ブレーキ制御装置
【課題】 必要以上の燃料消費を抑えつつ、障害物や急坂を乗り越えた際の空走距離を短縮したブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】 ホイルシリンダ内の液圧を自動的に増圧・減圧できるブレーキアクチュエータを備えたブレーキ制御装置において、アクセルのオン・オフを検出するアクセルスイッチと、前記アクセルのオフ状態に対応した前記アクセルスイッチの信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を増圧し、前記アクセルのオン状態に対応した信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を減圧する補助ブレーキ手段と、前記補助ブレーキ手段の実行・解除を行う補助ブレーキ選択手段とを備えることとした。
【解決手段】 ホイルシリンダ内の液圧を自動的に増圧・減圧できるブレーキアクチュエータを備えたブレーキ制御装置において、アクセルのオン・オフを検出するアクセルスイッチと、前記アクセルのオフ状態に対応した前記アクセルスイッチの信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を増圧し、前記アクセルのオン状態に対応した信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を減圧する補助ブレーキ手段と、前記補助ブレーキ手段の実行・解除を行う補助ブレーキ選択手段とを備えることとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ駆動によって液圧を発生させ、車輪に制動力をもたらすブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が縁石等路面上の障害物や急な坂道を乗り越える際、運転者はアクセルを大きく踏み込んで障害物を乗り越えるが、アクセルを大きく踏み込んでいるため車両の駆動力が大きくなり、乗り越えた後の車両速度が所望の速度よりも大きくなってしまう。そのため、障害物を乗り越えた後アクセルを放してブレーキペダルを踏み込むまでの間に空走距離が発生するという問題があった。
【0003】
この問題を解決するため、従来のブレーキ制御装置にあっては、アクセル踏み込み時のエンジン回転数と車速に基づいて発進時におけるエンジン回転数の上限値を設定し、この上限値以上となった際にはエンジン回転数に応じた予備制動力をかけることで、アクセルを放してからブレーキペダルを踏み込むまでの空走距離を縮めることとしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−39754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のブレーキ制御装置にあっては、アクセルを踏んでいるときに予備制動力をかけるため制動力が駆動力の抵抗となり、障害物や急坂を乗り越えるため更にアクセルを踏み込む必要がある。したがって、必要以上の燃料消費が発生し、燃費向上の妨げとなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、必要以上の燃料消費を抑えつつ、障害物や急坂を乗り越えた際の空走距離を短縮したブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、ホイルシリンダ内の液圧を自動的に増圧・減圧できるブレーキアクチュエータを備えたブレーキ制御装置において、アクセルのオン・オフを検出するアクセルスイッチと、前記アクセルのオフ状態に対応した前記アクセルスイッチの信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を増圧し、前記アクセルのオン状態に対応した信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を減圧する補助ブレーキ手段と、前記補助ブレーキ手段の実行・解除を行う補助ブレーキ選択手段とを備えることとした。
【0007】
よって、必要以上の燃料消費を抑えつつ、障害物や急坂を乗り越えた際の空走距離の短縮を達成可能なブレーキ制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の車両の制動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1ないし実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
[ブレーキ制御装置の制御構成]
実施例1につき図1ないし図4に基づき説明する。図1は、本願ブレーキ制御装置の制御ブロック図である。本願ブレーキ制御装置は、補助ブレーキECU100(補助ブレーキ手段)、補助ブレーキスイッチ110(補助ブレーキ選択手段)、アクセルスイッチ120、スロットルセンサ130(スロットル開度検出手段)、車輪速センサ140(車輪速検出手段)、ブレーキアクチュエータAを有する。
【0010】
アクセルスイッチ120はアクセルのON/OFFを検出し、スロットルセンサ130はスロットル開度TVOを検出して補助ブレーキECU100へ出力する。また、車輪速センサ140は車両の各車輪に設けられて車輪速を検出して補助ブレーキECU100へ車輪速VSの出力を行う。
【0011】
補助ブレーキECU100はブレーキアクチュエータA内に設けられたバルブを制御し、モータ21を駆動して車両の制動力制御を行うコントロールユニットである。この補助ブレーキECU100において、検出されたアクセルのON/OFF信号、スロットル開度TVO、及び車輪速VSの値に基づき、補助ブレーキ制御のON/OFF判断を行う。
【0012】
補助ブレーキ制御を行う場合、アクセルスイッチ120、スロットルセンサ130、及び車輪速センサ140の検出値に基づき、ブレーキアクチュエータAに設けられたP,S系統カットバルブ1,7及びP,S系統吸入バルブ2,8を制御し、モータ21を駆動してホイルシリンダ圧の増圧または減圧を行うことにより、車両の制動力の制御を行う。なお、実施例1ではアクセルスイッチ120により検出されたアクセルのON/OFF信号に基づいて各バルブの制御を行う。
【0013】
補助ブレーキスイッチ110は補助ブレーキECU100内に設けられ、ホイルシリンダ圧の増圧または減圧を補助ブレーキECU100に対し実行させるスイッチである。アクセルペダルの状態に応じ、アクセルペダルが踏み込まれると自動的にON信号を出力し、踏み込まれていないときはOFF信号を出力するアクセルスイッチ120のON/OFF信号に基づき、ホイルシリンダ圧の増圧または減圧を選択して補助ブレーキECU100に対し実行指令を行う。
【0014】
[ブレーキ制御装置の油圧回路]
図2は、ブレーキ制御装置の油圧回路図である。4輪のそれぞれに制動力を発生させるホイルシリンダ15,16,17,18は、2系統のブレーキ配管(P系統及びS系統)を介してマスタシリンダ22に接続されている。そして、P系統及びS系統の途中には、ブレーキ制御装置の油圧制御を行うブレーキアクチュエータAが設けられている。
【0015】
ブレーキアクチュエータAは、各ホイルシリンダ15,16,17,18の液圧を増圧・保持・減圧可能な液圧制御バルブ(INバルブ3,5,9,11及びOUTバルブ4,6,10,12)と、マスタシリンダ22とは別途設けられ、モータ21により駆動する制御用油圧源(P系統ポンプ13,S系統ポンプ14)の接続を切り換える油圧供給源切り換えバルブ(P系統カットバルブ1,P系統吸入バルブ2,S系統カットバルブ7,S系統吸入バルブ8)と、リザーバ19,20を備えている。
【0016】
運転者がブレーキペダル23を操作してマスタシリンダ22に油圧が発生すると、このマスタシリンダ圧をホイルシリンダ15,16,17,18に供給する通常ブレーキ状態と、運転者がブレーキ操作を行っていない場合、もしくは運転者のブレーキ操作以上に液圧が必要な場合に、モータ21を駆動して制御用油圧源13,14の液圧をホイルシリンダ15,16,17,18に向けて供給するとともに、各液圧制御バルブによりホイルシリンダ圧を減圧・保持・増圧制御を適宜選択して最適制御する制御ブレーキ状態とに切り換え可能に構成されている。
【0017】
[ホイルシリンダ圧制御]
ここで、各ホイルシリンダの圧力を制御する場合について説明する。P,S系統ともに同様の油圧回路構成であるため、P系統についてのみ説明する。P系統増圧時は、P系統ポンプ13を駆動し、P系統吸入バルブ2を開き、P系統ポンプ13にブレーキ液を供給する。そして、P系統カットバルブ1及び他輪のINバルブ5を閉じ、ブレーキ液の他系統への回り込みを抑止することで行われる。減圧時は、P系統吸入バルブ2を閉じ、P系統カットバルブ1を開放することによりホイルシリンダ液がマスタシリンダ22側に流出することで行われる。
【0018】
マスタシリンダ22による増圧では、P系統カットバルブ1を開放し、P系統吸入バルブ2を遮断し、INバルブ3,5を開放し、マスタシリンダ液量をホイルシリンダ側に流入することで行われる。減圧時は、INバルブ3,5を遮断し、OUTバルブ4,6を開放し、ホイルシリンダ液をリザーバ19側に流出することで行われる。リザーバ19に貯留されたブレーキ液は、モータ21によって駆動するポンプ13,14によって、マスタシリンダ22側に還流される。
