説明

プライマー兼用ベース塗料組成物、加飾成形品の製造方法及び加飾成形品

【課題】プライマー塗膜層を形成することなくポリオレフィン基材と塗膜層との密着性を確保し、銀の析出性、銀メッキ層の平滑性、塗膜外観の優れた加飾成形品が得られるプライマー兼用ベース塗料、これを使用してなる製造方法及び加飾成形品を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン基材上に、プライマー兼用ベース塗膜層、銀メッキ層、トップクリヤー塗膜層を形成した、加飾成形品の製造方法において使用する塗料であって、アクリルポリオール(a1)、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)及び塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)を主成分とする主材(a)、並びに、ポリイソシアネート硬化剤(b)からなり、上記(a1)、(a2)及び(a3)は、質量固形分%比でそれぞれ(a1):40〜80%、(a2):5〜45%及び(a3):1〜35%であり、主材(a)は、シクロヘキサンを固形分100質量部に対し5〜45質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー兼用ベース塗料組成物、加飾成形品の製造方法及び加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック素材上に銀メッキ層を備える加飾成形品は、金属様の外観を呈するものとなるため、メータークラスター、センタークラスター、センターコンソール等の自動車の内装部品、ホイールキャップ、バンパーモール、ホイルガーニッシュ、グリルラジエータ、バックパネル、ドアーミラーカバー、ドアーハンドル等の自動車の外装部品、エアコンハウジング、携帯電話、ノートパソコン、化粧品容器等の自動車部品以外の用途等に使用することができるものである。
【0003】
これらの加飾成形品の製造方法としては、例えば、プラスチック基材上にアルコキシチタニウムエステル、エポキシ基を有するシランカップリング剤、エポキシ樹脂等を含有する塗料によりアンダーコート層を形成し、次いで、銀メッキ層及びトップコート層を形成させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このような製造方法によって得られた加飾成形品は、銀メッキ層の形成において無電解メッキを行うが、銀の析出性、ベース層の平滑性、密着性、塗膜外観等の性能が充分なものではなかった。
【0005】
その他の加飾成形品の製造方法としては、特許文献2及び3に記載されたような方法も知られている。この方法は、基材上に有機樹脂からなるベースコート層を形成し、その上に銀メッキ層を形成した後、トップコート層を形成せしめることによる加飾成形品の製造方法である。しかし、このような加飾成形品の製造方法によって得られた加飾成形品は、ベース層と銀メッキ層との密着性、外観、膜性能等の点で充分満足な物性が得られるものではなかった。特にポリオレフィン樹脂は、その表面にほとんど官能基を有さないものであるため、密着性を得ることが困難であり、ポリオレフィン基材とベース層との密着性を得ることが困難である。
【0006】
このような問題を解決するため、基材表面をプライマーで処理した後でベースコート層を形成する方法も知られている。すなわち、基材上にプライマー層、ベースコート層、銀メッキ層、トップコート層を順次形成せしめる方法である。しかし、このような方法は、プライマー層を塗装するための塗装工程が増えることによるコストアップという問題を有する。また、プライマー層としては、ポリオレフィン基材との親和性が高い樹脂からなるものが使用されるため、プライマーコート層とベースコート層との間の密着性や塗膜の密着性を充分なものとすることが困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−309774号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2002−256454号公報(第2頁)
【特許文献3】特開2002−2564555号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、プライマー塗膜層を形成することなくポリオレフィン基材と塗膜層との密着性を充分に確保し、銀の析出性、銀メッキ層の平滑性、塗膜外観においても優れた性質を有する加飾成形品を得ることができる加飾成形品用プライマー兼用べース塗料、これを使用してなる加飾成形品の製造方法及び加飾成形品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン基材上に、プライマー兼用ベース塗膜層、銀メッキ層、トップクリヤー塗膜層を形成した、銀メッキ層を含む複層塗膜を形成してなる加飾成形品の製造方法において使用するプライマー兼用ベース塗料であって、プライマー兼用ベース塗料は、アクリルポリオール(a1)、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)及び塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)を主成分とする主材(a)、並びに、ポリイソシアネート硬化剤(b)からなり、上記(a1)、(a2)及び(a3)は、質量固形分%比でそれぞれ(a1):40〜80%、(a2):5〜45%及び(a3):1〜35%であり、主材(a)は、シクロヘキサンを固形分100質量部に対し5〜45質量部含むことを特徴とする加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料である。
【0010】
