説明

プラズマアークを用いた焼却灰の処理装置及び方法

【課題】二次汚染物質の発生を最小限に抑えながら飛散灰を含む焼却灰を処理することができるプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置及び方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、二次汚染物質の発生を最小化しながら飛散灰が含まれた焼却灰を処理し、焼却灰の処理中、副産物として発生される塩化カルシウムとガラス質化したスラグとを分離して回収する、焼却灰の処理装置及び方法に関する。本発明による焼却灰の処理方法は、飛散灰と炉底灰とを含む焼却灰をスチームを媒質として発生させたプラズマアークで溶融させて溶融物を生成する段階と、前記溶融物を水で冷却させて前記溶融物に含まれた溶融塩を水に溶解し、前記溶融物に含まれたスラグをガラス質化する段階と、前記溶融塩が溶解した水から塩化カルシウムを回収する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰の処理技術に関するものであって、さらに詳しくは、スチーム(水蒸気)を用いて発生させたプラズマアークにより廃棄物の焼却炉で発生した焼却灰を溶融させて二次汚染物質の発生を抑制し、焼却灰を溶融させた溶融物から塩化カルシウムを回収する、プラズマアークを用いた焼却灰の処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属、非金属、石綿、焼却灰、放射性廃棄物、モールドフラックス、ガラス、アルミニウム、溶融型アーク溶接棒被覆などのような無機材料の溶融に、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を用いた溶融装置が主に使用されている。化石燃料を使用する場合、表面溶融方式により無機材料を溶融させるため、熱効率は高くなく、無機材料の溶融に多大なるエネルギーが必要とされる。
【0003】
焼却炉で発生する焼却灰は、一般的に、炉底灰(bottom ash)と飛散灰(fly ash)とに区分することができる。炉底灰はダイオキシンや重金属の含量が低いため、大部分埋め立てても構わない。しかしながら、飛散灰は多量のダイオキシンや重金属を含んでいるため、埋め立てる場合、二次汚染の問題が生じてしまう。このため、日本において焼却灰を埋め立てることは禁止されており、韓国においても同様の傾向にある。
【0004】
焼却飛散灰には多量の塩化カルシウムが含まれているが、これは焼却炉内で一般的に発生する排ガスに多く含まれている塩化水素を取り除くために半乾式反応塔を利用するためである。この塩化カルシウムは、溶融炉内で容易に溶融されてスラグとともに排出されてスラグ冷却用水を汚染し、溶融炉耐火物の寿命を短縮させる主な原因となる。しかしながら、この塩化カルシウムが回収できるならば、冬季における解氷剤などとして緊要に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−227735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、このような課題を解決するために、二次汚染物質の発生を最小限に抑えながら飛散灰を含む焼却灰を処理することができるプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置及び方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、焼却灰を処理する過程において発生する多量の塩化カルシウムを回収することができるプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置及び方法を提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、プラズマガスとして水蒸気を使用するプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、溶融炉で飛散灰及び炉底灰を含む焼却灰を、スチームを媒質として発生させたプラズマアークで溶融させて溶融物を生成する段階と、前記溶融炉で生成された溶融物を水槽に排出させて前記溶融物に含まれる溶融塩を水に溶解し、前記溶融物に含まれるスラグをガラス質化する段階と、前記溶融塩が溶解した水を前記水槽から塩化カルシウム回収機に供給する段階と、前記塩化カルシウム回収機を用いて前記溶融塩が溶解した水から水を取り除いて塩化カルシウムを回収する段階とを含む、プラズマアークを用いた焼却灰の処理方法を提供する。
【0010】
本発明による焼却灰の処理方法において、前記溶融物を生成する段階における前記焼却灰は、塩基性度を合わせるために飛散灰と炉底灰とを約1:1の割合で混合することができる。
【0011】
本発明による焼却灰の処理方法は、前記水槽でガラス質化したスラグをコンベヤを用いて前記水槽の外に排出し回収する段階をさらに含むことができる。
【0012】
本発明による焼却灰の処理方法は、前記溶融物を生成する段階において発生した排ガスをボイラに供給して前記排ガスに含まれた熱でスチームを発生させる段階をさらに含むことができる。このとき、前記ボイラは、前記生成されたスチームを前記プラズマアークの媒質及び前記塩化カルシウム回収機に供給することができる。
【0013】
本発明による焼却灰の処理方法は、前記スチーム発生段階以後に行われる、凝縮機が前記ボイラから供給された前記排ガスを凝縮する段階と、送風機が前記凝縮機で凝縮された前記排ガスを燃焼機に誘引する段階と、前記燃焼機が前記送風機により誘引された前記排ガスを燃焼させて外部に排出させる段階とをさらに含むことができる。
【0014】
