説明

ブロックイソシアナート系接着促進剤を含有する硬化可能な薄膜形成組成物を含む光学エレメント

基体と、基体上に被覆を形成するために基体の少なくとも一部分に適用された硬化可能な薄膜形成組成物とから作製される光学エレメントが記載される。硬化可能な薄膜形成組成物は、i)反応性官能基を含有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む樹脂状物質と、ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる2つ以上の反応性官能基を有する硬化剤と、iii)低い温度で脱ブロックすることができるブロック剤によりブロックされたブロックイソシアナート基を含む、i)およびii)とは異なる物質とを含む。iii)の物質は、iii)の物質を硬化可能な薄膜形成組成物に含まない実質的に同一の光学エレメントと比較した場合、硬化可能な薄膜形成組成物と、基体および/または重ねられた被覆との間における接着を改善するために少なくとも十分な量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ブロックイソシアナート系接着促進剤を含有する硬化可能な薄膜形成組成物により被覆された基体を含む光学エレメントに関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
耐久性および耐摩耗性を維持しながら、許容され得る像形成特性を提供する光学エレメントが、様々な用途のために、例えば、フロントガラス、サングラス、ファッションレンズ、非処方レンズおよび処方レンズ、スポーツマスク、保護面およびゴーグルなどのために求められている。その必要性に答えて、様々な被覆された光学エレメントが開発されている。
【0003】
しかしながら、多くの場合、そのような被覆は、長期にわたる着用を提供するために十分な、基体に対する接着を有していない。基体および/または続いて塗布された被覆に対する被覆の接着を強化するために接着促進剤(例えば、エポキシドおよびアミノアルキルトリアルコキシシランなど)を含有する被覆(例えば、フォトクロミック被覆および保護的なタイ層被覆など)が開発されている。しかしながら、そのような接着促進剤は、被覆組成物の不安定性および低下した貯蔵寿命をもたらし得る非常に反応性の官能基を有する。ブロックイソシアナートもまた使用されているが、ブロック剤の脱ブロック温度が樹脂状組成物の硬化温度を超えるときには、そのような接着促進剤は、必要な程度まで効果的ではない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化温度以下での接着を改善することにおいて効果的であり、それにもかかわらず、組成物の貯蔵寿命を妨げない接着促進剤を含む被覆組成物を含有する光学用品を開発することがこの分野では求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明によれば、
a)基体;および
b)基体上に被覆を形成するために基体の少なくとも一部分に適用された硬化可能な薄膜形成組成物
を含む、光感応特性を有するように適合された光学用品が提供される。硬化可能な薄膜形成組成物は、
i)反応性官能基を含有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む樹脂状物質;
ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる2つ以上の反応性官能基を有する硬化剤;および
iii)ブロックイソシアナート基と、別の異なる官能基とを含む、i)およびii)とは異なる物質であって、この別の異なる官能基は、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基と反応することができる、物質
を含む。1つの実施形態において、そのようなイソシアナート基は、100℃もの低い温度で脱ブロックすることができるブロック剤によりブロックされる。あるいは、ブロック剤は、iii)の物質における官能基、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基のいずれかが互いに反応する温度以下で脱ブロックすることができる。iii)の物質は、iii)の物質を硬化可能な薄膜形成組成物に含まない実質的に同一の光学エレメントと比較した場合、硬化可能な薄膜形成組成物と、基体および/または重ねられた被覆との間における接着を改善するために少なくとも十分な量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本明細書および添付された特許請求の範囲において使用されるとき、“a”、“an”および“the”の単数形態は、明示的かつ一義的に1つの指示対象物に限定されない限り、複数の指示対象物を包含することが留意される。
【0007】
本明細書の目的で、別途示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分、反応条件および他のパラメーターの量を表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。従って、そうでないことが示されない限り、下記の明細書および添付された特許請求の範囲において示される数値パラメーターは、本発明によって得られるべき所望の性質に依存して変化し得る近似値である。最低限でも、また、均等論を特許請求の範囲の範囲に適用することを制限しようとするものとしてではなく、それぞれの数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効桁の数字に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されなければならない。
【0008】
本明細書中におけるすべての数値範囲は、列挙された数値範囲に含まれるすべての数値およびすべての数値の様々な範囲を包含する。本発明の広い範囲を示す数値範囲および数値パラメーターが近似値であることにもかかわらず、具体的な実施例において示される数値はできる限り正確に報告される。しかしながら、数値はどれも、それらの個々の試験測定において見出される標準偏差に必ず由来する一定の誤差を本来的に含有する。
【0009】
本明細書中に示されるような本発明の様々な実施形態および実施例はそれぞれが、本発明の範囲に関して非限定的であることが理解される。
【0010】
下記の説明および特許請求の範囲において使用される場合、下記の用語はその示された意味を有する。
【0011】
用語「アクリル」および用語「アクリラート」は、(そうすることがその意図された意味を変えない限り)交換可能に使用され、また、明確に別途示されない限り、種々のアクリル酸、無水物およびその誘導体、例えば、それらのC〜Cアルキルエステル、低級アルキル置換アクリル酸(例えば、C〜C置換アクリル酸、例えば、メタクリル酸、エタクリル酸など)、および、それらのC〜Cアルキルエステルなどを包含する。用語「(メタ)アクリル」または用語「(メタ)アクリラート」は、示された物質のアクリル/アクリラートおよびメタクリル/メタクリラートの両方の形態(例えば、(メタ)アクリラートモノマー)を包含することが意図される。
【0012】
用語「硬化する」、用語「硬化した」または類似する用語は、硬化した組成物または硬化可能な組成物(例えば、何らかの特定の記載の「硬化した組成物」)に関連して使用される場合、硬化可能な組成物を形成する重合可能な成分および/または架橋可能な成分の少なくとも一部が少なくとも部分的に重合および/または架橋していることを意味する。1つの実施形態において、架橋度は完全な架橋の5%〜100%の範囲であり得る。代わりの実施形態において、架橋度は完全な架橋の35%〜85%(例えば、50%〜85%)の範囲であり得る。架橋度は、列挙された値を含めて、前記で言及された値の任意の組み合わせの間での範囲であり得る。
【0013】
用語「硬化可能な」は、例えば、硬化可能な薄膜形成組成物に関連して使用される場合、示された組成物が、例えば、熱による開始、触媒による開始、電子ビームによる開始、化学的なフリーラジカルによる開始、および/または、紫外光もしくは他の化学線にさらされることなどによる光開始(これらに限定されない)を含む手段によって重合可能または架橋可能であることを意味する。
【0014】
用語「光感応機能」、用語「光感応特性」または、同様な趣旨の用語は、示された物質(例えば、被覆、薄膜、基体など)が、その物質に当たる入射光線(例えば、可視放射線、紫外(UV)放射線および/または赤外(IR)放射線)の吸収(または濾波)による改変が可能であることを意味する。代わりの実施形態において、光感応機能は、例えば、偏光子および/または二色性色素による光の偏光;例えば、化学線にさらされたときに色を変化させる発色団(例えば、フォトクロミック物質など)の使用による光吸収特性における変化;例えば、固定されたチント(tint)(例えば、従来の色素など)の使用による入射光線の一部のみの透過;あるいは、そのような光感応機能の1つまたは複数の組み合わせによるものであり得る。
【0015】
用語「少なくとも1つの光感応特性を有するように適合された(される)」は、例えば、堅い光学基体に関連して使用される場合、指定された品目が、光学基体に組み込まれた光感応特性、または、光学基体に付け加えられた光感応特性を有することができることを意味する。例えば、光感応特性を有するように適合されるプラスチックマトリックスは、そのプラスチックマトリックスが、フォトクロミック性の色素またはチントを内部に収容するための十分な内部自由体積を有することを意味する。そのようなプラスチックマトリックスの表面は、代わりとして、それに付け加えられたフォトクロミック性またはチント化された層、薄膜または被覆を有することができる場合があり、かつ/あるいは、それに付け加えられた偏光性の薄膜を有することができる。
【0016】
用語「における」、用語「に付け加えられた」、用語「に取り付けられた」、用語「に結合した」、用語「に接着した」、または、同様な趣旨の用語は、示された品目(被覆、薄膜または層)が物体表面に直接に連続させられる(重ねられる)か、あるいは、例えば、(重ねられた)1つまたは複数の他の被覆、薄膜または層を介して物体表面に間接的に連続させられるかのいずれかを意味する。
【0017】
用語「眼科用」は、眼および視覚に関連するエレメントおよびデバイス、例えば、限定されないが、アイウエア用のレンズ、例えば、矯正用レンズおよび非矯正用レンズならびに拡大用レンズなどを示す。
【0018】
用語「光学品質」は、例えば、ポリマー物質(例えば、「光学品質の樹脂」または「光学品質の有機ポリマー物質」)に関連して使用される場合、示された物質(例えば、ポリマー物質、樹脂または樹脂組成物)が、光学用品(例えば、眼科用レンズなど)として、または、光学用品との組み合わせで使用することができる基体、層、薄膜または被覆であること、あるいは、そのような基体、層、薄膜または被覆を形成することを意味する。
【0019】
用語「堅い」は、例えば、光学的基体に関連して使用される場合、指定された品目が自立性(self supporting)であることを意味する。
【0020】
用語「光学的基体」は、指定された基体が、例えば、Haze Gard Plus Instrumentによって550ナノメートルで測定されたとき、少なくとも4パーセントの光透過値を示し(少なくとも4パーセントの入射光を透過し)、1パーセント未満(例えば、0.5パーセント未満)のヘーズを示すことを意味する。光学的基体には、光学用品、例えば、レンズ、光学的層(例えば、光学的樹脂層)、光学的薄膜および光学的被覆、ならびに、光感応特性を有する光学的基体が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
用語「フォトクロミック受容性」は、その内部に取り込まれたフォトクロミック物質が、商業的な光学的適用のために要求される程度にその無色形態からその有色形態に変わること(次いで、その無色形態に戻ること)を可能にするための十分な自由体積を、示された品目が有することを意味する。
【0022】
用語「チント化された」は、例えば、眼科用エレメントおよび光学的基体に関連して使用される場合、示された品目が、一定の光放射線吸収剤(例えば、従来の着色用色素、赤外光および/または紫外光を吸収する物質などであるが、これらに限定されない)を、示された品目の表面または内部に含有することを意味する。チント化された品目は、化学線に応答して著しく変化しない、可視放射線についての吸収スペクトルを有する。
【0023】
用語「非チント化(チント化されていない)」は、例えば、眼科用エレメントおよび光学的基体に関連して使用される場合、示された品目が、一定の光放射線吸収剤を実質的に含まないことを意味する。非チント化品目は、化学線に応答して著しく変化しない、可視放射線についての吸収スペクトルを有する。
【0024】
用語「化学線」には、紫外(「UV」)光の範囲から、可視光の範囲を通って、赤外の範囲に及ぶ電磁放射線の波長を有する光が含まれる。本発明において使用される被覆組成物を硬化させるために使用することができる化学線は、一般には、150ナノメートル〜2,000ナノメートル(nm)、180nm〜1,000nm、または、200nm〜500nmの範囲での電磁放射線の波長を有する。1つの実施形態において、10nm〜390nmの範囲での波長を有する紫外線を使用することができる。好適な紫外光の光源の例には、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀灯、中圧水銀灯または高圧水銀灯、渦流プラズマアーク、および、紫外線発光ダイオードが含まれる。好適な紫外線発光ランプは、ランプ管の長さにわたって200〜600ワット/インチ(79〜237ワット/センチメートル)の範囲での出力を有する中圧水銀灯である。
【0025】
用語「チント化フォトクロミック」は、例えば、眼科用エレメントおよび光学的基体に関連して使用される場合、示された品目が、一定の光吸収剤と、フォトクロミック物質とを含有することを意味する。示された品目は、化学線に応答して変化し、かつ、化学線が除かれたときには熱的に可逆的である可視放射線についての吸収スペクトルを有する。例えば、チント化フォトクロミック品目は、フォトクロミック物質が化学線にさらされるとき、光吸収剤(例えば、着色チント)の第1の特徴と、光吸収剤および活性化されたフォトクロミック物質の組み合わせの第2の色特徴とを有することができる。
【0026】
用語「二色性物質」、用語「二色性色素」、または、同様な趣旨の用語は、透過した放射線の2つの直交する面偏光成分の一方を他方よりも強く吸収する物質/色素を意味する。二色性物質の限定されない例には、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、アゾ染料およびポリ(アゾ)染料、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、(ポリ)アントラキノン、アントラピリミジノン、ヨウ素およびヨウ素酸塩が含まれる。用語「二色性の」は、「偏光性の」または同様な趣旨の語句と同義である。
【0027】
用語「二色性フォトクロミック」は、二色性特性およびフォトクロミック特性の両方を示す指定された物質または物品を示す。代わりの限定されない実施形態において、指定された物質は、フォトクロミック色素/化合物および二色性色素/化合物の両方、または、フォトクロミック特性および二色性特性の両方を有する単独の色素/化合物を含むことができる。
【0028】
用語「透明な」は、例えば、基体、薄膜、物質および/または被覆に関連して使用される場合、示された基体、被覆、薄膜および/または物質が、認められるほどの散乱を伴うことなく光を透過し、その結果、その下に置かれている物体が完全に見えるという性質を有することを意味する。
【0029】
語句「少なくとも部分的な薄膜」は、基体の完全な表面までの少なくとも一部分を覆う薄膜の量を意味する。本明細書中で使用される「薄膜」は、シート化タイプの物質または被覆タイプの物質によって形成され得る。例えば、薄膜は、示された物質の少なくとも部分的に硬化したポリマーシートまたは少なくとも部分的に硬化したポリマー被覆であり得る。語句「少なくとも部分的に硬化した」は、硬化可能または架橋可能な成分の一部〜すべてが硬化、架橋および/または反応させられた物質を意味する。
【0030】
用語「フォトクロミック量」は、活性化されたときには肉眼に識別可能なフォトクロミック効果を生じさせるために十分な量のフォトクロミック物質が使用されることを意味する。使用される具体的な量は、多くの場合、その照射のときに所望される色の強度、および、フォトクロミック物質を取り込むために使用された方法に依存する。典型的には、別の限定されない実施形態においては、多くのフォトクロミック物質が取り込まれるほど、色の強度が特定の限界まで大きくなる。それ以上の物質の添加が顕著な効果を有しない点が存在する。だが、所望されるならば、それよりも多くの物質を加えることができる。
【0031】
用語「重ねられた」は、b)の硬化可能な薄膜形成組成物の少なくとも一部分が、基体と、重ねられた被覆との間に位置するように、b)の硬化可能な薄膜形成組成物の上に適用される被覆、または、b)の硬化可能な薄膜形成組成物に続いて適用される被覆を表す。
【0032】
本発明によれば、
a)基体;および
b)基体上に被覆を形成するために基体の少なくとも一部分に適用された硬化可能な薄膜形成組成物
を含む、光感応特性を有するように適合された光学エレメントが提供される。次いで、硬化可能な薄膜形成組成物は、
i)反応性官能基を含有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む樹脂状物質;
ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる2つ以上の反応性官能基を有する硬化剤;および
iii)ブロックイソシアナート基と、別の異なる官能基とを含む、i)およびii)とは異なる物質であって、この別の異なる官能基は、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基と反応することができる、物質
を含む。そのようなイソシアナート基はブロック剤によりブロックされる。1つの実施形態において、ブロック剤は100℃もの低い温度で脱ブロックすることができる。別の実施形態において、多くの場合、硬化可能な薄膜形成組成物が熱的に硬化可能であるときには、ブロック剤は、iii)の物質における官能基、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基のいずれかが互いに反応する温度以下で脱ブロックすることが可能である。加えて、iii)の物質は、iii)の物質を硬化可能な薄膜形成組成物に含まない実質的に同一の光学エレメントと比較した場合、硬化可能な薄膜形成組成物と、基体および/または重ねられた被覆との間における接着を改善するために少なくとも十分な量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する。
【0033】
本発明の光学エレメントには、眼科用物品、例えば、度のないレンズ(屈折力を有しない)、および、多焦点レンズ(二焦点レンズ、三焦点レンズおよび多重焦点レンズ)を含む視力矯正(処方)レンズ(完成品および半完成品)など;ならびに、眼用デバイス、例えば、コンタクトレンズおよび眼内レンズ、サンレンズ、ファッションレンズ、スポーツマスク、保護面およびゴーグルなどが含まれる。光学エレメントはまた、ガラス、例えば、窓および車用の透明物(例えば、自動車のフロントガラスおよび側面窓など)などから選ばれる場合がある。
【0034】
本発明の光学エレメントは、光感応特性を有するように適合される。そのような特性は2つ以上のタイプであってもよく、また、基体、硬化可能な薄膜形成組成物、および/または、任意の重ねられた被覆を含めて、光学エレメントの成分のいずれかに付与され得る。
【0035】
本発明において使用される基体a)は光学的基体を含み、とりわけ、無機ガラス、セラミック、ゾルゲルおよびポリマー有機物質から選ぶことができる。基体は堅くてもよく、すなわち、その形状を維持し、かつ、適用された硬化可能な薄膜形成組成物を支えることができる。光学的基体は、それに適用される任意の被覆または処理を含めて、上記で議論されたような光感応特性を有するように適合され得る。光感応特性は2つ以上のタイプであってもよく、また、例えば、基体マトリックス内への光感応化合物の吸水膨潤または流し込みによって基体の不可欠な要素になり得る(すなわち、基体に組み込まれ得る)か、あるいは、光感応化合物が、基体の表面に適用された被覆または処理に含有され得る。本発明の特定の実施形態において、基体はポリマー有機物質であり、例えば、光学的に透明な重合物など、例えば、光学的適用(例えば、眼科用物品など)のために好適な物質である。そのような光学的に透明な重合物は、広範囲に変化し得る屈折率を有する。例には、光学的樹脂の重合物(例えば、熱可塑性ポリカーボナートなど)、ならびに、PPG Industries,Inc.によって、TRIVEX(登録商標)モノマー組成物として販売される光学的樹脂、および、CRの呼称のもとで販売される光学的樹脂(例えば、CR−39(登録商標)モノマー組成物)などが含まれる。Mitsui Chemicals Co.,Ltd.から、MR−6、MR−7、MR−8およびMR−10の名称のもとで得ることができる高屈折率のポリチオウレタン基体もまた好適である。他の好適な基体の限定されない例が米国特許出願公開第2004/0096666において段落番号[0061]および段落番号[0064]〜段落番号[0081]に開示される(これは参考として本明細書中に援用される)。
【0036】
本発明の光学用品において使用される基体は、熱可塑性物質、熱硬化性物質およびそれらの混合物から選ばれるポリマー有機物質を含むことができる。そのような物質は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(第4版、第6巻、669頁〜760頁)に記載されている。熱可塑性物質は、当業者には公知であるように、適切な化学的修飾によって実質的に熱可塑性または熱硬化性にすることができる。
【0037】
本発明において基体として使用することができる光学的樹脂のさらなる例には、例えば、米国特許第5,166,345号(第11欄52行〜第12欄52行)に開示されるようなハードコンタクトレンズおよびソフトコンタクトレンズ、米国特許第5,965,630号に記載されているような高水分含有量のソフトコンタクトレンズ、ならびに、米国特許第5,965,631号に記載されているような長期装着コンタクトレンズを形成するために使用される樹脂が含まれる(コンタクトレンズのための光学的樹脂に関連するそれらの開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0038】
特定の実施形態において、基体は被覆または薄膜をその表面に含むことができ、この場合、そのような被覆または薄膜は光感応特性を提供し、かつ/または、摩耗もしくは他の損傷からの、基体に対する保護を提供する。好適な耐摩耗性被覆の例には、米国特許出願公開第2004/0207809号(段落番号[0205]〜段落番号[0249])(これは参考として本明細書中に援用される)に開示される被覆が含まれる。衝撃抵抗性を提供するために設計された好適な被覆には、米国特許第5,316,791号(第3欄7行〜第7欄35行)(これは参考として本明細書中に援用される)に開示される被覆が含まれる。他の好適な被覆および薄膜が下記においてより詳しく議論される。
【0039】
b)の硬化可能な薄膜形成組成物は、任意の公知である手段を使用して、例えば、熱的に、または、化学線によって硬化させることができる。薄膜形成組成物は、
i)反応性官能基を含有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む樹脂状物質;
ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる2つ以上の反応性官能基を有する硬化剤;および
iii)ブロックイソシアナート基と、別の異なる官能基とを含む、i)およびii)とは異なる物質であって、この別の異なる官能基は、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基と反応することができる、物質
を含む。本発明の光学エレメントにおいて使用される硬化可能な薄膜形成組成物は任意の物理的形態を取ることができ、ほとんどの場合には溶媒系または水系である。
【0040】
i)の樹脂状物質は1つまたは複数のモノマーを含むことができ、この場合、少なくとも1つのモノマーが反応性官能基を含有する。好適なモノマーには、エチレン性不飽和モノマーが含まれ、例えば、ビニルモノマーおよび/または(メタ)アクリルモノマー;すなわち、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらのエステル(例えば、1個〜30個(多くの場合、4個〜18個)の炭素原子をアルキル基に含有する脂肪族アルキルエステル)のモノマーが含まれる。好適なエステルには、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオナート、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、芳香族グリシジルエーテル(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなど)に由来する(メタ)アクリラート、および、脂肪族グリシジルエーテルに由来する(メタ)アクリラート、ならびに、スチレン系モノビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレンおよびクロロスチレンなど)が含まれる。
【0041】
有用なヒドロキシル官能性モノマーには、典型的には2個〜4個の炭素原子をヒドロキシアルキル基に含有するアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル(例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなど)、カプロラクトンとアクリル酸ヒドロキシアルキルとのヒドロキシ官能性付加体、および、対応するメタクリル酸エステルとのヒドロキシ官能性付加体、ならびに、下記に記載されるβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーが含まれる。N−(アルコキシメチル)アクリルアミドおよびN−(アルコキシメチル)メタクリルアミドもまた好適である。
【0042】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、エチレン性不飽和のエポキシ官能性モノマーと、約13個〜約20個の炭素原子を有するカルボン酸とから、または、エチレン性不飽和の酸官能性モノマーと、エチレン性不飽和の酸官能性モノマーとの重合ができない、少なくとも5個の炭素原子を含有するエポキシ化合物とから調製することができる。
【0043】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和のエポキシ官能性モノマーには、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、エチレン性不飽和モノイソシナートのヒドロキシ官能性モノエポキシド(例えば、グリシドールなど)との1:1(モル)付加体、および、重合可能なポリカルボン酸(例えば、マレイン酸など)のグリシジルエステルが含まれるが、これらに限定されない。アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルが好ましい。カルボン酸の例には、飽和モノカルボン酸(例えば、イソステアリン酸など)、および、芳香族の不飽和カルボン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和の酸官能性モノマーには、モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸など)、ジカルボン酸(例えば、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸など)、ならびに、ジカルボン酸のモノエステル(例えば、マレイン酸モノブチルおよびイタコン酸モノブチルなど)が含まれる。エチレン性不飽和の酸官能性モノマーとエポキシ化合物とは典型的には1:1の当量比で反応する。このエポキシ化合物は、不飽和の酸官能性モノマーとのフリーラジカル開始による重合に関与するエチレン性不飽和を含有しない。有用なエポキシ化合物には、1,2−ペンテンオキシド、スチレンオキシド、および、通常の場合には8個〜30個の炭素原子を含有するグリシジルエステルまたはグリシジルエーテル(例えば、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよびパラ−(第三級ブチル)フェニルグリシジルエーテルなど)が含まれる。一般に使用されるグリシジルエステルには、下記の構造を有するグリシジルエステル:
【0045】
【化1】