上記ポリイソシアネート硬化剤(b)がポリイソシアネート化合物であり、上記加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料は、2液型ポリウレタン塗料であることが好ましい。
又は、上記ポリイソシアネート硬化剤(b)がブロック剤でブロックされたポリイソシアネート化合物であり、1液型ポリウレタン塗料であることが好ましい。
【0011】
本発明は、ポリオレフィン基材上に上述した加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料を塗装することによってプライマー兼用ベース塗膜層を形成する工程(1)、上記工程(1)によって形成されたプライマー兼用ベース塗膜上に銀メッキ層を形成する工程(2)、上記工程(2)によって形成された銀メッキ層上にトップクリヤー塗膜層を形成する工程(3)からなることを特徴とする加飾成形品の製造方法でもある。
本発明は、上述した加飾成形品の製造方法によって製造されたことを特徴とする加飾成形品でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のプライマー兼用ベース塗料は、ポリオレフィン基材上に、プライマー兼用ベース塗膜層、銀メッキ層、トップクリヤー塗膜層を形成した銀メッキ層を含む複層塗膜を形成してなる加飾成形品の製造方法において使用するものであり、プライマーとしての機能も有するものであることから、プライマーによる処理を行うことなくベース塗膜を形成することができるものである。本発明のプライマー兼用ベース塗料は、アクリルポリオール(a1)、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)及び塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)を主成分とする主材(a)、並びに、ポリイソシアネート硬化剤(b)からなり、上記(a1)、(a2)及び(a3)は、質量固形分%比でそれぞれ(a1):40〜80%、(a2):5〜45%及び(a3):1〜35%であり、主材(a)は、シクロヘキサンを固形分100質量部に対し5〜45質量部含むことを特徴とする加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料である。
【0013】
上記アクリルポリオール(a1)は、銀メッキ層との密着性、銀メッキ層の平滑性を得、同時にポリイソシアネート硬化剤(b)との硬化反応を生じさせることによって強靭な塗膜を形成させるための成分である。上記アクリルポリオール(a1)に加えて、塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)を併用することによって、ポリオレフィン素材表面との密着性及び平滑性を得ることができる。上記アクリルポリオール(a1)と塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)とは相溶性を有さないものであることから、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)を併用し、相溶性を得るものである。
【0014】
上記クリヤー塗料組成物用主材に含まれるアクリルポリオール(a1)としては、水酸基を含有するアクリル樹脂であれば特に限定されず、また、変性したものであってもよい。
上記アクリルポリオール(a1)の水酸基価は、40〜120mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは60〜100mgKOH/gである。40mgKOH/g未満であると、ポリイソシアネート硬化剤との架橋反応点が不足し、塗膜物性が不充分となる場合があり、120mgKOH/gを超えると、架橋反応点が多すぎ、塗膜が硬くもろくなったり、また、過剰の水酸基が原因となり塗膜の耐湿性、耐水性が低下し好ましくない場合がある。
【0015】
上記アクリルポリオール(a1)の重量平均分子量は、好ましくは20000〜150000、より好ましくは40000〜110000の範囲である。20000未満であると、塗膜の物性が低下する傾向にあり、150000を超えると、塗装作業性が低下し、仕上がり外観が低下する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィ)によって測定し、ポリスチレン換算法で算出した値である。
【0016】
上記アクリルポリオール(a1)は、水酸基含有ラジカル重合性モノマー及び必要に応じて使用するその他のラジカル重合性モノマーからなるモノマー組成物を、常法によって重合して得ることができる。
【0017】
上記水酸基含有ラジカル重合性モノマーとしては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートをε−カプロラクトンによって開環させたもの(ダイセル化学工業社製プラクセルFA及びFMシリーズ)等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記その他のラジカル重合性モノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマーの他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記モノマー組成物を重合することによってアクリルポリオール(a1)が得られるが、アクリルポリオール(a1)の製造方法としては従来公知のアクリル樹脂の製造方法を用いることができる。すなわち、溶液重合、非水ディスパージョン重合、塊状重合等の重合方法をとり得るが、重合の容易さ、分子量調節の面、塗料化するときの使い易さの面から溶液重合法が適している。