本発明はまた、焼却灰供給機及び溶融装置を備えた、プラズマアークを用いた焼却灰の処理装置を提供する。前記焼却灰供給機は、飛散灰と炉底灰とを含む焼却灰を溶融装置に供給する。さらに、前記溶融装置は、前記焼却灰供給機から供給された前記焼却灰を、スチームを媒質として発生させたプラズマアークで溶融させて溶融物を生成する溶融炉を備える。
【0015】
本発明による焼却灰の処理装置において、前記溶融装置は、前記溶融炉及びプラズマトーチモジュールを備える。前記溶融炉は、前記焼却灰供給機から前記焼却灰が供給される供給管、一側が前記供給管に連結されて前記供給管から供給された前記焼却灰が溶融される溶融室、前記供給管の反対側に具設された排ガス排出管、前記排ガス排出管に近接するように前記溶融室の上部内壁の上部に突出するように突設された隔壁、及び前記溶融室の他側に付設されて前記溶融物が出湯される出湯口を備える。さらに、前記プラズマトーチモジュールは、前記供給管と前記隔壁との間の前記溶融室の上部を貫いて前記溶融室の内部に移動可能に設けられ、一部が前記焼却灰が堆積している方に向かって、スチームを媒質として発生させたプラズマアークを印加して前記焼却灰を溶融させるプラズマトーチを備える。
【0016】
本発明による焼却灰の処理装置は、水槽及び塩化カルシウム回収機をさらに備えることができる。前記水槽は水で満たされており、前記溶融炉で生成された溶融物を供給して前記溶融物に含まれた溶融塩を水に溶解し、前記溶融物に含まれたスラグをガラス質化する。そして、塩化カルシウム回収機は、前記水槽から供給された前記溶融塩が溶解した水から水を除去して塩化カルシウムを回収する。
【0017】
本発明による焼却灰の処理装置は、前記溶融炉から前記排ガスが供給され前記排ガスに含まれた熱でスチームを発生させるボイラをさらに備えることができる。ここで、前記ボイラは、発生したスチームを前記プラズマトーチモジュール及び前記塩化カルシウム回収機に供給することができる。
【0018】
本発明による焼却灰の処理装置は、前記ボイラから排ガスを供給して前記排ガスを凝縮させる凝縮機をさらに備えることができる。
【0019】
本発明による焼却灰の処理装置は、前記凝縮機で凝縮された排ガスを誘引して外部に排出する送風機、或いは前記凝縮機で凝縮された排ガスを供給して前記排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)を燃焼させて排出する燃焼機をさらに備えることができる。
【0020】
本発明による焼却灰の処理装置において、前記水槽は主水槽と補助水槽とを備えることができる。前記主水槽は、外部から供給される水で満たされており、前記溶融炉の出湯口の下部に設けられ前記出湯口から出湯される溶融物を提供する。そして、前記補助水槽は、前記主水槽と連結されており、溶融塩が溶解した水が前記主水槽において一定の水位を超えるようになると、前記補助水槽に移動して満たされる。このとき、前記溶融塩が溶解した水は、前記補助水槽を通じて前記塩化カルシウム回収機に移送される。本発明による焼却灰の処理装置において、前記水槽の壁を二重ジャケット式に設け、前記水槽に冷却コイルを設けて前記水槽の水を冷却させることができる。
【0021】
そして、本発明による焼却灰の処理装置は、前記水槽でガラス質化したスラグを前記水槽の外に排出させるコンベヤをさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による焼却灰の処理装置は、スチームを用いて発生させたプラズマアークで焼却灰を溶融させて処理することにより、二次汚染物質の発生を抑制するとともに焼却灰を処理することができる。即ち、スチームを用いて発生させたプラズマアークで焼却灰を溶融させた場合、焼却灰を溶融させる過程においてNOのような二次汚染物質が発生することを抑制することができる。
【0023】
また、本発明による焼却灰の処理装置は、スチームで発生させたプラズマアークにより直接焼却灰を溶融させるため、表面溶融方式の化石原料と比較して焼却灰を迅速に溶融させることができる。
【0024】
また、プラズマアークの媒質に使われるスチームは、特段の設備を設けることなく、ほとんどの溶融装置から容易に得られ、他のプラズマ媒質ガスと比較して定圧比熱が大きいため、プラズマトーチの熱効率が高く、作動電圧が高くて大容量トーチの製作に有利な点がある。
【0025】
また、スチームは減温塔及び洗浄塔を用いて凝縮水に回収することができるため、大気に排出される排ガスの量を減らすことができる利点がある。また、焼却灰を溶融させて発生した溶融物を水に投入して前記溶融物に含まれる溶融塩(塩化カルシウム)を溶解し、溶融塩が溶解した水溶液から水を取り除くことにより高純度の塩化カルシウムを回収することができる。
【0026】
また、本発明による焼却灰の処理装置の溶融炉には、焼却灰投入口と反対側に排ガス排出管が具設されており、焼却灰が溶融される部分と排ガス排出管との間の上部に隔壁が設けられているため、飛散粉塵とともに排ガスが出口に直に抜けることを防ぎながら回転させて排ガス排出管を介する飛散粉塵の流出を最小限に抑えることができる。
【0027】
また、溶融炉から排出された排ガスは、減温塔と洗浄塔とを経てその嵩が顕著に減るため、大気に放出される排ガスの量を減らすことができる。さらに、減温塔と洗浄塔とを経た排ガスに含まれるCOは燃焼機で燃焼させるため、二次汚染物質がほとんどない状態で排ガスを大気に放出することができる。これにより、排ガスによる大気の汚染発生を抑制することができる。
【0028】
また、溶融炉から排出される排ガスに含まれる廃熱を用いてボイラを稼動させ発生するスチームをプラズマアークの発生及び塩化カルシウムの乾燥に用いることにより、エネルギーの無駄使いを抑制し、プラズマアークの発生及び塩化カルシウムの乾燥に必要なスチームの発生にかかる費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例によるプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置を表す図である。