【0019】
[実施例1におけるアクセルオフ時補助ブレーキ制御]
アクセルを踏んでいるときに補助ブレーキにより制動力をかけた場合、制動力が駆動力の抵抗となってしまい障害物や急坂を乗り越えるため更にアクセルを踏み込む必要があり、必要以上の燃料消費が発生する。
【0020】
したがって、アクセル踏み込み時においては制動力が発生しないよう、アクセルスイッチ120によりアクセルONが検出された場合は、補助ブレーキECU100によりP系統吸入バルブ2及びS系統吸入バルブ8を閉じ、P系統カットバルブ1及びS系統カットバルブ7を開放することで各ホイルシリンダの減圧を行う。
【0021】
また、アクセルOFFが検出された場合は、障害物を乗り越えた後にブレーキペダルを踏み込むまでの空走距離を低減するため、補助ブレーキECU100によりP系統吸入バルブ2及びS系統吸入バルブ8を開弁し、P系統カットバルブ1及びS系統カットバルブ7を閉弁することでホイルシリンダ圧を増圧して制動力を発生させる。
【0022】
[アクセルON判断基準]
図3は、アクセルスイッチ120によりアクセルがONと判断される際の判断基準を示す図である。縦軸にスロットル開度TVO、横軸にアクセル踏み込み量を示す。運転者がアクセルペダルを踏み込むと遊び領域を経てスロットル開度TVOが増加を開始するが、運転者がわずかにアクセルを踏み込んで車両が微小駆動力により走行している場合は、障害物等を乗り越えた際にアクセルペダルを放してブレーキペダルを踏み込むまでの空走距離はほとんど生じない。
【0023】
したがって、スロットル開度TVOが所定の閾値に達しない場合は予備制動力をかける必要がない。そのため、増加開始直後ではアクセルスイッチ120はON信号を出力しないよう設定することにより補助ブレーキECU100による予備制動力の発生させないこととする。スロットル開度が所定の閾値に達した場合にアクセルスイッチ120がON信号を出力するよう設定し、補助ブレーキECU100により予備制動力を発生させる。
【0024】
[実施例1におけるアクセルオフ時補助ブレーキ減圧処理]
図4は、補助ブレーキECU100において実行されるアクセルオフ時補助ブレーキ減圧制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップにつき説明する。
【0025】
ステップS101では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS102へ移行する。
【0026】
ステップS102では、アクセルスイッチ120によりアクセルがONであるかが判断され、YESであればステップS104へ移行し、NOであればステップS103へ移行する。
【0027】
ステップS103では、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS102へ戻る。
【0028】
ステップS104では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS105へ移行し、NOであればステップS106へ移行する。
【0029】
ステップS105では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS102へ戻る。
【0030】
ステップS106では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS102へ移行し、NOであれば制御を終了する。
【0031】
[従来例と本願実施例1における作用効果の対比]
車両が縁石等路面上の障害物や急な坂道を乗り越える際、運転者はアクセルを大きく踏み込んで障害物を乗り越えるが、アクセルを大きく踏み込んでいるため乗り越えた後の車両速度が所望の速度よりも大きくなってしまい、障害物や急坂を乗り越えた後アクセルを放してブレーキペダルを踏み込むまでの間に空走距離が発生してしまう。そのため従来のブレーキ制御装置では、アクセル踏み込み時のエンジン回転数と車速に基づいて発進時におけるエンジン回転数の上限値を設定し、この上限値以上となった場合にエンジン回転数に応じた予備制動力をかけることで空走距離を縮めることとしている。
【0032】
しかしながら、アクセルを踏んでいるときに予備制動力をかけるため制動力が駆動力の抵抗となり、障害物や急坂を乗り越えるため更にアクセルを踏み込む必要がある。したがって、必要以上の燃料消費が発生し、燃費向上の妨げとなるという問題があった。
【0033】
これに対し本願実施例1では、アクセルスイッチ120によりアクセルONが検出された場合、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダ圧を減圧することとした。また、アクセルOFFが検出された場合、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダ圧を増圧することとした。
【0034】
これにより、アクセルオフ時にのみホイルシリンダ圧を増圧とし、アクセル踏み込み時における予備制動力の発生を抑制することで、予備制動力が駆動力の妨げとなることを回避し、障害物や急坂を乗り越える際に更にアクセルを踏み込む必要性をなくすことで不必要な燃料消費を抑制し、燃費の向上を図ることができる(請求項1に対応。)。
【0035】
また、アクセルオフ時にのみホイルシリンダ圧を増圧とすることでブレーキの作動頻度を抑制することが可能となり、熱源となるブレーキ装置の駆動回数を低減して発熱を抑制することができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2につき図5ないし図7に基づき説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。実施例1ではアクセルのON状態を条件として予備制動力を発生させたが、実施例2では、駆動力に応じた適切な制動力を得るため、アクセルOFF直前のスロットル開度に応じた予備制動力を発生させる点で実施例1と異なる。
【0037】
[スロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御]
図5は、スロットル開度TVOの経時変化を示す図である。図6はスロットル開度TVOに対し補助ブレーキECU100が発生させるホイルシリンダの増圧量ΔPを示すマップであり、補助ブレーキECU100に搭載されている。
【0038】
実施例2のアクセルオフ時補助ブレーキ制御においては、スロットルセンサ130によりスロットル開度TVOを検出し、補助ブレーキECU100に検出値を入力する。アクセルスイッチ120によりアクセルOFFが検出されると、補助ブレーキECU100においてアクセルOFFが検出される直前のスロットル開度TVOを読み込んで、読み込んだTVOの値に対応するホイルシリンダ増圧量ΔPとなるよう各バルブを制御する。
【0039】
すなわち、図5に示すように、スロットル開度TVOの値がスロットルセンサ130により検出され、補助ブレーキECU100に入力される。座標OP_nにおいてスロットル開度TVOが0となり、アクセルスイッチ120によりアクセルのOFFが検出される。その際、補助ブレーキECU100においてアクセルOFF直前の座標OP_n-1におけるスロットル開度TVO=aの値に対応するホイルシリンダ増圧量ΔP(a)が決定され、各バルブを制御することで、スロットル開度TVOに応じた制動力を発生させる。
【0040】
[スロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理]
図7は、スロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0041】
ステップS201では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS202へ移行する。
【0042】
ステップS202では、スロットルセンサ130により検出された現在のスロットル開度TVO値が補助ブレーキECU100に入力され、ステップS203へ移行する。
【0043】
ステップS203では、アクセルスイッチ120によりアクセルがONであるかが判断され、YESであればステップS205へ移行し、NOであればステップS204へ移行する。
【0044】
ステップS204では、補助ブレーキECU100においてアクセルOFF直前の座標OP_n-1におけるスロットル開度TVO=aの値に対応するホイルシリンダ増圧量ΔP(a)が決定され、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで、ホイルシリンダ圧がΔP(a)となるよう各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS203へ戻る。
【0045】
ステップS205では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS206へ移行し、NOであればステップS207へ移行する。
【0046】
ステップS206では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS202へ戻る。
【0047】