【0020】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)は、塩素化ポリオレフィン樹脂を溶剤(例えば、トルエン、酢酸ブチル、これらの混合溶媒等)とともに加熱し、溶解した状態でラジカル重合性アクリル単量体組成物をラジカル開始剤とともに仕込み反応することにより得ることができる。
【0021】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)の製造に使用する塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素原子が置換したポリオレフィンからなる部分である。上記ポリオレフィンとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリブテンや、スチレン−ブタジエン−イソプレンなどの共重合体の水添加物等が挙げられ、1種のみ、又は、2種以上を併用してもよい。中でも、塩素化ポリオレフィン部分が、塩素原子が置換したポリプロピレンからなる部分であると、入手し易く、密着性が高くなるため好ましい。
【0022】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)における塩素化ポリオレフィン部分の塩素含有率や分子量については、特に限定はないが、塩素含有率が18〜30質量%、塩素化ポリオレフィン部分の分子量が2万〜15万であると、ポリオレフィン素材との密着性がさらに向上し、耐ガソリン性が高くなるため好ましく、塩素含有率が20〜25質量%、塩素化ポリオレフィン部分の分子量が5万〜12万であるとさらに好ましい。塩素化ポリオレフィン部分の塩素含有率が18質量%未満であると、他の樹脂との相溶性が低下し、また、結晶性が高く融解しにくくなり、造膜性が低下する。他方、塩素含有率が30質量%を超えると、ポリオレフィン基材に対する密着性が低下する。また、塩素化ポリオレフィン部分の分子量が2万未満であると、プライマー塗料組成物から得られる塗膜の強度は低く、耐水性や耐ガソリン性が低下する。他方、分子量が15万を超えると、ポリオレフィン基材に対してヌレ性が低下して、密着性が低下するとともに、他の樹脂との相溶性が低下するため、塗膜が不均一となり、塗膜に濁りが生じることがある。
【0023】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)における塩素化ポリオレフィン部分は、耐水性が低下しない程度にカルボン酸及び/又は酸無水物で変性した塩素化ポリオレフィンであってもよい。変性に用いられるカルボン酸及び/又は酸無水物としては、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。これらの変性量は耐水性等を考慮して決められるが、一般的には7%以下、好ましくは5%以下であることが好ましい。
【0024】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)における塩素化ポリオレフィン部分として使用することができる市販の塩素化ポリオレフィンとしては、例えば、ハードレンEH202やハードレン14ML、ハードレンM128P(いずれも東洋化成工業社製)、スーパークロン822(日本製紙社製)等を挙げることができる。
【0025】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)におけるアクリル系重合鎖部分は、塩素化ポリオレフィン部分にグラフトしている重合鎖である。アクリル系重合鎖部分のガラス転移温度は0〜60℃の範囲にあれば特に限定はない。ガラス転移温度が0℃未満であると、ポリオレフィン素材との密着性が低下する。他方、ガラス転移温度が60℃を超えると、アクリル系重合鎖部分と塩素化ポリオレフィン部分との相溶性が悪く、熱時フロー性が下がる。さらに、60℃を超えると、プライマー塗料組成物から得られる塗膜は、平滑ではなく、しかも硬くて柔軟性に乏しくなる。
【0026】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)におけるアクリル系重合鎖部分は、アクリル系単量体に由来する構造単位を必須成分とするが、適宜、その他の単量体に由来する構造単位をさらに含んだ共重合体部分であってもよい。アクリル系単量体としては、たとえば、アクリル酸や、上述したアクリルポリオール(a1)の製造において使用することができる単量体として例示した(メタ)アクリルモノマー等のアクリル酸エステル系単量体を挙げることができ、1種のみ、又は、2種以上を併用してもよい。
【0027】
その他の単量体としては、たとえば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、p−ヒドロキシスチレン等の水酸基含有ビニル系単量体;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体等を挙げることができ、1種のみ、又は、2種以上を併用してもよい。
【0028】
アクリル系単量体やその他の単量体に由来する構造単位は、いずれの場合も、アクリル系重合鎖部分のガラス転移温度が0〜60℃になるように選択される。このように、ガラス転移温度の条件を満足するアクリル系重合鎖部分としては、たとえば、アクリル酸ブチルに由来する構造単位を主成分とし、適宜、スチレンや、アクリル酸、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等に由来する構造単位等を副成分として含むものや、シクロヘキシルメタクリレートに由来する構造単位を主成分とし、適宜、スチレンや、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等に由来する構造単位等を副成分として含むもの等が挙げられる。