【図2】図1の溶融装置を表す図である。
【図3】図2のプラズマトーチモジュールを表す図である。
【図4】本発明の実施例によるプラズマアークを用いた焼却灰の処理方法に係るフローチャートである。
【図5】本発明の実施例によるプラズマアークを用いた焼却灰の処理方法に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
下記の説明においては、本発明の実施例による動作を理解するのに必要な部分のみを説明し、それ以外の部分の説明は本発明の要旨を曖昧にすることを避けるために省略したことに留意しなければならない。
【0031】
また、以下に説明する本明細書及び特許請求の範囲に記載の用語及び単語は、通常の又は辞典的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念に解釈されるべきである。したがって、本明細書に記載の実施例及び図面に示された構成は、本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得るという点を理解すべきである。
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例をより詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施例によるプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置を示す図である。図2は、図1の溶融装置を表す図である。そして、図3は、図2のプラズマトーチモジュールを表す図である。
【0034】
図1ないし図3を参照すると、本発明の実施例によるプラズマアークを用いた焼却灰の処理装置100は、焼却灰供給機10及び溶融装置20を含み、水槽80及び塩化カルシウム回収機(91; CaCl recovery unit)をさらに備えることができる。焼却灰供給機10は、飛散灰と炉底灰とを含む焼却灰12を溶融装置20に供給する。溶融装置20は、焼却灰供給機10から供給された焼却灰12をプラズマアークで溶融させて溶融物14を生成する溶融炉21を備える。水槽80は水で満たされており、溶融炉21で生成された溶融物14を前記水槽80に供給して溶融物14に含まれる溶融塩を水に溶解し、溶融物14に含まれるスラグをガラス質化させる。そして、塩化カルシウム回収機91は溶融塩が溶解した水14bを水槽80から供給し、水を取り除いて塩化カルシウムを回収する。その他、本実施例による焼却灰の処理装置100は、コンベヤ92、ボイラ93、凝縮機94、送風機95、燃焼機96、冷却機97、及びスラグ回収容器98をさらに含むことができる。
【0035】
このような本実施例による焼却灰の処理装置100について具体的に説明すれば、以下の通りである。
【0036】
焼却灰供給機10は、焼却灰12を溶融炉21に供給する。ここで、焼却灰12は一定の割合で混合された飛散灰と炉底灰とを含む。ここで、飛散灰に炉底灰を混合する理由は、溶融物14の溶融点を下げるためである。すなわち、飛散灰に炉底灰を適切な割合で混合して塩基性度を調節することにより、焼却灰12の融点を下げることができる。例えば、焼却灰12の融点が約1500℃以下になるように飛散灰と炉底灰とを混合することができ、好ましくは、飛散灰と炉底灰とを約1:1の割合で混合することができる。
【0037】
また、飛散灰に炉底灰を混合しても、炉底灰は溶融過程において大部分スラグに含まれるため、飛散灰の投入量に対する塩化カルシウムの発生量はほとんど変化がない。このような焼却灰12は粉末または顆粒のような固体の状態で提供され得る。焼却灰供給機10としてはスクリュー方式により焼却灰12を溶融炉21に提供するスクリューフィーダ(screw feeder)が使われ得る。このような焼却灰供給機10は、移送管17、投入口15、及び移送スクリュー13を備えることができる。移送管17は、溶融炉21の供給管23に連結され、焼却灰12を移動することが可能な通路を提供する。
【0038】
投入口15は、移送管17に連結され、移送管17内に焼却灰12を投入する所である。そして、移送スクリュー13は、移送管17の内部に設けられて投入口15を通じて移送管17に投入された焼却灰12を溶融炉21の供給管23を介して溶融炉21内に移動させる。このとき、移送スクリュー13は回転しつつ、移送管17に投入された焼却灰12を溶融炉21の方に移動させる。焼却灰供給機10は、溶融炉21に移送スクリュー13を通じて焼却灰12を供給するため、溶融炉21で焼却灰12を溶融する過程において発生する高温のガスが移送管17を介して投入口15の方に放出されることを抑制することができる。すなわち、移送スクリュー13に粉末または顆粒状態の焼却灰12が移送管17に満たされた状態で溶融炉21に焼却灰12が運搬されるため、溶融炉21の高温のガスが移送管17を介して投入口15の方に放出されることを抑制することができる。
【0039】
焼却灰12を溶融させる際、焼却灰供給機10は焼却灰12が供給管23を満たし、供給管23に隣接する溶融室22の内側壁を覆うように供給管23を介して焼却灰12を供給する。このように焼却灰12を供給する理由は、溶融物14による溶融室22の内側壁を構成する耐火物が侵食されることを抑制するためである。
【0040】
溶融装置20は、焼却灰12を供給してアーク放電で発生させたプラズマアークを、供給された焼却灰12に直接照射して溶融する。溶融装置20は、アーク放電でプラズマアークを発生させるプラズマトーチ35を含むプラズマトーチモジュール30を備える。プラズマアークの場合、従来の化石燃料を使用する場合と比較して温度が非常に高く、溶融の対象である焼却灰12に熱を直接伝達することができ、焼却灰12の溶融過程において発生するガス量もまた化石燃料を使用する場合よりも遥かに小さいため、溶融装置20のエネルギー効率は高くかつ迅速に焼却灰12を溶融することができる。
【0041】