ステップS207では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS202へ移行し、NOであれば制御を終了する。
【0048】
[実施例2における作用効果]
実施例2においては、スロットルセンサ130により検出されたスロットル開度TVOを補助ブレーキECU100に入力し、アクセルスイッチ120によりアクセルOFFが検出された際、補助ブレーキECU100においてアクセルOFFが検出される直前のスロットル開度TVOが読み込まれ、読み込んだTVOの値に対応するホイルシリンダ増圧量となるよう各バルブを制御することとした。
【0049】
これにより、アクセルOFF直前のスロットル開度に応じた予備制動力を発生させることが可能となり、駆動力に応じた適切な予備制動力を確実に得ることができる。また、スロットル開度に応じた制動力を発生させるため、ブレーキ装置の必要以上の駆動を抑制することができ、ブレーキ装置の駆動に伴う発熱の回避を図ることができる(請求項2に対応。)。
【実施例3】
【0050】
実施例3につき図8及び図9に基づき説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。実施例1ではアクセルのON状態を条件として予備制動力を発生させたが、実施例3では通常走行時に予備制動力が発生して駆動力への抵抗となることを回避するため、車輪速VSが所定の閾値以上となった場合は補助ブレーキECU100による予備制動力を発生させない点で実施例1と異なる。
【0051】
[車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御]
車輪速VSが所定の閾値以上である場合、車両は通常走行中であると判断される。このとき補助ブレーキECU100による予備制動力が発生すると車両走行に対する抵抗となるため、車輪速VSが所定の閾値以上である場合は補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧を減圧、または補助ブレーキ制御を行わないこととする。
【0052】
すなわち、アクセルスイッチ120及び車輪速センサ140によりによりアクセルON/OFF信号と現在の車輪速VS_nを検出して補助ブレーキECU100に出力し、アクセルOFFであれば補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧を増圧し、アクセルONであって現在の車輪速VS_nが所定の閾値VS(b)未満であればホイルシリンダ圧の減圧制御を行い、閾値VS(b)以上であれば補助ブレーキをOFFとする制御を行う。
【0053】
[車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理]
図8は、車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0054】
ステップS301では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS302へ移行する。
【0055】
ステップS302では、車輪速センサ140により検出された現在の車輪速VS_nの値が補助ブレーキECU100に入力され、ステップS303へ移行する。
【0056】
ステップS303では、アクセルスイッチ120によりアクセルがONであるかが判断され、YESであればステップS305へ移行し、NOであればステップS304へ移行する。
【0057】
ステップS304では、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS303へ戻る。
【0058】
ステップS305では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS306へ移行し、NOであればステップS309へ移行する。
【0059】
ステップS306では、補助ブレーキECU100において現在の車輪速VS_nの値が所定の閾値VS(b)以上であるかどうかが判断され、YESであればステップS308へ移行し、NOであればステップS307へ移行する。
【0060】
ステップS307では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS302へ戻る。
【0061】
ステップS308では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS302へ移行し、NOであればステップS309へ移行する。
【0062】
ステップS309では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をOFFとし、制御を終了する。
【0063】
[車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御の経時変化]
図9は、車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御の経時変化を示すタイムチャートである。
時刻t1において補助ブレーキ制御がONとされ、アクセルスイッチ120がアクセルONを検出し、車輪速VSが増加を開始する。
時刻t2において車輪速VSが所定の閾値VS(b)となり、車両は走行中であると判断される。そのため予備制動力によって車両走行を阻害しないよう、時刻t2において補助ブレーキ制御がOFFとされる。
【0064】
[実施例3における作用効果]
実施例3においては、アクセルスイッチ120及び車輪速センサ140によりによりアクセルON/OFF信号と現在の車輪速VS_nを検出し、アクセルOFFであれば補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧を増圧する。アクセルONであって現在の車輪速VS_nが所定の閾値VS(b)未満であればホイルシリンダ圧の減圧制御を行い、アクセルONかつ閾値VS(b)以上であれば補助ブレーキ制御をOFFとすることとした。
【0065】
これにより、通常走行へ移行した場合には補助ブレーキECU100による予備制動力を発生させないことが可能となり、通常走行時における予備制動力の干渉を回避してスムーズに通常走行を行うことができる。また、予備制動力の必要がない通常走行時に補助ブレーキ制御をOFFとすることで必要以上のブレーキ作動を抑制することができ、ブレーキ装置の駆動に伴う発熱の回避を図ることができる(請求項3に対応。)。
【実施例4】
【0066】
実施例4につき図10ないし図12に基づき説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。実施例1ではアクセルのON状態を条件として予備制動力を発生させたが、実施例4ではスロットル開度TVOに対する車輪速VSの変化から走行路面の登り下りを判断し、登り路面と判断されれば予備制動力を小さく、下り路面と判断されれば予備制動力を大きくする点で実施例1と異なる。
【0067】
[スロットル開度及び車輪速変化量による路面勾配判断]
図10はスロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの関係を示す図である。車輪速変化量ΔVSは、車輪速VSの時間勾配すなわちd(VS)/dtである。スロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの値が小さいほど、運転者の要求駆動力に対し車速が低い、すなわち登り路面と判断される。一方、スロットル開度TVOに対する車輪速変化量の値が大きいほど、要求駆動力に対し車速が大きい、すなわち下り路面と判断される。
【0068】
[路面勾配に対応したホイルシリンダ圧制御]
図11は、補助ブレーキECU100によるホイルシリンダ圧の増圧制御値P*に対するホイルシリンダ増圧量ΔPを示す図である。ここで、増圧制御値P*は
P*=(車輪速変化量ΔVS)/(スロットル開度TVO)
で表される。したがって、スロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの値が小さい登り坂では増圧制御値P*は小さくなり、スロットル開度TVOに対する車輪速変化量の値が大きい下り坂では増圧制御値P*は大きくなる。
【0069】
登り路面における走行には大きな駆動力が必要であるが、予備制動力の発生は駆動力の低下につながるため走行の障害となる。そのため登り勾配が大きくなるほどホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定でき、予備制動力を小さくすることが可能である。一方、下り路面における走行には駆動力はさほど必要なく、予備制動力が発生しても走行を阻害することは少ないため、ホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きくして速度が過大になりすぎることを回避することが可能となる。
【0070】
[路面勾配に応じた補助ブレーキ制御]
実施例4においては、補助ブレーキECU100において路面勾配に応じた補助ブレーキ制御が実行される。まず、スロットルセンサ130及び車輪速センサ140により現在のスロットル開度TVO_n及び現在の車輪速VS_nを取り込む。
【0071】
TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を超過すれば運転者は駆動力の増加を要求していると判断し、その際ホイルシリンダ圧が補助ブレーキECU100により増圧状態にある場合、駆動力増加要求に対し予備制動力が抵抗とならないよう補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧の減圧を行う。増圧状態になければ制御を終了する。
【0072】
TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を下回れば運転者は駆動力の増加を要求していないと判断し、予備制動力を発生させる。その際、取り込んだ現在の車輪速VS_nの時間勾配である車輪速変化量ΔVSを算出する。この車輪速変化量ΔVSと現在のスロットル開度TVO_nから補助ブレーキECU100においてホイルシリンダ圧の増圧制御値P*=ΔVS/TVO_nを演算し、P*の値に基づき各バルブの増圧制御を行う。
すなわち、大きな駆動力が必要な登り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定して走行の抵抗となる予備制動力を抑え、駆動力はさほど必要ない下り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きくして予備制動力を発生させる。
【0073】
[路面勾配に応じた補助ブレーキ制御処理]
図12は、補助ブレーキECU100において実行される路面勾配に応じた補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0074】
ステップS401では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS402へ移行する。
【0075】
ステップS402では、車輪速センサ140により検出された現在の車輪速VS_nを取り込み、ステップS403へ移行する。
【0076】
ステップS403では、スロットルセンサ130により検出された現在のスロットル開度TVO_nを取り込み、ステップS404へ移行する。
【0077】
ステップS404では、補助ブレーキECU100において現在のスロットル開度TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を超過するかどうかが判断され、YESであればステップS405へ移行し、NOであればステップS407へ移行する。
【0078】
ステップS405では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS406へ移行し、NOであればステップS409へ移行する。
【0079】
ステップS406では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS402へ戻る。
【0080】
ステップS407では、補助ブレーキECU100においてホイルシリンダ圧の増圧制御値P*が演算され、ステップS408へ移行する。
【0081】
ステップS408では、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、演算された増圧制御値P*に基づき、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS404へ戻る。
【0082】
ステップS409では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS402へ移行し、NOであれば制御を終了する。
【0083】
[実施例4における作用効果]
実施例4においては、取り込まれたTVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を下回れば、車輪速変化量ΔVSと現在のスロットル開度TVO_nからホイルシリンダ圧の増圧制御値P*=ΔVS/TVO_nを演算し、P*の値に基づき各バルブの増圧制御を行う。その際、登り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定し、下り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きく設定することとした。
【0084】
これにより、走行路面の登り勾配及び下り勾配に応じた予備制動力を得ることで、大きな駆動力が必要な登り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定して走行の抵抗となる予備制動力を抑え、駆動力はさほど必要ない下り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きくして予備制動力を発生させることが可能となり、登り路面でアクセルを踏んでいるにもかかわらず急制動が行われたり、下り路面で制動力不足となることを回避し、安定した制動力を得ることができる(請求項4に対応。)。
【0085】
また、TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を下回ったときに各バルブの増圧制御を行うため、ブレーキペダルを放してもスロットル開度TVO_nが閾値TVO(c)未満であれば予備制動力がかかり、坂道発進をスムーズに行うことができる。さらに、アクセルペダルを放していれば予備制動力はかからないため、下り路面においてエンジンブレーキをかけている際に予備制動力が作用することはなく、運転者の所望する車両制動状態を阻害することがない。この効果は、特にマニュアルトランスミッション搭載車両においてより有効である。
【0086】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1ないし実施例4に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0087】
実施例2ではスロットル開度TVOに対し補助ブレーキECU100が発生させるホイルシリンダの増圧量ΔPは直線的に変化することとしているが、図13における破線で示すようにホイルシリンダの増圧量ΔPをステップ状に変化させてもよい。同様に、実施例4の補助ブレーキECU100によるホイルシリンダ圧の増圧制御値P*に対するホイルシリンダ増圧量ΔPは直線的に変化しているが、図14に示すように登り坂・平坦路面・下り坂に合わせてステップ状に変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本願ブレーキ制御装置の制御ブロック図である。
【図2】本願ブレーキ制御装置の油圧回路図である。
【図3】実施例1におけるアクセルONの判断基準を示す図である。
【図4】実施例1におけるアクセルオフ時補助ブレーキ減圧制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例2におけるスロットル開度TVOの経時変化を示す図である。
【図6】実施例2におけるスロットル開度TVOに対するホイルシリンダの増圧量を示すマップである。
【図7】実施例2におけるスロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例3における車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例3における車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御の経時変化を示すタイムチャートである。
【図10】実施例4におけるスロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの関係を示す図である。
【図11】実施例4において補助ブレーキECUによるホイルシリンダ圧の増圧制御値に対するホイルシリンダ増圧量を示す図である。
【図12】実施例4の補助ブレーキECUにおいて実行される路面勾配に応じた補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】本願実施例2における他の実施の形態を示す図である。
【図14】本願実施例4における他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
100 補助ブレーキECU(補助ブレーキ手段)
110 補助ブレーキスイッチ(補助ブレーキ選択手段)
120 アクセルスイッチ
130 スロットルセンサ
140 車輪速センサ
A ブレーキアクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ駆動によって液圧を発生させ、車輪に制動力をもたらすブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が縁石等路面上の障害物や急な坂道を乗り越える際、運転者はアクセルを大きく踏み込んで障害物を乗り越えるが、アクセルを大きく踏み込んでいるため車両の駆動力が大きくなり、乗り越えた後の車両速度が所望の速度よりも大きくなってしまう。そのため、障害物を乗り越えた後アクセルを放してブレーキペダルを踏み込むまでの間に空走距離が発生するという問題があった。
【0003】