(式中、Rは、約4個〜約26個の炭素原子を含有する炭化水素基である)
が含まれる。多くの場合、Rは、約8個〜約10個の炭素原子を有する分枝状炭化水素基であり、例えば、ネオペンタノアート、ネオヘプタノアートまたはネオデカノアートなどである。カルボン酸の好適なグリシジルエステルには、VERSATIC ACID911およびCARDURA E(これらのそれぞれがShell Chemical Co.から市販されている)が含まれる。
【0046】
カルバマート官能性モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸のカルバマート官能性アルキルモノマーを使用することができる。他の有用なカルバマート官能性モノマーが米国特許第5,098,947号(これは参考として本明細書中に援用される)に開示される。他の有用なカルバマート官能性モノマーが米国特許第5,098,947号(これは参考として本明細書中に援用される)に開示される。
【0047】
アミド官能性モノマーは、樹脂状物質i)としての使用に好適である。同様に、他の官能基を、好適な官能性モノマーを、入手可能ならば、使用して、または、変換反応を必要に応じて使用して、所望される通りに取り込むことができる。
【0048】
化学線硬化可能な組成物は一般に、少なくとも1つのフリーラジカル光開示剤を含有する。組成物がカチオン性の開始型エポキシモノマーを含むとき、配合物はまた、少なくとも1つのカチオン性光開始剤を含有する。光開始剤は、組成物の硬化を開始させ、かつ、持続させるために十分な量(すなわち、開始量)で存在する。光開始剤は典型的には、硬化プロセスの開始を得るために必要な最少量で使用される。一般に、光開始剤は0.1重量パーセント〜10重量パーセントの量で存在する。代わりの実施形態において、光開始剤は、硬化可能な組成物における光開始による重合可能な成分の総重量に基づいて、0.5重量パーセント〜6重量パーセントの量で存在し、例えば、1重量パーセント〜4重量パーセントの量で存在する。様々なフリーラジカル光開始剤が当業者には広く公知である。市販の光開始剤の様々な例を米国特許第5,910,375号の第10欄38行〜43行に見出すことができる(その開示は本明細書により参考として本明細書中に援用される)。
【0049】
カチオン性の光開始剤はフリーラジカル光開始剤と併せて使用することができる。一般に、カチオン性の開始剤は、引抜き型の光開始剤、水素ドナー物質(例えば、ブチリルコリントリフェニルブチルボラートなど)、または、そのような物質の組み合わせとともに使用される。典型的なカチオン性の光開始剤は、米国特許第5,639,802号(第8欄59行〜第10欄46行)に記載されているオニウム塩である(その開示は本明細書により参考として本明細書中に援用される)。そのような開始剤の限定されない例には、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、フェニル−4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、[4−[(2−テトラデカノール)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート塩、および、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスファート塩(例えば、六フッ化リンのトリフェニルスルホニウム塩)が含まれる。カチオン性開始剤の混合物もまた使用することができる。
【0050】
i)の樹脂状物質はまた、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボナートおよびポリエーテルから選択されるオリゴマーおよび/またはポリマーを含むことができる。一般に、これらのオリゴマーおよびポリマーは、当業者に公知である任意の方法によって作製されるこれらのタイプのどれもが可能である。樹脂状物質における官能基は、とりわけ、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバマート基、アミド基、ウレア基、アクリラート基およびメルカプタン基から選択することができる。
【0051】
好適なアクリルポリマーには、アクリル酸またはメタクリル酸、および/あるいは、アクリル酸またはメタクリル酸の1つまたは複数のアルキルエステルの、場合により1つまたは複数の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーと一緒でのコポリマーが含まれる。アクリル酸またはメタクリル酸の有用なアルキルエステルには、1個〜30個(多くの場合、4個〜18個)の炭素原子をアルキル基に含有する脂肪族アルキルエステルが含まれる。限定されない例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが含まれる。好適な他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーには、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレンおよびビニルトルエンなど)、ニトリル(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなど)、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンなど)、ならびに、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニルなど)が含まれる。
【0052】
アクリルポリマーはヒドロキシル官能基を含むことができ、そのようなヒドロキシル官能基は、多くの場合、1つまたは複数のヒドロキシル官能性モノマーを、コポリマーを作製するために使用される反応物に含むことによってポリマーに取り込まれる。有用なヒドロキシル官能性モノマーには、上記のヒドロキシル官能性モノマーが含まれる。アクリルポリマーはまた、N−(アルコキシメチル)アクリルアミドおよびN−(アルコキシメチル)メタクリルアミドを用いて調製することができる。
【0053】
カルバマート官能基は、アクリルモノマーをカルバマート官能性ビニルモノマー(例えば、メタクリル酸のカルバマート官能性アルキルエステルなど)と共重合することによってアクリルポリマーに含むことができる。あるいは、カルバマート官能基は、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーを低分子量のカルバマート官能性物質(例えば、アルコールまたはグリコールエーテルからカルバモイル交換反応によって得ることができる低分子量のカルバマート官能性物質)と反応させることによってアクリルポリマーに導入することができる。この反応において、アルコールまたはグリコールエーテルに由来する低分子量のカルバマート官能性物質はアクリルポリオールのヒドロキシル基と反応して、カルバマート官能性アクリルポリマーおよび最初のアルコールまたはグリコールエーテルをもたらす。アルコールまたはグリコールエーテルに由来する低分子量のカルバマート官能性物質は、アルコールまたはグリコールエーテルを触媒の存在下で尿素と反応させることによって調製することができる。好適なアルコールには、低分子量の脂肪族アルコール、脂環族アルコールおよび芳香族アルコールが含まれ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノールおよび3−メチルブタノールなどが含まれる。好適なグリコールエーテルには、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが含まれる。プロピレングリコールメチルエーテルおよびメタノールがほとんどの場合において使用される。当業者に公知であるような他のカルバマート官能性モノマーもまた使用することができる。
【0054】
アミド官能基を、好適な官能性モノマーをポリマーの調製において使用することによって、または、他の官能基を、当業者に公知である技術を使用してアミド基に変換することによってアクリルポリマーに導入することができる。同様に、他の官能基を、好適な官能性モノマーを、入手可能ならば、使用して、または、変換反応を必要に応じて使用して、所望される通りに取り込むことができる。
【0055】
アクリルポリマーは、水性乳化重合技術によって調製し、かつ、水性の被覆組成物の調製において直接に使用することができるか、または、溶媒系組成物のために有機溶液重合技術によって調製することができる。塩形成が可能である基(例えば、酸基またはアミン基など)を用いて有機溶液重合技術によって調製されるとき、これらの基を塩基または酸により中和すると、ポリマーを水性媒体に分散させることができる。一般に、この分野で認識されている量のモノマーを利用する、当業者に公知である、そのようなポリマーを作製する方法はどれも使用することができる。
【0056】
アクリルポリマーに加えて、i)の樹脂状物質はアルキド樹脂またはポリエステルオリゴマーおよび/またはポリエステルポリマーであり得る。そのような物質は、多価アルコールおよびポリカルボン酸を縮合させることによる、公知である様式で調製することができる。好適な多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが含まれるが、これらに限定されない。好適なポリカルボン酸には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびトリメリト酸が含まれるが、これらに限定されない。上記で述べられたポリカルボン酸に加えて、これらの酸の機能的等価体(例えば、存在するときには、無水物など)、または、これらの酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステルなど)を使用することができる。風乾性のアルキド樹脂を作製することが所望される場合、好適な乾燥性オイル脂肪酸を使用することができ、これらとしては、例えば、アマニ油、ダイズ油、トール油、脱水ひまし油またはキリ油に由来する脂肪酸が含まれる。
【0057】
様々な不飽和ポリエステル樹脂が当業者には周知であり、そのような不飽和ポリエステル樹脂は、1つまたは複数のポリオールを1つまたは複数のポリカルボン酸(飽和型および不飽和型)と反応させることによって調製することができ、この場合、オレフィン性不飽和が反応物(通常、ポリカルボン酸)の1つまたは複数によって提供される。ポリエステル樹脂は一般に、1000〜5000の数平均分子量を有する。
【0058】
不飽和ポリカルボン酸、例えば、ジカルボン酸の限定されない例には、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸およびメコン酸、それらの無水物およびそれらの低級アルキルエステルまたは酸ハロゲン化物が含まれるが、これらに限定されない。飽和ポリカルボン酸の限定されない例には、脂肪族ジカルボン酸、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ピメリン酸およびセバシン酸など;芳香族酸、例えば、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸など、ならびに、そのような芳香族酸の無水物、例えば、無水フタル酸および無水マレイン酸など、ならびに、これらの酸の低級アルキルエステルまたは酸ハロゲン化物、または、それらの混合物が含まれる。
【0059】
ポリオールの限定されない例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、および、ポリ(エチレングリコール)(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど)、および、それらの混合物が含まれる。
【0060】
ポリエステル樹脂はまた、他の共重合可能なモノマー(例えば、アリルエステル、アクリラートモノマーおよびそれらの混合物など)を含有することができる。アリルエステルの限定されない例には、フタル酸ジアリル、ジエチレングリコールビス(アリルカーボナート)、シアヌル酸トリアリル、アクリル酸アリル、およびマレイン酸ジアリルが含まれる。アクリラートモノマーの限定されない例には、モノアクリラート、ジアクリラート、トリアクリラート、テトラアクリラート、ペンタアクリラート、および、より高次の多官能性アクリラートが含まれ、これらには、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、エトキシ化ジスフェノールAジアクリラート、エトキシ化ジスフェノールAジメタクリラート、トリメチロールプロパンポリオキシエチレントリアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラートおよびビス(4−メタクリロリルチオフェニル)スルフィドが含まれる。
【0061】
アリルエステルはポリエステル樹脂組成物の1重量パーセント〜20重量パーセントを占め得る。アクリラートモノマーはポリエステル組成物の1重量パーセント〜50重量パーセントを占め得る。ポリエステル組成物は、従来の光開始剤を組成物に配合し、その後、組成物に放射線(例えば、紫外光)を照射することによって硬化させることができる。ポリエステル組成物の限定されない例を、米国特許第6,863,848号の表2、表3、表5、表7および表8に見出すことができる(そのような組成物は参考として本明細書中に援用される)。これらの組成物およびそれらの硬化のさらなる詳細を米国特許第6,863,848号の第16欄11行〜第21欄48行に見出すことができる(その開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0062】
i)の好適な樹脂状物質の別の限定されない例は、不飽和ポリエステル樹脂、エチレン性不飽和エステルモノマー、場合により使用されるビニルモノマー、および、フリーラジカル重合触媒を含む組成物である。そのような組成物が米国特許第5,319,007号の第6欄61行〜第10欄54行に記載されている(その開示は参考として本明細書中に援用される)。不飽和ポリエステル樹脂は、飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸と、多価アルコールとの相互作用に由来する。
【0063】
ベースポリエステル樹脂は一般に、分子量が1500〜5200であり、平均分子量が2470であり、25℃でのBrookfield粘度が440センチポアズである。そのようなベースポリエステルに加えて、柔軟なポリエステルを場合により含むことができる。
【0064】
エチレン性不飽和エステルは、下記の一般式によって表される芳香族エステル:
CH=C(A)−C(O)−O−[(CH−O]−Ar(R)
(式中、AはC1〜12アルキルを含み、Arはフェニレン分子を含み、RはC1〜5アルキルを含み、mは1〜6の整数を含み、nは1〜12の整数を含む)
であり得るか、あるいは、この不飽和エステルはアクリル酸またはメタクリル酸のエステルであり得る。そのようなエチレン性不飽和エステルの限定されない例には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチルおよびアクリル酸エトキシエチルが含まれる。
【0065】
カルバマート官能基は、ポリエステルを形成する際に使用されるポリ酸およびポリオールと反応することができるカルバミン酸ヒドロキシアルキルを最初に形成することによってポリエステルに取り込むことができる。カルバミン酸ヒドロキシアルキルはポリエステル上の酸官能基と縮合し、これにより、末端のカルバマート官能基をもたらす。カルバマート官能基はまた、ポリエステル上の末端ヒドロキシル基を、アクリルポリマーへのカルバマート基の取り込みに関連して上記で記載されたプロセスと類似するカルバモイル交換プロセスにより低分子量のカルバマート官能性物質と反応させることによって、または、イソシアン酸をヒドロキシル官能性ポリエステルと反応させることによってポリエステルに取り込むことができる。
【0066】
他の官能基、例えば、エチレン性不飽和、アミン、アミド、チオールおよびウレアなどを、好適な官能性反応物を、入手可能ならば、使用して、または、変換反応を、所望される官能基を得るために必要であるように使用して、所望される通りにポリエステル樹脂またはアルキド樹脂に取り込むことができる。様々なそのような技術が当業者には公知である。
【0067】
ポリウレタンはまた、i)の樹脂状物質として使用することができる。使用することができるポリウレタンの1つは、ポリエステポリオールまたはアクリルポリオール(例えば、上記で述べられたポリエステポリオールまたはアクリルポリオールなど)を、OH/NCO当量比が1:1よりも大きく、その結果、遊離ヒドロキシル基が生成物に存在するように、ポリイソシアナートと反応させることによって一般には調製されるポリウレタンポリオールである。そのようなポリウレタンポリオールを調製するために使用される有機ポリイソシアナートは、脂肪族ポリイソシアナート(これが典型的には使用される)、または、芳香族ポリイソシアナート、または、これら2つの混合物であり得る。ジイソシアナートが典型的には使用される。しかし、高次ポリイソシアナートを、ジイソシアナートの代わりに、または、ジイソシアナートとの組み合わせで使用することができる。好適な芳香族ジイソシアナートの例は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートおよびトルエンジイソシアナートである。好適な脂肪族ジイソシアナートの例は、直鎖の脂肪族ジイソシアナートであり、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどである。同様にまた、脂環族ジイソシアナートを用いることができる。例には、イソホロンジイソシアナートおよび4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアナート)が含まれる。好適な高次ポリイソシアナートの例は、1,2,4−ベンゼントリイソシアナートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアナートである。ポリエステルの場合のように、反応しなかったカルボン酸基を有するポリウレタンを調製することができ、これは、塩基(例えば、アミンなど)により中和したとき、水性媒体への分散を可能にする。
【0068】
末端および/またはペンダント状のカルバマート官能基を、ポリイソシアナートを末端/ペンダント状のカルバマート基を含有するポリオールと反応させることによってポリウレタンに取り込むことができる。あるいは、カルバマート官能基を、ポリイソシアナートを別個の反応物としてのポリオールおよびカルバミン酸ヒドロキシアルキルまたはイソシアン酸と反応させることによってポリウレタンに取り込むことができる。カルバマート官能基はまた、ヒドロキシル官能性ポリウレタンを、アクリルポリマーへのカルバマート基の取り込みに関連して上記で記載されたプロセスと類似するカルバモイル交換プロセスにより低分子量のカルバマート官能性物質と反応させることによってポリウレタンに取り込むことができる。加えて、イソシアナート官能性ポリウレタンは、カルバマート官能性ポリウレタンを生じさせるために、カルバミン酸ヒドロキシアルキルと反応させることができる。
【0069】
他の官能基、例えば、エチレン性不飽和、アミド、チオールおよびウレアなどを、好適な官能性反応物を、入手可能ならば、使用して、または、変換反応を、所望される官能基を得るために必要に応じて使用して、所望される通りにポリウレタンに取り込むことができる。様々なそのような技術は、当業者には公知である。
【0070】
好適なポリカーボナートを、当業者に公知であるように、ホスゲンまたはカーボナートジエステルを1つまたは複数のポリオール(これには、ポリエステルの調製において上記で開示されたポリオールのすべてが含まれる)と反応させることによって調製することができる。ビスフェノールAが本発明の1つの実施形態におけるポリオールとして使用される。
【0071】
ヒドロキシル官能基は、多くの場合、ポリカーボナートに対して末端である。ヒドロキシル官能基は、所望される通りに他の官能基に変換することができる。
【0072】
ポリエーテルポリオールの例には、下記の構造式を有するエーテルポリオール:
【0073】
【化2】