特に、溶融装置20は、溶融炉21及びプラズマトーチモジュール30を備える。溶融炉21は、供給管23、溶融室22、排ガス排出管25、隔壁26、及び出湯口27を備える。ここで、供給管23は、焼却灰供給機10から供給された焼却灰12を溶融室22に供給する。溶融室22は、一側が供給管23に連結され、供給管23から供給された焼却灰12が溶融される所である。排ガス排出管25は、供給管23の反対側に具設され排ガス16を溶融室22の外に排出させる。隔壁26は、排ガス排出管25に近接するように溶融室22の上部内壁の上部で突出するように突設されている。出湯口27は、溶融室22の他側に付設され溶融物14を出湯させる。そして、プラズマトーチモジュール30は、供給管23と隔壁26との間の溶融室22の上部を貫いて溶融室22の内側へ移動可能に設けられ、焼却灰12が堆積する方向に向かってプラズマアークを印加して焼却灰12を溶融させるプラズマトーチ35を備える。そのほか、溶融装置20は、冷却ジャケット40、監視カメラ50、及び温度センサ60をさらに備えることができる。
【0042】
ここで、溶融炉21は、焼却灰供給機10を通じて供給された焼却灰12を溶融する所である。溶融室22は、焼却灰12が供給されて積載され、焼却灰12の溶融物14を堆積することができる内部空間を有する。供給管23は溶融室22の一側面の上部から外方に突出している。排ガス排出管25は、供給管23が設けられた方と反対側に具設され、その間には隔壁26が設けられている。
【0043】
このように、供給管23、隔壁26、及び排ガス排出管25を設けた理由には、焼却灰12を溶融させる過程において発生する飛散粉塵がそのまま排ガス排出管25を介して溶融室22の外に放出されることを抑制することが挙げられる。
【0044】
溶融炉21の出湯口27は、供給管23が設けられた溶融室22の一側面と対向する他側面の下部に付設され得る。出湯口27は、溶融室22の底面よりも上方に出口27aが設けられている。このように、出湯口27の出口27aを溶融室22の底面よりも上方に設ける理由には、出湯の際、出口27aを通じて溶融室22の内部に外部の空気が入るか、または溶融室22の内部のガスが外部へ放出されることを抑制するためである。また、出湯口27の出口27aは、出湯前に、泥、セラミックウールなどにより遮り、出湯時、機械的または熱的にこれらを取り除いて溶融物14を出湯させることができる。また、溶融炉21は陽圧若しくは陰圧の状態で運転が可能である。
【0045】
ここで、焼却灰12の飛散灰に含まれる元素を含有量順に推察すると、Ca、Cl、Na、K、S、Zn、Si、Fe、Pb、Alなどである。これらの元素の溶融炉21内の挙動を推察すると、Caは、焼石灰(Ca(OH))及び塩化カルシウム(CaCl)の状態がほとんどであるが、焼石灰はCaOとしてスラグ内に含まれ、塩化カルシウムは大半が溶融塩として存在するようになる。Na、Kは、塩及びスラグ或いは気化した後溶融飛散灰になり得る。Sは、溶融炉21の酸化/還元雰囲気下でHSまたはHSO形態に気化されるか、或いはCaSまたはCaSOとして一部スラグに含まれ得る。Znは大半が気化し、Si、Fe、Alはほとんどスラグに含まれ得る。そして、Pbは一部気化し、一部スラグに含まれる。ここで、飛散灰内に40〜50%の濃度で多く含まれている塩化カルシウムは、溶融炉21でほとんどスラグと分離して溶融塩の状態に存在する。塩化カルシウムは、水に対する溶解度が86.3g/100gと非常に高いため、出湯して水槽80に注入されたと同時に水に速かに溶解される。飛散灰に含まれた有害重金属は、前述したように、ほとんど溶融炉21で気化されるか、またはスラグに含まれ、CaS及びCaSOは水に対する溶解度が低いため、水槽80の水をほとんど汚染せず水槽80の水からは重金属汚染がほとんど含まれない高純度の塩化カルシウムを回収することができる。例えば、飛散灰1トンを溶融処理する場合、400〜500kgの塩化カルシウムを回収することが可能である。
【0046】
監視カメラ50は、プラズマトーチ35の動作状態と焼却灰12の溶融状態とを監視するように溶融室22に設けられ、撮影した映像情報は運転部に伝送される。このとき、監視カメラ50は少なくとも溶融物14が満たされる地点よりは上部の溶融室22の部分に設けられ得る。本実施例においては、監視カメラ50が、出湯口27が設けられた溶融室22の他側面から一側面を眺める方に設けられた例を開示したが、これに限定されるものではない。
【0047】
温度センサ60は、溶融室22の内部の温度を監視できるように溶融室22に設けられ、感知した溶融室22の温度情報を運転部に伝送する。このとき、温度センサ60は溶融物14が満たされる地点よりは上部の溶融室22の部分に設けられ得る。
【0048】
冷却ジャケット40は、溶融物14が満たされる溶融室22下部の外側面の周縁と、出湯口27の周囲に設けられて溶融室22の下部と出湯口27とを冷却させる。一般的に、溶融物14は溶融室22の内部で流動しつつ溶融室22の耐火物を侵食させることができるため、溶融物14が接する溶融室22の部分の外側に冷却ジャケット40を設けてその部分を冷却することにより、溶融室22の耐火物が侵食されることを抑制することができる。すなわち、冷却ジャケット40が設けられた部分の内側の溶融室22の内側壁に接触する溶融物14は凝固されて一種の保護膜を形成し、前記保護膜に凝固されていない溶融物14が接触するため、溶融物14によって溶融室22の耐火物が侵食されることを抑制することができる。このとき、冷却ジャケット40は熱交換器と連結され、熱交換器により循環される冷媒で溶融室22の下部と出湯口27とを冷却させる。
【0049】