【0029】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)の製造方法は、たとえば、塩素化ポリオレフィンを溶剤中で溶解させておいて、過酸化物存在下、上記アクリル系単量体やその他の単量体をグラフト重合する方法や、塩素化ポリオレフィンの原料モノマー等の溶液を溶剤中で、上記アクリル系単量体やその他の単量体とともに重合する方法等がある。
【0030】
上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)中の塩素化ポリオレフィン部分(a2−1)及びアクリル系重合鎖部分(a2−2)の質量比については特に限定されないが、好ましくは(a2−1)/(a2−2)=80/20〜10/90であり、さらに好ましくは(a2−1)/(a2−2)=70/30〜30/70である。上記質量比が10/90未満であると、塩素化ポリオレフィン部分の質量比率が低くなり、ポリオレフィン素材に対する密着性が低下するおそれがある。他方、上記質量比が80/20を超えると、アクリル系重合鎖部分の質量比率が低くなり、水分散性が低下することがある。
【0031】
上記塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)は、塩素原子が置換したポリオレフィンからなる樹脂であり、上述した塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)の製造に使用する塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)と同様のものを使用することができる。本発明の塗料組成物において、上記塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)は、併用する塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)の製造に使用したものと同一であっても相違するものであってもよい。
【0032】
上記主材(a)において、アクリルポリオール(a1)は、質量固形分100%に対して40〜80質量%である。上記アクリルポリオール(a1)の含有量が40質量%未満であると、得られる加飾成形品の光沢が低下し、80質量%を超えるとポリオレフィン基材表面や銀メッキ層との密着性が低下する。上記下限は45質量%であることがより好ましく、上記上限は76質量%であることがより好ましい。
【0033】
上記主材(a)において、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)は、質量固形分100%に対して5〜45質量%である。上記塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)の含有量が5質量%未満であると、塗料主材の安定性が悪くなり、かつ、上層の銀メッキ形成時点での銀の析出性が不均一となり、光沢が低くなり、45質量%を超えると下層のプラスチック基材や銀メッキ層膜との密着性が悪くなる。上記下限は10質量%であることがより好ましく、上記上限は40質量%であることがより好ましい。
【0034】
上記主材(a)において、塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)は、質量固形分100%に対して1〜35質量%である。上記塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)の含有量が1質量%未満であると、プラスチック素材との密着性が悪くなり、35質量%を超えると光沢が悪くなる。上記下限は3質量%であることがより好ましく、上記上限は33質量%であることがより好ましい。
【0035】
上記主材(a)は、アクリルポリオール(a1)、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)及び塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)に加えて、上記主材(a)中の固形分100質量部に対してシクロヘキサンを5〜45質量部含有するものである。5質量部未満であると、塗料主材の塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)の安定性を維持できず、結果的に塗料主材の安定性が低下してしまい、加飾成形品の光沢が低下する。45質量部を超えると、アクリルポリオール(a1)の溶解性が不良となり、銀メッキ層やトップクリヤー層の平滑性の悪化、加飾成形品の光沢低下等の問題を生じる。上記下限は7質量部であることが好ましく、上記上限は40質量部であることが好ましい。なお、上記シクロヘキサンの含有量の規定は、本発明の加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料が1液型ベース塗料である場合には、塗料中の(a1)〜(a3)の固形分100質量部に対するシクロヘキサンの量を表すものである。
【0036】
本発明のプライマー兼用ベース塗料組成物は、上記主材(a)に加えて、ポリイソシアネート硬化剤(b)を使用するものである。上記ポリイソシアネート硬化剤(b)は、ブロックされていないポリイソシアネート化合物を上記主材(a)とは別の溶液としておき、使用時に混合して使用する2液型ポリウレタン塗料として使用するものであっても、ブロックされたポリイソシアネートを使用する1液型ポリウレタン塗料であってもよい。
【0037】
