説明

ブレーキ制御装置

【課題】発進前にスノーフェード対策を行うことのできるブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】車輪と共に回転するローターと当該ローターに押圧することで制動力を発生させるパッドとの間のクリアランスを推定するクリアランス推定手段と、クリアランス推定手段によって推定されたクリアランスに基づいてスノーフェードを検知するスノーフェード検知手段とを備える。クリアランスを推定してスノーフェードを検知することによって、スノーフェードを正確に検知することが可能となり、確実にスノーフェードの解消を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のブレーキを制御するブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地においては、雪道などを走行した際に、雪、あるいは水がタイヤハウスの中に入り、ブレーキのパッドやローター表面で凍りつくことによってパッドの摩擦係数が大きく低下してしまうスノーフェードという現象が起こる。従来、このようなスノーフェードに対するブレーキ制御装置として、ホイールシリンダ液圧と、車輪減速度から摩擦係数を推定し、当該摩擦係数に基づいてスノーフェードを検出し、ホイールシリンダ液圧の増圧によるパッドの引きずりによって解消するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなブレーキ制御装置にあっては、走行中にブレーキが踏まれて初めてスノーフェードを検出及び解消することが可能となるため、ブレーキの反応が遅くなる可能性があるという問題があった。また、各車輪に非接触の温度センサを取り付ける必要があるため、コストが高くなるという問題があった。更に、通常のブレーキフェードをスノーフェードと検出する可能性もあり、スノーフェード特有の対策を行いにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、発進前にスノーフェード対策をすることのできるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブレーキ制御装置は、車輪共に回転するローターと当該ローターに押圧することで制動力を発生させるパッドとの間のクリアランスを推定するクリアランス推定手段と、クリアランス推定手段によって推定されたクリアランスに基づいてスノーフェードを検知するスノーフェード検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
クリアランスを推定してスノーフェードを検知することによって、スノーフェードを正確に検知することが可能となり、発進前にスノーフェード対策を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、クリアランス推定手段は、制動時におけるブレーキフルード流量に基づいてクリアランスを推定することが好ましい。これによって、センサなどの追加部品を取り付けることなくクリアランスを推定することが可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、ブレーキフルード流量は、リザーバタンクの液面高さに基づいて決定されることが好ましい。これによって、センサなどの追加部品を取り付けることなくブレーキフルード流量を決定することが可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、クリアランスを推定するために、自動制御を行うことが好ましい。これによって、運転手の操作なしに自動的にスノーフェードを検知することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、クリアランスの推定を車両の停止時に行うことが好ましい。走行前にスノーフェードを検知することが可能となり、スノーフェード状態で走行することを防止することができる。
【0012】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、クリアランスの推定をエンジン始動時に行うことが好ましい。長時間駐車した後、エンジン始動時はスノーフェードが起こり易いため、スノーフェード状態で走行することを防止できる。
【0013】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、スノーフェード検知手段によってスノーフェードと判定された場合、スノーフェードを解消するスノーフェード解消処理を行うことが好ましい。これによって、スノーフェードと判定されたときに、スノーフェードを解消することで、スノーフェード状態で走行することを防止できる。
【0014】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、スノーフェード解消処理は、制動圧を増減させることでローターにパッドを打ち付けることでなされることが好ましい。ローターにパッドを打ち付けて氷を割ることによって、スノーフェードを解消することができる。
【0015】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、車両が停止中で、且つ、運転手による発進の意図がないときにスノーフェード解消処理を行うことが好ましい。走行時にスノーフェード解消処理を行うと運転手に不快感を与えるため、この不快感を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、スノーフェード検知手段によってスノーフェードと判定された場合、運転手に警告を行うことが好ましい。これによって、スノーフェードを運転手に認知させることができる。
【0017】
また、本発明に係るブレーキ制御装置において、クリアランスの推定は、前回に推定したクリアランス値に基づいて行われることが好ましい。ピストンシールの劣化などによるクリアランスの変化に応じてスノーフェードを判定できるため、誤った判定を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発進前にスノーフェード対策をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置の構成を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置における制御処理を示すフローチャートである。