この問題を解決するため、従来のブレーキ制御装置にあっては、アクセル踏み込み時のエンジン回転数と車速に基づいて発進時におけるエンジン回転数の上限値を設定し、この上限値以上となった際にはエンジン回転数に応じた予備制動力をかけることで、アクセルを放してからブレーキペダルを踏み込むまでの空走距離を縮めることとしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−39754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のブレーキ制御装置にあっては、アクセルを踏んでいるときに予備制動力をかけるため制動力が駆動力の抵抗となり、障害物や急坂を乗り越えるため更にアクセルを踏み込む必要がある。したがって、必要以上の燃料消費が発生し、燃費向上の妨げとなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、必要以上の燃料消費を抑えつつ、障害物や急坂を乗り越えた際の空走距離を短縮したブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、ホイルシリンダ内の液圧を自動的に増圧・減圧できるブレーキアクチュエータを備えたブレーキ制御装置において、アクセルのオン・オフを検出するアクセルスイッチと、前記アクセルのオフ状態に対応した前記アクセルスイッチの信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を増圧し、前記アクセルのオン状態に対応した信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を減圧する補助ブレーキ手段と、前記補助ブレーキ手段の実行・解除を行う補助ブレーキ選択手段とを備えることとした。
【0007】
よって、必要以上の燃料消費を抑えつつ、障害物や急坂を乗り越えた際の空走距離の短縮を達成可能なブレーキ制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の車両の制動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1ないし実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
[ブレーキ制御装置の制御構成]
実施例1につき図1ないし図4に基づき説明する。図1は、本願ブレーキ制御装置の制御ブロック図である。本願ブレーキ制御装置は、補助ブレーキECU100(補助ブレーキ手段)、補助ブレーキスイッチ110(補助ブレーキ選択手段)、アクセルスイッチ120、スロットルセンサ130(スロットル開度検出手段)、車輪速センサ140(車輪速検出手段)、ブレーキアクチュエータAを有する。
【0010】
アクセルスイッチ120はアクセルのON/OFFを検出し、スロットルセンサ130はスロットル開度TVOを検出して補助ブレーキECU100へ出力する。また、車輪速センサ140は車両の各車輪に設けられて車輪速を検出して補助ブレーキECU100へ車輪速VSの出力を行う。
【0011】
補助ブレーキECU100はブレーキアクチュエータA内に設けられたバルブを制御し、モータ21を駆動して車両の制動力制御を行うコントロールユニットである。この補助ブレーキECU100において、検出されたアクセルのON/OFF信号、スロットル開度TVO、及び車輪速VSの値に基づき、補助ブレーキ制御のON/OFF判断を行う。
【0012】
補助ブレーキ制御を行う場合、アクセルスイッチ120、スロットルセンサ130、及び車輪速センサ140の検出値に基づき、ブレーキアクチュエータAに設けられたP,S系統カットバルブ1,7及びP,S系統吸入バルブ2,8を制御し、モータ21を駆動してホイルシリンダ圧の増圧または減圧を行うことにより、車両の制動力の制御を行う。なお、実施例1ではアクセルスイッチ120により検出されたアクセルのON/OFF信号に基づいて各バルブの制御を行う。
【0013】
補助ブレーキスイッチ110は補助ブレーキECU100内に設けられ、ホイルシリンダ圧の増圧または減圧を補助ブレーキECU100に対し実行させるスイッチである。アクセルペダルの状態に応じ、アクセルペダルが踏み込まれると自動的にON信号を出力し、踏み込まれていないときはOFF信号を出力するアクセルスイッチ120のON/OFF信号に基づき、ホイルシリンダ圧の増圧または減圧を選択して補助ブレーキECU100に対し実行指令を行う。
【0014】
[ブレーキ制御装置の油圧回路]
図2は、ブレーキ制御装置の油圧回路図である。4輪のそれぞれに制動力を発生させるホイルシリンダ15,16,17,18は、2系統のブレーキ配管(P系統及びS系統)を介してマスタシリンダ22に接続されている。そして、P系統及びS系統の途中には、ブレーキ制御装置の油圧制御を行うブレーキアクチュエータAが設けられている。
【0015】
ブレーキアクチュエータAは、各ホイルシリンダ15,16,17,18の液圧を増圧・保持・減圧可能な液圧制御バルブ(INバルブ3,5,9,11及びOUTバルブ4,6,10,12)と、マスタシリンダ22とは別途設けられ、モータ21により駆動する制御用油圧源(P系統ポンプ13,S系統ポンプ14)の接続を切り換える油圧供給源切り換えバルブ(P系統カットバルブ1,P系統吸入バルブ2,S系統カットバルブ7,S系統吸入バルブ8)と、リザーバ19,20を備えている。
【0016】
運転者がブレーキペダル23を操作してマスタシリンダ22に油圧が発生すると、このマスタシリンダ圧をホイルシリンダ15,16,17,18に供給する通常ブレーキ状態と、運転者がブレーキ操作を行っていない場合、もしくは運転者のブレーキ操作以上に液圧が必要な場合に、モータ21を駆動して制御用油圧源13,14の液圧をホイルシリンダ15,16,17,18に向けて供給するとともに、各液圧制御バルブによりホイルシリンダ圧を減圧・保持・増圧制御を適宜選択して最適制御する制御ブレーキ状態とに切り換え可能に構成されている。
【0017】
[ホイルシリンダ圧制御]
ここで、各ホイルシリンダの圧力を制御する場合について説明する。P,S系統ともに同様の油圧回路構成であるため、P系統についてのみ説明する。P系統増圧時は、P系統ポンプ13を駆動し、P系統吸入バルブ2を開き、P系統ポンプ13にブレーキ液を供給する。そして、P系統カットバルブ1及び他輪のINバルブ5を閉じ、ブレーキ液の他系統への回り込みを抑止することで行われる。減圧時は、P系統吸入バルブ2を閉じ、P系統カットバルブ1を開放することによりホイルシリンダ液がマスタシリンダ22側に流出することで行われる。
【0018】
マスタシリンダ22による増圧では、P系統カットバルブ1を開放し、P系統吸入バルブ2を遮断し、INバルブ3,5を開放し、マスタシリンダ液量をホイルシリンダ側に流入することで行われる。減圧時は、INバルブ3,5を遮断し、OUTバルブ4,6を開放し、ホイルシリンダ液をリザーバ19側に流出することで行われる。リザーバ19に貯留されたブレーキ液は、モータ21によって駆動するポンプ13,14によって、マスタシリンダ22側に還流される。
【0019】
[実施例1におけるアクセルオフ時補助ブレーキ制御]
アクセルを踏んでいるときに補助ブレーキにより制動力をかけた場合、制動力が駆動力の抵抗となってしまい障害物や急坂を乗り越えるため更にアクセルを踏み込む必要があり、必要以上の燃料消費が発生する。
【0020】
したがって、アクセル踏み込み時においては制動力が発生しないよう、アクセルスイッチ120によりアクセルONが検出された場合は、補助ブレーキECU100によりP系統吸入バルブ2及びS系統吸入バルブ8を閉じ、P系統カットバルブ1及びS系統カットバルブ7を開放することで各ホイルシリンダの減圧を行う。
【0021】
また、アクセルOFFが検出された場合は、障害物を乗り越えた後にブレーキペダルを踏み込むまでの空走距離を低減するため、補助ブレーキECU100によりP系統吸入バルブ2及びS系統吸入バルブ8を開弁し、P系統カットバルブ1及びS系統カットバルブ7を閉弁することでホイルシリンダ圧を増圧して制動力を発生させる。
【0022】
[アクセルON判断基準]
図3は、アクセルスイッチ120によりアクセルがONと判断される際の判断基準を示す図である。縦軸にスロットル開度TVO、横軸にアクセル踏み込み量を示す。運転者がアクセルペダルを踏み込むと遊び領域を経てスロットル開度TVOが増加を開始するが、運転者がわずかにアクセルを踏み込んで車両が微小駆動力により走行している場合は、障害物等を乗り越えた際にアクセルペダルを放してブレーキペダルを踏み込むまでの空走距離はほとんど生じない。
【0023】
したがって、スロットル開度TVOが所定の閾値に達しない場合は予備制動力をかける必要がない。そのため、増加開始直後ではアクセルスイッチ120はON信号を出力しないよう設定することにより補助ブレーキECU100による予備制動力の発生させないこととする。スロットル開度が所定の閾値に達した場合にアクセルスイッチ120がON信号を出力するよう設定し、補助ブレーキECU100により予備制動力を発生させる。
【0024】
[実施例1におけるアクセルオフ時補助ブレーキ減圧処理]
図4は、補助ブレーキECU100において実行されるアクセルオフ時補助ブレーキ減圧制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップにつき説明する。
【0025】
ステップS101では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS102へ移行する。