(式中、置換基Rは、混合置換基を含めて、水素、または、1個〜5個の炭素原子を含有する低級アルキルであり、nは典型的には、2〜6であり、mは8〜100またはそれ以上である)
を含むポリアルキレンエーテルポリオールがある。ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコールおよびポリ(オキシ−1,2−ブチレン)グリコールが含まれる。
【0074】
同様に有用なものは、様々なポリオールのオキシアルキル化から形成されるポリエーテルポリオールであり、例えば、ジオール(例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびビスフェノールAなど)または他の高次ポリオール(例えば、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールなど)のオキシアルキル化から形成されるポリエーテルポリオールである。示されるように使用することができる高次官能性ポリオールを、例えば、スクロースまたはソルビトールなどの化合物のオキシアルキル化によって作製することができる。1つの一般的に利用されるオキシアルキル化方法は、ポリオールを酸触媒または塩基触媒の存在下でアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシド)と反応させることである。具体的なポリエーテルは、E.I.Du Pont de Nemours and Company、Inc.から入手可能な、TERATHANEおよびTERACOLの名称で販売されるポリエーテルであり、また、Q O Chemicals,Inc.(Great Lakes Chemical Corp.の子会社)から入手可能なPOLYMEGである。
【0075】
ペンダント状のカルバマート官能基をカルバモイル交換反応によってポリエーテルに取り込むことができる。他の官能基、例えば、酸、アミン、エポキシド、アミド、チオールおよびウレアなどを、好適な官能性反応物を、入手可能ならば、使用して、または、変換反応を、所望される官能基を得るために必要に応じて使用して、所望される通りにポリエーテルに取り込むことができる。
【0076】
樹脂状物質の適切な混合物もまた本発明において使用することができる。硬化可能な薄膜形成組成物における樹脂状物質の量は一般に、硬化可能な薄膜形成組成物の総重量に基づいて5重量パーセント〜75重量パーセントの範囲である。
【0077】
本発明の光学エレメントを調製するために使用されるb)の硬化可能な薄膜形成組成物はさらに、ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる反応性官能基を有する硬化(架橋)剤を含む。硬化剤は、例えば、アミノプラスト樹脂、ポリイソシアナート、ブロックポリイソシアナート、ポリエポキシド、ポリ酸、無水物、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエチレン性不飽和物質(例えば、ポリビニルエーテルまたはポリ(メタ)アクリラートなど)、および/または、ポリオールを含むことができる。
【0078】
有用なアミノプラストを、ホルムアルデヒドの、アミンまたはアミドとの縮合反応から得ることができる。アミンまたはアミドの限定されない例には、メラミン、ウレアおよびベンゾグアナミンが含まれる。
【0079】
アルコールおよびホルムアルデヒドを、メラミン、ウレアまたはベンゾグアナミンと反応させることから得られる縮合生成物が最も一般的であるが、他のアミンまたはアミドとの縮合物を使用することができる。例えば、グリコールウリルのアルデヒド縮合物(これは、粉末被覆において有用な高融点の結晶性生成物をもたらす)を使用することができる。ホルムアルデヒドは最も一般に使用されるアルデヒドであるが、他のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒドおよびベンズアルデヒドなど)もまた使用することができる。
【0080】
アミノプラストはイミノ基およびメチロール基を含有することができる。特定の場合において、メチロール基の少なくとも一部を、硬化応答を改変するために、アルコールによりエーテル化することができる。任意の一価アルコール(メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソブタノールおよびヘキサノールなど)をこの目的のために用いることができる。好適なアミノプラスト樹脂の限定されない例は、Cytec Industries,Inc.からCYMEL(登録商標)の商品名で、また、Solutia,Inc.からRESIMENE(登録商標)の商品名で市販されている。特に有用なアミノプラストには、CYMEL(登録商標)385(これは水系組成物のために好適である)、CYMEL(登録商標)1158のイミノ官能性メラミンホルムアルデヒド縮合物、および、CYMEL(登録商標)303が含まれる。アミノプラスト樹脂と同様な様式で反応する、Cytec Industries,Inc.から得られる別の有用な架橋剤は、Cylink(登録商標)2000の商品名で販売されるトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンである。
【0081】
使用に好適な他の架橋剤には、ポリイソシアナート系架橋剤が含まれる。本明細書中で使用される用語「ポリイソシアナート」は、ブロックされていないポリイソシアナートと同様に、ブロック(またはキャップ)されたポリイソシアナートを包含することが意図される。ポリイソシアナートは、脂肪族、芳香族またはそれらの混合物であり得る。高次ポリイソシアナート(例えば、ジイソシアナートのイソシアヌラートなど)が使用されることが多いが、ジイソシアナートもまた使用することができる。イソシアナートプレポリマー(例えば、ポリイソシアナートと、ポリオールとの反応生成物)もまた使用することができる。ポリイソシアナート系架橋剤の混合物を使用することができる。
【0082】
架橋剤として利用されるポリイソシアナートは、様々なイソシアナート含有物質から調製することができる。好適なポリイソシアナートの例には、下記のジイソシアナートから調製されるトリマーが含まれる:トルエンジイソシアナート、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアナート)、イソホロンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートとの異性体混合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナートおよび4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアナート。加えて、様々なポリオール(例えば、ポリエステルポリオールなど)のブロックポリイソシアナートプレポリマーもまた使用することができる。
【0083】
イソシアナート基は所望に応じてブロック型または非ブロック型であり得る。ポリイソシアナートがブロックまたはキャップされる場合、当業者に公知である任意の好適な脂肪族、脂環族または芳香族のアルキルモノアルコール化合物またはアルキルフェノール性化合物を、ポリイソシアナートのためのキャップ剤として使用することができる。好適なブロック剤の例には、高い温度でブロックされない物質、例えば、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノールおよびn−ブタノールが含まれる);脂環族アルコール(例えば、シクロヘキサノールなど);芳香族−アルキルアルコール(例えば、フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノールなど);およびフェノール性化合物(例えば、フェノール自体、ならびに、置換基が被覆操作に影響を及ぼさない置換フェノール、例えば、クレゾールおよびニトロフェノールなど)が含まれる。グリコールエーテルもまた、キャップ剤として使用することができる。好適なグリコールエーテルには、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが含まれる。他の好適なキャップ剤には、オキシム(例えば、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシムなど)、ラクタム(例えば、ε−カプロラクタムなど)、ピラゾール(例えば、ジメチルピラゾールなど)、および、アミン(例えば、ジイソプロピルアミンなど)が含まれる。
【0084】
ポリエポキシドは、カルボン酸基および/またはアミン基を有するポリマーのための好適な硬化剤である。好適なポリエポキシドの例には、低分子量のポリエポキシド、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラートおよびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパートが含まれる。より高分子量のポリエポキシド(多価フェノールおよび多価アルコールのポリグリシジルエーテルを含む)もまた、架橋剤として好適である。
【0085】
ポリ酸(具体的には、ポリカルボン酸)は、エポキシ官能基を有するポリマーのための良好な硬化剤である。好適なポリカルボン酸の例には、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸およびドデカン二酸が含まれる。他の好適なポリ酸系架橋剤には、少なくとも1つのカルボン酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーと、カルボン酸基を有しない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーとから調製される酸基含有アクリルポリマーが含まれる。そのような酸官能性アクリルポリマーは、30から150に及ぶ酸価を有することができる。酸官能基含有ポリエステルも同様に使用することができる。脂肪族ポリオールと、脂肪族および/または芳香族のポリカルボン酸または無水ポリカルボン酸との縮合に基づく低分子量のポリエステルおよび半酸エステルを使用することができる。好適な脂肪族ポリオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびペンタエリトリトールなどが含まれる。ポリカルボン酸および無水ポリカルボン酸には、とりわけ、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸およびクロレンド酸無水物などが含まれる。酸および/または無水物の混合物もまた使用することができる。上記で記載されたポリ酸系架橋剤がさらに詳しくは米国特許第4,681,811号において第6欄45行〜第9欄54行に記載されている(これは参考として本明細書中に援用される)。
【0086】
ポリエチレン性不飽和の硬化剤(すなわち、多数のエチレン性不飽和基を有する物質)は、化学線を使用して硬化する薄膜形成組成物(例えば、UV硬化可能な組成物)において特に有用である。ポリビニルエーテル(例えば、Morflex,Inc.からVectomerの名称で入手可能なポリビニルエーテルなど)は好適な硬化剤の例である。ポリ(メタ)アクリラート系硬化剤には、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,2,4−ブタントリオールトリ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,4−ベンゼンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートが含まれる。
【0087】
好適なポリアミン系架橋剤の限定されない例には、窒素原子に結合した基が、飽和または不飽和の脂肪族、脂環族、芳香族、芳香族置換された脂肪族、脂肪族置換された芳香族および複素環であり得る第一級または第二級のジアミンまたはポリアミンが含まれる。好適な脂肪族ジアミンおよび脂環族ジアミンの限定されない例には、1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミンおよびプロパン−2,2−シクロヘキシルアミンなどが含まれる。好適な芳香族ジアミンの限定されない例には、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン(例えば、o−フェニレンジアミンおよびp−トリレンジアミン)が含まれる。多核芳香族ジアミン、例えば、4,4’−ビフェニルジアミン、メチレンジアニリンおよびモノクロロメチレンジアニリンなどもまた好適である。
【0088】
好適なポリオール系架橋剤には、上記で述べられた任意のポリオールが含まれる。
【0089】
硬化剤の適切な混合物もまた本発明において使用することができる。硬化可能な薄膜形成組成物における硬化剤の量は一般に、硬化可能な薄膜形成組成物の総重量に基づいて5重量パーセントから75重量パーセントに及ぶ。
【0090】
b)の硬化可能な薄膜形成組成物はさらに、iii)ブロックイソシアナート基と、別の異なる官能基とを含む、i)およびii)とは異なる物質を含み、この別の異なる官能基は、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基と反応することができる。本発明の1つの実施形態において、そのようなイソシアナート基は、100℃もの低い温度で脱ブロックすることができるブロック剤によりブロックされ、このことは、薄膜形成組成物が化学線によって硬化可能であるときには特に有用である。別の実施形態において、例えば、薄膜形成組成物が熱的に硬化可能であるときなどでは、ブロック剤は、官能基のいずれか、すなわち、iii)の物質における官能基、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基が互いに反応する温度以下で脱ブロックすることが可能であり得る。理論によって拘束されることは意図されないが、iii)の物質における遊離イソシアナート基は、硬化方法にかかわらず、i)の樹脂状物質における基、ii)の硬化剤における基、重ねられた被覆における基、および/または、基体における基と反応するために利用可能であり得ることが、いずれの実施形態においても意図される。iii)の物質におけるそのような遊離イソシアナート基は、硬化可能な薄膜形成組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼさない限り、i)の樹脂状物質およびii)の硬化剤の硬化温度またはそれよりも低い温度での脱ブロックによってi)の樹脂状物質およびii)の硬化剤の硬化反応の期間中に反応するために利用可能であり得る。
【0091】
