキ液圧検出部、43…第2ブレーキ液圧検出部、44…第3ブレーキ液圧検出部、45…第4ブレーキ液圧検出部、46…第5ブレーキ液圧検出部、47…第1ブレーキパッド温度検出部、48…第2ブレーキパッド温度検出部、49…第3ブレーキパッド温度検出部、50…第4ブレーキパッド温度検出部、51…減速度検出部、52…第1ブレーキ異音発生検出部、53…第2ブレーキ異音発生検出部、54…第3ブレーキ異音発生検出部、55…第4ブレーキ異音発生検出部、56…電子制御部(ECU)、57…異音発生判定部、58…記憶部、58a…異音発生条件表、59…異音発生条件成立判定部、60…ブレーキ液圧値演算部、61…ブレーキ液圧変化信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ力を変化させるブレーキ力可変部と、
前記ブレーキ力を検出するブレーキ力検出部と、
ブレーキパッド温度を検出するブレーキパッド温度検出部と、
ブレーキ作動時での異音の発生を検出する異音発生検出部と、
前記ブレーキ力可変部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
通常の車両走行中のブレーキ作動時、前記ブレーキ力検出部で検出した前記ブレーキ力のデータ、前記ブレーキパッド温度検出部で検出した前記ブレーキパッド温度のデータ、前記異音発生検出部で検出した異音の発生の情報を記録する記憶部と、
ブレーキ作動時、前記ブレーキ力検出部で検出した前記ブレーキ力および前記ブレーキパッド温度検出部で検出した前記ブレーキパッド温度が、前記記憶部に記録されている前記ブレーキ力のデータ、前記ブレーキパッド温度のデータおよび前記異音の発生の情報に基づいて設定された異音の発生エリアになることで異音発生条件が成立したかを判定する異音発生条件成立判定部と、
前記異音発生条件成立判定部で異音発生条件が成立したと判定されたとき、成立した前記異音発生条件を解消するブレーキ液圧変化信号を前記ブレーキ力可変部に出力するブレーキ液圧変化信号出力部と、
を有することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は異音発生条件表を有し、
前記ブレーキ力のデータ、前記ブレーキパッド温度のデータ、および前記異音の発生の情報は、前記異音発生条件表に記録されることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
車両減速度を検出する減速度検出部を備え、
前記ブレーキ力可変部、前記ブレーキ力検出部、前記ブレーキパッド温度検出部、および前記異音発生検出部は、それぞれ左前輪、右前輪、左後輪、および右後輪毎に配設されており、
前記制御部は、前記左前輪、前記右前輪、前記左後輪、および前記右後輪のうち、前記異音発生条件が成立したと判定された車輪のブレーキ力が前記ブレーキ力可変部により変化されたとき、前記左前輪、前記右前輪、前記左後輪、および前記右後輪のうち、前記異音発生条件が成立していない残りの車輪のブレーキ力を、前記減速度検出部で検出された前記車両減速度が、前記変化された車輪のブレーキ力が変化されない場合に生じる車両減速度となるブレーキ力にするように前記ブレーキ力可変部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記左前輪、前記右前輪、前記左後輪、および前記右後輪のうち、前記異音発生条件が成立したと判定された車輪のブレーキ力を減少または増大するとともに、前記異音発生条件が成立しないと判定された車輪のブレーキ力を増大または減少することを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
ブレーキ作動を行うブレーキ操作部材と、前記ブレーキ操作部材の操作によりブレーキ力を発生するブレーキ力発生部と、前記ブレーキ力発生部により発生されたブレーキ力で車輪にブレーキをかけるブレーキパッドと、前記ブレーキ力によるブレーキ作動を制御するブレーキ制御装置とを少なくとも備えるブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキ制御装置は、請求項1ないし4のいずれか1に記載のブレーキ制御装置であることを特徴とするブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240833(P2011−240833A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115145(P2010−115145)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】