【0026】
ステップS102では、アクセルスイッチ120によりアクセルがONであるかが判断され、YESであればステップS104へ移行し、NOであればステップS103へ移行する。
【0027】
ステップS103では、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS102へ戻る。
【0028】
ステップS104では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS105へ移行し、NOであればステップS106へ移行する。
【0029】
ステップS105では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS102へ戻る。
【0030】
ステップS106では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS102へ移行し、NOであれば制御を終了する。
【0031】
[従来例と本願実施例1における作用効果の対比]
車両が縁石等路面上の障害物や急な坂道を乗り越える際、運転者はアクセルを大きく踏み込んで障害物を乗り越えるが、アクセルを大きく踏み込んでいるため乗り越えた後の車両速度が所望の速度よりも大きくなってしまい、障害物や急坂を乗り越えた後アクセルを放してブレーキペダルを踏み込むまでの間に空走距離が発生してしまう。そのため従来のブレーキ制御装置では、アクセル踏み込み時のエンジン回転数と車速に基づいて発進時におけるエンジン回転数の上限値を設定し、この上限値以上となった場合にエンジン回転数に応じた予備制動力をかけることで空走距離を縮めることとしている。
【0032】
しかしながら、アクセルを踏んでいるときに予備制動力をかけるため制動力が駆動力の抵抗となり、障害物や急坂を乗り越えるため更にアクセルを踏み込む必要がある。したがって、必要以上の燃料消費が発生し、燃費向上の妨げとなるという問題があった。
【0033】
これに対し本願実施例1では、アクセルスイッチ120によりアクセルONが検出された場合、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダ圧を減圧することとした。また、アクセルOFFが検出された場合、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダ圧を増圧することとした。
【0034】
これにより、アクセルオフ時にのみホイルシリンダ圧を増圧とし、アクセル踏み込み時における予備制動力の発生を抑制することで、予備制動力が駆動力の妨げとなることを回避し、障害物や急坂を乗り越える際に更にアクセルを踏み込む必要性をなくすことで不必要な燃料消費を抑制し、燃費の向上を図ることができる(請求項1に対応。)。
【0035】
また、アクセルオフ時にのみホイルシリンダ圧を増圧とすることでブレーキの作動頻度を抑制することが可能となり、熱源となるブレーキ装置の駆動回数を低減して発熱を抑制することができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2につき図5ないし図7に基づき説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。実施例1ではアクセルのON状態を条件として予備制動力を発生させたが、実施例2では、駆動力に応じた適切な制動力を得るため、アクセルOFF直前のスロットル開度に応じた予備制動力を発生させる点で実施例1と異なる。
【0037】
[スロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御]
図5は、スロットル開度TVOの経時変化を示す図である。図6はスロットル開度TVOに対し補助ブレーキECU100が発生させるホイルシリンダの増圧量ΔPを示すマップであり、補助ブレーキECU100に搭載されている。
【0038】
実施例2のアクセルオフ時補助ブレーキ制御においては、スロットルセンサ130によりスロットル開度TVOを検出し、補助ブレーキECU100に検出値を入力する。アクセルスイッチ120によりアクセルOFFが検出されると、補助ブレーキECU100においてアクセルOFFが検出される直前のスロットル開度TVOを読み込んで、読み込んだTVOの値に対応するホイルシリンダ増圧量ΔPとなるよう各バルブを制御する。
【0039】
すなわち、図5に示すように、スロットル開度TVOの値がスロットルセンサ130により検出され、補助ブレーキECU100に入力される。座標OP_nにおいてスロットル開度TVOが0となり、アクセルスイッチ120によりアクセルのOFFが検出される。その際、補助ブレーキECU100においてアクセルOFF直前の座標OP_n-1におけるスロットル開度TVO=aの値に対応するホイルシリンダ増圧量ΔP(a)が決定され、各バルブを制御することで、スロットル開度TVOに応じた制動力を発生させる。
【0040】
[スロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理]
図7は、スロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0041】
ステップS201では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS202へ移行する。
【0042】
ステップS202では、スロットルセンサ130により検出された現在のスロットル開度TVO値が補助ブレーキECU100に入力され、ステップS203へ移行する。
【0043】
ステップS203では、アクセルスイッチ120によりアクセルがONであるかが判断され、YESであればステップS205へ移行し、NOであればステップS204へ移行する。
【0044】
ステップS204では、補助ブレーキECU100においてアクセルOFF直前の座標OP_n-1におけるスロットル開度TVO=aの値に対応するホイルシリンダ増圧量ΔP(a)が決定され、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで、ホイルシリンダ圧がΔP(a)となるよう各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS203へ戻る。
【0045】
ステップS205では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS206へ移行し、NOであればステップS207へ移行する。
【0046】
ステップS206では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS202へ戻る。
【0047】
ステップS207では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS202へ移行し、NOであれば制御を終了する。
【0048】
[実施例2における作用効果]
実施例2においては、スロットルセンサ130により検出されたスロットル開度TVOを補助ブレーキECU100に入力し、アクセルスイッチ120によりアクセルOFFが検出された際、補助ブレーキECU100においてアクセルOFFが検出される直前のスロットル開度TVOが読み込まれ、読み込んだTVOの値に対応するホイルシリンダ増圧量となるよう各バルブを制御することとした。
【0049】
これにより、アクセルOFF直前のスロットル開度に応じた予備制動力を発生させることが可能となり、駆動力に応じた適切な予備制動力を確実に得ることができる。また、スロットル開度に応じた制動力を発生させるため、ブレーキ装置の必要以上の駆動を抑制することができ、ブレーキ装置の駆動に伴う発熱の回避を図ることができる(請求項2に対応。)。
【実施例3】
【0050】
実施例3につき図8及び図9に基づき説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。実施例1ではアクセルのON状態を条件として予備制動力を発生させたが、実施例3では通常走行時に予備制動力が発生して駆動力への抵抗となることを回避するため、車輪速VSが所定の閾値以上となった場合は補助ブレーキECU100による予備制動力を発生させない点で実施例1と異なる。
【0051】
[車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御]
車輪速VSが所定の閾値以上である場合、車両は通常走行中であると判断される。このとき補助ブレーキECU100による予備制動力が発生すると車両走行に対する抵抗となるため、車輪速VSが所定の閾値以上である場合は補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧を減圧、または補助ブレーキ制御を行わないこととする。
【0052】
すなわち、アクセルスイッチ120及び車輪速センサ140によりによりアクセルON/OFF信号と現在の車輪速VS_nを検出して補助ブレーキECU100に出力し、アクセルOFFであれば補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧を増圧し、アクセルONであって現在の車輪速VS_nが所定の閾値VS(b)未満であればホイルシリンダ圧の減圧制御を行い、閾値VS(b)以上であれば補助ブレーキをOFFとする制御を行う。