【図3】ブレーキフルード流量を推定するために用いられる線図である。
【図4】本発明の変形例に係るブレーキ制御装置の構成を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係るブレーキ制御装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置1の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置1の構成を示すブロック構成図である。ブレーキ制御装置1は、走行前にスノーフェードを検出すると共に未然に対策を行う機能を有しており、ECU(Electronic Control Unit)2、M/Cカットソレノイド11、増圧用ポンプモータ12、警告表示部13を備えて構成されている。
【0022】
M/Cカットソレノイド11は、マスターシリンダに設けられており、ECU2からの制御信号に基づいてドライバからの入力を遮断する機能を有している。増圧用ポンプモータ12は、ECU2からの制御信号に基づいてブレーキ液圧の増圧を行い、ブレーキのパッドをロータに押付ける機能を有している。警告表示部13は、車内に取り付けられた警告ランプなどから構成されており、点灯することによって、ドライバに対してスノーフェード警告を行う機能を有している。
【0023】
ECU2は、ブレーキ制御装置1全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPUを主体として構成され、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを備えている。ECU2は、温度取得部3、シフト取得部4、液圧取得部5、フルード流量推定部6、クリアランス前回値記憶部7、クリアランス判定部(クリアランス推定手段、スノーフェード検知手段)8、ブレーキ増圧制御部9、警告表示制御部10を備えて構成されている。
【0024】
温度取得部3は、温度センサなどから車外の外気温度を取得する機能を有している。シフト取得部4は、シフトポジションを取得する機能を有している。温度取得部3及びシフト取得部4は、取得した情報をブレーキ増圧制御部9へ出力する機能を有している。また、液圧取得部5は、ブレーキ液圧を取得する機能を有している。液圧取得部5は、フルード流量推定部6へ出力する機能を有している。
【0025】
フルード流量推定部6は、液圧取得部5で取得されたブレーキ液圧に基づいて、ブレーキフルード流量を推定する機能を有している。フルード流量推定部6は、例えば、予め取得しておいたデータに基づいてマップを引くことによってブレーキフルード流量を推定することができる。フルード流量推定部6は、推定したブレーキフルード流量をクリアランス判定部8へ出力する機能を有している。
【0026】
クリアランス前回値記憶部7は、クリアランスを判定するためのブレーキフルード流量の前回測定値を格納する機能を有している。また、クリアランス前回値記憶部7は、クリアランス判定部8の要求に応じて格納している前回値を出力する機能を有している。
【0027】
クリアランス判定部8は、ブレーキフルード流量に基づいてブレーキのパッドクリアランスの推定を行う機能を有すると共に、推定したクリアランスに基づいてスノーフェードを検知する機能を有している。具体的には、クリアランス判定部8は、クリアランスの減少に基づいて、スノーフェードが起きているかの判定を行う機能を有すると共に、スノーフェードが解消したか否かの判定を行う機能を有している。クリアランス判定部8は、フルード流量推定部6で推定されたブレーキフルード流量を通常時の流量と比較することによって、当該判定を行う。
【0028】
ブレーキ増圧制御部9は、増圧用ポンプモータ12に制御信号を出力することによってブレーキ液圧の増圧を行い、更に、ブレーキフルード液圧が所定の定数を超えるまでの時間を計測する機能を有している。また、ブレーキ増圧制御部9は、温度取得部3で取得した外気温と所定の定数を比較することによって、スノーフェードが起こる状態であるかを判定し、本実施形態に係る制御を行うか否かの判断を行う機能を有している。また、ブレーキ増圧制御部9は、シフト取得部4からシフトポジション情報を取得してPレンジが維持されているか否かの判定を行うことで、ドライバに発進の意思があるかを判断する機能を有している。
【0029】
警告表示制御部10は、警告表示部13に制御信号を出力してスノーフェード警告を点灯させる機能を有している。また、スノーフェードが解消した場合に、警告を解除させることによって、運転者に制御の終了を伝達する機能も有している。
【0030】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置1の動作について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置1における制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両のエンジン始動時にECU2において実行される処理である。
【0031】
図2に示すように、ブレーキ制御装置1のブレーキ増圧制御部9は、温度取得部3で取得した外気温が、所定の定数K1を下回っているか否かを判定することによって、本実施形態に係る制御を行うか否かの判定を行う(ステップS10)。S10の処理では、外気温がK1を下回っている場合はスノーフェードの虞があると判断し、外気温がK1以上である場合は、スノーフェードの虞はないと判断できる。また、所定の定数K1は、例えば0℃に設定することができる。S10において、外気温がK1以上であると判定された場合は、図2に示す制御処理は終了する。
【0032】
一方、S10において、外気温がK1を下回っていると判定された場合、ブレーキ増圧制御部9は、ブレーキ液圧の増圧を行うと共に、ブレーキフルード液圧PBFが所定の定数K2を超えるまでの時間T1を計測する(ステップS12)。具体的に、ブレーキ増圧制御部9は、M/Cカットソレノイド11に制御信号を出力することによって、ドライバからの入力を遮断した後、増圧用ポンプモータ12に制御信号を出力して定回転運動させることによって、ブレーキ液圧の増圧を行う。ここで、図3(a)は、ブレーキのパッドとローターとを接触させる際における液圧と時間の関係を示す線図であるが、ブレーキ増圧制御部9は、ブレーキのパッドがローターに接触して、液圧取得部5により取得されたブレーキフルード液圧PBFが図3(a)に示すように立ち上がって所定の定数K2を上回るまでの時間T1を計測する。所定の定数K2は、パッドとローターとが接触するまでの液圧を上回ると共に、接触後速やかに液圧が上回るような値に設定することが好ましい。なお、このとき増圧用ポンプモータ12は、ドライバによる操作が入らない程度の範囲でゆっくり回され、T1を長く取ることで精度を高めることが好ましい。