上記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート;その単量体及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。硬化性が良好であることから、上記ポリイソシアネートは、多量体であることが好ましい。
【0038】
上記ポリイソシアネートの市販品としては、スミジュールN75、スミジュールN3600、スミジュールN3200−90CX(以上住化バイエルウレタン社製);コロネートFH、コロネート341(以上日本ポリウレタン社製);デュラネートTHA−100、デュラネート24A−90CX、デュラネートE−402−90T(以上旭化成社製)等を挙げることができる。
【0039】
上記ポリイソシアネートをブロックして使用する場合のブロック剤としては特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム及びβ−プロピオラクタム等のラクタム系;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトン等の活性メチレン系;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルへキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル、フルフリルアルコール等のアルコール系;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン系等を挙げることができる。
【0040】
上記ブロック化されたイソシアネートの市販のものとしては、例えば、活性メチレンを反応させたものとして、デスモサーム2170、デスモジュールTPLS2759(以上住化バイエルウレタン社製);コロネートC−2513、BI−120(以上日本ポリウレタン社製);デュラネートMF−K60X(旭化成社製)等を挙げることができ、メチルケトンオキシムを反応させたものとしては、デスモジュールBL3175、デスモジュールTPLS2135、デスモジュールS−2759−40X(以上住化バイエルウレタン社);コロネートC2557、コロネート2529、コロネートC2507(以上日本ポリウレタン社製)等を挙げることができる。
【0041】
本発明のプライマー兼用ベース塗料組成物において、上記ポリイソシアネート硬化剤(b)中のNCO基と上記アクリルポリオール(a1)中のOH基との当量比(NCO/OH)は、1/1〜2/1であることが好ましい。1/1未満であると、ベース塗膜層と銀メッキ層との付着性が低下するおそれがあるため、好ましくない。2/1を超えると、加飾成形品に虹が発生するおそれがある。上記当量比(NCO/OH)は、1.1/1〜1.95/1であることがより好ましい。
【0042】
本発明のプライマー兼用ベース塗料組成物には、必要に応じて他の溶剤、硬化触媒、表面調整剤、沈降防止剤、消泡剤、粘性調整剤等の成分を添加してもよい。特に好ましい添加剤としては、銀メッキ膜の析出性や平滑性を保持するための有機変性ポリジメチルシロキサン等の高分子量表面調整剤、銀膜表面と反応して付着性や防食性を保持するためのエポキシシラン等を挙げることができる。
【0043】
上記ベース塗料組成物が主材(a)及びイソシアネート化合物からなる2液型ポリウレタン塗料組成物である場合、上記2成分を使用直前に混合して塗装を行うことにより、上記ベース塗膜層を形成することができる。上記ベース塗料組成物の塗装によるベース塗膜層の形成は、スプレー塗装等の通常の方法によって行うことができる。塗装後は、60〜100℃で加熱硬化を行い、硬化膜厚20〜30μmの塗膜を得ることが好ましい。
【0044】
上記ベース塗料組成物が主材(a)及びブロックイソシアネート化合物からなる1液型ポリウレタン塗料組成物である場合、スプレー塗装等の通常の方法によって塗装を行うことができる。塗装後は、70〜100℃で加熱硬化を行い、硬化膜厚20〜30μmの塗膜を得ることが好ましい。
【0045】
本発明の複層塗膜の形成方法は、上記ベース塗膜層上に銀メッキ層を形成するものである。上記ベース塗膜層上に銀メッキ層を形成することによって、銀の析出性がよく、外観や密着性にも優れた銀メッキ層を形成することができる。
【0046】
銀メッキ層の形成方法は特に限定されるものではなく、銀鏡反応と呼ばれる無電解メッキ法によって行うことができる。もっとも一般的な方法としては、トレンス試薬と呼ばれるアンモニア性硝酸銀([Ag(NHOH)と還元剤溶液とを上記ベース塗膜層の表面上で混合されるように塗布する方法を挙げることができる。上記還元剤としては特に限定されず、例えば、グルコース等の糖類;グリオキサール等のアルデヒド基を有する有機化合物;亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0047】
本発明の複層塗膜の形成方法は、上記銀メッキ層上に、クリヤー塗膜層を設けるものである。これによって、銀メッキ層の劣化を防止し、耐食性を向上させるものであり、また、積層成形品の外観をより向上させるものである。
【0048】
上記トップコート層を形成するためのトップクリヤー塗料は、通常、上記銀メッキ層を含む加飾成形品の複層被膜においてトップクリヤー塗料として使用されているものを使用することができる。特に、トップクリヤー膜と銀メッキ膜との層間付着性や銀メッキ層の防食性、耐候性等を考慮したトップクリヤー塗料が好ましい。耐候性の観点から、アクリル 系樹脂を含有するトップクリヤー塗料が好ましく、付着性や銀メッキ膜の防食性を得るという観点から、アミノ基含有樹脂、防錆剤を含有するものであってもよい。
【0049】