【0053】
[車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理]
図8は、車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0054】
ステップS301では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS302へ移行する。
【0055】
ステップS302では、車輪速センサ140により検出された現在の車輪速VS_nの値が補助ブレーキECU100に入力され、ステップS303へ移行する。
【0056】
ステップS303では、アクセルスイッチ120によりアクセルがONであるかが判断され、YESであればステップS305へ移行し、NOであればステップS304へ移行する。
【0057】
ステップS304では、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS303へ戻る。
【0058】
ステップS305では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS306へ移行し、NOであればステップS309へ移行する。
【0059】
ステップS306では、補助ブレーキECU100において現在の車輪速VS_nの値が所定の閾値VS(b)以上であるかどうかが判断され、YESであればステップS308へ移行し、NOであればステップS307へ移行する。
【0060】
ステップS307では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS302へ戻る。
【0061】
ステップS308では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS302へ移行し、NOであればステップS309へ移行する。
【0062】
ステップS309では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をOFFとし、制御を終了する。
【0063】
[車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御の経時変化]
図9は、車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御の経時変化を示すタイムチャートである。
時刻t1において補助ブレーキ制御がONとされ、アクセルスイッチ120がアクセルONを検出し、車輪速VSが増加を開始する。
時刻t2において車輪速VSが所定の閾値VS(b)となり、車両は走行中であると判断される。そのため予備制動力によって車両走行を阻害しないよう、時刻t2において補助ブレーキ制御がOFFとされる。
【0064】
[実施例3における作用効果]
実施例3においては、アクセルスイッチ120及び車輪速センサ140によりによりアクセルON/OFF信号と現在の車輪速VS_nを検出し、アクセルOFFであれば補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧を増圧する。アクセルONであって現在の車輪速VS_nが所定の閾値VS(b)未満であればホイルシリンダ圧の減圧制御を行い、アクセルONかつ閾値VS(b)以上であれば補助ブレーキ制御をOFFとすることとした。
【0065】
これにより、通常走行へ移行した場合には補助ブレーキECU100による予備制動力を発生させないことが可能となり、通常走行時における予備制動力の干渉を回避してスムーズに通常走行を行うことができる。また、予備制動力の必要がない通常走行時に補助ブレーキ制御をOFFとすることで必要以上のブレーキ作動を抑制することができ、ブレーキ装置の駆動に伴う発熱の回避を図ることができる(請求項3に対応。)。
【実施例4】
【0066】
実施例4につき図10ないし図12に基づき説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。実施例1ではアクセルのON状態を条件として予備制動力を発生させたが、実施例4ではスロットル開度TVOに対する車輪速VSの変化から走行路面の登り下りを判断し、登り路面と判断されれば予備制動力を小さく、下り路面と判断されれば予備制動力を大きくする点で実施例1と異なる。
【0067】
[スロットル開度及び車輪速変化量による路面勾配判断]
図10はスロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの関係を示す図である。車輪速変化量ΔVSは、車輪速VSの時間勾配すなわちd(VS)/dtである。スロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの値が小さいほど、運転者の要求駆動力に対し車速が低い、すなわち登り路面と判断される。一方、スロットル開度TVOに対する車輪速変化量の値が大きいほど、要求駆動力に対し車速が大きい、すなわち下り路面と判断される。
【0068】
[路面勾配に対応したホイルシリンダ圧制御]
図11は、補助ブレーキECU100によるホイルシリンダ圧の増圧制御値P*に対するホイルシリンダ増圧量ΔPを示す図である。ここで、増圧制御値P*は
P*=(車輪速変化量ΔVS)/(スロットル開度TVO)
で表される。したがって、スロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの値が小さい登り坂では増圧制御値P*は小さくなり、スロットル開度TVOに対する車輪速変化量の値が大きい下り坂では増圧制御値P*は大きくなる。
【0069】
登り路面における走行には大きな駆動力が必要であるが、予備制動力の発生は駆動力の低下につながるため走行の障害となる。そのため登り勾配が大きくなるほどホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定でき、予備制動力を小さくすることが可能である。一方、下り路面における走行には駆動力はさほど必要なく、予備制動力が発生しても走行を阻害することは少ないため、ホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きくして速度が過大になりすぎることを回避することが可能となる。
【0070】
[路面勾配に応じた補助ブレーキ制御]
実施例4においては、補助ブレーキECU100において路面勾配に応じた補助ブレーキ制御が実行される。まず、スロットルセンサ130及び車輪速センサ140により現在のスロットル開度TVO_n及び現在の車輪速VS_nを取り込む。
【0071】
TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を超過すれば運転者は駆動力の増加を要求していると判断し、その際ホイルシリンダ圧が補助ブレーキECU100により増圧状態にある場合、駆動力増加要求に対し予備制動力が抵抗とならないよう補助ブレーキECU100によりホイルシリンダ圧の減圧を行う。増圧状態になければ制御を終了する。
【0072】
TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を下回れば運転者は駆動力の増加を要求していないと判断し、予備制動力を発生させる。その際、取り込んだ現在の車輪速VS_nの時間勾配である車輪速変化量ΔVSを算出する。この車輪速変化量ΔVSと現在のスロットル開度TVO_nから補助ブレーキECU100においてホイルシリンダ圧の増圧制御値P*=ΔVS/TVO_nを演算し、P*の値に基づき各バルブの増圧制御を行う。
すなわち、大きな駆動力が必要な登り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定して走行の抵抗となる予備制動力を抑え、駆動力はさほど必要ない下り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きくして予備制動力を発生させる。
【0073】
[路面勾配に応じた補助ブレーキ制御処理]
図12は、補助ブレーキECU100において実行される路面勾配に応じた補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0074】
ステップS401では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御をONとし、ステップS402へ移行する。
【0075】
ステップS402では、車輪速センサ140により検出された現在の車輪速VS_nを取り込み、ステップS403へ移行する。
【0076】
ステップS403では、スロットルセンサ130により検出された現在のスロットル開度TVO_nを取り込み、ステップS404へ移行する。
【0077】
ステップS404では、補助ブレーキECU100において現在のスロットル開度TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を超過するかどうかが判断され、YESであればステップS405へ移行し、NOであればステップS407へ移行する。
【0078】
ステップS405では、補助ブレーキECU100により各ホイルシリンダの液圧が増圧状態にあるかどうかが判断され、YESであればステップS406へ移行し、NOであればステップS409へ移行する。