iii)の物質において使用されるブロック剤は、100℃もの低い温度で脱ブロックすることができることが公知である任意のブロック剤、あるいは、薄膜形成組成物における官能基のいずれかが互いに反応する温度またはそれよりも低い温度で脱ブロックすることができることが公知である任意のブロック剤であり得る。そのような脱ブロックは、公知である触媒の使用によって可能であり得るか、または強化され得る。そのような触媒は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(第5版、1992、第A21巻、673頁〜674頁)に記載されているルイス塩基、ルイス酸および/または挿入触媒を含むことができる(その記載は参考として本明細書中に援用される)。例えば、触媒は、スズオクチラート、ジブチルスズジアセタート、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズジマレアート、ジメチルスズジアセタート、ジメチルスズジラウラート、ジメチルスズメルカプチド、ジメチルスズジマレアート、トリフェニルスズアセタート、トリフェニルスズヒドロキシド、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび/またはトリエチルアミンが含まれる。トリ有機スズ物質、例えば、米国特許第5,902,871号(第4欄32行〜第8欄7行)および米国特許第5,880,178号(第4欄15行〜第8欄18行)(これらは参考として本明細書中に援用される)に開示されるトリ有機スズ物質などを使用することができる。この分野で公知であるようなビスマス触媒もまた使用することができる。使用することができるブロック剤の例には、フェノール(例えば、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール)、オキシム(例えば、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(例えば、ε−カプロラクタム)、第二級アミン(例えば、ジイソプロピルアミン)およびピラゾール(例えば、ジメチルピラゾール)、イミダゾール、トリアゾールがある。ほとんどの場合に使用されるブロック剤の好適な例には、3,5−ジメチルピラゾールおよびN−t−ブチルベンジルアミンが含まれる。ブロック剤の混合物もまた使用することができる。
【0092】
上記で記されたように、iii)の物質はさらに、i)の樹脂状物質における基、ii)の硬化剤における基、重ねられた被覆における基、および/または、基体における基と反応することができる少なくとも1つの他の異なる官能基を含む。そのような官能基は、樹脂状物質または硬化剤に関連して上記で開示された官能基のいずれかであり得る。あるいは、特定の実施形態において、iii)の物質における官能基は、(メタ)アクリロイル、ビニル、アリル、マレインイミド、トリアルコキシシリルおよび/またはハロアルキルを含む。
【0093】
特定の実施形態において、iii)の物質は、ブロックトリアルコキシシリルプロピルイソシアナート(例えば、ほとんどの場合には3,5−ジメチルピラゾールによりブロックされたトリエトキシシリルプロピルイソシアナートおよび/またはトリメトキシシリルプロピルイソシアナートなど)を含む。
【0094】
別の実施形態において、iii)の物質は、ブロックされたイソシアナトアルキル(メタ)アクリラート(例えば、ほとんどの場合には3,5−ジメチルピラゾールによりブロックされるイソシアナトエチル(メタ)アクリラートなど)を含むことができる。ブタノンオキシムによりブロックされるイソシアナトエチル(メタ)アクリラートもまた好適であり、これはShowa Denko K.K.からKarenzMOI−BMとして入手可能である。
【0095】
iii)の物質は、iii)の物質を硬化可能な薄膜形成組成物に含有しない(すなわち、実質的に有しない)類似する光学エレメントと比較した場合、硬化可能な薄膜形成組成物と、基体および/または重ねられた被覆との間における接着を改善するために少なくとも十分な量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する。接着は標準的な方法によって測定することができ、例えば、ASTM D−3359−93(接着をテープ試験によって測定するための標準試験法−方法B)によって測定することができる。典型的には、iii)の物質は、硬化可能な薄膜形成組成物における樹脂固形分の総重量に基づいて、20重量パーセントまでの量で、多くの場合には10重量パーセントまでの量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する。
【0096】
以前に議論されたように、本発明の光学エレメントは、光感応特性を有するように適合され、また、光感応性を提供するための物質をさらに含むことができる。そのような物質は無機物であっても有機物であってもよく、また、下記で記載されるように、基体、硬化可能な薄膜形成組成物、および/または、重ねられた被覆もしくは薄膜に存在させることができる。
【0097】
広範囲の様々なフォトクロミック物質を、光感応特性を提供するために本発明の光学用品において使用することができる。フォトクロミック物質は様々な形態で提供され得る。例には、下記が含まれる:1つだけのフォトクロミック化合物;フォトクロミック化合物の混合物;フォトクロミック化合物を含有する物質、例えば、モノマーまたはポリマーの非ゲル化溶液など;フォトクロミック化合物が化学的に結合される物質(例えば、モノマーまたはポリマーなど);フォトクロミック化合物を含み、かつ/または、フォトクロミック化合物を化学的に結合されて有する物質(この物質の外側表面が、例えば、フォトクロミック物質に対する負の影響を有する外部の物質(例えば、酸素、水分および/または化学物質など)とのフォトクロミック物質の接触を妨げるポリマー樹脂または保護被覆(例えば、金属酸化物など)により包まれる(被包化は被覆の1つの形態である));そのような物質は、米国特許第4,166,043号および同第4,367,170号に記載されるような保護被覆を適用する前に粒状物にすることができる;フォトクロミックポリマー、例えば、結合して一緒になったフォトクロミック化合物を含むフォトクロミックポリマー;またはそれらの混合物。
【0098】
無機フォトクロミック物質は、ハロゲン化銀、ハロゲン化カドミウムおよび/またはハロゲン化銅の結晶子を含有することができる。他の無機フォトクロミック物質を、ユーロピウム(II)および/またはセリウム(III)を無機ガラス(例えば、ソーダ−シリカガラスなど)に加えることによって調製することができる。別の実施形態において、無機フォトクロミック物質は溶融ガラスに加えられ、硬化可能な薄膜形成組成物に取り込まれる粒子にされる。そのような無機フォトクロミック物質は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(第4版、第6巻、322頁〜325頁)に記載されている。
【0099】
フォトクロミック物質は、活性化吸収極大を300ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲に有する有機フォトクロミック物質であり得る。1つの実施形態において、有機フォトクロミック物質は、(a)400ナノメートル〜550ナノメートル未満の可視λmaxを有する有機フォトクロミック物質と、(b)550ナノメートル〜700ナノメートルの可視λmaxを有する有機フォトクロミック物質との混合物を含む。
【0100】
あるいは、フォトクロミック物質は、ピラン、オキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、および、それらの混合物から選ぶことができる有機フォトクロミック物質を含むことができる。
【0101】
本明細書中において使用することができるフォトクロミック性のピランの限定されない例には、ベンゾピランおよびナフトピラン(例えば、ナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ縮合ナフトピランおよび複素環縮合ナフトピラン)、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン;フルオランテノピランおよびスピロピラン、例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノリノピランおよびスピロ(インドリン)ピラン、ならびに、それらの混合物が含まれる。ベンゾピランおよびナフトピランの限定されない例は、米国特許第5,645,767号において第2欄16行〜第12欄57行に、米国特許第5,723,072号において第2欄27行〜第15欄55行に、米国特許第5,698,141号において第2欄11行〜第19欄45行に、米国特許第6,022,497号において第2欄21行〜第11欄46行に、米国特許第6,080,338号において第2欄21行〜第14欄43行に、米国特許第6,136,968号において第2欄43行〜第20欄67行に、米国特許第6,153,126号において第2欄26行〜第8欄60行に、米国特許第6,296,785号において第2欄47行〜第31欄5行に、米国特許第6,348,604号において第3欄26行〜第17欄15行に、米国特許第6,353,102号において第1欄62行〜第11欄64行に、米国特許第6,630,597号において第2欄16行〜第16欄23行に、また、米国特許第6,736,998号において第2欄53行〜第19欄7行に開示される(これらの開示は参考として本明細書中に援用される)。ナフトピランおよび相補的な有機フォトクロミック物質のさらなる限定されない例が米国特許第5,658,501号において第1欄64行〜第13欄7行に記載されている(その開示は参考として本明細書中に援用される)。スピロ(インドリン)ピランはまた、テキスト、Techniques in Chemistry、第III巻、“Photochromism”、第3章、Glenn H.Brown(編者)、John Wiley and Sons,Inc.、New York、1971)に記載されている。
【0102】
使用することができるフォトクロミック性のオキサジンの例には、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジンおよびスピロ−オキサジン、例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテンオキサジン、スピロ(インドリン)キノキサジン、および、それらの混合物が含まれる。
【0103】
使用することができるフォトクロミック性のフルギドおよびフルギミドの例には、米国特許第4,685,783号において第1欄57行〜第5欄27行に、また、米国特許第4,931,220号において第1欄39行〜第22欄41行に開示されるフルギドおよびフルギミドが含まれる(そのようなフルギドおよびフルギミドの開示は参考として本明細書中に援用される)。ジアリールエテンの限定されない例が米国特許出願公開第2003/0174560号(段落番号[0025]〜段落番号[0086])に開示される。
【0104】
重合可能な有機フォトクロミック物質、例えば、米国特許第5,166,345号において第3欄36行〜第14欄3行に開示される重合可能なナフトオキサジン、米国特許第5,236,958号において第1欄45行〜第6欄65行に開示される重合可能なスピロベンゾピラン、米国特許第5,252,742号において第1欄45行〜第6欄65行に開示される重合可能なスピロベンゾピランおよびスピロベンゾチオピラン、米国特許第5,359,085号において第5欄25行〜第19欄55行に開示される重合可能なフルギド、米国特許第5,488,119号において第1欄29行〜第7欄65行に開示される重合可能なナフタセンジオン、米国特許第5,821,287号において第3欄5行〜第11欄39行に開示される重合可能なスピロオキサジン、米国特許第6,113,814号において第2欄23行〜第23欄29行に開示される重合可能なポリアルコキシル化ナフトピラン、ならびに、米国特許第6,555,028号において第2欄40行〜第24欄56行に開示されるポリマーマトリックス相溶化ナフトピランを使用することができる。重合可能な有機フォトクロミック物質に関する上記特許の開示は参考として本明細書中に援用される。
【0105】
フォトクロミック物質は、様々な手段によって、例えば、硬化可能な薄膜形成組成物に取り組むことができる。フォトクロミック物質を組成物に取り込むことができ、例えば、組成物に溶解および/もしくは分散させることができ、または、組成物の他の成分と重合させることができる。あるいは、フォトクロミック物質を、当業者によって公知であるような吸水膨潤、浸透または他の移送方法によって組成物に取り込むことができる。
【0106】
典型的には、フォトクロミック物質は、フォトクロミック量で、すなわち、放射線にさらされたときに肉眼によって識別可能な色の変化をもたらす量で光学エレメントに存在する。1つの実施形態において、硬化可能な薄膜形成組成物に取り込まれるフォトクロミック物質の量は、硬化可能な薄膜形成組成物における固形分の重量に基づいて0.5重量パーセント〜40重量パーセントの範囲であり得る。代わりの実施形態において、フォトクロミック物質の量は、1重量パーセント〜30重量パーセント、3重量パーセント〜20重量パーセント、または、3重量パーセント〜10重量パーセントの範囲である。硬化可能な薄膜形成組成物におけるフォトクロミック物質の量は、列挙された範囲を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0107】
補助的な物質もまた、硬化可能な薄膜形成組成物に取り込むことができる。そのような補助剤は、何らかのフォトクロミック物質の適用または取り込みの前に、あるいは、何らかのフォトクロミック物質の適用または取り込みと同時に、あるいは、何らかのフォトクロミック物質の適用または取り込みに続いて取り込むことができる。例えば、紫外光吸収剤を組成物へのその添加の前にフォトクロミック物質と混合することができ、あるいは、そのような吸収剤を、硬化可能な薄膜形成組成物と、入射光との間における被覆または薄膜として重ねることができる(例えば、上に重ねることができる)。しかしながら、紫外光吸収剤は、存在するならば、フォトクロミック物質の性能を妨害するような量で使用されないように注意しなければならない。
【0108】
紫外光安定剤に加えて、他の補助剤、例えば、安定剤を、フォトクロミック物質の光疲労抵抗性を改善するために使用することができる。安定剤の限定されない例には、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、非対称ジアリールオキサルアミド(オキサニリド)化合物および一重項酸素消去剤(例えば、有機配位子とのニッケルイオン錯体)が含まれ、ポリフェノール系抗酸化剤およびそのような安定剤の混合物が意図される。補助剤は、当業者に公知であるように、個々に、または、例えば、紫外光吸収剤との組み合わせでの安定剤などの混合物として、フォトクロミック接着剤において使用することができる。
【0109】
さらなる補助的な物質を、本発明の光学エレメントにおいて使用される硬化可能な薄膜形成組成物に取り込むことができる(例えば、加工することを助けるか、または、所望される特徴を得られた光学エレメントに与える従来の成分)。そのような成分の限定されない例には、溶媒(例えば、水性溶媒および/または有機溶媒)、レオロジー制御剤、界面活性剤、開始剤、触媒、硬化防止剤、還元剤、酸、塩基、保存剤、フリーラジカルドナー、フリーラジカル除去剤および熱安定剤が含まれ、そのような補助物質は当業者に公知である。
【0110】
本発明の光学エレメントはさらに、c)b)の硬化可能な薄膜形成組成物に重ねられ、かつ、それらとは異なる少なくとも部分的な薄膜または被覆を含むことができる。そのような被覆または薄膜は、とりわけ、フォトクロミック被覆、チント被覆、偏光性被覆、および/または耐摩耗性の被覆もしくは他の保護被覆を含むことができる。基体に直接に適用されるとして前記で議論された被覆はどれも、さらに、または、代替として、重ねられた被覆c)として使用することができる。同様に、重ねられた被覆c)として本明細書中下記で議論される被覆はどれも、さらに、または、代替として、基体に直接に適用することができる。