【0033】
次に、フルード流量推定部6は、ブレーキフルード流量FBFを推定する(ステップS14)。具体的には、フルード流量推定部6は、事前に図3(b)に示すようなモータ回転数と時間の関係を表すデータを取得しておき、このデータとS12で測定した時間T1に基づいてマップを引くことによって、図3(b)の斜線部で示される部分の面積Aに比例するブレーキフルード流量FBFを推定する。
【0034】
次に、クリアランス判定部8は、スノーフェードによりパッドクリアランスが減少したか否かの判定を行う(ステップS16)。具体的には、S14で推定したブレーキフルード流量FBFが、事前に設定した通常時のブレーキフルード流量FBFOから所定の定数K3を引いた値よりも小さいか否かを判定することによって、スノーフェードによりパッドクリアランスが減少したか否かの判定を行う。ここで、所定の定数K3は、誤検出を防ぐために、スノーフェードを十分に検出できると共にバラツキを吸収できるように検出余裕として設定されたものである。また、クリアランス前回値記憶部7に前回測定されたブレーキフルード流量FBFの値が格納されている場合は、当該前回値に基づいてK3の閾値を変更することにより、ピストンシールの特性変化も吸収し、精度良くスノーフェードを検出することが可能となる。S16において、ブレーキフルード流量FBFが、事前に設定した通常時のブレーキフルード流量FBFOから所定の定数K3を引いた値以上であると判定されると、図2に示す制御処理は終了する。
【0035】
一方、S16において、ブレーキフルード流量FBFが、事前に設定した通常時のブレーキフルード流量FBFOから所定の定数K3を引いた値を下回っていると判定された場合は、スノーフェードによりパッドクリアランスが減少したとみなされ、警告表示制御部10は、警告表示部13に制御信号を出力してスノーフェード警告を点灯させる(ステップS18)。これによって、ドライバの発進を抑制すると共に、制動動作による違和感を軽減する。
【0036】
次に、ブレーキ増圧制御部9は、シフト取得部4からシフトポジション情報を取得してPレンジが維持されているか否かの判定を行う(ステップS20)。この処理では、Pレンジが解除されたかどうかを判定してドライバに発進の意思があるかの判断がなされる。S20において、Pレンジが解除されたと判定されると、ドライバに発進の意思があると判断して、制御を中止し図2に示す処理が終了する。このとき、スノーフェード警告は、スノーフェード解消が確認されるまで点灯を続けることによって、引き続きドライバへの注意を促す。スノーフェードの起こり易い寒冷地では、路面の摩擦係数が低下している場合が多いが、制御によるブレーキ作動中に、ドライバによるアクセル操作が行われると、スリップの可能性がありドライバに違和感を与える可能性がある。従って、上述のように制御を中止して警告のみを行うことによって、安全且つドライバに違和感を与えることなく運転させることが可能となる。
【0037】
一方、S20において、Pレンジが維持されていると判定されると、ブレーキ増圧制御部9は、ブレーキ液圧を増加させることにより、スノーフェード解消処理を行う(ステップS22)。この処理においては、ローターとパッドを打ち付けることによって解氷を行い、スノーフェードの解消を図る。次に、クリアランス判定部8は、スノーフェードが解消されたか否かの判定を行う(ステップS24)。具体的には、ブレーキフルード流量FBFが、通常時のブレーキフルード流量FBFOから所定の定数K4を引いた値を上回ったか否かを判定することによって、スノーフェードの解消を判定する。このとき、検出余裕の定数K4は、定数K3よりも小さく設定することによって、確実にスノーフェード解消の判定を行うことができる。S24でスノーフェードが解消していないと判定されると、S20へ移行し、S20〜S24の処理が再び繰り返される。一方、S24でスノーフェードが解消していると判定されると、警告表示制御部10は、警告表示部13に対して制御信号を出力することによって、スノーフェード警告の解除を行い、これによって制御終了をドライバに伝達する(ステップS26)。
【0038】
以上によって、本実施形態に係るブレーキ制御装置1によれば、クリアランスを推定してスノーフェードを検知することによって、スノーフェードを正確に検知することが可能となり、確実にスノーフェードの解消を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランス判定部8は、制動時におけるブレーキフルード流量に基づいてクリアランスを推定するため、センサなどの追加部品を取り付けることなくクリアランスを推定することが可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランスを推定するために、自動制御を行って増圧しているため、運転手の操作なしに自動的にスノーフェードを検知することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランスの推定を車両の停止時に行っているため、走行前にスノーフェードを検知することが可能となり、スノーフェード状態で走行することを防止することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランスの推定をエンジン始動時に行っている。長時間駐車した後、エンジン始動時はスノーフェードが起こり易いため、スノーフェード状態で走行することを防止できる。
【0043】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランス判定部8の判定によってスノーフェードと判断された場合、スノーフェードを解消するスノーフェード解消処理を行っているため、スノーフェード状態で走行することを防止できる。