プラズマトーチモジュール30は、電源供給部31、プラズマ媒質供給部33、プラズマトーチ35、及びトーチ移送部39を備える。電源供給部31は、プラズマトーチ35にプラズマアークの発生に必要な電源を供給する。プラズマ媒質供給部33は、プラズマ媒質をプラズマトーチ35に供給する。プラズマトーチ35は、電源供給部31から電源が印加された状態でプラズマ媒質供給部33から供給されたプラズマ媒質をアーク放電させてプラズマアークを発生させる。そして、トーチ移送部39は、プラズマトーチ35を溶融室22の底部の方へ移動させるか、または底部の方から遠く移動させる。
【0050】
プラズマ媒質供給部33は、プラズマ媒質としてスチームを供給することができる。すなわち、プラズマ媒質として空気や窒素を使用することもあるが、この場合、NOのような公害物質が発生するため、本実施例によるプラズマ媒質としては相応しくない。一方、スチームはNOを発生せず、焼却灰12と化学反応をほとんど起こさないため、本実施例によるプラズマ媒質に相応しいといえる。
【0051】
プラズマトーチ35は、移行式(transfer)プラズマトーチであって、後方トーチ32及び前方トーチ35を備え、焼却灰12に直接アーク放電を行うように溶融室22の下部に電極37が設けられている。後方トーチ32は電源供給部31から陽電位が印加される。前方トーチ34は後方トーチ32の先方に設けられ、電源供給部31から第1スイッチ36を媒介として選択的に陰電位が印加される。そして、電極37は電源供給部31から第2スイッチ38を媒介として選択的に陰電位が印加される。
【0052】
ここで、後方トーチ32に陽電位が印加されて前方トーチ34に陰電位が印加されれば、プラズマトーチ35にプラズマのアーク点が形成される。すなわち、この場合、プラズマトーチ35は非移行式(non−transfer)に使われる場合であり、アーク放電はプラズマトーチ35内で発生して外に排出される。
【0053】
そして、焼却灰12を溶融して得られる溶融物14に電気を通じることにより、前方トーチ34への陰電位印加が遮断され、電極37に陰電位が印加されて後方トーチ32に陽電位が印加されれば、プラズマのアーク点がプラズマトーチ35から溶融物14に移動する。すなわち、プラズマトーチ35が移行式に使われる場合であって、アーク放電は溶融物14で発生する。
【0054】
また、プラズマトーチ35は、供給管23を介して供給されて溶融室22の一側に堆積している焼却灰12に対して一定の間隔で離隔された位置に設けられる。溶融室22に供給された焼却灰12を迅速に溶融させることができるように、プラズマトーチ35は堆積している焼却灰12の端部に向かうように設けるのが好ましい。すなわち、プラズマトーチ35は溶融室22の底面に対して一定の角度で傾斜するように設けることができる。
【0055】
例えば、本実施例によるプラズマトーチ35を用いて以下のとおり焼却灰12を溶融させることができる。まず、溶融室22に供給された焼却灰12の溶融を始める際、底面には以前に溶融されて硬化した試料層が存在し得る。硬化した試料層は電極37を通じて電気を通すことができる状態ではないため、プラズマトーチ35を非移行式に駆動させて溶融室22の底面にある硬化した試料層の一部を溶融させる。このとき、プラズマトーチ35はトーチ移送部39によって溶融室22の底面の方に近接するように移動する。
【0056】
次いで、硬化した試料層が溶融されて溶融物14に電気を通すことができる状態になったら、プラズマトーチ35を非移行式から移行式に切り替えて焼却灰12を溶融させる。このとき、プラズマトーチ35はトーチ移送部39によって溶融室22の底面から遠方に移動させる。そして、プラズマトーチ35は非移行式から移行式に切り替えた後、プラズマトーチ35の作動電圧を上げることにより熱損失を低減することができる。このとき、焼却灰12の溶融速度はプラズマトーチ35の電流強度を調節してプラズマトーチ35に印加される電力を調節することにより、容易に制御することができる。また、焼却灰12の溶融速度を調節するために、溶融室22の底面から遠方に移動させた後、プラズマトーチ35は移行式及び非移行式を混合して用いることもできる。
【0057】
例えば、プラズマトーチ35を稼動するには約5気圧のスチームを要し、プラズマトーチ35に使われるスチーム量は最大2000Lpm/1MW、すなわち、100Kg/h/1MWになる。この場合、ボイラ93の容量が約1トン/hならば、プラズマトーチ35の稼動に必要なスチームを充分提供することができる。
【0058】
水槽80は、溶融炉21の出湯口27の下部に設けられ、出湯口27から出湯された溶融物14が提供される。水槽80は、水で満たされている主水槽81と、主水槽81に連結された補助水槽83とを備える。溶融炉22から排出された溶融物14は主水槽81に入る。主水槽81には水を供給することができ、補助水槽83を通じて塩化カルシウム回収機91に移送される溶融塩が溶解した水14bの量に対応するように供給され得る。このとき、溶融物14は溶融塩スラグを含み、溶融塩は水に溶解し、スラグは冷却してガラス質化される。
【0059】
冷却器97は、水槽80の水温を保持できるように水槽80内を冷却水が循環する。冷却器97は、水槽80で最大限の量の溶融塩が飽和状態で溶解することができるように、スラグを冷却させることができる範囲内で水槽80への冷却水供給量を最小限に抑えることができる。このとき、冷却器97は冷却水を循環させることができるコイル形態の冷却水循環管が水槽80の内部に設けられる構造を有する。一方、本実施例においては、水で満たされた水槽80内部に冷却水循環管が設けられた例を開示したが、水槽80の内壁に冷却水循環管をさらに設けることもできる。例えば、水槽80の壁を二重ジャケット式に設け、水槽80に冷却循環管、すなわち、冷却コイルを設けて水槽80の水を冷却させることもできる。
【0060】