【0111】
薄膜または被覆のために使用される物質のタイプは広範囲に変化させることができ、また、基体のポリマー有機物質、および、本明細書中下記において記載される保護薄膜から選ぶことができる。ポリマー有機物質の薄膜の厚さは広範囲に変化させることができる。厚さは、例えば、0.1ミル〜40ミルの範囲、および、列挙された値を含めて、これらの値の間での厚さの任意の範囲であり得る。しかしながら、所望されるならば、より大きい厚さを使用することができる。
【0112】
ポリマー有機物質は、熱硬化性物質、熱可塑性物質、および、それらの混合物から選ぶことができる。そのような物質には、保護薄膜だけでなく、基体のために選ばれるポリマー有機物質が含まれる。ポリマー有機物質の薄膜の他の例が米国特許出願公開第2004/0096666号において段落番号[0082]〜段落番号[0098]に開示される(そのようなポリマー薄膜のそのような開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0113】
特定の実施形態において、薄膜または被覆c)は、ナイロン、ポリ(酢酸ビニル)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(C〜Cアルキル)アクリラート、ポリ(C〜Cアルキル)メタクリラート、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリ(ウレア−ウレタン)、ポリウレタン、ポリテレフタラート、ポリカーボナート、ポリカーボナート−シリコーン共重合体、および、それらの混合物から選ばれる熱可塑性のポリマー有機物質を含む。
【0114】
場合により、適合し得る(化学的および色的に)固定されたチント色素を、より大きな美的効果を達成するために、医学的理由のために、または、ファッション的理由のために、基体、硬化可能な薄膜形成組成物、および/または、重ねられた薄膜に添加または適用することができる。例えば、色素を、活性化されたフォトクロミック物質から生じる色を補足して、例えば、より中間の色を達成するために、または、入射光の特定の波長を吸収するために、選択することができる。別の実施形態において、色素は、フォトクロミック物質が非活性化状態にあるときには所望される色相を母材に提供するために選択することができる。
【0115】
さらなる実施形態において、上記の固定されたチント色素は、当業者に公知であるように、本発明の光学エレメントとともに使用される本明細書中下記において記載される保護薄膜に付随させることができる。例えば、米国特許第6,042,737号(第4欄43行〜第5欄8行)を参照のこと。被覆された基体を着色することに関連するそのような開示は参考として本明細書中に援用される。
【0116】
多くの場合、保護薄膜は典型的には、摩擦および摩耗の作用からの擦り傷を防止するために基体に適用される。保護薄膜はまた、重ねられた薄膜または被覆c)として役立ち得る。本発明の光学エレメントに連続させられた保護薄膜は、特定の実施形態では、少なくとも部分的に耐摩耗性の薄膜である。語句「少なくとも部分的に耐摩耗性の薄膜」は、振動砂法を使用する透明なプラスチックおよび被覆の耐摩耗性についてのASTM F−735標準試験法に匹敵する方法で試験されたとき、標準的な基準物質(典型的には、PPG Industries,Inc.から入手可能なCR−39(登録商標)モノマーから作製されるプラスチック)よりも大きい耐摩耗性を示す保護的ポリマー物質の少なくとも部分的に硬化した被覆またはシートの少なくとも部分的な薄膜を示す。
【0117】
保護薄膜は、保護シート物質、保護的な傾斜薄膜(これはまた、この薄膜が間に置かれる薄膜に硬度勾配を提供する)、保護被覆、および、それらの組み合わせから選ぶことができる。保護薄膜、例えば、ハードコートなどを、ポリマー薄膜、基体および/または何らかの適用された薄膜の表面に、例えば、保護的な中間薄膜の上に適用することができる。
【0118】
保護薄膜が保護シート物質から選ばれるとき、保護薄膜は、米国特許出願公開第2004/0096666号の段落番号[0118]〜段落番号[0126]に開示される保護ポリマーシート物質から選ぶことができる。
【0119】
保護的な傾斜薄膜は、少なくとも部分的に耐摩耗性の薄膜を提供し、また、保護的な傾斜薄膜には、続いて、別の保護薄膜が被覆され得る。保護的な傾斜薄膜は、輸送期間中、または、さらなる保護薄膜を適用する前のその後の取り扱い期間中において物品を保護するために役立ち得る。さらなる保護薄膜を適用した後、保護的な傾斜薄膜は、1つの適用された薄膜から、別の適用された薄膜までの硬度傾斜を提供する。そのような薄膜の硬度は、当業者に公知である方法によって測定することができる。別の限定されない実施形態において、保護薄膜は保護的な傾斜薄膜の上に存在する。そのような傾斜特性を提供する保護薄膜の限定されない例には、米国特許出願公開第2003/0165686号において段落番号[0010]〜段落番号[0023]および段落番号[0079]〜段落番号[0173]に記載されている放射線硬化の(メタ)アクリラート系被覆が含まれる(これらは参考として本明細書中に援用される)。
【0120】
保護薄膜にはまた、保護被覆が含まれ得る。耐摩耗性および耐ひっかき性を提供する、この分野で公知である保護被覆の様々な例は、多官能性アクリルの硬い被覆、メラミン系の硬い被覆、ウレタン系の硬い被覆、アルキド系の被覆、および、有機シラン系被覆から選ばれる。そのような耐摩耗性被覆の限定されない例は、米国特許出願公開第2004/0096666号において段落番号[0128]〜段落番号[0149]に、また、米国特許出願公開第2004/0207809号において段落番号[0205]〜段落番号[0249]に開示される(両方の開示は参考として本明細書中に援用される)。
【0121】
1つの実施形態において、本発明の光学エレメントはさらに、少なくとも部分的に偏光性の表面処理、被覆または薄膜を含む。語句「少なくとも部分的に偏光性の」は、光波の電場ベクトルの振動の一部からすべてが、表面処理によって1つの方向または面に限定されることを意味する。そのような偏光作用は、透過した放射線を少なくとも部分的に偏光させるためのアラインメントされた二色性物質を有する薄膜を光学エレメントに適用することによって達成され得る。1つの限定されない実施形態において、ポリマーシートが、このポリマーシートに適用された二色性物質をアラインメントするために延伸される。別の限定されない実施形態において、被覆は、二色性物質を被覆においてアラインメントするために、例えば、偏光させた紫外放射線を使用して、一定方向の様式で硬化させられる。
【0122】
別の実施形態において、光学エレメントはさらに、少なくとも部分的に反射防止性の表面処理を含む。語句「少なくとも部分的に反射防止性の表面」処理は、この処理が適用される光学エレメントの反射防止的性質における少なくとも部分的な改善が存在することを意味する。限定されない実施形態において、処理されていない光学エレメントと比較した場合、処理された光学エレメントの表面によって反射されるまぶしさの量の低下、および/または、処理された光学エレメントを通過するパーセント透過率の増大が存在し得る。
【0123】
別の限定されない実施形態において、少なくとも部分的に反射防止性の表面処理、例えば、金属酸化物、金属フッ化物または他のそのような物質の単層物または多層物を、真空蒸着、スパッタリングまたは何らかの他の方法によって、本発明の光学エレメント(例えば、レンズ)のポリマー薄膜表面に連続させることができる。
【0124】
本発明の光学エレメントはさらに、少なくとも部分的に疎水性の表面処理を含むことができる。語句「少なくとも部分的に疎水性の表面」は、処理されていない基体と比較した場合、そのような薄膜が適用される基体の撥水性を、基体に接着することができる水の量を表面から低下させることによって少なくとも部分的に改善する薄膜である。
【0125】
本発明の光学エレメントは様々な方法によって製造することができる。本発明の光学エレメントは、硬化可能な薄膜形成組成物を、例えば、被覆技術において使用される方法のいずれかを使用して基体に適用することによって調製することができる。限定されない例には、スプレーコーティング、スピンコーティング、スピンおよびスプレーによるコーティング、スプレッドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、注型コーティング、ロールコーティング、リバースロールコーティング、トランスファーロールコーティング、キス/スクィーズコーティング、グラビアロールコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティングおよびロッド/バーコーティングが含まれる。
【0126】
1つの実施形態において、本発明の光学エレメントがさらに、b)の硬化可能な薄膜形成組成物に重ねて置かれる薄膜または被覆c)を含むとき、あるいは、光学エレメントがさらに保護薄膜および/または他の薄膜を含むとき、b)の硬化可能な薄膜形成組成物は基体に直接に適用することができ、または、最初に他の薄膜c)に適用し、その後、b)の硬化可能な薄膜形成組成物と、さらなる薄膜c)との組み合わせを、例えば、積層化などによって、基体に複合材料として適用することができる。
【0127】
あるいは、本発明の光学エレメントは、前側の鋳型としての選ばれた設計の鋳型、b)の硬化可能な薄膜形成組成物、および、一般には凸形の前面表面と、一般には凹形の裏側表面と、その光学的中心における所定のレンズ矯正(存在する場合)とを有する、後側の鋳型としての予備成形された光学的基体i)(例えば、予備成形されたレンズ基体)を利用することによって調製することができる。米国特許第4,873,029号に開示されるようなレンズ形成方法もまた、本発明の光学エレメントを形成するために使用することができる。
【0128】
硬化可能な薄膜形成組成物を基体の表面に適用した後、硬化可能な薄膜形成組成物を調製するために使用された任意の溶媒を蒸発させることができる。これは、何らかのその後の被覆を適用する前に、および/または、何らかのその後の被覆を適用している期間中に、および/または、何らかのその後の被覆を適用した後に行うことができる。硬化可能な薄膜形成組成物はまた、何らかの重ねられる薄膜もしくは被覆を適用する前に、および/または、何らかの重ねられる薄膜もしくは被覆を適用している期間中に、および/または、何らかの重ねられる薄膜もしくは被覆を適用した後に少なくとも部分的に硬化させることができる。これは、例えば、UV硬化可能な組成物を、少なくとも部分的な薄膜をそのような組成物に連続させるプロセスの前に、および/または、少なくとも部分的な薄膜をそのような組成物に連続させるプロセスの期間中に、および/または、少なくとも部分的な薄膜をそのような組成物に連続させるプロセスの後で紫外線にさらすことによって達成することができる。
【0129】
硬化可能な薄膜形成組成物を硬化させるために使用される方法には、溶媒蒸発、ラジカル重合、熱硬化、光重合、または、それらの組み合わせが含まれる。さらなる方法には、重合可能な物質を、何らかの重合可能な成分の重合反応を開始させるように、または、架橋機構を開始させるように、赤外線、紫外線、γ線または電子線により照射することが含まれる。この後に加熱工程を続けることができる。硬化方法の温度が100℃に少なくとも達しないならば、少なくとも100℃への別個の加熱工程を、iii)のイソシアナート物質の脱ブロックを可能にするために行うことができる。
【0130】
本発明の数多くの改変および変化が当業者には明らかであるので、本発明は、例示として意図されるだけである下記の実施例においてより具体的に記載される。
【実施例】
【0131】
実施例1および実施例3は、本発明の光学エレメントにおいて使用される接着促進剤の調製を示す。実施例1において、3,5−ジメチルピラゾール(DMP)によりブロックされたトリエトキシシリルプロピルイソシアナートが調製される。実施例2は比較例であり、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシランによりブロックされたトリエトキシシリルプロピルイソシアナートの調製を例示する。実施例3は、3,5−ジメチルピラゾールによりブロックされたトリメトキシシリルプロピルイソシアナートの調製を例示する。
【0132】
(実施例1)
トリエトキシシリルプロピルイソシアナート(25g、0.1モル)を、冷却された循環装置、温度計および磁石撹拌子を備える100mlの丸底のジャケット付き丸底フラスコに計り入れた。酢酸エチル(25グラム)をフラスコに計り入れた。3,5−ジメチルピラゾール(9.4グラム、0.1モル)を、5回の添加に分けて、撹拌している混合物に加えた。それぞれの添加の後、温度が上昇した。温度が25℃未満に低下したら、次の添加を行った。混合物を、最後の添加を行った後、さらに24時間撹拌した。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで除いて、透明な粘性の液体を得た。遊離イソシアナートの非存在を赤外分光法によって確認した。ブロックイソシアナートの化学構造をプロトンNMRによって確認した。
【0133】
(実施例2(比較例))
液体のN−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン(21.3g)を、温度が28℃で維持されるような速度で撹拌物に滴下により加えたことを除いて、実施例1の場合と同じ手順に従った。添加が完了すると、20分間にわたって温度が50℃に上昇し、その後、室温に冷却した。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで除いて、時間とともに黄色化した透明な粘性の液体を得た。遊離イソシアナートの非存在を赤外分光法によって確認した。ブロックイソシアナートの化学構造をプロトンNMRによって確認した。エトキシプロトン対メトキシプロトンの比率は、いくらかの加水分解が生じたことを示していた。
【0134】
(実施例3)
最後のDMP添加の後で24時間撹拌する代わりに、混合物を50℃に30分間加熱したことを除いて、実施例1の場合と同じ手順を使用した。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで除いて、透明な粘性の液体を得た。遊離イソシアナートの非存在を赤外分光法によって確認した。ブロックイソシアナートの化学構造をプロトンNMRによって確認した。
【0135】
(実施例4)
下記の実施例では、Gentex Opticsから得られる、度のないPDQ被覆ポリカーボナートレンズを使用した。試験用レンズを、酸素を100ml/分の割合でPlasmatech装置の真空チャンバーに導入しながら、Plasmatech装置を100ワットの出力設定で使用して酸素プラズマにより1分間処理した。その後、レンズを脱イオン水によりすすぎ、空気により乾燥した。フォトクロミック性のポリウレタン被覆組成物をスピンコーティングによってプラズマ処理レンズに塗布し、熱硬化させた。ポリウレタン組成物の成分およびそれらの量が表1に表にして示される。ポリウレタン組成物の成分を60℃で30分間混合し、その後、周囲温度で30分間混合し、その後、レンズに塗布した。フォトクロミック性ポリウレタン被覆は厚さが約20ミクロンであった。
【0136】
【表1】