【0044】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、スノーフェード解消処理は、制動圧を増減させることでローターにパッドを打ち付けることでなされている。ローターにパッドを打ち付けて氷を割ることによって、スノーフェードを解消することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、車両が停止中で、且つ、運転手による発進の意図がないときにスノーフェード解消処理を行っている。走行時にスノーフェード解消処理を行うと運転手に不快感を与えるため、この不快感を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランス判定部8によってスノーフェードと判断された場合、運転手に警告を行うことによって、スノーフェードを運転手に認知させることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1において、クリアランスの推定は、前回に推定したクリアランス値に基づいて行われている。ピストンシールの劣化などによるクリアランスの変化に応じてスノーフェードを判定できるため、誤った判定を防止できる。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、自動ブレーキ機構が無くとも、一般的な車両ではエンジン始動時にブレーキを踏むことが要求されるため、この動作を利用したブレーキ制御装置100を提供してもよい。図4は、本発明の変形例に係るブレーキ制御装置100の構成を示すブロック構成図である。ブレーキ制御装置1は、ドライバのブレーキ踏み込み時のブレーキフルード流量から、パッドクリアランスを推定して、ドライバへのスノーフェード警告のみを行う機能を有しており、図4に示すように、ECU102、警告表示部13を備えて構成されている。また、ECU102は、液面高さ取得部111、フルード流量推定部112、クリアランス前回値記憶部7、クリアランス判定部8、警告表示制御部10を備えて構成されている。警告表示部13、クリアランス前回値記憶部7、クリアランス判定部8、警告表示制御部10はブレーキ制御装置1のものと同様の機能を有している。
【0050】
このブレーキ制御装置1の液面高さ取得部111は、リザーバタンクの液面高さを計測する機能を有し、フルード流量推定部112は、その測定値に基づいてブレーキフルード流量FBFを演算する機能を有している。具体的には、ドライバによりブレーキが踏み込まれたときのリザーバタンクの液面高さをL1とし、ブレーキが放されたことが検出されたときの液面高さをL2とした場合、(L1−L2)×面積Aによって、ブレーキフルード流量FBFが演算される(面積Aは、図3における斜線部の面積)。この値に基づいてスノーフェードを検出することができる。これによって、センサなどの追加部品を取り付けることなくブレーキフルード流量を決定することが可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0051】
また、自動ブレーキ機構を有する車両においても、この方式によって演算されたブレーキフルード流量FBFを、図2に示す制御処理におけるS16、S24の処理に用い、あるいはブレーキフルード流量FBFの前回値として用いてもよい。これによって、エンジン始動直近の正常停止の際におけるFBF前回値を利用することができるため、ブレーキフルード流量FBFの前回値を利用することによる補正の効果を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…ブレーキ制御装置、8…クリアランス判定部(クリアランス推定手段、スノーフェード検知手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するローターと当該ローターに押圧することで制動力を発生させるパッドとの間のクリアランスを推定するクリアランス推定手段と、
前記クリアランス推定手段によって推定された前記クリアランスに基づいてスノーフェードを検知するスノーフェード検知手段と、を備えるブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記クリアランス推定手段は、制動時におけるブレーキフルード流量に基づいて前記クリアランスを推定することを特徴とする請求項1記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキフルード流量は、リザーバタンクの液面高さに基づいて決定されることを特徴とする請求項2記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記クリアランスを推定するために、自動制御を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記クリアランスの推定を車両の停止時に行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記クリアランスの推定をエンジン始動時に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記スノーフェード検知手段によってスノーフェードと判定された場合、スノーフェードを解消するスノーフェード解消処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記スノーフェード解消処理は、制動圧を増減させることで前記ローターに前記パッドを打ち付けることでなされることを特徴とする請求項7記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
車両が停止中で、且つ、運転手による発進の意図がないときに前記スノーフェード解消処理を行うことを特徴とする請求項7又は8記載のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記スノーフェード検知手段によってスノーフェードと判定された場合、運転手に警告を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項11】
前記クリアランスの推定は、前回に推定したクリアランス値に基づいて行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−215202(P2010−215202A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67539(P2009−67539)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】