コンベヤ92は主水槽81に設けられ、主水槽81に沈殿したガラス質化したスラグ14aを主水槽81の外に排出させる。コンベヤ92に沿ってガラス質化したスラグ14aが定常的に排出されるように、コンベヤ92は主水槽81の一側に傾斜するように設けられることができる。このとき、コンベヤ92の一側は主水槽81の底に近接するように設けられ、他側は主水槽81の外に露出するように主水槽81に設けられる。コンベヤ92の他側には排出されたガラス質化したスラグ14aを回収することができるスラグ回収容器98を設置することができる。スラグ回収容器98に回収されたガラス質化したスラグ14aを集めて産業用などにリサイクルすることができる。
【0061】
塩化カルシウム回収機91は、補助水槽83を通じて溶融塩が溶解した水14bが供給される。塩化カルシウム回収機91は溶融塩が溶解した水14bから水を取り除くことにより塩化カルシウムが回収される。本実施例による塩化カルシウム回収機91は、ボイラ93から供給されるスチームを用いて溶融塩が溶解した水14bから水を取り除く。すなわち、ボイラ93はスチームの熱を用いた水の蒸発によって塩化カルシウムが回収され、真空蒸発方式を利用した場合、スチームの使用量を低減することができる。
【0062】
例えば、焼却灰12を1時間当たり1トンを処理することができる溶融装置20を備えた焼却灰の処理装置100の場合、塩化カルシウムの発生量が0.5トン/hとすると、塩化カルシウムが水に溶解可能な水の最大量は約0.6トンである。この水を蒸発させるのに必要なスチーム量は、理論的に蒸発させる水の量と類似しているが、塩化カルシウム回収機91の蒸発効率を70%と仮定すると、実際では0.85トン/hのスチーム量が必要である。このスチーム量は溶融炉21に連結されたボイラ93から発生するスチーム量で充てることができるため、塩化カルシウムの回収に必要な乾燥熱量は焼却灰の処理装置100自体で調逹可能である。
【0063】
ボイラ93は、溶融炉21の排ガス排出管25と連結させて排ガス16が供給され、排ガス16に含まれる熱でスチームを発生させる。ボイラ93は、発生したスチームをプラズマトーチモジュール30及び塩化カルシウム回収機91に供給する。例えば、溶融炉21から約1400℃で排出された排ガス16はボイラ93を通過しながら約180℃に冷却される。ボイラ93は約180℃まで温度が低下した排ガスを凝縮機94に供給する。
【0064】
凝縮機94はボイラ93から供給された排ガスを凝縮させる。このとき、凝縮機94は減温塔及び洗浄塔を備え、排ガスは減温塔と洗浄塔とを経てその嵩が顕著に減る。また、排ガスを凝縮する過程において排ガスに含まれる有害成分がともに除去される。このとき、凝縮機94から発生される廃水は廃水処理場に送られるようになるが、その発生量が約100L/hに少ない量であるため、蒸発濃縮工程を適用することができる。廃水を蒸発濃縮する際、ボイラ93のスチームを用いることができる。
【0065】
送風機95は凝縮機94で凝縮した排ガスを燃焼機96に円滑に移動するように誘引する。凝縮機94を経た排ガスはそのガス量が極めて少ないため、小型の送風機95を使うことが可能である。このとき、排ガスに有害成分及び可燃成分がほとんど含まれていない場合、送風機95を通じて排ガスを直接外部に排出させることもできる。
【0066】
そして、燃焼機96は送風機95から供給された排ガスに含まれるCOを燃焼させて外部に排出させる。すなわち、焼却灰12に可燃成分が含まれている場合、排ガスに相当量のCOが含まれ得る。このような場合には、燃焼機96を通じて排ガスを再度燃焼させて排出する。排ガスが凝縮機94を通過しながら排ガスに含まれた有害成分が除去されるため、燃焼後は排ガスをそのまま外部に排出しても構わない。このとき、燃焼機96としてはサーマルオキシダイザー(thermal oxidizer)を用いてもよい。
【0067】
このような本実施例による焼却灰の処理装置100を用いた焼却灰の処理方法を図1ないし図5を参照して説明すれば、次の通りである。ここで、図4及び図5は本発明の実施例によるプラズマアークを用いた焼却灰の処理方法によるフローチャートである。
【0068】
まず、S201段階において、焼却灰供給機10は、溶融炉21の溶融室22に焼却灰12を供給する。このとき、焼却灰供給機10は供給管23を満たし、供給管23に隣接する溶融室22の内側壁を覆うことができるように充分な量の焼却灰12を供給管23を介して溶融室22内に供給する。
【0069】
一方、出湯口27の出口27aは溶融物14の出湯がなされるまで泥、セラミック、ウールなどで遮る。このように出湯口27の出口27aを縫合物で遮る理由には、アーク放電によって発生される高温のガス、熱などが出口27aを通じて溶融室22の外に放出されることを抑制することが挙げられる。
【0070】
次に、S203段階において、プラズマトーチモジュール30は、スチームを用いて発生させたプラズマアークで焼却灰12を溶融させて溶融物14を生成する。
【0071】
このS203段階を具体的に説明すれば、次の通りである。まず、プラズマトーチ35をトーチ移送部39を用いて溶融室22の底面の近くに移動させる。次いで、プラズマトーチ35を非移行式に動作させて溶融室22の底面に硬化した試料層を溶融させる。すなわち、初期稼動の際、溶融室22の底面には以前に溶融されて硬化した試料層が存在し得る。ところが、焼却灰12及び硬化した試料層は電気伝導性をほとんども有していないため、プラズマトーチ35を移行式に用いることはできない。したがって、初期稼動の際には、プラズマトーチ35を非移行式に駆動させて溶融室22の底面にある硬化した試料層の一部を溶融させるか、または焼却灰12を溶融させる。このとき、電源供給部31はプラズマトーチ35の前方トーチ34に陰電位を印加し、後方トーチ32に陽電位を印加する。
【0072】
次に、硬化した試料層が溶融されて溶融物14に電気が通すことができる状態になると、プラズマトーチ35を非移行式から移行式に切り替えて焼却灰12を溶融させる。すなわち、プラズマトーチ35はトーチ移送部39によって溶融室22の底面から遠方に移動させる。そして、プラズマトーチ35を非移行式から移行式に切り替えた後、プラズマトーチ35の作動電圧を上げることにより熱損失を抑制することができる。このとき、電源供給部31は第1スイッチ36を開放して前方トーチ34への陰電位印加を遮断し、第2スイッチ38を閉めて電極37に陰電位を印加する。併せて、電源供給部31は後方トーチ32に陽電位を印加してアーク点を溶融物14に移動させる。