(a)メチルエチルケトキシムによりブロックされたヘキサメチレンジイソシアナート(Bayer)
(b)メチルエチルケトキシムによりブロックされたイソホロンジイソシアナートトリマー(CreaNova,Inc.)
(c)ポリヘキサンカーボナートジオール(Stahl)
(d)ポリアクリラートポリオール(米国特許第6,187,444号B1の実施例1における組成物D)
(e)ヒンダードアミン光安定剤(Ciba−Geigy)
(f)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤(OSi)
(g)UV放射線によって活性化されたときに灰色を被覆に与えるように設計された割合でのナフトピラン系フォトクロミック物質の混合物
(h)界面活性剤(Niax)。
【0137】
9種の被覆調製物(実施例4A〜実施例4G)を、それぞれが10グラムのデンドリマー型ポリエステルアクリラートPRO−6021および0.025g(0.25pphのアクリラート)のBAPO光開始剤[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]を使用して調製した。PRO−6021デンドリマー型ポリエステルアクリラートは、ネオペンチルグリコール−2−プロポキシ化ジアクリラートと、16個の末端ヒドロキシ基のうちの約13個がアクリル化されているデンドリマー型ポリエステルアクリラートとの50/50混合物であるとその供給者によって報告される。表1に示される物質を9種の被覆調製物のうちの8個に2.5pphのアクリラートレベルおよび/または5.0pphのアクリラートレベルで加えた。
【0138】
【表2】