上記アクリル樹脂は、良好な膜物性を得るため、反応性ヒドロキシル基含有アクリルポリオールが好ましい。上記反応性ヒドロキシル基含有アクリルポリオールは、上記アクリルポリオール(a1)と同様の樹脂を使用することができる。また、その他の市販のアクリル樹脂としては、ダイヤナールLR−2586(三菱レーヨン社製)、ヒタロイド3371(日立化成社製)等を使用することができる。上記反応性ヒドロキシル基含有アクリルポリオールは、溶液型樹脂であっても非水分散型樹脂(Non Aqueous Dispersion;NAD)であってもよい。上記非水分散型樹脂の市販品としては、セタラックス1850ss−50(アクゾノーベル社製)、ヒタロイド6110(日立化成社製)等を挙げることができる。
【0050】
上記アミノ基含有樹脂としては、アミノ基を含有するアクリル樹脂が好ましく、より好ましくは、−N−Rで表されるジアルキルアミノ基を側鎖に有するアクリル樹脂である。上記アミノ基含有樹脂は、上記アクリルポリオール(a1)と同様の製造方法で、単量体として更に3級アミノ基含有ラジカル重合性単量体を使用することによって得ることができる。
【0051】
上記クリヤー塗料組成物は、硬化剤を含有するものであることが好ましい。硬化剤としては特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート等を挙げることができる。上記ポリイソシアネートは、上述したプライマー兼用ベース塗料組成物において使用することができるポリイソシアネートを使用することができ、ブロック化したポリイソシアネート化合物であってもよい。耐候性に優れることから、脂肪族系ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0052】
上記防錆剤としては、脂肪酸変性アミド化合物等を挙げることができる。上記トップクリヤー塗料組成物には、必要に応じて、酢酸ブチルエステル、キシレン、トルエン等の他の溶剤;硬化触媒;サノールLS−292(三共社製)等の光安定剤;チヌビン384等の紫外線吸収剤;表面調整剤;消泡剤;粘性調整剤;沈降防止剤等を配合するものであってもよい。
【0053】
上記クリヤー塗料組成物は、上記各成分を使用直前に混合して塗装を行うものである。上記クリヤー塗料組成物の塗装によるクリヤー塗膜層の形成は、スプレー塗装等の通常の方法によって行うことができる。塗装後は、60〜100℃で加熱硬化を行い、硬化膜厚20〜40μmの塗膜を得ることが好ましい。乾燥膜厚が20μm未満であると、耐食性及び外観が悪化するおそれがある。乾燥膜厚が40μmを超えると、タレ、ワキが生じやすくなる点で好ましくない。上記クリヤー塗膜層の乾燥膜厚は、25〜35μmであることがより好ましい。
【0054】
本発明の複層塗膜の形成方法を適用するプラスチック素材としては、ポリオレフィン系素材が好ましく、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、これらの混合物等を挙げることができる。これらは、射出成形や押出成形等公知の成形方法によって成形したものを使用することができる。
【0055】
上記プラスチック素材は、必ずしも本発明のプライマー兼用ベースコート塗料組成物を塗装する前にプラスチック素材表面を処理する必要はないが、成形後に付着した汚染物質等が存在するおそれがある場合には、付着性を良好なものとするために、プライマー兼用ベースコート塗料組成物の塗装前に洗浄処理及び乾燥を行うことが好ましい。上記乾燥処理及び乾燥は、通常の方法によって行うものでよい。
【0056】
本発明の複層塗膜の形成方法は、上記ベース塗膜層上に銀メッキ層を形成するものである。上記ベース塗膜層上に銀メッキ層を形成することによって、銀の析出性がよく、外観や密着性にも優れた銀メッキ層を形成することができる。このような方法によって得られた加飾成形品も本発明の一部である。
【発明の効果】
【0057】
本発明のプライマー兼用ベース塗料組成物は、プライマー塗膜層を形成することなくポリオレフィン基材と塗膜層との密着性を充分に確保し、銀の析出性、銀メッキ層の平滑性、塗膜外観においても優れた性質を有する加飾成形品を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0059】
製造例1 アクリルポリオール(a1)の調製
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管及びサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)2質量部、酢酸ブチル8.57質量部、トルエン8.57部及び芳香族炭化水素系溶剤(「ソルベッソ100」エクソン社製)5質量部を仕込み、撹拌しながら内温を110℃まで昇温した。
ついで、メチルメタクリレート37.35質量部、メタクリル酸2.07質量部及びn−ブチルメタクリレート44.08部、ヒドロキシプロピルアクリレート16.5質量部の混合溶液と、PGME1質量部、酢酸ブチル4質量部、トルエン4質量部、「ソルベッソ100」1質量部及びパーオキサイド系重合開始剤(「カヤエステルO」日本化薬社製)2.2質量部からなる開始剤溶液とを、それぞれ2つの滴下ロートに別々にいれ、3時間かけて滴下し、重合を開始した。この間、内温を110℃に維持するようにし、滴下終了後、続いてPGME1質量部、酢酸ブチル1.5質量部、「ソルベッソ100」1質量部、トルエン1.5質量部及び「カヤエステルO」0.3質量部からなる溶液を、内温を110℃に維持しながら2時間かけて滴下して重合を完了し、内温度を80℃に冷却してからトルエン40.76質量部を酢酸ブチル17質量部を順に仕込み、アクリル樹脂ワニスAを得た。アクリル樹脂ワニスの固形分は、50質量%であった。
また、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフのスチレン換算による測定から約70,000であった。
【0060】