【0073】
このようにアーク点を溶融物14に移動させることにより、プラズマトーチ35はアーク放電を溶融物14で行うため、アーク放電により発生されるプラズマアークの温度が非常に高く、焼却灰12に熱を直接伝達するため、焼却灰12を迅速に溶融させることができる。
【0074】
一方、焼却灰12の溶融中に発生する排ガスは排ガス排出管25に排出される。このとき、排ガス排出管25の先方に隔壁26が設けられているため、飛散粉塵がそのまま排ガス排出管25に排出されることを遮ることができる。すなわち、飛散粉塵は隔壁26に塞がって排ガス排出管25に抜け出ることができず、溶融室22内で回転しつつ再投入されるため、飛散粉塵の流出を最小限に抑えることができる。
【0075】
また、冷却ジャケット40と熱交換器とが連結されて冷媒を循環させつつ、溶融物14が満たされた溶融室22の下部の外側面の周縁と出湯口27の周囲とを冷却させるため、溶融物14により溶融室22の耐火物及び出湯口27の耐火物が侵食されることを抑制することができる。
【0076】
次に、S205段階において、溶融炉21は、生成された溶融物14を水槽80に排出させる。すなわち、焼却灰12がある程度溶融され、つまり出湯口27の出口27aよりは少なくとも高く溶融物14が溶融室22に堆積されるようになった後、出湯時期になると、機械的または熱的方法により出湯口27の出口27aを遮っている縫合物を取り除いて溶融室22内の溶融物14を溶融室22の外に出湯させる。このとき、出湯口27の出口27aは溶融室22の底面よりは上方に形成されているため、出湯時、出口27aを通じて溶融室22の内部に外部の空気が入るか、或いは溶融室22の内部のガスが外部に放出されることを抑制することができる。このとき、出湯口27を通じて排出された溶融物14は水槽80の水に入り、溶融物14に含まれた溶融塩は水に溶け、溶融物14に含まれたスラグはガラス質化される。
【0077】
また、水槽80の水温は冷却器97を通じる冷却水の循環によって調節する。特に、水槽80の水に溶融塩が飽和状態で溶解することができるように、冷却器97は冷却水の循環を最小限に抑制することができる。
【0078】
次に、S207段階において、溶融塩が溶解した水14bは、水槽80から塩化カルシウム回収機91に供給される。すなわち、主水槽81に溶融塩が溶解した水14bが一定の水位を越えると、主水槽81から補助水槽83に移動するようになる。補助水槽83の水は塩化カルシウム回収機91に供給される。このとき、水槽18の溶融塩が溶解した水14bの溶融塩の濃度が少なくとも飽和状態に近接したとき、塩化カルシウム回収機91に供給され得る。一方、本実施例においては、補助水槽83から塩化カルシウム回収機91に溶融塩が溶解した水14bが供給される例を開示したが、主水槽81から直接塩化カルシウム回収機91に溶融塩が溶解した水が供給されることもできる。
【0079】
そして、S209段階において、塩化カルシウム回収機91は溶融塩が溶解した水14bから水を取り除いて塩化カルシウムを回収する。このとき、塩化カルシウム回収機91はボイラ93から供給されたスチームを用いて水を蒸発させて塩化カルシウムを回収することができる。S209段階におけるスチーム使用量を減らすために、蒸発方式として真空蒸発方式を用いることができる。
【0080】
また、S211段階において、ガラス質化したスラグ14aはコンベヤ92によって水槽80の外に排出される。コンベヤ92を通じて水槽80の外に排出されたガラス質化したスラグ14aはスラグ回収容器98に回収される。
【0081】
一方、S213段階において、溶融炉22で発生した排ガス16はボイラ93に排出される。
【0082】
次に、S215段階において、ボイラ93は排ガス16に含まれる熱を用いてスチームを発生させる。このとき、溶融炉22で約1400℃に排出された排ガス16はボイラ93を通過しながら約180℃まで冷却される。ボイラ93は約180℃まで温度が低下した排ガスを凝縮機94に供給する。
【0083】
次に、S217段階において、凝縮機94はボイラ93から供給された排ガスを発生させる。このとき、凝縮機94は減温塔と洗浄塔とを含み、排ガスは減温塔と洗浄塔とを経ることによりその嵩が顕著に減る。また、排ガスを凝縮する過程において排ガスに含まれる有害成分がともに除去される。
【0084】
次に、S219段階において、送風機95は凝縮機94で凝縮された排ガスを燃焼機96に円滑に移動するように誘引する。このとき、排ガスに有害成分及び可燃成分がほとんど含まれていない場合、送風機95を通じて排ガスを直接外部に排出させることもできる。
【0085】
そして、S221段階において、燃焼機96は送風機95から供給された排ガスに含まれたCOを燃焼させて外部に排出させる。すなわち、焼却灰12に可燃成分が含まれている場合、排ガスに相当量のCOが含まれ得る。こうした場合は、燃焼機96を通じて排ガスを再度燃焼させて排出する。
【0086】
一方、S215段階において発生したスチームは、S233段階においてボイラ93はスチームが必要な部分、例えば、プラズマトーチモジュール30及び塩化カルシウム回収機91に供給される。
【0087】
一方、本明細書及び図面に開示された本発明の実施例は、理解を容易するために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするのではない。ここに開示された実施例以外にも、本発明の技術的思想に基づいた他の変形例が実施可能であるということは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明なものである。
【符号の説明】
【0088】