試験用レンズにおけるフォトクロミック性ポリウレタン被覆を、被覆されていない度なしレンズを処理するために使用された同じ条件を使用してPlasmatech装置を使用するプラズマ放電によって処理した。デンドリマー型ポリエステルアクリラートの被覆調製物を、約0.06グラムの湿潤薄膜重量(約10ミクロンの厚さ)を与えるようにスピンコーティングによって試験用レンズに塗布した。被覆をD電球からのUV光により窒素雰囲気中で硬化させた。レンズの半数を、クロスハッチ剥離試験を使用してハードコート処理ポリカーボナートレンズに対するAB被覆接着について試験した。
【0139】
試験用レンズの残り半数を、酸素を100ml/分の割合でPlasmatech装置の真空チャンバーに導入しながら、Plasmatech装置を100ワットの出力設定で使用して酸素プラズマにより1分間処理した。非チント性の耐摩耗性被覆組成物(表2)をレンズに塗布し、サンプルを対流オーブンにおいて100℃で3時間硬化させた。
【0140】
【表3】

ハードコート処理されたレンズを、クロスハッチ剥離試験を使用してハードコートの接着について試験した。接着結果のすべてが表3に示される。
【0141】
【表4】

(実施例5A)
(親水性ウレタンプレポリマー)
下記の物質を、電子的温度プローブ、機械的撹拌装置、冷却器および加熱用マントルを備えた4つ口丸底フラスコに、記載された順序で加えた。
【0142】
【表5】