【0079】
ステップS406では、補助ブレーキスイッチ110により減圧指令が出力され、P,S系統吸入バルブ2,8を閉弁し、P,S系統カットバルブ1,7を開弁することで各ホイルシリンダの減圧を行い、ステップS402へ戻る。
【0080】
ステップS407では、補助ブレーキECU100においてホイルシリンダ圧の増圧制御値P*が演算され、ステップS408へ移行する。
【0081】
ステップS408では、補助ブレーキスイッチ110により増圧指令が出力され、演算された増圧制御値P*に基づき、P,S系統吸入バルブ2,8を開弁し、P,S系統カットバルブ1,7を閉弁することで各ホイルシリンダの増圧を行い、ステップS404へ戻る。
【0082】
ステップS409では、補助ブレーキECU100において補助ブレーキ制御がONであるかどうかが判断され、YESであればステップS402へ移行し、NOであれば制御を終了する。
【0083】
[実施例4における作用効果]
実施例4においては、取り込まれたTVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を下回れば、車輪速変化量ΔVSと現在のスロットル開度TVO_nからホイルシリンダ圧の増圧制御値P*=ΔVS/TVO_nを演算し、P*の値に基づき各バルブの増圧制御を行う。その際、登り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定し、下り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きく設定することとした。
【0084】
これにより、走行路面の登り勾配及び下り勾配に応じた予備制動力を得ることで、大きな駆動力が必要な登り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を小さく設定して走行の抵抗となる予備制動力を抑え、駆動力はさほど必要ない下り路面ではホイルシリンダ圧の増圧制御値を大きくして予備制動力を発生させることが可能となり、登り路面でアクセルを踏んでいるにもかかわらず急制動が行われたり、下り路面で制動力不足となることを回避し、安定した制動力を得ることができる(請求項4に対応。)。
【0085】
また、TVO_nの値が所定の閾値TVO(c)を下回ったときに各バルブの増圧制御を行うため、ブレーキペダルを放してもスロットル開度TVO_nが閾値TVO(c)未満であれば予備制動力がかかり、坂道発進をスムーズに行うことができる。さらに、アクセルペダルを放していれば予備制動力はかからないため、下り路面においてエンジンブレーキをかけている際に予備制動力が作用することはなく、運転者の所望する車両制動状態を阻害することがない。この効果は、特にマニュアルトランスミッション搭載車両においてより有効である。
【0086】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1ないし実施例4に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0087】
実施例2ではスロットル開度TVOに対し補助ブレーキECU100が発生させるホイルシリンダの増圧量ΔPは直線的に変化することとしているが、図13における破線で示すようにホイルシリンダの増圧量ΔPをステップ状に変化させてもよい。同様に、実施例4の補助ブレーキECU100によるホイルシリンダ圧の増圧制御値P*に対するホイルシリンダ増圧量ΔPは直線的に変化しているが、図14に示すように登り坂・平坦路面・下り坂に合わせてステップ状に変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本願ブレーキ制御装置の制御ブロック図である。
【図2】本願ブレーキ制御装置の油圧回路図である。
【図3】実施例1におけるアクセルONの判断基準を示す図である。
【図4】実施例1におけるアクセルオフ時補助ブレーキ減圧制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例2におけるスロットル開度TVOの経時変化を示す図である。
【図6】実施例2におけるスロットル開度TVOに対するホイルシリンダの増圧量を示すマップである。
【図7】実施例2におけるスロットル開度を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例3における車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例3における車輪速閾値を用いたアクセルオフ時補助ブレーキ制御の経時変化を示すタイムチャートである。
【図10】実施例4におけるスロットル開度TVOに対する車輪速変化量ΔVSの関係を示す図である。
【図11】実施例4において補助ブレーキECUによるホイルシリンダ圧の増圧制御値に対するホイルシリンダ増圧量を示す図である。
【図12】実施例4の補助ブレーキECUにおいて実行される路面勾配に応じた補助ブレーキ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】本願実施例2における他の実施の形態を示す図である。
【図14】本願実施例4における他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
100 補助ブレーキECU(補助ブレーキ手段)
110 補助ブレーキスイッチ(補助ブレーキ選択手段)
120 アクセルスイッチ
130 スロットルセンサ
140 車輪速センサ
A ブレーキアクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイルシリンダ内の液圧を自動的に増圧・減圧できるブレーキアクチュエータを備えたブレーキ制御装置において、
アクセルのオン・オフを検出するアクセルスイッチと、
前記アクセルのオフ状態に対応した前記アクセルスイッチの信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を増圧し、前記アクセルのオン状態に対応した信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を減圧する補助ブレーキ手段と、
前記補助ブレーキ手段の実行・解除を行う補助ブレーキ選択手段と
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段を備え、
前記補助ブレーキ手段による増圧量は、前記アクセルがオフする直前のスロットル開度に応じた増圧量であることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
車輪速度を検出する車輪速センサを備え、
前記車輪速が所定値以上となったとき、前記補助ブレーキ選択手段により前記補助ブレーキ手段の解除を行うことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、
車輪速を検出する車輪速検出手段と、
を備え、
前記スロットル開度に対する前記車輪速の変化から走行路面の登り下りを判断し、
前記補助ブレーキ手段による増圧量を登りでは小さく、下りでは大きくすることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項1】
ホイルシリンダ内の液圧を自動的に増圧・減圧できるブレーキアクチュエータを備えたブレーキ制御装置において、
アクセルのオン・オフを検出するアクセルスイッチと、
前記アクセルのオフ状態に対応した前記アクセルスイッチの信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を増圧し、前記アクセルのオン状態に対応した信号に応じて前記ホイルシリンダ内の液圧を減圧する補助ブレーキ手段と、
前記補助ブレーキ手段の実行・解除を行う補助ブレーキ選択手段と
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段を備え、
前記補助ブレーキ手段による増圧量は、前記アクセルがオフする直前のスロットル開度に応じた増圧量であることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
車輪速度を検出する車輪速センサを備え、
前記車輪速が所定値以上となったとき、前記補助ブレーキ選択手段により前記補助ブレーキ手段の解除を行うことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、
車輪速を検出する車輪速検出手段と、
を備え、
前記スロットル開度に対する前記車輪速の変化から走行路面の登り下りを判断し、
前記補助ブレーキ手段による増圧量を登りでは小さく、下りでは大きくすることを特徴とするブレーキ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−21546(P2006−21546A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198713(P2004−198713)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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