尚、上記アクリル樹脂ワニスの固形分測定法は、不揮発分測定用アルミ皿にアクリル樹脂ワニス(Xg)を採取し、110℃で3時間乾燥した後、残存固形分量(Yg)を測定し、下記式により算出した。
樹脂固形分(質量%)=[(Y)/(X)]×100
【0061】
製造例2 塩素化ポリオレフィン樹脂ワニスの調製(ポリオレフィン樹脂ワニスa3)
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管、及びサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、トルエン56質量部、酢酸ブチル24質量部及び酸無水物変性塩素化ポリプロピレン樹脂(「ハードレンM128P」東洋化成工業社製:塩素含有率21質量%、重量平均分子量40,000)20質量部を仕込み撹拌しながら110℃に昇温し、1時間加熱し,ポリオレフィン樹脂ワニスBを得た。固形分は20質量%であった。
【0062】
製造例3 塩素化ポリプロピレン変性アクリル樹脂の調製(ポリオレフィン樹脂ワニスa2)
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管、及びサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル7質量部、トルエン58質量部、酢酸ブチル23質量部及び酸無水物変性塩素化ポリプロピレン樹脂(「ハードレンM128P」東洋化成工業社製)20質量部を仕込み、撹拌しながら内部温度を110℃に昇温した。ついで、メチルメタクリレート30質量部、メタクリル酸3質量部、n−ブチルメタクリレート40質量部、2ヒドロキシエチルメタクリレート7質量部からなる単量体混合液と、プロピレングリコールモノメチルエーテル4質量部、トルエン12質量部、酢酸ブチル5質量部及びパーオキサイド系重合性開始剤(「カヤエステルO」日本化薬社製」2.2質量部からなる重合開始剤溶液とを、それぞれ別の滴下ロートに仕込み、反応容器内を110℃に維持し撹拌しながら、3時間かけて滴下した。さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル1質量部、トルエン2質量部、酢酸ブチル1質量部、「カヤエステルO」0.3質量部からなる重合開始剤溶液を、内温を110℃に保持・撹拌しながら2時間かけて滴下し、反応を完了した。この樹脂の固形分は、47質量%であった。
【0063】
製造例4 プライマー兼用ベース塗料(A)塗装液の調製
2液硬化型ポリウレタン塗料については塗装直前に、そして、1液型ポリウレタンについては事前に撹拌機を備えた容器に、まず上記主材(a)を仕込み、撹拌しながら希釈溶剤(D)(酢酸ブチルエステル/メチルイソブチルケトン/トルエン/イプゾール=35/10/32/23:質量比)を上記主材に対し1:1の割合で仕込み、続けて各イソシアネート硬化剤を仕込み、15分間撹拌してプライマー兼用ベース塗料(A)塗装液を調整した。
2液型ポリウレタン塗料組成物:イソシアネート硬化剤としてスミジュールN3500(住化バイエル社製、不揮発分=75%)を用いた。
1液型ポリウレタン塗料組成物:イソシアネート硬化剤としてブロック型イソシアネートであるデスモジュールLS2759−40X(住化バイエルウレタン社製、不揮発分=38%)を用いた。
各実施例・比較例における硬化剤の配合量については、表1、表2、表3のとおりである。
【0064】
製造例5 トップクリヤー塗料塗装液(c1)の調製
実施例1〜6及び実施例9、比較例1〜7についてのトップクリヤー塗料塗装液(c1)は、R241トップクリヤー(日本ビー・ケミカル社製 2液硬化型ポリウレタン塗料)を用いた該塗料100部に対し、上記希釈溶剤Bを50部加え希釈し、トップクリヤー塗料塗装液を調製した。
【0065】
製造例6 トップクリヤー塗料塗装液の調製(c2)
実施例7におけるクリヤー塗料組成物(c2)は、アクリル系ポリオール樹脂「ダイヤナールLR−2586」(三菱レーヨン社製、不揮発分45%)167部、3級アミノ基含有アクリル樹脂「アクリディックGZ−169」(大日本インキ化学社製、不揮発分48%)52部、表面調整剤「SH−2000−100CS」(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)2部、光安定剤「サノールLS−292」(三共社製)1部、紫外線吸収剤「チヌビン384」(チバスペシャリティーケミカルズ社製、固形分90%のキシレン溶液)3.6部、酢酸ブチルエステル16部を撹拌機を備えた容器に撹拌混合しながら順に仕込みクリヤー塗料主材を調整した。塗装前に、上記主材に対し撹拌しながら、上記希釈溶剤(D)を主材と1:1の質量比で仕込み希釈した後、続けて2液硬化型ポリイソシアネート硬化剤「デュラネート24A−90PX」(旭化成社製、不揮発分90%)を16部仕込み、クリヤー塗料塗装液を調製した。該塗装液を実施例7のクリヤー膜形成に用いた。
【0066】
製造例7 トップクリヤー塗料塗装液の調製(c3)
「ダイヤナールLR2586」を167部、非水分散型アクリル系樹脂「セタラックス1850ss−50」(アクゾノーベル社製、不揮発分50%)50部、「SH−2000−100CS」2部、「サノールLS−292」1.7部、「チヌビン384」を4.6部、酢酸ブチルエステル38部を上記(c2)と同じようにしてクリヤー塗料主材を調整し、さらに同様の手順にて、上記希釈溶剤(D)を主材と1:1比で希釈した後、「デュラネート24A−90PX」16部を加え、15分間撹拌後、クリヤー塗料塗装液とした。該塗装液を実施例8のトップクリヤー膜形成に用いた。
【0067】
(試験片の作成)
ポリプロピレン製基材の前処理及びプライマー兼用ベース塗膜の形成