チャージAを、すべての固体が溶解するまで、フラスコにおいて100℃の温度で撹拌した。チャージBを加え、混合物を80℃に再加熱した。チャージCを15分かけて加え、得られた混合物を80℃で3時間保持した。チャージDを加え、混合物を室温に冷却した。最終生成物は極めて粘性の透明な黄色溶液であり、酸価が38.9であり、固形分割合が82%であった。酸価を、KOHを用いた電位差滴定によって測定した。固形分割合を、既知量の物質をアルミニウム皿に加え、その物質を希釈し、かつ、物質を皿の上に一様に分布させるためにさらなる水を加えることによって求めた。皿を110℃でのオーブンに1時間入れた。その後、皿を再び重量測定し、固形分割合を、残存質量(皿の質量を引いたもの)を最初の質量(皿の質量を引いたもの)によって除することから求めた。
【0143】
(実施例5B)
(フォトクロミック性の疎水性ウレタンプレポリマー)
下記の物質を、電子的温度プローブ、機械的撹拌装置、冷却器および加熱用マントルを備えた4つ口丸底フラスコに、記載された順序で加えた。
【0144】
【表6】

(1)フォトクロミックAは3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランである。
(2)Cognis Corporationから入手可能なジイソシアナート。
【0145】
チャージAをフラスコにおいて撹拌し、90℃の温度に加熱した。チャージBを17分かけて加え、混合物を90℃で90分間保持し、その後、室温に冷却した。最終生成物は暗紫色の液体であり、Brookfield粘度が1390cps(スピンドル#3、50rpm、25℃)であった。
【0146】
(実施例5C)
(実施例5Aおよび実施例5Bから形成されたフォトクロミック性マイクロ粒子の水性分散物)
下記の物質を、下記のように、記載された順序で加えた。
【0147】
【表7】

【0148】
【表8】

(7)Rhodiaから入手可能な非イオン性界面活性剤。
【0149】
プレエマルションを、チャージAをガラスビーカー内で撹拌することによって調製した。プレエマルションのうち、132.37gを、チャージBを順に加えながら、8000psiおよび28℃でMicrofluidizer(登録商標)M110Tに通して15分間再循環した。Microfluidizer(登録商標)M110TはMFIC Corporation(Newton、MA)のMicrofluidicsTM部門から入手可能である。得られたマイクロエマルションを、オーバーヘッド撹拌装置、冷却器、電子的温度プローブおよび窒素導入管を備える4つ口丸底フラスコに移した。チャージCを混合物として素早く加え、その後、チャージDを30分かけて混合物として加えた。温度が、チャージDを加えるにつれ、30℃から33℃に上昇した。最後に、チャージEを加えて、pHが8である濁った紫色の分散物を得た。分散物は31%の固形分であった。
【0150】
(実施例6)
(種々のアルコキシシラン添加剤を接着および貯蔵寿命について評価するための実施例5Cのフォトクロミック性マイクロ粒子の水性分散物の被覆組成物)
基剤となるヒドロゾル配合物(A)を下記のように調製した:
パートIのヒドロゾル粒子[03−209−016](110g)を、36.25gのCymel328(Cytec Industriesから入手可能)、10.5gのKflex320、および、NMPにおけるTinuvin−144の4.36%溶液(12.3g)と一緒にした。撹拌しながらすべてを加えた。溶液を一晩撹拌し、その後、接着促進剤を加えた。
【0151】
下記の接着促進剤(実施例6−1〜実施例6−8)を約14.8グラムの(A)と一緒にした。実施例6−5および実施例6−6を本発明に従って使用した。他のものはすべてが比較例であった。
【0152】
6−1. 54gのA−187、OSI Specialty Chemicalsから得られるグリシドキシプロピルトリメトキシシラン
6−2. 50gのGelest SIG5839.0 (3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン
6−3. 1.03gのSIB1140.0(Gelest) ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、62%のメタノール溶液
6−4. 0.65gのSIH6172.0(Gelest) N−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、75%のメタノール溶液
6−5. 0.68gのDMPブロックイソシアナトプロピルトリメトキシシラン(実施例3)
6−6. 0.79gのDMPブロックイソシアナトプロピルトリエトキシシラン(実施例1)
6−7. 接着促進剤が存在せず、Cymel328が(A)においてCymel385により置き換えられた
6−8. Cymel385を含む0.54gのA−187(OSI Specialty Chemicalsから得られるグリシドキシプロピルトリメトキシシラン)。
【0153】
PDQ被覆されたGentexポリカーボナートの度なしレンズを、コロナ放電から約1インチのところで回転させながら、4秒間、コロナ処理した。回転速度は約200RPMであった。
【0154】
被覆溶液を、0.18g〜0.22gの湿潤薄膜重量を達成するために、1200RPMで3秒間〜5秒間、コロナ処理レンズに塗布した。それぞれの溶液について4つのレンズを被覆した。
【0155】
硬化サイクルは、80℃で20分間〜25分間、120℃で1時間であった。それぞれの被覆タイプの1/2には、100℃でのさらに3時間の後硬化が行われた。
【0156】
接着試験は下記の通りであった:2つのテープ片(Scotchテープ、600)を伴う乾燥クロスハッチを何らかのさらなるレンズ処理の前に行い、一次接着を記録した。その後、レンズを脱イオン水中で30分間煮沸した。室温に冷却した後、クロスハッチおよびテープ片による試験を繰り返し、結果を記録した。一次接着の喪失が、最初の(乾燥)試験ではサンプルのいずれにおいても何ら認められなかった。表におけるデータは二次接着の喪失の結果を示すだけである。下記の表4には、ブロックイソシアナートの接触促進剤による結果が、他のシランカップリング剤と比較して示される。
【0157】
【表9】

【0158】
【表10】

(貯蔵寿命試験)
上記の被覆溶液を、これらの溶液の貯蔵寿命を求めるために経時的にモニターした。0%の接着喪失をもたらした、シランカップリング剤を含有する溶液(実施例6−1、実施例6−5および実施例6−8)のみをモニターした。実施例6−1および実施例6−8は典型的には、2日〜3日でゲル化した。実施例6−5は、2週間〜3週間まで、受け入れらないほどの粘度増大を示さなかった。
【0159】
本発明の具体的な実施形態が例示目的のために上記に記載されているが、本発明の細部の数多くの変化が、添付された特許請求の範囲において定義されるような発明から逸脱することなく行われ得ることが当業者には明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光感応特性を有するように適合された光学エレメントであって、
a)基体;および
b)基体上に被覆を形成するために基体の少なくとも一部分に適用された硬化可能な薄膜形成組成物
を含み、硬化可能な薄膜形成組成物は、
i)反応性官能基を含有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む樹脂状物質;
ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる2つ以上の反応性官能基を有する硬化剤;および
iii)ブロックイソシアナート基と、別の異なる官能基とを含む、i)およびii)とは異なる物質であって、該別の異なる官能基は、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基と反応することができる、物質
を含み、前記イソシアナート基は、100℃もの低い温度で脱ブロックすることができるブロック剤によりブロックされ、また、iii)の物質が、iii)の物質を硬化可能な薄膜形成組成物に含まない実質的に同一の光学エレメントと比較した場合、硬化可能な薄膜形成組成物と、基体および/または重ねられた被覆との間における接着を改善するために少なくとも十分な量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する、光学エレメント。
【請求項2】
iii)の物質における官能基が、(メタ)アクリロイル、ビニル、アリル、マレインイミド、トリアルコキシシリルおよび/またはハロアルキルを含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項3】
前記ブロック剤が3,5−ジメチルピラゾールおよび/またはN−t−ブチルベンジルアミンを含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項4】
iii)の物質が、硬化可能な薄膜形成組成物における樹脂固形分の総重量に基づいて20重量パーセントまでの量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項5】
iii)の物質が、硬化可能な薄膜形成組成物における樹脂固形分の総重量に基づいて10重量パーセントまでの量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する、請求項4に記載の光学エレメント。
【請求項6】
無機フォトクロミック物質および/または有機フォトクロミック物質を含むフォトクロミック物質をさらに含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項7】
前記フォトクロミック物質が、ピラン、オキサジン、フルギド、フルギミドおよび/またはジアリールエテンを含む有機フォトクロミック物質である、請求項6に記載の光学エレメント。
【請求項8】
前記フォトクロミック物質が前記硬化可能な薄膜形成組成物に存在する、請求項6に記載の光学エレメント。
【請求項9】
前記基体が、無機ガラス、セラミック物質および/またはポリマー有機物質を含み、かつ、眼科用物品である、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項10】
c)b)の硬化可能な薄膜形成組成物に重ねられ、かつ、該硬化可能な薄膜形成組成物とは異なる薄膜または被覆をさらに含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項11】
前記重ねられた被覆が耐摩耗性の被覆である、請求項10に記載の光学エレメント。
【請求項12】
前記基体の少なくとも一部分に直接に適用される保護薄膜、少なくとも部分的に偏光させる表面処理、被覆もしくは薄膜、および/または、それらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項13】
前記基体が、光感応特性を有するように適合される、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項14】
前記基体が、フォトクロミズムを有するように適合される、請求項13に記載の光学エレメント。
【請求項15】
前記光感応特性が前記基体と一体化される、請求項13に記載の光学エレメント。
【請求項16】
光感応性化合物が、前記基体の表面に適用される被覆または処理に含有される、請求項13に記載の光学エレメント。
【請求項17】
前記基体の少なくとも一部分の上部に直接に適用される少なくとも部分的に反射防止性の表面処理、少なくとも部分的に疎水性の表面処理、または、反射防止表面処理および疎水性表面処理のその後の表面処理をさらに含む、請求項9に記載の光学エレメント。
【請求項18】
i)の樹脂状物質が、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリカーボナートポリマーおよび/またはポリエーテルポリマーを含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項19】
i)の樹脂状物質が(メタ)アクリルモノマーを含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項20】
ii)の硬化剤が、アミノプラスト樹脂、ポリイソシアナート、ブロックされたポリイソシアナート、ポリエポキシド、ポリ酸、無水物、ポリ酸無水物、ポリエチレン性不飽和物質および/またはポリオールを含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項21】
iii)の物質がトリアルコキシシリルプロピルイソシアナートおよび/またはイソシアナトアルキル(メタ)アクリラートを含む、請求項1に記載の光学エレメント。
【請求項22】
iii)の物質が、3,5−ジメチルピラゾールによりブロックされたトリエトキシシリルプロピルイソシアナート、トリメトキシシリルプロピルイソシアナートおよび/またはイソシアナトエチル(メタ)アクリラートを含む、請求項21に記載の光学エレメント。
【請求項23】
光感応特性を有するように適合された光学エレメントであって、
a)基体;および
b)基体上に被覆を形成するために基体の少なくとも一部分に適用された硬化可能な薄膜形成組成物
を含み、硬化可能な薄膜形成組成物は、
i)反応性官能基を含有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを含む樹脂状物質;
ii)i)の樹脂状物質における官能基と反応することができる2つ以上の反応性官能基を有する硬化剤;および
iii)ブロックイソシアナート基と、別の異なる官能基とを含む、i)およびii)とは異なる物質であって、該別の異なる官能基は、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基と反応することができる、物質
を含み、前記イソシアナート基は、iii)の物質における官能基、i)の樹脂状物質における官能基、ii)の硬化剤における官能基、重ねられた被覆における官能基、および/または、基体における官能基のいずれかが互いに反応する温度以下で脱ブロックすることができるブロック剤によりブロックされ、また、iii)の物質が、iii)の物質を硬化可能な薄膜形成組成物に含まない実質的に同一の光学エレメントと比較した場合、硬化可能な薄膜形成組成物と、基体および/または重ねられた被覆との間における接着を改善するために少なくとも十分な量で、硬化可能な薄膜形成組成物に存在する、光学エレメント。

【公表番号】特表2009−507960(P2009−507960A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530087(P2008−530087)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/033520
【国際公開番号】WO2007/030353
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】