10 焼却灰供給機
20 溶融装置
21 溶融炉
22 溶融室
23 供給管
25 排ガス排出管
26 隔壁
27 出湯口
30 プラズマトーチモジュール
31 電源供給部
32 後方トーチ
33 プラズマ媒質供給部
34 前方トーチ
35 プラズマトーチ
36 第1スイッチ
37 電極
38 第2スイッチ
39 トーチ移送部
40 冷却ジャケット
50 監視カメラ
60 温度センサ
80 水槽
81 主水槽
83 補助水槽
91 塩化カルシウム回収機
92 コンベヤ
93 ボイラ
94 凝縮機
95 送風機
96 燃焼機
97 冷却器
98 スラグ回収容器
100 焼却灰の処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛散灰と炉底灰とを含む焼却灰を、スチームを媒質として発生させたプラズマアークで溶融させて溶融物を生成する段階と、
前記溶融物を水で冷却させて前記溶融物に含まれた溶融塩を水に溶解し、前記溶融物に含まれたスラグをガラス質化する段階と、
前記溶融塩が溶解した水から塩化カルシウムを回収する段階と、
を含む、プラズマアークを用いた焼却灰の処理方法。
【請求項2】
前記溶融物を生成する段階において発生した排ガスに含まれた熱でスチームを発生させる段階をさらに含む、請求項1に記載の焼却灰の処理方法。
【請求項3】
前記スチーム発生段階において発生したスチームを前記プラズマアーク発生の媒質として投入する段階をさらに含む、請求項2に記載の焼却灰の処理方法。
【請求項4】
前記スチーム発生段階において発生したスチームを前記塩化カルシウム回収のための熱源として供給する段階をさらに含む、請求項2に記載の焼却灰の処理方法。
【請求項5】
前記排ガスを凝縮及び燃焼させる段階をさらに含む、請求項2に記載の焼却灰の処理方法。
【請求項6】
飛散灰と炉底灰とを含む焼却灰を、スチームを媒質として発生させたプラズマアークで溶融させて溶融物を生成する溶融装置と、
前記溶融物を水で冷却させて前記溶融物に含まれた溶融塩を水に溶解し、前記溶融物に含まれたスラグをガラス質化する水槽と、
前記溶融塩が溶解した水から塩化カルシウムを回収する塩化カルシウム回収機と、
を備える、プラズマアークを用いた焼却灰の処理装置。
【請求項7】
前記溶融装置は、
前記焼却灰供給機から供給された前記焼却灰を溶融する溶融室と、
前記溶融室の一側に具設され、前記焼却灰供給機から供給される前記焼却灰を前記溶融内部に投入する供給管と、
前記溶融室の他側に具設され、前記溶融物の生成過程において発生する排ガスを前記溶融室の外部に排出する排ガス排出管と、
前記排ガス排出管と一定の距離で離隔されて前記溶融室の上部内壁から突出するように突設された隔壁と、
前記溶融室の他側に付設され前記溶融物が出湯される出湯口と、
前記供給管と前記隔壁との間の前記溶融室の上部を貫いて前記溶融室の内側に移動可能に設けられ、スチームを媒質として発生させたプラズマアークを印加して前記焼却灰を溶融させるプラズマトーチモジュールと、
を備える、請求項6に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項8】
前記プラズマトーチモジュールは、
前記溶融室の底部に硬化した溶融物が存在する場合、プラズマトーチを非移行式に駆動させて前記硬化した溶融物を溶融させ、前記硬化した溶融物が溶融されたら、前記プラズマトーチを移行式に切り替えて前記焼却灰を溶融させる、請求項7に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項9】
前記排ガス排出管から排出される前記排ガスに含まれた熱でスチームを発生させるボイラをさらに備える、請求項7に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項10】
前記ボイラから発生したスチームは、前記プラズマトーチモジュールの媒質として投入される、請求項9に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項11】
前記ボイラから発生さしたスチームは、前記塩化カルシウム回収機の熱源として供給される、請求項9に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項12】
前記ボイラから排ガスを供給して前記排ガスを凝縮させる凝縮機をさらに備える、請求項9に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項13】
前記凝縮機で凝縮された排ガスに含まれるCOを燃焼させる燃焼機をさらに備える、請求項12に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項14】
前記水槽は、
前記出湯口の下部に設けられて前記出湯口から出湯される溶融物を水に溶解させる主水槽と、
前記主水槽に満たされた溶融塩が溶解した水の中から一定の水位を越える水が移動して満たされる補助水槽と、を備え、
前記塩化カルシウム回収機は、前記補助水槽から供給される前記溶融塩が溶解した水を蒸発させて塩化カルシウムを回収する、請求項7に記載の焼却灰の処理装置。
【請求項15】
前記主水槽に満たされた水の水温を一定の範囲内に保持する冷却器をさらに備える、請求項14に記載の焼却灰の処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237542(P2012−237542A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224323(P2011−224323)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(511245455)ジーエス プラテック コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】