70×100×3mmのポリプロピレン基材をイソプロパノール洗浄、乾燥後、上記プライマー兼用ベース塗料組成物を、乾燥膜厚18μmとなるようスプレー塗装し、80℃で10分間乾燥した。
【0068】
(銀メッキ層の形成)
上記ベース層が形成された試験片上に、0.2%塩化錫(II)の0.2%塩酸溶液を塗膜表面に塗布した後水洗した。水洗後の試験片に硝酸銀と過剰のアンモニアの混合水溶液及びグルコース溶液を同時に試験片上に塗布することによって、約20μmの均一な銀メッキ膜を形成させ、残留分を水洗によって除去することにより、上記ベース層上に銀メッキ層が形成された試験片を得た。
【0069】
(クリヤー層の形成)
上記銀メッキ層が形成された試験片上に、上記クリヤー塗料を、硬化膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間硬化させ、クリヤー層を形成させた試験片を得た。
得られた試験片を下記評価方法によって評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0070】
(評価方法)
貯蔵安定性
各実施例、比較例における2液硬化型プライマー兼用ベース塗料については主材(a)の、1液型硬化塗料に関しては塗料をそれぞれ500mlのブリキ缶容器に各200gずつ入れて密閉し、40℃×10日間貯蔵した後、試料をガラス棒で攪拌し、下記基準に基づいて判定した。
〇:組成物の増粘がない。
×:著しい増粘やゲル化が見られる。
【0071】
銀の析出性
銀メッキ膜の形成状態を目視観察して、下記基準に基づいて判定した。
〇:銀メッキ膜が均一に形成されている。
×:銀メッキ膜が不均一に形成されている。
【0072】
塗膜外観
目視にて、実施例及び比較例の試験片の外観を下記基準に基づいて観察した。
○:干渉縞、濁り、艶ボケ、平滑性異常等の外観異常がない。
×:干渉縞、濁り、艶ボケ、平滑性異常等の外観異常が見られる。
【0073】
付着性;耐温水二次密着性
40℃の温水に10日間浸漬後取り出し、表面の水を拭い去った後、25℃で1時間放置。その後、JIS K5400に準拠して碁盤目セロハンテープ剥離試験を行い、下記基準に基づいて判定した。
〇:剥離するマス目がなく、カット部の欠けがない。
×:剥離するマス目があったり、カット部の欠けがあったりする。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1、表2、表3の結果より、本発明のプライマー兼用ベース塗料組成物を使用して得られた加飾成形品は、銀の析出性、塗膜の密着性、塗膜外観の各性質に優れているのに対して、比較例の加飾成形品は、いずれかの性質が劣っているため、使用に適しないものであることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のクリヤー塗料組成物は、ベース塗膜とポリオレフィン基材及び銀メッキ層との密着性に優れ、優れた外観特性を有するるものであるから、メータークラスター、センタークラスター、センターコンソール等の自動車の内装部品、ホイールキャップ、バンパーモール、ホイルガーニッシュ、グリルラジエータ、バックパネル、ドアーミラーカバー、ドアーハンドル等の自動車の外装部品、エアコンハウジング、携帯電話、ノートパソコン、化粧品容器等の自動車部品以外の用途における塗装に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン基材上に、プライマー兼用ベース塗膜層、銀メッキ層、トップクリヤー塗膜層を形成した、銀メッキ層を含む複層塗膜を形成してなる加飾成形品の製造方法において使用するプライマー兼用ベース塗料であって、
プライマー兼用ベース塗料は、アクリルポリオール(a1)、塩素化ポリオレフィン変性アクリル樹脂(a2)及び塩素化ポリオレフィン樹脂(a3)を主成分とする主材(a)、並びに、ポリイソシアネート硬化剤(b)からなり、
前記(a1)、(a2)及び(a3)は、質量固形分%比でそれぞれ(a1):40〜80%、(a2):5〜45%及び(a3):1〜35%であり、
主材(a)は、シクロヘキサンを固形分100質量部に対し5〜45質量部含む
ことを特徴とする加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料。
【請求項2】
ポリイソシアネート硬化剤(b)は、ポリイソシアネート化合物であり、
2液型ポリウレタン塗料である請求項1に記載の加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料。
【請求項3】
ポリイソシアネート硬化剤(b)は、ブロック剤でブロックされたポリイソシアネート化合物であり、
1液型ポリウレタン塗料である請求項1に記載の加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料。
【請求項4】
ポリオレフィン基材上に請求項1、2又は3の加飾成形品用プライマー兼用ベース塗料を塗装することによってプライマー兼用ベース塗膜層を形成する工程(1)、
前記工程(1)によって形成されたプライマー兼用ベース塗膜上に銀メッキ層を形成する工程(2)、
前記工程(2)によって形成された銀メッキ層上にトップクリヤー塗膜層を形成する工程(3)からなることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の加飾成形品の製造方法によって製造されたことを特徴とする加飾成形品。

【公開番号】特開2006−37072(P2006−37072A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161699(P2005−161699)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【Fターム(参考)】